説明

多層シート、熱成形容器、容器用蓋材および易開封性包装体

【課題】高い密封性および易開封性を備え、ヒートシールが容易で、シール条件も幅広い多層シート、熱成形容器、蓋材および易開封性包装体を提供することにある。
【解決手段】多層シート5は、A層5Aと、B層5Bとからなる。A層5Aは、ポリオレフィン系樹脂50〜95wt%およびエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂50〜5wt%からなる。B層5Bは、ポリオレフィン系樹脂からなる。A層5AおよびB層5Bのポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂である。A層5Aの厚みは、5〜500μmである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層シート、熱成形容器、容器用蓋材および易開封性包装体に関する。
【背景技術】従来より、各種食品などの包装には、被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成され、シートを熱成形してなる容器本体と、前記開口部を塞ぐ蓋材とを備えた包装体を用い、食品などを容器本体に挿入した後、容器本体のフランジ部に蓋材をヒートシールして密封するのが一般的である。これらの包装体は、内容物保存の観点からは強固にヒートシールされることが好ましい。しかし、使用時のためには、容易に開封することが望ましく、この両要求を満足する包装体が求められている。
【0002】樹脂製の容器の易開封性包装方法としては、密封する際の容器のシール層と蓋材のシール層の樹脂の選択、樹脂の配合の選択、あるいはヒートシール条件の選定により、容器と蓋材とのシール強度を適度になるようにする方法が最も一般的に採用されてきた。しかし、この方法では、易開封性を満足することに主体をおくと、ヒートシール条件、内容物の付着などの影響により、シール強度が低くなる場合がある。この場合には、貯蔵時、特に流通時にシール漏れが発生することになり、結果として過剰のシール強度となるようにシールする必要があり、易開封性を満足できない。
【0003】上記の問題を解決する方法として、蓋材の開封時に、容器のフランジ部と蓋材のヒートシールした界面を剥離して開封する方法に代えて、前記の容器フランジ部と蓋材のヒートシール界面を強く接着し、容器最内層を蓋材とともに剥離する方法が提案されている(1)。また、多層の樹脂製容器の最内層樹脂として、ポリオレフィン樹脂にエラストマーを配合して、樹脂の強度を弱くして、開封時には、内層樹脂内の凝集剥離を利用する方法も提案されている(2)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記(1)の技術では、開封を容易にするためには、剥離部分に環状の切り込み(ノッチ)を設けること、およびヒートシール面と切り込み部分を精度よくヒートシールすることが必要であることから、ヒートシールが容易であるとは言い難く、また、シール条件が限定されるという問題がある。また、上記(2)の技術では、易開封性は確保されるものの、密封性が十分でないという問題がある。
【0005】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高い密封性および易開封性を備え、ヒートシールが容易で、シール条件も幅広い多層シート、熱成形容器、容器用蓋材および易開封性包装体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達するために、本発明の多層シートは、少なくとも2層以上を積層して構成される多層シートであって、前記多層シートの表層を構成する2層のうちいずれか一方の層(A層)がポリオレフィン系樹脂50〜95wt%およびエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂50〜5wt%からなり、前記A層に積層されるB層がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする。
【0007】ここで、多層シートの層構成については、特に限定はなく、2層以上であればよいが、接着層およびガスバリア層を有する6層以上の構造を採用することが好ましい。接着層およびガスバリア層としては、特に制限はなく、それぞれ接着性を有する樹脂からなる層、およびガスや水蒸気の難透過性を有する樹脂からなる層であればよい。
【0008】具体的には、接着層としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等を含有する樹脂からなる層が挙げられる。一方、ガスバリア層としては、ナイロン(NY)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等からなる層が挙げられる。
【0009】また、多層シートの厚みとしては、20〜2000μmが好ましい。容器等に成形する用途としての多層シートの厚みは、100〜2000μmが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびこれらの混合物等が挙げられる。適宜用途によって選択する。
【0010】エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂としては、融点(DSC法で測定した)が70〜120℃、好ましくは、80〜110℃のものが挙げられる。また、MFR(JIS K6760で測定)が、2〜50g/10分、好ましくは、3〜20g/10分である。エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂内の共重合比は、特に制限はないが、エチレン含有量が50wt%以上が好ましい。
