説明

多層燃料チャネルおよび多層燃料チャネルの加工方法

【課題】 原子炉のための実施例に従った燃料チャネル(400)は、多層構造の細長い空洞のボディを有する。
【解決手段】 多層構造は、コア層(104)と、コア層に金属組織学的に結合された少なくとも一つのクラッド層(102)とを含んでもよい。コア層(104)および少なくとも一つのクラッド層(102)は、異なる組成を有した合金である場合がある。例えば、コア層(104)は、少なくとも一つのクラッド層(102)に比べて、対照射成長耐性および/または対照射クリープ耐性を有し、また少なくとも一つのクラッド層(102)は、コア層(104)よりも、対水素吸蔵および/または腐食に対するより高い耐性を有していてもよい。従って、燃料チャネル(400)の歪曲は減少または抑制するので、制御ブレードの動きの妨げを減少または抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉炉心で使用される燃料チャネルおよび燃料チャネルの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子炉(BWR)は、炉心内に複数のセルを有している。各セルは、四つの燃料チャネルを有し、各燃料チャネルは複数の燃料棒を含む。燃料チャネルおよび内部の燃料棒は、燃料集合体を構成する。従来の燃料チャネルは、細長い形状を有した四角い空洞である。チャネル側面は均一の厚みの形状または厚さと薄さとを有する形状を有するかのいずれかである。また、従来の燃料チャネルは単合金で形成される。
【0003】
制御ブレードは十字型で、炉心の反応率を調節する目的のためにセル内において燃料チャネルの隣接面の間で移動可能に配置されている。一つのセルに一つの制御ブレードが存在する。結果として、各燃料チャネルは制御ブレードに隣接した二つの側面と制御ブレードに隣接しない二つの側面とを有する。制御ブレードは、自身の分裂を受けることなく中性子を吸収することが可能な物質から成る。例えば、制御ブレードの構成は、ホウ素、ハフニウム、銀、インジウム、カドミウム、または中性子に対して十分な高捕獲断面積を有するその他の要素、を含む。従って、制御ブレードが燃料チャネルの隣接面の間で動かされたとき、制御ブレードは炉心内での分裂反応に寄与する中性子を吸収する。一方で、制御ブレードが不適切に動かされたとき、炉心内での分裂反応により多くの中性子が寄与することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一定期間の後、燃料チャネルは、差分照射成長、差分水素吸蔵、および/または照射クリープにより歪んでくる。差分照射成長は、フルエンス勾配により引き起こされ、フルエンス勾配湾曲をもたらす。差分水素吸蔵は、制御ブレードに隣接するチャネル側面上のシャドー腐食を原因とする差分腐食の作用および燃料チャネルに吸収される腐食プロセスから遊離した水素率である。これはシャドー腐食誘発湾曲をもたらす。照射クリープは、バルジクリープをもたらすチャネル面全域に渡る圧力低下により引き起こされる。結果として、燃料チャネルの歪曲(例えば湾曲)は制御ブレードの動きにより妨げられる場合がある。チャネル/制御ブレード障害は、制御ブレード位置、原子炉構造要素の増加燃料棒、および減速スクラム速度の不確実性を引き起こす場合がある。チャネル/制御ブレード障害が深刻な場合、制御ブレードは操作不可能とされ、完全に挿入されたままにされる。従って原子炉プラントの出力を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例は、原子炉構成要素のための多層物質、その多層物質により形成された燃料チャネル、および燃料チャネルの加工方法に関する。
【0006】
原子炉構成要素の実施例に従った多層物質は、コア層およびコア層に金属組織学的に結合された少なくもと一つのクラッド層を含んでもよい。コア層および少なくとも一つのクラッド層は、異なる機能を提供する異なる要素を有した合金であってもよい。例えばコア層は、少なくとも一つのクラッド層より照射成長および/または照射クリープに対して著しくはるかに耐性を有する場合があり、また少なくとも一つのクラッド層はコア層と比較して、水素吸蔵および/または侵食に対して更に耐性を有する場合がある。
【0007】
原子炉構成要素の実施例に従った燃料チャネルは、多層を有した細長い空洞のボディを有していてもよい。多層構造は、コア層およびコア層に金属組織学的に結合された少なくとも一つのクラッド層を含む場合がある。コア層および少なくとも一つのクラッド層は、異なる機能を提供する異なる要素を有した合金であってもよい。例えばコア層は、少なくとも一つのクラッド層より照射成長および/または照射クリープに対して著しくはるかに耐性を有する場合があり、また少なくとも一つのクラッド層はコア層と比較して、水素吸蔵および/または侵食に対して更に耐性を有する場合がある。
