説明

多孔質炭素電極基材及びその製造方法

【課題】 燃料電池に用いた際に短絡や反応ガスのクロスリークが生じにくい、基材表面において結着が不十分な炭素短繊維や樹脂炭化物が十分に除去された多孔質炭素電極基材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 以下の(1)〜(3)の工程を含む、多孔質炭素電極基材の製造方法。
(1)炭素短繊維が炭素により結着された炭素シートを製造する工程。
(2)前記炭素シートを、炭素シートの少なくとも一方の面に弾性を有するシートを配置し、連続的な加圧手段を用いて線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する工程。
(3)次いで、炭素シートに付着した炭素粉を連続的に除去する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を使用する固体高分子型燃料電池に用いられる多孔質炭素電極基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池のガス拡散層には、炭素繊維紙、炭素繊維クロス、炭素繊維フェルト等の炭素繊維を用いた基材が一般的に用いられる。これらの基材は炭素繊維によって高い導電性を示すだけでなく、多孔質材料であるため、燃料ガスおよび生成水などの液体の透過性が高いためガス拡散層に好適な材料である。
【0003】
しかしながら、ガス拡散層として用いられる基材は、燃料電池を製造する際のガス拡散層と電解質膜の接合工程やスタックの締結工程において生じる摩擦や圧縮などにより炭素繊維の毛羽立ちや脱落・折損が生じるおそれがある。これらの脱落・折損した炭素繊維は電解質膜に比べ剛直であるため、電解質膜に突き刺さることがある。
【0004】
電解質膜に突き刺さることにより、アノード極とカソード極との間がショートするといった不具合、アノード極側の水素ガス及び/又はカソード極側の酸素ガスがクロスリークするといった不具合を生じ、燃料電池の起電力や耐久性が著しく損なわれる傾向にあった。
【0005】
ところで電解質膜への炭素繊維の突き刺さりによるダメージを低減する方法として、例えば特許文献1には電解質膜や触媒層との接合工程やスタック締結工程においてガス拡散層に掛かる面圧を、あらかじめガス拡散層に付与し、生じる結着の弱い炭素繊維および炭化物の脱落や破損したものをあらかじめ取り除く方法が開示されている。また、特許文献2にはガス拡散層に気体を吹きつけ同時に吸引してやることで、ガス拡散層製造時において結着の弱い炭素短繊維を取り除く方法が開示されている。さらに、特許文献3においては、ガス拡散層に超音波処理を施すことによって、結着の弱い炭素繊維を取り除く方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−190951号公報
【特許文献2】特開2010−70433号公報
【特許文献3】特開2010−61964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法ではプレスにより後工程で生じる炭素粉を、予め除去することはできるが、プレス時に付与する圧力やプレス後の除去処理が不十分であるため、発生した炭素粉が十分に除去されておらず、燃料電池に用いた際に短絡電流が生じてしまうおそれがあった。
特許文献2に記載の方法では、ガス拡散層の表面はある程度清浄にできるが、電解質膜との接合工程など、ガス拡散層が圧縮された際には新たに炭素粉が発生してしまい、それらが電解質膜に突き刺さってしまって大きな短絡電流が発生してしまうという問題があった。
また、特許文献3に記載の方法を用いても同様にして、後工程の圧縮により炭素粉が発生してしまうという問題が生じる傾向にある。
本発明は、前記のような問題点を克服し、燃料電池に用いた際に短絡や反応ガスのクロスリークが生じにくい、基材表面において結着が不十分な炭素短繊維や樹脂炭化物が十分に除去された多孔質炭素電極基材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は以下の発明〔1〕〜〔6〕によって解決される。
〔1〕 以下の(1)〜(3)の工程を含む、多孔質炭素電極基材の製造方法。
(1)炭素短繊維が炭素により結着された炭素シートを製造する工程。
(2)前記炭素シートを、炭素シートの少なくとも一方の面に弾性を有するシートを配置し、連続的な加圧手段を用いて線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する工程。
(3)次いで、炭素シートに付着した炭素粉を連続的に除去する工程。
〔2〕 加圧手段を、少なくとも一対のロールを備えた連続式プレス装置とし、前記一対のロールの少なくとも一方が金属製のロールである、〔1〕記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
〔3〕 加圧手段を、少なくとも一対のロールを備えた連続式プレス装置とし、前記一対のロールの少なくとも一方が弾性ロールである、〔1〕又は〔2〕記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
〔4〕 連続式プレス装置が、少なくとも一対のエンドレスベルトを備えた連続式プレス装置である、〔3〕記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
