多層複合ガスケット
多層複合ガスケット(10)は3つの、好ましくは金属製のコア(12,14)を含む。固体の中心コア(12)の両側には、接合された紙層(30)がある。穿孔コア(14)は、内向きタング(22)によって各紙層(30)に機械的に噛み合う。グラファイト層(26)が各穿孔コア(14)の外側に位置し、穿孔コア(14)から延在する外向きタング(20)によって穿孔コア(14)に機械的に噛み合う。内燃機関におけるシリンダヘッドを封止するためにガスケット(10)材料を用いる場合、ファイアリング(46)にはファイアリングホルダ(48)が取付けられ得る。ガスケット(10)は、1つの紙層(30)および1つのグラファイト層(26)が側面についた1つの穿孔コア(14)からなる第1および第2のプリフォームシート(32)を製作することによって製造することができる。プリフォームシート(32)は次に、熱活性接着剤を用いて中心コア(12)に接合される。結合ローラ(42)は、層を圧縮および高密度化して完成した材料セットを形成し、これはコイル(44)上に保管され得るか、シートに切断され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2009年2月13日に出願された仮特許出願番号第61/152,456号の優先権を主張し、この仮特許出願番号第61/152,456号は、全開示内容が引用によって本明細書に援用され根拠となる。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、多層複合ガスケットおよびガスケットの製作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術
ガスケットは、2つの嵌め合せ部材同士の間の液密シールを完成させるために多くの用途で用いられる。ガスケットは典型的に、嵌め合せ部材同士の間で締付けられ、そこで圧縮されて保持される。内燃機関の場合、多くのガスケットがさまざまな方面で用いられる。一例として、ヘッドガスケットは、エンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に位置決めされて、エンジンの使用時に燃焼室からの燃焼ガス漏れを防止するガスケットである。しかし、この用途におけるヘッドガスケットは燃焼室だけでなく、シリンダブロックとヘッドとの間に延在するさまざまな冷却液および潤滑流路も封止する。
【0004】
先行技術のヘッドガスケットの例が図1に示されており、4つの並んだ燃焼室の外周を表す、4つの大きな全体的に円形の開口部を有する。複数のより小さな開口部が、冷却液や潤滑を導くため、および締付圧を確定するために用いるボルトを収容するために、ガスケットの周りに分散されて示されている。この例示的なヘッドガスケットなどのガスケットは、すべてが異なる温度、異なる圧力で動作し、かつ異なる化学組成を有する高温/高圧ガス、水またはエチレングリコール系冷却液、潤滑油などを含むさまざまな流体媒体に対して液密シールを維持可能でなければならないことが容易に明らかになるであろう。
【0005】
したがって、広範なデューティ範囲にわたって満足に機能するようにガスケットを設計することは非常に困難であり得る。先行技術ではこれらの目的のために多数のガスケットスタイルおよび構成が開発されており、それらのいくつかは一定の用途に適している。先行技術において公知の1つのそのようなガスケット構造は、図2および図3に示されるような多層複合ガスケットからなり、これは全体的に、1995年11月21日にStaab等に発行された米国特許第5,468,003号に記載されたガスケットに対応し、当該特許の開示内容は引用によって本明細書に援用される。当該特許には、高性能ディーゼルエンジン用途に主に用いられるシリンダヘッドガスケットが記載されている。このガスケットは5つの層からなり、これらの中には、両側に側面穿孔鋼層が接合された鋼中心層が含まれる。穿孔鋼層は、外側グラファイト層と機械的な噛み合せ係合を確立する外向延在タングを有する。中心層、2つの穿孔層、および2つのグラファイト層からなるこれら5つの層は、ガスケットアセンブリの本体を含む。燃焼開口部は、薄い板金ファイアリングホルダが装着されたファイアリングで縁取られており、ファイアリングホルダは多層複合ガスケット本体と直接係合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2および図3に示される先行技術のガスケット構造は一定の用途に適度に効果的であることが知られているが、この構造には、性能を高めるために改善可能な側面がある。特に、固体のコア中心層は、燃焼圧に耐えるために、接着化合物によって2つの対向する穿孔鋼層に直接取付けられる。外側グラファイト対向層は穿孔金属層に機械的に接合されて、シリンダヘッドおよびブロックの締付面に対する流体シールを提供する(図2に簡略化して示される)。剛性の接着糊継手は、穿孔層と中心金属層との間に封止機能を提供する。
【0007】
使用時、エンジン内のガスケットは、ヘッドおよびブロックが異なる速度で伸縮したり、またはその他の方法で動力によって互いに動いたりする際にガスケットに剪断応力を与える燃焼および加熱サイクルの力から、異なる荷重を受ける。したがって、ガスケットの本体内に剪断荷重が作り出され、これによって穿孔金属層と中心金属コアとの間の剛性糊層が弱まるか、場合によって破壊され得る。ガスケットの本体が内部で耐えた剪断荷重によって剛性糊層が弱まったり、場合によっては破壊され得ることによって、ガスケット本体を通る流体に対して漏れ経路が与えられ得ることが観察された。糊層が剪断荷重下で破壊しなければ、剪断荷重はグラファイト層によってほぼ全体が支えられ、これらの層に過度の剪断応力がかかるため、時間とともに、嵌め合せ部材に対する良好なシールを維持するこれらの層の能力が損なわれ得る。したがって、図2および図3に示されるような先行技術のガスケット構造は、過度の剪断応力に起因する故障モードのため、態様寿命が短くなってしまう。
【0008】
したがって、嵌め合せ部材同士の間の液密シールを完成させるために当該部材同士の間で締付けられる種類の、改良された多層複合ガスケット構造が当該技術において求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明によると、嵌め合せ部材同士の間に液密シールを確立することができるように嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットが提供される。ガスケットは、互いに向い合う側を有する中心コア層を含む。中心コアの両側に、1対の穿孔コア層が配置される。穿孔コアの各々は、中心コアの方を向く近位面および中心コアと反対の方を向く遠位面を有する。1対の外側グラファイト層が設けられる。グラファイト層の各々は、穿孔コアのうちのそれぞれ1つの遠位面に機械的に噛み合っている。1対の紙層が設けられる。紙層の各々は、穿孔コアのうちの1つと中心コアとの間に位置する。紙層の各々は、そのそれぞれの穿孔コアの近位面に機械的に噛み合っており、かつ中心コア層に取付けられている。
【0010】
