説明

多層シールリング

本発明は、特に内燃機関の構成材用の第一および第二軸シール帯を有するシールリングで、V字形横断面の内閉リング(2)と、開口面が該内リング(2)と同じ方向に向くV字形横断面の外閉リング(4)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内燃機関のターボチャージャ及び排気システム用の二つ以上の層を有するVシールリングに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、Vシールリングは単層リングから通常作り出される。かかるV字形横断面を有するリングは、ターボチャージャ及び排気システムのシールとして通常使用される。この種のリングは溶接線なしで存在するが、リングは通常溶接される。これらは、従来比較的硬質の材料からなる。
【0003】
シールリングは、内部に向かって、また外部に向かってV字形状の開口面を持つように成形される。様々な材料、例えばインコネル、1.4828などが使用される。
【0004】
シール帯域において、漏洩が溶接線によるか、又は硬質材料のためシールすべき構成材に対する不十分な適合動作により起こり得る。既知の単層シールリングを高級材料から生産することは、大きな原料投入を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、優れたシール特性と、より高い品質とを有し、高級材料の投入を低減して生産し得るシールリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、特に内燃機関の構成材用の第一および第二軸シール帯を有するシールリングを提供するもので、V字形横断面の内閉リングと、開口面が内リングと同じ方向に向くV字形横断面の外閉リングとを備える。
【0007】
本発明のシールリングにおいて、二つ以上のリングを互いに入れ子にする。複数のリングの使用により、ラビリンス効果が達成され、シール品質を上げる。リングは互いに横たわり、ここでV字形の開口面が内方又は外方のどちらか一方にそれぞれ向く。
【0008】
一実施形態によれば、シールリングはさらに内リングと外リングとの間に配設されたV字形横断面を有する一つ以上の閉中間リングを備え、ここで開口面が内リングおよび外リングのものと同じ方向に向く。
【0009】
シール特性を改善するために、三つ以上のリングを使用することができる。
【0010】
一実施形態によれば、外リングは内リングのものよりも軟質材料からなる。
【0011】
外リング用軟質材料の使用により、適合動作、従ってシール品質を向上し得る。内リングは必要な安定性を提供し、一方外リングはより良好な適合を確保する。
【0012】
一実施形態によれば、外リングは非熱硬化性材料からなり、内リングは熱硬化性材料からなる。
【0013】
この材料の組合せよって、V字形の構成後シールリングに熱処理を施し、これにより内リングは硬化するが、外リングは軟化する。
【0014】
一実施形態によれば、シールリングがシール帯の少なくとも一つでプロファイル化及び/又は被覆される。
【0015】
追加のプロファイリング及び/または被覆により、シールを改善し得る。好ましくは、外リングをプロファイル化及び/又は被覆するが、基本的に各々のVリングがプロファイリング及び/又は被覆を有することができる。
【0016】
一実施形態によれば、少なくとも一つのV字形リングは、他のV字形リングの少なくとも一つと材料厚さ及び/又は材料が異なる。
【0017】
従って、材料及び/又は材料厚さの種類を選択することにより、本発明に係るシールリングの特性を設定することができる。それぞれ二つのVリングの間の周辺に生成する隙間は、個々のリングのゲージ、すなわちそれぞれの厚さの選択により増減し得る。同様に、それぞれのVリングの弾性をゲージの選択により制御し得る。
【0018】
材料の選択は、特に適合動作の設定(硬質化、軟質化)を可能にする。数個のVリングの使用により、高級で高価な材料をより目標とされる様式で、かつ必要とされる場合(例えば内リングに対し)にのみより少ない範囲で使用することができる一方、使用するVリングの一部分(例えば内リング又は中間リング)が、本発明に係るシールリングの品質を損なうことなくより有利な材料から生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明を、例示的な実施形態を表わす図面を参照して以下にさらに説明する。
【0020】
【図1】本発明に係るシールリングの第一の実施形態を横断面で示す。
【図2】本発明に係るシールリングの第二の実施形態を横断面で示す。
【図3】本発明に係る被覆シールリングの第三の実施形態を横断面で示す。
【図4】本発明に係るプロファイル化シールリングの第四の実施形態を横断面で示す。
【図5】本発明に係るシールリングの扇形に切り取った三次元的視界を横断面で示す。
【図6】本発明の実施形態の完全な横断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に本発明に係るシールリングの第一の実施形態を示す。該シールリングはV字形横断面を有する内リング2と、同様にV字形横断面を有する外リング4とからなる。
【0022】
内リング2と外リング4とが互いに横たわる。その結果、優れたシール効果がラビリンス効果の形成により達成される。開口面は、図示するように、内方に向く。換言すれば、外リング4の閉口面が完全なシールリングの外側に位置する一方、内リング2の開口面が完全なシールリングの内側に位置する。
【0023】
しかしながら、別の実施形態において、これは逆転され得る。このような実施形態において、Vリングの開口面は外方に向く、すなわち外リングの閉口面が完全なシールリングの外側に位置する一方、内リングの閉口面が完全なシールリングの内側に位置する。
【0024】
