説明

多層基板

【課題】信号の干渉を抑制し、かつ薄型化及び所望の特性インピーダンスを得ることが可能な多層基板を提供すること。
【解決手段】本発明は、複数の絶縁層と複数の導体層とを積層した多層基板であって、複数の導体層のうち最も厚く、接地配線として機能するコア10と、複数の導体層に含まれ、絶縁層20を介してコア10に隣接する、高周波信号を流すための信号配線14aと、を具備し、コア10の信号配線14aと対向する領域に、凹部10aが設けられている多層基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の通信機器のマルチバンド化が進展している。マルチバンド化に伴い、例えば1台の携帯電話端末には複数のフィルタ、分波器、又はアンプ等の高周波信号に対応した高周波デバイスが搭載されることがある。このような携帯電話端末の小型化のためには、高周波デバイスを集積化した、小型のモジュールが要求されている。
【0003】
小型のモジュールを実現するために、複数の絶縁層と複数の導体層とを積層した多層基板を用いることがある。導体層に含まれる信号配線のインピーダンスは、例えば導体層間の距離、絶縁層の誘電率等により定まる。例えば特許文献1には、誘電体のコアと、信号層と外層との間に設けられ、一部が開口されたGND層と、信号層と同じ層に設けられたGND層と、を有する発明が記載されている。この発明の場合、外層とGND層との間の距離により、インピーダンスが定まる。また特許文献2には、電子部品を内蔵する金属のコアを有し、このコアの開口部に電子部品を収納した多層基板の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−189152号公報
【特許文献2】特開2009−81423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、GND層の開口部を通じて、信号層と外層との間で信号の干渉が生じることがある。特許文献2記載の発明では、多層基板の薄型化と、信号線路における所望の特性インピーダンスの確保との両立が難しい可能性がある。本発明は上記課題に鑑み、信号の干渉を抑制し、かつ薄型化及び所望の特性インピーダンスを得ることが可能な多層基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の絶縁層と複数の導体層とを積層した多層基板であって、前記複数の導体層のうち最も厚く、接地配線として機能するコアと、前記複数の導体層に含まれ、前記複数の絶縁層に含まれる第1絶縁層を介して前記コアに隣接する、高周波信号を流すための第1信号配線と、を具備し、前記コアの前記第1信号配線と対向する領域に、凹部が設けられている多層基板である。本発明によれば、信号の干渉を抑制し、かつ薄型化及び所望の特性インピーダンスを得ることが可能な多層基板を提供することができる。
【0007】
上記構成において、前記コアは、電子部品の少なくとも一部を収納する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記複数の導体層に含まれ、前記第1信号配線を挟んで、前記コアとは反対側に設けられた、前記コアとは別の第1接地配線を具備する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1接地配線は、前記複数の絶縁層に含まれ前記第1絶縁層とは別の第2絶縁層を介して前記第1信号配線と隣接する構成とすることができる。この構成によれば、所望の特性インピーダンスを容易に得ることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数の導体層のうち前記第1信号配線と同じ平面に位置する導体層に含まれ、前記第1信号配線の両側に位置する第2接地配線を具備する構成とすることができる。この構成によれば、信号の干渉を効果的に抑制することができる。
【0011】
上記構成において、前記第2接地配線と前記第1信号配線との距離は、前記複数の絶縁層と前記複数の導体層との積層方向に前記第1信号配線を前記コアに投影した投影領域と、前記凹部の側面との距離以上である構成とすることができる。この構成によれば、所望の特性インピーダンスを容易に得ることができる。
【0012】
上記構成において、前記複数の導体層に含まれ、前記コアを挟んで、前記第1信号配線とは反対側に設けられた、前記第1信号配線とは別の第2信号配線を具備する構成とすることができる。この構成によれば、信号の干渉を抑制することができる。
【0013】
上記構成において、前記高周波信号をフィルタリングするフィルタと、前記高周波信号を増幅する集積回路と、を具備し、前記コア及び前記第1信号配線が形成する伝送線路は、前記フィルタと前記集積回路との間を接続する構成とすることができる。この構成によれば、高周波信号の損失を効果的に低減することができる。