〔5〕 除去が、ブラッシング及び吸引による方法、又は超音波洗浄である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
ポリエチレンシートと重ね50g/cmの力で圧着した際に、剥離したポリエチレンシートに付着した炭素短繊維の数が0.1本〜10本/cmであり、炭素短繊維の数が付着した炭化物の数よりも少ない多孔質炭素電極基材。
【発明の効果】
【0009】
燃料電池に用いた際に短絡や反応ガスのクロスリークが生じにくい、基材表面において結着が不十分な炭素短繊維や樹脂炭化物が十分に除去された多孔質炭素電極基材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に示す。
本発明は、以下の(1)〜(3)の工程を含む、多孔質炭素電極基材の製造方法、である。
(1)炭素短繊維が炭素により結着された炭素シートを製造する工程。
(2)前記炭素シートを、炭素シートの少なくとも一方の面に弾性を有するシートを配置し、連続的な加圧手段を用いて線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する工程。
(3)次いで、炭素シートに付着した炭素粉を連続的に除去する工程。
【0011】
まず、第一の工程において、炭素短繊維が炭素により結着された炭素シートを製造する。具体的には、炭素短繊維と炭素短繊維同士を結着させるバインダーとを水中で分散、抄造した後、抄紙にフェノール樹脂等を含浸し、次いで炭素化することにより製造される。以下、製造方法に関して詳細に説明する。
【0012】
炭素短繊維としては、その原料によらず用いることができるが、ポリアクリロニトリル(以後PANと略す。)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維から選ばれる1つ以上の炭素繊維を含むことが好ましく、PAN系炭素繊維あるいはピッチ系炭素繊維を含むことがより好ましい。炭素短繊維の平均直径は、3〜30μm程度が好ましく、4〜20μmがより好ましく、4〜8μmがさらに好ましい。この範囲内であると多孔質炭素電極基材としての表面平滑性と導電性がよい。
炭素短繊維の平均長は、2〜12mmが好ましく、3〜9mmがさらに好ましい。この範囲内であると抄紙時の分散性と多孔質炭素電極基材としての機械的強度が高くなる。
【0013】
ポリアクリロニトリル系炭素繊維は、原料として、アクリロニトリルを主成分とするポリマーを用いて製造されるものである。具体的には、アクリロニトリル系繊維を紡糸する製糸工程、200〜400℃の空気雰囲気中で該繊維を加熱焼成して酸化繊維に転換する耐炎化工程、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中でさらに300〜2500℃に加熱して炭化する炭化工程を経て得ることのできる炭素繊維で、複合材料強化繊維として好適に使用される。そのため、他の炭素繊維に比べて強度が強く、機械的強度の強い炭素シートを形成することができる。
【0014】
炭素シートを作製するための抄紙方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維を分散させて抄造する湿式法や、空気中に炭素短繊維を分散させて降り積もらせる乾式法が適用できる。また、炭素繊維同士を結着させるバインダーとして、適当量の有機高分子物質を混ぜることが好ましい。有機高分子物質を混ぜることにより、炭素シートの強度を保持し、その製造途中で炭素シートから炭素繊維が剥離したり、炭素繊維の配向が変化したりするのを防止することができる。
【0015】
有機高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、あるいはアクリロニトリル系ポリマーのパルプ状物もしくは短繊維であることが好ましい。アクリロニトリル系ポリマーのパルプ状物又は短繊維は、それ自身の焼成物が導電体としての役割を果たすため、特に好ましい。また、ポリビニルアルコールは抄紙工程での結着力に優れるため、炭素短繊維の脱落が少なくバインダーとして好ましい。
また、ポリビニルアルコールは電極基材を製造する最終段階の炭素化過程で大部分が分解・揮発してしまい、空孔を形成する。この空孔の存在により、水及びガスの透過性が向上するため好ましい。
【0016】
パルプ状物は繊維状の幹から直径が数μm以下のフィブリルを多数分岐した構造で、このパルプ状物より作ったシ−ト状物は繊維同士の絡み合いが効率よく形成されており、薄いシ−ト状物であってもその取り扱い性に優れているという長所を有している。また、アクリロニトリル系ポリマーの短繊維は、アクリロニトリル系ポリマーからなる繊維糸、または繊維のトウを、所定の長さにカットして得ることができる。
【0017】
炭素シートにおける有機高分子化合物の含有率は、5〜40質量%の範囲にあるのが好ましい。より好ましくは15〜30質量%の範囲である。炭素シートに樹脂含浸し、焼成して得られる電極基材の電気抵抗を低くするためには、高分子化合物の含有量は少ない方がよく、含有率は40質量%以下が好ましい。炭素シートの強度および形状を保つという観点から、含有率は5質量%以上が好ましい。
【0018】
これらの有機高分子化合物のパルプ状物あるいは短繊維を炭素繊維に混入する方法としては、炭素繊維とともに水中で攪拌分散させる方法と、直接混ぜ込む方法があるが、均一に分散させるためには水中で拡散分散させる方法が好ましい。
