説明

多層光記録媒体、記録装置、記録方法

【課題】3層以上の多層光記録媒体においてストリームデータ記録の品質悪化を防止する。
【解決手段】ストリームデータが記録される論理アドレス空間とされる領域内の最終論理アドレス近辺に配置されたファイルシステム領域と層形成方向に重なる他の記録層の領域には論理アドレス空間が割り当てられていないようにする。例えばファイルシステム領域と層形成方向に重なる領域は交替領域とする。これによって、ファイルシステム領域を通過したレーザ光によってストリームデータ記録が行われることがないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトワンス型やリライタブル型などの記録可能型光ディスクなどであって、記録層が3層以上の多層光記録媒体と、該多層光記録媒体に対応する記録装置、記録方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2009−93690号公報
【背景技術】
【0003】
例えばブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等の光記録媒体が知られている。光記録媒体においては半導体レーザを用いた情報の記録再生が行われる。ブルーレイディスクの場合、ライトワンス型のディスク(BD−R:Blu-ray Disc Recordable)やリライタブル型のディスク(BD−RE:Blu-ray Disc Rewritable)などが知られている。
【0004】
また、光ディスク等の記録媒体は、その記録容量の増大が常に求められている。例えばブルーレイディスクの例で言えば、記録層を3層構造、4層構造と更なる多層化を進め、飛躍的な容量増大を実現することが想定されている。BD−R、BD−REでも、多層化によりユーザによるデータ記録の大容量化が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特にBD−R、BD−RE等としての多層光記録媒体において、3層以上の場合に問題が生ずることがある。
図20(a)(b)でBD−R、BD−REの3層ディスク、4層ディスクの場合の例で説明する。図20(a)(b)はブルーレイディスクにおけるデータゾーンの半径方向の構造を示している。なお、後に図1で説明するが、データゾーンとは、主にユーザデータが記録される領域である。
【0006】
図20(a)は、記録層L0,L1,L2が形成される3層ディスクの例を示している。
レーザ入射方向から見ると、最も奥に記録層L0が形成され、記録層L1,L2が、順に手前側となる。
各記録層L0,L1,L2では、それぞれデータゾーンにおける内周側の領域がISA0,ISA1、ISA2とされる。ISAはインナースペアエリア(内周側交替領域)であり、ディフェクト等による交替処理に用いられる。
また各記録層L0,L1,L2の外周側の領域はOSA0,OSA1、OSA2とされる。OSAはアウタースペアエリア(外周側交替領域)であり、これもディフェクト等による交替処理に用いられる領域である。この場合、OSA2が、最後の交替領域LSA(ラストスペアエリア)となる。
【0007】
各記録層L0,L1,L2では、ISAとOSAに挟まれた領域が、論理アドレス空間とされ、ユーザデータが記録される。論理アドレス空間とは、論理アドレス(ロジカルセクターナンバLSN)が割り当てられた領域である。
当該論理アドレス空間を形成する先頭論理アドレス(FirstLSN)の位置は、記録層L0におけるISA0の直後の位置となる。また最終論理アドレス(LastLSN)の位置は、記録層L2におけるOSA2(LSA)の直前位置となる。
先頭論理アドレスから所定区間は、ファイルシステムFSが記録される領域となる。
また最終論理アドレスまでの所定区間も、ファイルシステムFSが記録される領域となる。
【0008】
データゾーンには主にユーザデータとして映像ストリームデータなどのストリームデータが記録される。そのストリームデータの記録は、矢印RSに示すように、記録層L0においてファイルシステムFSの後から外周側に向かって行われる。次に記録層L1では、OSA1の直前部分から内周側に向かって行われる。さらに記録層L2では、ISA2の直後の位置から外周側に向かって行われる。
【0009】
ここで、ブルーレイディスク等の多層光記録媒体についての留意点を述べておく。
多層の光ディスクでは一般的に、記録層L0→L1→L2・・・という順番で書き込みをした場合に最も品質がよくなるように設計されている。これに対し、例えば記録層L1以上の記録層に書き込みをした後に、同一半径の若い番号の記録層に記録をすると、記録品質が悪くなりやすいということがある。特にライトワンス型メディアで悪くなりやすい。
また、最終論理アドレスLastLSN付近には、必ずファイルシステムを記録する必要がある。
そしてファイルシステムの記録時にはベリファイ(Verify)処理が行われる。このため記録品質が悪くても交替処理により救われる。しかしストリームデータの記録時にはベリファイ処理を行わないため、ストリームデータ記録時の記録品質を維持することは非常に重要である。
【0010】
このような点を考慮した上で、図20(a)をみると、この3層ディスクの場合、記録層L0,L1の外周付近で「記録層L2での記録後に同一半径のL0/L1に書き込みをする」ということが生じてしまう。つまり、初期化処理で図のようにファイルシステムを書き込むわけであるが、その後、記録層L0、L1における領域Wで示す範囲では、記録層L2の書込済領域(ファイルシステム領域)をレーザ光が通過する状態でストリームデータ記録が行われる。するとこの場合、当該領域Wでは、記録品質が悪くなる恐れが大きい。そして後にリードできない可能性が高くなる。
さらにストリームデータ記録であるため交替処理が行われず、記録しようとしたストリームデータが失われてしまう可能性も高くなるということになる。
【0011】
図20(b)は4層ディスクの場合を示している。4層ディスクの場合も、各記録層L0,L1,L2,L3では、内周側にISA(ISA0,ISA1,ISA2,ISA3)が設けられる。また外周側にOSA(OSA0,OSA1,OSA2,OSA3)が設けられる。
各記録層L0,L1,L2,L3において、ストリームデータ記録は矢印RSの方向に行われる。従って、最終論理アドレスは記録層L3のISA3の外周側位置となる。ファイルシステムFSの記録は、先頭論理アドレス(FirstLSN)の近辺と、最終論理アドレス(LastLSN)の近辺に行われる。
【0012】
この4層ディスクの場合も、同様の事象が生ずる。記録層L1、L2における領域Wで示す範囲では、記録層L3の書込済領域(ファイルシステム領域)をレーザ光が通過する状態でストリームデータ記録が行われる。従って当該領域Wでは、記録品質が悪くなり、後にリードできない可能性が高くなる。結局ストリームデータが失われてしまう恐れがある。
【0013】
なお、このような問題は2層ディスクの場合は特に想定されなかった。
2層ディスクの場合は、図20(b)における記録層L0とL3が、記録層L0,L1として存在すると考えればよい。その場合、最終論理アドレス近辺のファイルシステムFSの記録領域と重なるのは記録層L0における先頭論理アドレス近辺のファイルシステムFSの記録領域であり、ストリームデータ記録が行われる領域とはならないためである。
【0014】
本発明は、特に3層以上の記録媒体において、図20で述べたような問題を生じさせないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の多層光記録媒体は、レーザ光によって情報の記録再生が行われる記録層がn層(n≧3)設けられた多層光記録媒体であって、ストリームデータが記録される論理アドレス空間とされる領域内の最終論理アドレス近辺にファイルシステム領域が配置されるとともに、最終論理アドレス近辺の上記ファイルシステム領域が配置された記録層とは他の記録層において、上記ファイルシステム領域と層形成方向に重なる領域には、上記論理アドレス空間が割り当てられていない多層光記録媒体である。
また、各記録層には、上記論理アドレス空間に用いられる領域に物理的に隣接して交替領域が形成されているとともに、上記ファイルシステム領域と層形成方向に重なる上記他の記録層の領域は、上記交替領域とされている。
例えば、少なくとも最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと、上記ファイルシステム領域のサイズの合計より、上記他の記録層の交替領域のサイズが大とされることで、上記ファイルシステム領域と層形成方向に重なる上記他の記録層の領域が上記交替領域とされる。
またレーザ光入射面側からみて、第1記録層が最も奥に形成され、該第2記録層から第n記録層までは、順にレーザ光入射面側に近づくように形成されており、上記論理アドレス空間は、上記第1記録層における先頭論理アドレスから、上記第n記録層における上記最終論理アドレスまでとして形成される。
【0016】
本発明の記録装置は、レーザ光によって情報の記録再生が行われる記録層がn層(n≧3)設けられた多層光記録媒体に対する記録装置である。
そして上記多層光記録媒体の各記録層に対してレーザ光照射を行って情報記録を行う記録部と、上記多層光記録媒体に対する物理フォーマット処理として、各記録層において上記論理アドレス空間に用いられる領域に隣接して交替領域を設定する際に、上記最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと、該交替領域とは層形成方向に重なる他の記録層における交替領域のサイズについて、上記他の記録層における交替領域のサイズが、少なくとも最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと最終論理アドレス近辺に形成されるファイルシステム領域のサイズの合計より大となるように設定する管理情報を、上記記録部により上記多層光記録媒体に記録させる処理を行う制御部とを備える。
また上記制御部は、さらに、上記物理フォーマット後のファイルシステム初期化として、上記記録部に、上記論理アドレス空間の先頭論理アドレス近辺、及び最終論理アドレス近辺に、それぞれファイルシステム領域を形成させることで、上記他の記録層の交替領域が最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域と層形成方向に重なるようにする。
また上記制御部は、さらに、上記ファイルシステム初期化後の多層光記録媒体の論理アドレス空間とされる領域にストリームデータの記録を行うように上記記録部の制御を行う。
【0017】
また本発明の記録媒体は、記録層がn層(n≧3)設けられた多層光記録媒体であって、また物理フォーマットがなされた多層光記録媒体に対する記録装置である。そして上記多層光記録媒体の各記録層に対してレーザ光照射を行って情報記録を行う記録部と、上記多層光記録媒体に対する物理フォーマット処理として、各記録層において上記論理アドレス空間に用いられる領域に隣接して交替領域を設定する際に、上記最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと、該交替領域とは層形成方向に重なる他の記録層における交替領域のサイズについて、上記他の記録層における交替領域のサイズが、少なくとも最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと最終論理アドレス近辺に形成されるファイルシステム領域のサイズの合計より大となるように設定された上記多層光記録媒体に対するファイルシステム初期化として、上記記録部に、上記論理アドレス空間の先頭論理アドレス近辺、及び最終論理アドレス近辺に、それぞれファイルシステム領域を形成させることで、上記他の記録層の交替領域が最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域と層形成方向に重なるようにする処理を行う制御部とを備える。
【0018】
本発明の記録方法は、レーザ光によって情報の記録再生が行われる記録層がn層(n≧3)設けられた多層光記録媒体に対する記録方法である。そして、上記多層光記録媒体に対する物理フォーマットの段階で、各記録層において上記論理アドレス空間に用いられる領域に隣接して交替領域を設定する際に、上記最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと、該交替領域とは層形成方向に重なる他の記録層における交替領域のサイズについて、上記他の記録層における交替領域のサイズが、少なくとも最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと最終論理アドレス近辺に形成されるファイルシステム領域のサイズの合計より大となるように設定する。次に上記物理フォーマット後のファイルシステム初期化として、上記論理アドレス空間の先頭論理アドレス近辺、及び最終論理アドレス近辺に、それぞれファイルシステム領域を形成することで、上記他の記録層の交替領域が最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域と層形成方向に重なるようにする。そして上記ファイルシステム初期化後の多層光記録媒体の論理アドレス空間とされる領域にストリームデータの記録を行う。
【0019】
即ち本発明では、3層以上の多層光記録媒体において、最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域が配置された記録層とは他の記録層における上記ファイルシステム領域と層形成方向に重なる領域には、上記論理アドレス空間が割り当てられていない。これによって、ファイルシステムの記録領域を透過したレーザ光によってストリームデータ記録が行われることがないようにされる。
また具体的には、ストリームデータ記録の前には、物理フォーマット及びファイルシステム初期化が行われる。この場合、物理フォーマット時の交替領域(ISA:インナースペアエリア、OSA:アウタースペアエリア、LSA:ラストスペアエリア)の設定を工夫することで、ファイルシステム領域と層形成方向に重なる領域が論理アドレス空間とならないようにできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、3層以上の多層光記録媒体において、ファイルシステム領域を透過したレーザ光によってストリームデータ記録が行われるようになることを回避できる。これによってストリームデータ記録の信頼性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態のディスクのエリア構造の説明図である。