【0008】
原子炉用燃料チャネルの加工の実施例に従った方法は、クラッド物質とコア物質との結合を含んでもよい。コア物質および少なくとも一つのクラッド物質は、異なる機能を提供する異なる要素を有した合金であってもよい。例えばコア層は、少なくとも一つのクラッド層より照射成長および/または照射クリープに対して著しくはるかに耐性を有する場合があり、また少なくとも一つのクラッド層はコア層と比較して、水素吸蔵および/または侵食に対して更に耐性を有する場合がある。結合コアおよびクラッド物質は圧延されてもよく、圧延されたコアおよびクラッド物質は、燃料チャネルを形成するために変形されてもよい。
【0009】
実施例の特性と利点は、添付の図と併せて詳細の説明の概説により更に明白になるであろう。添付の図は実施例を描写することを意図し、意図された請求の範囲を制限するために解釈されるものではない。添付の図は、明確に記載されない限り採寸のために描かれたと考慮されるべきではない。明確にするために、図の様々なサイズは誇大されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の実施例に従った多層物質の断面図である。
【図2】本開示の実施例に従った他の多層物質の断面図である。
【図3】本開示の実施例に従った燃料チャネルの斜視図である。
【図4】本開示の実施例に従った他の燃料チャネルの斜視図である。
【図5】本開示の実施例に従った輪郭を持った燃料チャネルの斜視図である。
【図6】本開示の実施例に従った他の輪郭を持った燃料チャネルの斜視図である。
【図7】本開示の実施例に従った燃料チャネルのためのチャネルストリップ加工の方法のフローチャートである。
【図8】本開示の実施例に従った燃料チャネルのためのチャネルストリップ加工の他の方法のフローチャートである
【図9】本開示の実施例に従った燃料チャネルのためのチャネルストリップ加工の他の方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0011】
100: 多層構造を有した複合物質(実施例1)
200: 多層構造を有した複合物質(実施例2)
102: クラッド層
104: コア層
300: 燃料チャネル(実施例1)
400: 燃料チャネル(実施例2)
500: 燃料チャネル(実施例3)
600: 燃料チャネル(実施例4)
fuel channel (Example 4)
【発明を実施するための形態】
【0012】
当然のことながら、要素または層が、他の要素または層“の上に”、“に接合された”、“と結合された”、または“を覆った”と言及されたとき、それは他の要素または層の直接上に、接合された、結合された、または覆っている場合か、または介在する要素または層が存在してもよい。反対に、要素が他の要素または層“の直接上に”、“に直接接続された”、または“に直接結合された”とき、介在する要素または層は存在しない。詳細な説明を通じた要素を言及した番号も同じである。ここに使用されるように、“および/または”という表現は、一つかそれ以上の関連した記載されたアイテムのあらゆるおよび全ての組み合わせを含む。
【0013】
当然のことながら、第一、第二、第三、などの表現が、様々な要素、成分、領域、層、および/または部分、を説明するためにここに使用されてもよい。これらの要素、成分、領域、層、および/または部分は、これらの表現を制限するものではないことは。これらの表現は一つの要素、成分、領域、層、または部分を他の領域、層、または部分から区別するためだけに使用される。従って、後述される第一要素、成分、領域、層、または部分は実施例の内容から逸脱することなく、第二要素、成分、領域、層、または部分を言及することができる。
【0014】
空間に関連した表現(例えば、“真下”、“下部”、“下方”、“上”、“上部”など)は、図で描写されたような一つの要素または機能の関係と他の要素または特性とを説明する詳細な説明を容易にするためにここに使用されている。当然のことながら、空間に関連した表現は、図で描写された位置付けに付随して、使用時または稼動時の装置の異なった位置づけを網羅することを意図している。例えば、図の装置が裏返しになった場合、他の要素または機能の“下部”または“真下”と説明される要素は、他の要素または機能の“上”に位置づけられる。従って“下部”という表現は、上部と下部の両方向を網羅する場合がある。装置は、他の方法で方向を変えられてもよく(90度回転される、または他の方向)、ここに使用される空間に関連した記述子はそれに従って解釈される。
【0015】
