説明

多層配線基板

【課題】発光素子を実装する多層配線基板の従来技術では、表面絶縁層に高反射率の材料を選定した場合、抗折強度が低くなるので、多層配線基板にクラックが発生する虞がより高くなると言う課題があった。
【解決手段】複数の絶縁層を積層した積層体と、積層体内に設けられた複数の導電ビアと、積層体の一方の主面側に形成され、発光素子が実装される実装部と、積層体の他方の主面側に形成された配線部とを備えた多層配線基板において、積層体の一方の主面側の表面絶縁層と積層体の他方の主面側の裏面絶縁層とが同じ材質の絶縁層であり、積層体の内層の内、少なくとも一つが内部絶縁層であり、表面絶縁層及び前記裏面絶縁層が、内部絶縁層より抗折強度が大きいことを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子が実装される多層配線基板に係り、特に、焼成の際に発生するクラックを防止できる多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の発光素子を用いた発光装置が、テレビ等のバックライトやプロジェクタ等の光源、或いは照明用に用いられている。しかしながら、発光素子の高輝度化に伴い、発光素子から発生する熱も増加しており、発光素子の輝度の低下をなくす為には、このような熱を発光装置外に速やかに放出する基板が必要となった。また、発光素子から放射された光を均一且つ効率よく外部に放出させるためには反射率の高い基板も必要となってきた。
【0003】
従来から配線基板の絶縁基体に用いられてきたアルミナ材料では、熱伝導率が約20W/m・Kと低いことから、それに代わるものとして高い熱伝導率を有する窒化アルミニウムが注目され始めた。しかし、窒化アルミニウムは原料コスト高や、難焼成性のため高温での焼成が必要であり、プロセスコストが高く、また、窒化アルミニウムは、透光性があり、且つ有色であるために、発光素子から放射された光が透過したり、吸収されたりするので、発光素子から放射された光を所定の方向に効率よく放出できないという問題があった。
【0004】
このため、複数の絶縁層と複数のビアと配線とを組み合わせた多層配線基板を用いた従来技術がある。特許文献1では、図6に示されるように、良放熱性及び高反射性を兼ね備えた配線基板800が提案されている。図6に示される配線基板800は、第一の絶縁層801a及び第一の絶縁層801bに狭持された第二の絶縁層803とから形成される絶縁基板805と、発光素子829との接続端子807と、外部電極端子809と、絶縁基板805を貫通して設けられ、接続端子807と外部電極端子809とを接続する貫通導体811とから構成されている。
【0005】
そして、発光素子829側の第一の絶縁層801aに、熱伝導率30W/m・K以上と、放熱性の良い基材である、MgOを主結晶相とするMgO質焼成体を用いているので、発光素子829からの発熱を速やかに放出できるとしている。また、熱伝導率30W/m・K以下と、放熱性の悪い基材であるが、第二の絶縁層803として、アルミナ質焼成体やムライト質焼成体を用いることで、非常に安価で、信頼性の高い第二の絶縁層803を形成できるとしている。さらに、第一の絶縁層801aの発光素子829側の主面を全反射率80%以上としたことで、発光素子829からの放射光が絶縁基板805に吸収されたり、あるいは絶縁基板805を透過することがないため、発光素子829の発光効率を格段に高くすることができるとしている。
【0006】
また、従来技術として、特許文献2では、図7に示されるように、放熱性を良好にするための放熱用ビアホール導体909を備えた多層回路基板900が提案されている。図7(a)に示される多層回路基板900は、複数の絶縁体層901a〜901hが積層されて成る積層体901と、電子部品素子905と接合されたダイアタッチ導体膜941と、ダイアタッチ導体膜941に接合し、且つ積層体901の厚み方向に延出するように形成された放熱用ビアホール導体909と、内部配線層902と、回路形成用ビアホール導体903とから構成されている。
【0007】
そして、電子部品素子905からの発熱をダイアタッチ導体膜941から絶縁層内に埋め込まれた放熱用ビアホール導体909に伝達することにより、放熱性を向上させているとしている。特に、図7(b)に示されるように、放熱用ビアホール導体909の平面形状が、略放射線状を呈しているため、水平方向に熱が伝達する経路が広がり、多層回路基板900の放熱能力が著しく向上するとしている。さらに、放熱用ビアホ−ル導体909は、水平方向においてダイアタッチ導体膜941が形成される面の一部にしか形成されないため、放熱用ビアホ−ル導体909を形成しても、焼成時にデラミネーション、クラックなどの内部欠陥が発生することはないとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−66631号公報
【特許文献2】特開2003−347746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の従来例1では、表層に、熱伝導率が良く高反射率である第一の絶縁層801を用いるとしているが、高反射率と高抗折強度の双方が充分に高い材料は、現時点では見つかっておらず、第一の絶縁層801の材料には、第二の絶縁層803より抗折強度の低い材料を使用している。このため、焼成の際に、各材料の収縮差により、抗折強度の低い第一の絶縁層801にクラック(ひび割れ)が発生する虞がより高くなる。
【0010】