【図2】実施の形態のディスクのDMAの説明図である。
【図3】実施の形態のディスクのDDSの内容の説明図である。
【図4】実施の形態のディスクのDFLの内容の説明図である。
【図5】実施の形態のディスクのDFL及びTDFLのディフェクトリスト管理情報の説明図である。
【図6】実施の形態のディスクのDFL及びTDFLの交替アドレス情報の説明図である。
【図7】実施の形態のディスクのTDMAの説明図である。
【図8】実施の形態のディスクのスペースビットマップの説明図である。
【図9】実施の形態のディスクのTDFLの説明図である。
【図10】実施の形態のディスクのTDDSの説明図である。
【図11】実施の形態のディスクのSRRの説明図である。
【図12】実施の形態のディスクのSRRIの説明図である。
【図13】実施の形態のディスクのSRRIヘッダの説明図である。
【図14】実施の形態のディスクのSRRエントリの説明図である。
【図15】実施の形態のディスクの層構造の説明図である。
【図16】実施の形態のディスクドライブ装置のブロック図である。
【図17】実施の形態の各記録層の構成の説明図である。
【図18】実施の形態のユーザデータ記録までの手順の説明図である。
【図19】他の実施の形態の各記録層の構成の説明図である。
【図20】従来のディスクの各記録層の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態としてブルーレイディスク及びそのディスクドライブ装置(記録再生装置)の例を挙げ、次の順序で説明する。
[1.ディスク構造]
[2.DMA]
[3.TDMA]
[4.SRR及びSRRI]
[5.交替領域を用いた交替処理]
[6.多層ディスクの構造]
[7.ディスクドライブ装置]
[8.実施の形態の記録層構造]
[9.変形例]
【0023】
[1.ディスク構造]

まず実施の形態の光ディスクの概要について説明する。この光ディスクは、いわゆるブルーレイディスクと呼ばれる高密度光ディスク方式の範疇におけるライトワンス型ディスク(BD−R)又はリライタブル型ディスク(BD−RE)として実施可能である。
【0024】
本実施の形態の高密度光ディスクの物理パラメータの一例について説明する。
本例の光ディスクは、ディスクサイズとしては、直径が120mm、ディスク厚は1.2mmとなる。即ちこれらの点では外形的に見ればCD(Compact Disc)方式のディスクや、DVD(Digital Versatile Disc)方式のディスクと同様となる。
そして記録/再生のためのレーザとして、いわゆる青色レーザが用いられ、また光学系が高NA(例えばNA=0.85)とされる。さらには狭トラックピッチ(例えばトラックピッチ=0.32μm)、高線密度(例えば記録線密度0.12μm)を実現する。これらにより、直径12cmのディスクにおいて、ユーザーデータ容量として23G〜25GB(Giga Byte)程度を実現している。また更なる高密度記録により、30GB程度の容量も可能とされる。
また、記録層が複数とされたいわゆるマルチレイヤーディスクも開発されており、マルチレイヤーディスクの場合、ユーザーデータ容量は、ほぼ層数倍となる。なお、記録層のことを「レイヤ」とも呼ぶ。
【0025】
図1に、ディスク全体のレイアウト(領域構成)を示す。
ディスク上の領域としては、内周側からインナーゾーン、データゾーン、アウターゾーンが配される。
なお、この図1では記録層が1つの構造(シングルレイヤ)で示しており、その場合、インナーゾーンはリードインエリア、アウターゾーンはリードアウトエリアとなる。
実施の形態のディスクは後述するように3層ディスク、4層ディスクもしくはそれ以上の多層ディスクとなるが、第1層(レイヤL0)のインナーゾーンがリードインエリアとなる。そして最終的に、記録されたユーザデータ容量に応じて、第1層(レイヤL0)のアウターゾーン以降(レイヤL1、L2,L3のインナーゾーン又はアウターゾーン)のいずれかがリードアウトエリアとされることになる。
なお、説明の便宜上、第1層(レイヤL0)のリードインエリアを含む各記録層の内周側領域を、インナーゾーンと総称する。また各記録層の外周側領域をアウターゾーンと総称する。
【0026】
また、記録・再生に関する領域構成としてみれば、インナーゾーン(リードインエリア)のうちの最内周側の領域が再生専用領域とされ、インナーゾーンの途中からアウターゾーンまでが、記録可能領域とされる。
再生専用領域にはBCA(Burst Cutting Area)やPIC(プリレコーデッド情報領域)が設けられる。但し2層以上のマルチレイヤディスクでは、PICは第1層(レイヤL0)のみとなり、第2層(レイヤL1)以降の記録層では、PICと同一半径部分は記録可能領域となる。
またインナーゾーンにおいて、記録可能領域には、管理/制御情報の記録等のため、後述するOPC、TDMA、INFO(DMA等を含む)等が形成される。
【0027】
再生専用領域及び記録可能領域には、ウォブリンググルーブ(蛇行された溝)による記録トラックがスパイラル状に形成されている。グルーブはレーザスポットによるトレースの際のトラッキングのガイドとされ、かつこのグルーブが記録トラックとされてデータの記録再生が行われる。
なお本例では、グルーブにデータ記録が行われる光ディスクを想定しているが、本発明はこのようなグルーブ記録の光ディスクに限らず、グルーブとグルーブの間のランドにデータを記録するランド記録方式の光ディスクに適用してもよいし、また、グルーブ及びランドにデータを記録するランドグルーブ記録方式の光ディスクにも適用することも可能である。
【0028】
また記録トラックとされるグルーブは、ウォブル信号に応じた蛇行形状となっている。そのため、光ディスクに対するディスクドライブ装置では、グルーブに照射したレーザスポットの反射光からそのグルーブの両エッジ位置を検出し、レーザスポットを記録トラックに沿って移動させていった際におけるその両エッジ位置のディスク半径方向に対する変動成分を抽出することにより、ウォブル信号を再生することができる。
【0029】
このウォブル信号には、その記録位置における記録トラックのアドレス情報(物理アドレスやその他の付加情報等)が変調されている。そのため、ディスクドライブ装置では、このウォブル信号からアドレス情報等を復調することによって、データの記録や再生の際のアドレス制御等を行うことができる。
【0030】
図1に示すインナーゾーンは、例えば半径24mmより内側の領域となる。
そしてインナーゾーン内におけるPIC(プリレコーデッド情報領域)には、あらかじめ、記録再生パワー条件等のディスク情報や、ディスク上の領域情報、コピープロテクションにつかう情報等を、グルーブのウォブリングによって再生専用情報として記録してある。またPICには、例えばディスクタイプ、ディスクサイズ、ディスクバージョン、層構造、チャンネルビット長、BCA情報、転送レート、データゾーン位置情報、記録線速度、記録/再生レーザパワー情報なども記録される。
なお、エンボスピット等によりこれらの情報を記録してもよい。
【0031】
また、PICよりさらに内周側にBCAが設けられる。BCAはディスク記録媒体固有のユニークIDを、例えば記録層を焼き切る記録方式で記録したものである。つまり記録マークを同心円状に並べるように形成していくことで、バーコード状の記録データを形成する。
【0032】
またインナーゾーンにおいては、TDMA(Temporary Defect Management Area)、OPC(Optimum Power Control area:テストライトエリア)、INFO(Information area:管理情報領域)、リザーブエリア、バッファエリアなどを有する所定の領域フォーマットが設定される。
OPCは、記録/再生時のレーザパワー等、データ記録再生条件を設定する際の試し書きなどに使われる。即ち記録再生条件調整のための領域である。
INFOには、DMA(Defect Management Area )やコントロールデータエリアが含まれる。
【0033】
INFO内にはDMAが設けられるが、通常、光ディスクの分野ではDMAは欠陥管理のための交替管理情報が記録される。しかしながら本例のディスクでは、DMAは、欠陥箇所の交替管理のみではなく、このライトワンス型ディスクにおけるデータ書換を実現するための管理/制御情報が記録される。特にこの場合、DMAでは、後述するISA、OSAの管理情報が記録される。
また、交替処理を利用してデータ書換を可能にするためには、データ書換に応じてDMAの内容も更新されていかなければならない。このためTDMAが設けられる。
交替管理情報はTDMAに追加記録されて更新されていく。DMAには、最終的にTDMAに記録された最後(最新)の交替管理情報が記録される。
DMA及びTDMAについては後に詳述する。
【0034】
インナーゾーンより外周側の例えば半径24.0〜58.0mmがデータゾーンとされる。データゾーンは、実際にユーザーデータが記録再生される領域である。データゾーンの開始アドレスADdts、終了アドレスADdteは、上述したPICのデータゾーン位置情報において示される。
【0035】
データゾーンにおいては、その最内周側にISA(Inner Spare Area)が、また最外周側にOSA(Outer Spare Area)が設けられる。ISA、OSAは欠陥やデータ書換(上書)のための交替領域とされる。
ISAはデータゾーンの開始位置から所定数のクラスタサイズ(1クラスタ=65536バイト)で形成される。
OSAはデータゾーンの終了位置から内周側へ所定数のクラスタサイズで形成される。ISA、OSAのサイズは上記DMAに記述される。
【0036】
データゾーンにおいてISAとOSAにはさまれた区間がユーザーデータ領域とされる。このユーザーデータ領域が通常にユーザーデータの記録再生に用いられる通常記録再生領域である。
ユーザーデータ領域の位置、即ち開始アドレスADus、終了アドレスADueは、DMAに記述される。
このユーザデータ領域が論理アドレス空間となる。つまり開始アドレスADusは先頭論理アドレス(FirstLSN)、終了アドレスADueは最終論理アドレス(LastLSN)となる。
【0037】
データゾーンより外周側、例えば半径58.0〜58.5mmはアウターゾーン(例えばリードアウトゾーン)とされる。アウターゾーンも管理/制御情報が記録される。即ちINFO(コントロールデータエリア、DMA、バッファエリア)が、所定のフォーマットで形成される。
DMAは、インナーゾーンにおけるDMAと同様にISA、OSAの管理情報が記録される領域として用意される。
【0038】
[2.DMA]

インナーゾーン、アウターゾーンに記録されるDMAの構造を説明する。図2にDMAの構造を示す。
ここではDMAのサイズは32クラスタ(32×65536バイト)とする例を示す。なお、クラスタとはデータ記録の最小単位である。
もちろんDMAサイズが32クラスタに限定されるものではない。図2では、32クラスタの各クラスタを、クラスタ番号1〜32としてDMAにおける各内容のデータ位置を示している。また各内容のサイズをクラスタ数として示している。
【0039】
DMAにおいて、クラスタ番号1〜4の4クラスタの区間にはDDS(disc definition structure)としてディスクの詳細情報が記録される。
このDDSの内容は図3で述べるが、DDSは1クラスタのサイズとされ、当該4クラスタの区間において4回繰り返し記録される。
【0040】
クラスタナンバ5〜8の4クラスタの区間は、ディフェクトリストDFLの1番目の記録領域(DFL#1)となる。ディフェクトリストDFLの構造は図4で述べるが、ディフェクトリストDFLは4クラスタサイズのデータとなり、その中に、個々の交替アドレス情報をリストアップした構成となる。
クラスタナンバ9〜12の4クラスタの区間は、ディフェクトリストDFLの2番目の記録領域(DFL#2)となる。
さらに、4クラスタづつ3番目以降のディフェクトリストDFL#3〜DFL#6の記録領域が用意され、クラスタナンバ29〜32の4クラスタの区間は、ディフェクトリストDFLの7番目の記録領域(DFL#7)となる。
つまり、32クラスタのDMAには、ディフェクトリストDFL#1〜DFL#7の7個の記録領域が用意される。
【0041】
BD−R(ライトワンス型光ディスク)の場合、このDMAの内容を記録するためには、クロージングという処理を行う必要がある。その場合、DMAに書き込む7つのディフェクトリストDFL#1〜DFL#7は全て同じ内容とされる。書込内容は最新のTDMAの内容となる。
なお、BD−RE(リライタブル型光ディスク)では、TDMAは設けられない。記録が行われる毎にDMAを書き換えればよいためである。
【0042】
上記図2のDMAの先頭に記録されるDDSの内容を図3に示す。
上記のようにDDSは1クラスタ(=65536バイト)のサイズとされる。
図3においてバイト位置は、65536バイトであるDDSの先頭バイトをバイト0として示している。バイト数は各データ内容のバイト数を示す。
【0043】
バイト位置0〜1の2バイトには、DDSのクラスタであることを認識するための、DDS識別子(DDS Identifier)=「DS」が記録される。
バイト位置2の1バイトに、DDS型式番号(フォーマットのバージョン)が示される。
【0044】
バイト位置4〜7の4バイトには、DDSの更新回数が記録される。なお、本例ではDMA自体はクロージング時に交替管理情報が書き込まれるものであって更新されるものではなく、交替管理情報はTDMAにおいて行われる。従って、最終的にクロージングされる際に、TDMAにおいて行われたDDS(TDDS:テンポラリDDS)の更新回数が、当該バイト位置に記録されるものとなる。
【0045】
バイト位置16〜19の4バイトには、DMA内のドライブエリアの先頭物理セクタアドレス(AD DRV)が記録される。