ここに使用される専門用語は、様々な実施形態を説明する目的のためだけであり、実施例を制限することを意図していない。ここに使用されるように、単数形の“一つの(a、an)”および“その(the)”は、他の方法で文脈が明確に示唆しない限り、同じく複数形を含むことを意図する。更に当然のことながら、“から成る”および/または“成る”という表現が本明細書で使用されたとき、規定の機能、整数、ステップ、操作、要素、および/または成分の存在を特定するが、しかしながら一つかそれ以上の他の規定の機能、整数、ステップ、操作、要素、成分、および/またはグループの存在を排除しない。
【0016】
複数の実施例が、実施例の理想的な実施形態(および中間体構造)の概略図である断面図に関して、ここに説明されている。そのようなものとして、結果として図の形状からの変形例、例えば製造技術および/または公差、は予期されている。従って、実施例はここに描かれている領域の形状に制限されると解釈されるべきではなく、しかしながら、例えば製造から派生する形状の逸脱を含む。例えば、矩形として描かれた挿入領域は、挿入領域から挿入されていない領域までの二元変化よりはむしろ、端において一般的に丸いまたはカーブした特長および/または埋没物集合の勾配を有する。同様に、注入により生成された埋設された領域は、埋設された領域と注入が介して行われる表面との間の領域にいくつかの注入を引き起こす場合がある。従って、図に描かれた領域は、事実上の概略であり、またそれらの形状は装置の領域の実際の形状を描いたものではないことを意図しており、実施例の範囲を制限することを意図していない。
【0017】
他の方法で定義されない限り、ここで使用される全ての表現(技術的および科学的表現を含む)は、実施例が属する当業者によって一般的に理解されているのと同様な意味を有する。更に当然のことながら、一般的に使用されている辞書により定義されるのを含む表現は、従来の技術の構成におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、ここにそのように明確に定義されない限り、理想的なまたは過度の正式な意味に解釈されるものではない。
【0018】
沸騰水型原子炉(BWR)のための実施例に従った原子炉構成要素は、多層構造を有した複合物質から成ってもよい。図1を参照すると、複合物質100の多層構造は、コア層104上に配置されたクラッド層102を含むことができる。コア層104は第一合金から成ってもよく、クラッド層102は第二合金から成ってもよい。第一および第二合金は、異なった組成物からなることができる。また、クラッド層102は、コア層104に金属組織学的に結合されてもよい。更に、コア層104およびクラッド層102は、異なった物質的特性(例えば、照射成長、水素吸蔵、腐食、および/または照射クリープへの抵抗)を有することが可能である。
【0019】
従って、コア層104およびクラッド層102は、コア層104およびクラッド層102両方の有益な特性を有利に十分に引き出す複合物質を得るためにそのような方法で結合されてもよい。例えば、コア層104は、クラッド層102に比べて照射成長および/または照射クリープに対してより優れた耐性を有する場合があり、またクラッド層102は、コア層104に比べて腐食および/または水素吸蔵に対してより優れた耐性を有する場合がある。コア層104が照射成長および/または照射クリープに対してクラッド層102より遙かに高い耐性があると有利である。コア層104が、照射成長および/または照射クリープに対してクラッド層102より約50%の耐性がある場合、コア層104は遙かに高い耐性があると考慮される。逆に、クラッド層102が、腐食および/または水素吸蔵に対してコア層104より少なくとも約50%の耐性がある場合、クラッド層102にとって有用である。その結果、コア層104はフルエンス勾配湾曲しにくく、一方でクラッド層102はシャドー腐食誘導湾曲しにくい。
【0020】
第一合金は、ニオビウム(Nb)を含むジルコニウム(Zr)合金であってもよい。例えば、第一合金はNSF合金である場合がある。NSF合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約0.6−1.4%のニオビウム(Nb)、約0.2−0.5%の鉄(Fe)、および約0.5−1.0%のスズ(Sn)の組成物(重量パーセント)を有してもよい。例えば、NSF合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約1.0%のニオビウム、約0.35%の鉄、および約1.0%のスズの組成物(重量パーセント)を有してもよい。
【0021】
