説明

多層ブロー容器及びその成形方法

【課題】 再生材の使用率の増大に起因する口筒部での再生材の露出や、ピンチオフ部の強度の低下等、容器としての性能の低下を効果的に防止することを課題とする。
【解決手段】 押出成形した筒状の多層パリソンのブロー成形により成形され、口筒部、肩部、胴部そして底部を有し、少なくとも外層と内層と1つの中間層から形成される多層ブロー容器において、外層と内層を同一の合成樹脂で形成し、中間層を、内外層を形成する合成樹脂を主成分とする再生材から形成し、パリソンの押出し方向に沿って、所定の範囲に中間層のない非形成領域、あるいは中間層を他の部分に比較して薄くした薄層領域を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトブロー成形方法により成形され、中間層に再生材を用いた合成樹脂製の多層ブロー容器に関する。

【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1にはブロー成形された多層のプラスチックボトルで、中間層として再生材を用いた多層ブロー容器に係る発明が記載されており、また特許文献2には、このような多層ブロー成形に使用する多層ブロー成形用ダイスに係る発明が記載されている。従来、コストの低減、省資源の点から製造工程で生じたバリや不良品を回収し、再生処理を施した材料、所謂再生材を多層容器の中間層の材料として用いることが広く行われている。
【特許文献1】特開平5−338638号公報
【特許文献2】特開平10−128836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの場合、この種の多層ブロー容器では外層と内層には同一合成樹脂のバージン材を使用して、中間層はこの内外層に使用する合成樹脂を主成分とする再生材を用いる。
ここで、コストの低減、省資源の点からは、再生材からなる中間層の厚さを厚く、すなわち再生材の使用率を大きく必要があるが、一方で、再生材は通常、高温の熱履歴に起因する酸化劣化等により、また異種の樹脂の混入により全体としてその機械的性質、成形性等が低下している。また内外層との接着性の低下も機械的性質、成形性等の低下に関連する。さらに、食品等に用いる容器にあっては内容物に対する影響があると深刻な問題となるため、中間層が直接内容物に接触しないようにする必要がある。
【0004】
ダイレクトブロー成形では、押出成形した筒状の多層パリソンの上下をカットして使用するので、ブロー成形した容器の上端と下端、すなわち口筒部の上端面とピンチオフ部では中間層が直接外部に露出してしまい、特に口筒部の上端面における露出は食品等に用いる容器にあっては大きな問題となる。
【0005】
また、口筒部の上端面近傍はキャップ等のシール性の観点から高い寸法精度が要求される部分であり、底部にはパリソンを偏平にして溶着したピンチオフ部があり落下衝撃等で割れやすい部分であり、中間層の存在によりこれら口筒部のシール性、あるいはピンオフ部の強度の低下が避けられないと云う問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、再生材の使用率の増大に起因する口筒部での再生材の露出や、ピンチオフ部の強度の低下等、容器としての性能の低下を効果的に防止することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項1記載の発明の手段は、
押出成形した筒状の多層パリソンのブロー成形により成形され、口筒部、肩部、胴部そして底部を有し、少なくとも外層と内層と1つの中間層から形成される多層ブロー容器において、
外層と内層を同一の合成樹脂で形成し、中間層を、内外層を形成する合成樹脂を主成分とする再生材から形成すること、
パリソンの押出し方向に沿って、所定の範囲に中間層のない非形成領域、あるいは中間層を他の部分に比較して薄くした薄層領域を形成したこと、
にある。
【0008】
請求項1記載の上記構成により、パリソンの押出し方向に沿って、中間層の存在に起因して容器としての性能が低下するような所定の範囲、たとえば口筒部上端部、あるいは底部等の部分を中間層のない非形成領域、あるいは中間層を他の部分に比較して薄くした薄層領域とすることにより、性能の低下を効果的に防ぐことができる。