本発明の技術に従って組立てたガスケットによって、嵌め合せ部材同士の間の相対的な動きに起因する剪断荷重の蓄積が減少する。それぞれの穿孔コアと中心コアとの間に位置する紙層は、中心コアに対する穿孔コアのわずかな横方向の転位を可能にするすべり面として機能し得、これによって、ガスケットの封止機能を損なわずに使用時の剪断荷重を緩和することができる。グラファイト層は、不利な動的条件下でも嵌め合せ部材に対するシールを維持することができる。したがって、本発明に従って製造したガスケットは、広範なデューティ範囲にわたって優れた封止能力を維持しつつ、使用時にガスケットにかけられる動的に変化する圧縮力および剪断力を吸収することができる。
【0011】
本発明の別の局面によると、嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットを形成するための方法が提供される。当該方法は、第1のプリフォームシートを製作するステップを含み、当該ステップは、近位面および遠位面を有する穿孔コア層を設けるステップと、外側グラファイト層を設けるステップと、グラファイト層を穿孔コアの遠位面に機械的に噛み合せるステップと、紙層を設けるステップと、紙層を穿孔コアの近位面に機械的に噛み合せるステップとを含む。第1のプリフォームシートを製作するのに用いたのと同じステップに従って、第2のプリフォームシートを製作する。互いに向い合う側を有する中心コア層を設ける。第1のプリフォームシートの紙層を中心コアの一方側に接合させる一方で、第2のプリフォームシートの紙層を中心コアの反対側に接合させる。その結果、第1のプリフォームシートおよび第2のプリフォームシートの紙層が中心コアに直接接合された状態で、中心コアを第1のプリフォームシートと第2のプリフォームシートとの間に挟む。この方法によって、先行技術のガスケット設計に固有の欠点および欠陥を克服する多層複合ガスケットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】内燃機関におけるシリンダヘッドをブロックに封止する際に用いられ得るような、標準的な先行技術のガスケットを示す平面図である。
【図2】例示目的で、内燃機関における一般的な種類のシリンダヘッドおよびブロックを含み得る、2つの嵌め合せ部材同士の間で締付けられる先行技術のガスケットの部分図である。
【図3】図2に示す先行技術のガスケットの拡大断面部分図である。
【図4】本発明に係る多層複合ガスケットの、斜視的に示す部分断面図である。
【図5】図4のガスケットの多層構造を示す展開図である。
【図6】本発明のガスケットの拡大部分断面図である。
【図7】本発明に係る穿孔コア層の部分斜視図である。
【図8】グラファイト層および紙層を穿孔コアの両側に機械的に噛み合せることによって第1のプリフォームシートが製作される、本発明の製造プロセスにおける第1のステップを示す簡略化された概略図である。
【図8A】図8の8Aで示される第1のプリフォームシートの拡大図である。
【図9】第1のプリフォームシートおよび第2のプリフォームシートの中心コア層の両側への接合を示す、簡略化された概略図である。
【図9A】図9の9Aで示される領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施例の詳細な説明
複数の図面全体にわたって同様の番号は同様または対応の部分を示す図面を参照して、本発明に係るガスケットが図4〜図6に全体的に10で示される。ガスケット10は、互いに向い合う側を有する、金属製の、好ましくは鋼の中心コア層12を含む。好ましくは、中心コア12は全体的に均一の厚みを有し、ガスケット10全体にわたって連続的な途切れない障壁を確立するために、切れ目や凹凸を有さずに形成される。中心コア12は、図9に示されるようにコイル36上にロール形状で、またはシート形状で供給され得る。中心コア12は、約0.13〜約6.35ミリメートルの範囲の厚みを有し得る。中心コア12には、特定用途の仕様によって求められる場合は、粗い表面仕上げがなされる。
【0014】
各々が全体的に14で示される、1対の実質的に同一の穿孔金属コア層が中心コア12の両側に配置される。穿孔コア14は、好ましくは低炭素またはステンレス鋼からなるが、非金属組成さえも含む他の組成を適切な状況下で代わりに用いてもよい。穿孔コア14は、1つの例示的な実施例では、約0.15〜約0.30ミリメートルの範囲の厚みを有する。おそらく図5〜図7に最もよく示されるように、穿孔コア14の各々は近位面16および遠位面18を含む。いずれの場合も、近位面16は中心コア12の方を向く側であり、遠位面18は中心コア12から離れる方向を向く。複数の外向きタング20が、各穿孔コア14の遠位面18から離れるように延在する。若干同様の態様で、複数の内向きタング22が各穿孔コア14の近位面16から延在する。タング20、22は、ロール成形または他の種類の製造作業において、シート状のメンブレンまたは原料から一体的に曲げられたパンチタブまたは片の形状を取り得る。本発明の好ましい実施例では、タング20、22は、図8に示されるように、未加工のシート原料にパンチローラ24のニップを通過させることによって同時に形成される。もちろん、他の成形技術も可能である。図7は、タング20、22が取る1つの例示的な形状を示す。ここでは、1つの内向きタング22が各外向きタング20に対向して、タング22とタング20が多少向かい合っているように見える。各タング20、22を穿孔コア14のベース原材料から離れるように曲げることによって原材料に空隙または開口が形成されるため、その穿孔特徴を確定することができる。
【0015】
実際は、外向きタング20は内向きタング22よりも長く、両タングは、等しいが反対の鋭角だけ、原料メンブレンの一般平面から離れるように曲げられている。もちろん、他の角度方向も可能であり、内向きタング22は外向きタング20と等しいが反対の角度だけ原料メンブレンの平面から離れるように曲げられていなくてもよい。換言すれば、外向きタング20をコア14の平面に対して直交に90度に向けるのに対して、内向きタング22を90度よりも小さいある鋭角で曲げることが可能である。当業者であれば、タング20、22の形状、穿孔コア14の空隙または開口に対するタング20、22の関係、タング20、22の相対的な数および間隔、ならびにタング20、22がそれぞれの近位面16および遠位面18から離れるように曲げられている角度について、多くの代替的な形態を想到するであろう。おそらく図6に最もよく示されるように、外向きタング20の直交突起部、すなわち原料メンブレンの平面に対して垂直に測定される距離は、近位面16からの内向きタング22の直交突起部よりも大きい。したがって、タング20、22がそれぞれの遠位面18および近位面16から等しいが反対の角度だけ突き出ている図示される例では、外向きタング20は、自身の直交突起部がより大きくなるようにより長く形成される。もちろん、タング20、22を等しい長さにしつつ、これらタングが穿孔コア14の平面に対して曲げられる角度を変えることによって等しくない直交突起部を維持することも可能である。
【0016】
