説明

多層基板

【課題】薄く形成した多層基板において、強度劣化による基板反りを小さくする。
【解決手段】コア材の上面及び下面にそれぞれ第1導体16及び第2導体18が形成されている。ガラスクロスを含有する第1プリプレグ20がコア材の上面に接合されている。第1プリプレグの上面に第3導体が形成されている。ガラスクロスを含有する第2プリプレグ22がコア材の下面に接合されている。第2プリプレグの下面に第4導体が形成されている。コア材12に含有されたガラスクロス14の繊維方向は、第1及び第2プリプレグに含有されたガラスクロスの繊維方向に対して90度回転している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア材の上下にプリプレグを重ねた多層基板に関し、特に基板反りが小さい多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅用トランジスタを有する半導体チップを多層基板上に搭載した電力増幅器(PA: Power Amplifier)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような電力増幅器は、多層基板上に半導体チップとチップ部品を搭載したモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC: Monolitic Microwave IC)として実現される。
【0003】
多層基板は、コア材の上下にプリプレグを重ねたものである。コア材とプリプレグはガラスクロスを含有する。従来は、コア材とプリプレグに含有されるガラスクロスの繊維方向を同じにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−4322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に携帯電話用の電力増幅器では低背化が要求されているため、多層基板を薄くする必要がある。そのためにコア材やプリプレグを薄くするとガラスクロスも小さくなるため、多層基板の強度が劣化する。例えば多層基板の厚みを0.4mmから0.3mmに変更すると、基板メーカーからの納入時点で基板反りが大きくなる。また、電力増幅器の製造工程では熱履歴が250℃程度あるため、基板反りが更に増大して後続の工程に進めなくなる。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、基板反りが小さい多層基板を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラスクロスを含有するコア材と、前記コア材の上面及び下面にそれぞれ形成された第1導体及び第2導体と、前記コア材を貫通し、前記第1導体と前記第2導体を電気的に接続する第1ビア又はスルーホールと、ガラスクロスを含有し、前記コア材の上面に接合された第1プリプレグと、前記第1プリプレグの上面に形成された第3導体と、前記第1プリプレグを貫通して前記第1導体と前記第3導体を電気的に接続する第2ビアと、ガラスクロスを含有し、前記コア材の下面に接合された第2プリプレグと、前記第2プリプレグの下面に形成された第4導体と、前記第2プリプレグを貫通して前記第2導体と前記第4導体を電気的に接続する第3ビアとを備え、前記コア材に含有された前記ガラスクロスの繊維方向は、前記第1及び第2プリプレグに含有された前記ガラスクロスの繊維方向に対して90度回転していることを特徴とする多層基板である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、基板反りが小さい多層基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係るワークを示す平面図である。
【図2】図1のワークの積層前の状態を示す断面図である。
【図3】実施の形態1に係るシートを示す平面図である。
【図4】実施の形態1に係る電力増幅器を示す上面図である。
【図5】実施の形態1に係る電力増幅器を示す断面図である。
【図6】実施の形態1に係る電力増幅器の等価回路を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る多層基板を示す断面図である。
【図8】図7のA−A´における上面図である。
【図9】図7のB−B´における上面図である。
【図10】図7のC−C´における上面図である。
【図11】図7のD−D´における上面図である。
【図12】実施の形態1に係る第1プリプレグ、コア材、及び第2プリプレグをそれぞれの向きを変えずに並べて示す上面図である。
【図13】実施の形態2に係る電力増幅器を示す断面図である。