【0014】
上記構成において、前記高周波信号が入力及び出力する複数のデュプレクサを具備し、前記コア及び前記第1配線が形成する伝送線路は、前記複数のデュプレクサと接続されている構成とすることができる。この構成によれば、高周波信号の損失を効果的に低減することができる。
【0015】
上記構成において、前記第1信号配線は、スパイラルインダクタである構成とすることができる。この構成によれば、所望のインダクタンス値を得ることができる。
【0016】
上記構成において、前記コアを挟んで前記第1信号配線と反対側に設けられた、高周波信号を流すための第3信号配線を具備し、前記コアの前記第3信号配線と対向する領域には、別の凹部が設けられている構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記コアは、第1金属板と、開口部を有する第2金属板とを貼り合わせて形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、信号の干渉を抑制し、かつ薄型化及び所望の特性インピーダンスを得ることが可能な多層基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、比較例1に係る多層基板を例示する断面図であり、図1(b)は比較例2に係る多層基板を例示する断面図である。
【図2】図2は、実施例1に係る多層基板を例示する断面図である。
【図3】図3は、実施例1に係る多層基板の特性インピーダンスの計算結果を示す図である。
【図4】図4(a)は、実施例1の第1の変形例に係る多層基板を例示する断面図である。図4(b)は、実施例1の第2の変形例に係る多層基板を例示する断面図である。
【図5】図5は、実施例2に係る多層基板を用いたモジュールを例示するブロック図である。
【図6】図6は、実施例2に係る多層基板を例示する斜視図である。
【図7】図7(a)は、実施例2に係る多層基板を例示する上面図である。図7(b)は、実施例2に係る多層基板を例示する断面図である。
【図8】図8(a)は、実施例3に係る多層基板を例示する上面図である。図8(b)は、実施例3に係る多層基板を例示する断面図である。
【図9】図9(a)は、実施例4に係る多層基板を例示する断面図である。図9(b)は、実施例4に係る多層基板のコアを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施例の説明の前に、比較例について説明する。比較例1及び比較例2は、金属からなるコアを用いる例である。図1(a)は、比較例1に係る多層基板を例示する平面図である。
【0021】
図1(a)に示すように、比較例1に係る多層基板100Rは、コア110、導体層112〜118、絶縁層120〜126、及び電子部品130を備える。導体層112は多層基板100Rの上面に位置する。絶縁層120は、導体層112の下に設けられている。導体層114は、絶縁層120の下に設けられている。絶縁層122は、導体層114の下層に設けられている。コア110は、絶縁層122の下側に設けられている。コア110には孔部111が設けられている。電子部品130は、孔部111に収納されている。なお、電子部品130の全体、又は一部が孔部111に収納されればよい。つまり、電子部品130の少なくとも一部が孔部111に収納されればよい。以下同様である。コア110の両側(図中の左右側)は例えば空洞、又は絶縁層であるが、奥にはコア110が位置する(図中の格子斜線の領域)。絶縁層124は、コア110の下に設けられている。導体層116は、絶縁層124の下に設けられている。絶縁層126は、導体層116の下に設けられている。導体層118は、絶縁層126の下に設けられ、多層基板100Rの下面に位置する。このように、多層基板100Rは、コア110を含む複数の導体層と、複数の絶縁層とが積層された多層基板である。
【0022】
コア110、及び導体層112〜118は、例えば銅(Cu)等の金属からなる。絶縁層120〜126は、例えばガラスエポキシ樹脂等の樹脂、又は樹脂以外の絶縁体からなる。電子部品130は、例えばフィルタ、キャパシタ又はインダクタ等の受動部品でもよいし、トランジスタ等の能動部品でもよい。コア110の厚さは、例えば電子部品130の厚さ以上である。
【0023】
導体層114は、高周波信号を伝送する信号配線、及び接地配線等を含む。コア110及び導体層112は、接地配線として利用される。導体層116及び導体層118は、例えば高周波信号以外の信号を伝送する信号配線、又は接地配線等として利用される。なお、高周波信号とは例えばマイクロ波である。高周波信号は、例えばW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式に対応するGHz帯の周波数、又はGSM(登録商標、Global System for Mobile Communications)方式に対応する数百MHzの周波数を有するRF(Radio Frequency)信号等を含むものである。高周波信号以外の信号とは、例えば数Hz〜数十MHz程度の周波数を有する信号、又は直流信号等である。