バイト位置24〜27の4バイトには、DMA内のディフェクトリストDFLの先頭物理セクタアドレス(AD DFL)が記録される。
バイト位置32〜35の4バイトは、データゾーンにおけるユーザーデータ領域の先頭位置、つまりLSN(logical sector number:論理セクタアドレス)”0”の位置を、PSN(phisical sector number:物理セクタアドレス)によって示している。
バイト位置36〜39の4バイトは、データゾーンにおけるユーザーデータエリアの終了位置をLSN(論理セクターアドレス)によって示している。
【0046】
バイト位置40〜43の4バイトには、データゾーンにおけるISA(内周側スペアエリア)のサイズが示される。
バイト位置44〜47の4バイトには、データゾーンにおけるOSA(外周側スペアエリア)のサイズが示される。
バイト位置48〜51の4バイトには、データゾーンにおける最終スペアエリア(LSA)のサイズが示される。最終スペアエリアとは、論理アドレス空間の後に配置されるスペアエリアであり、記録層数によって、最後の記録層のISA又はOSAが該当する。
バイト位置52の1バイトには、ISA、OSAを使用してデータ書換が可能であるか否かを示す交替領域使用可能フラグが示される。交替領域使用可能フラグは、ISA又はOSAが全て使用された際に、それを示すものとされる。
これら以外のバイト位置はリザーブ(未定義)とされ、全て00hとされる。
【0047】
このように、DDSはユーザーデータ領域のアドレスとISA、OSAのサイズ、及び交替領域使用可能フラグを含む。つまりデータゾーンにおけるISA、OSAの領域管理を行う管理/制御情報とされる。
【0048】
次に図4にディフェクトリストDFLの構造を示す。
図2で説明したように、ディフェクトリストDFLは4クラスタの記録領域に記録される。
図4においては、バイト位置として、4クラスタのディフェクトリストDFLにおける各データ内容のデータ位置を示している。なお1クラスタ=32セクタ=65536バイトであり、1セクター=2048バイトである。
バイト数は各データ内容のサイズとしてのバイト数を示す。
【0049】
ディフェクトリストDFLの先頭の64バイトはディフェクトリスト管理情報とされる。
このディフェクトリスト管理情報には、ディフェクトリストのクラスタであることを認識する情報、バージョン、ディフェクトリスト更新回数、ディフェクトリストのエントリー数などの情報が記録される。
またバイト位置64以降は、ディフェクトリストのエントリー内容として、各8バイトの交替アドレス情報atiが記録される。
そして有効な最後の交替アドレス情報ati#Nの直後には、交替アドレス情報終端としてのターミネータ情報が8バイト記録される。
このDFLでは、交替アドレス情報終端以降、そのクラスタの最後までが00hで埋められる。
【0050】
64バイトのディフェクトリスト管理情報は図5のようになる。
バイト位置0から2バイトには、ディフェクトリストDFLの識別子として文字列「DL」が記録される。
バイト位置2の1バイトはディフェクトリストDFLの形式番号を示す。
バイト位置4からの4バイトは ディフェクトリストDFLを更新した回数を示す。なお、これは後述するテンポラリディフェクトリストTDFLの更新回数を引き継いだ値とされる。
バイト位置12からの4バイトは、ディフェクトリストDFLにおけるエントリー数、即ち交替アドレス情報atiの数を示す。
バイト位置24からの4バイトは、交替領域ISA0、ISA1、OSA0、OSA1のそれぞれの空き領域の大きさをクラスタ数で示す。
これら以外のバイト位置はリザーブとされ、すべて00hとされる。
【0051】
図6に、交替アドレス情報atiの構造を示す。即ち交替処理された各エントリー内容を示す情報である。
交替アドレス情報atiの総数は1層ディスクの場合、最大32759個である。
1つの交替アドレス情報atiは、8バイト(64ビット)で構成される。各ビットをビットb63〜b0として示す。
ビットb63〜b60には、エントリーのステータス情報(status 1)が記録される。
DFLにおいては、ステータス情報は「0000」とされ、通常の交替処理エントリーを示すものとなる。
他のステータス情報値については、後にTDMAにおけるTDFLの交替アドレス情報atiの説明の際に述べる。
【0052】
ビットb59〜b32には、交替元クラスタの最初の物理セクターアドレスPSNが示される。即ち欠陥又は書換により交替されるクラスタを、その先頭セクターの物理セクターアドレスPSNによって示すものである。
ビットb31〜b28は、リザーブとされる。なおエントリーにおけるもう一つのステータス情報(status 2)が記録されるようにしてもよい。
【0053】
ビットb27〜b0には、交替先クラスタの先頭の物理セクターアドレスPSNが示される。
即ち、欠陥或いは書換によりクラスタが交替される場合に、その交替先のクラスタを、その先頭セクターの物理セクターアドレスPSNによって示すものである。
【0054】
以上のような交替アドレス情報atiが1つのエントリーとされて1つの交替処理に係る交替元クラスタと交替先クラスタが示される。
そして、このようなエントリーが、図4の構造のディフェクトリストDFLに登録されていく。
【0055】
DMAにおいては、以上のようなデータ構造で、交替管理情報が記録される。但し、上述したように、DMAにこれらの情報が記録されるのはディスクをクロージングした際であり、そのときは、TDMAにおける最新の交替管理情報が反映されるものとなる。
欠陥管理やデータ書換のための交替処理及びそれに応じた交替管理情報の更新は、次に説明するTDMAにおいて行われることになる。
【0056】
[3.TDMA]

続いて、インナーゾーンに設けられるTDMAについて説明する。TDMA(テンポラリDMA)は、DMAと同じく交替管理情報を記録する領域とされるが、データ書換や欠陥の検出に応じた交替処理が発生することに応じて交替管理情報が追加記録されることで更新されていく。
なお、BD−Rでは2つの記録モードが用いられる。一つはスペースビットマップ(Space Bit Map)を用いたランダム記録モード(Random recording mode)であり、もう一つはSRRI(Sequential Recording Range Information)を用いたシーケンシャル記録モード(Sequential Recording Mode)である。
ここではまず、ランダム記録モードにおいてスペースビットマップを使用する例で説明する。
【0057】
図7にTDMAの構造を示す。
TDMAのサイズは、例えば2048クラスタとされる。
図示するようにクラスタ番号1の最初のクラスタには、レイヤ0のためのスペースビットマップが記録される。
スペースビットマップとは、主データ領域であるデータゾーン、及び管理/制御情報を記録する領域であるインナーゾーン、アウターゾーンの各クラスタについて、それぞれ1ビットが割り当てられる。そして1ビットの値により各クラスタが書込済か否かを示すようにされた書込有無提示情報とされている。
スペースビットマップでは、インナーゾーンからアウターゾーンまでの全てのクラスタが1ビットに割り当てられるが、このスペースビットマップは1クラスタのサイズで構成できる。
クラスタ番号1のクラスタは、レイヤL0(第1層)のためのスペースビットマップとされる。クラスタ番号2のクラスタは、レイヤL1(第2層)のためのスペースビットマップとされる。図示していないが、3層ディスク、4層ディスクの場合は、所定クラスタ番号に、レイヤL2(第3層)、レイヤL3(第4層)のための)スペースビットマップが用意される。例えばクラスタ番号3,4等が割り当てられる。
【0058】
TDMAにおいては、データ内容の変更等で交替処理があった場合、TDMA内の未記録エリアの先頭のクラスタにTDFL(テンポラリディフェクトリスト)が追加記録される。従って、2層ディスクの場合は、図示するようにクラスタ番号3の位置から最初のTDFLが記録される。1層ディスクの場合は、レイヤ1のためのスペースビットマップは不要であるので、クラスタ番号2の位置から最初のTDFLが記録されることになる。そして、交替処理の発生に応じて、以降、間を空けないクラスタ位置にTDFLが追加記録されていく。
TDFLのサイズは、1クラスタから最大4クラスタまでとされる。
【0059】
またスペースビットマップは各クラスタの書込状況を示すものであるため、データ書込が発生することに応じて更新される。この場合、新たなスペースビットマップは、TDFLと同様に、TDMA内の空き領域の先頭から行われる。
つまり、TDMA内では、スペースビットマップもしくはTDFLが、随時追記されていくことになる。
【0060】
なお、スペースビットマップ及びTDFLの構成は次に述べるが、スペースビットマップとされる1クラスタの最後尾のセクタ(2048バイト)及びTDFLとされる1〜4クラスタの最後尾のセクタ(2048バイト)には、光ディスクの詳細情報であるTDDS(テンポラリDDS(temporary disc definition structure))が記録される。
【0061】
図8にスペースビットマップの構成を示す。
上述のようにスペースビットマップは、ディスク上の1クラスタの記録/未記録状態を1ビットで表し、クラスタが未記録状態の場合に対応したビットに例えば「1」をセットするビットマップである。なお、図8は各層ごとに独立した情報を保持するビットマップの例として、2層ディスクの場合で示している。3層ディスク、4層ディスクの場合は、これを拡張的に考えればよい。
【0062】
図8では、セクタ0〜31として、1クラスタ内の32セクタを示している。またバイト位置は、セクタ内のバイト位置として示している。
先頭のセクタ0には、スペースビットマップの管理情報が記録される。
セクタ0のバイト位置0からの2バイトには、スペースビットマップID(Un-allocated Space Bitmap Identifier)として“UB” が記録される。
バイト位置2の1バイトには、フォーマットバージョン(形式番号)が記録され、例えば「00h」とされる。
バイト位置4からの4バイトには、レイヤナンバが記録される。即ちこのスペースビットマップがレイヤL0に対応するのか、レイヤL1に対応するのかが示される。
【0063】
バイト位置16からの48バイトには、ビットマップインフォメーション(Bitmap Information)が記録される。
ビットマップインフォメーションは、インナーゾーン、データゾーン、アウターゾーンの3つの各ゾーンに対応するゾーンインフォメーションから構成される(Zone Information for Inner Zone)(Zone Information for Data Zone)(Zone Information for Outer Zone)。
各ゾーンインフォメーションは、ゾーンの開始位置(Start Cluster First PSN)、ビットマップデータの開始位置(Start Byte Position of Bitmap data)、ビットマップデータの大きさ(Validate Bit Length in Bitmap data)、及びリザーブが、それぞれ4バイトとされた16バイトで構成される。
【0064】
ゾーンの開始位置(Start Cluster First PSN)では、ディスク上のゾーンの開始位置、即ち各ゾーンをビットマップ化する際のスタートアドレスが、PSN(物理セクタアドレス)により示される。
ビットマップデータの開始位置(Start Byte Position of Bitmap data)は、そのゾーンに関するビットマップデータの開始位置を、スペースビットマップの先頭のUn-allocated Space Bitmap Identifier からの相対位置としてのバイト数で示したものである。
ビットマップデータの大きさ(Validate Bit Length in Bitmap data)は、そのゾーンのビットマップデータの大きさをビット数で表したものである。
【0065】
そしてスペースビットマップの第2セクタ(=セクタ1)のバイト位置0から実際のビットマップデータ(Bitmap data)が記録される。ビットマップデータの大きさは1GBあたり1セクタである。
最後のビットマップデータ以降の領域は最終セクタ(セクタ31)の手前までがリザーブとされ「00h」とされる。
そしてスペースビットマップの最終セクタ(セクタ31)には、TDDSが記録される。
【0066】
上記ビットマップインフォメーションによる管理は次のようになる。
まず、バイト位置4のレイヤナンバとしてレイヤL0が示されたスペースビットマップ、つまり1層ディスク、又は多層ディスクのレイヤL0に対するスペースビットマップの場合を述べる。
【0067】
この場合、Zone Information for Inner ZoneによってレイヤL0のインナーゾーン、つまりリードインゾーンの情報が示される。
ゾーンの開始位置(Start Cluster First PSN)では、実線矢印で示すようにインナーゾーン(この場合リードインゾーン)の開始位置のPSNが示される。
ビットマップデータの開始位置(Start Byte Position of Bitmap data)では、破線で示すように、当該スペースビットマップ内でのインナーゾーンに対応するビットマップデータの位置(セクタ1のバイト位置0を示す情報)が示される。
ビットマップデータの大きさ(Validate Bit Length in Bitmap data)は、インナーゾーン用のビットマップデータのサイズが示される。
【0068】
Zone Information for Data Zoneでは、レイヤL0のデータゾーンの情報が示される。
ゾーンの開始位置(Start Cluster First PSN)では、実線矢印で示すようにデータゾーンの開始位置のPSNが示される。
ビットマップデータの開始位置(Start Byte Position of Bitmap data)では、破線で示すように、当該スペースビットマップ内でのデータゾーンに対応するビットマップデータの位置(セクタ2のバイト位置0を示す情報)が示される。
ビットマップデータの大きさ(Validate Bit Length in Bitmap data)は、データゾーン用のビットマップデータのサイズが示される。
【0069】
