説明

多層表示装置

【課題】多層表示装置において手前側の表示部と奥側の表示部の画質の差を低減させる。
【解決手段】多層表示装置は、第1液晶表示部、第1液晶表示部の背面側に配備される第2液晶表示部、第1及び第2液晶表示部の間に設けられ、直線偏光をランダム偏光に変換する変換部、第1及び第2液晶表示部にそれぞれ表示される画像の画質を調整するためのパラメータを格納する記憶部、記憶部に記憶されたパラメータに基づいて第1及び第2液晶表示部に表示される画像の画質を調整する画像調整部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表示部が層状に配置された多層表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の表示部が層状に配置された多層表示装置では、表示される合成画像と観察者との距離は、画像の各部分が何れの表示部に表示されるかによって変化する。そのため、表示部が単層である表示装置に比べて、立体感をリアルに表現できる。
【0003】
多層表示装置の各表示部は、液晶パネルが、2枚の偏光板に挟まれた構成となっている。しかし奥側の表示部の偏光板によって偏光された光が、手前の表示部に入射した場合に、光の干渉によってモアレが発生することがある。このモアレを抑制するため、表示部の間に拡散板を配置することが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3335998
【特許文献2】特開2009−258903号公報
【特許文献3】特開2009−296105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、拡散板を配置すると、手前の表示部の画像は、拡散板を通らずに観察者に届く一方、奥側の表示部の画像は、拡散板を通って観察者に届くので、観察者にとって画質が異なって見える。
【0006】
この問題に鑑み、本発明は多層表示装置において手前側の表示部と奥側の表示部の画質の差を低減させることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る多層表示装置は、第1液晶表示部、第1液晶表示部の背面側に配備される第2液晶表示部、第1及び第2液晶表示部の間に設けられ、直線偏光をランダム偏光に変換する変換部、第1及び第2液晶表示部にそれぞれ表示される画像の画質を調整するためのパラメータを格納する記憶部、記憶部に記憶されたパラメータに基づいて第1及び第2液晶表示部に表示される画像の画質を調整する画像調整部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は多層表示装置において手前側の表示部と奥側の表示部の画質の差を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】多層表示装置10の外観を、模式的に表した図である。
【図2】多層表示装置10の構成ブロックである。
【図3】画質調整用テーブルに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について以下に説明する。2層の表示部を有する多層表示装置10は実施形態の1つである。
【0011】
図1は、多層表示装置10の外観を、模式的に示したものである。多層表示装置10では、手前側(観察者側)から奥側に向かって、第1液晶パネル41、拡散板44、第2液晶パネル42、およびバックライト43の順に配置されている。液晶パネル41、42のそれぞれは、一対の偏光板に挟まれた構成となっている。バックライト43は、CCFLやLEDで形成されており、各液晶パネル41、42に対する光源である。拡散板44は、第2液晶パネル42の偏光板で偏光された光をランダム偏光(無偏光)の光に変換する。第2液晶パネル42で偏光された光がそのまま第1液晶パネル41に入ると、光の干渉によりモアレが発生するが、この拡散板44を用いることでモアレを抑えることができる。また、バックライト43の裏面側にはこれらを制御する為の回路等が配置されている。
【0012】
第2液晶パネル42を透過した光は、拡散板44および第1液晶パネル41を通って、観察者に届く。これにより観察者は、液晶パネル41及び42に表示された画像が合成された画像を見ることができる。
【0013】
図2は、多層表示装置10の構成を示すブロック図である。多層表示装置10は、映像ROM1、画像処理部2、画質調整部3、ディスプレイユニット4(上記第1液晶パネル41、第2液晶パネル42、バックライト43、拡散板44からなる)、演算制御部5、操作入力部6、プログラムROM7、および照度センサ8を備えている。
【0014】
映像ROM1には、画像情報が格納されている。
【0015】
画像処理部2は、演算制御部5の指示に応じて、映像ROM1に格納されている符号化された画像情報を読み出す。そして読み出した画像データをデコードする処理や、液晶パネル41に表示させる第1画像データと液晶パネル42に表示させる第2画像データに分離する処理などを施す。そして画像処理部2は、第1画像データおよび第2画像データの情報を、画質調整部3に送出する。
【0016】
画質調整部3は、第1画質調整部31および第2画質調整部32を備えている。第1画質調整部31は、第1画像データに対する画質調整を行い、第1液晶パネル41に送出する。第2画質調整部32は、第2画像データに対する画質調整を行い、第2液晶パネル42に送出する。
【0017】