各々が全体的に26で示される1対の外側グラファイト層が、穿孔コア構造に関するヘッドガスケット構造の周知原理に従って設けられる。グラファイト層26は、外向きタング20を介してそれぞれの穿孔コア14の遠位面18に機械的に噛み合う。これは、シート形状のグラファイトを穿孔コア14の遠位面18に押付けて圧縮し、外向きタング20がグラファイト材料に埋め込まれるようにすることによって達成され得る。図8に示されるように、これは、圧延シート形状のグラファイト材料を穿孔コア14とともに、圧縮ローラセット28のニップを通過させることによって達成され得る。この機械的噛み合せステップは、図8に示されるようにタング20、22の形成とともにインラインで達成され得るか、または別個の作業またはバッチ処理で達成され得る。グラファイト層26の厚みはいくらか変更可能であるが、本発明の好ましい実施例では、各グラファイト層26の厚みは、外向きタング20の先端がそれぞれのグラファイト層26の遠位外面を破壊していない図4および図6に示されるように、外向きタング20の直交突起部と等しいか、直交突起部よりも若干大きい。しかし、当業者であれば、外向きタング20の最も外側の先端がグラファイト層26を貫通して示され得るいくつかの適用例も想到するであろう。
【0017】
さらに、全体的に30で示される1対の紙層がガスケット10内に設けられる。ビーターシートとしても公知の紙層30は、厚みおよび組成が互いに実質的に同一であり、図4〜図6に示されるように、各々が穿孔コア14のうちのそれぞれの1つと中心コア12との間に位置する。各紙層30は、内向きタング22によって、穿孔コア14のうちの1つの近位面16に機械的に噛み合う。各紙層30には中心コア12も取付けられる。したがって図面に示されるように、中心コア12は2つの紙層30同士の間に挟まれて見える。これらの紙層30は、封止中の嵌め合せ部材同士の間の相対的な動きに起因する剪断応力を消散させるために、ガスケット10の使用時に穿孔コア14と中心コア12との相対的な動的すべりを吸収する。場合によっては、紙層30とそれらのそれぞれの穿孔コア14との間に、たとえばニトリルフェノール組成物などの結合剤を用いて、ガスケット10の製造および設置時にすべての層をまとめて保持することを補助することが望ましい場合がある。そのような場合、紙層30は、接着剤が不活性化形態で予め塗布された状態で材料供給元から受取られるか、または接着剤は次の処理ステップで塗布されるかのいずれか一方である。
【0018】
紙層30の穿孔コア14への機械的噛み合せは、紙層30に同じ圧縮ローラセット28を同時に通過させることによって、グラファイト層26の機械的噛み合せと同時に達成され得る。図8Aに示されるような結果的に得られる構成は、圧縮ローラセット28によって仕様に従って高密度化される、および/またはサイズ決めされるプリフォームシート32を表わす。プリフォームシート32は、シートとして切断および回収されてもよいし、将来の処理のためにスプール34に巻付けられてもよい。
【0019】
内向きタング22の直交突起部は、好ましくは紙層30の厚みよりも小さいか厚みと等しいため、内向きタング22の伸びた先端は紙層30を完全に通過しない。換言すれば、図6に示されるように、内向きタング22と中心コア12との間に若干の間隔が残り得る。しかし、この仕様は、必要な用途および設計特徴に依存して変わることがある。同様に、紙層30とグラファイト層26の相対的な厚みは、図に示されるように紙層30の方が薄くてもよいが、これもまた変更可能な仕様である。
【0020】
図9は、それぞれのスプール34上で搬送される第1および第2のプリフォームシート32を用いた、多層複合ガスケット10を形成するための方法を示す。中心コア12用の未加工原料がコイル36上で搬送される。接着材料が、実質的に等しい量で、中心コア12の互いに向い合う側の両方に塗布されるか、または予め存在するかのいずれか一方である。接着剤は、ニトリルフェノール組成物を含むがこれに限定されない、いずれかの公知かつ好適な形態を取り得る。図示されるように、接着剤は、中心コア12に予め塗布され、巻付コイル36において休止状態の不活性な乾燥形態でそこに存在することになる。しかし、接着剤は代替的に、コア12がコイル36からほどかれる際に、ブラッシング、圧延、吹付けまたは他の適切な塗布技術によって、乾燥膜形態または懸濁状態で塗布されてもよいことが理解されるであろう。換言すれば、コイル36は、接着剤が予め塗布された状態で材料供給元から受取られるか、または接着剤はコア原材料がコイル36からほどかれた後のある時点でコア原材料の両側に塗布されるかのいずれか一方である。不活性接着剤を活性化する必要がある場合は、塗布された中心コア材料がヒータ40を通過して、接着膜を溶融および/または活性化させる。1つの可能な変形例では、接着剤は、事前塗布または工程間塗布技術を用いて、コア12ではなく紙層30に直接塗布され得る。この変形例は、紙層30の両側に接着剤を塗ることになっている場合に好ましい場合がある。
【0021】
図9に示されるように、第1および第2のプリフォームシート32は、溶融した接着剤が結合ローラセット42のニップに存在する状態で、中心コア12と接触する。プリフォームシート32がスプール34上で搬送される際の向きは、各々の紙層30が中心コア12に向けられ、それぞれのグラファイト層26が外側を向いているようなものである。結合ローラ42は次にこれらの層をまとめて圧縮することによって、材料を厚みおよび/または密度の最終仕様に成形する。完成したガスケット材料10は結合ローラセット42を出て、シートに切断されるか、図9に示されるようコイル44上に保管され得るかのいずれか一方である。コイル44に供給されるガスケット材料は、図9Aに示されるもののように見える。
【0022】
未加工のガスケット材料10を完成ガスケットに変えるプロセスでは、切断、装飾またはさらなる作業が必要であり得る。たとえば、図4〜図6は、多層複合材料からなるヘッドガスケットの部分的な断面図を示す。この場合、慣例により、任意の燃焼室開口部の外周の周りにファイアリングホルダ48によって覆われるファイアリング46を設置することが必要であり、ファイアリングホルダ48は、ヘッドガスケット用途において必要に応じて、その端縁がグラファイト層26と重なり合って耐久性およびストッパ高さ調節を提供する。ガスケット材料10の他の使用法を用いて、内燃機関におけるシリンダヘッドを封止することを意図しないガスケットを製作することが可能であり、したがってファイアリング46およびホルダ48は省略され得ることが認識され得るであろう。同様に、ガスケット10を任意の好適な用途で用いることができるように、グロメットおよび他の特徴を含めてもよい。
【0023】
穿孔コア14と中心コア12との間に紙層30を導入することによって、紙層30は、横方向の剪断荷重がガスケット10の本体内に蓄積して最終的に流体漏れを引起さないように、すべり面を提供することができる。紙層30と中心コア12との間に塗布される接着剤の組成は、すべりが接着剤自体の内部で、接着剤と中心コア12との界面で、紙層30と穿孔コア14との界面で、または紙層30の本体の内部で起きてもよいようなものである。換言すれば、接着剤および/または紙層30および/または界面の降伏強度は、剪断荷重が深刻なレベルに高まる前に屈するような強度である。
