説明

多層の硬化シリコーン樹脂組成物で被覆またはラミネートされたガラス基板

(i)少なくとも一つのガラス基板;(ii)前記ガラス基板の少なくとも一つの面の少なくとも一部の上の第一コーティング層(ここで第一コーティング層は、有機ポリマー、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物である);および(iii)第一コーティング層の少なくとも一部の上の第二コーティング層(ここで第二コーティング層は、有機ポリマー、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物である)を含む製造品(但し、第一コーティング層および第二コーティング層の少なくとも一つが硬化シリコーン樹脂組成物を含むことを条件とし、かつ、第一コーティング層および第二コーティング層の両方が硬化シリコーン樹脂組成物である場合は、第一コーティング層の硬化シリコーン樹脂組成物と第二コーティング層の硬化シリコーン樹脂組成物とが異なることを条件とする)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層の硬化シリコーン樹脂組成物で被覆またはラミネートされたガラス基板に関する。
本出願は、合衆国法典第35巻米国特許法第119条(e)のもとで、2006年12月20日出願に出願した米国仮特許出願番号第60/875,953号の利益を請求する。米国仮特許出願番号第60/875,953号を、参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
30から100マイクロメートル厚のガラス板が、ガラス製造会社で生産されている。これらは、太陽電池、ディスプレー、および高温加工を必要とするその他の部品のための基板に適している。これらは割れやすく、とりわけ広い面積の用途では成功が限られてきた。さまざまなポリマーが、これらのガラス板の亀裂を抑え、たわみやすくするための、ガラスの表面コーティングとして適用され、あるいはガラス中にラミネートされてきた。これらのポリマーには、多くの従来の有機ポリマー、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリオレフィン、その他が含まれる。熱的性能が限られているこれらのポリマーは、高温への暴露に持ちこたえることができるガラス板の機能を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,419,593号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新しい種類の被覆されたガラス板またはラミネートされたガラス板に関する。これらのガラス板とともに使われるポリマーは、高温性能を有する硬化シリコーン樹脂組成物である。この硬化シリコーン樹脂組成物は、ガラス板の表面上にコーティングすることができ、あるいはさまざまな積層構造デザインを有するガラス板間にラミネートすることができ、あるいは軟化ガラスもしくは溶融ガラスとともに硬化させて組成を勾配させた構造/多層構造を形成させることができる。ガラスによりバリア性と高温優位性がもたらされると同時に、硬化シリコーン樹脂組成物により柔軟性と強靭性がもたらされる。両者が組み合わされて、この複合構造により、他のラミネートおよび被覆ガラス板の典型的な特性に加えて、優れた耐熱性および耐候性という独自の利点がもたらされる。この硬化シリコーン樹脂組成物は、例えば、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、またはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物であり、樹脂層の厚さを、その臨界脆性−延性遷移厚さ以下とすることを確実にする措置を講ずることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(i)少なくとも一つのガラス基板;(ii)前記ガラス基板の少なくとも一つの面の少なくとも一部の上の第一コーティング層(ここで第一コーティング層は、有機ポリマー、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物である);および(iii)第一コーティング層の少なくとも一部の上の第二コーティング層(ここで第二コーティング層は、有機ポリマー、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物である)を含む製造品(但し、第一コーティング層および第二コーティング層の少なくとも一つが硬化シリコーン樹脂組成物を含むことを条件とし、かつ、第一コーティング層および第二コーティング層の両方が硬化シリコーン樹脂組成物である場合は、第一コーティング層の硬化シリコーン樹脂組成物と第二コーティング層の硬化シリコーン樹脂組成物とが異なることを条件とする)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のガラス基板は、二つの対立する面を有する実質的にガラスまたはガラス状固体を含む任意の固体物品である。本発明のガラス基板は、典型的には、硬化シリコーン樹脂組成物が堆積された少なくとも1個の平面を有する。ガラス基板は、任意の形状、例えばガラス板の形状などであってよい。ガラス板は平面形状の任意のガラス質材からなる。ガラスの組成物には、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛アルカリガラス、ホウ酸塩ガラス、石英ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ホウ酸ガラス、ナトリウムホウケイ酸ガラス、リチウムアルミノケイ酸ガラス、カルコゲナイドガラス、リン酸塩ガラス、アルカリバリウムケイ酸ガラスなどがある。これらは、全体的に無定形または部分的に結晶質であってよい。ガラス板は、任意の厚さのものであってよく、例えば、5から1500マイクロメートル、あるいは10から1000マイクロメートル、あるいは10から750マイクロメートル、あるいは10から400マイクロメートルの厚さを有する、あるいは柔軟性を改良するため5から100マイクロメートルの厚さを有する、薄く柔軟性のガラス板である。ガラスは、ガラスの用途を広げるための融解性カチオン(例えば、ソーダ石灰ガラス、リチウムアルミノケイ酸ガラスなど)と、硬化シリコーン樹脂組成物もしくはその組合せまたはこれらと有機ポリマーとの組合せで挟まれているかまたはこれらを挟んでいる任意のガラスとを含有していてよい。一つの有用なガラス基板の例は、70から80マイクロメートルの厚さを有し、コーニング社(米国ニューヨーク州コーニング)により製造されている0211 Microglass(登録商標)板である。
【0007】
第一コーティング層は、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、またはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物を含む。
ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物は、(A)ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂、(B)架橋剤、および(C)ヒドロシリル化触媒を含むシリコーン樹脂組成物の硬化物を含む。この硬化物は、(A)、(B)、および(C)を含むシリコーン組成物を硬化させる工程を含む方法によって得られる。本明細書で定義する「硬化された」は、本発明のシリコーン組成物(構成成分、混合物、溶液またはブレンドの形態であり得る組成物)が、室温空気中に曝されたか、高温、例えば50℃から450℃までの温度あるいは100℃から200℃までの温度に加熱されたか、あるいは紫外線、電子線もしくはマイクロ波に曝されたことを意味する。本明細書で定義する「硬化する」は、本発明のシリコーン組成物(構成成分、混合物、溶液またはブレンドの形態であり得る組成物)を、室温空気中に曝すか、高温(50℃から450℃までの温度あるいは100℃から200℃までの温度)で加熱するか、あるいは紫外線、電子線もしくはマイクロ波に曝すことを意味する。加熱は、任意の公知の従来手段を用いて、例えばシリコーン組成物またはシリコーン組成物で被覆したガラスを、50℃から450℃までの温度、あるいは100℃から200℃までの温度に設定した空気循環オーブンに入れることにより行うことができる。
【0008】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂(A)は、典型的には、主にケイ素結合アルケニル基を有していても、主にケイ素結合水素原子を有していてもよい。ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂(A)は、典型的には、RSiO3/2単位(すなわちT単位)および/またはSiO4/2単位(すなわちQ単位)と、RSiO1/2単位(すなわちM単位)および/またはRSiO2/2単位(すなわちD単位)との組合せのコポリマーである(式中、Rは、いずれも脂肪族不飽和を含まない、CからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、Rは、Rまたはアルケニル基または水素であり、ただしRSiO3/2単位とSiO4/2単位の合計がゼロよりも大きく、かつ、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有するか、あるいはケイ素に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも2個有することを条件とする)。例えば、シリコーン樹脂はDT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であってよい。本明細書において、用語「脂肪族不飽和を含まない」は、そのヒドロカルビル基またはハロゲン置換ヒドロカルビル基が、脂肪族炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を含まないことを意味する。
【0009】
で表わされるCからC10のヒドロカルビル基およびCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基は、より典型的には1から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有する非環式ヒドロカルビル基およびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐状または非分岐状構造を有していてよい。Rで表わされるヒドロカルビル基の例には、これらだけに限定されないが、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルなど;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシルなど;アリール基、例えばフェニルおよびナフチルなど;アルカリール基、例えばトリルおよびキシリルなど;アラルキル基、例えばベンジルやフェネチルなどが含まれる。Rで表わされるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例には、これらだけに限定されないが、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、および2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルなどが含まれる。
【0010】
シリコーン樹脂内で同じであっても異なるっていてもよい、Rで表わされるアルケニル基は、典型的には、2から約10個、あるいは2から6個の炭素原子を有し、および以下に限定されないが、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、およびオクテニルで例示される。一つの実施態様では、Rは主にアルケニル基である。この実施態様では、典型的には、シリコーン樹脂中のRで表わされる基の少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%がアルケニル基である。本明細書において、R中のアルケニル基のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数の、樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を掛けたものと定義する。他の実施態様では、Rは主に水素である。この実施態様では、典型的には、シリコーン樹脂中のRで表わされる基の少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%が水素である。R中の水素のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素に結合した水素のモル数の、樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を掛けたものと定義する。
【0011】
第一の実施態様によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂(A)は次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)
(式中、Rは上述のとおりであり、かつ、Rは、R、または上述により例示したアルケニル基であり、w、x、y、およびzはモル分率である)。式(I)で表わされるシリコーン樹脂は平均で分子あたり少なくとも2個のケイ素に結合したアルケニル基を有する。より具体的には、下付き記号wは、典型的には0から0.8まで、あるいは0.02から0.75まで、あるいは0.05から0.3までの値を有する。下付き記号xは、典型的には0から0.6まで、あるいは0から0.45まで、あるいは0から0.25までの値を有する。下付き記号yは、典型的には0から0.99まで、あるいは0.25から0.8まで、あるいは0.5から0.8までの値を有する。下付き記号zは、典型的には0から0.35まで、あるいは0から0.25まで、あるいは0から0.15までの値を有する。またy+zの合計はゼロよりも大きく、典型的には0.2から0.99、あるいは0.5から0.95、あるいは0.65から0.9である。さらに、w+xの合計は、ゼロとなり得るが、典型的には0.01から0.80、あるいは0.05から0.5、あるいは0.1から0.35である。
【0012】
上記式(I)で表わされるシリコーン樹脂の例には、これらだけに限定されないが、次の式を有するシリコーン樹脂が含まれる:
(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2、(ViMeSiO1/2(MeSiO3/2(PhSiO3/2、(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2(SiO4/2、および(ViMeSiO1/2(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2
