説明

多層光記憶ディスク用のコンテンツ識別子

本発明は、多層記憶媒体内にデータを付与する方法ならびに装置、そのような記憶媒体、記憶媒体内に層データを付与するための信号(19)、およびそのような多層記憶媒体上のコンテンツデータが正常か否かを示す方法ならびに装置に関するものである。記憶媒体の各層は、コンテンツデータの組の少なくとも一部と識別データ(26、28)とを含む。識別データは、コンテンツデータの組全体に共通でありそのコンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子(26)を含み、コンテンツデータの同一の組に属するデータを有する各層は、同一のコンテンツ識別子を有する。こうすることにより、コンテンツデータの組の誤った組合せを、容易に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶媒体の分野に関するものであり、より詳細には、多層記憶媒体内にデータを付与する方法、コンテンツデータを有する多層記憶媒体を作製する装置、多層記憶媒体、多層記憶媒体内にコンテンツデータを付与するための信号、および多層記憶媒体内に記憶されたデータが正常か否かを示す方法ならびに装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク等の記憶媒体の分野においては、近年、記憶容量を増やすために、情報を記憶できる層を複数層付与する流れがある。通常のCDディスクは1つの層のみを有するが、DVDやSACD(スーパーオーディオCD)といった様々な他のフォーマットの導入に伴い、光情報を含むことのできる層を二層付与することが行われてきている。最近では、BD(ブルーレイディスク)と呼ばれるさらに別の規格が展開してきており、そのBD規格では、将来的にさらに多くの層が可能である。
【0003】
これらのタイプの記憶媒体を作製する際には、1つの層内に配された情報コンテンツが、別の層内に付与された誤った情報コンテンツと組み合わされる危険性がある。たとえば、それら2つの層が1つの動画映像に関するデータを含むべきものである場合には、1つの層内に1つの動画映像に関するコンテンツが配され、別の層内には別の動画映像に関するコンテンツが誤って配される危険性がある。今日知られている限りでは、そのような誤りすなわちエラーを見つける唯一の方法は、記録されたディスクを再生して、それにより上記のタイプのエラーを見つける方法である。この方法は多くの時間を要するものであり、したがって、大量生産化された製造過程において、製造された記憶媒体を検査するのによい方法ではない。
【0004】
そのため、多層記憶媒体の複数の異なる層内にあるデータコンテンツが正常か否かを、より簡単に検出することを可能とし、そのようなエラーをより迅速かつ容易に認識できるようにしたいという要請がある。
【0005】
米国特許6421315号には、複数の層を有する多層光ディスクが記載されている。複数の異なる層内には、層およびそれらの層内のトラックを識別する、識別子が付与されている。しかしながら、複数の異なる層内にあるコンテンツに関する情報はなく、したがって、米国特許6421315号は、上記で述べた原則に従ってデータコンテンツが正常か否かを識別するために用いるのには適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の1つの目的は、多層記憶媒体の複数の異なる層内にあるコンテンツデータが正常か否かを、より簡単に検出することを可能とし、誤ったコンテンツデータを伴う層の組合せを、より迅速かつ容易に認識することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によれば、上記の目的は、多層記憶媒体中にデータを付与する方法であって、
多層記憶媒体の少なくとも1つの層内に記憶するための、少なくとも1つのコンテンツデータの組を付与する工程と、
各層に対して、少なくとも一部がその層内に付与されるコンテンツデータの組に対応する識別データであって、そのコンテンツデータの組全体に共通でありそのコンテンツデータの組全体を示す、コンテンツ識別子を含む識別データを付与する工程と、
同一の組に属するコンテンツデータを有する各層が、同一のコンテンツ識別子を有するように、多層記憶媒体の各層内に、コンテンツデータを、対応の識別データと共に記憶する工程とを含むことを特徴とする方法により達成される。
【0008】
本発明の第2の側面によれば、上記の目的は、コンテンツデータを有する多層記憶媒体を作製する装置であって、