画質調整部3は、画像処理部2からの画像データに対し、(1) 画像全体をシャープ化する処理、(2) 画像中の輪郭や文字等のエッジを強調する処理、(3) 映像のコントラストを強調する処理、(4) 色相、彩度、および明るさを調整する処理等を実行する。また、画質調整部3は、第1画質調整部31、第2画質調整部32と別々のユニットにより構成しているが、これは第1画像データ、第2画像情報データに対する画質調整の内容が異なるからである。
【0018】
なお、上記では画像処理部2は、画像データを映像ROM1により取得しているが、これに代えて、放送信号により取得しても良い。また画像データは、パーソナルコンピュータから、DVIインターフェース等を介して取得されるようにしても良い。コンテンツサーバからインターネットを介して画像データが取得されるようにしても良い。
【0019】
演算制御部(CPU)5は、各種の演算や制御を実行する。
操作部6は、多層表示装置10とは別体のリモコン、又は多層表示装置10の側面又は表示部の外側に設けられた操作ボタンなどによって形成される。また、多層表示装置10が、第1液晶パネル41の前面側に光透過性のタッチパネルを備えている場合、このタッチパネルが操作部6となる。操作部6からの入力(指示)信号は演算制御部5に送出される。
【0020】
プログラムメモリ7は、CPU5を動作させるためのプログラムや、演算制御部5によって参照されるデータを記録する。また、プログラムメモリ7は、画質調整を行うための調整パラメータ等を格納したテーブルが含まれている。
【0021】
このテーブルは、図3に示すように「第1調整量」および「第2調整量」の各情報を含む。詳細には、各調整量はシャープ化、エッジ強調、コントラスト強調、色相、彩度、明るさからなる項目を含む。「第1調整量」は、第1画質調整部31が行う画質調整に関するパラメータであり、「第2調整量」は、第2画質調整部32が行う画質調整に関するパラメータである。なお本実施形態では、「第1調整量」および「第2調整量」は、例えば0から100までの何れかの値で設定される値とし、この値が小さいほどその調整の度合いは弱く、大きいほどその調整の度合いは強い。また中間値である50のとき、出力画像の画質は映像ROM1に格納されている画像と同じである。
【0022】
演算制御部5は、上記テーブルを参照して、画質調整部3に第1調整量および第2調整量を設定する。これにより、第1液晶パネル41と第2液晶パネル42に表示される画像の画質が、第1調整量と第2調整量に応じて画質調整部3により調整される。
【0023】
次に、画質調整用テーブルに記憶されるパラメータの決定方法を説明する。
【0024】
本実施形態の多層表示装置では、複数の液晶パネルの画像間のモアレの発生を防ぐために拡散板44を採用している。しかし、その弊害として、拡散板の後面の液晶パネル42の映像の精細度、明瞭度が悪くなる虞がある。
【0025】
そこで、拡散板44の透過で画質が悪くなることを予め考慮して、第1液晶パネル41の画像よりも、第2液晶パネル42の画像に対して、コントラスト強調、シャープネス、またはエッジ強調が強く施されるようにする。例えば、第1調整量の各項目を50に設定した場合、第2調整量の各項目は、50より大きい値(例えば60程度)に設定する。
また、一般的に表示装置においては、エッジ強調やシャープネスの処理を行うと映像の精細さや明瞭さが向上する。しかし、逆に映像のノイズ成分も強調されるため、空のような階調の緩やかな映像では細かいノイズが発生する。また、線や文字のような映像を強調する場合、弊害としてジャギーが発生する。そこで、第1調整量、第2調整量はこれらの事情も考慮して決定されるべきである。
【0026】
なお、第1調整量を変更した場合において、これに連動して第2調整量も自動的に変更されても良い。例えば、単純には第2調整量は第1調整量の1.2倍(=60/50)の値となるよう自動的に変更される。なお、このように第1調整量の変更に連動して第2調整量をも自動的に変更するモードのことを以後、「レイヤー間自動補正」と呼ぶことにする。
【0027】
逆に「レイヤー間自動補正」がOFFの場合、第1調整量の変更に連動して第2調整量も自動的に変更されることはない。この場合、第1調整量と第2調整量は独立に設定する必要がある。
【0028】
色相、彩度、明るさに関しては、拡散板44よりも第1液晶パネル41と第2液晶パネル42との特性のばらつきによる影響が強い場合がある。よって、「レイヤー間自動補正」がONの場合、コントラスト強調、シャープネス、またはエッジ強調に係る第2調整量は1調整量に対し常に第1の所定倍(この倍率は、拡散板の影響を考慮して決定する)になるように自動変更する一方、色相、彩度、或いは明るさに関しては、第2調整量は第1調整量に対し常に第2の所定倍(この倍率は、パネル間の個体差に応じて決定する)になるように自動変更する。
【0029】
液晶パネルを照射する太陽光の照度を検出する照度センサ8の検出情報に応じて、コントラスト強調などの調整量が動的に変更されるようにしても良い。太陽光が液晶パネル面を照射している場合、表示画像の視認性を確保する為にはコントラスト等を強調した方が良い。逆に夜間の場合、コントラストは低くても良好に視認できると考えられる。このことを考慮し、照度センサ8の検出値に応じて第1調整量が動的に変更されるようにしても良い。なお、かかる場合に「レイヤー間自動補正」をONとした場合、照度の変更に応じて、第2調整量も動的に変動されるものであっても良い。
【0030】
また、画質に関してはユーザの好みもある。例えば、明るめの映像を好むユーザ、コントラストが強い映像を好むユーザ、逆にシャープネスが弱い映像を好むユーザ等、様々であると考えられる。よって、ユーザ等の指示に応じて各画質調整項目の調整量が変更されるようにしても良い。なお、この場合においても、例えばユーザが第1調整量を変更した場合、これに連動して第2調整量は自動的に変更されるようなものであっても良い。