また、特許文献2の従来例2では、大きな放熱用ビアホール導体909を絶縁層内に埋め込んでいるので、放熱用ビアホール導体909の大きさや多層回路基板900に占める面積及び体積の割合、あるいはダイアタッチ導体膜941、内部配線層902、回路形成用ビアホール導体903等のサイズや配置を考慮しなければいけない。そして、考慮をしない場合、焼成の際に、各材料の収縮差により、特に、放熱用ビアホール導体909が埋め込まれた表面側の絶縁体層(901a、901b)近傍にクラック(ひび割れ)が発生する虞がある。また、セラミック成分とガラス成分から成る絶縁体層901aの反射率には言及されていないが、高反射率と高抗折強度の双方が充分に高い材料は、現時点では見つかっておらず、絶縁体層901aに高反射率の材料を選定した場合、抗折強度が低くなるので、よりクラック(ひび割れ)が発生する虞がより高くなる。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するもので、焼成の際のクラックの発生を防止する多層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、本発明の請求項1による多層配線基板は、複数の絶縁層を積層した積層体と、前記積層体内に設けられた複数の導電ビアと、前記積層体の一方の主面側に形成され、発光素子が実装される実装部と、前記積層体の他方の主面側に形成された配線部とを備えた多層配線基板において、前記積層体の一方の主面側の表面絶縁層と前記積層体の他方の主面側の裏面絶縁層とが同じ材質の絶縁層であり、前記積層体の内層の内、少なくとも一つが内部絶縁層であり、前記表面絶縁層及び前記裏面絶縁層が、前記内部絶縁層より抗折強度が大きいことを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項2による多層配線基板は、前記積層体の前記絶縁層のそれぞれは、厚み方向の中央を挟んで、同一材料の絶縁層が対称に配置されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項3による多層配線基板は、前記表面絶縁層及び前記裏面絶縁層は、前記内部絶縁層より熱膨張率が低いことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項4による多層配線基板は、前記表面絶縁層及び前記裏面絶縁層は、アルミナ及びシリカを含有する低温焼成絶縁層であり、前記内部絶縁層より前記発光素子の光の透過率が高く、前記内部絶縁層は、アルミナ、ジルコニア及びシリカを含有する低温焼成絶縁層であり、前記表面絶縁層より前記発光素子の光の反射率が高いことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項5による多層配線基板は、前記実装部には、放熱体が設けられ、前記表面絶縁層には、前記放熱体と接続される複数の導電ビアからなる第1導電ビア群が設けられ、前記内部絶縁層には、前記複数の導電ビアと接続された良熱伝導ビアが設けられ、前記裏面絶縁層には、前記良熱伝導ビアと接続される複数の導電ビアからなる第2導電ビア群が設けられ、前記第2導電ビア群のいくつかは、前記積層体の他方の主面側に形成された前記配線部に接続していることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項6による多層配線基板は、前記内部絶縁層は、複数の層から形成され、該複数の層に設けられた複数の前記良熱伝導ビアの内、平面視して、前記積層体の他方の主面側の前記良熱伝導ビアの占有面積が、前記積層体の一方の主面側の前記良熱伝導ビアの占有面積より広く、前記第1導電ビア群は、平面視して、前記第2導電ビア群の占有面積よりも狭い占有面積であることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項7による多層配線基板は、前記裏面絶縁層は、複数の層から形成され、該複数の層に設けられた前記第2導電ビア群の内の一部は、内層側のみに形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、多層配線基板は、抗折強度の大きい表面絶縁層及び裏面絶縁層が内部絶縁層を挟み込んだ構造をしているので、表面絶縁層及び裏面絶縁層が内部絶縁層の伸縮を拘束するようになる。この事により、焼成時における各材料の収縮率の差によって生じる応力を、抗折強度の大きい表面絶縁層及び裏面絶縁層が受けることになるので、多層配線基板にクラックが発生することを防止できる。
【0020】
請求項2の発明によれば、表面絶縁層、内部絶縁層及び裏面絶縁層を含んだ積層体が、厚み方向の中央を挟んで同一材料の絶縁層が対称に配置されているので、焼成の際に生じる反りや熱膨張差による反りを防止できるとともに、焼成時における各材料の収縮率の差によって生じる応力が積層体に均等にかかるようになる。この事により、多層配線基板にクラックが発生することをより確実に防止できる。
【0021】
請求項3の発明によれば、表面絶縁層及び裏面絶縁層は、内部絶縁層より熱膨張率が低いので、発光素子の発光による熱が伝導し多層配線基板が加熱された際、それぞれの絶縁層の熱膨張差のため、表面絶縁層及び裏面絶縁層には、膜面方向に引っ張り応力が加わり、内部絶縁層には、膜面方向に圧縮応力が加わるようになる。この事により、抗折強度の小さい内部絶縁層に、引張り方向や曲げ方向の応力が加わる場合と比較して、多層配線基板にクラックが発生しにくくなる。
【0022】
請求項4の発明によれば、表面絶縁層は内部絶縁層より発光素子の光の透過率が高く、内部絶縁層は表面絶縁層より発光素子の光の反射率が高いので、発光素子から放射した光の一部で、表面絶縁層を透過した光は、反射率の高い内部絶縁層に反射して発光素子側に戻される。この事により、多層配線基板を高反射率の基板とすることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、良熱伝導ビアより小さい占有体積の第1導電ビア群及び第2導電ビア群を表面絶縁層及び裏面絶縁層に設けたので、表面絶縁層及び裏面絶縁層の抗折強度の大幅な低下を防止しすることができる。この事により、多層配線基板にクラックが発生することを防止できるとともに、内部絶縁層に設けられた良熱伝導ビアにより、多層配線基板の放熱性の向上を図ることができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、平面視して、他方の主面側の良熱伝導ビアの占有面積が、一方の主面側の良熱伝導ビアの占有面積より広くなっているとともに、第1導電ビア群は、第2導電ビア群の占有面積よりも狭い占有面積になっているので、放熱に関わる第1導電ビア群、第2導電ビア群及び良熱伝導ビアの伝熱経路を、略放射線状に形成することができる。