(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、かつ、w、y、またはzは、式(I)で上述したとおりである)。前述の式における単位の順序は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。上記式(I)で表わされるシリコーン樹脂の具体例として、これらだけに限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(MeSiO3/20.25(PhSiO3/20.50、(ViMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.1、および(ViMeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.1(PhSiO3/20.75
(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、かつ括弧の外側の下付き数字は、式(I)についてのw、x、y、またはzのいずれかに相当するモル分率を示す)。前述の式における単位の順序は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【0013】
第二の実施態様によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂(A)は次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (II)
(式中、Rは上述のとおりであり、Rは、Rまたは水素原子であり、w、x、y、およびzはモル分率である)。式(II)で表わされるシリコーン樹脂は、平均で1分子あたり少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子を有する。より具体的には、下付き記号wは、典型的には0から0.8まで、あるいは0.02から0.75まで、あるいは0.05から0.3までの値を有する。下付き記号xは、典型的には0から0.6まで、あるいは0から0.45まで、あるいは0から0.25までの値を有する。下付き記号yは、典型的には0から0.99まで、あるいは0.25から0.8まで、あるいは0.5から0.8までの値を有する。下付き記号zは、典型的には0から0.35まで、あるいは0から0.25まで、あるいは0から0.15までの値を有する。またy+zの合計は、ゼロよりも大きく、典型的には0.2から0.99、あるいは0.5から0.95、あるいは0.65から0.9である。さらに、w+xの合計は、ゼロとなり得るが、典型的には0.01から0.80、あるいは0.05から0.5、あるいは0.1から0.35である。
【0014】
上記式(II)で表わされるヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂の例には、これらだけに限定されないが、次の式を有するシリコーン樹脂が含まれる:
(HMeSiO1/2(PhSiO3/2、(HMeSiO2/2(PhSiO3/2(MeSiO3/2、および(MeSiO1/2(HSiO2/2(MeSiO3/2(PhSiO3/2
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつ、w、x、およびyは上述したとおりである)。前述の式における単位の順序は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。上記式(II)で表わされるシリコーン樹脂の具体例として、これらだけ限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
(HMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(HMeSiO2/20.3(PhSiO3/20.6(MeSiO3/20.1、および(MeSiO1/20.1(HSiO2/20.1(MeSiO3/20.4(PhSiO3/20.4
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつ、括弧外の下付き数字はモル分率を示す)。前述の式における単位の順序は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【0015】
式(I)または(II)で表わされるシリコーン樹脂は、典型的には500から50,000まで、あるいは500から10,000まで、あるいは1,000から3,000までの数平均分子量を有する。ここで、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーにより、屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いて測定される。
【0016】
式(I)または(II)で表わされるシリコーン樹脂の25℃での粘度は、典型的には0.01から100,000Pa・秒、あるいは0.1から10,000Pa・秒、あるいは1から100Pa・秒である。
【0017】
式(I)または(II)で表わされるシリコーン樹脂は、典型的には10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を有する(29SiNMRで測定)。
【0018】
式(I)または(II)で表わされるシリコーン樹脂の製造方法は、当技術分野では周知であり;これら樹脂の多くは市販されている。式(I)または(II)で表わされるシリコーン樹脂は、典型的には、クロロシラン前駆体の適切な混合物を、例えばトルエンなどの有機溶剤中で共加水分解することにより製造される。例えば、RSiO1/2単位とRSiO3/2単位を含むシリコーン樹脂は、式RSiClを有する第一化合物と、式RSiClを有する第二化合物とを(式中、RおよびRは、上述により例示したとおりである)、トルエン中で共加水分解して、塩酸水溶液と第一および第二化合物の加水分解物であるシリコーン樹脂を形成させることによって製造できる。塩酸水溶液と、シリコーン樹脂とを分離し、シリコーン樹脂を水で水洗して残余の酸を除去し、さらにシリコーン樹脂を温和な縮合触媒の存在下で加熱して、シリコーン樹脂を所望の粘度に「ボディー化(body)」させる。
【0019】
所望する場合には、シリコーン樹脂を、有機溶剤中、縮合触媒でさらに処理して、ケイ素に結合したヒドロキシ基の含量を低減させることができる。あるいは、塩素以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH、−OC(O)CH、−N(CH、−NHCOCH、および−SCHなどを有する第一化合物または第二化合物を共加水分解してシリコーン樹脂を形成させることができる。シリコーン樹脂の特性は、第一および第二化合物のタイプ、第一化合物と第二化合物とのモル比、縮合度、および製造条件に依存する。
【0020】
架橋剤(B)は、典型的には、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子と反応することができるケイ素結合水素原子またはケイ素結合アルケニル基を有する化合物である。シリコーン樹脂(A)が式(I)を有する場合には、架橋剤(B)は、平均で1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合水素原子、あるいは1分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する。架橋は、シリコーン樹脂(A)中の1分子あたりアルケニル基の平均値と、架橋剤(B)中のケイ素結合水素原子の平均値との合計が4より大きいときに起こると一般に考えられている。架橋剤(B)は、シリコーン樹脂(A)を硬化させるために十分な量で存在する。
【0021】
シリコーン樹脂(A)が式(I)を有する場合には、架橋剤(B)は、典型的には、オルガノ水素シラン、オルガノ水素シロキサン、またはこれらの組合せである。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖状、分岐状、環状または樹脂状であってよい。非環式ポリシランおよびポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は末端位、側鎖位、または末端位および側鎖位の両方に位置していてよい。シクロシランおよびシクロシロキサンは、典型的には、3から12個のケイ素原子、あるいは3から10個のケイ素原子、あるいは3から4個のケイ素原子を有する。
【0022】
オルガノ水素シランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランであってよい。本発明の目的に適するオルガノ水素シランの具体例として、これらだけに限定されないが、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレン、およびポリ(メチルシリレン)メチレンが挙げられる。オルガノ水素シランは次式を有していてよい:
HRSi−R−SiRH (III)
〔式中、Rは、上に定義し、例示したとおりであり、Rは脂肪族不飽和を含まない、次の構造から選択される式を有するヒドロカルビレン基である:
【化1】

(式中、gは1から6である〕。
【0023】
式(III)(RおよびRは、上に定義し、例示したとおりである)を有するオルガノ水素シランの具体例として、これらだけに限定されないが、次の構造から選択される式を有するオルガノ水素シランが挙げられる:
【化2】

【0024】
オルガノ水素シランの製造方法は、当技術分野では公知である。例えば、オルガノ水素シランは、グリニャール試薬と、ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの反応より製造することができる。特に、式HRSi−R−SiRHを有するオルガノ水素シランは、式:Rを有するアリールジハライドを、エーテル中マグネシウムで処理して、相当するグリニャール試薬を製造し、次いで、このグリニャール試薬を式:HR2SiClを有するクロロシランで処理することによって製造することができる(式中、RおよびRは、上に定義し、例示したとおりである。)。
【0025】
オルガノ水素シロキサンはジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンであってよい。Rの大部分がアルケニル基である場合の架橋剤(B)として使用するのに適したオルガノシロキサンの例として、これらだけに限定されないが、次の式を有するシロキサンが挙げられる:
PhSi(OSiMeH)、Si(OSiMeH)、MeSi(OSiMeH)、およびPhSi(OSiMeH)
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである)。
【0026】
の大部分がアルケニル基である場合に本発明の目的に適するオルガノ水素シロキサンの具体例として、これらだけに限定されないが、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、ジメチル水素シロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、ならびにHMeSiO1/2単位、MeSiO1/2単位、およびSiO4/2単位を含む樹脂(式中、Meはメチルである)が挙げられる。
【0027】
オルガノ水素シロキサンはまたオルガノ水素ポリシロキサン樹脂であってもよい。オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、典型的には、RSiO1/2単位(すなわちM単位)および/またはRSiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わせて、RSiO3/2単位(すなわちT単位)、および/またはSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含有する共重合体である(式中、Rは、上に定義し、例示したとおりである)。例えば、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であってよい。
【0028】
で表わされる基は、Rであるか、または少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノシリルアルキル基であるかのいずれかである。Rで表わされるオルガノシリルアルキル基の例として、これらだけに限定されないが、次の構造から選択される式を有する基が挙げられる:
【化3】

−CHCHSiMeH、−CHCHSiMe2nSiMeH、−CHCHSiMe2nSiMePhH、−CHCHSiMePhH、−CHCHSiPhH、−CHCHSiMePhC2nSiPhH、−CHCHSiMePhC2nSiMeH、−CHCHSiMePhOSiMePhH、および−CHCHSiMePhOSiPh(OSiMePhH)
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつ、下付き文字nは2から10までの値を有する)。オルガノ水素ポリシロキサン樹脂中のRで表わされる基の典型的には少なくとも50モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも80モル%は、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノシリルアルキル基である。本明細書において、R中のオルガノシリルアルキル基のモル%は、シリコーン樹脂中のケイ素に結合したオルガノシリルアルキル基のモル数の、樹脂中のR基の合計モル数に対する比に100を掛けたものであると定義する。
【0029】
オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、典型的には、次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2)x(RSiO3/2(SiO4/2 (IV)
(式中、R、R、w、x、y、およびzは、それぞれ上で定義し、例示したとおりである)。
【0030】
オルガノ水素ポリシロキサン樹脂の例として、これらだけに限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/2(PhSiO3/2
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/2(PhSiO3/2
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/2(MeSiO3/2(PhSiO3/2
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/2(PhSiO3/2(SiO4/2、および
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/2((HMeSiCSiMeCHCH)MeSiO1/2(PhSiO3/2