【0024】
コア110が接地配線として機能するため、導体層114と、導体層116及び導体層118との間における信号の干渉が抑制される。また、コア110は電子部品130をノイズから遮断するシールドとして機能する。コア110は、導体層112〜118の各々より厚い。コア110が金属からなり、かつ大きな厚さを有するため、例えばコアが絶縁体からなる場合と比較して、多層基板100Rの強度は高まる。また、コア110は良好な放熱性を有するため、電子部品130から生じる熱は効果的に外部へと放出される。このように金属のコアを用いることにより、信号の干渉を抑制し、かつ高い強度及び放熱性を得ることができる。
【0025】
また、コア110、導体層112及び導体層114は、伝送線路の一種であるストリップラインを形成することがある。図1(b)はストリップラインを有する多層基板を例示する断面図である。
【0026】
図1(b)に示すように、多層基板200Rの導体層114は、信号配線114a、接地配線114b及び接地配線114cを含む。接地配線114b及び接地配線114cは、信号配線114aの両側に、信号配線114aと離間して配置されている。信号配線114aと接地配線114b及び接地配線114cとの間には絶縁層120と同じ絶縁体からなる絶縁層が設けられている。コア110、導体層112及び導体層114は、ストリップラインを形成し、所定の特性インピーダンスが得られる。このとき、信号配線114aは、高周波信号を流すための配線として機能する。また、厳密にはコア110、導体層112及び導体層114には、リターン電流が流れる。
【0027】
ストリップラインの特性インピーダンスは、ストリップラインを形成する各層の寸法、及び絶縁層の誘電率等により定まる。寸法とは、絶縁層120の厚さt1、絶縁層122の厚さt2、信号配線114aの線幅w等である。なお、厚さt1は、導体層112と導体層114との距離に等しい。また、厚さt2は、導体層114とコア110との距離に等しい。厚さt1又はt2が小さい、又は線幅wが大きい場合、特性インピーダンスは低下する。厚さt1又はt2が大きい、又は線幅wが小さい場合、特性インピーダンスは増加する。
【0028】
多層基板は、例えば携帯電話等に搭載される。携帯電話の小型化のために、多層基板100R及び多層基板200Rのような多層基板には薄型化が要求される。薄型化のためには、厚さt1及びt2を小さくすればよい。しかし、厚さt1及びt2が小さくなると、特性インピーダンスが低下する。特性インピーダンスを例えば50Ωのような所望の値に維持するためには、信号配線114aの線幅wを小さくすればよい。また特性インピーダンスには、導体間の距離が影響する。従って、信号配線114aと接地配線114b間の距離L1、信号配線114aと接地配線114c間の距離L2も、特性インピーダンスに影響することがある。距離L1及びL2が小さい場合、特性インピーダンスは低下する。特性インピーダンスの増加のためには、接地配線114b及び接地配線114cの特性インピーダンスへの寄与を小さくすることが好ましい。従って、距離L1及び距離L2は、例えば線幅wの2倍である2w以上とすることが好ましい。
【0029】
上記のように、線幅wを小さくすることで特性インピーダンスを所望の値とすることができる。しかしながら、線幅wが小さすぎる場合、良好な信号配線114aの製造が困難な場合がある。例えば厚さt1及びt2が25μm、絶縁層120及び絶縁層122各々の誘電率が3.4である樹脂からなり、コア110及び各導体層が銅からなる場合、線幅wを17μmとすることで、特性インピーダンスは50Ωとなる。しかしながら、w=17μmのような細い信号配線114aは、製造が困難であることがある。その一方で、例えばw=30μmのような、製造可能な信号配線114aを採用した場合、特性インピーダンスは40Ωであり、所望の値から外れる。
【0030】
このように、金属のコアを用いた場合、多層基板の薄型化と所望の特性インピーダンスの確保との両立が困難な場合がある。次に、図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0031】
図2は、実施例1に係る多層基板を例示する断面図である。図1(a)及び図1(b)に示した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0032】
図2に示すように、実施例1に係る多層基板100は、コア10、導体層12〜18、絶縁層20〜26、及び電子部品30を備える。多層基板100は、コア10を含む複数の導体層と、複数の絶縁層20〜26とが積層された多層基板である。