【0024】
以上の発明は関連の法的基準に従って説明されたため、本説明は限定的ではなく例示的な性質のものである。開示された実施例に対する変形例および修正例が当業者にとって明らかになり得、本発明の範囲内に収まり得る。したがって、本発明に与えられる法的保護範囲は、以下の請求項を検討することによってのみ決定され得る。
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2009年2月13日に出願された仮特許出願番号第61/152,456号の優先権を主張し、この仮特許出願番号第61/152,456号は、全開示内容が引用によって本明細書に援用され根拠となる。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、多層複合ガスケットおよびガスケットの製作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術
ガスケットは、2つの嵌め合せ部材同士の間の液密シールを完成させるために多くの用途で用いられる。ガスケットは典型的に、嵌め合せ部材同士の間で締付けられ、そこで圧縮されて保持される。内燃機関の場合、多くのガスケットがさまざまな方面で用いられる。一例として、ヘッドガスケットは、エンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に位置決めされて、エンジンの使用時に燃焼室からの燃焼ガス漏れを防止するガスケットである。しかし、この用途におけるヘッドガスケットは燃焼室だけでなく、シリンダブロックとヘッドとの間に延在するさまざまな冷却液および潤滑流路も封止する。
【0004】
先行技術のヘッドガスケットの例が図1に示されており、4つの並んだ燃焼室の外周を表す、4つの大きな全体的に円形の開口部を有する。複数のより小さな開口部が、冷却液や潤滑を導くため、および締付圧を確定するために用いるボルトを収容するために、ガスケットの周りに分散されて示されている。この例示的なヘッドガスケットなどのガスケットは、すべてが異なる温度、異なる圧力で動作し、かつ異なる化学組成を有する高温/高圧ガス、水またはエチレングリコール系冷却液、潤滑油などを含むさまざまな流体媒体に対して液密シールを維持可能でなければならないことが容易に明らかになるであろう。
【0005】
したがって、広範なデューティ範囲にわたって満足に機能するようにガスケットを設計することは非常に困難であり得る。先行技術ではこれらの目的のために多数のガスケットスタイルおよび構成が開発されており、それらのいくつかは一定の用途に適している。先行技術において公知の1つのそのようなガスケット構造は、図2および図3に示されるような多層複合ガスケットからなり、これは全体的に、1995年11月21日にStaab等に発行された米国特許第5,468,003号に記載されたガスケットに対応し、当該特許の開示内容は引用によって本明細書に援用される。当該特許には、高性能ディーゼルエンジン用途に主に用いられるシリンダヘッドガスケットが記載されている。このガスケットは5つの層からなり、これらの中には、両側に側面穿孔鋼層が接合された鋼中心層が含まれる。穿孔鋼層は、外側グラファイト層と機械的な噛み合せ係合を確立する外向延在タングを有する。中心層、2つの穿孔層、および2つのグラファイト層からなるこれら5つの層は、ガスケットアセンブリの本体を含む。燃焼開口部は、薄い板金ファイアリングホルダが装着されたファイアリングで縁取られており、ファイアリングホルダは多層複合ガスケット本体と直接係合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2および図3に示される先行技術のガスケット構造は一定の用途に適度に効果的であることが知られているが、この構造には、性能を高めるために改善可能な側面がある。特に、固体のコア中心層は、燃焼圧に耐えるために、接着化合物によって2つの対向する穿孔鋼層に直接取付けられる。外側グラファイト対向層は穿孔金属層に機械的に接合されて、シリンダヘッドおよびブロックの締付面に対する流体シールを提供する(図2に簡略化して示される)。剛性の接着糊継手は、穿孔層と中心金属層との間に封止機能を提供する。
【0007】
使用時、エンジン内のガスケットは、ヘッドおよびブロックが異なる速度で伸縮したり、またはその他の方法で動力によって互いに動いたりする際にガスケットに剪断応力を与える燃焼および加熱サイクルの力から、異なる荷重を受ける。したがって、ガスケットの本体内に剪断荷重が作り出され、これによって穿孔金属層と中心金属コアとの間の剛性糊層が弱まるか、場合によって破壊され得る。ガスケットの本体が内部で耐えた剪断荷重によって剛性糊層が弱まったり、場合によっては破壊され得ることによって、ガスケット本体を通る流体に対して漏れ経路が与えられ得ることが観察された。糊層が剪断荷重下で破壊しなければ、剪断荷重はグラファイト層によってほぼ全体が支えられ、これらの層に過度の剪断応力がかかるため、時間とともに、嵌め合せ部材に対する良好なシールを維持するこれらの層の能力が損なわれ得る。したがって、図2および図3に示されるような先行技術のガスケット構造は、過度の剪断応力に起因する故障モードのため、態様寿命が短くなってしまう。
【0008】
したがって、嵌め合せ部材同士の間の液密シールを完成させるために当該部材同士の間で締付けられる種類の、改良された多層複合ガスケット構造が当該技術において求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明によると、嵌め合せ部材同士の間に液密シールを確立することができるように嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットが提供される。ガスケットは、互いに向い合う側を有する中心コア層を含む。中心コアの両側に、1対の穿孔コア層が配置される。穿孔コアの各々は、中心コアの方を向く近位面および中心コアと反対の方を向く遠位面を有する。1対の外側グラファイト層が設けられる。グラファイト層の各々は、穿孔コアのうちのそれぞれ1つの遠位面に機械的に噛み合っている。1対の紙層が設けられる。紙層の各々は、穿孔コアのうちの1つと中心コアとの間に位置する。紙層の各々は、そのそれぞれの穿孔コアの近位面に機械的に噛み合っており、かつ中心コア層に取付けられている。
【0010】
本発明の技術に従って組立てたガスケットによって、嵌め合せ部材同士の間の相対的な動きに起因する剪断荷重の蓄積が減少する。それぞれの穿孔コアと中心コアとの間に位置する紙層は、中心コアに対する穿孔コアのわずかな横方向の転位を可能にするすべり面として機能し得、これによって、ガスケットの封止機能を損なわずに使用時の剪断荷重を緩和することができる。グラファイト層は、不利な動的条件下でも嵌め合せ部材に対するシールを維持することができる。したがって、本発明に従って製造したガスケットは、広範なデューティ範囲にわたって優れた封止能力を維持しつつ、使用時にガスケットにかけられる動的に変化する圧縮力および剪断力を吸収することができる。
【0011】