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Cはパラフェニレン基を示し、かつ、w、y、およびzは上で定義したとおりである。前述の式においける単位の順序はいかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。オルガノ水素ポリシロキサン樹脂の具体例として、これらだけに限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.12(PhSiO3/20.88
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(PhSiO3/20.83
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(MeSiO3/20.17(PhSiO3/20.66
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.10、および
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.08((HMeSiCSiMeCHCH)MeSiO1/20.06(PhSiO3/20.86
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Cはパラフェニレン基を示し、かつ、括弧の外の下付き数字はモル分率を示す)。前述の式における単位の順序は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【0031】
式(IV)を有するオルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、
(a)上記式(I)で表わされる式:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
を有するシリコーン樹脂、および(b)1分子あたり平均で2から4個のケイ素結合水素原子を有し且つ1,000未満の分子量を有する有機ケイ素化合物を含む反応混合物を、
(c)ヒドロシリル化触媒、および(d)場合により有機溶剤の存在下で反応させることによって製造することができる。ここで、式中、R、R、w、x、y、およびzはそれぞれ上で定義し、例示したとおりである。ただし、シリコーン樹脂(a)が分子あたり平均で少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有することを条件とし、かつ、(b)中のケイ素結合水素原子の、(a)中のアルケニル基に対するモル比が1.5から5までであることを条件とする。シリコーン樹脂(a)と、少なくとも1種のヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物中の成分(A)として用いられる具体的なシリコーン樹脂とは同じであっても、異なっていてもよい。
【0032】
上で説明したとおり、有機ケイ素化合物(b)は、1分子あたり平均で2から4個のケイ素結合水素原子を有する。あるいは、有機ケイ素化合物(b)は1分子あたり平均で2から3個のケイ素結合水素原子を有する。また上で説明したとおり、有機ケイ素化合物(b)は、典型的には1,000未満、あるいは750未満、あるいは500未満の分子量を有する。有機ケイ素化合物(b)は、いずれも脂肪族不飽和を含まない、ヒロドカルビル基およびハロゲン置換ヒドロカルビル基からなる群から選択されるケイ素結合有機基(Rについて上で定義し、例示したもの)をさらに含む。
【0033】
有機ケイ素化合物(b)は、オルガノ水素シランまたはオルガノ水素シロキサンであってよく、いずれも上で詳細に定義し、例示している。
【0034】
有機ケイ素化合物(b)は、単一のオルガノケイ素化合物であってもよく、二つ以上の異なる有機ケイ素化合物の混合物であってもよく、各ケイ素化合物は上で定義している。例えば、有機ケイ素化合物(b)は、単一のオルガノ水素シラン、二つの異なるオルガノ水素シランの混合物、単一のオルガノ水素シロキサン、二つの異なるオルガノ水素シロキサンの混合物、またはオルガノ水素シランとオルガノ水素シロキサンとの混合物である。有機ケイ素化合物(b)中のケイ素結合水素原子の、シリコーン樹脂(a)中のアルケニル基に対するモル比は通常、1.5から5まで、あるいは1.75から3まで、あるいは2から2.5までである。
【0035】
ヒドロシリル化触媒(c)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウム)を含むよく知られたヒドロシリル化触媒のいずれかであっても、白金族金属含有化合物を含む化合物であってもよい。白金族金属は、ヒドロシリル化反応におけるその高活性度を根拠として、白金であることが好ましい。
【0036】
(c)に適する具体的なヒドロシリル化触媒として、米国特許第3,419,593号でウィリングにより開示されているクロロ白金酸と特定のビニル含有オルガノシロキサンとの錯体が挙げられる。この米国特許を、参照することにより本明細書に援用する。このタイプの触媒は、クロロ白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの反応物である。
【0037】
ヒドロシリル化触媒は、白金族金属を表面に有する固体担体を含む担持型ヒドロシリル化触媒であってもよい。担持触媒は、好都合には、式(IV)で表されるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂から、例えば反応混合物をろ過することによって、分離することができる。担持触媒の例として、これらだけに限定されないが、炭素上の白金、炭素上のパラジウム、炭素上のルテニウム、炭素上のロジウム、シリカ上の白金、シリカ上のパラジウム、アルミナ上の白金、アルミナ上のパラジウム、およびアルミナ上のルテニウムが挙げられる。
【0038】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)と有機ケイ素化合物(b)との付加反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)と有機ケイ素化合物(b)とを合せた重量に基づいて、0.1から1000ppmの白金族金属、あるいは1から500ppmの白金族金属、あるいは5から150ppmの白金族金属を提供するのに十分な濃度である。白金族金属0.1ppm未満では、反応速度が非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属の使用すると、反応速度の増加が認められず、したがって非経済的である。
【0039】
有機溶剤(d)は、少なくとも1種の有機溶剤である。有機溶剤(d)は、非プロトン性または両性非プロトン性の有機溶剤であり、本方法の条件下でシリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、または得られるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂とは反応せず、かつ、成分(a)、成分(b)、およびオルガノ水素ポリシロキサンと混和性である有機溶剤である。
【0040】
本発明の目的に適する有機溶剤(d)の例として、これらだけに限定されないが、飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、およびドデカンなど;シクロ脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、およびメシチレンなど;環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなど;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)など;ハロゲン化アルカン、例えばトリクロロエタンなど;ならびにハロゲン化芳香族炭化水素、例えばブロモベンゼンおよびクロロベンゼンなどが挙げられる。有機溶剤(d)は、単一の有機溶剤であってよく、あるいは二つ以上の異なる有機溶剤を含む混合物であってもよく、各有機溶剤は上に記述したとおりである。有機溶剤(d)の濃度は、反応混合物の合計量に基づいて、典型的には0から99%(w/w)、あるいは30から80%(w/w)、あるいは45から60%(w/w)である。
【0041】
式(IV)で表されるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂を形成させる反応は、ヒドロシリル化反応に適する任意の標準的な反応器で行うことができる。適する反応器には、ガラス反応器またはテフロン(登録商標)・ライニング・ガラス反応器が含まれる。好ましくは、反応器には、撹拌機などの攪拌手段が備え付けられている。また、好ましくは、反応は湿分の不存在下、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中で行われる。
【0042】
シリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、ヒドロシリル化触媒(c)、および場合により有機溶剤(d)を、任意の順序で混合することができる。典型的には、有機ケイ素化合物(b)とヒドロシリル化触媒(c)とを、シリコーン樹脂(a)および場合により有機溶剤(c)を導入する前に混合する。この反応は、典型的には0から150℃までの温度、あるいは室温(約23±2℃)から115℃までの温度で行う。温度が0℃未満であると、反応速度は典型的には非常に遅い。反応時間は、いくつかの因子、例えばシリコーン樹脂(a)および有機ケイ素化合物(b)の構造、ならびに温度などに依存する。反応時間は、室温(約23±2℃)から150℃までの温度で、典型的には1から24時間である。最適な反応時間は日常的な実験により決定することができる。
【0043】
式(IV)で表されるオルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、単離または精製することなく使用することができ、あるいはオルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、ほとんどの有機溶剤(d)から、従来法により蒸発によって分離することができる。例えば、反応混合物は減圧下で加熱することができる。加えて、ヒドロシリル化触媒(c)が上述した担持触媒である場合、反応混合物をろ過することによって、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂をヒドロシリル化触媒(c)から容易に分離することができる。しかし、ヒドロシリル化触媒がオルガノ水素ポリシロキサン樹脂と混ざって残存し、ヒドロシリル化触媒(C)として使用することができる場合もある。
【0044】
架橋剤(B)は、単一の有機ケイ素化合物であっても、二つ以上の異なる有機ケイ素化合物の混合物であってもよく、各有機ケイ素化合物は上述したとおりである。例えば、架橋剤(B)は、単一のオルガノ水素シラン、二つの異なるオルガノ水素シランの混合物、単一のオルガノ水素シロキサン、二つの異なるオルガノ水素シロキサンの混合物、またはオルガノ水素シランとオルガノ水素シロキサンとの混合物であってよい。特に、架橋剤(B)は、架橋剤(B)の合計重量に基づいて、少なくとも0.5%(w/w)、あるいは少なくとも50%(w/w)、あるいは少なくとも75%(w/w)の量の式(IV)を有するオルガノ水素ポリシロキサン樹脂を含み、オルガノ水素シランおよび/またはオルガノ水素シロキサン(オルガノ水素ポリシロキサン樹脂とは異なるもの)をさらに含む混合物であってもよい。
【0045】
架橋剤(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)を硬化(架橋)させるために十分な濃度である。架橋剤(B)の正確の量は、一般に、所望する硬化の程度次第であり、架橋剤(B)中のケイ素結合水素原子のモル数の、シリコーン樹脂(A)中のアルケニル基のモル数に対する比が増すにつれて増大する。架橋剤(B)の濃度は、典型的には、シリコーン樹脂(A)中のアルケニル基の1モルあたり、0.4から2モルのケイ素結合水素原子、あるいは0.8から1.5モルのケイ素結合水素原子、あるいは0.9から1.1モルのケイ素結合水素原子を提供するに十分な濃度である。
【0046】
シリコーン樹脂(A)が式(II)を有する場合には、本発明の目的に適するオルガノシランの具体例として、これらだけに限定されないが、次の式を有するシランが挙げられる:
ViSi、PhSiVi、MeSiVi、PhMeSiVi、PhSiVi、およびPhSi(CHCH=CH
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつ、Viはビニルである)。
【0047】
ヒドロシリル化触媒(C)には、シリコーン樹脂(A)と架橋剤(B)との反応を促進する少なくとも1個のヒドロシリル化触媒が含まれる。一つの実施態様では、ヒドロシリル化触媒(C)はオルガノ水素ポリシロキサン樹脂を製造するための上述のヒドロシリル化触媒(c)と同一である。加えて、ヒドロシリル化触媒(C)は、熱可塑性樹脂中に封止された白金族金属を含むマイクロカプセル化された白金族金属含有触媒であってもよい。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒を含むシリコーン組成物は、周囲条件下で長期間、典型的には数か月またはそれ以上の間安定であるが、熱可塑性樹脂の融点または軟化点より高い温度では急速に硬化する。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒およびそれの製造方法は、米国特許第4,766,176号およびその明細書で引用されている参考文献、ならびに米国特許第5,017,654号で例示されるとおり、当技術分野では周知である。ヒドロシリル化触媒(C)は、単一の触媒であっても、二つ以上の異なる触媒(少なくとも一つの特性、例えば、構造、形態、白金族金属、錯体の配位子、および熱可塑生成樹脂などの特性で異なる触媒)を含む混合物であってもよい。
【0048】
他の実施態様では、ヒドロシリル化触媒(C)は、少なくとも1種の光活性化ヒドロシリル化触媒であってよい。光活性化ヒドロシリル化触媒は、150から800nmの波長を有する放射線に曝すと、シリコーン樹脂(A)と架橋剤(B)のヒドロシリル化を触媒することができる任意のヒドロシリル化触媒である。光活性化ヒドロシリル化触媒は、周知の白金族金属または白金族金属含有化合物を含む任意の周知のヒドロシリル化触媒であってよい。白金族金属には、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウムが含まれる。典型的には、白金族金属は、ヒドロシリル化反応での高い活性化に基づいて、白金である。本発明のシリコーン組成物で使用するための具体的な光活性化ヒドロシリル化触媒の適合性は、日常的な実験により容易に決定することができる。
【0049】