この事により、水平方向に熱が伝達する経路がより広がり、多層配線基板の放熱能力が著しく向上するとともに、放熱に関わる導電ビアの使用量を抑えて多層配線基板の抗折強度の低下を防ぐことができ、多層配線基板にクラックが発生することを防止できる。また、第1導電ビア群の占有面積が狭いので、発光素子から放射し表面絶縁層に入射した一部の光が第1導電ビア群で乱反射せずに、表面絶縁層をより多く透過することができる。この事により、表面絶縁層を透過した光を、反射率の高い内部絶縁層で確実に反射して発光素子側に戻すことができ、多層配線基板を高反射率の基板とすることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、第2導電ビア群の内の一部は、内層側のみに形成されているので、良熱伝導ビアにつながった第2導電ビア群を配線部の一方とのみ接続させることができるとともに、配線部の一方と電気的につなぐことができない配線部の他方の電極面積を広くすることができる。そして、良熱伝導ビアを伝導した熱は、第2導電ビア群から配線部の一方を介して放熱されるとともに、裏面絶縁層の外層から配線部の他方を介して放熱される。これにより、放熱に寄与する配線部の一方の電極面積と配線部の他方の電極面積をバランス良く設けることができ、それぞれの電極面積を広くすることができる。この事により、良熱伝導ビアからの充分な放熱を確保でき、多層配線基板による放熱性の向上を図ることができる。
【0026】
したがって、本発明の多層配線基板は、焼成の際のクラックの発生を防止する多層配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の多層配線基板を説明する構成図であって、図1(a)は、上面図で、図1(b)は、図1(a)に示すI-I線における断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の多層線基板を説明する上面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の多層線基板を説明する裏面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の多層配線基板を説明する構成図であって、図4(a)は、その上面図で、図4(b)は、図4(a)に示すIV-IV線における断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の多層配線基板の変形例3を説明する図であって、図1(a)は、多層配線基板の上面図で、図5(b)は、図5(a)に示すV-V線における断面図である。
【図6】従来例1における配線基板を説明する断面図である。
【図7】従来例2における多層回路基板を説明する図であって、図7(a)は、断面図で、図7(b)は、上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の多層配線基板101を説明する構成図であって、図1(a)は、上面図で、図1(b)は、図1(a)に示すI-I線における断面図である。なお、説明を容易にするため、図1(a)は、裏面側にある絶縁層の一部を省略して示している。
【0030】
本発明の第1実施形態の多層配線基板101は、図1に示すように、複数の絶縁層を積層した積層体1と、積層体1内に設けられた複数の導電ビア4と、発光素子L7が実装される実装部7と、配線部8とを備えて構成される。
【0031】
実装部7は、図1(a)に示すように、積層体1の一方の主面P1側に、放熱体17と、ランドA端子57と、ランドB端子77とが形成され、放熱体17の部分には、発光素子L7が実装される。そして、発光素子L7のそれぞれの取り出し端子と、ランドA端子57及びランドB端子77へとの接続は、図1(b)に示すように、ワイヤーボンドWBにより行われる。
【0032】
積層体1は、図1(b)に示すように、複数の絶縁層を積層させて形成しており、積層体1の一方の主面P1側の表面絶縁層11と、積層体1の他方の主面P3側の裏面絶縁層13と、内部絶縁層12とを備えて構成されている。
【0033】
表面絶縁層11は、35〜55wt%のアルミナ(Al)及び22〜35wt%シリカ(SiO)を含有し、5〜10wt%の酸化ホウ素(B)とその他の添加元素を含んだセラミックグリーンシートを焼成することによって得られる。そして、表面絶縁層11は、表面絶縁層11A及び表面絶縁層11Bの2層から構成され、厚さ40μm〜120μmで矩形シート状に形成されたセラミックグリーンシートを積層させて、960℃以下の低温で焼成することにより得られる。このセラミックグリーンシートは、通常のセラミックスの焼成温度(約1600℃程度)と比較して低温の焼成温度であるところが特徴で、いわゆるLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板に好適に用いられている。
【0034】
また、表面絶縁層11には、後述する複数の導電ビア4が貫通して埋め込まれている。そして、導電ビア4間の接続部には、Agなどの良導電性金属の内部ランド9が設けられ、導電ビア4間を導通させている。なお、図1(b)では、表面絶縁層11Aと表面絶縁層11Bを区別して示しているが、いずれも同一材料を焼成したので、実際には、それぞれの層間の区別が無くなる場合がある。
【0035】
裏面絶縁層13は、裏面絶縁層13A及び裏面絶縁層13Bの2層から構成され、表面絶縁層11と同じ材質のセラミックグリーンシートを積層させて、960℃以下の低温で焼成することにより得られる。また、表面絶縁層11と同様に、後述する複数の導電ビア4が貫通して埋め込まれて、Agなどの良導電性金属の内部ランド9で導電ビア4間を導通させている。
【0036】