Zone Information for Outer ZoneによってレイヤL0のアウターゾーン(例えば1層ディスクのリードアウトゾーン等)の情報が示される。
ゾーンの開始位置(Start Cluster First PSN)では、実線矢印で示すようにアウターゾーンの開始位置のPSNが示される。
ビットマップデータの開始位置(Start Byte Position of Bitmap data)では、破線で示すように、当該スペースビットマップ内でのアウターゾーンに対応するビットマップデータの位置(セクタNのバイト位置0を示す情報)が示される。
ビットマップデータの大きさ(Validate Bit Length in Bitmap data)は、アウターゾーン用のビットマップデータのサイズが示される。
【0070】
レイヤL1等の第2層以降の記録層についてのスペースビットマップも、同様の管理が行われる。例えばレイヤL1についてのスペースビットマップでは、一点鎖線の矢印で示すように、レイヤL1についてのインナーゾーン、データゾーン、アウターゾーンの管理が行われる。
【0071】
次にTDFL(テンポラリDFL)の構成を述べる。上記のようにTDFLは、TDMAにおいてスペースビットマップに続く空きエリアに記録され、更新される毎に空きエリアの先頭に追記されていく。
図9にTDFLの構成を示す。
TDFLは1〜4クラスタで構成される。その内容は図4のDFLと比べてわかるように、先頭の64バイトがディフェクトリスト管理情報とされ、バイト位置64以降に各8バイトの交替アドレス情報atiが記録されていく点、及び最後の交替アドレス情報ati#Nの次の8バイトが交替アドレス情報終端とされることは同様である。
但し、1〜4クラスタのTDFLにおいては、その最後のセクターとなる2048バイトにテンポラリDDS(TDDS)が記録される点がDFLと異なる。
【0072】
なお、TDFLの場合、交替アドレス情報終端が属するクラスタの最終セクタの手前まで00hで埋める。そして最終セクタにTDDSが記録される。もし交替アドレス情報終端が、クラスタの最終セクタに属する場合には、次のクラスタの最終セクタ手前まで0で埋め、最終セクタにTDDSを記録することになる。
【0073】
64バイトのディフェクトリスト管理情報は、図5で説明したDFLのディフェクトリスト管理情報と同様である。
ただしバイト位置4からの4バイトのディフェクトリスト更新回数としては、ディフェクトリストの通し番号が記録される。これによって最新のTDFLにおけるディフェクトリスト管理情報の通し番号が、ディフェクトリスト更新回数を示すものとなる。
また、バイト位置12からの4バイトの、ディフェクトリストDFLにおけるエントリー数、即ち交替アドレス情報atiの数や、バイト位置24からの4バイトの交替領域ISA0、ISA1、OSA0、OSA1のそれぞれの空き領域の大きさ(クラスタ数)は、そのTDFL更新時点の値が記録されることになる。
【0074】
TDFLにおける交替アドレス情報atiの構造も、図6で示したDFLにおける交替アドレス情報atiの構造と同様であり、交替アドレス情報atiが1つのエントリーとされて1つの交替処理に係る交替元クラスタと交替先クラスタが示される。そして、このようなエントリーが、図9の構造のテンポラリディフェクトリストTDFLに登録されていく。
【0075】
但しTDFLの交替アドレス情報atiのステータス1としては、「0000」以外に、「0101」「1010」となる場合がある。
ステータス1が「0101」「1010」となるのは、物理的に連続する複数クラスタをまとめて交替処理した際に、その複数クラスタをまとめて交替管理(バースト転送管理)する場合である。
即ちステータス1が「0101」の場合、その交替アドレス情報atiの交替元クラスタの先頭物理セクタアドレスと交替先クラスタの先頭物理セクタアドレスは、物理的に連続する複数のクラスタの先頭のクラスタについての交替元、交替先を示すものとなる。
またステータス1が「1010」の場合、その交替アドレス情報atiの交替元クラスタの先頭物理セクタアドレスと交替先クラスタの先頭物理セクタアドレスは、物理的に連続する複数のクラスタの最後のクラスタについての交替元、交替先を示すものとなる。
従って、物理的に連続する複数のクラスタをまとめて交替管理する場合は、その複数個の全てのクラスタ1つづつ交替アドレス情報atiをエントリする必要はなく、先頭クラスタと終端クラスタとについての2つの交替アドレス情報atiをエントリすればよいものとなる。
【0076】
TDFLでは、以上のように、基本的にDFLと同様の構造とされるが、サイズが4クラスタまで拡張可能なこと、最後のセクターにTDDSが記録されること、交替アドレス情報atiとしてバースト転送管理が可能とされていることなどの特徴をもつ。
【0077】
TDMAでは図7に示したようにスペースビットマップとTDFLが記録されるが、上記のようにスペースビットマップ及びTDFLの最後のセクターとしての2048バイトにはTDDS(temporary disc definition structure)が記録される。
このTDDSの構造を図10に示す。
TDDSは1セクタ(2048バイト)で構成される。そして上述したDMAにおけるDDSと同様の内容を含む。なお、DDSは1クラスタ(65536バイト)であるが、図3で説明したようにDDSにおける実質的内容定義が行われているのはバイト位置52までである。つまり1クラスタの先頭セクタ内に実質的内容が記録されている。このためTDDSが1セクタであっても、DDS内容を包含できる。
図10と図3を比較してわかるように、TDDSは、バイト位置0〜53まではDDSと同様の内容となる。ただし、バイト位置4からはTDDS通し番号、バイト位置16からはTDMA内のドライブエリア開始物理アドレス、バイト位置24からはTDMA内のTDFLの開始物理アドレス(AD DFL)となる。
【0078】
TDDSのバイト位置1024以降には、DDSには無い情報が記録される。
バイト位置1024からの4バイトには、ユーザーデータ領域でのデータ記録されている最外周の物理セクタアドレスPSNが記録される。
バイト位置1028からの4バイトには、TDMA内の最新のレイヤL0用のスペースビットマップの開始物理セクタアドレス(AD BP0)が記録される。
バイト位置1032からの4バイトには、TDMA内の最新のレイヤL1用のスペースビットマップの開始物理セクタアドレス(AD BP1)が記録される。
バイト位置1036の1バイトは、上書き機能の使用を制御する為のフラグが記録される。
これらのバイト位置以外のバイトはリザーブとされ、その内容は全て00hである。
但し、例えば3層ディスクの場合、リザーブ内の所定のバイト位置が決められて、TDMA内の最新のレイヤL2用のスペースビットマップの開始物理セクタアドレス(AD BP2)が記録される。
また4層ディスクの場合、それぞれリザーブ内の所定のバイト位置が決められて、TDMA内の最新のレイヤL2用のスペースビットマップの開始物理セクタアドレス(AD BP2)、及び最新のレイヤL3用のスペースビットマップの開始物理セクタアドレス(AD BP3)が記録される。
さらに、この図10においてリザーブとされたいずれかの位置に、各4バイトで、各レイヤにおけるOPCエリアについての、次のOPC動作実行可能アドレス(Next available Ln OPC Address)が記録される。即ちOPC動作として次に使用する部分のアドレスである。
【0079】
このように、TDDSはユーザーデータ領域のアドレスとISA、OSAのサイズ、及び交替領域使用可能フラグを含む。つまりデータゾーンにおけるISA、OSAの領域管理を行う管理/制御情報とされる。この点でDDSと同様となる。
そしてさらに、有効な最新のスペースビットマップの位置を示す情報(AD BP0、AD BP1、(さらにはAD BP2、AD BP3))を有し、さらに有効な最新のテンポラリDFL(TDFL)の位置を示す情報(AD DFL)を有するものとされる。
さらに、各レイヤのOPCエリアの未使用部分を示す、次のOPC動作実行可能アドレス(Next available Ln OPC Address)を有するものとされる。
このTDDSは、スペースビットマップ及びTDFLの最終セクタに記録されるため、スペースビットマップ又はTDFLが追加されるたびに、新たなTDDSが記録されることになる。従って図7のTDMA内では、最後に追加されたスペースビットマップ又はTDFL内のTDDSが最新のTDDSとなり、その中で最新のスペースビットマップ及びTDFLが示されることになる。
【0080】
以上のTDMAの内容は、データ書込や交替処理に応じて随時更新されていく。そして、クロージングの際に最新のTDMAの内容がINFO内のDMAに記録され、管理情報が固定されることになる。
なお、TDMAの更新としては、TDMS(Temporary Disc Management Structure)アップデートユニットが記録される形式で行われる。
TDMSは、管理情報の更新が必要となることに応じて、このようにTDMSアップデートユニット単位で、連続するクラスタに逐次記録されていく。TDMSアップデートユニットの記録の際には、その時点で最後の記録済みクラスタの後ろから間を空けずに 最新のTDMSアップデートユニットを記録していく。
このTDMSアップデートユニットに含まれるのは上述のTDDS、TDFLと、後述するSRRIである。即ち、TDDS、TDFL、SRRIの少なくとも1つが更新される場合に、TDMA内にTDMSアップデートユニットが追加記録される。
【0081】
ところで、3層ディスク、4層ディスク等の多層ディスクでは、各記録層の全部又は一部にTDMAが配置されるが、それらは順番に消尽されていきながらTDFL/スペースビットマップの更新に使用される。これにより、各記録層のTDMAを合わせて1つの大きなTDMAとして使用することになり、複数のTDMAを効率的に活用できる。
また各レイヤのTDMAに関わらず、単に記録された最後のTDDSを探すことで、有効なTDFL/スペースビットマップが把握できる。
【0082】
また、図7には示していないが、最新のTDMAを判別するために、先頭のTDMA(例えば後述するTDMA#1)のみは、TDMA内の最初の所定クラスタ数が、TDMAアクセスインジケータとして用いられる。
今、仮にディスク全体でTDMA0〜TDMA11という12個のTDMAが設けられるとすると、先頭のTDMA0の最初の12クラスタがTDMAアクセスインジケータとされ、それぞれがTDMA1〜11、及びDMAの記録中の情報を表すものとされる。
先頭のTDMA0の使用中は、TDMAアクセスインジケータには何も記録しない。TDMA0がすべて使用され、TDMA1の使用を開始するときは、TDMAアクセスインジケータの最初のクラスタ(TDMA1に対応)に、すべて例えば「00h」データを記録する。また、TDMA1がすべて使用され、TDMA2の使用を開始するときは、TDMAアクセスインジケータの2番目のクラスタ(TDMA2に対応)に、すべて「00h」データを記録する。このようにTDMAアクセスインジケータが用いられることで、ディスク装填時等に、最初のTDMA0にアクセスして、TDMAアクセスインジケータを読むことで、ディスクドライブ装置は、その時点で最新のTDMAデータが記録されているTDMAを知ることができる。或いはTDMAアクセスインジケータの12クラスタすべてが「00h」記録済であれば、DMAが記録されていることを知ることができる。
【0083】
[4.SRR及びSRRI]

次に、シーケンシャル記録モード(Sequential Recording Mode)においてSRRIを使用する例を説明する。
SRRの構造を図11に示す。SRRはライトワンスディスクに対してシーケンシャル記録モード時に使用する書き込み領域(連続記録範囲)の事であり、CDにおけるトラックと似た、以下の<1>〜<5>のような特徴を持つ。
【0084】
<1>SRR内部では記録はアドレス増加方向に行われ、また記録可能なアドレス(追記ポイント)を一つだけ持つ事が可能である。その追記ポイントとしてのアドレスの事を NWA(Next Writable Address, PSN)と呼ぶ。
図11(a)に示すように、SRR内部の最終記録アドレスをLRA(Last Recorded Address, PSN)とするとNWAは以下の式で示される。
NWA = (ip(LRA /32) + 1) * 32 (LRA≠0の場合)。
NWA = Start PSN of the SRR (LRA = 0の場合)。
ここで ip(N) は N よりも小さな整数で、最大の整数を表している。
つまり、SRRに記録が行われていれば、NWAはLRAを含むクラスタの次のクラスタの先頭アドレス(PSN)となり、またSRRが、まだ記録が行われていない状態なら、NWAはSRRの先頭アドレス(PSN)とされる。
<2>SRRは オープン(Open)およびクローズド(Closed)の二つのうちどちらかのステータスをとる。
ここで、図11(a)のOpen SRR は記録可能な(つまりNWAを持つ)SRRを表し、図11(b)のClosed SRR は記録不可能な(つまりNWAを持たない)SRRを表す。
<3>Open SRRをディスク上に確保する処理をSRRのリザーブ、Open SRRのステータスをClosed に変える処理をSRRのクローズと呼ぶ。
<4>SRRはディスク上に複数(最大7927個)存在することが可能であり、その中でもOpen SRRは同時に16個まで存在することが可能である。
<5>書き込み対象となるSRRは任意の順番で選択出来る。
【0085】
実際の使用方法としてOpen SRRのリザーブはファイルシステムの管理領域をファイルデータの前方に確保しつつ、ディスクにファイルデータを記録した後にファイルシステムの管理情報を管理領域に記録する場合に使用されている。
図11(c)は、シーケンシャル記録モードで記録を行っている時のディスクのサンプルレイアウトを示している。
このディスク上には4つのSRR(SRR#1〜SRR#4)が存在し、SRR#1、SRR#3、SRR#4 がOpen SRRでSRR#2がClosed SRRである。
このディスクに追記する場合、NWA1、NWA3、NWA4のいずれからも記録が可能である。
【0086】