【0011】このような本発明によれば、A層のエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂の配合量が5wt%未満であると、容器にした後の開封強度が大きすぎて易開封性が得られない。一方、配合量が50wt%を超えると、容器にした後の開封強度が低下しすぎて密封性が保てなくなる。すなわち、上記範囲に配合量を保つことで、成形後の容器の易開封性と密封性との両特性を発揮させることができる。
【0012】また、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂の配合量としてより好ましくは7〜40wt%である。この配合量は、共重合体系樹脂やポリオレフィン系樹脂の種類、層の厚み、容器の大きさ、用途、シール強度、開封性などを考慮して、適宜決定される。
【0013】また、剥離部分に切り込み(ノッチ)を入れる必要がないので、ヒートシールが容易で、シール条件も幅広くすることができる。
【0014】本発明の多層シートでは、前記A層および/またはB層のポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ここで、ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)等が挙げられる。
【0015】これによれば、前記A層および/またはB層のポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であることにより、結晶性が大きく、耐熱性、耐油性、機械強度、耐摩耗性、透明性にすぐれているため熱成形してなる容器等の材料として好適である。
【0016】本発明の多層シートでは、前記A層の厚みは、5〜500μmであることが好ましく、より好ましくは10〜300μmである。A層の厚みが5μm未満であると、容器にした後の開封強度が大きすぎて易開封性が得られない。また、A層の厚みが500μmを越えると、容器にした後の開封強度が低下しすぎて密封性が保てなくなる。
【0017】本発明の多層シートでは、前記B層側には、ガスバリア層が積層されていることが好ましい。ここで、ガスバリア層を構成する材料としては、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。これによれば、前記B層側には、ガスバリア層が積層されていることにより、水蒸気や空気等のガスの侵入を防止するので、多層シートを袋体や容器等の包装体として加工した際に、包装する内容物の腐敗の防止をすることができる。
【0018】本発明の熱成形容器は、被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成された熱成形容器であって、前述の多層シートを成形してなり、前記フランジ部を含む容器内面側に前記A層が配置されることを特徴とする。ここで、容器の成形方法としては、真空圧空成形法、真空成形法、圧空成形法、プラグアシスト成形等の種々の成形方法を採用できる。フランジ部の形状としては、開口部の属する面と水平に外側に延出しているフラットフランジや、開口部の属する面と水平に外側に延出し、最外縁で垂下する断面コ字形のスカートフランジ等が挙げられる。
【0019】これによれば、前記A層側を内面とし、容器外周から張り出したフランジ部を備える。すなわち、フランジ部の表面がA層となるから、この部分を用いて蓋材等を容易に熱溶着することができ、容易にシール加工を施すことができる。また、例えば、蓋材と容器との熱溶着温度は、熱溶着可能な温度以上であればよく、特殊な蓋材を用いる場合よりも、その温度範囲が広いため、シール加工を施しやすく、内圧増によるシール漏れも減少できる。
【0020】本発明の容器用蓋材は、被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成された容器の該フランジ部でシールされ、前記容器の開口部を塞ぐ容器用蓋材であって、前述の多層シートのA層がフランジ部とシールされる面として使用されることを特徴とする。これによれば、前述と同様の作用・効果を得ることができる。
【0021】本発明の易開封性包装体は、被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成された容器本体と、前記開口部を塞ぐ蓋材とを備えた易開封性包装体であって、前述の熱成形容器を容器本体とし、前述の容器用蓋材を蓋材とし、前記フランジ部およびこの蓋材がヒートシールされることにより前記被包装物が密封収納されることを特徴とする。また、前述の熱成形容器を容器本体とし、前記フランジ部および前記蓋材がヒートシールされることにより前記被包装物が密封収納されるようにしてもよく、さらに、前述の容器用蓋材を蓋材とし、前記フランジ部およびこの蓋材がヒートシールされることにより前記被包装物が密封収納されるようにしてもよい。
【0022】蓋材と容器とをヒートシール可能な温度以上で熱溶着するだけで、良好な密封性、開封性が得られる。ヒートシールの温度は、ポリオレフィン系樹脂の種類、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂の配合比によって適宜選択する。ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂を用いる場合、より密封性、開封性を向上させるためには、170〜230℃、好ましくは180〜210℃でヒートシールする。また、本発明の易開封性包装体は、デザート類、電子レンジ用食品、レトルト用食品等の食品用包装容器として好適に利用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る多層シート5が示されている。多層シート5は、A層5Aと、B層5Bとからなる。A層5Aは、ポリオレフィン系樹脂50〜95wt%およびエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂50〜5wt%からなる。B層5Bは、ポリオレフィン系樹脂からなる。