内部絶縁層12は、30wt%以下のアルミナ(Al)、20〜40wt%のジルコニア(ZrO)及び22〜35wt%シリカ(SiO)を含有し、5〜10wt%の酸化ホウ素(B)とその他の添加元素を含んだセラミックグリーンシートを焼成することによって得られる。そして、内部絶縁層12は、内部絶縁層12A及び内部絶縁層12Bの2層から構成され、厚さ40μm〜120μmで矩形シート状に形成されたセラミックグリーンシートを積層させて、960℃以下の低温で焼成することにより得られる。このセラミックグリーンシートは、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13に用いられたセラミックグリーンシートと同様に、通常のセラミックスの焼成温度(約1600℃程度)と比較して低温の焼成温度であるところが特徴で、いわゆるLTCC基板に好適に用いられている。なお、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13と内部絶縁層12に用いたグリーンシートは、上述の部番の製品を選定したが、上述の部番の製品に限るものではない。
【0037】
また、内部絶縁層12には、後述する複数の導電ビア4が貫通して埋め込まれている。そして、導電ビア4間の接続部には、Agなどの良導電性金属の内部ランド9が設けられ、導電ビア4間を導通させている。なお、図1(b)では、内部絶縁層12Aと内部絶縁層12Bを区別して示しているが、いずれも同一材料を焼成したので、実際には、それぞれの層間の区別が無くなる場合がある。
【0038】
このように焼成した積層体1は、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が、内部絶縁層12より抗折強度が大きくなっている。具体的には、40mm×12mm×1mmの形状の試験片で、3点曲げによる破壊荷重測定により確認したところ、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13の抗折強度は約300Mpa、内部絶縁層12の抗折強度は約150Mpaであった。これによれば、多層配線基板101は、抗折強度の大きい表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が内部絶縁層12を挟み込んだ構造をしているので、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が内部絶縁層12の伸縮を拘束するようになる。この事により、焼成時における各材料の収縮率の差によって生じる応力を、抗折強度の大きい表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が受けることになるので、多層配線基板101にクラックが発生することを防止できる。
【0039】
また、多層配線基板101は、積層体1の絶縁層のそれぞれは、厚み方向の中央を挟んで、同一材料の絶縁層が対称に配置されている。つまり、図1(b)に示すように、内部絶縁層12A及び表面絶縁層11B及び表面絶縁層11Aと、内部絶縁層12B及び裏面絶縁層13A及び裏面絶縁層13Bとが、内部絶縁層12Aと内部絶縁層12Bとの界面(厚み方向の中央にあたる)を挟んで、対称な材料組成で配置されている。
【0040】
これによれば、表面絶縁層11、内部絶縁層12及び裏面絶縁層13を含んだ積層体1が、厚み方向の中央を挟んで、同一材料の絶縁層が対称に配置されているので、焼成の際に生じる反りや熱膨張差による反りを防止できるとともに、焼成時における各材料の収縮率の差によって生じる応力が積層体1に均等にかかるようになる。この事により、多層配線基板101にクラックが発生することをより確実に防止できる。
【0041】
また、多層配線基板101は、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が、内部絶縁層12より熱膨張率が低くなっている。具体的には、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13の熱膨張率は5.2×10−6/℃、内部絶縁層12の熱膨張率は5.8×10−6/℃である。これによれば、発光素子L7の発光による熱が伝導し多層配線基板101が加熱された際、それぞれの絶縁層の熱膨張差のため、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13には、図1(b)に示す膜面方向X1に引っ張り応力が加わり、内部絶縁層12には、膜面方向X1に圧縮応力が加わるようになる。この事により、抗折強度の小さい内部絶縁層12に、引張り方向や曲げ方向の応力が加わる場合と比較して、多層配線基板101にクラックが発生しにくくなる。
【0042】
また、多層配線基板101は、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が、内部絶縁層12より発光素子L7の光の透過率が高く、内部絶縁層12は、表面絶縁層11より発光素子L7の光の反射率が高くなっている。具体的には、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13の反射率は約85%で、内部絶縁層12の反射率は約92%である。また、反射されない光は、各絶縁層がガラスを含んだ材質であることと100μm以下と厚さが薄いことにより、各絶縁層中を殆ど透過することになる。なお、上記の反射率は、各絶縁層の膜厚が400μmで、波長が450nmの光の際の測定データである。
【0043】
これによれば、発光素子L7から放射した光の一部で、表面絶縁層11を透過した光は、反射率の高い内部絶縁層12に反射して発光素子L7側に戻される。この事により、多層配線基板101を高反射率の基板とすることができる。
【0044】
次に、積層体1内に設けられた複数の導電ビア4は、図1に示すように、第1導電ビア群14と、良熱伝導ビア15と、第2導電ビア群16とから主に構成され、他にA端子導電ビア59とB端子導電ビア79とを備えて構成される。
【0045】