このようなSRRを管理する情報として、上記のTDMSアップデートユニットによりSRRIが記録される。
図12にSRRIの構成を示す。
SRRIはデータフレーム1〜31の大きさで構成される。
図12の相対データフレームナンバ(Relative Data Frame)はクラスタ内の各データフレームを示す。SRRIは、TDMSアップデートユニットの最終データフレーム31に記録されるTDDSの直前に配置されるため、SRRIがMセクタのサイズであるとすると、SRRIはデータフレーム(31−M)〜データフレーム30に配置される。またデータフレーム内のバイト位置(Byte position in Data frame)は各データフレームの内部のバイト位置を示す。
【0087】
SRRIの先頭から64バイトは、SRRIの管理情報を収めるSRRIヘッダ(SRRI Header)とされる。
SRRIヘッダは SRRIクラスタであることを認識する情報、バージョン、SRRIアップデート(SRRI記録更新)回数、SRRエントリ(SRRの情報を示すブロック)の総数等の情報で構成される。
続くバイト位置64以降は、複数のSRRエントリによるリスト(List of SRRI Entries)とされる。
リスト(List of SRRI Entries)に含まれる一つ一つのSRRエントリの大きさは8バイトである。N個のSRRエントリが存在する場合、リストの大きさはN×8バイトとなる。
最後のSRRエントリの直後は、8バイトのSRRI終端(SRRI Terminator)が配置され、以降そのクラスタの最後までが0で埋められる。
【0088】
SRRIヘッダの構成を図13(a)に示す。
バイト位置0〜1の2バイトは、SRRIの管理情報を収めるSRRI−ID(SRRI Identifier)とされる。
バイト位置2の1バイトは、SRRIフォーマットのバージョンを示すSRRIフォーマット(SRRI Format)とされる。
バイト位置4〜7の4バイトは、SRRIの更新回数を表すSRRIアップデートカウント(SRRI Update Count)とされる。
バイト位置12〜15の4バイトは、SRRエントリの合計数を表すSRRエントリ数(Number of SRR Entries)とされる。
バイト位置16の1バイトは、ステータスがオープンになっているSRRの総数を表すオープンSRR数(Number of Open SRRs)とされる。
バイト位置20からは、全ての Open SRR 番号をまとめたリスト(List of Open SRR Numbers)が記録される。
このリスト(List of Open SRR Numbers)の構造を図13(b)に示す。各Open SRR番号が2バイトずつ、合計16個分の大きさを持ち、32バイトある。Open SRR の総数が16個に満たない場合、リスト(List of Open SRR Numbers )の残りの部分は0で埋められる。また、リスト(List of Open SRR Numbers)は Open SRR の総数が増減するたびにその内容を修正し降順にソートする必要がある。
【0089】
このようなSRRIヘッダに続いて、図12のエントリーリスト(List of SRRI Entries)に登録されることになるSRRエントリの構成を図14に示す。エントリナンバをiとする。
それぞれが或るSRRを示すことになる個々のSRRエントリは8バイト(64ビット)で構成される。
ビットb63〜b60の4ビットはリザーブ(未定義)である。
ビットb59〜b32の28ビットは、ユーザデータ領域に存在するSRR#iのスタートアドレスとされる。つまりSRR#iの開始クラスタの先頭のPSNが示される。
ビットb31はセッションスタートとされ、このSRRがセッション最初のSRRであるかどうかを示すビットとされる。このビットが1のとき、このSRRがセッションの最初のSRR、すなわちこのSRRからセッションが始まっている事を示している。
ビットb30〜b28の3ビットはリザーブ(未定義)とされる。
ビットb27〜b0の28ビットではSRR#i内のLRA(Last Recorded Address:図11参照)がPSNにより示される。
【0090】
以上のようにSRRIヘッダ及びSRRエントリを含むSRRIにより、ユーザデータ領域に存在する各SRRの数やアドレス、さらには各SRRのLRAが管理されることになる。また上述したようにオープンSRRのNWA(Next Writable Address)は、そのSRRに対応するSRRエントリにおけるLRA(Last Recorded Address)の値から算出できる。
このようなSRRIは、SRRがリザーブされた場合、SRR内のNWAから追記が行われた場合、SRRがクローズされた場合など、SRRの管理状態の更新が必要なときに、上記TDMSアップデートユニットにSRRIが含まれるかたちで更新される。
【0091】
[5.交替領域を用いた交替処理]

ここで、ISA、OSAとしての固定の交替領域を用いた交替処理を説明しておく。
ISA(インナースペアエリア:内周側交替領域)およびOSA(アウタースペアエリア:外周側交替領域)は欠陥クラスタの交替処理のための交替領域としてデータゾーン内の内周側と外周側に確保される。
ISA、OSAのサイズは上述のDDS,TDDS内で定義される。
ISA、OSAの大きさ(サイズ)は物理フォーマット時に決定される。
【0092】
これらISA、OSAを用いた欠陥クラスタの交替処理は、次のように行われる。
例えばホスト装置からの要求によるデータ書込時に、その書込アドレスとして指定されたクラスタが欠陥クラスタであった場合、適正なデータ記録が実行できない。その場合、記録しようとするデータを、ISA又はOSA内の或るクラスタに書き込むようにする。これが交替処理である。
この交替処理が上記のDFLエントリとして管理される。つまりデータ記録が実行できない欠陥クラスタのアドレスが交替元、ISA又OSA内にデータを書き込んだクラスタのアドレスが交替先として、1つのDFLエントリが登録される。
【0093】
[6.多層ディスクの構造]

次に図15で、多層ディスクの層構造を説明する。
図15(a)は現行の2層ディスクについて、また図15(b)(c)は実施の形態の3層ディスク及び4層ディスクについて、層構造を模式的に示している
【0094】
図15(a)(b)(c)の各ディスクでは、約1.1mm厚のディスク基板201を備える。ディスク基板201は、例えばポリカーボネート樹脂の射出成形により成形される。射出成形用の金型内にスタンパがセットされることで、グルーブ形状が転写された状態で形成される。
2層ディスクの場合、図15(a)のように、基板201上に第1層(レイヤL0)が形成され、さらに中間層204を介して第2層(レイヤL1)が形成される。そして第2層(レイヤL1)上に光透過層203が形成される。
光透過層203の表面側がレーザ入射面となる。
光透過層203は光ディスクの保護を目的として形成される。情報信号の記録再生は、例えば、レーザ光が光透過層203を通じてレイヤL0又はL1に集光されることによって行われる。
光透過層203は、例えば紫外腺硬化樹脂のスピンコート及び紫外線照射による硬化によって形成する。又は紫外線硬化樹脂とポリカーボネートシートや、接着層とポリカーボネートシート用いて光透過層203を形成することもできる。
光透過層203は、100μm程度の厚みとされ、約1.1mmの基板201と合わせて光ディスク全体の厚みが約1.2mmとなる。
【0095】
図15(b)の3層ディスクは記録層としてレイヤL0、L1、L2の3つを備える。
この場合も、基板201上に、レイヤL0、L1、L2がそれぞれ中間層204を介して形成される。
図15(c)の4層ディスクは記録層としてレイヤL0、L1、L2、L3の4つを備える。この場合も、基板201上に、レイヤL0、L1、L2、L3がそれぞれ中間層204を介して形成される。
【0096】
図15(a)(b)(c)において各中間層204は、例えば紫外線感光性を有する光透過性の材料をスピンコート法で回転塗布され紫外線の照射で硬化して形成される。
多層の光ディスク記録媒体から情報信号の記録再生をする場合、この中間層204の配置と膜厚は、層間クロストークを抑制する目的で設定される。
3層ディスクの場合、レイヤL2はレーザ入射面から50μm前後の位置とされる。また4層ディスクの場合、中間層204の厚み調整され、レイヤL3がレーザ入射面から50μm前後の位置とされている。
【0097】
図15(b)の3層ディスクは例えば次の手順(ST1〜ST7)で製造されることになる。
(ST1)レイヤL0用のスタンパを用いた射出成形によりレイヤL0のグルーブパターンが転写されたディスク基板201を作成する。
(ST2)L0用グルーブパターン上にスパッタ等で記録膜を成膜し、レイヤL0を形成する。
(ST3)レイヤL0上にスピンコートで樹脂を展延し、レイヤL1用のスタンパを押し当てながら樹脂を硬化する。これによりレイヤL1のグルーブパターンが転写された中間層204を形成する。
(ST4)L1用グルーブパターン上にスパッタ等で記録膜を成膜し、レイヤL1を形成する。
(ST5)レイヤL1上にスピンコートで樹脂を展延し、レイヤL2用のスタンパを押し当てながら樹脂を硬化する。これによりレイヤL2のグルーブパターンが転写された中間層204を形成する。
(ST6)L2用グルーブパターン上にスパッタ等で記録膜を成膜し、レイヤL2を形成する。
(ST7)スピンコート及び硬化、又はシート接着等の手法で光透過層203を形成する。
以上の工程で3層ディスクが製造される。
【0098】
4層ディスクの場合は、レイヤL3のための工程が加わり、例えば次の手順(ST11〜ST19)で製造される。
(ST11)レイヤL0用のスタンパを用いた射出成形によりレイヤL0のグルーブパターンが転写されたディスク基板201を作成する。
(ST12)L0用グルーブパターン上にスパッタ等で記録膜を成膜し、レイヤL0を形成する。
(ST13)レイヤL0上にスピンコートで樹脂を展延し、レイヤL1用のスタンパを押し当てながら樹脂を硬化する。これによりレイヤL1のグルーブパターンが転写された中間層204を形成する。
(ST14)L1用グルーブパターン上にスパッタ等で記録膜を成膜し、レイヤL1を形成する。
(ST15)レイヤL1上にスピンコートで樹脂を展延し、レイヤL2用のスタンパを押し当てながら樹脂を硬化する。これによりレイヤL2のグルーブパターンが転写された中間層204を形成する。
(ST16)L2用グルーブパターン上にスパッタ等で記録膜を成膜し、レイヤL2を形成する。
(ST17)レイヤL2上にスピンコートで樹脂を展延し、レイヤL3用のスタンパを押し当てながら樹脂を硬化する。これによりレイヤL3のグルーブパターンが転写された中間層204を形成する。
(ST18)L3用グルーブパターン上にスパッタ等で記録膜を成膜し、レイヤL2を形成する。
(ST19)スピンコート及び硬化、又はシート接着等の手法で光透過層203を形成する。
以上の工程で4層ディスクが製造される。
【0099】
[7.ディスクドライブ装置]

次に、本例のBD−R、BD−REとしての3層ディスク、4層ディスク、或いはそれ以上の多層ディスクに対応するディスクドライブ装置(記録再生装置)を説明していく。
本例のディスクドライブ装置は、例えば上述したBCA、PICのみが形成されている状態であって、記録可能領域には何も記録されていない状態のディスクに対して物理フォーマット処理を行うことができる。また物理フォーマット後にファイルシステム初期化を行うこともできる。これにより、後述する図17の状態のディスクレイアウトを形成することができる。また、そのようなフォーマット済のディスクに対してユーザーデータ領域にデータの記録再生を行なう。必要時において、TDMA、ISA、OSAへの記録/更新も行うものである。
なお、メーカーサイドで物理フォーマットがされた状態でディスクが出荷される場合、さらにはファイルシステム初期化までされた状態でディスクが出荷される場合もある。そのような場合は、ユーザサイドのディスクドライブ装置で物理フォーマットやファイルシステム初期化を行うことが不要となる。
本実施の形態のディスクドライブ装置は、物理フォーマット、ファイルシステム初期化、を行うという意味で、ユーザサイドで用いられる記録再生装置として考えられる他、メーカサイドで使用される記録再生装置としても想定される。
【0100】
図16はディスクドライブ装置の構成を示している。
ディスク1は上述した実施の形態の3層ディスク又は4層ディスクとする。ディスク1は、図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモータ52によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。
そして光学ピックアップ(光学ヘッド)51によってディスク1上のグルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIPアドレスやプリレコーデッド情報としての管理/制御情報の読み出しがおこなわれる。
また物理フォーマット時、ファイルシステム初期化時や、ユーザーデータ記録時には光学ピックアップ51によって記録可能領域におけるトラックに、管理/制御情報やユーザーデータが記録され、再生時には光学ピックアップ51によって記録されたデータの読出が行われる。
【0101】
光学ピックアップ51内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、レーザ光を対物レンズを介してディスク記録面に照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系(図示せず)が形成される。
【0102】
光学ピックアップ51内において対物レンズは二軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
また光学ピックアップ51全体はスレッド機構53によりディスク半径方向に移動可能とされている。
また光学ピックアップ51におけるレーザダイオードはレーザドライバ63からのドライブ信号(ドライブ電流)によってレーザ発光駆動される。
【0103】
ディスク1からの反射光情報は光学ピックアップ51内のフォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路54に供給される。