【0033】
コア10は、積層された複数の導体層のうち、もっとも厚い。導体層14は、絶縁層22(第1絶縁層)を介してコア10と隣接し、信号配線14a(第1信号配線)、接地配線14b及び接地配線14c(第2接地配線)を含む。接地配線14b及び接地配線14cは、信号配線14aと同じ平面に位置する導体層である。信号配線14aは、高周波信号を流すための配線である。コア10の孔部11には電子部品30が収納されている。コア10の、信号配線14aと対向する領域には、凹部10aが形成されている。
【0034】
導体層12は、信号配線14aを挟んで、コア10と反対側に設けられており、絶縁層20(第2絶縁層)を介して信号配線14aと隣接する接地配線である(第1接地配線)。導体層16及び導体層18は、コア10を挟んで、信号配線14aとは反対側に位置する。導体層16及び導体層18は、高周波信号以外の信号を流すための配線を含む(第2信号配線)。
【0035】
コア10の、信号配線14aと対向する領域には、凹部10aが形成されている。凹部10a上における絶縁層22の厚さt3、言い換えれば信号配線14aと凹部10aの底面との距離は、図1(b)における絶縁層122の厚さt2より大きい。コア10、導体層12及び導体層14、並びに絶縁層20及び絶縁層22は、ストリップラインを形成する。上記のように、絶縁層の厚さが大きくなることにより、特性インピーダンスは増大する。凹部10aを設けたことにより、凹部10aと信号配線14aとの間における、絶縁層22の厚さt3は大きくなる。従って、実施例1によれば、特性インピーダンスは増大する。厚さt1及びt3を変更することにより、容易に特性インピーダンスを所望の値とすることができる。このように、多層基板100の薄型化を図り、かつ線幅wを製造可能な大きさとした場合でも、凹部10aを形成することで特性インピーダンスを大きくすることができる。この結果、薄型化と所望の特性インピーダンスの確保とを両立することができる。また、金属からなるコア10が、信号配線14aと、導体層16及び導体層18との間に位置する。従って、信号配線14aを流れる信号と、導体層16及び導体層18を流れる信号との干渉は抑制される。
【0036】
特性インピーダンスの確保を効果的に行うために、接地配線14b及び接地配線14cの、特性インピーダンスへの影響を低減することが好ましい。従って、距離L1及びL2が大きいことが好ましい。距離L1及びL2は、例えば線幅wの2倍である2wとしてもよいし、2w以上でもよい。また、コア10の凹部10a以外の領域からの、特性インピーダンスへの影響を低減することが好ましい。従って、図3に円で囲んだ、積層方向に信号配線14aのコアに投影した投影領域Rと、凹部10aの側面との距離L3及びL4が大きいことが好ましい。距離L3及びL4は、例えば2w以上とする。
【0037】
次に特性インピーダンスの計算について説明する。図2に示した多層基板100をサンプルとし、厚さt3を変化させて、特性インピーダンスの計算を行った。計算に用いた条件は以下のものである。
絶縁層20の厚さt1:25μm
コア10の厚さt4:150μm
信号配線14aの線幅w:30μm
距離L1、L2、L3、L4:60μm
絶縁層20〜26各々の誘電率:3.4
コア10、導体層12〜18の材質:銅
【0038】
図3は、実施例1に係る多層基板の特性インピーダンスの計算結果を示す図である。横軸は厚さt3、縦軸は特性インピーダンスをそれぞれ表す。
【0039】
図3に示すように、厚さt3が大きくなるに伴い、特性インピーダンスは増大する。t3=60μm付近において、特性インピーダンスは50Ωとなる。また、t3=100μm付近において、特性インピーダンスは55Ωに近づく。このようにt3を、例えば37.5〜75μm(厚さt1の1.5〜3倍)程度とすることで、所望の特性インピーダンスを得ることができる。
【0040】
また例えば上記の条件のように、凹部10aを設けた場合でも、コア10の厚さは120μm程度の大きさを有する。従って、放熱性、及び強度は高く維持される。凹部10aは、例えばコア10の凹部10aを形成する領域以外の領域にレジストを設けた後、ハーフエッチング処理を行うことで形成される。
【0041】
次に、実施例1の変形例について説明する。図4(a)は、実施例1の第1の変形例に係る多層基板を例示する断面図である。
【0042】
図4(a)に示すように、多層基板100aでは、信号配線14aと接地配線14bとの距離L1及び信号配線14aと接地配線14cとの距離L2が、距離L3及びL4よりも大きい。このため、接地配線14b及び接地配線14cの、特性インピーダンスへの影響を低減することができる。この結果、所望の特性インピーダンスを容易に得ることができる。なお、信号配線14aの両側には、接地配線14b及び接地配線14cが設けられるとしたが、例えば高周波信号以外の信号を流すための信号配線が設けられてもよい。このように、導体層14は、信号配線14a以外の配線を含んでもよい。なお、距離L1及びL2を大きくすることで、信号の干渉を抑制することができる。