そして、このような非形成領域や薄層領域を限られた範囲とし、残りの部分では再生材の層厚を十分厚くすることにより、容器全体として再生材の使用率を高いレベルに保持することができる。
【0009】
ここで、後述するように容器における非形成領域や薄層領域は、所定のタイミングで中間層流路における合成樹脂の流動を遮断、あるいは流量を小さくすることにより、所定の高さ範囲にすなわち押出し方向に沿った所定の範囲に非形成領域や薄層領域が形成された多層パリソンをブロー成形することにより、形成することができる。
この観点から、請求項1では容器に係る非形成領域や薄層領域を形成する範囲に係る記載を「パリソンの押出し方向に沿って所定の範囲に」と云うようにしており、この「パリソンの押出し方向に沿って所定の範囲に」とは、たとえば口筒部、肩部、胴部では「所定の高さ範囲に」と云う記載に相当し、底部底面では「ピンチオフにより形成される溶着面に垂直な方向に沿って所定の範囲に」と云う記載に相当する。
【0010】
なお、非形成領域や薄層領域の形成は1箇所に限定されるものではなく、たとえば口筒部上端部と底部のピンチオフ部近傍の2箇所と云うように複数の場所に形成することもできる。
また、非形成領域とするか、薄層領域とするかは、第1には容器の性能の低下に係る中間層の存在の影響の大きさを考慮し、さらには成形性を考慮して選択することができる。たとえば食料品向けの用途の場合には口筒部上端部は非形成領域とする必要があるし、ピンチオフ部のような場合にはたとえば混入する異種樹脂の量が少なく内外層との接着性が著しく低下しない場合には、薄層領域とすることにより、中間層の使用率をより高くすることができ等有利な点がある。
【0011】
請求項2記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、薄層領域を、中間層の層厚を徐々に減少せしめた層厚に係るグラデーション領域としたこと、にある。
【0012】
非形成領域のように中間層を断絶したり、薄層領域で層厚を急激に段差状に薄くすると、バージン材と再生材の物性の差が大きい場合には、当該部分で段差ができる、寸法精度が低下する、ブロー成形性が低下する等の問題が生じるが、請求項2記載の上記構成により、層厚を徐々に減少せしめたグラデーション領域とすることにより、これら問題の発生を抑制することができる。
なお、このような問題を抑制するためにグラデーション領域を介して非形成領域を形成することもできる。
【0013】
請求項3記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、口筒部の上端面から所定高さ範囲を非形成領域としたこと、にある。
【0014】
請求項3記載の上記構成により、口筒部上端面に再生材からなる中間層が露出しないので、食品用の分野にも安心して使用することができる。
【0015】
また、中間層の影響を抑えて、上端面を含む口筒部上端部にける寸法精度を高くすることができ、キャップ等によるシール性を良好に保持することができる。
また、さらに高度なシール性を得るために後加工で口筒部をドリル等で削りながらトリマー仕上する場合にも、再生材への異種ポリマーの混入に起因するケバの発生をなくすことができる。
【0016】
請求項4記載の発明の手段は、請求項3記載の発明において、非形成領域の高さ範囲を2mm以上とした請求項3記載の多層ブロー容器。
【0017】
請求項4記載の上記構成により、非形成領域の高さ範囲を2mm以上とすることにより、口筒部の上端面におけるヒケの発生を抑制することができ、またトリマーによる削り代を十分確保することができる。
なお、上記非形成領域の高さ範囲は、再生材の使用率が若干減少するが、ヒケの抑制の観点から、またパリソン成形時の中間層流路における樹脂の流動の遮断の制御がし易いと云う点からは、5mm以上とするのが好ましい。
【0018】
請求項5記載の発明の手段は請求項1記載の発明において、底部のピンチオフ部の近傍を非形成領域としたこと、にある。