【図14】実施の形態3に係る電力増幅器を示す断面図である。
【図15】実施の形態4に係る電力増幅器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。同じ構成要素には同じ番号を付し、説明の繰り返しは省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るワークを示す平面図である。ワーク10は、基板メーカーで製造している多層基板である。ワーク10のサイズは例えば500×400mmである。ワーク10内に複数のシート10aが並べられている。
【0012】
図2は、図1のワークの積層前の状態を示す断面図である。コア材12は、厚みが0.1mm以下であり、1枚のガラスクロス14に樹脂を含侵させたものである。コア材12の上面と下面にそれぞれ銅箔である第1導体16と第2導体18を加熱プレスして銅張積層板が形成されている。
【0013】
第1及び第2プリプレグ20,22は、それぞれガラスクロス24,26に樹脂を含侵させたものである。第1プリプレグ20の上面に第3導体28が形成され、第2プリプレグ22の下面に第4導体30が形成されている。
【0014】
コア材12の上面に第1プリプレグ20が接合され、コア材12の下面に第2プリプレグ22が接合されることでワーク10が形成される。ガラスクロス14,24,26は、多層基板であるワーク10に強度を持たす働きがある。
【0015】
図3は、実施の形態1に係るシートを示す平面図である。シート10aは、電力増幅器の製造に適したサイズにした多層基板である。基板メーカーは、多層基板をワーク10の状態で製造した後、シート10aの状態に切り分けて出荷する。シート10aのサイズは例えば50×50mmである。シート10a内に複数のピース32が並べられている。ピース32は電力増幅器の多層基板である。
【0016】
続いて、ピース32に部品を実装した電力増幅器について説明する。図4は、実施の形態1に係る電力増幅器を示す上面図であり、図5は断面図である。ただし、多層基板34(=ピース32)の内部構造については図示を省略している。なお、電力増幅器の平面形状は3mm角の正方形である。
【0017】
Auメッキなどにより多層基板34の上面に、第3導体28として、第3導体28a,28b,28cが形成されている。多層基板34の下面に、第4導体30として、接地電極である第4導体30aと、電極端子である第4導体30bが形成されている。
【0018】
多層基板34の第3導体28a上に、GaAsなどで構成された半導体チップ36がダイボンド材により実装されている。多層基板34の第3導体28b上に他のチップ部品38が半田により実装されている。多層基板34の上面と下面のソルダーレジスト40,42は半田の流れ止めとして機能する。半導体チップ36と多層基板34上の第3導体28cが金ワイヤ44により接続されている。これらの半導体チップ36、チップ部品38、第3導体28a,12b,12c及び金ワイヤ44は樹脂46により封止されている。
【0019】
図6は、実施の形態1に係る電力増幅器の等価回路を示す図である。この電力増幅器は高周波電力増幅器である。
【0020】
半導体チップ36は、増幅用トランジスタTr1,Tr2と、バイアス回路Bと、整合回路A1,A2,A3とを有する。また、多層基板34は、端子Pin,Pout,Vref,Vcb,Vc1,Vc2と、バイアスラインL1,L2と、端子Vc1,Vc2と接地点との間にそれぞれ設けられたバイアスコンデンサC1,C2と、出力側DCカット用コンデンサC3とを有する。
【0021】
前段の増幅用トランジスタTr1のベースは、整合回路A1を介して端子Pinに接続されている。後段の増幅用トランジスタTr2のベースは、整合回路A2を介して前段の増幅用トランジスタTr1のコレクタに接続されている。後段の増幅用トランジスタTr2のコレクタは、整合回路A3及び出力側DCカット用コンデンサC3を介して端子Poutに接続されている。増幅用トランジスタTr1,Tr2のコレクタには、それぞれバイアスラインL1,L2を介して端子Vc1,Vc2から駆動電圧が印加される。増幅用トランジスタTr1,Tr2のエミッタは接地されている。
【0022】
また、バイアス回路Bには端子Vrefを介して基準電圧が印加され、端子Vcbを介して駆動電圧が印加される。この駆動電圧に応じてバイアス回路Bは、増幅用トランジスタTr1,Tr2のベースに電圧を供給して、増幅用トランジスタTr1,Tr2を駆動する。そして、端子Pinから入力された高周波信号は、増幅用トランジスタTr1,Tr2により増幅されて、端子Poutから出力される。
【0023】
図7は、実施の形態1に係る多層基板を示す断面図である。図8〜11は、それぞれ図7のA−A´,B−B´,C−C´,D−D´における上面図である。