【0043】
図4(b)は、実施例1の第2の変形例に係る多層基板を例示する断面図である。図4(b)に示すように、多層基板100bは、導体層12及び絶縁層20を有しない。言い換えれば、導体層14が多層基板100bの上面に位置する。多層基板100bにおいては、信号配線14a、接地配線14b及び接地配線14c、並びにコア10により、伝送線路の一種であるマイクロストリップラインを形成する。コア10には凹部10aが設けられている。従って、実施例1と同様に、マイクロストリップラインのインピーダンスを所望の値とすることができる。
【実施例2】
【0044】
実施例2は、モジュール基板の例である。図5は、実施例2に係る多層基板を例示するブロック図である。
【0045】
図5に示すように、多層基板200は、デュプレクサ40a〜40f、フィルタ回路50、IC(Integrated Circuit:集積回路)60、パワーアンプ64a〜64c、及びスイッチ70〜74を備える。多層基板200はRFモジュール210に用いられるモジュール基板である。デュプレクサ40aは、受信フィルタ42、送信フィルタ44、整合回路46及び整合回路48とを含む。受信フィルタ42が備える平衡出力端子は、整合回路46と接続されている。送信フィルタ44が備える不平衡入力端子は、整合回路48と接続されている。デュプレクサ40b〜40fの各々も、デュプレクサ40aと同様の構成を有する。フィルタ回路50は、フィルタ52と整合回路54とを含む。フィルタ52が備える平衡出力端子は、整合回路54と接続されている。IC60は、VGA(Variable Gain Amplifier:可変利得アンプ)62a〜62jを含む。IC60は、信号の周波数の変換を行う、ダイレクトコンバータとして機能する。
【0046】
スイッチ70は、アンテナ202、デュプレクサ40a〜40f、フィルタ回路50、スイッチ72及びスイッチ74に接続されている。受信フィルタ42が備える入力端子、及び送信フィルタ44が備える出力端子はスイッチ70を介してアンテナ202に接続されている。デュプレクサ40aの平衡出力端子、つまり整合回路46の平衡出力端子は、VGA62aの入力端子に接続されている。デュプレクサ40aの不平衡入力端子、つまり整合回路48の不平衡入力端子はパワーアンプ64aの出力端子に接続されている。
【0047】
デュプレクサ40bの平衡出力端子はVGA62bの入力端子に接続されている。デュプレクサ40bの不平衡入力端子はスイッチ72に接続されている。デュプレクサ40cの平衡出力端子はVGA62cの入力端子に接続されている。デュプレクサ40cの不平衡入力端子はスイッチ72に接続されている。フィルタ回路50の平衡出力端子、つまり整合回路54の平衡出力端子は、VGA62dの入力端子に接続されている。デュプレクサ40dの平衡出力端子はVGA62eの入力端子に接続されている。デュプレクサ40dの不平衡入力端子はスイッチ74に接続されている。デュプレクサ40eの平衡出力端子はVGA62fの入力端子に接続されている。デュプレクサ40eの不平衡入力端子はスイッチ74に接続されている。デュプレクサ40fの平衡出力端子はVGA62gの入力端子に接続されている。デュプレクサ40fの不平衡入力端子はスイッチ74に接続されている。
【0048】
パワーアンプ64aの入力端子は、VGA62hの出力端子に接続されている。スイッチ72は、パワーアンプ64bの出力端子に接続されている。パワーアンプ64bの入力端子は、VGA62iの出力端子に接続されている。スイッチ74は、パワーアンプ64cの出力端子に接続されている。パワーアンプ64cの入力端子は、VGA62jの出力端子に接続されている。
【0049】
アンテナ202は、高周波信号等の信号を受信又は送信する。デュプレクサ40a〜40fは、例えば異なるバンドに対応している。通信方式及びバンドに応じて、スイッチ70は、デュプレクサ40a〜40f、フィルタ回路50、スイッチ72及びスイッチ74のいずれかを選択して、アンテナ202と接続することができる。スイッチ72は、デュプレクサ40b及びデュプレクサ40c、並びにスイッチ70のいずれかを選択して、パワーアンプ64bと接続することができる。スイッチ74は、デュプレクサ40d〜40f及びスイッチ70のいずれかを選択して、パワーアンプ64cと接続することができる。
【0050】