多層記憶媒体の複数の異なる層内に層データを付与する少なくとも1つの層データ転写ユニットであって、各層に対する層データが、コンテンツデータの組の少なくとも一部と識別データとを含み、その識別データが、上記のコンテンツデータの組全体に共通でありそのコンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含むものである、層データ転写ユニットと、
同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が、同一のコンテンツ識別子を有するように、上記の複数の層を結合して1つの多層記憶媒体となす結合ユニットとを備えていることを特徴とする装置によっても達成される。
【0009】
本発明の第3の側面によれば、上記の目的は、層データの少なくとも2つの異なる層を備えた記憶媒体であって、
各層が、コンテンツデータの組の少なくとも一部と識別データとを含み、
同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が、同一のコンテンツ識別子を有するように、上記の識別データが、コンテンツデータの組全体に共通でありそのコンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含むものであることを特徴とする記憶媒体によっても達成される。
【0010】
本発明の第4の側面によれば、上記の目的は、多層記憶媒体をなす層内に、コンテンツデータの組の少なくとも一部と識別データとを含む層データを付与するための信号であって、
同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が、同一のコンテンツ識別子を受け取るように、上記の識別データが、コンテンツデータの組全体に共通でありそのコンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含むものであることを特徴とする信号によっても達成される。
【0011】
本発明の第5の側面によれば、上記の目的は、多層記憶媒体の少なくとも2つの異なる層内に記憶された、またはそれら少なくとも2つの層と関連付けられたコンテンツデータが、正常であるか否かを示す方法であって、
少なくとも1つの層からの識別データ、または少なくとも1つの層に対する識別データを読み出す工程を含み、その識別データが、1つのコンテンツデータの組全体に共通でありそのコンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含むものであり、同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が同一のコンテンツ識別子を有するようにして、そのコンテンツデータの組の少なくとも一部が、その層内に付与されており、
コンテンツ識別子を比較する工程と、
検査対象である層内のコンテンツ識別子またはその層に対するコンテンツ識別子が、正しい組合せに対応するか否かを示す工程とをさらに含むことを特徴とする方法によっても達成される。
【0012】
本発明の第6の側面によれば、上記の目的は、少なくとも1つのコンテンツデータの組が記憶された、少なくとも2つの層を有する多層記憶媒体内のデータ、またはその多層記憶媒体のためのデータが、正常であるか否かを示す装置であって、
少なくとも1つの層からのまたは少なくとも1つの層に対する、コンテンツ識別子を含む識別データを読み出すように構成された、少なくとも1つのデータ読出ユニットを備え、上記のコンテンツ識別子が、1つのコンテンツデータの組のコンテンツ全体に共通でありその1つのコンテンツデータの組のコンテンツ全体を示すものであり、同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が同一のコンテンツ識別子を有するようにして、そのコンテンツデータの組の少なくとも一部が、その層内に付与されており、
コンテンツ識別子を比較し、検査対象である層内のコンテンツ識別子またはその層に対するコンテンツ識別子が、正しい組合せに対応するか否かを示すように構成された評価ユニットを、さらに備えていることを特徴とする装置によっても達成される。
【0013】
請求項2および13は、各層内に層識別子を付与することに関する。これにより、多層記憶媒体内の層の正しいシーケンスを、迅速かつ直接的に評価することが可能になる。
【0014】
請求項3によれば、1つのコンテンツデータの組は、少なくとも2つの層を占めることができる。
【0015】
請求項4は、識別データのより容易な読出しのため、識別データを、各層内の特定の位置に付与することに関する。
【0016】
請求項5および6は、識別データを、異なる種々の記憶フォーマットで使用される特定のフィールド内に付与することに関する。
【0017】
請求項7および8は、コンテンツ識別子および層識別子の、特定の形態に関する。