【0024】
第1導体16と第2導体18は、コア材12を貫通する第1ビア48により電気的に接続されている。第1導体16と第3導体28cは、第1プリプレグ20を貫通する第2ビア50により電気的に接続されている。第2導体18と第4導体30bは、第2プリプレグ22を貫通する第3ビア52により電気的に接続されている。
【0025】
第2プリプレグ22の上面に設けられた第2導体18は、増幅用トランジスタTr1,Tr2に駆動電圧を供給するためのバイアスラインL1,L2を有する。
【0026】
図12は、実施の形態1に係る第1プリプレグ、コア材、及び第2プリプレグをそれぞれの向きを変えずに並べて示す上面図である。コア材12と第1及び第2プリプレグ20,22にそれぞれ含有されたガラスクロス14,24,26には繊維方向(例えばタテ方向とヨコ方向)がある。そして、コア材12に含有されたガラスクロス14の繊維方向は、第1及び第2プリプレグ20,22に含有されたガラスクロス24,26の繊維方向に対して90度回転している。これにより、コア材12と第1及び第2プリプレグ20,22のガラスクロスの繊維方向を同じにした多層基板に比べて、基板反りが小さくなる。よって、製品の信頼性や歩留まりを向上することができる。
【0027】
実施の形態2.
図13は、実施の形態2に係る電力増幅器を示す断面図である。実施の形態2では、実施の形態1の第1ビア48の代わりにスルーホール54がコア材12を貫通している。このスルーホール54により、第1導体16と第2導体18は電気的に接続されている。その他の構成は実施の形態1と同じであり、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0028】
実施の形態3.
厚みが0.1mm以下のコア材には、メーカーによって、1枚のガラスクロスを含有する1−ply仕様のものと、2枚のガラスクロスを含有する2−ply仕様のものがある。実施の形態1では1−ply仕様のコア材を用いた。
【0029】
図14は、実施の形態3に係る電力増幅器を示す断面図である。実施の形態3では、コア材12は、厚みが0.1mm以下であり、2枚のガラスクロスを含有する2−ply仕様である。その他の構成は実施の形態1と同じである。これにより、実施の形態1よりも更に基板反りが小さくなる。
【0030】
実施の形態4.
図15は、実施の形態4に係る電力増幅器を示す断面図である。実施の形態4では、実施の形態1の第1ビア48の代わりにスルーホール54がコア材12を貫通している。このスルーホール54により、第1導体16と第2導体18は電気的に接続されている。更に、コア材12は、厚みが0.1mm以下であり、2枚のガラスクロスを含有する2−ply仕様である。その他の構成は実施の形態1と同じである。これにより、実施の形態1よりも更に基板反りが小さくなる。
【符号の説明】
【0031】
12 コア材
14,24,26 ガラスクロス
16 第1導体
18 第2導体
20 第1プリプレグ
22 第2プリプレグ
28 第3導体
30 第4導体
34 多層基板
48 第1ビア
50 第2ビア
52 第3ビア
54 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロスを含有するコア材と、
前記コア材の上面及び下面にそれぞれ形成された第1導体及び第2導体と、
前記コア材を貫通し、前記第1導体と前記第2導体を電気的に接続する第1ビア又はスルーホールと、
ガラスクロスを含有し、前記コア材の上面に接合された第1プリプレグと、
前記第1プリプレグの上面に形成された第3導体と、
前記第1プリプレグを貫通して前記第1導体と前記第3導体を電気的に接続する第2ビアと、
ガラスクロスを含有し、前記コア材の下面に接合された第2プリプレグと、
前記第2プリプレグの下面に形成された第4導体と、
前記第2プリプレグを貫通して前記第2導体と前記第4導体を電気的に接続する第3ビアとを備え、
前記コア材に含有された前記ガラスクロスの繊維方向は、前記第1及び第2プリプレグに含有された前記ガラスクロスの繊維方向に対して90度回転していることを特徴とする多層基板。
【請求項2】
前記コア材は、2枚のガラスクロスを含有する2−ply仕様であることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−108771(P2011−108771A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260828(P2009−260828)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】