本発明の目的に適する光活性化ヒドロシリル化触媒の具体例として、これらだけに限定されないが、白金(II)β−ジケトナート錯体〔例えば、白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオアート)、白金(II)ビス(2,4−ヘキサンジオアート)、白金(II)ビス(2,4−ヘプタンジオアート)、白金(II)ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオアート)、白金(II)(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオアート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオアート)、など〕;(η−シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体〔例えば、(Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ−Cp)トリメチル白金、および(トリメチルシリル−Cp)トリメチル白金など〕(式中、Cpはシクロペンタジエニルを表す〕;トリアゼンオキシド−遷移金属錯体〔例えば、Pt[CNNNOCH、Pt[p−CN−CNNNOC11、Pt[p−HCOCNNNOC11、Pt[p−CH(CH−CNNNOCH、1,5−シクロオクタジエンPt[p−CN−C4NNNOC11、1,5−シクロオクタジエンPt[p−CHO−CNNNOCH、[(CP]Rh[p−CN−CNNNOC11]、およびPd[p−CH(CHNNNOCHなど〕(式中、xは、1,3,5,11または17である);(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体〔例えば、(η−1,5−シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(η−1,3,5,7−シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(η−2,5−ノルボラジエニル)ジフェニル白金、(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−ジメチルアミノフェニル)白金、(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−アセチルフェニル)白金、および(η−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−トリフルオロメチルフェニル)白金など〕が挙げられる。好ましくは、光活性化ヒドロシリル化触媒は、白金(II)β−ジケトナート錯体であり、さらにより好ましくは、触媒は、白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオアート)である。ヒドロシリル化触媒(C)は、単一の光活性化ヒドロシリル化触媒であっても、二つ以上の異なる光活性化ヒドロシリル化触媒を含む混合物であってもよい。
【0050】
光活性化ヒドロシリル化触媒を製造する方法は、当技術分野では周知である。例えば、白金(II)β−ジケトナートの製造法は、グオらによって報告されている(Chemistry of Materials,1998,10,531−536)。(η−シクロペンタジエニル)−トリアルキル白金錯体の製造法は、米国特許第4,510,094号に開示されている。トリアゼンオキシド−遷移金属錯体の製造法は、米国特許第5,496,961号に開示されている。さらに、(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体の製造法は米国特許第4,530,879号に教示されている。
【0051】
ヒドロシリル化触媒(C)の濃度は、シリコーン樹脂(A)と架橋剤(B)との付加反応を触媒するために十分な濃度である。ヒドロシリル化触媒(C)の濃度は、シリコーン樹脂(A)と架橋剤(B)との合計重量に基づいて、典型的には0.1から1000ppmの白金族金属、あるいは0.5から100ppmの白金族金属、あるいは1から25ppmの白金族金属を与えるのに十分な濃度である。
【0052】
場合により、少なくとも一つのヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物は、さらに(D)シリコーンラバーを含む。このシリコーンラバーは、(i)RSiO(RSiO)SiR、および(ii)RSiO(RSiO)SiRからなる群から選択される式を有する化合物によって例示される(式中、RおよびRは、上で定義し、例示したとおりであり、Rは、Rまたは−Hであり、下付き文字aおよびbはそれぞれ1から4まで、2から4まで、または2から3までの値を有し、かつ、w、x、y、およびzは、上で定義し、例示したとおりである。ただし、シリコーン樹脂およびシリコーンラバー(D)(i)のそれぞれが、1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンラバー(D)(ii)が1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有することを条件とし、かつ、シリコーンラバー(D)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子の、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するモル比が0.01から0.5であることを条件とする。
【0053】
成分(D)(i)として使用に適するシリコーンラバーの具体例として、これらだけに限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーがある:
ViMeSiO(MeSiO)SiMeVi、ViMeSiO(PhSiO)SiMeVi、およびViMeSiO(PhMeSiO)SiMeVi
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、下付き文字aは1から4までの値を有する)。シリコーンラバー(D)(i)は、単一のシリコーンラバーであっても、2以上の異なるシリコーンラバーを含み、各シリコーンラバーが(D)(i)の式を満たしている混合物であってもよい。
【0054】
シリコーンラバー(D)(ii)として使用に適するシリコーンラバーの具体的例として、これらだけに限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーがある:
HMeSiO(MeSiO)SiMeH、HMeSiO(PhSiO)SiMeH、HMeSiO(PhMeSiO)SiMeH、およびHMeSiO(PhSiO)(MeSiO)SiMe
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつ下付き文字bは1から4までの値を有する)。成分(D)(ii)は、単一のシリコーンラバーであっても、各シリコーンラバーが(D)(ii)の式を満たす2つ以上の異なるシリコーンラバーを含む混合物であってもよい。
【0055】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対する、シリコーンラバー(D)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には0.01から0.5、あるいは0.05から0.4、あるいは0.1から0.3である。
【0056】
シリコーンラバー(D)が(D)(i)である場合には、架橋剤(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)およびシリコーンラバー(D)(i)中のケイ素結合アルケニル基のモル数の合計に対する、架橋剤(B)中のケイ素結合水素原子のモル数の比が、典型的には0.4から2、あるいは0.8から1.5、あるいは0.9から1.1となる濃度である。さらに、シリコーンラバー(D)が(D)(ii)である場合には、架橋剤(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基のモル数に対する、架橋剤(B)およびシリコーンラバー(D)(ii)中のケイ素結合水素原子の合計モル数の比が、典型的には0.4から2、あるいは0.8から1.5、あるいは0.9から1.1となる濃度である。
【0057】
ケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子を含有するシリコーンラバーを製造する方法は、当技術分野では周知であり、これらの多くの化合物は市販されている。
【0058】
本発明の別の実施態様では、上述したヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂(A)が、ラバー変性シリコーン樹脂であってよい。ラバー変性シリコーン樹脂は、上述したシリコーン樹脂(A)と次の式を有するシリコーンラバー(D)(iii):
SiO(RSiO)SiR、および
SiO(RSiO)SiR
(式中、RおよびRは上で定義し、例示したとおりであり、cおよびdはそれぞれ、4より大きく1000まで、あるいは10から500まで、あるいは10から50までの値である)
とを、上述したヒドロシリル化触媒(c)および場合により上述した有機溶剤の存在下で反応させることを含む方法によって製造されるラバー変性シリコーン樹脂によって例示される。ただし、シリコーン樹脂(A)が1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンラバー(D)(iii)が1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有することを条件とし、かつ、シリコーン樹脂(A)中ケイ素結合アルケニル基に対する、シリコーンラバー(D)(iii)中のケイ素結合水素原子のモル比が0.01から0.5であることを条件とする。有機溶剤が存在する場合には、ラバー変性シリコーン樹脂は有機溶剤に混和可能であり、沈澱や懸濁を形成しない。
【0059】
シリコーン樹脂(A)、シリコーンラバー(D)(iii)、ヒドロシリル化触媒(c)、および有機溶剤は任意の順序で混合することができる。典型的には、シリコーン樹脂(A)、シリコーンラバー(D)(iii)、および有機溶剤を、ヒドロシリル化触媒(c)の導入前に混合する。
【0060】
反応は、典型的には、室温(約23±2℃)から150℃まで、あるいは室温から100℃までの温度で行われる。反応時間は、シリコーン樹脂(A)およびシリコーンラバー(D)(iii)の構造ならびに温度などを含むいくつかの因子次第である。これらの成分を、典型的には、ヒドロシリル化反応を完了するに十分な時間の間反応させる。このことは、FTIRスペクトロメトリーによって測定して、シリコーンラバー(D)(iii)中に最初に存在していたケイ素結合水素原子の少なくとも95モル%、あるいは少なくとも98モル%、あるいは少なくとも99モル%が、ヒドロシリル化反応で消費されるまで反応させることを意味する。反応時間は、典型的には、室温(約23±2℃)から100℃までの温度で0.5から24時間である。最適な反応時間は日常的な実験により決定することができる。
【0061】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対する、シリコーンラバー(D)(iii)中のケイ素結合水素原子のモル比は、典型的には0.01から0.5まで、あるいは0.05から0.4まで、あるいは0.1から0.3までである。
【0062】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(A)とシリコーンラバー(D)(iii)との付加反応を触媒するに十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、樹脂とラバーとの合計重量に基づいて、0.1から1000ppmの白金族金属を提供するに十分な濃度である。
【0063】
有機溶剤の濃度は通常、反応混合物の合計量に基づいて、0から95%(w/w)、あるいは10から75%(w/w)、あるいは40から60%(w/w)である。
【0064】
ラバー変性シリコーン樹脂は、単離または精製せずに使用することができ、あるいはラバー変性シリコーン樹脂をほとんどの溶剤から従来法により蒸発によって分離することができる。例えば、反応混合物を、減圧下で加熱することができる。さらに、ヒドロシリル化触媒(c)が上述した担持触媒である場合は、このラバー変性シリコーン樹脂を、反応混合物をろ過することによって、ヒドロシリル化触媒(c)から容易に分離することができる。しかし、ラバー変性シリコーン樹脂がラバー変性シリコーン樹脂を製造するために用いたヒドロシリル化触媒(c)から分離しない場合は、ヒドロシリル化触媒(C)として使用することもできる。
【0065】
本発明の、少なくとも1個のヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物は、当技術分野で知られている追加の成分を含むことができる。追加の成分の例としては、これらだけに限定されないが、ヒドロシリル化触媒抑制剤、例えば、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノ−ル、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、ビニルシクロシロキサン、およびトリフェニルホスフィンなど;接着促進剤、例えば米国特許第4,087,585号および同第5,194,649号で教示されている接着促進剤など;染料;顔料;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線安定剤;難燃性付与剤;流動性調節剤;および希釈剤、例えば有機溶剤や反応性希釈剤などが挙げられる。
【0066】
第一コーティング層は、縮合硬化シリコーン樹脂組成物を含んでいてもよい。縮合硬化シリコーン樹脂組成物は、(A)ケイ素に結合した水素原子、ケイ素に結合したヒドロキシ基、またはケイ素に結合した加水分解性基を有する縮合硬化性シリコーン樹脂、(B)場合により、ケイ素に結合した加水分解性基を有する架橋剤、および(C)場合により、縮合触媒を含むシリコーン組成物の硬化物を含む。この硬化物は、(A)、場合により(B)、および場合により(C)を含むシリコーン組成物を硬化させることを含む方法によって得られる。シリコーン樹脂(A)は、典型的には、Mおよび/またはDシロキサン単位と組み合わせて、Tおよび/またはQシロキサン単位を含有する共重合体である。
【0067】
一つの実施態様によれば、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)は次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (V)