【0018】
本発明によれば、誤った層コンテンツのより迅速かつ簡単な検出を示すことができる。
【0019】
すなわち、本発明の背後にある全体的な思想は、多層記憶媒体の各層に対して、少なくとも一部がその層内に付与されるコンテンツデータの組に対応する識別データであって、そのコンテンツデータの組全体に共通でありそのコンテンツデータの組全体を示す、コンテンツ識別子を含む識別データを付与するという思想である。したがって、同一の組に属するコンテンツデータを有する各層は、同一のコンテンツ識別子を有する。
【0020】
データの組という表現は、一体としてパッケージ化され、市場に出され、販売され得る、種々のあらゆるタイプのデータを包含する意図である。そのような組は、任意の組合せおよび任意の量の、映像ストリーム、音声ストリーム、静止画像およびテキストといった、種々の異なるタイプのコンテンツデータを含み得る。さらに、同一の多層記憶媒体上に、上記のような組が、1つより多く付与されてもよい。
【0021】
本発明の上記およびその他の側面は、以下に説明する本発明の実施形態より明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を、添付の図面と共に参照することにより、本発明をより明確に理解することができるであろう。
【0023】
以下、2つの異なる層を持つ光ディスクの形態を有する多層記憶媒体を例に挙げて、本発明を説明する。ここで、媒体は、これよりも多くの数の層を有していてもよい点に留意されたい。現在開発中の規格、いわゆるブルーレイディスク規格では、8個の異なる層を有する可能性がある。本明細書における本発明の説明上は、本発明の概念をより分かりやすく説明するために、層の数を2つに制限している。
【0024】
まず図1を参照すると、2つのマスターディスクを作製する装置の模式図が示されている。この装置は、第1の制御ユニット10を含み、この第1の制御ユニット10は、第1のレーザー12および第2のレーザー16と通信する。各レーザー12および16は、対応のマスターディスク14および18上にデータを記憶するため、制御ユニット10の制御の下、光を発する。第1の制御ユニット10は、共通の出所を有するコンテンツデータの組を含んでいる。そのようなコンテンツデータの組は、動画映像であってもよいし、音楽アルバムであってもよいし、場合によってはそれら両方の組合せであってもよい。あるいは、他のコンテンツデータの組合せが、一体としてパッケージ化されて販売を意図されたものであってもよい。そのコンテンツデータの組は、最終的な多層記憶媒体の、2つの層上に記憶される。各層用のデータは、予め規定されたフォーマット(図2を参照して後述する)に従って、第1の制御ユニット10内に記憶されている。あるいは、コンテンツデータが最終的なディスク上に付与されるときのフォーマットを、第1の制御ユニット10が与えてもよい。第1の制御ユニット10はまた、マスターディスク14および18上に情報を記憶するため、レーザーを制御して光を発するようになす制御機構も含んでいる。それにより、予め規定されたフォーマットに従うデータがディスク14および18上に記憶されるように、レーザーが制御される。第1のマスターディスク14は、第1の層L0用に提供され、第2のマスターディスク18は、第2の層L1用に提供される。マスターディスクを提供するための一般的な技術は、当該技術分野においてよく知られており、様々なバリエーションを有する。しかしながら、それらのバリエーションに共通するのは、記憶される情報に対応するピットが、マスター内に形成されるという点である。
【0025】
各層の信号フォーマット19が、図2に示されている。各層は、リードイン領域20、それに続くデータ領域22、および最後にリードアウト領域24を含んでいる。データ領域22は、そのディスクに使用されるフォーマットに従って、最終的な層に記憶されるべきデータの組の一部を含む。リードイン領域、データ領域およびリードアウト領域は、たとえばSACD規格より、当該技術分野においてよく知られている。ただし、本発明によれば、リードイン領域は、最終的な記憶媒体内のデータが正常に配置されていることをより簡単に識別するための、特別な情報を含んでいる。この理由のため、リードイン領域は、予め規定された特定の位置に、2つのフィールドを包含する識別データ26および28を含んでいる。それら2つのフィールドとは、データの組全体に共通で、そのデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含む第1のフィールド26と、最終的な記憶媒体内においてその層がどの位置を有するものであるかを識別する、層識別子28とである。この例では、それら2つのフィールドは、隣接して付与されている。このように、2つのフィールドが隣接して付与されることが好ましいが、それらの位置が分かる限り、間隔を置いて配されてもよい。