第二合金は、スズ(Sn)、鉄(Fe)、およびクロム(Cr)を含むジルコニウム(Zr)合金であってもよい。第二合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約0.4−2.0%のスズ(Sn)、約0.1−0.6%の鉄(Fe)、および約0.01−1.2%のクロム(Cr)の組成物(重量パーセント)を有してもよい。
【0022】
第二合金は、ジルカロイ−4合金であってもよい。ジルカロイ−4合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約1.2−1.7%のスズ(Sn)、約0.12−0.21%の鉄(Fe)、および約0.05−0.15%のクロム(Cr)の組成物(重量パーセント)を有してもよい。例えばジルカロイ−4合金は、ジルコニウムを必須に調合した、約1.45%のスズ、約0.21%の鉄、および約0.1%のクロムの組成物(重量パーセント)を有してもよい。
【0023】
第二合金はまた、VB合金であってもよい。VB合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約0.4−0.6%のスズ(Sn)、約0.4−0.6%の鉄(Fe)、および約0.8−1.2%のクロム(Cr)の組成物(重量パーセント)を有してもよい。例えばVB合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約0.5%のスズ、約0.5%の鉄、および約1.0%のクロムの組成物(重量パーセント)を有してもよい。
【0024】
図2を参照すると、他の複合物質200の多層構造は、二つのクラッド層102の間に配置されたコア層104を含んでもよい。コア層104は第一合金から形成され、クラッド層102は第二合金から形成されてもよい。第一および第二合金は、異なる組成を有する場合がある。また、クラッド層102は、コア層104に金属組織学的に結合されてもよい。更に、コア層104およびクラッド層102は、異なった物質的特性(例えば、照射成長、水素吸蔵、腐食、および/または照射クリープへの抵抗)を有していてもよい。
【0025】
従って、コア層104およびクラッド層102は、コア層104およびクラッド層102両方の有益な特性を有利に十分に引き出す複合物質を得るように結合されてもよい。例えば、コア層104は、クラッド層102に比べて照射成長および/または照射クリープに対してより優れた耐性を有する場合があり、またクラッド層102は、コア層104に比べて腐食および/または水素吸蔵に対してより優れた耐性を有する場合がある。コア層104が照射成長および/または照射クリープに対してクラッド層102より遙かに高い耐性があることは有利である。コア層104が、照射成長および/または照射クリープに対してクラッド層102より約50%の耐性がある場合、コア層104は遙かに高い耐性があると考慮される。逆に、クラッド層102が、腐食および/または水素吸蔵に対してコア層104より少なくとも約50%の耐性がある場合、クラッド層102にとって有用である。その結果、コア層104はフルエンス勾配湾曲しにくく、一方でクラッド層102はシャドー腐食誘導湾曲しにくい。
【0026】
第一合金は、ニオビウム(Nb)を含むジルコニウム(Zr)合金であってもよい。例えば、第一合金はNSF合金である場合がある。NSF合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約0.6−1.4%のニオビウム(Nb)、約0.2−0.5%の鉄(Fe)、および約0.5−1.0%のスズ(Sn)の組成物(重量パーセント)を有してもよい。例えば、NSF合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約1.0%のニオビウム、約0.35%の鉄、および約1.0%のスズの組成物(重量パーセント)を有してもよい。
【0027】
第二合金は、スズ(Sn)、鉄(Fe)、およびクロム(Cr)を含むジルコニウム(Zr)合金であってもよい。第二合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約0.4−2.0%のスズ(Sn)、約0.1−0.6%の鉄(Fe)、および約0.01−1.2%のクロム(Cr)の組成物(重量パーセント)を有してもよい。
【0028】
第二合金は、ジルカロイ−4合金であってもよい。ジルカロイ−4合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約1.2−1.7%のスズ(Sn)、約0.12−0.21%の鉄(Fe)、および約0.05−0.15%のクロム(Cr)の組成物(重量パーセント)を有してもよい。例えばジルカロイ−4合金は、ジルコニウムを必須に調合した、約1.45%のスズ、約0.21%の鉄、および約0.1%のクロムの組成物(重量パーセント)を有してもよい。