【0019】
炭素シートを抄紙した後、加熱加圧ロールでホットプレスすることにより、炭素繊維の配向および厚みをを均一化し、炭素繊維特有の毛羽を最小限におさえることができる。加熱加圧ロールの加熱温度は100℃〜150℃が好ましく、圧力は0.5MPa〜20MPaが好ましい。
【0020】
本発明においては、上述した炭素短繊維を含む炭素シートに熱硬化性樹脂を含浸し、加熱加圧により硬化し、次いで炭素化することにより燃料電池用多孔質炭素電極基材とする。
【0021】
本発明に用いる熱硬化性樹脂は常温において粘着性、或いは流動性を示す物でかつ炭素化後も導電性物質として残存する物質が好ましく、フェノール樹脂、フラン樹脂等を用いることができる。前記フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプフェノール樹脂を用いることができる。また、レゾールタイプの流動性フェノール樹脂に公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものが好ましい。
【0022】
フェノール類としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロール等が用いられる。アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等が用いられる。また、これらを混合物として用いることができる。これらはフェノール樹脂として市販品を利用することも可能である。
【0023】
本発明に用いる樹脂含浸炭素シート中の樹脂の好ましい割合は30質量%〜70質量%である。多孔質炭素電極基材の構造が密になり、得られる電極基材の強度が高いという点で、30質量%以上が好ましい。また、得られる電極基材の空孔率、ガス透過性を良好に保つという点で、70質量%以下とすることが好ましい。ここで、樹脂含浸炭素シートとは、加熱加圧前の、炭素シートに樹脂を含浸したものをいうが、樹脂含浸の際に溶媒を用いた場合には溶媒を除去したものをいう。
【0024】
熱硬化性樹脂の含浸工程において熱硬化性樹脂に導電性物質を混入することもできる。導電性物質としては、炭素質ミルド繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、等方性黒鉛粉などが挙げられる。樹脂中に導電性物質を混入する際の混入量は、樹脂に対して、1質量%〜10質量%が好ましい。混入量が1質量%未満であると導電性改善の効果が小さいという点で不利であり、10質量%を越えると導電性改善の効果が飽和する傾向にあり、またコストアップの要因となるという点で不利である。
【0025】
樹脂または樹脂と導電体の混合物を炭素シートに含浸する方法としては、絞り装置を用いる方法もしくは熱硬化性樹脂フィルムを炭素シートに重ねる方法が好ましい。絞り装置を用いる方法は樹脂溶液もしくは混合液中に炭素シートを含浸し、絞り装置で取り込み液が炭素シート全体に均一に塗布されるようにし、液量は絞り装置のロール間隔を変えることで調節する方法である。比較的粘度が低い場合はスプレー法等も用いることができる。
【0026】
熱硬化樹脂フィルムを用いる方法は、まず熱硬化性樹脂を離型紙に一旦コーティングし、熱硬化性樹脂フィルムとする。その後、炭素シートに前記フィルムを積層して加熱加圧処理を行い、熱硬化性樹脂を転写する方法である。
【0027】
本発明における加熱加圧工程は、生産性の観点から、炭素シートの全長にわたって連続して行うことが好ましい。また加熱加圧に先立って予熱を行うことが好ましい。この予熱工程において、熱硬化性樹脂を軟化させ、その後に続く加熱加圧工程にて、プレスにより電極基材の厚みを良好にコントロールできる。予熱した樹脂含浸炭素シートを予熱温度より50℃以上高い温度でプレスすることで所望の厚み、密度の電極基材を得ることができる。また、所望の厚み、密度の電極基材を得るために、樹脂含浸炭素シートを複数枚重ねて、加熱加圧を行っても良い。
【0028】
前記した加熱加圧は、連続式加熱ロールプレス装置あるいは一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置を用いて行うことが好ましい。後者の連続式加熱プレス装置は、ベルトで基材を送り出すことになるので、基材にはほとんど張力はかからない。したがって、製造中の基材の破壊は生じにくく、工程通過性に優れる。また、前者の連続式加熱ロールプレス装置は構造が単純であり、ランニングコストも低い。以上、2つの加熱加圧方式は連続で樹脂を硬化するのに適した方法であり、本発明の電極基材の製造に用いることが好ましい。
【0029】
前記した連続式のプレス装置を用いる際の加圧圧力は1.5×10〜1×10N/mであることが好ましい。加熱加圧は繊維中に樹脂を十分にしみ込ませ、曲げ強度を上げるために必要な工程である。
【0030】
樹脂を熱硬化させる時に1.5×10N/m以上で加圧することにより、十分な導電性と柔軟性を生むことができる。また、1×10N/m以下で加圧することにより、硬化の際、樹脂から発生する蒸気を十分に外に逃がすことができ、ひび割れの発生を抑えることができる。
【0031】
加熱加圧処理での加熱温度は、硬化処理時間あるいは生産性の観点から140℃以上が好ましく、加熱加圧装置等の設備のためのコストの観点から320℃以下が好ましい。より好ましくは160〜300℃の範囲である。また前記予熱の温度は100〜180℃の範囲が好ましい。