第1導電ビア群14は、表面絶縁層11を貫通して設けられ、放熱体17と接続されるとともに、良熱伝導ビア15とも接続されている。各々の導電ビアは、円柱状の形状で作製されており、その径が50〜200μm程度、その高さが40μm〜120μm程度である。また、表面絶縁層11Aの導電ビアと表面絶縁層11Bの導電ビアとの接続や、表面絶縁層11Bの導電ビアと良熱伝導ビア15との接続を良好にするため、表面絶縁層11Aの導電ビアと表面絶縁層11Bの導電ビアとの間や第1導電ビア群14と良熱伝導ビア15との間には、内部ランド9が設けられている。
【0046】
良熱伝導ビア15は、内部絶縁層12を貫通して設けられ、第2導電ビア群16と接続されている。良熱伝導ビア15は、内部絶縁層12Aと内部絶縁層12Aとにそれぞれ、円柱状の形状で作製されており、その径が数百μm〜数mm程度、その深さが40μm〜120μm程度である。そして、平面視すると、第1導電ビア群14の占有面積より良熱伝導ビア15の占有面積の方が広くなっている。また、内部絶縁層12Aの良熱伝導ビア15Aと内部絶縁層12Bの良熱伝導ビア15Bとの接続や、良熱伝導ビア15Bと第2導電ビア群16との接続を良好にするため、内部絶縁層12Aの良熱伝導ビア15Aと内部絶縁層12Bの良熱伝導ビア15Bとの間や良熱伝導ビア15Bと第2導電ビア群16との間には、内部ランド9が設けられている。
【0047】
第2導電ビア群16のいくつかは、裏面絶縁層13を貫通して設けられ、第2導電ビア群16のいくつかは、積層体1の他方の主面P3側に形成された配線部8に接続している。第2導電ビア群16の各々の導電ビアは、第1導電ビア群14の導電ビアと同様に、円柱状の形状で作製されている。また、裏面絶縁層13Aの導電ビアと裏面絶縁層13Bの導電ビアとの接続を良好にするため、裏面絶縁層13Aの導電ビアと裏面絶縁層13Bの導電ビアとの間には、内部ランド9が設けられている。
【0048】
A端子導電ビア59及びB端子導電ビア79は、積層体1を貫通して設けられ、発光素子L7に電力を供給するため、ランドA端子57と配線部8の他方と、ランドB端子77と配線部8の一方とを電気的に接続している。A端子導電ビア59及びB端子導電ビア79の各々の導電ビアは、第1導電ビア群14及び第2導電ビア群16の導電ビアと同様に、円柱状の形状で作製されている。
【0049】
上記複数の導電ビア4の作製は、Agなどの良導電性金属を含有した導電ペーストを各絶縁層の孔に充填して、セラミックグリーンシートとともに焼成することによって得られる。なお、第1導電ビア群14、良熱伝導ビア15及び第2導電ビア群16は、円柱形状であるが、角柱形状であっても良い。また、良導電性金属として、Agを好適に用いたが、Ag合金や、その他の金属、例えばCu、Sn等であっても良い。また、良熱伝導ビア15に、良熱伝導材のAgを好適に用いたが、良熱伝導材であれば、Agに限らず、また、金属で無くても良い。
【0050】
このように構成された多層配線基板101は、良熱伝導ビア15より小さい占有体積の第1導電ビア群14及び第2導電ビア群16を表面絶縁層11及び裏面絶縁層13に設けたので、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13の抗折強度の大幅な低下を防止しすることができる。この事により、多層配線基板101にクラックが発生することを防止できるとともに、内部絶縁層12に設けられた良熱伝導ビア15により、多層配線基板101の放熱性の向上を図ることができる。
【0051】
図2は、本発明の第1実施形態の多層配線基板101を説明する平面図であって、図2(a)は、表面絶縁層11B、内部絶縁層12A及び内部絶縁層12Bのみを切り出して示していて、図2(b)は、内部絶縁層12B、裏面絶縁層13A及び裏面絶縁層13Bのみを切り出して示している。
【0052】
本発明の多層配線基板101は、図1及び図2(a)に示すように、平面視して、積層体1の他方の主面P3側の良熱伝導ビア15Bの占有面積が、積層体1の一方の主面P1側の良熱伝導ビア15Aの占有面積より広くなっている。これにより、放熱に関わる良熱伝導ビア15の平面形状が、略放射線状を呈しているため、水平方向に熱が伝達する経路が広がり、多層配線基板101の放熱能力が向上する。
【0053】
また、図2に示すように、第1導電ビア群14は、第2導電ビア群16の占有面積よりも狭い占有面積になっている。これにより、放熱に関わる第1導電ビア群14及び第2導電ビア群16を加えた良熱伝導ビア15の伝熱経路が、略放射線状を呈しているため、水平方向に熱が伝達する経路がより広がり、多層配線基板101の放熱能力が著しく向上する。
【0054】
さらに、放熱に関わる導電ビア4の使用量を抑えて、放熱能力を向上させることができるので、多層配線基板101の抗折強度の低下を防ぐことができ、多層配線基板101にクラックが発生することを防止できる。
【0055】
また、第1導電ビア群14の占有面積が狭いので、発光素子L7から放射し表面絶縁層11に入射した一部の光が、第1導電ビア群14で乱反射せずに、表面絶縁層11をより多く透過することができる。この事により、表面絶縁層11を透過した光を、反射率の高い内部絶縁層12で確実に反射して発光素子L7側に戻すことができ、多層配線基板101を高反射率の基板とすることができる。
【0056】
このように構成された多層配線基板101は、平面視して、他方の主面P3側の良熱伝導ビア15Bの占有面積が、一方の主面P1側の良熱伝導ビア15Aの占有面積より広くなっているとともに、第1導電ビア群14は、第2導電ビア群16の占有面積よりも狭い占有面積になっているので、放熱に関わる第1導電ビア群14、第2導電ビア群16及び良熱伝導ビア15の伝熱経路を、略放射線状に形成することができる。この事により、水平方向に熱が伝達する経路がより広がり、多層配線基板101の放熱能力が著しく向上するとともに、放熱に関わる導電ビア4の使用量を抑えて多層配線基板101の抗折強度の低下を防ぐことができ、多層配線基板101にクラックが発生することを防止できる。
【0057】
また、第1導電ビア群14の占有面積が狭いので、発光素子L7から放射し表面絶縁層11に入射した一部の光が、第1導電ビア群14で乱反射せずに、表面絶縁層11をより多く透過することができる。この事により、表面絶縁層11を透過した光を、反射率の高い内部絶縁層12で確実に反射して発光素子L7側に戻すことができ、多層配線基板101を高反射率の基板とすることができる。