【0019】
請求項5記載の上記構成により、筒状のパリソンを偏平にして熱溶着して形成されるピンチオフ部近傍には中間層がない状態となり、バージン材からなる外層と内層で形成されるので、このピンチオフ部は単層のブロー容器並みの強度とすることができる。
【0020】
請求項6記載の発明の手段は、請求項5記載の発明において、ピンチオフ部の溶着面から少なくとも5mmまでの範囲を非形成領域としたこと、にある。
【0021】
請求項6記載の上記構成により、溶着面から少なくとも5mmまでの範囲、より好ましくは少なくとも10mmの範囲を非形成領域とすることにより、中間層のピンチオフ部へ強度への影響を排除することができる。
【0022】
請求項7記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、底部のピンチオフ部近傍を薄層領域としたこと、にある。
【0023】
請求項7記載の上記構成により、再生材への異種樹脂の混入量が少なく内外層との接着性が大きく低下していない場合には、ピンチオフ部近傍を必ずしも非形成領域とする必要はなく、薄層領域とすることでその強度を十分確保することができる。
【0024】
請求項8記載の発明の手段は、請求項7記載の発明において、ピンチオフ部の溶着面から少なくとも10mmまでの範囲を薄層領域としたこと、にある。
【0025】
請求項8記載の上記構成により、ピンチオフ部の溶着面から少なくとも10mmまでの範囲、より好ましくは15mm以上の範囲を薄層領域とすることにより、ピンチオフ部の強度に係る中間層の影響を十分に排除でき、また薄層領域の位置合わせに係る許容範囲を大きくすることができ、余裕をもってパリソンの成形、および容器のブロー成形を実施することができる。
【0026】
請求項9記載の発明の手段は、請求項7または8記載の発明において、薄層領域の溶着面近傍における中間層の層厚に係る構成比を0.5以下の範囲としたこと、にある。
【0027】
請求項9記載の上記構成により、ピンチオフ部の強度に係る中間層の影響を抑制することができる。なお、異種樹脂の混入が多い場合にはこの中間層の構成比をさらに小さくするのが好ましい。
【0028】
請求項10記載の発明の手段は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の発明において、非形成領域、あるいは薄層領域を除く部分での中間層の層厚に係る構成比を0.3〜0.9の範囲としたこと、にある。
【0029】
請求項10記載の上記構成により、非形成領域、あるいは薄層領域を除く部分での中間層の層厚に係る構成比を0.3以上の範囲とすることにより、再生材の使用率を十分大きくすることができる。
また0.9以下として内外層の肉厚を確保することにより、ブロー成形性を損なうこともなく、中間層を内外層で確実に被覆することができる。
【0030】
請求項11記載の発明は、上記説明した請求項1〜10の発明の多層ブロー容器の成形方法に係るものであり、この請求項11の発明の方法は次ぎの(1)〜(3)の3つの要素からなる。
(1)内側から内層流路、中間層流路、外層流路の順に配設された少なくとも3ケの円環状層形成流路と、この層形成流路の下流に合流点を介して位置する合流路を配設した多層押出し成形用ダイスを用いる。
(2)内層と外層流路に同一の合成樹脂を供給し、中間層流路に前記内外層流路に供給する合成樹脂を主成分とする再生材を供給すると共に、所定のタイミングで中間層流路における合成樹脂の流動を遮断、あるいは流量を小さくして所定の高さ範囲に中間層の形成されない非形成領域、あるいは中間層を薄くした薄層領域を形成した多層パリソンを押出し成形する。
(3)この多層パリソンの下端をピンチオフすると共に、上端開口部からエアを吹き込んでブロー成形し、所定の範囲に中間層のない非形成領域、あるいは中間層の薄い薄層領域を有する多層ブロー容器を成形する。
【0031】
