説明

多峰系における特性を制御する方法

本発明は重合系並びに、ポリマーの特徴からの動的逸脱を最少化するのに少なくとも1つの操作された変数を用いて、二峰性および多峰性ポリマー組成物の製造の最中の樹脂特性を制御する方法に関する。格別の実施形態において、制御の方法は、現在の、および/または以前の値に基づいて樹脂の特性を決定し、または変数もしくはポリマーの特徴を推定もしくは処理することを含む。このようにして、これらの制御作用はプロセスの動揺を減少させる役割を果たし、または、新規生成物もしくはグレードへの移行において、移行の最中もしくは定常状態製造中に生成されるグレード外樹脂材料の量を減少させることを容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、重合系およびオレフィン重合プロセスの制御方法に関する。特には、これらの方法は2またはそれ以上の成分を有する系において動的相互作用を相殺する制御方法に関する。
【0002】
先行関連出願
該当なし
【0003】
連邦政府委託研究の記載
該当なし
【0004】
マイクロフィッシュ添付物の参照
該当なし
【背景技術】
【0005】
あるグレードのポリマーから他のものへの変更は、新たな樹脂仕様および対応する処理条件、例えば、反応温度、反応体および反応体比に切り替えるのに、重合反応器の移行期間を必要とする。ある生成物から他のものへの移行中、望ましい樹脂流動特性(例えば、メルトインデックス)、密度または初期生成物もしくは望ましい標的生成物の他の特性を有していない、グレード外のポリマー材料が生成する。加えて、「定常状態」条件下で稼働する重合反応はグレード外のポリマー材料の生成を生じ得る変動に遭遇する可能性があり、これは収益の損失および反応器の稼働停止につながり得る。グレード外のポリマー材料は経済的な損失をもたらすため、反応器がそのような材料を生成する時間の長さおよび生成される材料の量を最少化することが望ましい。
【0006】
過渡的なグレード外のポリマー材料を減少させる幾つかの方法が記述されている。そのような方法は、他の改善措置のうちでも、反応器への重合抑制剤(polymerization retarder)もしくは触媒毒(例えば、CO2、O2)の供給、反応気体組成、温度および、おそらくは、圧力の新たな値への調整、反応器からの反応体気体の除去、触媒供給速度の減少、および/または非反応性気体、例えば、窒素の添加を含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グレードの外材料を制限する既存のアプローチにもかかわらず、新規生成物への移行の最中に、もしくは定常状態製造の最中の変動の結果として、生成するグレード外のポリマー材料の量を減少させるより有効かつ効率的な方法を提供する必要性および要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、重合系並びに、1つもしくは幾つかのプロセス変数を操作して望ましいポリマーの特徴からの動的逸脱を最少化することにより、二峰性(bimodal)および多峰性(multimodal)ポリマー組成物の製造中の樹脂特性を制御する方法に関する。格別の実施形態において、制御の方法は、現在の、および/または以前の値に基づいて樹脂の特性を決定し、または変数もしくはポリマーの特徴を推定もしくは処理することを含む。このようにして、これらの制御作用はプロセスの動揺を減少させる役割を果たし、または、新規生成物もしくはグレードへの移行において、移行中もしくは定常状態製造中に生成されるグレード外樹脂材料の量を減少させることを容易にする。
【0009】
したがって、一態様において、本発明の実施形態は少なくとも1つの反応器においてポリマーを生成するためのプロセスを制御する方法を提供する。本方法の実施形態は、(a)第1ポリマー成分の少なくとも1つの特性の第1値を、第1触媒により、もしくは第1の反応条件の組の下で生成される第1ポリマー成分の数理モデルを用いて算出することと;(b)第2ポリマー成分の少なくとも1つの特性の第2値を、第2触媒により、もしくは第1の反応条件の組の下で生成される第2ポリマー成分の数理モデルを用いて算出することと;(c)第1および第2ポリマー成分の生成の相対速度を決定することと;(d)少なくとも1つの特性のバルク平均値(bulk average value)を、バルク平均組成物の数理モデルを用いて算出することと;(e)1またはそれ以上の反応条件を調整し、それにより第1もしくは第2ポリマー成分の少なくとも一方の少なくとも1つの特性の瞬間値(instantaneous value)を生成して、または第1もしくは第2ポリマー成分の少なくとも一方の生成速度をもたらして、バルク平均値を望ましい設定値に移動させることと、を含む。
【0010】
この方法の幾つかの実施形態は、任意に、推定もしくは算出されたプロセスおよび樹脂条件並びに独立した実験室もしくは機器測定からバイアス(bias)もしくはアップデート因子(update factor)を決定することを含む。幾つかのそのような実施形態において、少なくとも1つの特性の第1値は瞬間値である。特には、幾つかの方法は、経験データから決定もしくは誘導されたアップデート因子を用いて第1ポリマー成分の数理モデルを任意に調整することも含む。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの特性の第2値は瞬間値である。少なくとも1つの特性の第2値が瞬間値である場合、幾つかの方法は、経験データから決定もしくは誘導されるアップデート因子を用いて第2のポリマー成分の数理モデルを任意に調整することを含む。
【0011】
この方法の格別の実施形態は、アップデート因子を用いて生成速度の数理モデルを任意に調整し、特性を経験データと相関させることを含む。他の実施形態は、アップデート因子を用いて少なくとも1つの特性のバルク平均値の数理モデルを任意に調整し、バルク平均値を経験データと相関させることを含む。他の実施形態においては、生成速度および少なくとも1つの特性のバルク平均値のモデルの両者を調整する。格別な実施形態においては、アップデート因子は、そのアップデート因子を混合規則モデル(mixing rule model)に適用することにより、瞬間モデル(instantaneous model)もしくはバルク平均値のいずれかを調整する。
【0012】
別の態様において、本発明の実施形態は、ポリマー組成物を生成するためのプロセスを制御する方法であって、(a)ポリマー組成物の既存体積を決定することと;(b)第1ポリマー成分の特性および生成速度の第1瞬間値を、第1時間の数理モデルを用いて算出することと;(c)第2ポリマー成分の特性および生成速度の第2瞬間値を、第1時間の数理モデルを用いて算出することと;(d)第1ポリマー成分および第2ポリマー成分を含むポリマー組成物の特性の床平均値を、(a)、(b)において算出された第1および第2瞬間値並びに既存体積から、第1時間t1での混合規則の組に基づいて算出することと;(e)床平均特性の値を床平均特性の望ましい値に移動させる制御作用を実行することと、を含む方法に関する。
【0013】
幾つかの実施形態において、制御作用は、第1ポリマー成分の特性の瞬間値に影響を及ぼし、および/または第2ポリマー成分の特性の瞬間値に影響を及ぼすことを含む。幾つかの実施形態は、第1もしくは第2ポリマー成分の少なくとも一方の相対生成速度に影響を及ぼす制御作用を含む。
【0014】
床平均特性が決定もしくは推定される場合、特性の床平均値の算出はあらゆる適切な方法によって達成することができる。そのような方法の1つは以下の式による混合規則を用いる。
【数1】