本発明の別の局面によると、嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットを形成するための方法が提供される。当該方法は、第1のプリフォームシートを製作するステップを含み、当該ステップは、近位面および遠位面を有する穿孔コア層を設けるステップと、外側グラファイト層を設けるステップと、グラファイト層を穿孔コアの遠位面に機械的に噛み合せるステップと、紙層を設けるステップと、紙層を穿孔コアの近位面に機械的に噛み合せるステップとを含む。第1のプリフォームシートを製作するのに用いたのと同じステップに従って、第2のプリフォームシートを製作する。互いに向い合う側を有する中心コア層を設ける。第1のプリフォームシートの紙層を中心コアの一方側に接合させる一方で、第2のプリフォームシートの紙層を中心コアの反対側に接合させる。その結果、第1のプリフォームシートおよび第2のプリフォームシートの紙層が中心コアに直接接合された状態で、中心コアを第1のプリフォームシートと第2のプリフォームシートとの間に挟む。この方法によって、先行技術のガスケット設計に固有の欠点および欠陥を克服する多層複合ガスケットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】内燃機関におけるシリンダヘッドをブロックに封止する際に用いられ得るような、標準的な先行技術のガスケットを示す平面図である。
【図2】例示目的で、内燃機関における一般的な種類のシリンダヘッドおよびブロックを含み得る、2つの嵌め合せ部材同士の間で締付けられる先行技術のガスケットの部分図である。
【図3】図2に示す先行技術のガスケットの拡大断面部分図である。
【図4】本発明に係る多層複合ガスケットの、斜視的に示す部分断面図である。
【図5】図4のガスケットの多層構造を示す展開図である。
【図6】本発明のガスケットの拡大部分断面図である。
【図7】本発明に係る穿孔コア層の部分斜視図である。
【図8】グラファイト層および紙層を穿孔コアの両側に機械的に噛み合せることによって第1のプリフォームシートが製作される、本発明の製造プロセスにおける第1のステップを示す簡略化された概略図である。
【図8A】図8の8Aで示される第1のプリフォームシートの拡大図である。
【図9】第1のプリフォームシートおよび第2のプリフォームシートの中心コア層の両側への接合を示す、簡略化された概略図である。
【図9A】図9の9Aで示される領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施例の詳細な説明
複数の図面全体にわたって同様の番号は同様または対応の部分を示す図面を参照して、本発明に係るガスケットが図4〜図6に全体的に10で示される。ガスケット10は、互いに向い合う側を有する、金属製の、好ましくは鋼の中心コア層12を含む。好ましくは、中心コア12は全体的に均一の厚みを有し、ガスケット10全体にわたって連続的な途切れない障壁を確立するために、切れ目や凹凸を有さずに形成される。中心コア12は、図9に示されるようにコイル36上にロール形状で、またはシート形状で供給され得る。中心コア12は、約0.13〜約6.35ミリメートルの範囲の厚みを有し得る。中心コア12には、特定用途の仕様によって求められる場合は、粗い表面仕上げがなされる。
【0014】
各々が全体的に14で示される、1対の実質的に同一の穿孔金属コア層が中心コア12の両側に配置される。穿孔コア14は、好ましくは低炭素またはステンレス鋼からなるが、非金属組成さえも含む他の組成を適切な状況下で代わりに用いてもよい。穿孔コア14は、1つの例示的な実施例では、約0.15〜約0.30ミリメートルの範囲の厚みを有する。おそらく図5〜図7に最もよく示されるように、穿孔コア14の各々は近位面16および遠位面18を含む。いずれの場合も、近位面16は中心コア12の方を向く側であり、遠位面18は中心コア12から離れる方向を向く。複数の外向きタング20が、各穿孔コア14の遠位面18から離れるように延在する。若干同様の態様で、複数の内向きタング22が各穿孔コア14の近位面16から延在する。タング20、22は、ロール成形または他の種類の製造作業において、シート状のメンブレンまたは原料から一体的に曲げられたパンチタブまたは片の形状を取り得る。本発明の好ましい実施例では、タング20、22は、図8に示されるように、未加工のシート原料にパンチローラ24のニップを通過させることによって同時に形成される。もちろん、他の成形技術も可能である。図7は、タング20、22が取る1つの例示的な形状を示す。ここでは、1つの内向きタング22が各外向きタング20に対向して、タング22とタング20が多少向かい合っているように見える。各タング20、22を穿孔コア14のベース原材料から離れるように曲げることによって原材料に空隙または開口が形成されるため、その穿孔特徴を確定することができる。
【0015】
実際は、外向きタング20は内向きタング22よりも長く、両タングは、等しいが反対の鋭角だけ、原料メンブレンの一般平面から離れるように曲げられている。もちろん、他の角度方向も可能であり、内向きタング22は外向きタング20と等しいが反対の角度だけ原料メンブレンの平面から離れるように曲げられていなくてもよい。換言すれば、外向きタング20をコア14の平面に対して直交に90度に向けるのに対して、内向きタング22を90度よりも小さいある鋭角で曲げることが可能である。当業者であれば、タング20、22の形状、穿孔コア14の空隙または開口に対するタング20、22の関係、タング20、22の相対的な数および間隔、ならびにタング20、22がそれぞれの近位面16および遠位面18から離れるように曲げられている角度について、多くの代替的な形態を想到するであろう。おそらく図6に最もよく示されるように、外向きタング20の直交突起部、すなわち原料メンブレンの平面に対して垂直に測定される距離は、近位面16からの内向きタング22の直交突起部よりも大きい。したがって、タング20、22がそれぞれの遠位面18および近位面16から等しいが反対の角度だけ突き出ている図示される例では、外向きタング20は、自身の直交突起部がより大きくなるようにより長く形成される。もちろん、タング20、22を等しい長さにしつつ、これらタングが穿孔コア14の平面に対して曲げられる角度を変えることによって等しくない直交突起部を維持することも可能である。
【0016】
各々が全体的に26で示される1対の外側グラファイト層が、穿孔コア構造に関するヘッドガスケット構造の周知原理に従って設けられる。グラファイト層26は、外向きタング20を介してそれぞれの穿孔コア14の遠位面18に機械的に噛み合う。これは、シート形状のグラファイトを穿孔コア14の遠位面18に押付けて圧縮し、外向きタング20がグラファイト材料に埋め込まれるようにすることによって達成され得る。図8に示されるように、これは、圧延シート形状のグラファイト材料を穿孔コア14とともに、圧縮ローラセット28のニップを通過させることによって達成され得る。この機械的噛み合せステップは、図8に示されるようにタング20、22の形成とともにインラインで達成され得るか、または別個の作業またはバッチ処理で達成され得る。グラファイト層26の厚みはいくらか変更可能であるが、本発明の好ましい実施例では、各グラファイト層26の厚みは、外向きタング20の先端がそれぞれのグラファイト層26の遠位外面を破壊していない図4および図6に示されるように、外向きタング20の直交突起部と等しいか、直交突起部よりも若干大きい。しかし、当業者であれば、外向きタング20の最も外側の先端がグラファイト層26を貫通して示され得るいくつかの適用例も想到するであろう。
