説明

多層容器

【課題】ガスバリア性に優れ、成形加工性の良い、植物由来原料を用いた多層容器を提供する。
【解決手段】ポリアミド(A)により主として構成された層、および、植物由来原料からなるポリエステル(B)により主として構成された層の少なくとも2層からなる積層体で少なくとも一部が形成された多層容器であって、ポリアミド(A)がメタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、セバシン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドであることを特徴とする多層容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性に優れた植物由来原料を用いた多層容器に関する。詳しくは、食品、飲料、薬品、電子部品等の包装に用いることができ、成形性、ガスバリア性に優れる植物由来原料を用いた多層容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料等の包装に用いられる包装材料は、様々な流通、冷蔵等の保存や加熱殺菌などの処理等から内容物を保護するため、強度や割れにくさ、耐熱性といった機能ばかりでなく、内容物を確認できるよう透明性に優れるなど多岐に渡る機能が要求されている。また、食品の酸化を抑えるため外部からの酸素の侵入を防ぐ酸素バリア性や、二酸化炭素バリア性、各種香気成分等に対するバリア性機能も要求されている。さらに、近年では地球環境への配慮から、カーボンニュートラルな材料、すなわち廃棄時に環境中の二酸化炭素を増やさないために、植物由来原料を用いた包装材料が検討されている。
【0003】
植物原料由来の包装材料としてポリ乳酸等を用いた包装材料が実用化されているが、それらの植物原料由来の包装材料は、ポリエチレンテレフタレートや、脂肪族ポリアミド等と比較すると、酸素等のガス状物質に対するバリア性が劣るため、内容物の酸化劣化が進みやすかったり、香気成分、二酸化炭素が透過しやすいため、内容物の賞味期限が短くなる欠点があった。このため、植物原料由来の包装材料に対するガスバリア性の向上が要求されている。
【0004】
植物原料由来の包装材料のバリア性を改善する試みとして、ポリグルコール酸とポリ乳酸を積層してなる容器の例示がある。(特許文献1参照)ポリグルコール酸は結晶化速度が速く成形加工性が悪く、特に延伸やブローなどの二次加工が難しいという問題を有していた。
【0005】
一方、エチレン・ビニルアルコール共重合体またはメタキシリレンジアミンとアジピン酸を重合してなるポリアミドとポリ乳酸を積層してなる容器の例示もある。(特許文献2参照)しかし、エチレン・ビニルアルコール共重合体またはメタキシリレンジアミンとアジピン酸を重合してなるポリアミドは原料として石油を利用するためにカーボンニュートラルでないという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−221809号公報
【特許文献2】特開2008−155385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題を解決し、ガスバリア性に優れ、成形加工性の良い、植物由来原料を用いた多層容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定のポリアミドと、植物由来原料からなるポリエステルからなる樹脂組成物が、ガスバリア性、成形加工性に優れることを見出し本発明に到った。
【0009】
即ち本発明は、ポリアミド(A)により主として構成された層、および、植物由来原料からなるポリエステル(B)により主として構成された層の少なくとも2層からなる積層体で少なくとも一部が形成された多層容器であって、ポリアミド(A)がメタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、セバシン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドであることを特徴とする多層容器に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスバリア性、成形加工性に優れた植物由来原料を用いた多層容器を得ることができるため、本発明の工業的意義は大きい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の多層容器は、ポリアミド(A)により主として構成された層、および、植物由来原料からなるポリエステル(B)により主として構成された層の少なくとも2層からなる積層体で少なくとも一部が形成された多層容器であって、ポリアミド(A)がメタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、セバシン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドである。
【0012】