上記成形方法において、各樹脂は溶融状態で直接押出機から、あるいはアキュムレータを介し、供給流路を経て各層形成流路に供給されるが、中間層の流動の遮断、あるいは流動量の調整は、たとえば供給流路に付設したボールバルブ、スプルーバルブ等のバルブ機構やシャッター機構の制御、あるいは押出機、アキュムレータ等による吐出圧力の調整等により実施することができ、層厚をグラデーション状に変化させることもできる。勿論、本発明の成形方法において中間層の流動の遮断や流動量の調整方法は上記のような手段に限定されるものではなく、従来より採用されている多種多様な手段を適用することができる。

【発明の効果】
【0032】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、中間層の存在に起因して容器としての性能が低下するような所定の範囲に、中間層に係る非形成領域や薄層領域を配置することにより、再生材の利用に伴なう容器としての性能の低下を効果的防止して、再生材の使用率を大きくすることができる。
【0033】
請求項2記載の発明にあっては、層厚を徐々に減少せしめたグラデーション領域とすることにより、中間層の層厚を急激に段差状に変化させたことに起因する変形やブロー成形性の不均一と云う問題を緩和することができる。
【0034】
請求項3記載の発明にあっては、口筒部の上端面から所定高さ範囲を非形成領域とすることにより、トリマー加工したとしても口筒部上端面における再生材の露出を心配することなく、食品用の分野にも安心して使用することができる。
【0035】
請求項4記載の発明にあっては、非形成領域の高さ範囲を2mm以上、より好ましくは5mm以上とすることにより、口筒部の上端面におけるヒケの発生を抑制することができ、またトリマーによる削り代を十分確保することができる。
【0036】
請求項5記載の発明にあっては、底部のピンチオフ部の近傍を非形成領域とすることにより、筒状のパリソンを偏平にして熱溶着して形成されるピンチオフ部近傍には中間層がない状態となり、再生材の利用に伴なうピンチオフ部の強度の低下を効果的に防ぐことができる。
【0037】
請求項6記載の発明にあっては、溶着面から少なくとも5mmまでの範囲、より好ましくは10mmの範囲を非形成領域とすることにより、中間層のピンチオフ部へ強度への影響を排除することができる。
【0038】
請求項7記載の発明にあっては、再生材への異種樹脂の混入量が少なく内外層との接着性が大きく低下していない場合には、ピンチオフ部近傍を必ずしも非形成領域とする必要はなく、薄層領域とすることで再生材の利用に伴なうピンチオフ部の強度の低下を効果的に防ぐことができる。
【0039】
請求項8記載の発明にあっては、ピンチオフ部の溶着面から少なくとも10mmまでの範囲、より好ましくは15mm以上の範囲を薄層領域とすることにより、ピンチオフ部の強度に係る中間層の影響を十分に排除でき、また、成形時における薄層領域の位置合わせに係る許容範囲を大きくすることができ、余裕をもってパリソンの成形、および容器のブロー成形を実施することができる。
【0040】
請求項9記載の発明にあっては、薄層領域の溶着面近傍における中間層の層厚に係る構成比を0.5以下の範囲とすることによって、ピンチオフ部の強度に係る中間層の影響を抑制することができる。
【0041】
請求項10記載の発明にあっては、非形成領域、あるいは薄層領域を除く部分での中間層の層厚に係る構成比を0.3以上の範囲とすることにより、再生材の使用率を十分大きくすることができ、また0.9以下として内外層の肉厚を確保することにより、ブロー成形性を損なうこともなく、中間層を内外層で確実に被覆することができる。
【0042】
請求項11記載の発明は、多層ブロー容器の成形方法に係るものであり、中間層材料の流路に配設したバルブや、押出機あるいはアキュムレータの吐出圧力の調整によりパリソンに中間層に係る非形成領域や薄層領域を形成することができ、この非形成領域や薄層領域を、ブロー金型の所定の高さ位置に対向位置させた状態でピンチオフすると共にブロー成形することにより上記請求項1〜10に記載される容器を成形することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を実施例により図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の多層ブロー容器の一実施例を一部破断して示す正面図であり、この容器1は円筒状の口筒部2、肩部3、胴部4、底部5を有する壜体である。