【0029】
第二合金はまた、VB合金であってもよい。VB合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約0.4−0.6%のスズ(Sn)、約0.4−0.6%の鉄(Fe)、および約0.8−1.2%のクロム(Cr)の組成物(重量パーセント)を有してもよい。例えばVB合金は、ジルコニウム(Zr)を必須に調合した、約0.5%のスズ、約0.5%の鉄、および約1.0%のクロムの組成物(重量パーセント)を有してもよい。
【0030】
従って第一合金の一つかそれ以上の表面は、第二合金で覆われてもよい。例えば、第一合金は、一つの面を一つかそれ以上の第二合金層で覆われる。或いは、第一合金は二つかそれ以上の第二合金層の間に挟まれてもよい。複数の第二合金層が使用された場合には、第二合金層は同一または異なった組成を有する。第一および第二合金は、ジルコニウム(Zr)合金であってもよい。原子炉組成でのジルコニウムの使用は有利である。なぜなら、ジルコニウムは比較的低い中性子吸収断面積および比較的高圧/高温水環境において有利な腐食耐性があるからである。
【0031】
第一合金層の厚さは、複合物質の厚さの大部分を形成する場合がある。例えば、第一合金層の厚みは、約1.27−2.54mm(約0.050−0.100インチ)であってもよい。一方、第二合金層は比較的薄い。例えば、第二合金層は、約0.07−0.1mm(約0.003−0.004インチ)である場合がある。しかしながら、用途により他の寸法が可能であることが注目されるべきである。第一および第二合金層は、金属組織学的に結合されていてもよい。
【0032】
実施例に従った原子炉構成要素は、沸騰水型原子炉用の燃料チャネルを含んでもよい。実施例に従った燃料チャネルは、差分照射成長、差分水素吸蔵、および/または照射クリープにより引き起こされるチャネルの歪曲を軽減または防ぐことができる。燃料チャネルは、差分照射成長および/または照射クリープに比較的耐性のある第一合金で製造されてもよい。その結果、第一合金はフルエンス勾配歪みおよび/またはクリープバルジの発生を減らすまたは防ぐことができる。第一合金は、水素吸蔵および/または腐食に比較的耐性のある第二合金によって覆われてもよい。その結果、第二合金は、シャドー腐食誘発湾曲の発生を減らすまたは防ぐことができる。
【0033】
図3を参照すると、燃料チャネル300は、図1の複合物質100から形成されてもよい。従って、燃料チャネル300は、コア層104の外表面上にクラッド層102を含んでもよい。あるいは、コア層104の外表面は複数のクラッド層(図示せず)により覆われてもよい。
【0034】
図4を参照すると、燃料チャネル400は、図2の複合物質200から形成されてもよい。従って、燃料チャネル400は、コア層104の外表面上にクラッド層102を含んでもよいように、コア層104の内表面上にクラッド層102を含んでもよい。または、コア層104の内および/または外表面は、複数のクラッド層(図示せず)により覆われてもよい。
【0035】
図5を参照すると、輪郭のある(厚い/薄い部分のある)燃料チャネル500は、図1の複合物質100から形成されてもよい。従って、燃料チャネル500は、コア層104の外表面上にクラッド層102を含んでもよい。あるいは、コア層104の外表面は複数のクラッド層(図示せず)により覆われてもよい。
【0036】
図6を参照すると、輪郭のある(厚い/薄い部分のある)燃料チャネル600は、図2の複合物質200から形成されてもよい。従って、燃料チャネル600は、コア層104の外表面上にクラッド層102を含んでもよいように、コア層104の内表面上にクラッド層102を含んでもよい。あるいは、コア層104の内および/または外表面は、複数のクラッド層(図示せず)により覆われてもよい。
【0037】
次に、燃料チャネルの加工方法の実施例が説明される。図7は、実施例に従った燃料チャネルのためのチャネルストリップの加工方法のフローチャートである。ステップS70に示されるように、第一合金で形成されたコア物質は、第二合金で形成されたクラッド物質に接合される。例えば、第一合金で形成されたスラブと第二合金で形成されたジャケットとが供給されてもよい。第一および第二合金は異なった組成を有している。ジャケットが腐食および/または水素吸蔵に対して比較的耐性のある合金である一方で、スラブは照射成長および/または照射クリープに対して比較的耐性のある合金である。例えば、その合金は、上述された図1および図2で説明される。スラブはジャケットに挿入されてもよく、スラブをジャケット内に密封するために真空引きされてもよい。あるいは、第一合金で形成されたスラブに結合されるスラブの構造の中に第二合金が存在してもよいことは注目すべきである。例えば、第一合金スラブは、真空において第二合金スラブに電子ビーム(e−ビーム)により溶接されてもよい。