【0024】A層5AおよびB層5Bのポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂である。ここで、ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)等が挙げられる。A層5Aの厚みは、5〜500μmである。他には、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、あるいはポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合物等が挙げられる。
【0025】また、多層シート5の厚みとしては、20〜2000μmである。容器等に成形する用途としての多層シート5の厚みは、例えば100〜2000μmが好ましい。
【0026】エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂としては、融点(DSC法で測定した)が70〜120℃、好ましくは、80〜110℃のものが挙げられる。また、MFR(JIS K6760によって測定)が、2〜50g/10分、好ましくは、3〜20g/10分である。エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂内の共重合比は、特に制限はないが、エチレン含有量が50wt%以上が好ましい。ここで、2層構成の多層シート5は、Tダイを用いた共押出法により成形されている。
【0027】次に、図2、図3を参照して、本発明に係る易開封性包装体1について説明する。易開封性包装体1は、被包装物収納用の開口部23周縁にフランジ部24が形成され、多層シート6を熱成形してなる熱成形容器20と、開口部23を塞ぐ円形状の蓋材10とを備えている。
【0028】蓋材10は、図3に示されるように、熱成形容器20のフランジ部24の外径よりも大きな外径を備えている。蓋材10は、ポリプロピレン系樹脂からなるPP層10Aと、ウレタン系樹脂からなる接着層10Bと、ポリエチレンテレフタレートからなるPET層10Cとを備えている。蓋材10は、PP層10A側が熱成形容器20と接している。
【0029】多層シート6は、多層シート5のB層5B側に、接着樹脂からなるC層5Cと、バリア樹脂からなるD層5Dと、接着樹脂からなるE層5Eと、ポリプロピレン系樹脂からなるF層5Fとを順に積層してなる。熱成形容器20は、図3に示されるように、円形状の底面21と、この底面21から立ち上げて一体形成されるとともに上部に開口部23を有する円筒状の側面22とを備え、開口部23の周縁には径方向外側に延出されたリング状のフランジ部24が一体形成されている。フランジ部24の形状としては、開口部23の属する面と水平に外側に延出しているフラットフランジを採用している。他に、開口部の属する面と水平に外側に延出し、最外縁で垂下する断面コ字形のスカートフランジ等を採用してもよい。ここで、熱成形容器20は、A層5Aが熱成形容器20の内面側とされている。
【0030】このような易開封性包装体1は、図3に示されるように、熱成形容器20のフランジ部24の上面に蓋材10をヒートシールして使用することとなる。開封開始部の外側にカラス口上の凸形の張出部を有する環状のシールリングを用いている。ヒートシールの幅は、3mmである。なお、ヒートシール温度は、170〜230℃、好ましくは180〜210℃であるこの際、この表面に蓋材10をヒートシールすることによって密封強度(内圧強度)を保ちつつ、易開封性が付与されることとなる。
【0031】易開封性包装体1の製造方法としては、多層シート6を、容器外形状に形成されたキャビティ内にプラグで予備伸張し、その後、圧空成形、真空成形により容器とするプラグアシスト成形を用いる方法が挙げられる。このようにして得られた易開封性包装体1は、デザート類、電子レンジ用食品、レトルト用食品等の食品用包装容器として好適に利用することができる。
【0032】上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)多層シート6を成形して得られた熱成形容器20の内面側を、ポリオレフィン系樹脂50〜95wt%およびエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂50〜5wt%からなるA層5Aとし、A層5Aに積層されたB層5Bをポリオレフィン系樹脂とし、上記範囲に配合量を保つことにより、熱成形容器20の易開封性と密封性との両特性を発揮させることができる。また、剥離部分に切り込み(ノッチ)を入れる必要がないので、ヒートシールが容易で、シール条件も幅広くすることができる。
(2) 熱成形容器20の多層シート6のA層5AおよびB層5Bのポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であることにより、結晶性が大きいから、耐熱性、耐油性、機械強度、耐摩耗性、透明性にすぐれている。
【0033】(3) フランジ部24の表面が熱成形容器20のA層5Aとなるから、この部分を用いて蓋材10を容易に熱溶着することができ、容易にシール加工を施すことができる。また、蓋材10と熱成形容器20との熱溶着温度は、熱溶着可能な温度以上であればよく、特殊な蓋材を用いる場合よりも、その温度範囲が広いため、シール加工を施しやすく、内圧増によるシール漏れも減少できる。
(4) 熱成形容器20の底面21、側面22およびフランジ部24が一体形成されていることから、易開封性包装体1の成形を簡易に行うことができる。