【0017】
さらに、全体的に30で示される1対の紙層がガスケット10内に設けられる。ビーターシートとしても公知の紙層30は、厚みおよび組成が互いに実質的に同一であり、図4〜図6に示されるように、各々が穿孔コア14のうちのそれぞれの1つと中心コア12との間に位置する。各紙層30は、内向きタング22によって、穿孔コア14のうちの1つの近位面16に機械的に噛み合う。各紙層30には中心コア12も取付けられる。したがって図面に示されるように、中心コア12は2つの紙層30同士の間に挟まれて見える。これらの紙層30は、封止中の嵌め合せ部材同士の間の相対的な動きに起因する剪断応力を消散させるために、ガスケット10の使用時に穿孔コア14と中心コア12との相対的な動的すべりを吸収する。場合によっては、紙層30とそれらのそれぞれの穿孔コア14との間に、たとえばニトリルフェノール組成物などの結合剤を用いて、ガスケット10の製造および設置時にすべての層をまとめて保持することを補助することが望ましい場合がある。そのような場合、紙層30は、接着剤が不活性化形態で予め塗布された状態で材料供給元から受取られるか、または接着剤は次の処理ステップで塗布されるかのいずれか一方である。
【0018】
紙層30の穿孔コア14への機械的噛み合せは、紙層30に同じ圧縮ローラセット28を同時に通過させることによって、グラファイト層26の機械的噛み合せと同時に達成され得る。図8Aに示されるような結果的に得られる構成は、圧縮ローラセット28によって仕様に従って高密度化される、および/またはサイズ決めされるプリフォームシート32を表わす。プリフォームシート32は、シートとして切断および回収されてもよいし、将来の処理のためにスプール34に巻付けられてもよい。
【0019】
内向きタング22の直交突起部は、好ましくは紙層30の厚みよりも小さいか厚みと等しいため、内向きタング22の伸びた先端は紙層30を完全に通過しない。換言すれば、図6に示されるように、内向きタング22と中心コア12との間に若干の間隔が残り得る。しかし、この仕様は、必要な用途および設計特徴に依存して変わることがある。同様に、紙層30とグラファイト層26の相対的な厚みは、図に示されるように紙層30の方が薄くてもよいが、これもまた変更可能な仕様である。
【0020】
図9は、それぞれのスプール34上で搬送される第1および第2のプリフォームシート32を用いた、多層複合ガスケット10を形成するための方法を示す。中心コア12用の未加工原料がコイル36上で搬送される。接着材料が、実質的に等しい量で、中心コア12の互いに向い合う側の両方に塗布されるか、または予め存在するかのいずれか一方である。接着剤は、ニトリルフェノール組成物を含むがこれに限定されない、いずれかの公知かつ好適な形態を取り得る。図示されるように、接着剤は、中心コア12に予め塗布され、巻付コイル36において休止状態の不活性な乾燥形態でそこに存在することになる。しかし、接着剤は代替的に、コア12がコイル36からほどかれる際に、ブラッシング、圧延、吹付けまたは他の適切な塗布技術によって、乾燥膜形態または懸濁状態で塗布されてもよいことが理解されるであろう。換言すれば、コイル36は、接着剤が予め塗布された状態で材料供給元から受取られるか、または接着剤はコア原材料がコイル36からほどかれた後のある時点でコア原材料の両側に塗布されるかのいずれか一方である。不活性接着剤を活性化する必要がある場合は、塗布された中心コア材料がヒータ40を通過して、接着膜を溶融および/または活性化させる。1つの可能な変形例では、接着剤は、事前塗布または工程間塗布技術を用いて、コア12ではなく紙層30に直接塗布され得る。この変形例は、紙層30の両側に接着剤を塗ることになっている場合に好ましい場合がある。
【0021】
図9に示されるように、第1および第2のプリフォームシート32は、溶融した接着剤が結合ローラセット42のニップに存在する状態で、中心コア12と接触する。プリフォームシート32がスプール34上で搬送される際の向きは、各々の紙層30が中心コア12に向けられ、それぞれのグラファイト層26が外側を向いているようなものである。結合ローラ42は次にこれらの層をまとめて圧縮することによって、材料を厚みおよび/または密度の最終仕様に成形する。完成したガスケット材料10は結合ローラセット42を出て、シートに切断されるか、図9に示されるようコイル44上に保管され得るかのいずれか一方である。コイル44に供給されるガスケット材料は、図9Aに示されるもののように見える。
【0022】
未加工のガスケット材料10を完成ガスケットに変えるプロセスでは、切断、装飾またはさらなる作業が必要であり得る。たとえば、図4〜図6は、多層複合材料からなるヘッドガスケットの部分的な断面図を示す。この場合、慣例により、任意の燃焼室開口部の外周の周りにファイアリングホルダ48によって覆われるファイアリング46を設置することが必要であり、ファイアリングホルダ48は、ヘッドガスケット用途において必要に応じて、その端縁がグラファイト層26と重なり合って耐久性およびストッパ高さ調節を提供する。ガスケット材料10の他の使用法を用いて、内燃機関におけるシリンダヘッドを封止することを意図しないガスケットを製作することが可能であり、したがってファイアリング46およびホルダ48は省略され得ることが認識され得るであろう。同様に、ガスケット10を任意の好適な用途で用いることができるように、グロメットおよび他の特徴を含めてもよい。
【0023】
穿孔コア14と中心コア12との間に紙層30を導入することによって、紙層30は、横方向の剪断荷重がガスケット10の本体内に蓄積して最終的に流体漏れを引起さないように、すべり面を提供することができる。紙層30と中心コア12との間に塗布される接着剤の組成は、すべりが接着剤自体の内部で、接着剤と中心コア12との界面で、紙層30と穿孔コア14との界面で、または紙層30の本体の内部で起きてもよいようなものである。換言すれば、接着剤および/または紙層30および/または界面の降伏強度は、剪断荷重が深刻なレベルに高まる前に屈するような強度である。
【0024】
以上の発明は関連の法的基準に従って説明されたため、本説明は限定的ではなく例示的な性質のものである。開示された実施例に対する変形例および修正例が当業者にとって明らかになり得、本発明の範囲内に収まり得る。したがって、本発明に与えられる法的保護範囲は、以下の請求項を検討することによってのみ決定され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液密シールを完成させるために嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットであって、
互いに向い合う側を有する中心コア層と、