【0038】
ステップS72において、結合合金物質は、第一厚み(例えば約25.4mm:約1インチ)を得るために第一熱間圧延プロセスを受ける場合がある。第一熱間圧延プロセスは、あらゆる周知の熱間圧延プロセスであってもよい。ステップS74を参照すると、熱間圧延合金物質は腐食への耐性を高めるために、ベータ焼入れ(β-quench)されてもよい。ベータ焼入れは、あらゆる周知のベータ焼入れプロセスであってもよい。例えば、熱間圧延合金物質は、ベータ焼入れ後に約900度C以上の温度においてベータ熱処理されてもよい。
【0039】
ステップS76を参照すると、急冷合金物質は、第二厚み(例えば25.4mm以下:1インチ以下)を得るために第二熱間圧延プロセスを受けてもよい。第二熱間圧延プロセスは、あらゆる周知の熱間圧延プロセスであってもよい。第二熱間圧延プロセスは、あらゆる周知のアニーリングプロセス(例えば再結晶アニーリング)の後であってもよい。ステップS78を参照すると、熱間合金物質は、第三厚み(例えば約1.27−2.794mm:0.050−0.110インチ)を得るためにあらゆる周知の冷却圧延プロセスを更に受けてもよい。冷却圧延プロセスは、あらゆる周知のアニーリングプロセスに続いてもよい。そのプロセスは、ベータ焼入れが約900度C(例えば約500−800度C)より低い温度で行われた後が効果的である。
【0040】
完成した多層物質は、比較的均一な厚みを有している場合がある。完成した多層物質は、燃料チャネルを形成するために変形され溶接されてもよい。例えば、完成した物質の二枚のシートは、縦方向に約90度に曲げられてもよい。曲げられたシートは、四角い断面を有する細長い燃料チャネルを形成するために溶接されてもよい。
【0041】
図8は、実施例に従った燃料チャネルのためのチャネルストリップを加工する他の方法のフローチャートである。ステップS80に示されるように、第一合金で形成されたコア物質は、第二合金で形成されたクラッド物質に接合される。例えば、第一合金で形成されたスラブと第二合金で形成されたジャケットとが供給されてもよい。第一および第二合金は異なった組成を有している。ジャケットが腐食および/または水素吸蔵に対して比較的耐性のある合金である一方で、スラブは照射成長および/または照射クリープに対して比較的耐性のある合金である。例えば、その合金は、上述された図1および図2で説明される。スラブはジャケットに挿入されてもよく、スラブをジャケット内に密封するために真空引きされてもよい。あるいは、第一合金で形成されたスラブに結合されるスラブの構造の中に第二合金が存在する可能性があることは注目すべきである。例えば、第一合金スラブは、真空において第二合金スラブに電子ビーム(e−ビーム)により溶接されてもよい。
【0042】
ステップS82において、結合合金物質は、第一厚み(例えば約25.4mm:約1インチ)を得るために第一熱間圧延プロセスを受ける場合がある。第一熱間圧延プロセスは、あらゆる周知の熱間圧延プロセスであってもよい。ステップS84を参照すると、熱間圧延合金物質は腐食への耐性を高めるために、ベータ焼入れされてもよい。ベータ焼入れは、あらゆる周知のベータ焼入れプロセスであってもよい。例えば、熱間圧延合金物質は、ベータ焼入れに従った約900度C以上の温度においてベータ熱処理されてもよい。
【0043】
ステップS86を参照すると、急冷合金物質は、第二厚み(例えば約25.4mm以下:約1インチ以下)を得るために第二熱間圧延プロセスを受けてもよい。第二熱間圧延プロセスは、あらゆる周知の熱間圧延プロセスであってもよい。第二熱間圧延プロセスは、あらゆる周知の再結晶(RX)アニーリングプロセスに続いてもよい。ステップS88を参照すると、熱間合金物質は、第三厚み(例えば約1.524〜3.048mm:0.060−0.120インチ)を得るためにあらゆる周知の冷却圧延プロセスをさらに受けてもよい。冷却圧延プロセスは、あらゆる周知の再結晶アニーリングプロセスに続いてもよい。そのプロセスは、ベータ焼入れが約900度Cより低い温度(例えば約500−800度C)で行われた後が効果的である。
【0044】