【0058】
図3は、本発明の第1実施形態の多層配線基板101を説明する裏面図であって、裏面絶縁層13B、裏面絶縁層13A及び内部絶縁層12Bのみを切り出して示している。
【0059】
配線部8は、図3に示すように、積層体1の他方の主面P3側に形成され、プリント配線板(PCB)等にはんだ付けして接続し、回路をつなげるための、配線A電極8A及び配線C電極8Cを備えている。また、配線A電極8A及び配線C電極8Cは、積層体1及び導電ビア4から伝導してきた熱を放熱する役割も担っている。
【0060】
また、図1(b)に示すように、配線A電極8Aには、A端子導電ビア59のみが接続しており、配線C電極8Cには、第2導電ビア群16のいくつかとB端子導電ビア79が接続している構成になっている。つまり、第2導電ビア群16は、その内の一部を内層側の絶縁層である裏面絶縁層13Aにのみに形成しており、その他のいくつかは、外層の絶縁層である裏面絶縁層13Bに形成している。このため、良熱伝導ビア15につながった第2導電ビア群16を配線部8の一方、すなわち、配線C電極8Cとのみ接続させることができるとともに、配線部8の一方と電気的につなぐことができない配線部8の他方、すなわち、配線A電極8Aの電極面積を広くすることができる。
【0061】
そして、良熱伝導ビア15を伝導した熱は、第2導電ビア群16から配線C電極8Cを介して放熱されるとともに、裏面絶縁層13Bから配線A電極8Aを介して放熱される。これにより、放熱に寄与する配線A電極8Aの電極面積と配線C電極8Cの電極面積をバランス良く設けることができ、それぞれの電極面積を広くすることができる。この事により、良熱伝導ビア15からの充分な放熱を確保でき、多層配線基板101による放熱性の向上を図ることができる。
【0062】
以上により、本発明の多層配線基板101は、抗折強度の大きい表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が内部絶縁層12を挟み込んだ構造をしているので、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が内部絶縁層12の伸縮を拘束するようになる。この事により、焼成時における各材料の収縮率の差によって生じる応力を、抗折強度の大きい表面絶縁層11及び裏面絶縁層13が受けることになるので、多層配線基板101にクラックが発生することを防止できる。
【0063】
また、表面絶縁層11、内部絶縁層12及び裏面絶縁層13を含んだ積層体1が、厚み方向の中央を挟んで、同一材料の絶縁層が対称に配置されているので、焼成の際に生じる反りや熱膨張差による反りを防止できるとともに、焼成時における各材料の収縮率の差によって生じる応力が積層体1に均等にかかるようになる。この事により、多層配線基板101にクラックが発生することをより確実に防止できる。
【0064】
また、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13は、内部絶縁層12より熱膨張率が低いので、発光素子L7の発光による熱が伝導し多層配線基板101が加熱された際、それぞれの絶縁層の熱膨張差のため、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13には、膜面方向X1に引っ張り応力が加わり、内部絶縁層12には、膜面方向X1に圧縮応力が加わるようになる。この事により、抗折強度の小さい内部絶縁層12に、引張り方向や曲げ方向の応力が加わる場合と比較して、多層配線基板101にクラックが発生しにくくなる。
【0065】
また、表面絶縁層11は内部絶縁層12より発光素子L7の光の透過率が高く、内部絶縁層12は表面絶縁層11より発光素子L7の光の反射率が高いので、発光素子L7から放射した光の一部で、表面絶縁層11を透過した光は、反射率の高い内部絶縁層12に反射して発光素子L7側に戻される。この事により、多層配線基板101を高反射率の基板とすることができる。
【0066】
また、良熱伝導ビア15より小さい占有体積の第1導電ビア群14及び第2導電ビア群16を表面絶縁層11及び裏面絶縁層13に設けたので、表面絶縁層11及び裏面絶縁層13の抗折強度の大幅な低下を防止しすることができる。この事により、多層配線基板101にクラックが発生することを防止できるとともに、内部絶縁層12に設けられた良熱伝導ビア15により、多層配線基板101の放熱性の向上を図ることができる。
【0067】
また、平面視して、他方の主面P3側の良熱伝導ビア15Bの占有面積が、一方の主面P1側の良熱伝導ビア15Aの占有面積より広くなっているとともに、第1導電ビア群14は、第2導電ビア群16の占有面積よりも狭い占有面積になっているので、放熱に関わる第1導電ビア群14、第2導電ビア群16及び良熱伝導ビア15の伝熱経路を、略放射線状に形成することができる。この事により、水平方向に熱が伝達する経路がより広がり、多層配線基板101の放熱能力が著しく向上するとともに、放熱に関わる導電ビア4の使用量を抑えて多層配線基板101の抗折強度の低下を防ぐことができ、多層配線基板101にクラックが発生することを防止できる。
【0068】
また、第1導電ビア群14の占有面積が狭いので、発光素子L7から放射し表面絶縁層11に入射した一部の光が、第1導電ビア群14で乱反射せずに、表面絶縁層11をより多く透過することができる。この事により、表面絶縁層11を透過した光を、反射率の高い内部絶縁層12で確実に反射して発光素子L7側に戻すことができ、多層配線基板101を高反射率の基板とすることができる。
【0069】
また、第2導電ビア群16の内の一部は、内層側の絶縁層である裏面絶縁層13Aにのみに形成されて、第2導電ビア群16の内のその他は、外層の絶縁層である裏面絶縁層13Bに形成されている。このため、良熱伝導ビア15につながった第2導電ビア群16を配線部8の一方、すなわち、配線C電極8Cとのみ接続させることができるとともに、配線部8の一方と電気的につなぐことができない配線部8の他方、すなわち、配線A電極8Aの電極面積を広くすることができる。