本発明で使用するポリアミド(A)は、メタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、セバシン酸を主成分とするジカルボン酸成分とを重縮合することにより得られる。ポリアミド(A)は、バリア性能が高く、耐熱性、成形加工性が良好である。セバシン酸は植物を原料とするジカルボン酸であり、ひまし油から製造されるため、ポリアミド(A)は植物原料由来のポリマーとなる。
【0013】
ポリアミド(A)におけるジアミン成分は、メタキシリレンジアミンを70モル%以上、好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含むものである。ジアミン成分中のメタキシリレンジアミン量が70モル%より少ないと、ポリアミド(A)のガスバリア性が低下するため好ましくない。本発明においてメタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
ポリアミド(A)におけるジカルボン酸成分は、セバシン酸を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含むものである。上記の範囲であると、バリア性・成形性に優れたポリアミドとなる。本発明において、セバシン酸以外に利用できるジカルボン酸成分として、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類を例示することができるが、これらに限定されるものではない。これらのジカルボン酸は単一成分を用いてもよいし、複数成分を任意の割合で使用しても良い。
【0015】
また本発明ではポリアミド(A)として、メタキシリレンジアミンとセバシン酸からなるポリアミドを好ましく利用できる。
【0016】
ポリアミド(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミドの重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えば、メタキシリレンジアミンとセバシン酸からなるナイロン塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、メタキシリレンジアミンを溶融状態のセバシン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、メタキシリレンジアミンをセバシン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0017】
また、ポリアミド(A)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行うことによって重縮合を行っても良い。固相重合方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
【0018】
ポリアミド(A)の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定によるPMMA(ポリメタクリル酸メチル)換算値として、18000〜70000が好ましく、より好ましくは、20000〜50000である。この範囲であると、耐熱性、成形加工性が良好である。
【0019】
ポリアミド(A)の融点は、150〜220℃が好ましく、160〜210℃がより好ましく、170〜200℃が特に好ましい。この範囲であると、植物由来原料からなるポリエステル(B)との成形加工性が良好となり好ましい。
【0020】
ポリアミド(A)には、溶融成形時の加工安定性を高めるため、あるいはポリアミド(A)の着色を防止するためにリン化合物を添加することができる。リン化合物としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むリン化合物が好適に使用され、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、次亜リン酸塩、亜リン酸塩が挙げられるが、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を使用したものがポリアミドの着色防止効果に特に優れるため好ましく用いられる。リン化合物の濃度はリン原子として1〜500ppm、好ましくは1〜350ppm、更に好ましくは1〜200ppmである。
【0021】
本発明で利用できる植物由来原料からなるポリエステル(B)は、植物由来原料からなる熱可塑性ポリエステル樹脂であり、たとえばポリ乳酸が好ましく用いられる。ポリ乳酸としては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリD,L−乳酸または、これらの混合物を用いることができる。ポリエステル(B)は単独の樹脂を利用してもよいし、複数の樹脂を利用しても良い。また、必要に応じて目的を損なわない範囲で他の樹脂やエラストマー、添加剤等を添加しても良い。
【0022】