ステップS89を参照すると、冷却圧延合金物質は、厚い/薄い形状を得るために圧縮されてもよい。圧縮合金物質は、あらゆる周知の回復(例えば応力除去)アニーリングプロセスを受けてもよい。あるいは、厚片と薄片とは、別々に加工し(例えば、厚片と薄片を形成するために合金物質を圧延する)、厚い/薄い形状を有する溶接合金を得るために一緒に溶接されてもよい。厚い/薄い形状は、原子炉構成要素を構成している物質の量を減少あるいは最小にする目的に対して有用である。なぜなら、余剰物質は中性子の吸収に寄与する場合があるからである。厚い/薄い形状を得るために冷却圧延ジャケットおよびスラブを圧縮することは、機械加工と比べて、第二合金に形成されたクラッド層を除去することができる厚い/薄い形状を得るためにより良い結果を提供する可能性がある。
【0045】
完成した多層物質は、燃料チャネルを形成するために変形され溶接される。例えば、完成した物質の二枚のシートは、縦方向に約90度に曲げられてもよい。曲げられたシートは、四角い断面を有する細長い燃料チャネルを形成するために溶接されてもよい。物質の厚い/薄い形状により、燃料チャネルの側壁の中央部は、比較的薄く、一方で側壁の角は比較的厚くてもよい。
【0046】
図9は、実施例に従った燃料チャネルのためのチャネルストリップを加工する他の方法のフローチャートである。ステップS90に示されるように、第一合金で形成されたコア物質は、第二合金で形成されたクラッド物質に接合される。例えば、第一合金で形成されたスラブと第二合金で形成されたジャケットとが供給されてもよい。第一および第二合金は異なった組成を有している。ジャケットが腐食および/または水素吸蔵に対して比較的耐性のある合金である一方で、スラブは照射成長および/または照射クリープに対して比較的耐性のある合金である。例えば、その合金は、上述された図1および図2で説明される。スラブはジャケットに挿入されてもよく、スラブをジャケット内に密封するために真空引きされてもよい。あるいは、第一合金で形成されたスラブに結合されるスラブの構造の中に第二合金が存在してもよいことは注目すべきである。例えば、第一合金スラブは、真空において第二合金スラブに電子ビーム(e−ビーム)により溶接されてもよい。
【0047】
ステップS92において、結合合金物質は、第一厚み(例えば約25.4mm:約1インチ)を得るために第一熱間圧延プロセスを受ける場合がある。第一熱間圧延プロセスは、あらゆる周知の熱間圧延プロセスであってもよい。素S94を参照すると、熱間圧延合金物質は腐食および照射成長への耐性を高めるために、ベータ焼入れ(quench)されてもよい。ベータ焼入れは、あらゆる周知のベータ焼入れプロセスであってもよい。例えば、熱間圧延合金物質は、ベータ焼入れに従った約900度C以上の温度においてベータ熱処理されてもよい。
【0048】
ステップS96を参照すると、急冷合金物質は、第二厚み(例えば約25.4mm以下:約1インチ以下)を得るために第二熱間圧延プロセスを受けてもよい。第二熱間圧延プロセスは、あらゆる周知の熱間圧延プロセスであってもよい。第二熱間圧延プロセスは、あらゆる周知の再結晶(RX)アニーリングプロセスに続いてもよい。ステップS98を参照すると、熱間合金物質は、厚い/薄い形状を有する第三厚みを得るためにあらゆる周知の冷却圧延プロセスを受けてもよい。例えば、冷却圧延プロセスは、厚い/薄い形状を物質に型押しするために溝付のローラーで行われてもよい。冷却圧延プロセスは、あらゆる周知の再結晶アニーリングプロセスに続いてもよい。あるいは、厚片と薄片は、別々に加工し(例えば、厚片と薄片を形成するために合金物質を圧延する)、厚い/薄い形状を有する溶接合金を得るために一緒に溶接されてもよい。そのプロセスは、ベータ焼入れが約900度Cより低い温度(例えば約500−800度C)で行われた後が効果的である。
【0049】
完成した多層物質は、燃料チャネルを形成するために変形され溶接される。例えば、完成した物質の二枚のシートは、縦方向に約90度に曲げられてもよい。曲げられたシートは、四角い断面を有する細長い燃料チャネルを形成するために溶接されてもよい。物質の厚い/薄い形状により、燃料チャネルの側壁の中央部は、比較的薄く、一方で側壁の角は比較的厚くてもよい。
【0050】
実施例がここに開示されているが、他の変形例も可能であることは理解されるべきである。そのような変形例は、本開示の実施例の精神と範囲を逸脱するものとみなされてはならず、また当業者にとって明らかなそのようなすべての変更は添付の特許請求の範囲に含まれるものと意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層(104)と、
前記コア層(104)に金属組織学的に結合された少なくとも一つのクラッド層(102)と、を有し、
前記コア層(104)および前記少なくとも一つのクラッド層(102)は異なった組成を有し、前記コア層(104)は照射成長に対して前記少なくとも一つのクラッド層(102)より遙かに高い耐性[GT2]を有し、前記少なくとも一つのクラッド層(102)はコア層(104)と比較してより増大した対水素吸蔵耐性を有することを特徴とする、原子炉構成要素のための多層物質(200)。