デュプレクサ40aとアンテナ202とが接続された場合について説明する。アンテナ202が受信した受信信号は、デュプレクサ40aの受信フィルタ42に入力する。受信フィルタ42は、受信信号をフィルタリングし、整合回路46を介してVGA62aに出力する。VGA62aは受信信号の増幅を行う。IC60は、VGA62aに入力した高周波信号である受信信号を、ベースバンド信号にダウンコンバートする。また、IC60は、ベースバンド信号である送信信号を、高周波信号にアップコンバートする。アップコンバートされた送信信号は、VGA62h及びパワーアンプ64aにより増幅される。増幅された送信信号は、整合回路48を介して送信フィルタ44に入力する。送信フィルタ44は、送信信号をフィルタリングして、アンテナ202に出力する。
【0051】
デュプレクサ40b〜40fも、デュプレクサ40aと同様の機能を果たす。またフィルタ回路50に含まれるフィルタ52は受信信号をフィルタリングする。受信信号は、整合回路54を介してVGA62dに出力される。なお、デュプレクサ40a〜40f及びフィルタ回路50に含まれるフィルタは、例えばSAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)フィルタ、弾性境界波フィルタ、又はFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator:圧電薄膜共振子)を用いたフィルタ等、弾性波フィルタとすることができる。
【0052】
次に多層基板の層構造について説明する。図6は、実施例2に係る多層基板を例示する斜視図である。図7(a)は、実施例2に係る多層基板を例示する上面図である。図7(b)は、実施例2に係る多層基板を例示する断面図である。なお、図6及び図7(a)においては、多層基板200内部を図示するため、導体層12に含まれる接地配線12dの一部を取り除き、かつ絶縁層20〜26を透視した図を示している。また、図7(b)は、図6の矢印の方向から見た断面を図示している。
【0053】
図6から図7(b)に示すように、多層基板200は、コア10、導体層12〜18、絶縁層20〜26、電子部品30、ビア配線32及びビア配線34、を備える。導体層12は、信号配線12a〜12c及び接地配線12dを含む。導体層14は、信号配線14a、接地配線14b及び接地配線14c、並びに信号配線14d〜14gを含む。信号配線14aは高周波信号を流すための配線である。信号配線12a〜12c、及び信号配線14d〜14gは、高周波信号以外の信号を流すための配線である。また、導体層16及び導体層18も、高周波信号以外の信号を流すための配線を含む。実施例1と同様に、コア10の信号配線14aと対向する領域には凹部10aが設けられている。
【0054】
電子部品30にはビア配線32が接続されている。ビア配線32には信号配線14dが接続されている。また、コア10、接地配線14b及び接地配線12dは、ビア配線34を介して互いに接続されている。コア10、接地配線14c及び接地配線12dは、ビア配線34を介して互いに接続されている。ビア配線34は、例えば絶縁層20及び/又は絶縁層22を、積層方向に貫通している。
【0055】
実施例2によれば、実施例1と同様に、信号の干渉を抑制し、かつ薄型化及び所望の特性インピーダンスの確保が可能な多層基板200を実現することができる。図6〜図7(b)に示したような多層基板200の構成は、例えば図5中におけるデュプレクサ40a〜40f及びフィルタ回路50とIC60との間に適用されることが好ましい。言い換えれば、コア10、信号配線14a、接地配線12d、接地配線14b及び接地配線14c等により形成されるストリップラインが、デュプレクサ40a〜40f及びフィルタ回路50とIC60との間を接続することが好ましい。なお、デュプレクサ40a〜40f及びフィルタ回路50とIC60との間は、平衡信号または不平衡信号により接続される。不平衡信号による接続の場合、図6に示されるように信号配線14aは一本でよい。平衡信号の場合は、信号配線14aの隣に接地配線を介さず別の信号配線が設けられ、伝送線路は2本1組の差動ストリップライン構造となる。これにより、高周波信号の損失を効果的に低減することができる。またストリップラインは、例えばアンテナ202とスイッチ70との間、スイッチ70とデュプレクサ40a〜40f及びフィルタ回路50との間、又はデュプレクサ40a〜40f及びフィルタ回路50とパワーアンプ64a〜64cとの間を接続してもよい。アンテナ202において送受信する高周波信号の周波数が変換されない領域、すなわちアンテナ202とIC60との間に、多層基板200の構成を適用することで、高周波信号の損失を効果的に低減することができる。
【0056】