本発明はVリングの使用に限定されず、Uリング、半円形リング等のような類似の形状にも及ぶことを留意すべきである。ここでの関心事は、開口面(図の右側に配置)と閉口面(図の左側に配置)とを有する形状をそれぞれ持つことである。
【0025】
図2に本発明の別の実施形態を示す。このシールリングは内リング2と、外リング4と、追加の中間リング6とからなる。全てのリングはV字形状を有し、同じ方向に開口面が向く。またこの図において、内方に開口したVリングを有する改良型を例として示すが、本発明は逆転させた実施形態にも及ぶ。
【0026】
三つ以上のリングの使用は、所望の適合とシール動作とを達成するために、リングの材料の種類や厚さを適合させるためのより柔軟な可能性を提供する。材料のゲージはまた、二つのリング間に形成される隙間3(破線で図示)に影響する。関連するリングが薄くなると、隙間3も小さくなる。対応するリングの弾性を材料の選択により設定し得る。
【0027】
図3に本発明の別の実施形態を示す。この実施形態は、内リング2と、外リング4と、中間リング6とを有する図2に示した改良型に基づく。これに加えて、軸シール帯におけるシールを向上させるために被覆8を設ける。
【0028】
図4に本発明に係るシールリングのさらなる実施形態を示す。この実施形態は、図1に示した改良型の拡張を構成する。このシールリングは、同じように内リング2と外リング4とを備える。両リングはV字形を有し、開口面が同じ方向(ここでは内方、別の実施形態においては外方)に向く。
【0029】
軸シール帯におけるシールを向上させるために、このシールリングはプロファイリング10を有する。
【0030】
図5に本発明に係るシールリングの部分的な扇形の3次元視界を示す。該シールリングは内側V字形状リング2と外側V字形状リング4とを有する。リング2とリング4との間の移り変わり領域は、上述した実施形態におけるようにここでは段階付けられていない。その代わり、内リング2はまた、上述した実施形態で存在する隙間に延在するので、全体として隙間のない移り変わりが作られている。
【0031】
図6は、図2のものに対応するシールリングの全体の横断面を示す。
【0032】
さらに、図3及び4の実施形態の組合せが可能である。すなわち、プロファイリングと被覆の両方をシール帯(又はシール帯の一つ若しくはその他のいくつかのシール帯)に設けることができる。プロファイリングを被覆と同じリングに配設することができる。したがって例えば、図3のものと類似したシールリングは、中間リングのプロファイリングをさらに具え得る。
【0033】
他の実施形態においては、リング(又はいくつかのリング)を被覆し、他のリング(又は他のいくつかのリング)をプロファイル化する。例えば、図3に基づく実施形態において、被覆が内リングおよび中間リングのみに延在する一方、外リングは被覆されず、プロファイル化される。
【0034】
様々な数(二つ、三つ、又はそれ以上)のリング、任意の被覆及び任意のプロファイリングを、必要に応じて相互に組合し得る。二つの軸シール帯を同一の様式で具現化することは必ずしも必要でない。したがって例えば、第一のシール帯のみを被覆する一方、第二のシール帯のみをプロファイル化することができる。また、一つのシール帯のみを被覆及び/又はプロファイル化することができる。
【0035】
本発明はまた、四つ以上のリングを有する実施形態に及び、この場合中間リングの数が二つ以上になる。本発明のシールリングは、内部に向かって、また外部に向かって両方に開口するように成形することができ、上記説明においては例として内部に開口する改良型のみを記述する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一および第二の軸シール帯を有する、特に内燃機関の構成材用のシールリングであって、
V字形横断面の内閉リング(2)と、
開口面が該内リング(2)の開口面と同じ方向に向くV字形横断面の外閉リング(4)とを備えるシールリング。
【請求項2】
前記内リング(2)と前記外リング(4)との間に配設され、開口面が前記内リング(2)の開口面及び前記外リング(4)の開口面と同じ方向に向くV字形横断面の一つ以上の閉中間リング(6)をさらに備える、請求項1に記載のシールリング。
【請求項3】
前記外リング(4)が、前記内リング(2)の材料より軟質の材料からなる、請求項1又は2に記載のシールリング。
【請求項4】
前記外リング(4)が非熱硬化性材料からなり、前記内リング(2)が熱硬化性材料からなる、請求項1ないし3のいずれかに記載のシールリング。
【請求項5】
前記シールリングが前記シール帯の少なくとも一つにプロファイリング(10)を有する、請求項1ないし4のいずれかに記載のシールリング。
【請求項6】
前記シールリングが前記シール帯の少なくとも一つに被覆(8)を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載のシールリング。
【請求項7】
前記V字形リング(2,4,6)の少なくとも一つが、他の前記V字形リング(2,4,6)の少なくとも一つと材料厚及び/又は材料が異なる請求項1ないし6のいずれかに記載のシールリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−526954(P2012−526954A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510176(P2012−510176)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051465
【国際公開番号】WO2010/130472
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(595157503)フェデラル−モーグル シーリング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Sealing Systems GmbH
【Fターム(参考)】