【0032】
本発明において、樹脂硬化の後に続く炭素化を炭素シートの全長にわたって連続で行うことが好ましい。電極基材が長尺であれば、電極基材の生産性が高くなるだけでなく、その後工程のMEA製造も連続で行うことができ、燃料電池のコスト低減化に大きく寄与することができる。具体的には、炭素化は不活性処理雰囲気下にて1000〜3000℃の温度範囲で、炭素シートの全長にわたって連続して焼成処理することが好ましい。本発明の炭素化においては、不活性雰囲気下にて1000〜3000℃の温度範囲で焼成する炭素化処理の前に行われる、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行っても良い。
【0033】
次に第2の工程において、上述のごとく得られた炭素シートを、該炭素シートの少なくとも一方の面に弾性を有するシートを配置し、連続的な加圧手段を用いて線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する。
【0034】
多孔質炭素電極基材は、通常、高分子電解質膜や触媒層と接着させる際や、燃料電池に組み込む際に加圧される。この際に、多孔質炭素電極基材から脱落する炭素短繊維や、炭素短繊維を結着している炭素粉が高分子電解質膜へのダメージの原因となる。したがって、第2の工程を経ることで、加圧によって多孔質炭素電極基材から脱落する炭素短繊維や炭素短繊維を結着している炭素を事前に取り除くことができ、高分子電解質膜へのダメージを低減することができる。
【0035】
膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池において、このような本発明に係る多孔質炭素電極基材を配置することで、膜−電極接合体の組み立て時、固体高分子型燃料電池セルの作製時または発電時の加圧において、炭素短繊維および炭素短繊維を結着している炭素成分が高分子電解質膜へ与えるダメージを低減することができる。
【0036】
ここで「連続的な加圧手段」とは、例えば連続式ロールプレスあるいは一対のエンドレスベルトを備えた連続式プレス装置を用いて、シートを搬送しながら連続的に加圧する方法をいう。このような装置し加圧することにより、炭素シートを連続的に処理可能であり、生産性が高い。バッチプレスを間欠的に行うプレス方法は、プレス盤面のエッジ部分に高い荷重がかかってしまい、プレス跡が炭素シートに転写される問題や、場合によっては炭素シートが破断してしまう問題、重複プレスによる処理時間の増加などの問題を有しており好ましい方法とはいえない。
本発明では、上記の連続式プレス装置を使用し、線圧で加圧する。具体的には線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する。これにより均一に炭素シートに圧力を付与することができ、面圧を付与するプレス方法で生じるおそれがある炭素シートの厚みムラに起因した炭素シートにかかる圧力ムラを回避することができる。
【0037】
また、連続的に加圧を行う際には、弾性を有するシートを炭素シートの少なくとも片面に配置し同時にプレス処理を行う。これにより炭素シートに対する面あたりが良くなり、炭素シートに対して均一に圧力を付与することができる。
【0038】
ここで「弾性を有するシート」とは、炭素シートよりも圧縮弾性係数が低く、圧縮時にプレス面と炭素シートの間に配置されることによって、緩衝材として作用するシートをいう。弾性を有するシートとしては、表面に剥離材が塗布された離型紙やテフロン(登録商標)シート、シリコンゴム製のシートなどが挙げられる。圧縮弾性係数は、1〜50GPaの範囲にある弾性を有するシートが好ましい。圧縮弾性係数が50GPa以上のシートであると、剛性が高すぎるため緩衝作用が働かず、面あたりの改善が望めない。また、1GPa以下のシートであると、プレスの際に炭素シートと一体化してしまい、剥離不能に陥ってしまう。
【0039】
また、連続式プレス装置として、ロールプレス機を用いる際に、一対のロールのうち、少なくとも一方を金属ロールとしておくことが好ましい。金属ロールとすることで、ロールの剛性が高いため均一な圧力を付与することが可能となるからである。また、一対のロールのうち、少なくとも一方を弾性ロールとすることもできる。ここで「弾性ロール」とは、例えばゴム、シリコンなどのような金属に比べ弾性係数の低い材料をロール外周に配してあるロールである。
【0040】
次いで第3の工程において、加圧された炭素シートに付着した炭素粉を除去する。加圧後の炭素シートは、炭素粉等が多く付着している。付着した炭素粉等を除去する方法としては、刷毛などで掃く方法、吸引する方法、超音波洗浄などの方法が挙げられる。発生した炭素粉を連続的かつ効率よく除去する観点から、ブラシ等で掃きながら炭素粉を吸引する方法、又は超音波洗浄が好ましい。いすれもプレス後から連続して多孔質炭素電極基材に付着した炭素粉等を除去できるため、ロスが生じず生産性が高い。
【0041】
上記のごとく得られた多孔質炭素電極基材は、以下の特徴を有する基材である。
ポリエチレンシートと重ね50g/cmの力で圧着した際に、剥離したポリエチレンシートに付着した炭素短繊維の数が0.1本〜10本/cmであり、炭素短繊維の数が付着した炭化物の数よりも少ない多孔質炭素電極基材。