【0070】
そして、良熱伝導ビア15を伝導した熱は、第2導電ビア群16から配線C電極8Cを介して放熱されるとともに、裏面絶縁層13Bから配線A電極8Aを介して放熱される。これにより、放熱に寄与する配線A電極8Aの電極面積と配線C電極8Cの電極面積をバランス良く設けることができ、それぞれの電極面積を広くすることができる。この事により、良熱伝導ビア15からの充分な放熱を確保でき、多層配線基板101による放熱性の向上を図ることができる。
【0071】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態の多層配線基板102を説明する構成図であって、図4(a)は、その上面図で、図4(b)は、図4(a)に示すIV-IV線における断面図である。なお、説明を容易にするため、図4(a)は、裏面側にある配線部8を省略して示している。第2実施形態の多層配線基板102は、第1実施形態に対し、積層体2と導電ビア6と実装部27の構成が異なる。また、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0072】
本発明の第2実施形態の多層配線基板102は、図4に示すように、複数の絶縁層を積層した積層体2と、積層体2内に設けられた複数の導電ビア6と、発光素子L27が実装される実装部27と、配線部8とを備えて構成される。
【0073】
実装部27は、図4(a)に示すように、積層体2の一方の主面P1側に、放熱体37Aと放熱体37Bとが形成され、放熱体37Aと放熱体37Bの部分には、発光素子L27が実装される。発光素子L27の実装形態としてフリップチップタイプを用いており、第1実施形態で示したワイヤーボンディングのためのランドA端子及びランドB端子は設けられていないので、発光素子L27に設けられたバンプ(突起)により、放熱体37Aと放熱体37Bとに接続されている。
【0074】
積層体2は、図4(b)に示すように、複数の絶縁層を積層させて形成しており、積層体2の一方の主面P1側の表面絶縁層21と、積層体2の他方の主面P3側の裏面絶縁層23と、内部絶縁層22とを備えて構成されている。表面絶縁層21及び裏面絶縁層23は、第1実施形態と同じ材質のセラミックグリーンシートを用い、内部絶縁層22も、第1実施形態と同じ材質のセラミックグリーンシートを用いて、それぞれ積層させ、960℃以下の低温で焼成することにより得られる。
【0075】
積層体2内に設けられた複数の導電ビア6は、図4に示すように、第1導電ビア群24と、良熱伝導ビア25と、第2導電ビア群26とから構成される。第1実施形態で示した発光素子に電力を供給するためのA端子導電ビア及びB端子導電ビアは、設けられていないので、複数の導電ビア6を用いて発光素子L27に電力を供給する。
【0076】
第1導電ビア群24は、表面絶縁層21を貫通して設けられ、放熱体37A及び放熱体37Bと接続されるとともに、良熱伝導ビア25とも接続されている。各々の導電ビアは、円柱状の形状で作製されており、その径が50〜200μm程度、その深さが40μm〜120μm程度である。
【0077】
良熱伝導ビア25は、内部絶縁層22を貫通して設けられ、第2導電ビア群26と接続されている。良熱伝導ビア25は、方形状の形状で作製されており、その幅が100μm〜300μm程度、その長さが数百μm〜数mm程度、その深さが40μm〜120μm程度である。
【0078】
第2導電ビア群26は、裏面絶縁層23を貫通して設けられ、第2導電ビア群26のいくつかは、配線部8の配線A電極8Aに接続し、第2導電ビア群26の他のいくつかは、配線部8の配線C電極8Cに接続している構成になっている。第2導電ビア群26の各々の導電ビアは、第1導電ビア群24の導電ビアと同様に、円柱状の形状で作製されている。なお、第1実施形態で示した内部ランド9は設けられていない。
【0079】
このように焼成した積層体2は、表面絶縁層21及び裏面絶縁層23が、内部絶縁層22より抗折強度が大きくなっている。これによれば、多層配線基板102は、抗折強度の大きい表面絶縁層21及び裏面絶縁層23が内部絶縁層22を挟み込んだ構造をしているので、表面絶縁層21及び裏面絶縁層23が内部絶縁層22の伸縮を拘束するようになる。この事により、焼成時における各材料の収縮率の差によって生じる応力を、抗折強度の大きい表面絶縁層21及び裏面絶縁層23が受けることになるので、多層配線基板102にクラックが発生することを防止できる。
【0080】
また、多層配線基板102は、積層体2の絶縁層のそれぞれは、厚み方向の中央を挟んで、同一材料の絶縁層が対称に配置されている。つまり、図4(b)に示すように、表面絶縁層21と裏面絶縁層23とが、内部絶縁層22を挟んで、内部絶縁層22の中央部分(厚み方向の中央にあたる)にたいして、対称な材料組成で配置されている。
【0081】
これによれば、表面絶縁層21、内部絶縁層22及び裏面絶縁層23を含んだ積層体2が、厚み方向の中央を挟んで、同一材料の絶縁層が対称に配置されているので、焼成の際に生じる反りや熱膨張差による反りを防止できるとともに、焼成時における各材料の収縮率の差によって生じる応力が積層体2に均等にかかるようになる。この事により、多層配線基板102にクラックが発生することをより確実に防止できる。
【0082】
また、表面絶縁層21及び裏面絶縁層23は、内部絶縁層22より熱膨張率が低いので、発光素子L27の発光による熱が伝導し多層配線基板102が加熱された際、それぞれの絶縁層の熱膨張差のため、表面絶縁層21及び裏面絶縁層23には、膜面方向X1に引っ張り応力が加わり、内部絶縁層22には、膜面方向X1に圧縮応力が加わるようになる。この事により、抗折強度の小さい内部絶縁層22に、引張り方向や曲げ方向の応力が加わる場合と比較して、多層配線基板102にクラックが発生しにくくなる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0084】
<変形例1>