多層基板が備えるフィルタ又はデュプレクサは、例えば1つでもよい。ただし、図5のように、複数のデュプレクサ又はフィルタを備えるRFモジュールでは、配線が長くなる。配線が長くなることにより、信号の損失、特に高周波信号の損失は増大する可能性がある。従って、多層基板200が、複数のデュプレクサ又はフィルタを備えるRFモジュールのモジュール基板として用いられ、コア10、信号配線14a、接地配線12d、接地配線14b及び接地配線14c等により形成されるストリップラインが、複数のデュプレクサ又はフィルタと接続されていることが好ましい。これにより、特に効果的に高周波信号の損失を低減することができる。なお、RFモジュール以外のモジュール、又は高周波信号を用いる電子装置等に多層基板を適用してもよい。
【0057】
実施例2においては、導体層14は信号配線14d〜14gを含む。信号配線14aと信号配線14d〜14gとの間における信号の干渉を抑制するためには、特性インピーダンス低下の許容範囲内で、信号配線14aと接地配線14b及び接地配線14cとの距離を小さくすることが好ましい。信号配線14aと接地配線14b及び接地配線14cとの距離は、信号配線14aの線幅wの2倍である2wとしてもよいし、例えば図4(a)の例のように2w以上としてもよい。また、信号の干渉を抑制するためには、信号配線14aと信号配線14d〜14gとの距離を大きくすることが好ましい。特に、接地配線14b及び接地配線14cが設けられていない場合、信号配線間の距離を大きくすることが好ましい。信号配線14d〜14f、信号配線12a〜12c各々の線幅は、信号配線14aと同じ線幅としてもよいし、信号配線14aとは異なる線幅としてもよい。なお、各フィルタは弾性波フィルタ以外のフィルタとしてもよい。
【実施例3】
【0058】
実施例3は、スパイラルインダクタを用いる例である。図8(a)は、実施例3に係る多層基板を例示する上面図である。図8(b)は、実施例3に係る多層基板を例示する断面図であり、図8(a)におけるA−A断面を図示している。図8(a)において、凹部10aの端部は破線で示している。
【0059】
図8(a)及び図8(b)に示すように、多層基板300の信号配線14aはスパイラルインダクタであり、全体が凹部10aと対向している。信号配線14aの中心にはビア配線14iが接続されている。ビア配線14iは、コア10の開口部を貫通し、信号配線14aと引き出し配線14hとを接続している。引き出し配線14hは、コア10と導体層18との間に位置する。
【0060】
実施例3によれば、凹部の深さ、及び絶縁層22の厚さを変更することにより、信号配線14aのインダクタンス値を調整し、所望のインダクタンス値を得ることができる。例えば信号配線14aとコア10との距離を大きくすることにより、インダクタンス値を高くすることができる。このため、信号配線14aを長くする場合より、信号配線14aが占有する面積を小さくすることができる。コア10には、ビア配線14iが貫通する程度の開口部を形成すればよい。従って、信号配線14aと導体層16中の信号配線との間における信号の干渉は抑制される。
【0061】
信号配線14aと引き出し配線14hとは、コア10の同じ側(図8(a)においてコア10の上側)に位置してもよい。しかし、信号配線14aと引き出し配線14hとの間において信号の干渉が生じる。また、信号配線14aと引き出し配線14hとの間において、干渉する箇所、干渉しない箇所が発生し、インダクタンス値及びインピーダンスの調整が難しくなる。従って、引き出し配線14hは、コア10を挟んで信号配線14aと反対側に位置することが好ましい。これにより信号の干渉を抑制し、かつ引き出し配線14hとコア10及び導体層18との距離を確保することで、インダクタンス値及びインピーダンスの調整が容易となる。
【実施例4】
【0062】
実施例4は、コアの両側に凹部を形成した例である。図9(a)は、実施例4に係る多層基板を例示する断面図である。
【0063】
図9(a)に示すように、多層基板400のコア10は凹部10a、及び凹部10aとは反対側に位置する凹部10b(別の凹部)を備える。凹部10aと対向する位置に信号配線14a、凹部10bと対向する位置に信号配線15(第3信号配線)が設けられている。信号配線15は高周波信号を流すための配線である。コア10は、ビア配線34を介して、接地配線14b及び14c、並びに導体層18に含まれる接地配線と接続されている。実施例4によれば、コア10の両側に信号配線が設けられた場合でも、所望の特性インピーダンスを確保することができる。また信号配線15が、コア10を挟んで信号配線14aと反対側に位置するため、信号配線14aと信号配線15との間における信号の干渉が抑制される。
【0064】