【0026】
コンテンツデータ(好ましくはメディアコンテンツのデータ)は、前述のとおり、映画や、多数の歌を含むレコードアルバムや、それら両方の組合せとして記述することができるが、同様に、映画または文学作品に対しては字幕としてのテキストを含んでいてもよいし、層内に記憶されるべき、別個のまたは組み合わされる静止画像を含んでいてもよい。したがって、コンテンツは、一体としてパッケージ化され販売されることを意図された、1つの組にまとめられる。このため、コンテンツの組は、映画のコンテンツ番号もしくはカタログ番号、CDのISRCコード、または本のISBN番号であってもよい、その組のコンテンツ全体に共通する番号を与えられる。さらに、この番号は、あるメディアコンテンツの組の異なるバージョンに対しては、異なる番号であってもよい。たとえば、1つの映画が複数の異なる市場向けに製作され、いくつかのシーンが、一部の国では含められ、他の国では含められないこともあり得る。その場合、同一の映画のそれら異なるバージョンに対して、異なるコンテンツデータの組を与え、それら異なる組のそれぞれが異なる番号を有するようにする可能性もある。異なる音楽アルバムに関しても、コンテンツデータの異なる組として、それぞれ異なるコンテンツ番号と関連付けられた、多数の歌の異なるミキシング版が与えられ得るので、同じことがいえる。
【0027】
上記で述べた実施形態では、識別データは、リードイン領域内に付与されていた。たとえばBDでは、好ましくはリードイン領域内に付与されたPIC帯(Permanent Information and Control band;固定情報および制御帯)内に、上記のフィールドが与えられる。このPIC帯は、他に、その層の容量や最大データレート等に関する情報を含んでいる。しかしながら、この識別データは、リードイン領域内に付与されなくてはならない訳ではない。たとえば、その位置が予め規定されていて、情報を容易かつ直接的に読み出すことができるのであれば、識別データは、層内のいかなる位置に付与されてもよい。
【0028】
以上のようにして、各マスターディスクには、データの組の異なる部分が付与されるところ、リードイン領域は、同一のコンテンツ識別子を含むが、異なる層識別子を含む。したがって、第1のマスターディスクは、特定のコンテンツに関するコンテンツ識別子と、それに続いて、層L0を示す層識別子とを受け取り、第2のマスターは、特定のコンテンツに関する上記と同一のコンテンツ識別子と、層L1を示す別の層識別子とを受け取る。
【0029】
その後、各マスターから、スタンパーが作製される。図3は、第2のマスター18から形成されたスタンパー30を示している。スタンパー30は、スタンパーがマスターのピットに合わせて順応するように、たとえば電気めっきにより、マスターの構造に倣って形成される。
【0030】
図4に示されているように、層L0およびL1のそれぞれに対して形成された各スタンパー30および32は、その後、最終的な記憶媒体44に用いられるべき基板または層38および40をそれぞれ成形する、層データ転写ユニットまたは成形ユニット34および36内において用いられる。その後、層38および40は、結合または接着ユニット42へと供給される。この結合または接着ユニット42は、層38と40とを一体に結合または接着して、最終的な記憶媒体44を形成する。この処理は、通常は接着剤を用いて行われる。成形から接着への移行に際しては、誤った層または基板が接着ユニット42内に供給される危険性がある。ここでは、単純化された製造過程を説明してきたことを理解されたい。いくつかのさらなる製造工程を含むこともできるし、また通常は含むが、標準的な記憶媒体の製造方法は、当該技術分野においてはよく知られているので、ここでさらなる説明を行う必要はない。多層記憶媒体を作製する種々の代替方法も、当該技術分野においてはよく知られている。
【0031】
したがって、本発明に従う、記憶媒体を作製する方法は、図5を参照して、以下のように要約することができる。図5は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る、多層記憶媒体内にデータを付与する方法のフローチャートを示している。まず、ステップ46において、すべての層内に記憶するためのコンテンツデータの組が付与される。続いて、ステップ48において、リードイン領域とリードアウト領域とを伴い、リードアウト領域が、コンテンツ全体に共通でそのコンテンツ全体を示すコンテンツ識別子と、層識別子とを含むような、コンテンツデータの信号構造が各層について付与される。その後、ステップ50において、コンテンツデータの組がマスター上に記憶される。このとき、コンテンツデータの異なる部分が、異なるマスター上の、リードイン領域とリードアウト領域との間のデータ領域内に記憶される。したがって、同一の組に属するコンテンツデータを有する各マスターは、同一のコンテンツ識別子を有する。続いて、ステップ52において、マスターに基づいて、各層に対するスタンパーが与えられる。その後、ステップ54において、それらのスタンパーが、異なる層を成形するのに用いられ、ステップ56において、それらの異なる層が結合されて最終的な多層光記憶媒体が生成される。