前記ポリアミド(A)には、酸素捕捉能を付与する目的で、遷移金属化合物を含むことが好ましい。遷移金属化合物としては、たとえば鉄、マンガン、コバルト、銅などの有機酸塩、塩化物リン酸塩硝酸塩などが例示できる。有機酸塩としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、ステアリン酸などのC2〜C22の脂肪族アルキル酸の塩、あるいは、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などの2塩基酸の塩、安息香酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸塩などが例示できる。なかでもステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルトを好ましく利用できる。その添加量は、ポリアミド(A)に対して、遷移金属として10〜5000ppmが好ましく、50〜1000ppmが特に好ましい。
【0023】
前記ポリアミド(A)には、目的を損なわない範囲で、ポリアミド(A)以外のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、フェノキシ樹脂等の他樹脂を一種もしくは複数ブレンドできる。また、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤、各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材、結晶核剤;脂肪酸アミド系、脂肪酸金属塩系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤;銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;熱安定剤、着色防止剤、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤などの添加剤、ポリアミドのゲル化防止を目的としたアルカリ化合物等の添加剤を添加することができる。
【0024】
本発明において、多層容器として、多層フィルム、多層シート、多層ボトル、多層ブローボトル、多層射出成形カップなどを例示できる。
【0025】
多層容器として、ポリエステル(B)層/ポリアミド(A)層/ポリエステル(B)層の3層構造を有する多層容器、ポリエステル(B)層/ポリアミド(A)層/ポリエステル(B)層/ポリアミド(A)層/ポリエステル(B)層の5層構造を有する多層容器が好ましく用いられる。
【0026】
本発明の多層容器の製造方法について特に制限はなく、公知の技術を使用することができる。例えば、共押出法によりフィルムを成形した後、各種容器に加工できる。共押出法としてはTダイ法、インフレーション法等、公知の方法を利用することができる。また、射出成形により多層プリフォームを製造した後、ブロー成形し多層ボトルとすることができる。
【0027】
本発明の多層容器は、四方シール袋や、各種ピロー袋、スタンディングパウチ等の袋状容器、容器用の蓋材等の各種包装材料、またはボトルなどとして利用することができる。さらに多層フィルムを原反として延伸フィルムを製造後、容器を製造することもできる。多層無延伸フィルムを熱成形し、カップ状の容器とすることもできる。また、紙とラミネートし多層容器としても良い。本発明の多層容器には、様々な物品を収納、保存することができる。例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すりおろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品やそば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類、粉末スープ、だしの素等の粉末調味料等に代表される高水分食品、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤等、種々の物品を収納することができる。
【0028】
本発明の多層容器は、必要に応じて変性ポリオレフィン樹脂等からなる接着性樹脂層を各層間に積層しても良い。
【0029】
本発明の多層容器は、パウチや蓋などの包装材料とした際にシーラントの役割を有する層を積層しても良い。シーラントとして使用可能な熱可塑性樹脂としては、シーラントとしての役割を発揮できるものであれば特に制限はなく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー、プロピレン−エチレンランダムコポリマー等のポリプロピレン類、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、アイオノマー樹脂等の各種ポリオレフィン類、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、イージーピール性を有する熱可塑性樹脂等が挙げられる。シーラント層は、上述の樹脂からなる単層でも良く、2層以上の多層構造を有していても良い。多層構造の場合、必要に応じて変性ポリオレフィン樹脂等からなる接着性樹脂層を各樹脂層間に積層しても良い。
【0030】
シーラント層には、シーラントとしての能力を損なわない範囲で、各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材、結晶核剤、脂肪酸アミド系、脂肪酸金属塩系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤、銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムなどのリン系化合物等の酸化防止剤、熱安定剤、着色防止剤、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤などの添加剤、酸化チタン等の無機顔料や染料等の有機顔料が含まれていても良い。