マトリクス回路54には、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当する高周波信号(再生データ信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号などを生成する。
さらに、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号を生成する。
なお、マトリクス回路54は、光学ピックアップ51内に一体的に構成される場合もある。
【0104】
マトリクス回路54から出力される再生データ信号はリーダ/ライタ回路55へ、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号はサーボ回路61へ、プッシュプル信号はウォブル回路58へ、それぞれ供給される。
【0105】
リーダ/ライタ回路55は、再生データ信号に対して2値化処理、PLLによる再生クロック生成処理等を行い、光学ピックアップ51により読み出されたデータを再生して、変復調回路56に供給する。
変復調回路56は、再生時のデコーダとしての機能部位と、記録時のエンコーダとしての機能部位を備える。
再生時にはデコード処理として、再生クロックに基づいてランレングスリミテッドコードの復調処理を行う。
またECCエンコーダ/デコーダ57は、記録時にエラー訂正コードを付加するECCエンコード処理と、再生時にエラー訂正を行うECCデコード処理を行う。
再生時には、変復調回路56で復調されたデータを内部メモリに取り込んで、エラー検出/訂正処理及びデインターリーブ等の処理を行い、再生データを得る。
ECCエンコーダ/デコーダ57で再生データにまでデコードされたデータは、システムコントローラ60の指示に基づいて、読み出され、接続された機器、例えばAV(Audio-Visual)システム120に転送される。
【0106】
グルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路54から出力されるプッシュプル信号は、ウォブル回路58において処理される。ADIP情報としてのプッシュプル信号は、ウォブル回路58においてADIPアドレスを構成するデータストリームに復調されてアドレスデコーダ59に供給される。
アドレスデコーダ59は、供給されるデータについてのデコードを行い、アドレス値を得て、システムコントローラ60に供給する。
またアドレスデコーダ59はウォブル回路58から供給されるウォブル信号を用いたPLL処理でクロックを生成し、例えば記録時のエンコードクロックとして各部に供給する。
【0107】
また、グルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路54から出力されるプッシュプル信号として、プリレコーデッド情報(PIC)としてのプッシュプル信号は、ウォブル回路58においてバンドパスフィルタ処理が行われてリーダ/ライタ回路55に供給される。そして2値化され、データビットストリームとされた後、ECCエンコーダ/デコーダ57でECCデコード、デインターリーブされて、プリレコーデッド情報としてのデータが抽出される。抽出されたプリレコーデッド情報はシステムコントローラ60に供給される。
システムコントローラ60は、読み出されたプリレコーデッド情報に基づいて、各種動作設定処理やコピープロテクト処理等を行うことができる。
【0108】
記録時には、AVシステム120から記録データが転送されてくるが、その記録データはECCエンコーダ/デコーダ57におけるメモリに送られてバッファリングされる。
この場合ECCエンコーダ/デコーダ57は、バファリングされた記録データのエンコード処理として、エラー訂正コード付加やインターリーブ、サブコード等の付加を行う。
またECCエンコードされたデータは、変復調回路56において例えばRLL(1−7)PP方式の変調が施され、リーダ/ライタ回路55に供給される。
記録時においてこれらのエンコード処理のための基準クロックとなるエンコードクロックは上述したようにウォブル信号から生成したクロックを用いる。
【0109】
エンコード処理により生成された記録データは、リーダ/ライタ回路55で記録補償処理として、記録層の特性、レーザー光のスポット形状、記録線速度等に対する最適記録パワーの微調整やレーザドライブパルス波形の調整などが行われた後、レーザドライブパルスとしてレーザードライバ63に送られる。
レーザドライバ63では供給されたレーザドライブパルスを光学ピックアップ51内のレーザダイオードに与え、レーザ発光駆動を行う。これによりディスク1に記録データに応じたピットが形成されることになる。
【0110】
なお、レーザドライバ63は、いわゆるAPC回路(Auto Power Control)を備え、光学ピックアップ51内に設けられたレーザパワーのモニタ用ディテクタの出力によりレーザ出力パワーをモニターしながらレーザーの出力が温度などによらず一定になるように制御する。記録時及び再生時のレーザー出力の目標値はシステムコントローラ60から与えられ、記録時及び再生時にはそれぞれレーザ出力レベルが、その目標値になるように制御する。
【0111】
サーボ回路61は、マトリクス回路54からのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号から、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
即ちフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に応じてフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号を生成し、光学ピックアップ51内の二軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによって光学ピックアップ51、マトリクス回路54、サーボ回路61、二軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
【0112】
またサーボ回路61は、システムコントローラ60からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
【0113】
またサーボ回路61は、トラッキングエラー信号の低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ60からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成し、スレッド機構53を駆動する。スレッド機構53には、図示しないが、光学ピックアップ51を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、光学ピックアップ51の所要のスライド移動が行なわれる。
【0114】
スピンドルサーボ回路62はスピンドルモータ2をCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路62は、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを、現在のスピンドルモータ52の回転速度情報として得、これを所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
またデータ再生時においては、リーダ/ライタ回路55内のPLLによって生成される再生クロック(デコード処理の基準となるクロック)が、現在のスピンドルモータ52の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路62は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルモータ62のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路62は、システムコントローラ60からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0115】
以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ60により制御される。
システムコントローラ60は、AVシステム120からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
【0116】
例えばAVシステム120からストリームデータの書込命令(ライトコマンド)が出されると、システムコントローラ60は、まずユーザデータ領域内における書き込むべきアドレスに光学ピックアップ51を移動させる。そしてECCエンコーダ/デコーダ57、変復調回路56により、AVシステム120から転送されてきたストリームデータ(例えば各種方式のビデオデータやオーディオデータ)について上述したようにエンコード処理を実行させる。そして上記のようにリーダ/ライタ回路55からのレーザドライブパルスがレーザドライバ63に供給されることで、記録が実行される。
【0117】
なお、ディスク1に対してストリームデータ記録を行うには、前提として物理フォーマット及びファイルシステム初期化がされていることが必要である。
物理フォーマットを行う場合は、システムコントローラ60は、インナーゾーンやアウターゾーンにおける所定位置に、TDMAやINFOとしての情報を書き込むように各部を制御する。後述するが、このときISA,OSA,LSAのサイズ設定を、所定の条件に基づいて行う。
さらに物理フォーマットがなされたディスク1に対してファイルシステム初期化を行う場合は、システムコントローラ60は、TDMAやINFOの情報を参照し、先頭論理アドレスからの領域と、最終論理アドレス付近の領域に、ファイルシステムの記録を行うように各部を制御する。
【0118】
また例えばAVシステム120から、ディスク1に記録されているストリームデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合は、まず指示されたアドレスを目的としてシーク動作制御を行う。即ちサーボ回路61に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光学ピックアップ51のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをAVシステム120に転送するために必要な動作制御を行う。即ちディスク1からのデータ読出を行い、リーダ/ライタ回路55、変復調回路56、ECCエンコーダ/デコーダ57におけるデコード/バファリング等を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0119】
なお、これらのデータの記録再生時には、システムコントローラ60は、ウォブル回路58及びアドレスデコーダ59によって検出されるADIPアドレスを用いてアクセスや記録再生動作の制御を行うことができる。
【0120】
また、ディスク1が装填された際など所定の時点で、システムコントローラ60は、ディスク1のBCAにおいて記録されたユニークIDや、再生専用領域にウォブリンググルーブとして記録されているプリレコーデッド情報(PIC)の読出を実行させる。
その場合、まずBCA、PICを目的としてシーク動作制御を行う。即ちサーボ回路61に指令を出し、ディスク最内周側への光学ピックアップ51のアクセス動作を実行させる。
その後、光学ピックアップ51による再生トレースを実行させ、反射光情報としてのプッシュプル信号を得、ウォブル回路58、リーダ/ライタ回路55、ECCエンコーダ/デコーダ57によるデコード処理を実行させる。これによりBCA情報やプリレコーデッド情報としての再生データを得る。
システムコントローラ60はこのようにして読み出されたBCA情報やプリレコーデッド情報に基づいて、レーザパワー設定やコピープロテクト処理等を行う。
【0121】
図16ではシステムコントローラ60内にキャッシュメモリ60aを示している。このキャッシュメモリ60aは、例えばディスク1のTDMAから読み出したTDFL/スペースビットマップの保持や、その更新に利用される。
システムコントローラ60は、例えばディスク1が装填された際に各部を制御してTDMAに記録されたTDFL/スペースビットマップの読出を実行させ、読み出された情報をキャッシュメモリ60aに保持する。
その後、データ書換や欠陥による交替処理が行われた際には、キャッシュメモリ60a内のTDFL/スペースビットマップを更新していく。
例えばデータの書込や、データ書換等で交替処理が行われ、スペースビットマップ又はTDFLの更新を行う際に、その都度ディスク1のTDMAにおいて、TDFL又はスペースビットマップを追加記録しても良い。しかし、そのようにすると、ディスク1のTDMAの消費が早まってしまう。
そこで、例えばディスク1がディスクドライブ装置からイジェクト(排出)されるまでの間は、キャッシュメモリ60a内でTDFL/スペースビットマップの更新を行っておく。そしてイジェクト時などにおいて、キャッシュメモリ60a内の最終的な(最新の)TDFL/スペースビットマップを、ディスク1のTDMAに書き込むようにする。すると、多数回のTDFL/スペースビットマップの更新がまとめられてディスク1上で更新されることになり、ディスク1のTDMAの消費を低減できることになる。
【0122】
ところで、この図16のディスクドライブ装置の構成例は、AVシステム120に接続されるディスクドライブ装置の例としたが、本発明のディスクドライブ装置としては例えばパーソナルコンピュータ等と接続されるものとしてもよい。
さらには他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインターフェース部位の構成が、図16とは異なるものとなる。つまり、ユーザーの操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。
もちろん構成例としては他にも多様に考えられ、例えば物理フォーマットを行うための記録専用装置などとしての例も考えられる。
【0123】
[8.実施の形態の記録層構造]