【0032】
上記の説明では、多層記憶媒体の全体を一組のデータが占める場合について説明がなされた。本発明に従ってこの形態が実施されれば、その媒体中のすべての層が正常なものであるか否か、すなわちコンテンツデータの正しい組に属しておりかつ各層が正しい順序で付与されているか否かを、容易に識別することができる。さらに、この識別は、データの組を再生する必要なしに、分かっている位置にある識別子を直接読み出すことによっても行うことができる。しかしながら、本発明は、すべての層に同一のデータの組を付与する形態に限られない点を理解されたい。1つの組が、より少ないスペースを占めてもよく、たとえば、8層の媒体中の2つのみの層、または1つのみの層を占めてもよい。したがって、すべての異なる層に、異なるデータの組を付与することすら可能である。ただし、各層は、1つを超えるデータの組からのコンテンツデータを含むことはできない。しかしながら、データの組と層との正しい組合せは、本発明のため容易に確認することができる。このことは、記憶媒体の大量のバッチが生産され、欠陥製品の出荷を防ぐために各バッチについて正常か否かをチェックしなくてはならない場合には、当然ながら有利である。
【0033】
上記で述べたように、記憶媒体が正しく作製されたか否かのチェックが、容易かつ迅速に行われる。最後に、本発明に従って作製された記憶媒体をチェックする方法および装置を、図6および7を参照して説明する。図6および7は、本発明の1つの実施形態に係る、データが正常か否かを示すための装置の模式図と、データが正常か否かを示す方法のフローチャートとを示している。
【0034】
図6の装置は、第2の制御ユニット58を含み、この第2の制御ユニット58は、記憶媒体44の異なる層38および40に照射を行うための、第3および第4のレーザー60および62に接続されている。第1の層38から反射された光は、第1の受光器64により受光され、第2の層40から反射された光は、第2の受光器66により受光される。それらの受光器は、処理のため、第2の制御ユニット58に接続されている。第3のレーザー60および第1の受光器64は、第1のデータ読出ユニットを構成し、第4のレーザー62および第2の受光器66は、第2のデータ読出ユニットを構成する。第2の制御ユニット58は、ここでは評価ユニットである。識別データの情報の位置は分かっているので、上記の受光器は、検査対象ディスクの層から識別データを受け取るのみである。以下、この装置がどのように機能するかを、図7を参照して説明する。第2の制御ユニット58は、どのコンテンツ識別子と層識別子との組合せをその記憶媒体が有しているべきかに関する情報を含んでいる。ここで、層のチェックは、順次直列的に行われる。ただし、同様に、層のチェックが並列的に行われてもよい点を理解されたい。まず、ステップ68において、第2の制御ユニット58は、層カウンターnをゼロに設定し、その後ステップ70において、第2の制御ユニット58は、第1の受光器64により第1の層38内の識別データを読み出すために、第3のレーザー60が光を発するようになし、読み出された識別データの結果は、第2の制御ユニット58に供給される。続いて、ステップ72において、第2の制御ユニット58は、受け取ったコンテンツ識別子を、記憶されているコンテンツ識別子と比較する。ステップ74においてコンテンツ識別子が正しくない場合には、ステップ80において、第2の制御ユニット58により欠陥があることが示される。しかしながら、ステップ74においてコンテンツ識別子が正しい場合には、第2の制御ユニット58は、ステップ76の層識別子の比較へと進む。層識別子が正しくない場合、すなわち予め記憶された識別子に層識別子が対応しない場合には、ステップ80において、欠陥があることが示される。しかしながら、層識別子が正しい場合には、制御ユニットは、ステップ82の層カウンターの確認へと進む。その層が構造中の最後の層である場合には、ステップ84において、記憶媒体にエラーがないことが示される。しかしながら、検査対象の層が最後の層でない場合には、ステップ88において、層カウンターが1だけ増分され、ステップ70において、次の層内の識別データが読み出される。この例では、次の層内の識別データの読出しは、第4のレーザー62と第2の受光器66とを用いて識別データを読み出すことにより行われる。