(式中、Rは、上で定義し例示したとおりであり、Rは、R、−H、−OH、または加水分解性基であり、かつw、x、y、およびzは、上で定義し例示したとおりであり、かつシリコーン樹脂(A)は、1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子、少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシ基、または少なくとも2個のケイ素結合加水分解性基を有する)。本明細書において用語「加水分解性基」は、ケイ素結合基が、室温(約23±2℃)から100℃までの任意の温度で、数分、例えば30分以内で、触媒の不存在下で水と反応して、シラノール(Si−OH)基を形成することを意味する。Rで表わされる加水分解性基の例としては、これらだけに限定されないが、−Cl、−Br、−OR、−OCHCHOR、CHC(=O)O−、Et(Me)C=N−O−、CHC(=O)N(CH)−、および−ONHが挙げられる(式中、Rは、CからCのヒドロカルビルまたはCからCのハロゲン置換ヒドロカルビル基である)。
【0068】
で表わされるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、典型的には1から8個の炭素原子、あるいは3から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有する非環式のヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐状または非分岐状構造を有していてよい。Rで表わされるヒドロカルビル基の例として、これらだけに限定されないが、非分岐状または分岐状のアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルなど;シクロアルキル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシルなど;フェニル;アルカリール、例えばトリルおよびキシリルなど;アラルキル、例えばベンジルおよびフェネチルなど;アルケニル、例えばビニル、アリル、およびプロペニルなど;アリールアルケニル、例えばスチリルなど;およびアルキニル、例えばエチニルおよびプロピニルなどが挙げられる。Rで表わされるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、これらだけに限定されないが、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、およびジクロロフェニルなどがある。
【0069】
典型的には、シリコーン樹脂中の基Rの1モル%から30モル%、あるいは1から15モル%は、水素、ヒドロキシ、または加水分解性基である。本明細書において、R中の基のモル%は、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)中のR基の合計モル数に対する、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)中のケイ素に結合した水素、ヒドロキシおよび加水分解性基のモル数の比に、100を掛けたものと定義する。
【0070】
縮合硬化性シリコーン樹脂(A)の例としては、これらだけに限定されないが、次の式を有するシリコーン樹脂が挙げられる:
(Me(MeO)SiO2/2(MeSiO3/2、(Ph(HO)SiO2/2(PhSiO3/2、(MeSiO1/2(CHCOOSiO3/2(SiO4/2、(Ph(MeO)SiO2/2(MeSiO3/2(PhSiO3/2、(Ph(MeO)(HO)SiO1/2(MeSiO3/2(PhSiO3/2(PhSiO2/2(PhMeSiO2/2、(PhMe(MeO)SiO1/2(Ph(HO)SiO2/2(MeSiO3/2(PhSiO3/2(PhMeSiO2/2、および(Ph(HO)SiO2/2(PhSiO3/2(MeSiO3/2(PhMeSiO2/2
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつw、x、y、およびzは上に定義したとおりであり、下付き文字yは、シリコーン樹脂が500から50,000までの数平均分子量を有することとなる値である)。前述の式における単位の順序は、本発明の範囲を限定するもの解されるべきではない。
【0071】
縮合硬化性シリコーン樹脂(A)の具体例としては、これらだけに限定されないが、次の式を有するシリコーン樹脂が挙げられる:
(Me(MeO)SiO2/20.05(MeSiO1/20.75(SiO4/20.2
(Ph(HO)SiO2/20.09(MeSiO3/20.67(PhSiO3/20.24
(Ph(MeO)SiO2/20.05(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.35(PhSiO2/20.1(PhMeSiO2/20.05
(PhMe(MeO)SiO1/20.02(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.03
および(Ph(HO)SiO2/20.04(PhMe(MeO)SiO1/20.03(PhSiO3/20.36(MeSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.47
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外側の下付き数字はモル分率を示す)。前述の式における単位の順序は、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【0072】
上で説明したとおり、式(V)で表わされる縮合硬化性シリコーン樹脂(A)は、典型的には500から50,000までの数平均分子量(M)を有する。あるいは、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)は、500から10,000まで、あるいは800から3,000までのMを有していてもよい。ここで、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによって、屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いて測定する。
【0073】
縮合硬化性シリコーン樹脂(A)の25℃での粘度は、典型的には0.01Pa・秒から固体、あるいは0.1から10,000Pa・秒、あるいは1から100Pa・秒である。式(V)で表わされる縮合硬化性シリコーン樹脂(A)は、29Si NMRで測定して、10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含む。
【0074】
式(V)で表わされる縮合硬化性シリコーン樹脂(A)の製造方法は、当技術分野で周知であり、これらの樹脂の多くが市販されている。式(V)で表わされる縮合硬化性シリコーン樹脂(A)は、典型的には、例えばトルエンなどの有機溶剤中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することによって製造することができる。例えば、RSiO1/2単位およびRSiO3/2単位を含むシリコーン樹脂は、式RSiClを有する第一化合物と式RSiClを有する第二化合物とをトルエン中で共加水分解することにより製造することができる(式中、RおよびRは上で定義し、例示したとおりである)。共加水分解プロセスは、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物に関して上で記載した。
【0075】
別の実施態様では、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)は、
(i)次式:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
を有するシリコーン樹脂および(ii)上記(i)の前駆体から選択される有機ケイ素化合物と、
(iii)次式:
SiO(RSiO)SiR
を有するシリコーンラバーと
を、水、(iv)縮合触媒および(v)有機溶剤の存在下で反応させることによって製造されるラバー変性シリコーン樹脂であってよい。式中、RおよびRは、上で定義し例示したとおりであり、Rは、Rまたは加水分解性基であり、mは2から1,000まで、あるいは4から500まで、あるいは8から400までであり、w、x、y、およびzは上で定義し例示したとおりであり、かつ、シリコーン樹脂(i)は、1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシまたはケイ素結合加水分解性基を有し、シリコーンラバー(iii)は、1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合加水分解性基を有し、かつ、シリコーン樹脂(i)中のケイ素結合ヒドロキシまたは加水分解性基に対するシリコーンラバー(iii)中のケイ素結合加水分解性基のモル比が0.01から1.5、あるいは0.05から0.8、あるいは0.2から0.5である。典型的には、シリコーン樹脂中の基Rの1モル%から30モル%、あるいは1モル%から15モル%が水素、ヒドロキシ、または加水分解性基である。
【0076】
シリコーン樹脂(i)は、典型的には500から50,000まで、あるいは500から10,000まで、あるいは800から3,000までの数平均分子量を有する。ここで、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによって、屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いて測定する。
【0077】
シリコーン樹脂(i)として使用に適するシリコーン樹脂の具体例としては、これらだけに限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
(Me(MeO)SiO2/2(MeSiO3/2、(Ph(HO)SiO2/2(PhSiO3/2、(Ph(MeO)SiO2/2(PhSiO3/2(MeSiO3/2(PhSiO3/2(PhMeSiO2/2、および(CHCOOSiO3/2(PhSiO3/2(SiO4/2(MeSiO2/2(PhSiO2/2
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつx、y、およびzは上で定義したとおりであり、下付き文字yは、シリコーン樹脂が500から50,000までの数平均分子量を有することになる値である)。前述の式における単位の順序は、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【0078】
シリコーン樹脂(i)として使用に適するシリコーン樹脂の具体例としては、これらだけに限定されないが、次の式を有する樹脂が挙げられる:
(Ph(HO)SiO2/20.03(PhSiO3/20.37(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、および(CHCOOSiO3/20.06(PhSiO3/20.3(SiO4/20.04(MeSiO2/20.2(PhSiO2/20.4
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外側の下付き数字はモル分率を示す)。前述の式における単位の順序は、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。シリコーン樹脂(i)は、単一のシリコーン樹脂であっても、各シリコーン樹脂が特定した式を有する二つ以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってもよい。
【0079】
本明細書において用語「加水分解性前駆体」は、シリコーン樹脂(i)の製造用の開始物質(前駆体)としての使用に適する加水分解性基含有シランを示す。加水分解性前駆体(ii)は、次式:RSiX、RSiX、RSiX、およびSiX(式中、R、R、およびXは、上で定義し例示したとおりである)で表すことができる。
【0080】
加水分解性前駆体(ii)の具体例として、これらだけに限定されないが、次式:MeViSiCl、MeSiCl、MeSi(OEt)、PhSiCl、MeSiCl、MeSiCl、PhMeSiCl、SiCl、PhSiCl、PhSi(OMe)、MeSi(OMe)、PhMeSi(OMe)、およびSi(OEt)(式中、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルである)を有するシランが挙げられる。
【0081】
シリコーンラバー(iii)の具体例としては、これらだけに限定されないが、次の式を有するシリコーンラバーが挙げられる:
(EtO)SiO(MeSiO)55Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)16Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)386Si(OEt)、および(EtO)MeSiO(PhMeSiO)10SiMe(OEt)(式中、Meはメチルであり、Etはエチルである)。
【0082】
反応は、典型的には、室温(約23±2℃)から180℃、あるいは室温から100℃までの温度で行う。反応時間は、シリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)の構造ならびに温度を含むいくつかの因子次第である。これらの成分を、典型的には、縮合反応が完了するのに十分な時間の間反応させる。このことは、29SiNMRスペクトロメトリーで測定して、シリコーンラバー(iii)中に当初存在していたケイ素結合加水分解性基の少なくとも40モル%、あるいは少なくとも65モル%、あるいは少なくとも90モル%が縮合反応で消費されるまで、これらの成分を反応させることを意味する。反応時間は、室温(約23±2℃)から100℃までの温度で、典型的には1から30時間である。最適な反応時間は、日常的な実験により決定することができる。
【0083】
適する縮合触媒(iv)を下記に詳細に記述する。適する有機溶剤(v)は、上記シリコーンラバー(iii)との関連で上述した。縮合触媒(iv)の濃度は、シリコーン樹脂(i)とシリコーンラバー(iii)との縮合反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、縮合触媒(iv)の濃度は、シリコーン樹脂(i)の重量に基づいて、0.01から5%(w/w)、あるいは0.01から3%(w/w)、あるいは0.05から2.5%(w/w)である。有機溶剤(v)の濃度は、反応混合物の合計重量に基づいて、典型的には10から95%(w/w)、あるいは20から85%(w/w)、あるいは50から80%(w/w)である。
【0084】
反応混合物中の水の濃度は、有機ケイ素化合物中の基Rの性質およびシリコーンラバー中のケイ素結合加水分解性基の性質次第である。シリコーン樹脂(i)が加水分解性基を有する場合には、水の濃度は、シリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)中の加水分解性基の加水分解をもたらすのに十分な濃度である。例えば、水の濃度は、混合したシリコーン樹脂(i)およびシリコーンラバー(iii)中の加水分解性基1モルあたり、典型的には0.01から3モル、あるいは0.05から1モルまでである。シリコーン樹脂(i)が加水分解性基を有しない場合には、ほんの微量、例えば100ppmの水が反応混合物に必要とされる。微量の水は、通常、反応物および/または溶剤中に存在している。