実施の形態のBD−R、BD−REとしての3層ディスク、4層ディスクの記録層(レイヤ)の構造例を図17(a)(b)に示す。
なお図17(a)(b)では、図1の半径方向のエリア構造におけるデータゾーンのみについての物理フォーマット及びファイルシステム初期化の後の状態を示している。
【0124】
図17(a)は、レイヤL0,L1,L2が形成される3層ディスクの例である。
図15(b)にも示したが、レーザ入射方向から見ると、最も奥にレイヤL0が形成され、レイヤL1,L2が、順に手前側となる。
各レイヤL0,L1,L2では、それぞれデータゾーンにおける内周側の領域がISA0,ISA1、ISA2とされる。また各レイヤL0,L1,L2の外周側の領域はOSA0,OSA1、OSA2とされる。そしてこの3層ディスクの場合、OSA2が、最後のLSA(ラストスペアエリア)となる。
【0125】
各レイヤL0,L1,L2では、ISAとOSAに挟まれた領域が、論理アドレス空間とされ、ユーザデータが記録される。論理アドレス空間とは、論理アドレス(ロジカルセクターナンバLSN)が割り当てられた領域である。
当該論理アドレス空間を形成する先頭論理アドレス(FirstLSN)の位置は、レイヤL0におけるISA0の直後の位置となる。また最終論理アドレス(LastLSN)の位置は、レイヤL2におけるOSA2(LSA)の直前位置となる。
先頭論理アドレスから所定区間は、ファイルシステムFSが記録される領域となる。
また最終論理アドレスまでの所定区間も、ファイルシステムFSが記録される領域となる。なお、最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域のサイズとしては、例えば100クラスタ確保すればよい。
【0126】
データゾーンにはユーザデータとして映像ストリームデータなどのストリームデータが記録される。そのストリームデータの記録は、矢印RSに示すように、レイヤL0においてファイルシステムFSの後から外周側に向かって行われる。次にレイヤL1では、OSA1の直前部分から内周側に向かって行われる。さらにレイヤL2では、ISA2の直後の位置から外周側に向かって行われる。
【0127】
ここで、レーザ入射方向から見て最も手前となるレイヤL2のファイルシステムFSの領域(最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域)に注目する。
この最終論理アドレス近辺のファイルシステムFSの領域が配置されたレイヤL2とは他のレイヤL1,L0において、ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なる領域には、論理アドレス空間が割り当てられていない。
つまりこの場合は、当該ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なるレイヤL0,L1の領域は、OSA0,OSA1とされている。
【0128】
これは、最終論理アドレス(LastLSN)に隣接する交替領域であるOSA2のサイズと、ファイルシステムFSのサイズの合計より、他のレイヤL1,L0の交替領域(OSA1,OSA0)のサイズが大とされることで実現される。
図3,図10で説明したように、DDSには内周側スペアエリアサイズ、外周側スペアエリアサイズ、最終スペアエリアとして、ISA,OSA,LSAの各サイズが規定される。換言すれば、物理フォーマット時に、TDDSに記録するこれらの各サイズの設定により、図17(a)のような構造を実現することができる。
OSA0,OSA1のサイズは、「外周側スペアエリアサイズ」の値で規定される。
OSA2はラストスペアエリアLSAであるから、そのサイズは「最終スペアエリアサイズ」の値で規定される。
従って、外周側スペアエリアサイズをszOSA、最終スペアエリアサイズをszLSA、ファイルシステムサイズをszFSとしたとき、
szOSA>szLSA+szFS
の条件を満たすように、物理フォーマット時に外周側スペアエリアサイズszOSA、最終スペアエリアサイズszLSAを設定する。
そしてファイルシステム初期化としてファイルシステムFSを書き込むときは、ファイルシステムFSを論理アドレス空間の先頭と終端付近に書き込む。
【0129】
このようにすることで、ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なる他のレイヤの領域は、論理アドレス空間外となり、ストリームデータ記録は行われない領域となる。
従って、記録層L2の書込済領域(ファイルシステム領域)をレーザ光が通過する状態でストリームデータ記録が行われるということはなくなる。このため、ストリームデータ記録の信頼性を高めることができる。
上述したように、ストリームデータ記録時にはベリファイが行われないため、記録品質の低下は、データ消失までをも発生させる可能性が高いものである。このため記録品質を維持できるようにすることは、ストリームデータ記録にとって非常に重要となる。
【0130】
なお、本例の場合、図からわかるように、
szOSA=szLSA+szFS+BA
としている。
この「BA」は、層間偏芯やデフォーカスを考慮したサイズである。
【0131】
上述のように、レイヤL0,L1,L2のトラックを形成するグルーブパターンは、それぞれディスク基板201の作成時、中間層204形成時にそれぞれ対応するスタンパによって成形する。従って、トラックとなるグルーブパターンの中心点が完全に一致させることは困難で、所定の公差が許容されている。
例えば、各レイヤの偏芯量としては最大75μmが許容されている。また半径位置精度としては最大100μmずれることは規格上許容されている。
すると、各記録層の相互の位置ずれとしては、最悪時で175μmとなる。
【0132】
しかし、さらにデフォーカスも考慮しなければならない。3層ディスクの最もレーザ入射面側の記録層であるレイヤL2は、レイヤL0から50μm弱だけ離れている。例えば46.5μmであるとする。すると、レイヤL0に合焦状態でレイヤL0に記録が行われる場合、レイヤL2では、半径29μmの範囲がレーザ照射範囲となる。
以上のことを考慮にいれると、約200μm以上の離間距離がないと、レイヤL2のファイルシステム領域に対して、レイヤL1,L0の論理アドレス空間の領域が、層方向で重なる可能性、つまりファイルシステム領域を通過したレーザによってストリームデータ記録が行われる可能性が生ずることになる。
【0133】
そこで、このような許容された各層の偏芯量やデフォーカスに応じて、サイズBAを設定し、その上で外周側スペアエリアサイズをszOSA、最終スペアエリアサイズをszLSAを設定する。例えばBAサイズを200μm以上とする。これにより層間偏芯やデフォーカスを考慮しても、ファイルシステムFSと論理アドレス空間が重ならないようにできる。
つまりファイルシステムFSを透過したレーザ光によってストリームデータ記録が行われる状況を確実に防止できる。
【0134】
図17(b)は4層ディスクの場合を示している。4層ディスクの場合も、各レイヤL0,L1,L2,L3では、内周側にISA(ISA0,ISA1,ISA2,ISA3)が設けられる。また外周側にOSA(OSA0,OSA1,OSA2,OSA3)が設けられる。
各レイヤL0,L1,L2,L3において、ストリームデータ記録は矢印RSの方向に行われる。従って、最終論理アドレスは記録層L3のISA3の外周側位置となる。
この場合、ISA3がLSA(ラストスペアエリア)となる。
ファイルシステムFSの記録は、3層ディスクの場合と同様、先頭論理アドレス(FirstLSN)の近辺と、最終論理アドレス(LastLSN)の近辺に行われる。但し、この4層ディスクの場合は、最終論理アドレス(LastLSN)がISA3の外周側位置となるため、レイヤL3の内周側にファイルシステムFSが記録される。
【0135】
この場合、レーザ入射方向から見て最も手前となるレイヤL3のファイルシステムFSの領域(最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域)に注目する。
この最終論理アドレス近辺のファイルシステムFSの領域が配置されたレイヤL3とは他のレイヤL0,L1,L2において、ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なる領域には、論理アドレス空間が割り当てられていない。
つまりこの場合は、当該ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なるレイヤL0,L1,L2の領域は、それぞれISA0,ISA1,ISA2とされている。
【0136】
これは、最終論理アドレス(LastLSN)に隣接する交替領域であるISA3のサイズと、ファイルシステムFSのサイズの合計より、他のレイヤL0,L1,L2の交替領域(ISA0,ISA1,ISA2)のサイズが大とされることで実現される。
ISA0,ISA1,ISA2のサイズは、TDDSにおける「内周側スペアエリアサイズ」の値で規定される。
ISA3はラストスペアエリアLSAであるから、そのサイズは「最終スペアエリアサイズ」の値で規定される。
従って、内周側スペアエリアサイズをszISA、最終スペアエリアサイズをszLSA、ファイルシステムサイズをszFSとしたとき、
szISA>szLSA+szFS
の条件を満たすように、物理フォーマット時に内周側スペアエリアサイズszISA、最終スペアエリアサイズszLSAを設定する。
そしてファイルシステム初期化としてファイルシステムFSを書き込むときは、ファイルシステムFSを論理アドレス空間の先頭と終端付近に書き込む。
【0137】
このようにすることで、ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なる他のレイヤの領域は、論理アドレス空間外となり、ストリームデータ記録は行われない領域となる。
従って、記録層L2の書込済領域(ファイルシステム領域)をレーザ光が通過する状態でストリームデータ記録が行われるということはなくなる。このため、ストリームデータ記録の信頼性を高めることができる。
【0138】
なお、この場合も図からわかるように、
szISA=szLSA+szFS+BA
としている。上記3層ディスクの場合と同様、各層の偏芯量に応じて、サイズBAを設定し、その上で内周側スペアエリアサイズをszISA、最終スペアエリアサイズをszLSAを設定することで、層間偏芯があったとしても、ファイルシステムFSと論理アドレス空間が重ならないようにできる。
【0139】
4層ディスクの場合も、3層ディスクと同様に、サイズBAは200μm以上とされれば問題ない。但し4層ディスクの場合、規格上、層間偏芯及びデフォーカスによる最大公差は約150μmと考えることができる。従って各レイヤは、最悪の状況でも150μm以上はズレないという前提とし、サイズBAは150μm以上とする。すると層間偏芯等によらず、ファイルシステムFSと論理アドレス空間が重ならないようにできる。
【0140】
ここで、3層、4層のBD−R,BD−REの場合における具体的なスペアエリアサイズの設定例を挙げておく。
まず3層ディスクの規格上の値は次のようになっている。
・トラックピッチ:0.32μm
・チャネルビット長:0.05587μm
・チャネルビット数/RUB:962136ビット (RUB:Recording Unit Block)
・クラスタ長:53754.54μm
【0141】
これらから次の値が算出される。
つまり上述の必要なBAサイズとして200μmを確保するには、トラック数として625が必要となる。なおかつ、対象の半径位置(58000μm)においては、クラスタ/トラックは6.775986クラスタが成り立つ。
ここから、サイズBAとしての必要なクラスタ差は4234.991クラスタと算出される。
さらに、上述のように最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域は100クラスタ程度確保すればよい。
すると、レイヤL0,L1のOSA0,OSA1と、レイヤL2のLSA(OSA2)において必要クラスタ差は、4234.991+100=4334.991クラスタとなる。
【0142】
従って3層ディスクの場合においては、このクラスタ差を確保できるスペアエリアサイズを設定すれば良いこととなる。
一例として、各スペアエリアサイズは次のようすればよい。
ISAサイズ:32×256クラスタ
OSAサイズ:38×256クラスタ
LSAサイズ:20×256クラスタ
このようなスペアエリアサイズとすることで図17(a)のディスクを実現できる。
【0143】
また4層ディスクの規格上の値は次のようになっている。
・トラックピッチ:0.32μm
・チャネルビット長:0.05826μm
・チャネルビット数/RUB:962136ビット
・クラスタ長:56054.04μm
これらから次の値が算出される。
つまり上述の必要なBAサイズとして150μmを確保するには、トラック数として625が必要となる。なおかつ、対象の半径位置(24000μm)においては、クラスタ/トラックは2.688834クラスタが成り立つ。
ここから、サイズBAとしての必要なクラスタ差は1260.391クラスタと算出される。
さらに、上述のように最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域は100クラスタ程度確保すればよい。
すると、レイヤL0,L1,L2のISA0,ISA1,ISA2と、レイヤL3のLSA(ISA3)において必要クラスタ差は、1260.391+100=1360.391クラスタとなる。
【0144】
従って4層ディスクの場合においては、このクラスタ差を確保できるスペアエリアサイズを設定すれば良いこととなる。
一例として、各スペアエリアサイズは次のようすればよい。
ISAサイズ:32×256クラスタ
OSAサイズ:34×256クラスタ
LSAサイズ:24×256クラスタ
このようなスペアエリアサイズとすることで図17(b)のディスクを実現できる。
【0145】
以上、3層ディスク、4層ディスクの各場合で説明したが、5層以上のディスクの場合も、同様に考えることができるのはいうまでもない。
即ち多層ディスクにおいて、内周側又は外周側のスペアエリアのサイズとラストスペアエリアのサイズの設定により、本発明の実施の形態としての光ディスクを実現できる。