【0035】
このようにして、各層の分かっている位置にある識別情報を読み出すだけで、正常か否かを評価するため実際のコンテンツを再生する必要なしに、最終的な光記憶媒体が正常か否かが、容易かつ迅速にチェックされる。
【0036】
上記に説明した方法については、いくつかのバリエーションを構成することができる。たとえば、すべての層を読み出すように構成された、1つのみのデータ読出ユニットを用いることも可能である。すべての層内に1つのコンテンツデータの組が付与されている場合、制御ユニットは、どの層がどの層内にどのコンテンツを有するべきかに関する情報を、含んでいなくてもよい。その場合、ディスクの各層を順次調べて、すべてのコンテンツ識別子が同一であり、かつ連続する層識別子が与えられている場合に、正しい組合せであることを示せば十分である。
【0037】
別の可能なバリエーションは、最終的な製品において正常か否かをチェックしなくてもよい形態である。スタンパーまたは接着前の層をチェックすることも、同様に可能である。この場合、一度に1つのスタンパーまたは基板についてのみチェックがなされてもよい。
【0038】
上記のとおり、本発明は、多くのバリエーションを含むものであり、特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従う、マスターディスクを作製する装置の模式図
【図2】本発明の1つの実施形態に係る、多層ディスク上で用いる信号フォーマットを示した図
【図3】本発明に従う、多層記憶媒体の層を作製するためのスタンパーの形成を、概略的に示した図
【図4】本発明の1つの実施形態に係る、多層記憶媒体を形成する装置の模式図
【図5】本発明の1つの実施形態に係る、多層記憶媒体を形成する方法のフローチャート
【図6】本発明の1つの実施形態に係る、データが正常か否かを示すための装置の模式図
【図7】本発明の1つの実施形態に係る、データが正常か否かを示す方法のフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層記憶媒体中にデータを付与する方法であって、
前記多層記憶媒体の少なくとも1つの層内に記憶するための、少なくとも1つのコンテンツデータの組を付与する工程と、
各層に対して、少なくとも一部が当該層内に付与されるコンテンツデータの組に対応する識別データであって、該コンテンツデータの組全体に共通であり該コンテンツデータの組全体を示す、コンテンツ識別子を含む識別データを付与する工程と、
同一の組に属するコンテンツデータを有する各層が、同一のコンテンツ識別子を有するように、前記多層記憶媒体の各層内に、コンテンツデータを、対応の識別データと共に記憶する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記識別データがさらに層識別子を含み、
前記記憶する工程が、前記多層記憶媒体の各層内に、コンテンツデータを、実際の層をさらに示す識別データと共に記憶する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つのデータの組が、少なくとも2つの層内に付与されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記識別データが、各層内の特定の位置に付与されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記識別データが、各層のリードイン領域内に記憶されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記識別データが、各層のPIC帯内に記憶されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
コンテンツ全体に共通であり該コンテンツ全体を示す前記コンテンツ識別子が、コンテンツ番号またはカタログ番号であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
各層識別子が、当該層に固有のコードを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項9】
コンテンツデータを有する多層記憶媒体を作製する装置であって、
多層記憶媒体の複数の異なる層内に層データを付与する少なくとも1つの層データ転写ユニットであって、各層に対する前記層データが、コンテンツデータの組の少なくとも一部と識別データとを含み、該識別データが、前記コンテンツデータの組全体に共通であり該コンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含むものである、層データ転写ユニットと、