(式中:
【数2】

=時間kでの第1値の瞬間特性(Instantaneous Property)
【数3】

=時間kでの第2値の瞬間特性
【数4】

=時間k−1での修正バルク特性
【数5】

=時間kでのバルク特性
1,k=時間kでの第1値の生成速度
2,k=時間kでの第2値の生成速度
total,k=放出される合計速度
k=時間kでのモデルアップデート因子
k-1=時間k−1での全ポリマーの体積
k=時間kでの全ポリマーの体積
Δt=算出間隔
b=混合係数)。
【0015】
本明細書で説明される方法は、第1および第2ポリマー成分が単一触媒系により多反応器システムにおいて生成されるシステムにおいて適用することができる。他の実施形態においては、第1および第2ポリマー成分が混合触媒系により単一反応器において生成される。さらに他の実施形態においては、第1成分が第1触媒によって生成され、第2ポリマー成分が第2触媒によって生成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本明細書で説明されるプロセス制御スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明において、本明細書に開示されるすべての数字は、「約(about)」もしくは「約(approximate)」という単語がそれらに関連して用いられているかどうかに関わらず、おおよその値である。それらは1%、2%、5%および、時には、10から20%変化し得る。下限RLおよび上限RUを有する数値範囲が開示されるときにはいつでも、その範囲に入るあらゆる数字が具体的に開示される。特には、その範囲内の以下の数字が具体的に開示される。R=RL+k*(RU−RL)(式中、kは1%ずつ増加する1%から100%の範囲の変数であり、すなわち、kは1%、2%、3%、4%、5%、・・・、50%、51%、52%、・・・、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%である。さらに、上で定義される2つのR数によって定義されるあらゆる数値範囲も具体的に開示される。
【0018】
本明細書で用いられる触媒という用語は、一般には、重合が生じる触媒部位もしくはオレフィンの重合を生じることが知られる組成物を指す。幾つかの実施形態においては、2またはそれ以上の触媒部位を有する組成物が用いられる。他の実施形態においては、2またはそれ以上のシングルサイト触媒が用いられる。
【0019】
本明細書で説明される方法は、一般には、組成物全体の2つの成分の間に特性の相異が存在するプロセスに適用可能である。モデル化される適切な特性には分子量分布に関連する特性が含まれる。格別の実施形態において、第1および第2特性はメルトインデックスもしくはフローインデックスに関連する。他の実施形態において、第1および第2特性は長鎖もしくは短鎖分岐頻度もしくは密度である。他の実施形態において、モデル化特性はヘキサン抽出性であり得る。本発明がポリプロピレン生成プロセスに適用される実施形態において、適切な特性にはキシレン可溶性、エチレン含有率およびゴム含有率が含まれる。
【0020】
本明細書で説明される方法は、一般には、様々な反応器システム構成に有用である。幾つかの方法は、多部位触媒を用いる単一反応器システムにおいて用いることができる。他の実施形態においては、この方法を2またはそれ以上のシングルサイト触媒を含む単一反応器の制御に用いることができる。さらに他の実施形態においては、本明細書で説明される方法を、連続および平行反応器設計を含む多反応器システムに適用することができる。
【0021】
以下の説明においては、本発明の実施形態の特定の特徴を例示するのに2反応器システムを用いる。それにも関わらず、当業者は、本明細書で説明される方法を多反応器システム、2種類またはそれ以上の成分を作成する系および2種類またはそれ以上の触媒を用いる系により一般的に適用できることを容易に理解する。当業者は、デュアルサイトもしくはマルチサイト触媒を用いて、または2種類またはそれ以上の異なる触媒もしくは触媒組成物を用いるプロセスを用いて、これらの以下の概念を単一反応器システムに適用することもできる。
【0022】
本発明の実施形態は多峰性樹脂制御に適する制御装置によって行う。制御の実施形態は第2反応器に関連するアップデート因子fkを用いる。この用語は第2反応器内の樹脂に基づいてモデルを修正もしくはアップデートするのに用いることができる。幾つかの実施形態において、アップデート因子は、実験データおよびモデル化樹脂特性を用いる経験的測定によって決定される。このようにして、本発明の実施形態は多峰系における固有の非線形性に取り組む制御スキームを提供する。
【0023】
ここで、制御策100の例示的実施形態を図1を参照して説明する。1つ以上の反応条件の調整は経路生成装置(trajectory generator)101を用いて達成する。典型的には、設定値情報を経路生成装置101に供給し、設定値経路を算出する。まず、同調因子(tuning factor)を以下のように算出する。
【数6】