【請求項2】
前記少なくとも一つのクラッド層(102)は二つのクラッド層(102)を含み、その二つのクラッド層(102)の間に前記コア層(104)が挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の多層物質。
【請求項3】
前記コア層(104)は、ニオビウムを含む第一ジルコニウム合金からなり、前記少なくとも一つのクラッド層(102)は、スズ、鉄、およびクロムを含む第二ジルコニウム合金からなることを特徴とする請求項1に記載の多層物質。
【請求項4】
前記第一合金は、ジルコニウムを必須に調合した、約0.6−1.4%重量パーセントのニオビウム、約0.2−0.5%重量パーセントの鉄、および約0.5−1.0%重量パーセントのスズ、の組成物を有し、
前期第二合金は、ジルコニウムを必須に調合した、約0.4−2.0%重量パーセントのスズ、約0.1−0.6%重量パーセントの鉄、および約0.01−1.2%重量パーセントのクロムを含む組成物を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の多層物質。
【請求項5】
前記第一合金は、ジルコニウムを必須に調合した、約1.0%重量パーセントのニオビウム、約0.35%の鉄、および約1.0%重量パーセントのスズ、の組成物を有し、
前期第二合金は、ジルコニウムを必須に調合した、約1.45%重量パーセントのスズ、約0.21%重量パーセントの鉄、および約0.1%重量パーセントのクロム、の組成物を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の多層物質。
【請求項6】
前記第一合金は、ジルコニウムを必須に調合した、約1.0%重量パーセントのニオビウム、約3.5%重量パーセントの鉄、および約1.0%重量パーセントのスズ、の組成物を有し、
前期第二合金は、ジルコニウムを必須に調合した、約0.5%重量パーセントのスズ、約0.5%重量パーセントの鉄、および約1.0%重量パーセントのクロム、の組成物を有することを特徴とする請求項4に記載の多層物質。
【請求項7】
多層構造を有した細長い空洞体からなる原子炉用燃料チャネル(400)であって、前記多層構造は、
コア層(104)と、
前記コア層(104)に金属組織学的に結合した少なくとも一つのクラッド層(102)とを含み、
前記コア層(104)と前記少なくとも一つのクラッド層(102)は異なった組成を有し、前記コア層(104)は、前記少なくとも1つのクラッド層(102)よりも遙かに高い対照射成長耐性を有し、前記少なくとも1つのクラッド層(102)は前記コア層(104)と比較して増大した対水素吸蔵耐性を有する、ことを特徴とする原子炉用燃料チャネル(400)。
【請求項8】
コア物質と前記コア物質と異なる組成を有するクラッド物質であって、前記コア層は前記クラッド層よりもはるかに高い対照射成長耐性を有し、前記少なくとも1つのクラッド層は、前記コア層よりもより増大した対水素吸蔵耐性を有する性質の、前記コア物質を前記クラッド物質に接合させる工程と(S70)、
前記接合されたコア物質およびクラッド物質を圧延する工程と、
前記圧延されたコア物質とクラッド物質を変形して燃料チャネルに形成する工程と、を備えることを特徴とする原子炉用燃料チャネルの製造方法。
【請求項9】
前記結合されたコア物質およびクラッド物質の圧延する工程は、
第一熱間圧延プロセスを前記コア物質およびクラッド物質に行う工程と(S72)、
ベータ焼入れプロセスを行う工程と(S74)、
アニーリングに続いて第二熱間圧延プロセスを行う工程と(S76)、
アニーリングに続いて冷却圧延プロセスを行う工程と(S78)、
からなることを特徴とする請求項8に記載の燃料チャネルの加工方法。
【請求項10】
前記冷却圧延されたコア物質およびクラッド物質を圧延して、第一形状を有する第一部分と第二形状を有する第二部分とを有する結合物質を得る工程と、
前記圧延物質の内部応力を軽減するための回復アニーリングプロセスを行う工程と、をさらに含み、
前記第一形状は前記第二形状に比べて比較的厚く、前記第二形状は前記第一形状に比べて比較的薄いことを特徴とする請求項9に記載の原子炉用燃料チャネルの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−282026(P2009−282026A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117115(P2009−117115)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】