【0146】
図18にディスクの製造からユーザデータの記録までの流れを示している。
ステップF0はディスク製造工程を示している。上述したように3層ディスク、4層ディスクとしてのBD−R、BD−REが、基板成形、スタンパを用いた各層の生成、カバー層形成等の各工程を経て製造される。
【0147】
ステップF0で製造されるBD−R、BD−REは、物理フォーマット及びファイルシステム初期化が施されていないディスクである。
このようなディスクはそのまま出荷されることもあるが、物理フォーマットやファイルシステム初期化が行われて出荷されることもある。
【0148】
ステップF1、F2は、メーカ側のディスクドライブ装置によって物理フォーマットが行われ、さらにファイルシステム初期化が行われた上で出荷される場合を示している。
このようにステップF1,F2を経て出荷されるディスクは、図17のような状態となっているディスクである。
このディスクを購入したユーザは、ユーザサイドのディスクドライブ装置において、すぐにステップF3としてのユーザデータの記録を行うことができる。
【0149】
またステップF11は、メーカ側のディスクドライブ装置によって物理フォーマットが行われて出荷される場合を示している。
このディスクを購入したユーザは、ユーザサイドのディスクドライブ装置において、ステップF12として、まずファイルシステム初期化を行うことになる。これにより当該ディスクは、図17のような状態となる。その後、ユーザサイドのディスクドライブ装置においてステップF3のユーザデータの記録を行うことができる。
【0150】
メーカ側で物理フォーマットが行われないでディスクが出荷される場合は、そのディスクを購入したユーザは、ユーザサイドのディスクドライブ装置において、ステップF21の物理フォーマット、及びステップF22のファイルシステム初期化を行う。これにより当該ディスクは、図17のような状態となる。その後、ユーザサイドのディスクドライブ装置においてステップF3のユーザデータの記録を行うことができる。
【0151】
例えばこのような各種手順でディスクの製造からユーザデータの記録までが行われる。
従って本発明の実施の形態としてのディスクは、メーカからの出荷段階、もしくはユーザサイドでの使用前の準備段階で実現されることとなる。
また本発明の実施の形態のディスクドライブ装置は、メーカ側のディスクドライブ装置あるいはユーザ側のディスクドライブ装置が該当する。
【0152】
ディスクドライブ装置において物理フォーマットを行う場合は、上述したTDMA(BD−REの場合はDMA)の情報をディスクに書き込むこととなるが、その際に、図17(a)(b)を用いた説明で述べたように、ISA、OSA、LSAのサイズを設定し、TDDS(又はDDS)に書き込むこととなる。
その後、ファイルシステム初期化として、先頭論理アドレス(FirstLSN)の近辺と、最終論理アドレス(LastLSN)の近辺にファイルシステムFSの書込を行う。
これによって図17(a)(b)のようなディスクが実現される。
【0153】
そして本例のディスクによれば、ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なる他のレイヤの領域は、論理アドレス空間外となり、ストリームデータ記録は行われない領域となり、ファイルシステム領域をレーザ光が通過する状態でストリームデータ記録が行われるということはない。このため、ストリームデータ記録の信頼性を高めることができる。
【0154】
また本例では、論理的には3層、4層の区別をする必要がない。
スペアエリア配置は、ディスクの物理フォーマット時にディスクドライブ装置が一回行えばよく、その後ファイルシステムFSを制御するソフトウェアは、論理アドレスが光ディスク上のどの位置に配置されているかを細かく知る必要はない。つまり記録総数にかかわらず「LSAを小さく配置する」という同じ処理をするだけでよいということである。
【0155】
また本例の場合、信頼性向上が、ユーザーエリアでトラックを細かく切るなどの手法を用いなくとも、簡単に実現できる。これは後述する図19(a)の変形例より有利な点であり、その理由は後に述べる。
【0156】
[9.変形例]

図19を用いて変形例を説明する。
図19(a)は、3層ディスクにおいて、レイヤL0,L1におけるファイルシステムFSと重なる部分を含む領域Xを、リザーブトラックRTKとした例である。
このリザーブトラックRTKは、ストリームデータ記録に使用しない領域として位置づけられる。つまり何も使用しない領域とする。
このようにすることでも、ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なる他のレイヤの領域はストリームデータ記録が行われない領域となるため、ストリームデータ記録の信頼性を高めることができる。
もちろん4層以上のディスクでも適用できる。
【0157】
ライトワンス系メディアの場合、図のようにリザーブトラックRTKを設定しておき、ストリームデータを書き込みする際にはそこを使用しないようにする。
リライタブル系メディアの場合は、ランダムライト可能であるので、トラックを切る必要もなく、ストリームデータを書き込みする際に上記領域を使用しないようにすることは可能である。
但し、これらの制御をするためにはファイルシステムを制御するソフトウェアが、論理アドレスが光ディスク上のどの位置に配置されているかを細かく知る必要があり、さらに層数などの細かい物理情報によって制御を分ける必要がある。
その点で、上述した図17のような手法の方が、ユーザーエリアでトラックを細かく切るなどの手法を用いなくとも、簡単に実現できる点で有利である。
【0158】
図19(b)は、さらに他の例として、3層ディスクにおいて、レイヤL0,L1におけるファイルシステムFSと重なる部分を含む領域を、論理アドレス空間外とした例である。つまり論理アドレスを与えず、結果としてストリームデータ記録に使用しない領域として位置づける。
このようにすることでも、ファイルシステムFSの領域と層形成方向に重なる他のレイヤの領域はストリームデータ記録が行われない領域となるため、ストリームデータ記録の信頼性を高めることができる。
もちろん4層以上のディスクでも適用できる。
本発明の実施の形態としては、この例のように、ISA,OSA等のスペアエリアが存在しない(設けない)場合でも実現できる。
【0159】
以上、実施の形態のディスク及びそれに対応するディスクドライブ装置について説明してきたが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、要旨の範囲内で各種変形例が考えられる。
【符号の説明】
【0160】
1 ディスク、51 ピックアップ、52 スピンドルモータ、53 スレッド機構、54 マトリクス回路、55 リーダ/ライタ回路、56 変復調回路、57 ECCエンコーダ/デコーダ、58 ウォブル回路、59 アドレスデコーダ、60 システムコントローラ、60a キャッシュメモリ、61 サーボ回路、62 スピンドルサーボ回路、63 レーザドライバ、120 AVシステム、201 ディスク基板、203 光透過層、204 中間層、L0,L1,L2,L3 レイヤ(記録層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光によって情報の記録再生が行われる記録層がn層(n≧3)設けられた多層光記録媒体であって、
ストリームデータが記録される論理アドレス空間とされる領域内の最終論理アドレス近辺にファイルシステム領域が配置されるとともに、
最終論理アドレス近辺の上記ファイルシステム領域が配置された記録層とは他の記録層において、上記ファイルシステム領域と層形成方向に重なる領域には、上記論理アドレス空間が割り当てられていない多層光記録媒体。
【請求項2】
各記録層には、上記論理アドレス空間に用いられる領域に物理的に隣接して交替領域が形成されているとともに、
上記ファイルシステム領域と層形成方向に重なる上記他の記録層の領域は、上記交替領域とされている請求項1に記載の多層光記録媒体。
【請求項3】
少なくとも最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと、上記ファイルシステム領域のサイズの合計より、上記他の記録層の交替領域のサイズが大とされることで、
上記ファイルシステム領域と層形成方向に重なる上記他の記録層の領域が上記交替領域とされる請求項2に記載の多層光記録媒体。
【請求項4】
レーザ光入射面側からみて、第1記録層が最も奥に形成され、該第2記録層から第n記録層までは、順にレーザ光入射面側に近づくように形成されており、
上記論理アドレス空間は、上記第1記録層における先頭論理アドレスから、上記第n記録層における上記最終論理アドレスまでとして形成される請求項3に記載の多層光記録媒体。
【請求項5】
レーザ光によって情報の記録再生が行われる記録層がn層(n≧3)設けられた多層光記録媒体に対する記録装置であって、
上記多層光記録媒体の各記録層に対してレーザ光照射を行って情報記録を行う記録部と、
上記多層光記録媒体に対する物理フォーマット処理として、各記録層において上記論理アドレス空間に用いられる領域に隣接して交替領域を設定する際に、上記最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと、該交替領域とは層形成方向に重なる他の記録層における交替領域のサイズについて、上記他の記録層における交替領域のサイズが、少なくとも最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと最終論理アドレス近辺に形成されるファイルシステム領域のサイズの合計より大となるように設定する管理情報を、上記記録部により上記多層光記録媒体に記録させる処理を行う制御部と、
を備えた記録装置。
【請求項6】
上記制御部は、さらに、
上記物理フォーマット後のファイルシステム初期化として、上記記録部に、上記論理アドレス空間の先頭論理アドレス近辺、及び最終論理アドレス近辺に、それぞれファイルシステム領域を形成させることで、上記他の記録層の交替領域が最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域と層形成方向に重なるようにする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
上記制御部は、さらに、
上記ファイルシステム初期化後の多層光記録媒体の論理アドレス空間とされる領域にストリームデータの記録を行うように上記記録部の制御を行う請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
レーザ光によって情報の記録再生が行われる記録層がn層(n≧3)設けられた多層光記録媒体に対する記録装置であって、
上記多層光記録媒体の各記録層に対してレーザ光照射を行って情報記録を行う記録部と、
上記多層光記録媒体に対する物理フォーマット処理として、各記録層において上記論理アドレス空間に用いられる領域に隣接して交替領域を設定する際に、上記最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと、該交替領域とは層形成方向に重なる他の記録層における交替領域のサイズについて、上記他の記録層における交替領域のサイズが、少なくとも最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと最終論理アドレス近辺に形成されるファイルシステム領域のサイズの合計より大となるように設定された上記多層光記録媒体に対するファイルシステム初期化として、上記記録部に、上記論理アドレス空間の先頭論理アドレス近辺、及び最終論理アドレス近辺に、それぞれファイルシステム領域を形成させることで、上記他の記録層の交替領域が最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域と層形成方向に重なるようにする処理を行う制御部と、
を備えた記録装置。
【請求項9】
上記多層光記録媒体は、レーザ光入射面側からみて、第1記録層が最も奥に形成され、該第2記録層から第n記録層までは、順にレーザ光入射面側に近づくように形成されており、また上記論理アドレス空間は、上記第1記録層における先頭論理アドレスから、上記第n記録層における上記最終論理アドレスまでとして形成されており、
上記制御部は、上記第1記録層から上記第n記録層の順で、上記論理アドレス空間とされる領域にストリームデータの記録を上記記録部に実行させる制御を行う請求項7又は請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
レーザ光によって情報の記録再生が行われる記録層がn層(n≧3)設けられた多層光記録媒体に対する記録方法であって、
上記多層光記録媒体に対する物理フォーマットの段階で、各記録層において上記論理アドレス空間に用いられる領域に隣接して交替領域を設定する際に、上記最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと、該交替領域とは層形成方向に重なる他の記録層における交替領域のサイズについて、上記他の記録層における交替領域のサイズが、少なくとも最終論理アドレスに隣接する交替領域のサイズと最終論理アドレス近辺に形成されるファイルシステム領域のサイズの合計より大となるように設定し、
上記物理フォーマット後のファイルシステム初期化として、上記論理アドレス空間の先頭論理アドレス近辺、及び最終論理アドレス近辺に、それぞれファイルシステム領域を形成することで、上記他の記録層の交替領域が最終論理アドレス近辺のファイルシステム領域と層形成方向に重なるようにし、
上記ファイルシステム初期化後の多層光記録媒体の論理アドレス空間とされる領域にストリームデータの記録を行う記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−150751(P2011−150751A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10597(P2010−10597)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】