【0085】
上で説明したとおり、少なくとも1つの縮合硬化性シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物は、架橋剤(B)をさらに含むことができる。架橋剤(B)は、式:RSiX4−q(式中、RはCからCのヒドロカルビルまたはCからCのハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは加水分解性基であり、かつqは0または1である)を有する。Rで表わされるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基、ならびにXで表わされる加水分解性基は、上述し、例示したとおりである。
【0086】
架橋剤(B)の具体例として、これらだけに限定されないが、アルコキシシラン、例えばMeSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHSi(OCHCHCH、CHSi[O(CHCH、CHCHSi(OCHCH、CSi(OCH、CCHSi(OCH、CSi(OCHCH、CH=CHSi(OCH、CH=CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CHSi(OCHCHOCH、CFCHCHSi(OCHCHOCH、CH=CHSi(OCHCHOCH、CH=CHCHSi(OCHCHOCH、CSi(OCHCHOCH、Si(OCH、Si(OC、Si(OCなど;有機アセトキシシラン、例えばCHSi(OCOCH、CHCHSi(OCOCH、およびCH=CHSi(OCOCHなど;有機イミノキシシラン、例えばCHSi[O−N=C(CH)CHCH、Si[O−N=C(CH)CHCH、およびCH=CHSi[O−N=C(CH)CHCHなど;有機アセトアミドシラン、例えばCHSi[NHC(=O)CH、およびCSi[NHC(=O)CHなど;アミノシラン、例えばCHSi[NH(s−C)]およびCHSi(NHC11など;ならびに有機アミノキシシランが挙げられる。
【0087】
架橋剤(B)は単一のシランであっても、各シランは上述されたとおりである二つ以上の異なるシランの混合物であってもよい。また、トリ−およびテトラ−官能性シランは当技術分野で周知であり、これらシランの多くは市販されている。
【0088】
シリコーン組成物に架橋剤(B)が存在する場合には、その濃度は、縮合硬化性シリコーン樹脂を硬化(架橋)するために十分な濃度である。架橋剤(B)の正確な量は、所望する硬化度に次第であり、硬化度は一般に、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基のモル数に対して、架橋剤(B)中のケイ素結合加水分解性基のモル数の比率が増すにつれて増加する。典型的には、架橋剤(B)の濃度は、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基1モル当たり、0.2から4モルのケイ素結合加水分解性基を提供するために十分な濃度である。架橋剤(B)の最適量は、日常的な実験で容易に決定することができる。
【0089】
縮合触媒(C)は、ケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進して、Si−O−Si結合を形成するために典型的に用いられる任意の縮合触媒である。縮合触媒の例としては、これらだけに限定されないが、アミン類、ならびに、鉛、スズ、亜鉛および鉄のカルボン酸との錯体が挙げられる。特に、縮合触媒(C)は、スズ(II)化合物およびスズ(IV)化合物、例えばスズジラウラート、スズジオクトエート、およびテトラブチルスズなど;およびチタニウム化合物、例えばチタニウムテトラブトキシドなどから選択することができる。
【0090】
縮合触媒(C)が存在する場合には、その濃度は、典型的には、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)の合計重量に基づいて、0.1から10%(w/w)、あるいは0.5から5%(w/w)、あるいは1から3%(w/w)である。
【0091】
シリコーン組成物が縮合触媒(C)を含む場合には、シリコーン組成物は、典型的には、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)と縮合触媒(C)が別の部分とされる2液型組成物である。
【0092】
本発明の少なくとも1種の縮合硬化性シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物は、当技術分野で公知であり、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物に関して上述した追加の成分と同じ追加の成分を含むことができる。
【0093】
さらにもう一つの実施態様では、コーティング層は、フリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物を含んでいてもよい。フリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物は、(A)フリーラジカル硬化性シリコーン樹脂と、(B)場合により架橋剤と、(C)場合によりフリーラジカル開始剤(フリーラジカル光開始剤または有機過酸化物)とを含むシリコーン組成物の硬化物を含む。この硬化物は、(A)、任意で(B)、および任意で(C)を含むシリコーン組成物を硬化することを含む方法で得ることができる。
【0094】
シリコーン樹脂(A)は、(i)フリーラジカル光開始剤の存在下でシリコーン樹脂を150から800nmの波長を有する放射線に曝す方法、(ii)有機過酸化物の存在下でシリコーン樹脂(A)を加熱する方法、および(iii)電子線にシリコーン樹脂(A’’’’)を曝す方法から選ばれる少なくとも一つの方法によって硬化(すなわち、架橋)させることができる。シリコーン樹脂(A)は、典型的には、Mおよび/またはDシロキサン単位と組み合わせて、Tシロキサン単位および/またはQシロキサン単位を含有する共重合体である。
【0095】
例えば、シリコーン樹脂(A)は次式を有する:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (VI)
(式中、Rは、上で定義し例示したとおりであり、RはR、アルケニル、またはアルキニルであり、かつw、x、y、およびzは上で定義し例示したとおりである)。
【0096】
で表わされるアルケニル基は、同一であっても異なっていてもよく、上記Rの記述で定義し例示したとおりである。
【0097】
で表わされるアルキニル基は、同一であっても異なっていてもよく、典型的には2から10個の炭素原子、あるいは2から6個の炭素原子を有し、これらだけに限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ヘキシニル、およびオクチニルによって例示される。
【0098】
シリコーン樹脂(A)は、典型的には500から50,000、あるいは500から10,000、あるいは1,000から3,000までの数平均分子量(M)を有する。分子量はゲル透過クロマトグラフィーによって、屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標準液を用いて測定される。
【0099】
シリコーン樹脂(A)は、典型的には、29Si NMRで測定して、10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満のケイ素結合ヒドロキシ基を有する。
【0100】
本発明の目的に適するシリコーン樹脂(A)の例としては、これらだけに限定されないが、次の式を有するシリコーン樹脂が挙げられる:
(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2、(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2、(ViMeSiO1/2(MeSiO3/2(PhSiO3/2、(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2(SiO4/2、および(ViMeSiO1/2(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2
(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、かつ、w、y、およびzは上で定義したとおりである)。前述の式における単位の順序は、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。これらのシリコーン樹脂の具体例として、次の式を有するシリコーン樹脂が挙げられる:
(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(MeSiO3/20.25(PhSiO3/20.50、(ViMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.1、および(ViMeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.1(PhSiO3/20.75
(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、かつ、括弧の外側の下付き数字はモル分率を示す)。前述の式における単位の順序は本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【0101】
架橋剤(B)は、(i)1分子あたり少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物、(ii)1分子あたり少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1種の有機化合物、または(iii)上記(i)と(ii)とを含む混合物から選択される不飽和化合物によって例示される(ここで、不飽和化合物は500未満の分子量を有する)。あるいは不飽和化合物は、400未満、あるいは300未満の分子量を有する。不飽和化合物は、直鎖状、分岐状、または環式の構造を有していてよい。
【0102】
有機ケイ素化合物(i)は、オルガノシランまたはオルガノシロキサンである。オルガノシランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランであってよい。同様に、オルガノシロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンであってよい。シクロシランおおびシクロシロキサンは、典型的には、3から12個のケイ素原子、あるいは3から10個のケイ素原子、あるいは3から4個のケイ素原子を有する。非環式ポリシランおよびポリシロキサンでは、ケイ素結合アルケニル基は、末端位、側鎖位、または末端位と側鎖位との両方に位置していてよい。
【0103】
オルガノシランの具体例として、これらだけに限定されないが、次の式を有するシランが挙げられる:
ViSi、PhSiVi、MeSiVi、PhMeSiVi、PhSiVi、およびPhSi(CHCH=CH
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルである)。
【0104】
オルガノシロキサンの具体例としては、これらだけに限定されないが、次の式を有するシロキサンが挙げられる:
PhSi(OSiMeVi)、Si(OSiMeVi)、MeSi(OSiMeVi)、およびPhSi(OSiMeVi)
(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルである)。
【0105】
有機化合物(ii)は、1分子あたり少なくとも1個の脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する任意の有機化合物である(ただし、この化合物が、シリコーン樹脂(A)が硬化してシリコーン樹脂膜を形成することを抑制しないことを条件とする)。有機化合物(ii)は、アルケン、ジエン、トリエン、またポリエンであってよい。さらに、非環式有機化合物では、炭素−炭素二重結合は、末端位、側鎖位、または末端位と側鎖位の両方に位置していてよい。
【0106】
有機化合物(ii)は、脂肪族炭素−炭素二重結合以外の官能基を1個以上含有していてよい。適する官能基の例としては、これらだけに限定されないが、−O−、>C=O、−CHO、−CO−、−C≡N、−NO、>C=C<、−C≡C−、−F、−Cl、−Br、および−Iが挙げられる。本発明の少なくとも1つのフリーラジカル硬化性シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物において用いる特定の不飽和有機化合物の適合性は、日常的な実験で容易に決定することができる。
【0107】
有機化合物(ii)は、室温で液状または固体状態であってよい。また、この有機化合物は、少なくとも1種のフリーラジカル硬化性シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物に、溶解性であっても、部分的に溶解性であっても、あるいは不溶性であってもよい。この有機化合物の沸点は、分子量、構造、および化合物中の官能基の数と種類次第であり、広範囲にわたってさまざまである。好ましくは、この有機化合物は、組成物の硬化温度よりも高い通常の沸点を有する。さもなければ、この有機化合物の相当量が硬化中に蒸発によって除去される可能性がある。
【0108】
脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物(ii)の例としては、これらだけに限定されないが、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ヘキサジエニルベンゼン、および1,2−ジエテニルシクロブタンが挙げられる。
【0109】
この不飽和化合物は、単一の不飽和化合物であっても、各不飽和化合物が上述とおりである二つ以上の異なる不飽和化合物を含む混合物であってもよい。例えば、不飽和化合物は、単一のオルガノシラン、2個の異なるオルガノシランの混合物、単一のオルガノシロキサン、2個の異なるオルガノシロキサンの混合物、オルガノシランとオルガノシロキサンとの混合物、単一の有機化合物、2個の異なる有機化合物の混合物、オルガノシランと有機化合物との混合物、またはオルガノシロキサンと有機化合物との混合物であってよい。
【0110】
架橋剤(B)の濃度は、典型的には、シリコーン組成物の合計重量に基づいて、0から70%(w/w)、あるいは10から50%(w/w)、あるいは20から40%(w/w)である。
【0111】