【0031】
なお、原則的に第1調整量および第2調整量は、原則的に、予めプログラムメモリ7に記憶された値、又はプログラムに従って設定される。例えば、初期値としての前述の第1調整量50、第2調整量60という値はプログラムメモリ7に記憶される。また、照度等によって第1調整量等を変動させる必要が発生する場合、プログラムメモリ7に記憶されたプログラムに従って、調整量の変更が行われる。
【0032】
第1調整量および第2調整量は、ユーザにより随時更新可能でも良い。例えば、上述したように好みに応じてユーザが自由に設定できるようにしても良い。また、多層表示装置が公共施設でのデジタルサイネージ表示装置として用いられる場合、第1調整量および第2調整量は、その表示装置の管理者、又は、表示装置に表示するコンテンツを提供する事業者のみが更新を可能とするようにしても良い。
【0033】
このように多層表示装置10によれば、各液晶パネル41、42に表示されるそれぞれの画像に対し、別々の調整が出来るから、モアレの発生と精細度等の低下の両方を防止できる。
【0034】
なお、上記の一例では、第2調整量を第1調整量よりも大きな設定にすると良いと記述としたが、このような設定が不要な場合もある。例えば、三次元画像を表示する場合、手前にある物体を鮮明に表示し、奥にある物体をぼやけて表示すると立体らしく見える。そこで、拡散板44を通過することにより画質がぼやけることを逆に利用して、第2調整量と第1調整量を同じ値に設定しても良い。
【0035】
逆に、第2液晶パネル42に文字画像を表示させる場合、第2表示パネルの画像は鮮明に見える方がよい。例えば、多層表示装置を使ってスロットマシーンを表示する場合、ルーレットのフレーム部分を第1液晶パネルに表示させ、ルーレットの画像(模様)の部分を第2液晶パネルに表示させるという使い方が考えられる。このような場合は、第2液晶パネル42の画像は鮮明するために、第2調整量を第1調整量よりも大きく設定すると良い。なお、第2液晶パネルに地図画像を表示させるような場合も同様である。
【0036】
これらのことを考慮し、これから表示させる画像が3次元画像である場合、第2調整量と第1調整量が等しくなるように制御するプログラムをプログラムメモリ7に格納しておくようにしても良い。逆に、これから表示させる画像がスロットマシーンの画像や第2レイヤー側に文字情報を含む画像である場合は、第2調整量よりも第1調整量が大きくなるように制御するプログラムをプログラムメモリ7に格納しておくようにしても良い。この場合、画像の種類に関する情報は、画像データのヘッダ部分に記述しておき、演算制御部5がそのヘッダ情報に応じて、プログラムメモリ7に記憶されたプログラム又は調整パラメータテーブルを読み出して、その情報に従って第1、第2調整量を自動的に決定するようにしても良い。
【0037】
また、元の映像データに直接画質調整を施した場合、映像データの圧縮率の低下によりデータサイズが増大する。また、様々な表示態様に備えるべく、複数種類の映像データをあらかじめ用意しておく場合もデータサイズが増大する。しかし、多層表示装置10によれば、映像ROM1のデータに対して、画質調整部3で画質調整を行うので圧縮率の変化による映像データの増大がなくメモリサイズが少なくて済む。また、複数種類の映像データを用意する必要が無いため、映像ROMの拡張および追加によるコストアップが発生しない。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。例えば、本実施形態の多層表示装置10は、2層の表示画面を有しているが、3層以上の表示画面を有する多層表示装置においても本発明は実施可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表示部と、
第1表示部の背面側に配備される第2表示部と、
第1及び第2表示部の間に設けられ、直線偏光をランダム偏光に変換する変換部と、
第1及び第2表示部にそれぞれ表示される画像の画質を調整するためのパラメータを格納する記憶部と
記憶部に記憶されたパラメータに基づいて第1及び第2液晶表示部に表示される画像の画質を調整する画像調整部
を備える多層表示装置。

【請求項2】
前記画像調整部は、
第1液晶表示部に表示される画像よりも、第2液晶表示部に表示される画像に対して、コントラスト強調処理、シャープネス処理、またはエッジ強調処理をより強く施すことを特徴とする、請求項1に記載の多層表示装置。

【請求項3】
第1、第2表示部に表示する画像を記憶するROM記憶部を更に備え、
前記画像調整部は、ROM記憶部に記憶された画像に対して画質調整を行うことを特徴とする、請求項1に記載の多層表示装置。

【請求項4】
前記パラメータはユーザにより調整可能であることを特徴とする、請求項1に記載の多層表示装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−203730(P2011−203730A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49160(P2011−49160)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506387959)三洋電機システムソリューションズ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】