【0031】
さらに機械物性の向上や商品性を高めるための目的で、本発明の多層容器にはポリエステルやポリアミド、ポリプロピレン等からなる無延伸又は延伸フィルムを押出ラミネートやドライラミネート等により積層しても良い。
【0032】
本発明の多層容器として多層ボトルが例示できる。該多層ボトルは、例えば2つの射出シリンダーを有する射出成形機を使用して、ポリエステル(B)とポリアミド(A)をスキン側、コア側それぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して金型キャビティー内に射出して得られた多層プリフォームを、公知の方法によって更に2軸延伸ブロー成形することにより得られる。
【実施例】
【0033】
以下実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、多層容器およびその原材料の評価は以下の方法で行った。
(1)ガスバリア性
23℃、60%RHの雰囲気下にてASTM D3985に準じてフィルムの酸素透過率(cc/m・day・atm)を測定した。測定は、モダンコントロールズ社製、OX−TRAN 2/21を使用した。値が低いほどガスバリア性が良好であることを示す。
また、23℃、ボトル内部100%RH、ボトル外部50%の雰囲気下にてASTM D3985に準じてボトルの酸素透過率(cc/bottle・day・0.21atm)を測定した。測定は、モダンコントロールズ社製、OX−TRAN 2/61を使用した。値が低いほど酸素バリア性が良好であることを示す。
(2)成形性
多層容器を成形する際に、バリア層が均一に存在し、外観良好に成形できるか否かで成形性を判断した。また、シートまたはプリフォームを二次加工する際に、安定して延伸できるか否かで成形性を判断した。
(3)ポリアミドの融点、ガラス転移温度
島津製DSC−60を用いて、示差走査熱量測定(DSC)により求めた。測定条件は、約5mgのサンプルを10℃/minの条件で昇温し、250℃に到達した時点で急冷し、再び10℃/minの条件で昇温した際の、測定値を融点およびガラス転移温度として採用した。なお、ガラス転移温度は中間値を採用した。
(4)数平均分子量
東ソー製HLC−8320GPCを用いて、GPC測定によりPMMA換算値を求めた。なお、測定用カラムはTSK−GEL SuperHM−Hを用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウムを10mmol/L溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、測定温度は40℃にて測定した。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成した。
【0034】
<製造例1>
(ポリアミド(A1)の合成)
反応缶内でセバシン酸を170℃にて加熱し溶融した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミンをセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、260℃まで昇温した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド(A1)を得た。ポリアミド(A1)の融点は191℃、ガラス転移温度は60℃、数平均分子量は45000であった。
【0035】
<製造例2>
(ポリアミド(A2)の合成)
セバシン酸の代わりに、セバシン酸とアジピン酸のモル比が6:4の混合ジカルボン酸を用いた以外は製造例1と同様にしてポリアミド(A2)を合成した。ポリアミド(A2)の融点は157℃、ガラス転移温度は65℃、数平均分子量は35000であった。
【0036】
<実施例1>
2台の押出機からなる射出成形機を用い、下記の条件で、ポリエステル層/バリア層/ポリエステル層からなる3層プリフォーム(27g)を射出成形し、冷却後、プリフォームを加熱し2軸延伸ブロー成形を行い、多層ボトルを得た。尚、バリア層を構成する樹脂としてはポリアミド(A1)、ポリエステル層を構成する樹脂としてはユニチカ製ポリ乳酸(テラマック グレードTP−4000)を使用した。バリア層は均一に存在し、安定した品質のプリフォームを得られ、射出成形性、ブロー成形性は良好であった。得られた多層ボトルの総重量に対するバリア層の重量は5重量%であった。評価結果を表1に示す。
(押出機バレル温度)
ポリエステル層用押出機:200℃
バリア層用押出機:220℃
(3層プリフォーム形状)
全長95mm、外径22mm、肉厚4.2mm。なお、3層プリフォームの製造には、名機製作所(株)製の射出成形機(型式:M200、4個取り)を使用した。
(多層ボトル形状)
全長223mm、外径65mm、内容積500ml。なお、2軸延伸ブロー成形はフロンティア社製ブロー成形機(型式:EFB1000ET)を使用した。