ケイ素結合アルケニル基を含有するオルガノシランおよびオルガノシロキサンならびに脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物の製造法は当技術分野で周知であり、これらの化合物の多くは市販されている。
【0112】
フリーラジカル開始剤(C)は、典型的には、フリーラジカル光開始剤または有機過酸化物である。さらに、フリーラジカル光開始剤は、200から800nmの波長を有する放射線に曝されるとシリコーン樹脂の硬化(架橋)を開始させることができる任意のフリーラジカル光開始剤である。
【0113】
フリーラジカル光開始剤(C)の例としては、これらだけに限定されないが、ベンゾフェノン;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;ハロゲン化ベンゾフェノン;アセトフェノン;α−ヒドロキシアセトフェノン;クロロアセトフェノン、例えばジクロロアセトフェノンおよびトリクロロアセトフェノンなど;ジアルコキシアセトフェノン、例えば2,2−ジエトキシアセトフェノンなど;α−ヒドロキシアルキルフェノン、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなど;α−アミノアルキルフェノン、例えば2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノンなど;ベンゾイン;ベンゾインエーテル、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルなど;ベンジルケタール、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなど;アシルホスフインオキシド、例えばジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなど;キサントン誘導体;チオキサントン誘導体;フルオレノン誘導体;メチルフェニルグリオキシレート;アセトナフトン;アントラキノン誘導体;芳香族化合物のスルホニルクロライド;ならびにO−アシルα−オキシミノケトン、例えば1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。
【0114】
フリーラジカル光開始剤(C)は、ポリシランであってもよい。ポリシランは、例えば、米国特許第4,260,780号でウエストにより明示されているフェニルメチルポリシラン(この特許におけるフェニルメチルポリシランに関する開示を、に参照により本明細書に組み込む);米国特許第4,314,956号でベイニィらにより明示されているアミン化されたメチルポリシラン(この特許におけるアミン化メチルシランに関する開示を、参照によって本明細書に組み込む);ピーターソンらの米国特許第4,276,424号のメチルポリシラン(この特許におけるメチルポリシランに関する開示を、参照によって本明細書に組み込む);および、米国特許第4,324,901号でウェストらにより明示されているポリシラスチレン(この特許におけるポリシラスチレンに関する開示を、参照によって本明細書に組み込む)などである。
【0115】
フリーラジカル光開始剤は、単一のフリーラジカル光開始剤であっても、二つ以上の異なるフリーラジカル光開始剤の混合物であってもよい。フリーラジカル光開始剤の濃度は、典型的には、シリコーン樹脂(A)の重量に基づいて、0.1から6%(w/w)、あるいは1から3%(w/w)である。
【0116】
フリーラジカル開始剤は、有機過酸化物であってもよい。有機過酸化物の例としては、ジアロイルペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジ−p−クロロベンゾイルペルオキシド、およびビス−2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドなど;ジアルキルペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)ヘキサンなど;ジアラルキルペルオキシド、例えばジクミルペルオキシドなど;アルキルアラルキルペルオキシド、例えばt−ブチル−クミルペルオキシドおよび1,4−ビス(t−ブチルぺルオキシイソプロピル)ベンゼンなど;ならびに、アルキルアロイルペルオキシド、例えば過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、およびt−ブチルペルオクトエートなどが挙げられる。
【0117】
有機過酸化物は、単一の過酸化物であっても、二つ以上の異なる有機過酸化物からなる混合物であってもよい。有機過酸化物の濃度は、典型的には、シリコーン樹脂(A)の重量に基づいて、0.1から5%(w/w)、あるいは0.2から2%(w/w)である。
【0118】
シリコーン樹脂(A)を含むシリコーン組成物は、少なくとも1種の有機溶剤をさらに含んでいてよい。有機溶剤は、シリコーン樹脂(A)または追加の成分と反応せず、かつ、シリコーン樹脂(A)と混和性である任意の非プロトン性または双極性非プロトン性有機溶剤であってよい。有機溶剤の例としては、これらだけに限定されないが、飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、およびドデカンなど;シクロ脂肪族炭化水素、例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサンなど;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、およびメシチレンなど;環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなど;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)など;ハロゲン化アルカン、例えばトリクロロエタンなど;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えばブロモベンゼンおよびクロロベンゼンなどが挙げられる。有機溶剤は、単一の有機溶剤であっても、各有機溶剤が上述したとおりである二つ以上の異なる有機溶剤を含む混合物であってもよい。
【0119】
有機溶剤の濃度は、典型的には、シリコーン樹脂(A)を含むシリコーン組成物の合計重量に基づいて、0から99%(w/w)、あるいは30から80%(w/w)、あるいは45から60%(w/w)である。
【0120】
シリコーン樹脂(A)を含むシリコーン組成物は、追加の成分を含んでいてもよく、追加の成分には、これらだけに限定されないが、シリコーンラバー;不飽和化合物;フリーラジカル開始剤;有機溶剤;紫外線安定剤;増感剤;染料;難燃剤;酸化防止剤;充填剤、例えば補強用充填剤、増量用充填剤、および伝導性充填剤など;並びに接着促進剤が含まれる。
【0121】
上述したシリコーン樹脂(A)を含むシリコーン組成物が一種以上の追加の成分、例えばフリーラジカル開始剤を含む場合には、組成物は、シリコーン樹脂と任意の成分とを一つのパーツに含む一液型組成物であってよく、あるいは、成分を二つ以上のパーツに含む多液型組成物であってもよい。
【0122】
第一コーティング層または該第二コーティング層は、上述したとおりの有機ポリマーまたは硬化シリコーン樹脂組成物であってよい。ただし、第一コーティング層または第二コーティング層の少なくとも一つが、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、またはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選ばれる硬化シリコーン樹脂組成物であることを条件とする。有機ポリマーは、C−C骨格鎖またはC、N、Oを含有するヘテロ骨格鎖を有する任意の有機ポリマーであってよい。これらの有機ポリマーの例としては、これらだけに限定されないが、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエーテル、エポキシポリマー、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリホスファゼン、ポリサルファイト(Polysulfite)、ポリシランなどが挙げられる。しかし、第一コーティング層と、第二コーティング層とは、それらの組成に関して異なっていなければならない。第一の層が第二の層とは異なる特徴には、これらだけに限定されないが、シリコーン樹脂の量、組成、もしくは構造、または上述したシリコーン組成物中の任意の他の追加の成分の量、組成もしくは構造が含まれる。一つの実施態様では、第一コーティング層はヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物であり、第二コーティング層が縮合硬化シリコーン樹脂組成物である。他の実施態様では、第一コーティング層がヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物であり、第二コーティング層は有機ポリマーである。別の実施態様では、第一コーティング層は有機ポリマーであり、第二コーティング層がヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物である。しかし、第一コーティング層と第二コーティング層との両方がヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物を含む場合は、上で記述された、成分(A)、または(B)、または(C)、または場合により(D)の量またはタイプが異なっている。これらの例は、いかなる意味においても、本発明を制限することを意図するものではない。
【0123】
本発明は、また、上記言及した二つのコーティング層に加えて、追加の層が存在し得ることをも意図している。例えば、製造品は、第三、第四、第五、第六などのコーティング層をさらに含むことができる。ここで、追加のコーティング層は、有機ポリマー、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物を含む。当業者であれば、有機ポリマーまたは硬化シリコーン樹脂組成物を含むこれらのコーティング層を、任意の順序で配置することができることを十分理解するであろう。
【0124】
上述の組成物のガラス基板への適用は、固体基材にコーティングを施す普通に用いられている方法であってよく、例えばスピンコート法、ナイフコート法、フローコート法、スプレー法、はけ塗り法、塗装、キャスティング、浸漬コート法、ロッドコート法、ブレードコート法、ラミネート法、エアーナイフコート法、グラビアコート法、フォワード・リバースロールコート法、スロット・押出しコート法、スライドコート法、およびカーテンコート法などが挙げられる。上で言及したとおり、コーティング層は、コーティング層が硬化する前または硬化した後にガラス基板に施すことができる。
【0125】
ガラス基板の少なくとも一部は、上述したコーティング層で被覆されていなければならない。しかし、典型的には、各コーティングの一様な層がガラス基板の上に広がり、典型的にはガラス基板の有効な表面すべてがコーティング層で塗布されるように、各コーティング層の均質なブレンドをガラス基板に施す。ガラス基板の両面を、コーティング層で塗布することができることも本発明は意図している。ガラス基板上のコーティング層は、典型的には0.010μmから20μm、あるいは0.050μmから10μm、あるいは0.100μmから5μmまでの組合せた合計の厚さを有する。
【0126】
あるいは、上述の組成物を含むコーティング層は、コーティングを固体基材に接着するために有用な任意の従来の接着剤を用いてガラス基板に接着させることもできる。
【0127】
本発明の別の実施態様では、製造品は、1枚以上の追加のガラス基板をさらに含んでいてもよい。言い換えれば、本発明の多層組成物は、2枚以上のガラス基板間の中間層としての役割を果たすことができる。したがって、モノシリック構造の例では、被覆された物品は、一つのコーティング層だけを含む。ここで、一体となって被覆された物品は、窓ユニットなどの部品に使用することができる。ラミネートされた車両用フロントガラスは、中間層を有する第一および第二のガラス基板を含む。特定の実施態様では、これらのラミネートの基板の一つがその内側表面で上述の組成物を担持している。窓ユニットに関しては、窓ユニットは二つ以上の相隔たるガラス基板を備えていてよい。窓ユニットの例には、例えば被覆されたガラス基板に別のガラス基板が隙間をもって連結された被覆されたガラス基板であって、同隙間が上述の多層組成物からなるコーティング層で満たされているものが含まれる。別の窓ユニットの例は、2枚以上の相隔たる透明ガラス基板を備えたものであり、その1枚が本明細書における特定の場合の組成物で被覆されており、ガラス基板の隙間は0.030から500mm、あるいは0.040から0.500mmである。特定の実施態様では、組成物は、隙間に向かい合ういずれかのガラス基板の内面に施される。したがって、本発明は、製造品が、交互のガラス基板層と、それらの間にはさまれた多層組成物を含む上述したコーティング層とを含む多層構造を有することを意図している。
【0128】
次の実施例は、本発明の好ましい態様を説明することを意図している。以下の実施例で開示す技術は、発明者によって本発明の実施においてうまく機能することが見出された技術を表し、実施のための好ましい態様を構成するものであると考えることができる。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、開示されている具体的な態様に多くの変更を行うことができ、かつ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同様な、類似した結果を得ることができることが考慮されるべきである。すべてのパーセントは重量パーセントである。
【実施例】
【0129】
シリコーン組成物Aの製法:
トリメトキシフェニルシラン(200g)、テトラメチルジビニルジシロキサン(38.7g)、脱イオン水(65.5g)、トルエン(256g)、およびトリフルオロメタンスルホン酸(1.7g)を、ディーン・スターク・トラップと温度計とを備える三口丸底フラスコ中で混合した。混合物を、60から65℃で2時間加熱した。その後、混合物を加熱還流させ、水およびメタノールを、ディーン・スターク・トラップを用いて除去した。混合物の温度が80℃に達し、水およびメタノールの除去が完了すると、混合物を50℃未満に冷却した。炭酸カルシウム(3.3g)および水(約1g)を混合物に添加した。その後、混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、水酸化カリウム(0.17g)を添加した。次いで、この混合物を加熱還流し、水をディーン・スターク・トラップを用いて除去した。反応物の温度が120℃に達し、水の除去が完了すると、混合物を40℃未満に冷却した。クロロジメチルビニルシラン(0.37g)をこの混合物に添加し、混合を室温で1時間続けた。混合物を濾過して、式:(PhSiO3/20.75(ViMeSiO1/20.25を有するシリコーン樹脂(以下「シリコーン樹脂1」という)のトルエン溶液を得た。シリコーン樹脂1は、約1700の重量平均分子量を有し、約1440の数平均分子量を有し、かつ、約1モル%のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する。溶液の量を調節して、トルエン中79.5重量%のシリコーン樹脂1を含む溶液を製造した。溶液中のシリコーン樹脂1の濃度は、溶液のサンプル(2.0g)をオーブン中150℃で1.5時間乾燥した後の重量損失を測定することによって決定した。