図9(b)は、実施例4に係る多層基板のコアを例示する断面図である。図9(b)に示すように、コア10は、金属板10d(第1金属板)と、金属板10dの上面に貼り合わされた金属板10c(第2金属板)と、下面に貼り合わされた金属板10e(第2金属板)とを含む。金属板10cには、金属板10dが露出するような開口部が形成されている。金属板10cと金属板10dとを貼り合わせることで、凹部10aが形成される。同様に、金属板10dと金属板10eとを貼り合わせることで、凹部10bが形成される。開口部の長さ及び幅を変更することで、図2に示した距離L3及びL4を調整することができる。金属板10cの厚さ及び金属板10eの厚さを変更することで、凹部10aの深さ及び凹部10bの深さを調整することができる。このため、信号配線14a及び15の特性インピーダンスを調整することが可能となる。凹部10a及び10bは、コア10へのハーフエッチング処理により形成してもよい。また実施例1〜3に示したような、上面に凹部10a備えるコア10を、金属板を貼り合わせることで形成してもよい。コア10は電子部品30を収納してもよいし、収納しなくてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 コア
10a、10b 凹部
10c、10d、10e 金属板
12、14、16、18 導体層
20、22、24、26 絶縁層
12a、12b、12c、14a、14d、14e、14f、14g、15
信号配線
12d、14b、14c 接地配線
30 電子部品
40a、40b、40c、40d、40e、40f デュプレクサ
42 受信フィルタ
44 送信フィルタ
50 フィルタ回路
52 フィルタ
60 IC
100、100a、100b、200、300、400 多層基板
202 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層と複数の導体層とを積層した多層基板であって、
前記複数の導体層のうち最も厚く、接地配線として機能するコアと、
前記複数の導体層に含まれ、前記複数の絶縁層に含まれる第1絶縁層を介して前記コアに隣接する、高周波信号を流すための第1信号配線と、を具備し、
前記コアの前記第1信号配線と対向する領域に、凹部が設けられていることを特徴とする多層基板。
【請求項2】
前記コアは、電子部品の少なくとも一部を収納することを特徴とする請求項1記載の多層基板。
【請求項3】
前記複数の導体層に含まれ、前記第1信号配線を挟んで、前記コアとは反対側に設けられた、前記コアとは別の第1接地配線を具備することを特徴とする請求項1又は2記載の多層基板。
【請求項4】
前記第1接地配線は、前記複数の絶縁層に含まれ前記第1絶縁層とは別の第2絶縁層を介して前記第1信号配線と隣接することを特徴とする請求項3記載の多層基板。
【請求項5】
前記複数の導体層のうち前記第1信号配線と同じ平面に位置する導体層に含まれ、前記第1信号配線の両側に位置する第2接地配線を具備することを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の多層基板。
【請求項6】
前記第2接地配線と前記第1信号配線との距離は、前記複数の絶縁層と前記複数の導体層との積層方向に前記第1信号配線を前記コアに投影した投影領域と、前記凹部の側面との距離以上であることを特徴とする請求項5記載の多層基板。
【請求項7】
前記複数の導体層に含まれ、前記コアを挟んで、前記第1信号配線とは反対側に設けられた、前記第1信号配線とは別の第2信号配線を具備することを特徴とする請求項1から6いずれか一項記載の多層基板。
【請求項8】
前記高周波信号をフィルタリングするフィルタと、
前記高周波信号を増幅する集積回路と、を具備し、
前記コア及び前記第1信号配線が形成する伝送線路は、前記フィルタと前記集積回路との間を接続することを特徴とする請求項1から7いずれか一項記載の多層基板。
【請求項9】
前記高周波信号が入力及び出力する複数のデュプレクサを具備し、
前記コア及び前記第1配線が形成する伝送線路は、前記複数のデュプレクサと接続されていることを特徴とする請求項1から8いずれか一項記載の多層基板。
【請求項10】
前記第1信号配線は、スパイラルインダクタであることを特徴とする請求項1から9いずれか一項記載の多層基板。
【請求項11】
前記コアを挟んで前記第1信号配線と反対側に設けられた、高周波信号を流すための第3信号配線を具備し、
前記コアの前記第3信号配線と対向する領域には、別の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1から10いずれか一項記載の多層基板。
【請求項12】
前記コアは、第1金属板と、開口部を有する第2金属板とを貼り合わせて形成されていることを特徴とする請求項1から11いずれか一項記載の多層基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−12699(P2013−12699A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233277(P2011−233277)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】