そして、この容器1は外層11と内層12と中間層13から形成されており、外層11と内層12は高密度ポリエチレン樹脂製であり、中間層13は高密度ポリエチレン樹脂を主成分とした再生材から形成され、ナイロン樹脂等の異種の樹脂が少量、混入したものである。
【0044】
口筒部2の上端部と底部5のピンチオフ部6の部分を除く部分での外層11と中間層13と内層12の層厚に係る構成比は平均で0.15:0.7:0.15である。
また、図1中の部分的な縦断拡大図に示されるように、口筒部2の上端部と、底
部5のピンチオフ部6近傍は中間層13のない非形成領域Nとしている。
【0045】
本実施例の場合、口筒部2の上端部における非形成領域Nの高さ範囲hは3mmとしており、口筒部2上端面は平坦であり、この上端面をシール面としてキャップを螺合して、通常の用途では十分なシール性を得ることができる。
【0046】
また、容器内部がかなりの加圧状態になる等、さらに高度なシール性が要求される用途に使用する場合には、後加工でこの上端面を切削状にトリマー仕上げをするが、非形成領域Nの高さ範囲が3mm程度あれば上端面の切削により中間層13が露出してしまうこともないので安心してトリマー仕上げを実施でき、また食品用等の分野にも安心して使用することができる。
なお、本実施例では非形成領域Nの高さ範囲を3mmとしたが、後加工による中間層13の露出という点から、この非形成領域Nの高さ範囲は2mm以上必要である。
【0047】
ここで、図2は口筒部2の他の例を3つ縦断して示した説明図である。
上記一実施例では上端面をシール面とした所謂天面シールタイプの口筒部2を示したが、キャップ、あるいは中栓と組み合わせてさまざまな形状、シール方式の口筒部2が採用され、そのタイプに応じて非形成領域Nの範囲を決める必要がある。
【0048】
図2(a)は口筒部2の上端部の高さ範囲h1で内周面をドリルによりトリマー仕上げしてシールするタイプのものであり、この場合には高さ範囲h1の下端から、更に2mm以上の高さ範囲h2を含めて非形成領域Nとする。
また、図2(b)は口筒部2の全高さ範囲h1で内周面をトリマー仕上げしてシールするタイプのもので、口筒部2の略全高さを非形成領域Nとするが、この例の場合には半径方向の削り代を考慮して厚さtを2mm以上とるようにしている。
【0049】
図2(c)は、口筒部2の上端部でその開口径を小径化するようにしたものであり、小径化部分の高さ範囲h1で内周面をトリマー仕上げしてシールするタイプのものである。
【0050】
次に、本実施例では底部5のピンチオフ部6近傍における非形成領域Nの範囲rは、ピンチオフ部6の溶着面6aから左右にそれぞれ10mm程度としており、溶着面6a近傍には中間層13は全くないので、中間層13の影響をうけることなく高い強度を得ることができる。(図1中のピンチオフ部6近傍の拡大図参照)
【0051】
なお、本実施例では非形成領域Nの範囲rを溶着面6aから左右にそれぞれ10mmの範囲としたが、ピンチオフ部6の強度に対する中間層13の影響や、後述するブロー成形におけるパリソンの金型ピンチオフ部への位置合わせ等を考慮すると少なくとも5mmは必要である。
【0052】
ここで、図3はピンチオフ部6近傍の他の層構成例を縦断して示す説明図である。これは非形成領域Nの替わりに、ピンチオフ部6近傍に薄層領域F、特に中間層13の層厚を徐々に減少せしめたグラデーション領域Gを配置した例である。ピンチオフ部6の場合は中間層13が直接内容物に触れることはないので、このように、ピンチオフ部6の強度が確保される範囲で、中間層13を有する構成とすることもできる。
【0053】
また、多層パリソンを押出成形する際、このようなグラデーション領域Gの形成は中間層の流動の遮断あるいは流動量の急激な調整を必要とせず比較的容易に形成することができるので、生産性の面からは有利である。また、溶着面6a近傍では中間層13の層厚を極く薄くすることができ、ピンチオフ部6の強度の面からも有利である。