【0034】なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。例えば、前記実施形態において熱成形容器20は、6層構造をしていたが、これに限られない。すなわち、少なくとも上記の構成の2層を積層して構成される多層シート5を備える構成であれば任意の層構成を採用できる。
【0035】また、熱成形容器20はTダイを用いた共押出法により成形していたが、これに限られない。要するに、多層シートを成形できる方法であれば、種々のものを採用でき、例えば、マルチマニホールドダイを用いた共押出法、熱ラミネート、ドライラミネート等のラミネート法、カレンダ法等を採用することもできる。
【0036】前記実施形態において、熱成形容器20は、プラグアシスト真空成形を用いて形成されていたが、これに限られず、その他の真空圧空成形法、真空成形法や、圧空成形法を採用することもできる。また、前記実施形態において、易開封性容器の構成としては、図3R>3に示したような易開封性包装体1の構成には限られない。例えば、図4に示すように、蓋材11として、多層シート5を用い、熱成形容器20をポリプロピレン系樹脂からなる単層構造にしたものを蓋材11のA層5Aが熱成形容器20に向くようにして接着されて構成されている易開封性包装体2の構成でもよい。
【0037】また、図5に示すように、多層シート6からなる熱成形容器20と、上記した蓋材11が接着されて構成されている易開封性包装体3の構成でもよい。この易開封性包装体3では、熱成形容器20と蓋材11の互いのA層5Aが接着されている。本発明の易開封性包装体は、前記A層5Aを用いることにより、易開封性を得ることができる。前記A層5Aは、図3〜5に示すように、熱成形容器20側、蓋材10、または11側のどちらに用いてもよいが、特に熱成形容器20側にA層5Aを用い、蓋材10、または11側には、一般の材質の樹脂を用いる構成とするのが好ましい。その他、本発明を実施する際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲内で他の構造としてもよい。
【0038】
【実施例】以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
(多層シート6)各層の原料樹脂として、以下の樹脂を使用し、共押出成形により多層シート6を成形した。
【0039】[1]A層5A[1-1]原料樹脂:ポリプロピレン(E−105GM、出光石油化学(株)製)70wt%と、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂(EMA)日本ポリオレフィン(株)製)30wt%とを配合した樹脂融点(DSC法で測定した) 99℃MFR(JIS K6760によって測定) 8g/10分[1-2]層の厚み:200μm
【0040】[2]B層5B[2-1]原料樹脂:ポリプロピレン(E−203GK、出光石油化学(株)製)
[2-2]層の厚み:350μm
【0041】[3]C層5C[3-1]原料樹脂:接着樹脂(アドマー、三井化学(株)製)
[3-2]層の厚み:20μm
【0042】[4]D層5D[4-1]原料樹脂:バリア樹脂(エバール、クラレ(株)製)
[3-2]層の厚み:50μm
【0043】[5]E層5E[5-1]原料樹脂:接着樹脂(アドマー、三井化学(株)製)
[5-2]層の厚み:20μm
【0044】[6]F層5F[6-1]原料樹脂:ポリプロピレン(E−203GK、出光石油化学(株)製)
[6-2]層の厚み:200μm
【0045】(熱成形容器20)上記原料を用いて成形された多層シート6を用い、プラグアシスト成形により直径95mm、高さ45mmの熱成形容器20を得た。続いて、熱成形容器20に、蓋材10を190℃にてヒートシールし、易開封性包装体1を得た。
【0046】(蓋材10)ここで、蓋材10は、ポリプロピレン系樹脂からなるPP層10AとポリエチレンテレフタレートからなるPET層10Cとを、ウレタン系樹脂からなる接着材によって積層した。
【0047】[実施例2]熱成形容器20のA層5Aの厚みを100μmとした以外は、実施例1と同様である。
【0048】[実施例3]熱成形容器20のA層5Aの厚みを20μmとした以外は、実施例1と同様である。
【0049】[実施例4]熱成形容器20のA層5Aの原料樹脂として、ポリプロピレン90wt%とエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂10wt%とを配合したものを用い、層厚を20μmとした以外は、実施例1と同様である。
【0050】[実施例5]熱成形容器20のA層5Aの厚みを200μmとした以外は、実施例4と同様である。
【0051】[比較例1]熱成形容器20のA層5Aの原料樹脂として、ポリプロピレン(E−105GM、出光石油化学(株)製)70wt%とポリエチレン(FZ−038、三菱商事(株)製)30wt%とを配合したものを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0052】[比較例2]熱成形容器20のA層5Aの原料樹脂として、ポリプロピレン(E−105GM、出光石油化学(株)製)90wt%とポリエチレン(FZ−038、三菱商事(株)製)10wt%とを配合したものを用いた以外は、実施例4と同様である。
【0053】各実施例および比較例で得られた易開封性包装体1について、内圧強度および開封強度を測定し、結果を表1にまとめた。
【0054】
【表1】


【0055】ここで、内圧強度および開封強度は、以下の方法で測定した。
[1]内圧強度蓋材10で密閉された容器に空気を注入して容器が破裂する圧力を求めることにより測定した(封かん試験)。
[2]開封強度蓋材10のシールされた容器の開封部部分を、カッターナイフで15mm幅に切り出し、治具にセットした状態で、引張試験機(インストロン1123型、インストロンジャパン(株)製)のつかみ具に取り付ける。この状態で300mm/分の速度、剥離角度130度で引っ張ることにより測定した。