上記第1実施形態では、表面絶縁層11、裏面絶縁層13及び内部絶縁層12は、2層で作製され、上記第2実施形態では、表面絶縁層21、裏面絶縁層23及び内部絶縁層22は、1層で作製されが、3層以上で作製されていても良い。
【0085】
<変形例2>
上記第1実施形態では、積層体1の内層は、表面絶縁層11、裏面絶縁層13及び内部絶縁層12で構成されていたが、それ以外の他の絶縁層が入っても良い。但し、好ましくは、積層体1の絶縁層のそれぞれは、厚み方向の中央を挟んで、同一材料の絶縁層が対称に配置されるように、他の絶縁層を組み入れて構成した方が良い
【0086】
<変形例3>
図5は、本発明の第2実施形態の多層配線基板102の変形例3を説明する図であって、図5(a)は、多層配線基板103の上面図で、図5(b)は、図5(a)に示すV-V線における断面図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一構成については、同一符号を付している。
【0087】
変形例3の多層配線基板103は、図5に示すように、上記第2実施形態の表面絶縁層21側に、発光素子L27の周囲を囲む様に反射率の高い反射層R33を設けている。このため、発光素子L27から発光された光が、側面側に逃げるのを防ぎ、表面絶縁層21側や上方側に反射させて戻すことができる。この事により、多層配線基板103を高反射率の基板とすることができる。
【0088】
また、反射率の高い反射層R33は、反射率が約95%のセラミックグリーンシートを用い、穴加工がされたセラミックグリーンシートを積層体2の表面層に更に積層し、積層体2の焼成と同時に焼成することによって、容易に得ることができる。反射率が約95%のセラミックグリーンシートとして、例えば、15wt%以下のアルミナ(Al)、35〜55wt%のジルコニア(ZrO)及び22〜35wt%シリカ(SiO)を含有し、5〜10wt%の酸化ホウ素(B)とその他の添加元素を含んだセラミックグリーンシートを用いることもできる。なお、反射層R33は、必要に応じて複数積層しても良い。
【0089】
<変形例4>
上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、導電ビア4及び導電ビア6の一部に、円柱状の形状を用いたが、角柱状、円錐状等、その他の形状であっいても良い。
【0090】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1、2 積層体
11、11A、11B、21 表面絶縁層
12、12A、12B、22 内部絶縁層
13、13A、13B、23 裏面絶縁層
4、6 導電ビア
14、24 第1導電ビア群
15、15A、15B、25 良熱伝導ビア
16、26 第2導電ビア群
7、27 実装部
17、37A、37C 放熱体
8 配線部
P1 一方の主面
P3 他方の主面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層を積層した積層体と、前記積層体内に設けられた複数の導電ビアと、前記積層体の一方の主面側に形成され、発光素子が実装される実装部と、前記積層体の他方の主面側に形成された配線部とを備えた多層配線基板において、
前記積層体の一方の主面側の表面絶縁層と前記積層体の他方の主面側の裏面絶縁層とが同じ材質の絶縁層であり、前記積層体の内層の内、少なくとも一つが内部絶縁層であり、
前記表面絶縁層及び前記裏面絶縁層が、前記内部絶縁層より抗折強度が大きいことを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記積層体の前記絶縁層のそれぞれは、厚み方向の中央を挟んで、同一材料の絶縁層が対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記表面絶縁層及び前記裏面絶縁層は、前記内部絶縁層より熱膨張率が低いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記表面絶縁層及び前記裏面絶縁層は、アルミナ及びシリカを含有する低温焼成絶縁層であり、前記内部絶縁層より前記発光素子の光の透過率が高く、
前記内部絶縁層は、アルミナ、ジルコニア及びシリカを含有する低温焼成絶縁層であり、前記表面絶縁層より前記発光素子の光の反射率が高いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記実装部には、放熱体が設けられ、
前記表面絶縁層には、前記放熱体と接続される複数の導電ビアからなる第1導電ビア群が設けられ、
前記内部絶縁層には、前記複数の導電ビアと接続された良熱伝導ビアが設けられ、
前記裏面絶縁層には、前記良熱伝導ビアと接続される複数の導電ビアからなる第2導電ビア群が設けられ、前記第2導電ビア群のいくつかは、前記積層体の他方の主面側に形成された前記配線部に接続していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項6】
前記内部絶縁層は、複数の層から形成され、
該複数の層に設けられた複数の前記良熱伝導ビアの内、平面視して、前記積層体の他方の主面側の前記良熱伝導ビアの占有面積が、前記積層体の一方の主面側の前記良熱伝導ビアの占有面積より広く、
前記第1導電ビア群は、平面視して、前記第2導電ビア群の占有面積よりも狭い占有面積であることを特徴とする請求項5に記載の多層配線基板。
【請求項7】
前記裏面絶縁層は、複数の層から形成され、
該複数の層に設けられた前記第2導電ビア群の内の一部は、内層側のみに形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の多層配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−151188(P2012−151188A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7325(P2011−7325)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】