つまり、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数が少なく、このような多孔質炭素電極基材を用いた燃料電池は短絡や反応ガスのクロスリークが生じにくく、耐久性が非常に高い。
【実施例】
【0042】
以下、実施例において本発明をより具体的に説明する。
〔リーク電流の測定方法〕
パーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜(膜厚:30μm)の片面に、得られた多孔質炭素電極基材が接するように配置し、それを金メッキした銅板電極ではさみ、3.5MPaまで加圧した後、デジタルマルチメーターTR6487(アドバンテスト社製)を使用し、高分子電解質膜へのダメージによるリーク電流を測定した。なお、このときの電極間の電位差は0.6Vで行った。
【0043】
〔ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数の測定方法〕
多孔質炭素電極基材の上面にPE膜を配置し、さらにPE膜の上におもりを乗せることで、多孔質炭素電極基材に対し50g/cm2の圧力を付与した。1分間圧力をかけた後、おもり、PE膜を多孔質炭素電極基材上からはずして、PE膜に付着した炭素短繊維の数をマイクロスコープにより観察した。観察は各サンプルごとに5回行い、1cmあたりのその平均値を炭素短繊維の付着本数とした。
【0044】
〔用いた弾性シートの圧縮弾性係数測定〕
実施例で使用した弾性を有するシートである離型紙およびテフロン(登録商標)
シートの圧縮弾性係数を測定した。圧縮試験機として島津マイクロオートMST−I((株)島津製作所製)を用いた。直径25mmのサンプルに試験力を加え、圧縮ひずみに対する応力の挙動を測定した。応力範囲0〜3.0MPaにおける圧縮ひずみに対する応力変化を圧縮弾性係数として記録した。正確な弾性係数を決定するため、圧縮試験を5回行い、その平均値を各サンプルの弾性係数とした。本発明に用いた離型紙の弾性係数は1.59GPa、テフロン(登録商標)シートの弾性係数は2.79GPaであった。
【0045】
〔実施例1〕
炭素短繊維として、長さ3mmにカットした平均直径7μmのPAN系炭素短繊維100質量部と、長さ3mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(商品名:VBP105−1、クラレ株式会社製)を11質量部とを水中で分散し、連続的に金網上に抄造した後、乾燥して炭素繊維紙を得た。
この炭素繊維紙100質量部に、フェノール樹脂(商品名:フェノライトJ−325、大日本インキ化学株式会社製)のメタノール溶液を含浸させ、室温でメタノールを十分に乾燥させ、フェノール樹脂の不揮発分を84質量部付着させたフェノール樹脂含浸炭素シートを得た。
このフェノール樹脂含浸炭素シートを2枚重ねて、250℃の温度で8×10N/mの線力のロールプレスを行い、フェノール樹脂を硬化させた。その後、不活性ガス(窒素)雰囲気中、1900℃で連続的に炭素化して、厚みが220μm、嵩密度が、0.26g/cmの炭素短繊維の抄紙体からなる炭素シートを得た。
【0046】
この炭素シートの両面から離型紙(リンテック株式会社製コウテイシWBE90R−DT)を重ね合わせて、一対の金属ロールからなるロールプレス装置にて連続的に17.5kN/mの線圧で加圧することによって多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材を、イオン交換水を満たした処理槽を通すことで連続的に1分間超音波洗浄を行い、除去を行った。超音波洗浄後、乾燥したのち、多孔質炭素電極基材をロール状に巻き取った。多孔質炭素電極基材のリーク電流を評価した。得られた多孔質炭素電極基材のリーク電流は4.3mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り2.2本と少なかった。
【0047】
〔実施例2〕
超音波洗浄処理の時間を3分間とした以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.5mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り2.6本と少なかった。
【0048】
〔実施例3〕
超音波洗浄処理の時間を5分間とした以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が4.8mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り3.1本と少なかった。
【0049】
〔実施例4〕
超音波洗浄を行う代わりに多孔質炭素電極基材の両面から回転ブラシと70Wの吸引仕事率で集塵することで除去を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.0mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り3.2本と少なかった。
【0050】
〔実施例5〕
超音波洗浄を行う代わりに多孔質炭素電極基材の両面から回転ブラシと300Wの吸引仕事率で集塵することで除去を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.2mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り1.8本と少なかった。