(式中:
αfk=時間kでの特性の同調因子
【数7】

=時間kでの特性の一定の設定値同調時間
Δt=反復間の時間)。
【0024】
次に、時間k+1での設定値経路を算出する。
【数8】

(式中:
【数9】

=時間k+1での樹脂特性設定値経路
αfk=時間kでの特性の同調因子
【数10】

=時間kでの樹脂特性設定値経路
【数11】

=特性設定値)
【0025】
フィードバック経路出力102を以下の式を用いて算出する。
【数12】

(式中:
【数13】

=時間k+1でのフィードバック経路
【数14】

=あらゆる実験サンプルについて修正された、時間kでのモデル化特性
【数15】

=時間kでの樹脂特性設定値経路
【数16】

=時間kでの特性の一定のフィードバック同調時間係数
Δt=反復間の時間)。
【0026】
他の実施形態は以下の特徴の1またはそれ以上を含む。本発明の制御方法論の幾つかの実施形態はフィードフォワード入力103を用いるフィードフォワード制御を含む。この制御は公知の変化を移行の開始時に移行全体にわたるモデルバイアスに適用し、より良好な予測および制御を可能にする。幾つかの方法は、モデル化床平均バイアスの修正において用いられる誤差の量を、実験測定の期待変動に基づいて調整することを含む。本発明の幾つかの実施形態の他の特徴は、勾配速度(ramp rate)(上昇および下降の両者)並びに上限および下限を適用することによって算出される操作された変数を制約することである。幾つかの実施形態は、ゼロの同調定数が定常状態目標値に向けて制御装置が作動することを意味し、正の同調定数がオーバーシュートもしくはより積極的な制御を実施し、負の値がアンダーシュートもしくはより積極性に劣る制御を実施するように同調定数を実施することを含む。幾つかの実施形態においては、別々の同調を移行および定常状態に用いる。この別々の同調は、定常状態稼働の最中に用いられるマスターレシピおよび移行の最中に用いられる移行レシピを有することによって達成することができる。含むことができる別の特徴は、制御および特性予測において用いられる入力の時間遅延因子およびデータフィルタリング能力を含むことである。所望であれば、論理ベースもしくはバッチ式の制御装置を上述の連続制御に加えて用いることにより、制御を強化することができる。バッチ式制御の一例は、水素対エチレン比が高すぎる場合に、それをより早く低下させるため、通気口を開放する別の制御装置である。格別の実施形態においては、システムの制約によって、生じる中間制御および最終制御作用を制限する。例えば、樹脂が粘着性になり始めて樹脂の連続性問題もしくは流動性問題を生じる温度を決定する粘着温度制約を算出することができ、この粘着温度を上回る場合には連続制御装置が推奨する温度が制約される。他の制約には利用者が定義する制限が含まれる。
【0027】
樹脂の特性に関しては、少なくとも1つの樹脂特性の第1および第2値の算出を、触媒動態および他の特性を反応条件に関連付ける数理モデルによって達成する。典型的には、第1および第2値の算出において、非線形樹脂特性モデル104を時間kで存在する各モードの成分および条件に用いて瞬間特性を算出する。
【数17】