同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が、同一のコンテンツ識別子を有するように、前記複数の層を結合して1つの多層記憶媒体となす結合ユニットとを備えていることを特徴とする装置。
【請求項10】
層データの少なくとも2つの異なる層を備えた記憶媒体であって、
各層が、コンテンツデータの組の少なくとも一部と識別データとを含み、
同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が、同一のコンテンツ識別子を有するように、前記識別データが、前記コンテンツデータの組全体に共通であり該コンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含むものであることを特徴とする記憶媒体。
【請求項11】
多層記憶媒体をなす層内に、コンテンツデータの組の少なくとも一部と識別データとを含む層データを付与するための信号であって、
同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が、同一のコンテンツ識別子を受け取るように、前記識別データが、前記コンテンツデータの組全体に共通であり該コンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含むものであることを特徴とする信号。
【請求項12】
多層記憶媒体の少なくとも2つの異なる層内に記憶された、または該少なくとも2つの層と関連付けられたコンテンツデータが、正常であるか否かを示す方法であって、
少なくとも1つの層からの識別データ、または少なくとも1つの層に対する識別データを読み出す工程を含み、該識別データが、1つのコンテンツデータの組全体に共通であり該コンテンツデータの組全体を示すコンテンツ識別子を含むものであり、同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が同一のコンテンツ識別子を有するようにして、該コンテンツデータの組の少なくとも一部が、当該層内に付与されており、
コンテンツ識別子を比較する工程と、
検査対象である前記層内のコンテンツ識別子または該層に対するコンテンツ識別子が、正しい組合せに対応するか否かを示す工程とをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
識別データを読み出す前記工程が、少なくとも2つの層からの識別データ、または少なくとも2つの層に対する識別データを読み出す工程を含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記識別データがさらに層識別子を含み、
当該方法が、
層識別子を比較する工程と、
検査対象である前記層内の層識別子または該層に対する層識別子が、正しい組合せに対応するか否かを示す工程とをさらに含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのコンテンツデータの組が記憶された、少なくとも2つの層を有する多層記憶媒体内のデータ、または該多層記憶媒体のためのデータが、正常であるか否かを示す装置であって、
少なくとも1つの層からのまたは少なくとも1つの層に対する、コンテンツ識別子を含む識別データを読み出すように構成された、少なくとも1つのデータ読出ユニットを備え、前記コンテンツ識別子が、1つのコンテンツデータの組のコンテンツ全体に共通であり該1つのコンテンツデータの組のコンテンツ全体を示すものであり、同一のコンテンツデータの組に属するデータを有する各層が同一のコンテンツ識別子を有するようにして、該コンテンツデータの組の少なくとも一部が、当該層内に付与されており、
コンテンツ識別子を比較し、検査対象である前記層内のコンテンツ識別子または該層に対するコンテンツ識別子が、正しい組合せに対応するか否かを示すように構成された評価ユニットを、さらに備えていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−500410(P2007−500410A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521734(P2006−521734)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051287
【国際公開番号】WO2005/010887
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】