【0054】
なお、図3の例では薄膜領域F(グラデーション領域G)の形成範囲rを溶着面6aから20mmの範囲、この範囲での中間層13の層厚にかかる構成比を平均で0.3としたが、ピンチオフ部6の強度、および薄膜領域Fの成形性を考慮すると、薄膜領域Fの形成範囲rは少なくとも10mm必要であり、より好ましくは15mm以上にするのがよく、また中間層13の構成比は0.5以下にする必要がある。
【0055】
図4は、従来例の容器におけるピンチオフ部6近傍の層構成を縦断して示す説明図である。ピンチオフ部6はパリソンを偏平状に押付けて溶着した部分であるので、残留歪が大きく、成形後に比較的大きな内部応力が作用し、さらには容器を落下した際には溶着面6aを剥がすような方向に大きな力が作用する。
【0056】
ここで、図4に示めされる従来例では、層厚に係る構成比が0.7程度のまま厚肉の中間層13が、内層12同士が溶着した溶着面6aに隣接して位置することになり、酸化劣化や異種樹脂の混入等により中間層13と内層12との接着性が低い場合には、上記内部応力や落下に伴なう力の作用により、中間層13と内層12の界面で剥離が発生し、ピンチオフ部6の強度が低下してしまう。
【0057】
次に、図5は本発明の成形方法の一例についての概略説明図であり、図1の容器1を成形するための方法に係るものであり、開状態にあるブロー成形のための割金型31の間に多層押出し成形用のダイス32から円筒状の多層パリソン20を押し出した状態を示す。
【0058】
この多層パリソン20は、高密度ポリエチレン樹脂製の外層21および内層22と、高密度ポリエチレン樹脂を主成分とした再生材により形成される中間層23から形成されている。また、中間層23のない非形成領域PNを2箇所に形成し、それぞれを割金型31の口部33と、ピンチオフ部34に対向する高さに位置させた状態で、型閉めをし、下方の非形成領域PN部分をピンチオフ部34でピンチオフした状態で、上端開口部からエアをブローすることにより、図1に示されるような口筒部2の上端部とピンチオフ部6近傍に非形成領域PNを形成した容器1を成形することができる。
【0059】
ここで、この多層パリソン20は、内側から内層流路、中間層流路、外層流路の順に配設された少なくとも3ケの円環状層形成流路と、この層形成流路の下流に合流点を介して位置する合流路を配設した多層押出し成形用ダイスを用いて押出成形されるが、所定のタイミングでバルブ機構や、シャッター機構により中間層流路における合成樹脂の流動を遮断することにより、上記のように割金型31の口部33や、ピンチオフ部34に対向する位置に非形成領域PNを形成することができる。
【0060】
また、所定のタイミングでバルブ機構やシャッター機構の開度を調整したり、押出機、アキュムレータ等による吐出圧力を調整することにより、多層パリソン20の所定の高さ範囲に中間層23を薄くした薄層領域を形成することができ、さらにこの薄層領域を中間層23の層厚を徐々に減少せしめたグラデーション領域とすることもできる。
【0061】
以上、実施例に沿って本発明の実施の形態を説明したが、本発明の作用効果はこれら実施例に限定されものではない。たとえば使用する合成樹脂は高密度ポリエチレンに限定されるものではなく、従来よりブロー成形に使用される樹脂を使用することができる。
また、必要に応じて、たとえばガスバリア性の高い樹脂層等の他の中間層を積層することもできる。

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の多層ブロー容器は上記説明したようなものであり、再生材の利用に伴なう口筒部での再生材の露出や、ピンチオフ部の強度の低下を心配することなく再生材の使用率を大きくすることができ、コストダウンや省資源の観点から幅広い用途展開ができる。

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の容器の一実施例を一部破断して示す正面図である。
【図2】口筒部の他の3つの例を縦断して示す説明図である。
【図3】ピンチオフ部近傍の他の層構成例を縦断して示す説明図である。