前記中心コアの両側に配置された1対の穿孔コア層とを備え、前記穿孔コアの各々は、前記中心コアの方を向く近位面および前記中心コアと反対の方を向く遠位面を有し、前記ガスケットはさらに、
1対の外側グラファイト層を備え、前記グラファイト層の各々は、前記穿孔コアのうちのそれぞれ1つの前記遠位面に機械的に噛み合っており、前記ガスケットはさらに、
1対の紙層を備え、前記紙層の各々は、前記穿孔コアのうちのそれぞれ1つと前記中心コアとの間に位置し、前記紙層の各々は、それぞれの前記穿孔コアの前記近位面に機械的に噛み合っており、かつ前記中心コアに取付けられているため、前記紙層は、前記ガスケットの使用時に前記穿孔コアと前記中心コアとの相対的な動的すべりを促進する、ガスケット。
【請求項2】
前記穿孔コアは互いに実質的に同一である、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記穿孔コアの各々は、自身の前記遠位面から延在する複数の外向きタング、および前記近位面から延在する複数の内向きタングを含む、請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記グラファイト層は、全体的に等しく均一な厚みを有し、前記中心コアに対する前記外向きタングの直交突起部は、グラファイト層の前記厚みよりも小さいか前記厚みと等しい、請求項3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記紙層は、全体的に等しく均一な厚みを有し、前記中心コアに対する前記内向きタングの直交突起部は、紙層の前記厚みよりも小さいか前記厚みと等しい、請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記紙層の前記厚みは、前記グラファイト層の前記厚みよりも小さい、請求項5に記載のガスケット。
【請求項7】
前記中心コアに対する前記外向きタングの直交突起部は、紙層の前記厚みよりも大きい、請求項5に記載のガスケット。
【請求項8】
少なくとも2つの隣接する外向きタングと内向きタングとの間の間隙をさらに備える、請求項1に記載のガスケット。
【請求項9】
前記紙層の各々と前記中心コアとの間に位置する接着剤をさらに備える、請求項1に記載のガスケット。
【請求項10】
前記中心コアは、実質的に金属製の材料から作製される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項11】
前記穿孔コアは、実質的に金属製の材料から作製される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項12】
液密シールを完成させるために嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットであって、
互いに向い合う側を有する金属中心コア層と、
前記中心コアの両側に配置された1対の実質的に同一の穿孔金属コア層とを備え、前記穿孔コアの各々は、前記中心コアの方を向く近位面および前記中心コアと反対の方を向く遠位面を有し、前記穿孔コアの各々は、前記遠位面から延在する複数の外向きタングおよび前記近位面から延在する複数の内向きタングを含み、前記ガスケットはさらに、
全体的に等しく均一の厚みを有する1対の外側グラファイト層を備え、前記グラファイト層の各々は、前記穿孔コアのうちのそれぞれ1つの前記遠位面に機械的に噛み合っており、前記ガスケットはさらに、
前記グラファイト層の前記厚みよりも小さい全体的に等しく均一な厚みを有する1対の紙層を備え、前記紙層の各々は、前記穿孔コアのうちのそれぞれ1つと前記中心コアとの間に位置しており、前記紙層の各々は、それぞれの前記穿孔コアの前記近位面に機械的に噛み合っており、かつ前記中心コアに接着剤で接合される、ガスケット。
【請求項13】
液密シールを完成させるために嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットを形成するための方法であって、
a) 第1のプリフォームシートを製作するステップを備え、当該ステップは、
1) 近位面および遠位面を有する穿孔コア層を設けるステップと、
2) 外側グラファイト層を設けるステップと、
3) グラファイト層を穿孔コアの遠位面に機械的に噛み合せるステップと、
4) 紙層を設けるステップと、
5) 紙層を穿孔コアの近位面に機械的に噛み合せるステップとを含み、前記方法はさらに、
b) 前記ステップa)1)〜a)5)に従って第2のプリフォームシートを製作するステップと、
c) 互いに向い合う側を有する中心コア層を設けるステップと、
d) 第1のプリフォームシートの紙層を中心コアの一方側に接合させるステップと、
e) 第2のプリフォームシートの紙層を中心コアの反対側に接合させることによって、第1のプリフォームシートおよび第2のプリフォームシートの紙層とともに、中心コアを第1のプリフォームシートと第2のプリフォームシートとの間に挟むステップとを備える、方法。
【請求項14】
形成された多層複合ガスケットを最終の厚みおよび/または密度に圧延圧縮するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
穿孔コア層を設ける前記ステップは、遠位面から延在する複数の外向きタングおよび近位面から延在する複数の内向きタングを圧延パンチするステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
グラファイト層を機械的に噛み合せる前記ステップは、外向きタングをグラファイト層に強制的に嵌めるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
紙層を機械的に噛み合せる前記ステップは、内向きタングを紙層に強制的に嵌めるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
第1および第2のプリフォームシートの紙層を接合させる前記ステップは、中心コアおよび紙層の少なくとも一方に接着剤を塗布するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
接着剤を塗布する前記ステップは、中心コイルとともに接着剤を加熱するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1および第2のプリフォームシートを製作する前記ステップは、圧延圧縮ステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項1】
液密シールを完成させるために嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットであって、
互いに向い合う側を有する中心コア層と、
前記中心コアの両側に配置された1対の穿孔コア層とを備え、前記穿孔コアの各々は、前記中心コアの方を向く近位面および前記中心コアと反対の方を向く遠位面を有し、前記ガスケットはさらに、
1対の外側グラファイト層を備え、前記グラファイト層の各々は、前記穿孔コアのうちのそれぞれ1つの前記遠位面に機械的に噛み合っており、前記ガスケットはさらに、