【0130】
上で製造したシリコーン樹脂1と、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとを、これら二つの成分の相対量が、29SiNMRおよび13CNMRにより測定して、ケイ素結合ビニル基に対するケイ素結合水素原子のモル比(SiH/SiVi)が1.1:1を達成するために十分となる量で、混合した。この混合物を、トルエンを除去するために、5mmHg(667Pa)の圧力下80℃で加熱した。次いで、少量の1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを、モル比SiH/SiViを1.1:1に戻すために混合物に添加した。この混合物に、樹脂の重量に基づいて0.5重量%の量の、1000ppmの白金を含有する白金触媒を添加した。この触媒は、大幅にモル過剰の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの存在下、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金(0)錯体をトリフェニルホスフィンで処理して、トリフェニルホスフィンの白金に対するモル比を約4:1とすることによって製造した。得られたシリコーン組成物を、以下「シリコーン組成物A」と表示する。
【0131】
[比較例1]
0211 Microglass(登録商標)板をコーニング社から入手した。シリコーン組成物Aを、メチルイソブチルケトン(MIBM)で25重量%に希釈した。希釈した組成物を、ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体の形態の白金5ppmと混合した。触媒化した溶液を、70マイクロメートル厚のガラス板上に、スピン速度2000rpmかつスピン時間50秒でスピンコートした。被覆ガラス板は換気フード中に置き、3時間乾燥し、空気循環オーブンに移して100℃で1時間、次いで160℃で1時間、次いで200℃で1時間硬化させた。硬化後、ガラス板の反対側も同様にコーティングし、硬化させた。被覆の硬さを増すために、硬化ガラス板を350℃の窒素中で1時間アニーリング(焼きなまし)を行った。
【0132】
[比較例2]
0211 Microgalss(登録商標)板を、比較例1の方法に従ってコーティングした。シリコーン組成物Aの濃度を、75重量%に変更し、被覆8.5μm厚のものを得た。他の製法条件は比較例1と同じであった。
【0133】
[比較例3]
0211 Microglass(登録商標)板を、比較例1の方法に従ってコーティングした。シリコーン組成物Aの濃度を、93重量%に変更し、被覆25μm厚がのものを得た。他の製法条件は比較例1と同じであった。
【0134】
[実施例1]
比較例1の被覆ガラス板を、SDC Coating Technologies社からのシリコーン樹脂MP101クリスタル・コート・レジン〔(Me(MeO)SiO2/2)単位、(MeSiO3/2)単位、および(SiO4/2)単位を含み、イソプロパノール、水、酢酸、およびメタノールを含む混合溶剤に溶解された縮合硬化性シリコーン樹脂〕で被覆した。この樹脂溶液の固形分は25から35重量%であり、以下「シリコーン樹脂2」と表示する。シリコーン樹脂2を、シリコーン組成物Aの上に適用した。シリコーン樹脂2は希釈せずに使用し、スピンコート条件は第一層の条件と同じであった。これらの二重層被覆ガラス板を、空気循環オーブン中で次の温度手順に従って硬化させた:1℃/分で75℃まで、75℃で1時間、1℃/分で100℃まで、100℃で1時間、1℃/分で125℃まで、125℃で1時間。二重層被覆について4μmの合計厚さが得られた。
【0135】
本実施例で製造した二重層被覆および比較例1で製造した単一層被覆のモジュラスおよび硬さを、被覆厚さの大体10%にナノインデンターを圧入したときのストレス変位曲線から計算した。その結果を表1に含める。二重層被覆が非常に高い硬度を有していることが分かる。
【0136】
[実施例2]
比較例2の被覆ガラス板を、実施例1に記述した方法と同じ方法を用いてシリコーン樹脂2で再び被覆した。二重層被覆について11μmの合計厚さを得た。本実施例で製造した二重層被覆および比較例2で製造した単一層被覆のモジュラスおよび硬さ値を、表1に含める。二重層被覆が、単一層被覆よりも10倍以上高い硬さを有していることが分かる。
【0137】
[実施例3]
比較例3の被覆ガラス板を、実施例1に記述した方法と同じ方法を用いてシリコーン樹脂2で被覆した。二重層被覆について28μmの合計厚さを得た。本実施例で製造した二重層被覆および比較例3で製造した単一層被覆のモジュラスおよび硬さ値を、表1に含める。再び非常に高い被覆硬さが二重層被覆で得られた。
【0138】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも一つのガラス基板;
(ii)前記ガラス基板の少なくとも一つの面の少なくとも一部の上の第一コーティング層;および
(iii)第一コーティング層の少なくとも一部の上の第二コーティング層
を含む製造品であって、
第一コーティング層が、有機ポリマーを含むか、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物を含み;
第二コーティング層が、有機ポリマーを含むか、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物を含み;
但し、第一コーティング層および第二コーティング層の少なくとも一つは硬化シリコーン樹脂組成物を含むことを条件とし、かつ、第一コーティング層および第二コーティング層の両方が硬化シリコーン樹脂組成物を含む場合は、第一コーティング層の硬化シリコーン樹脂組成物と第二コーティング層の硬化シリコーン樹脂組成物とが異なることを条件とする、製造品。
【請求項2】
前記製造品が、
(iv)第二コーティング層の少なくとも一部の上の第三コーティング層、および
(v)場合により、第三コーティング層の少なくとも一部の上の一つ以上の追加のコーティング層
をさらに含み、
第三コーティング層が、有機ポリマーを含むか、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物を含み;
追加のコーティング層が、有機ポリマーを含むか、または、ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物、縮合硬化シリコーン樹脂組成物、もしくはフリーラジカル硬化シリコーン樹脂組成物から選択される硬化シリコーン樹脂組成物を含む
請求項1に記載の製造品。
【請求項3】
第一コーティング層(ii)がヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物を含み、第二コーティング層(iii)が縮合硬化シリコーン樹脂組成物を含む、請求項1または2に記載の製造品。
【請求項4】
第三コーティング層(iv)がヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物を含み、第四コーティング層(v)が縮合硬化シリコーン樹脂組成物を含む、請求項2または3に記載の製造品。
【請求項5】
前記ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物が(A)ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂、(B)架橋剤、および(C)ヒドロシリル化触媒を含むシリコーン組成物の硬化物であり、かつ、前記縮合硬化シリコーン樹脂組成物が(A)縮合硬化性シリコーン樹脂、(B)場合により架橋剤、および(C)場合により縮合触媒を含むシリコーン組成物の硬化物である、請求項1、2、3、または4に記載の製造品。
【請求項6】
前記ヒドロシリル化硬化シリコーン樹脂組成物の硬化物が、(A)ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂、(B)架橋剤、および(C)ヒドロシリル化触媒を含むシリコーン組成物を硬化させる工程を含む方法によって得られるものであり、かつ、前記縮合硬化シリコーン樹脂組成物の硬化物が、(A)縮合硬化性シリコーン樹脂、(B)場合により架橋剤、および(C)場合により縮合触媒を含むシリコーン組成物を硬化させる工程を含む方法によって得られるものである、請求項5に記載の製造品。
【請求項7】
(A)が、次式を有するシリコーン樹脂:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
(式中、Rは、いずれも脂肪族不飽和を含まない、CからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、Rは、Rまたはアルケニル基であり、wは0から0.8までの値を有し、xは0から0.6までの値を有し、yは0から0.99までの値を有し、zは0から0.35までの値を有し、y+zの合計は0.2から0.99であり、かつ、w+xの合計は0.01から0.80であり、但し、シリコーン樹脂(A)が、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有することを条件とする)
であり;
(B)が、ケイ素に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも2個有するオルガノ水素シランまたはオルガノ水素シロキサンであり;
(C)が白金含有触媒であり;かつ、
(A)が、次式を有するシリコーン樹脂:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
(式中、Rは、いずれも脂肪族不飽和を含まない、CからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、Rは、R、−H、−OHまたは加水分解性基であり、wは0から0.8までの値を有し、xは0から0.6までの値を有し、yは0から0.99までの値を有し、zは0から0.35までの値を有し、y+zの合計は0.2から0.99であり、w+xの合計は0.01から0.80であり、但し、シリコーン樹脂(A)が、ケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基を1分子あたり少なくとも2個有することを条件とする)
であり;
(B)が、式: RSiX4−q(式中、Rは、CからCのヒドロカルビル基またはCからCのハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、Xは加水分解性基であり、かつqは0または1である)を有する架橋剤であり;
(C)が、スズ(II)化合物およびスズ(IV)化合物から選択される縮合触媒である、
請求項5または6に記載の製造品。
【請求項8】
(A)が、(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2、(ViMeSiO1/2)w(MeSiO3/2(PhSiO3/2、(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2(SiO4/2、または(ViMeSiO1/2(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2(式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、Phはフェニル基であり、wは0.05から0.3までの値を有し、yは0.5から0.8、までの値を有し、zは0から0.15までの値を有する)であり;
(B)が、次式を有するオルガノ水素シラン:
HRSi−R−SiR
(式中、Rは、いずれも脂肪族不飽和を含まない、CからC10のヒドロカルビル基またはCからC10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であり、かつ、Rは、脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビレン基である)
であり;
この場合において、Rは、−Cl、−Br、−OR、−OCHCHOR、CHC(=O)O−、Et(Me)C=N−O−、CHC(=O)N(CH)−、および−ONH(式中、Rは、CからCのヒドロカルビル基またはCからCのハロゲン置換ヒドロカルビル基である)であり;
(B)が、MeSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHSi(OCHCHCH、CHSi[O(CHCH、CHCHSi(OCHCH、CSi(OCH、CCHSi(OCH、CSi(OCHCH、CH=CHSi(OCH、CH=CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CHSi(OCHCHOCH、CFCHCHSi(OCHCHOCH、CH=CHSi(OCHCHOCH、CH=CHCHSi(OCHCHOCH、CSi(OCHCHOCH、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、CHSi(OCOCH、CHCHSi(OCOCH、CH=CHSi(OCOCH、CHSi[O−N=C(CH)CHCH、Si[O−N=C(CH)CHCH、CH=CHSi[O−N=C(CH)CHCH、CHSi[NHC(=O)CH、CSi[NHC(=O)CH、CHSi[NH(s−C)]、CHSi(NHC11、またはオルガノアミノオキシシランであり;かつ、
(C)が、スズジラウラート、スズジオクトエート、テトラブチルスズ、またはチタニウムテトラブトキシドである、請求項7に記載の製造品。
【請求項9】
(B)が、
【化1】

である、請求項8に記載の製造品。
【請求項10】
前記製造品が、少なくとも一つの追加のガラス基板をさらに含み、但し、第一コーティング層(i)、第二コーティング層(ii)および場合により追加のコーティング層を含む多層コーティングが、前記ガラス基板と追加のガラス基板の間いずれの間にも挟まれていることを条件とする、請求項1から9に記載の製造品。
【請求項11】
前記コーティング層が各ガラス基板の両面に存在する、請求項10に記載の製造品。

【公表番号】特表2010−513089(P2010−513089A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542758(P2009−542758)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/021036
【国際公開番号】WO2008/088407
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】