【0051】
〔実施例6〕
超音波洗浄を行う代わりに多孔質炭素電極基材の両面から回転ブラシと500Wの吸引仕事率で集塵することで除去を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が3.8mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り2.2本と少なかった。
【0052】
〔実施例7〕
炭素シートのプレスに用いる1対のプレスロールのうち、一方をゴム製のロール、もう一方を金属ロールとしたことおよび、離型紙の代わりにテフロン(登録商標)シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が3.0mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り1.7本と少なかった。
【0053】
〔実施例8〕
炭素シートのプレスに用いる1対のプレスロールのうち、一方をゴム製のロール、もう一方を金属ロールとしたこと以外は実施例4と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が3.0mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り0.6本と少なかった。
【0054】
〔実施例9〕
炭素シートのプレスを1対のステンレスベルトを備えた連続プレス装置によりおこなったことおよび、離型紙の代わりにテフロン(登録商標)シート(商品名:スカイブドテープ、中興化成工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.3mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り2.6本と少なかった。
【0055】
〔実施例10〕
炭素シートのプレスを1対のステンレスベルトを備えた連続プレス装置によりおこなったこと以外は実施例4と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が2.0mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り3.4本と少なかった。
【0056】
〔実施例11〕
プレス時の線圧を5.8kN/mとしたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が4.4mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り3.3本と少なかった。
【0057】
〔実施例12〕
プレス時の線圧を11.7kN/mとしたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が4.3mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り3.9本と少なかった。
【0058】
〔実施例13〕
プレス時の線圧を20.4kN/mとしたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が4.5mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り3.6本と少なかった。
【0059】
〔実施例14〕
プレス処理において炭素シートの片面のみに離型紙を用いたこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が8.9mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り8.8本と少なかった。
【0060】
〔実施例15〕
プレス処理において炭素シートの片面のみに離型紙を用いたこと以外は実施例8と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が6.3mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り5.6本と少なかった。
【0061】
〔実施例16〕
プレス処理において炭素シートの片面のみに離型紙を用いたこと以外は実施例9と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が8.2mA/cmと低く、良好な特性を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り8.1本と少なかった。
【0062】
〔比較例1〕
プレス処理および除去を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が13.8mA/cm高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り13.2本と多かった。
【0063】
〔比較例2〕
プレス処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が11.3mA/cmと高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り11.2本と多かった。
【0064】
〔比較例3〕