【0037】
<実施例2>
バリア層を構成する樹脂をポリアミド(A2)に変更した以外は実施例1と同様にして多層ボトルを得た。成形性は良好であった。評価結果を表1に示す。
【0038】
<実施例3>
バリア層を構成する樹脂として、ポリアミド(A1)とステアリン酸コバルト(コバルトとしてポリアミド(A1)に対して100ppm相当量)をドライブレンドしたものを用いた以外は実施例1と同様にして多層ボトルを得た。成形性は良好であった。評価結果を表1に示す。
【0039】
<比較例1>
ユニチカ製ポリ乳酸(テラマック グレードTP−4000)を使用し、1台の押出機からなる射出成形機を用い、実施例1と同様の条件で、単層プリフォーム(27g)を射出成形し、冷却後、プリフォームを加熱し2軸延伸ブロー成形を行い、単層ボトルを得た。評価結果を表1に示す。
【0040】
<実施例4>
2台の押出機からなる射出成形機を用い、下記の条件で、ポリエステル層/バリア層/ポリエステル層/バリア層/ポリエステル層からなる5層プリフォーム(27g)を射出成形し、冷却後、プリフォームを加熱し2軸延伸ブロー成形を行い、多層ボトルを得た。尚、バリア層を構成する樹脂としてはポリアミド(A2)とステアリン酸コバルト(コバルトとしてポリアミド(A2)に対して400ppm相当量)をドライブレンドしたもの、ポリエステル層を構成する樹脂としてはユニチカ製ポリ乳酸(テラマック グレードTP−4000)を使用した。バリア層は均一に存在し、安定した品質のプリフォームを得られ、射出成形性、ブロー成形性は良好であった。得られた多層ボトルの総重量に対するバリア層の重量は7重量%であった。評価結果を表1に示す。
(押出機バレル温度)
ポリエステル層用押出機:200℃
バリア層用押出機:220℃
(5層プリフォーム形状)
全長95mm、外径22mm、肉厚4.2mm。なお、5層プリフォームの製造には、名機製作所(株)製の射出成形機(型式:M200、4個取り)を使用した。
(多層ボトル形状)
全長223mm、外径65mm、内容積500ml。なお、2軸延伸ブロー成形はフロンティア社製ブロー成形機(型式:EFB1000ET)を使用した。
【0041】
尚、表記載の樹脂名略号は以下の通りである。
(1)A1:製造例1で得られたポリアミド(A1)
(2)A2:製造例2で得られたポリアミド(A2)
(3)PLA:ポリ乳酸(ユニチカ製、テラマック グレードTP−4000)
【0042】
【表1】

【0043】
<実施例5>
3台の押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、引き取り機等からなる多層フィルム製造装置を用いて、第1の押出機からポリアミド(A1)、第2の押出機からユニチカ製ポリ乳酸(テラマック グレードTP−4000)、第3の押出機から接着性ポリエチレン(三井石油化学製、商品名アドマー、以下、接着剤と略す)を共押出し、ポリ乳酸層(30μm)/接着剤層(10μm)/ポリアミド層(15μm)/ポリ乳酸層(15μm)の層構成を有する3種4層の多層フィルムを作製した。ポリアミド層は均一に存在し、安定した品質のフィルムを得ることができた。フィルムの酸素透過率は57cc/m・day・atmであった。
【0044】
<比較例2>
1台の押出機、Tダイ、冷却ロール、引き取り機等からなるフィルム製造装置を用いて、押出機からユニチカ製ポリ乳酸(テラマック グレードTP−4000)を押出し、45um厚みの単層フィルムを作製した。フィルムの酸素透過率は380cc/m・day・atmであった。
【0045】
以上の実施例で示したように、本発明の多層容器は、酸素バリア性、成形性が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド(A)により主として構成された層、および、植物由来原料からなるポリエステル(B)により主として構成された層の少なくとも2層からなる積層体で少なくとも一部が形成された多層容器であって、ポリアミド(A)がメタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、セバシン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドであることを特徴とする多層容器。
【請求項2】
前記ポリエステル(B)が、ポリ乳酸である請求項1記載の多層容器。
【請求項3】
前記ポリアミド(A)が、メタキシリレンジアミンとセバシン酸からなるポリアミドである請求項1記載の多層容器。
【請求項4】
ポリエステル(B)層/ポリアミド(A)層/ポリエステル(B)層の3層構造を有する請求項1に記載の多層容器。
【請求項5】
ポリエステル(B)層/ポリアミド(A)層/ポリエステル(B)層/ポリアミド(A)層/ポリエステル(B)層の5層構造を有する請求項1に記載の多層容器。

【公開番号】特開2010−253803(P2010−253803A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106623(P2009−106623)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】