1対の紙層を備え、前記紙層の各々は、前記穿孔コアのうちのそれぞれ1つと前記中心コアとの間に位置し、前記紙層の各々は、それぞれの前記穿孔コアの前記近位面に機械的に噛み合っており、かつ前記中心コアに取付けられているため、前記紙層は、前記ガスケットの使用時に前記穿孔コアと前記中心コアとの相対的な動的すべりを促進する、ガスケット。
【請求項2】
前記穿孔コアは互いに実質的に同一である、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記穿孔コアの各々は、自身の前記遠位面から延在する複数の外向きタング、および前記近位面から延在する複数の内向きタングを含む、請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記グラファイト層は、全体的に等しく均一な厚みを有し、前記中心コアに対する前記外向きタングの直交突起部は、グラファイト層の前記厚みよりも小さいか前記厚みと等しい、請求項3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記紙層は、全体的に等しく均一な厚みを有し、前記中心コアに対する前記内向きタングの直交突起部は、紙層の前記厚みよりも小さいか前記厚みと等しい、請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記紙層の前記厚みは、前記グラファイト層の前記厚みよりも小さい、請求項5に記載のガスケット。
【請求項7】
前記中心コアに対する前記外向きタングの直交突起部は、紙層の前記厚みよりも大きい、請求項5に記載のガスケット。
【請求項8】
少なくとも2つの隣接する外向きタングと内向きタングとの間の間隙をさらに備える、請求項1に記載のガスケット。
【請求項9】
前記紙層の各々と前記中心コアとの間に位置する接着剤をさらに備える、請求項1に記載のガスケット。
【請求項10】
前記中心コアは、実質的に金属製の材料から作製される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項11】
前記穿孔コアは、実質的に金属製の材料から作製される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項12】
液密シールを完成させるために嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットであって、
互いに向い合う側を有する金属中心コア層と、
前記中心コアの両側に配置された1対の実質的に同一の穿孔金属コア層とを備え、前記穿孔コアの各々は、前記中心コアの方を向く近位面および前記中心コアと反対の方を向く遠位面を有し、前記穿孔コアの各々は、前記遠位面から延在する複数の外向きタングおよび前記近位面から延在する複数の内向きタングを含み、前記ガスケットはさらに、
全体的に等しく均一の厚みを有する1対の外側グラファイト層を備え、前記グラファイト層の各々は、前記穿孔コアのうちのそれぞれ1つの前記遠位面に機械的に噛み合っており、前記ガスケットはさらに、
前記グラファイト層の前記厚みよりも小さい全体的に等しく均一な厚みを有する1対の紙層を備え、前記紙層の各々は、前記穿孔コアのうちのそれぞれ1つと前記中心コアとの間に位置しており、前記紙層の各々は、それぞれの前記穿孔コアの前記近位面に機械的に噛み合っており、かつ前記中心コアに接着剤で接合される、ガスケット。
【請求項13】
液密シールを完成させるために嵌め合せ部材同士の間で締付けられる種類の多層複合ガスケットを形成するための方法であって、
a) 第1のプリフォームシートを製作するステップを備え、当該ステップは、
1) 近位面および遠位面を有する穿孔コア層を設けるステップと、
2) 外側グラファイト層を設けるステップと、
3) グラファイト層を穿孔コアの遠位面に機械的に噛み合せるステップと、
4) 紙層を設けるステップと、
5) 紙層を穿孔コアの近位面に機械的に噛み合せるステップとを含み、前記方法はさらに、
b) 前記ステップa)1)〜a)5)に従って第2のプリフォームシートを製作するステップと、
c) 互いに向い合う側を有する中心コア層を設けるステップと、
d) 第1のプリフォームシートの紙層を中心コアの一方側に接合させるステップと、
e) 第2のプリフォームシートの紙層を中心コアの反対側に接合させることによって、第1のプリフォームシートおよび第2のプリフォームシートの紙層とともに、中心コアを第1のプリフォームシートと第2のプリフォームシートとの間に挟むステップとを備える、方法。
【請求項14】
形成された多層複合ガスケットを最終の厚みおよび/または密度に圧延圧縮するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
穿孔コア層を設ける前記ステップは、遠位面から延在する複数の外向きタングおよび近位面から延在する複数の内向きタングを圧延パンチするステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
グラファイト層を機械的に噛み合せる前記ステップは、外向きタングをグラファイト層に強制的に嵌めるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
紙層を機械的に噛み合せる前記ステップは、内向きタングを紙層に強制的に嵌めるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
第1および第2のプリフォームシートの紙層を接合させる前記ステップは、中心コアおよび紙層の少なくとも一方に接着剤を塗布するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
接着剤を塗布する前記ステップは、中心コイルとともに接着剤を加熱するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1および第2のプリフォームシートを製作する前記ステップは、圧延圧縮ステップを含む、請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図9A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図9A】
【公表番号】特表2012−518119(P2012−518119A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550167(P2011−550167)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/023017
【国際公開番号】WO2010/093542
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/023017
【国際公開番号】WO2010/093542
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】
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