プレス処理を施さなかったこと以外は実施例4と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.5mA/cmと高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り11.5本と多かった。
【0065】
〔比較例4〕
除去を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.8mA/cmと高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り11.8本と多かった。
【0066】
〔比較例5〕
プレス処理において離型紙を用いなかったこと以外は実施例4と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.3mA/cmと高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り12.6本と多かった。
【0067】
〔比較例6〕
プレス処理において離型紙を用いなかったこと以外は実施例10と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.1mA/cmと高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り11.2本と多かった。
【0068】
〔比較例7〕
炭素シートを1対の平板を備えるバッチプレス装置を通過させ、間欠的にプレス処理をおこなったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.2mA/cmと高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り12.6本と多かった。
【0069】
〔比較例8〕
炭素シートを1対の平板を備えるバッチプレス装置を通過させ、間欠的にプレス処理をおこなったことおよび除去方法として気体の吹き付け処理をしながら吸引処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は、リーク電流が10.3mA/cmと高い値を示した。また、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数は1cm当り11.6本と多かった。
【0070】
測定したリーク電流等の結果を表1に示す。
【表1】

【0071】
表1の結果から、炭素シートを離型紙やテフロン(登録商標)シート等の弾性を有するシートと同時に線圧でプレスを行うことで、表面にある程度粗さを有する炭素シートであっても均一に圧力が付与されるため、炭素シートの弱い結着部分が均一に破壊・除去される。また、破壊・除去によって生じた炭素短繊維および樹脂炭化物の破片・粉は超音波洗浄処理または吸引処理により、連続的かつ効率的に除去されていることは、実施例1〜16で得られた多孔質炭素電極基材がいずれも低いリーク電流を示すことおよび、ポリエチレンシートとの圧着・剥離後に付着した炭素短繊維の数が少ないことからも明白である。本発明の多孔質炭素電極基材は連続品であることから、ロールトゥロールの後加工が容易であるだけでなく、多孔質炭素電極基材を用いた燃料電池は短絡や反応ガスのクロスリークが生じにくく、耐久性が非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(3)の工程を含む、多孔質炭素電極基材の製造方法。
(1)炭素短繊維が炭素により結着された炭素シートを製造する工程。
(2)前記炭素シートを、炭素シートの少なくとも一方の面に弾性を有するシートを配置し、連続的な加圧手段を用いて線圧5kN/m〜30kN/mで加圧する工程。
(3)次いで、炭素シートに付着した炭素粉を連続的に除去する工程。
【請求項2】
加圧手段を、少なくとも一対のロールを備えた連続式プレス装置とし、前記一対のロールの少なくとも一方が金属製のロールである請求項1記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
【請求項3】
加圧手段を、少なくとも一対のロールを備えた連続式プレス装置とし、前記一対のロールの少なくとも一方が弾性ロールである、請求項1又は2記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
【請求項4】
連続式プレス装置が、少なくとも一対のエンドレスベルトを備えた連続式プレス装置である、請求項3記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
【請求項5】
除去が、ブラッシング及び吸引による方法、又は超音波洗浄である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質炭素電極基材の製造方法。
【請求項6】
ポリエチレンシートと重ね50g/cmの力で圧着した際に、剥離したポリエチレンシートに付着した炭素短繊維の数が0.1本〜10本/cmであり、炭素短繊維の数が付着した炭化物の数よりも少ない多孔質炭素電極基材。

【公開番号】特開2012−204142(P2012−204142A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67643(P2011−67643)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】