【0056】表1に示されるように、実施例1〜5で得られた易開封性包装体1は、容器内面側がエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂を所定量含有するA層5Aとされており、この表面に蓋材10がヒートシールされたものである。したがって、適度な溶着強度を有しており、十分な内圧強度を保ちつつ、開封強度が低い理想的な容器となっていることがわかる。
【0057】比較例1、2では、A層5Aとしてエチレンを添加した樹脂を用いているから、内圧強度は十分であるものの、開封強度が大きくなっていることがわかる。すなわち、比較例1では開封し難い容器となっており、一方、比較例2では開封不可能な容器となっていることがわかる。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、多層シートの表層を構成する2層のうちいずれか一方の層(A層)がポリオレフィン系樹脂50〜95wt%およびエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂50〜5wt%からなり、前記A層に積層されるB層がポリオレフィン系樹脂からなる。すなわち、上記範囲に配合量を保つことで、成形後の容器の易開封性と密封性との両特性を発揮させることができる。また、剥離部分に切り込み(ノッチ)を入れる必要がないので、ヒートシールが容易で、シール条件も幅広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る多層シートを示す部分断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る易開封性包装体を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態における易開封性包装体を示す断面図である。
【図4】易開封性包装体の第1の変形例を示す断面図である。
【図5】易開封性包装体の第2の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
1、2、3 易開封性包装体
5、6 多層シート
5A A層
5B B層
10、11 蓋材
20 熱成形容器
23 開口部
24 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも2層以上を積層して構成される多層シートであって、前記多層シートの表層を構成する2層のうちいずれか一方の層(A層)がポリオレフィン系樹脂50〜95wt%およびエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体系樹脂50〜5wt%からなり、前記A層に積層されるB層がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする多層シート。
【請求項2】請求項1に記載の多層シートにおいて、前記A層および/またはB層のポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする多層シート。
【請求項3】請求項1または請求項2に記載の多層シートにおいて、前記A層の厚みは、5〜500μmであることを特徴とする多層シート。
【請求項4】請求項1から請求項3のいずれかに記載の多層シートにおいて、前記B層側には、ガスバリア層が積層されていることを特徴とする多層シート。
【請求項5】被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成された熱成形容器であって、請求項1から請求項4のいずれかに記載の多層シートを成形してなり、前記フランジ部を含む容器内面側に前記A層が配置されることを特徴とする熱成形容器。
【請求項6】被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成された容器の該フランジ部でシールされ、前記容器の開口部を塞ぐ容器用蓋材であって、請求項1から請求項4のいずれかに記載の多層シートのA層がフランジ部とシールされる面として使用されることを特徴とする容器用蓋材。
【請求項7】被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成された容器本体と、前記開口部を塞ぐ蓋材とを備えた易開封性包装体であって、請求項5に記載の熱成形容器を容器本体とし、前記フランジ部および前記蓋材がヒートシールされることにより前記被包装物が密封収納されることを特徴とする易開封性包装体。
【請求項8】被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成された容器本体と、前記開口部を塞ぐ蓋材とを備えた易開封性包装体であって、請求項6に記載の容器用蓋材を蓋材とし、前記フランジ部およびこの蓋材がヒートシールされることにより前記被包装物が密封収納されることを特徴とする易開封性包装体。
【請求項9】被包装物収納用の開口部周縁にフランジ部が形成された容器本体と、前記開口部を塞ぐ蓋材とを備えた易開封性包装体であって、請求項5に記載の熱成形容器を容器本体とし、請求項6に記載の容器用蓋材を蓋材とし、前記フランジ部およびこの蓋材がヒートシールされることにより前記被包装物が密封収納されることを特徴とする易開封性包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2003−231226(P2003−231226A)
【公開日】平成15年8月19日(2003.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−34718(P2002−34718)
【出願日】平成14年2月12日(2002.2.12)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】