【図4】従来例の容器におけるピンチオフ部近傍の層構成を縦断して示す説明図である。
【図5】本発明の成形方法の一例についての概略説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ;容器
2 ;口筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
5 ;底部
6 ;ピンチオフ部
6a;溶着面
11;外層
12;内層
13;中間層
20;パリソン
21;外層
22;内層
23;中間層
31;割金型
32;ダイス
33;口部
34;ピンチオフ部
N ;非形成領域
F ;薄層領域
G ;グラデーション領域
PN;(パリソンの)非形成領域
h、h1、h2;高さ範囲
t;厚さ
r;範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形した筒状の多層パリソンのブロー成形により成形され、口筒部(2)、肩部(3)、胴部(4)そして底部(5)を有し、少なくとも外層(11)と内層(12)と1つの中間層(13)から形成される多層ブロー容器であって、前記外層(11)と内層(12)を同一の合成樹脂で形成し、中間層(13)を、前記内外層を形成する合成樹脂を主成分とする再生材から形成し前記パリソンの押出し方向に沿って、所定の範囲に前記中間層(13)のない非形成領域(N)、あるいは中間層(13)を他の部分に比較して薄くした薄層領域(F)を形成したことを特徴とする多層ブロー容器。
【請求項2】
薄層領域(F)を、中間層(13)の層厚を徐々に減少せしめた層厚に係るグラデーション領域(G)とした請求項1記載の多層ブロー容器。
【請求項3】
口筒部(2)の上端面から所定高さ範囲を非形成領域(N)とした請求項1記載の多層ブロー容器。
【請求項4】
非形成領域(N)の高さを2mm以上とした請求項3記載の多層ブロー容器。
【請求項5】
底部(5)のピンチオフ部(6)の近傍を非形成領域(N)とした請求項1記載の多層ブロー容器。
【請求項6】
ピンチオフ部(6)の溶着面(6a)から少なくとも5mmまでの範囲を非形成領域(N)とした請求項5記載の多層ブロー容器。
【請求項7】
底部(5)のピンチオフ部(6)近傍を薄層領域(F)とした請求項1または2記載の多層ブロー容器。
【請求項8】
ピンチオフ部(6)の溶着面(6a)から少なくとも10mmまでの範囲を薄層領域(F)とした請求項7記載の多層ブロー容器。
【請求項9】
薄層領域(F)における中間層(13)の層厚に係る構成比を平均で0.5以下の範囲とした請求項7または8記載の多層ブロー容器。
【請求項10】
非形成領域(N)、あるいは薄層領域(F)を除く部分での中間層(13)の層厚に係る構成比を0.3〜0.9の範囲とした請求項1〜10記載の多層ブロー容器。
【請求項11】
内側から内層流路、中間層流路、外層流路の順に配設された少なくとも3ケの円環状層形成流路と、該層形成流路の下流に合流点を介して位置する合流路を配設した多層押出し成形用ダイス(32)を用い、内層と外層流路に同一の合成樹脂を供給し、中間層流路に前記内外層流路に供給する合成樹脂を主成分とする再生材を供給すると共に、所定のタイミングで前記中間層流路における合成樹脂の流動を遮断、あるいは流量を小さくして所定の高さ範囲に中間層の形成されない非形成領域(PN)、あるいは中間層を薄くした薄層領域を形成した多層パリソン(20)を押出し成形し、該多層パリソン(20)の下端をピンチオフすると共に、上端開口部からエアを吹き込んでブロー成形し、所定の範囲に中間層(13)のない非形成領域(N)、あるいは中間層(12)の薄い薄層領域(F)を有する多層ブロー容器を成形する、ことを特徴とする多層ブロー容器の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−55808(P2008−55808A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237013(P2006−237013)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】