(式中:
【数18】

=時間kでの瞬間樹脂特性i
αl,k=時間kでの測定プロセス変数l
αj=モード式定数j
uc=実験結果に基づく、モデルに対するアップデート定数もしくはバイアス)
【0028】
少なくとも1つの特性のバルク平均値の算出も数理モデルによって達成する。好ましいモデルは混合規則式、瞬間条件、プロセス条件および前の反復時(時間k−1)での床平均特性を用いる。あらゆる適切な混合規則を用いることができるが、特に有用な混合規則は、境界条件で、および広範囲の反応条件にわたって安定であり、時間感受性であり、かつ制御作用が系の時間依存性を感知するように制御作用の算出における使用に適していなければならない。幾つかの実施形態において、以下の式による混合規則が用いられる。
【数19】

(式中:
【数20】

=時間kでの(反応器1からの)第1値の瞬間特性
【数21】

=時間kでの(反応器2からの)第2値の瞬間特性
【数22】

=時間k−1での(反応器2からの)修正バルク特性
【数23】

=時間「k」での(反応器2からの)バルク特性
1,k=時間kでの(反応器1からの)第1値の生成速度
2,k=時間kでの(反応器2からの)第2値の生成速度
total,k=放出される合計速度
k=時間kでのモデルアップデート因子
k-1=時間k−1での全ポリマーの体積
k=時間kでの全ポリマーの体積
Δt=算出間隔
b=混合係数)。
【0029】
この混合規則の特徴の1つは、モデルアップデート因子fkが第2反応器の特性および生成速度に関連付けられることである。これは、測定もしくはモデル化のいずれかによる、第2反応器生成物の決定が本質的により困難であるため、重要である。したがって、この点で修正を適用することが有益である。
【0030】
制御の算出においては、経路生成装置算出の結果を制御算出104への入力として用い、操作された変数設定値が決定されて基本制御装置105に送られる。モード成分生成速度が樹脂特性の制御に用いられる場合には、以下の式が用いられる。
【数24】

(式中:
【数25】

=時間kでの第2値(反応器2)からの生成速度設定値
1,k=時間kでの(反応器1からの)第1値の生成速度
【数26】

=時間kでの(反応器1からの)第1値の瞬間特性
Ydk+1=時間k+1での最終経路
k=時間kでの全ポリマーの体積
Δt=算出間隔
【数27】

=時間k−1での(反応器2からの)修正バルク特性
【数28】

=時間kでの(反応器2からの)第2値の瞬間特性
k=時間kでの第2反応器特性のモデルアップデート因子
b=混合係数)。
【0031】
異なる反応器制御変数が樹脂の制御に用いられる場合には、まず目標瞬間特性を算出する。
【数29】

(式中:
【数30】

=時間k+1での第2値(反応器2)の瞬間特性設定値
Ydk+1=時間k+1での最終経路
k=時間kでの(反応器2における)全ポリマーの体積
k-1=時間k−1での(反応器2における)全ポリマーの体積
Δt=算出間隔
1,k=時間kでの(反応器1からの)第1値の生成速度
2,k=時間kでの(反応器2からの)第2値の生成速度
【数31】

=時間’での(反応器1からの)第1値の瞬間特性
k=時間kでの第2反応器特性のモデルアップデート因子
【数32】

=時間k−1での(反応器2からの)修正バルク特性)
【0032】
瞬間樹脂特性を算出した後、その特定の樹脂特性モデルを反転させて操作された変数設定値を決定する。複数の特性を制御する場合、制御装置は対立する制御作用を切り離す。
【0033】
制御方法論の格別の実施形態において、この方法は、樹脂特性の算出に用いられるモデルが利用可能な実験サンプルもしくはオンライン測定の結果としてバイアスもしくはアップデートを必要とするかどうかを決定する。任意に、アップデートが用いられるときには、最初にそれを算出するべきである。このバイアスもしくはアップデート定数は、算出されたモデル化特性に加えて、図1のプロセス106から得られる実験もしくは経験的結果の比較に基づく。プロセス106からのデータをモデル化され、もしくは期待される樹脂特性107と比較する。その差、もしくはそれらの有用な導関数を、制御スキーム100における108で、好ましくは反復して、決定する。プロセスデータと期待値との差の誤差もしくは差もしくは比をフィードバック制御経路102の決定において用いる。バイアスもしくはアップデート定数を決定する方法の1つは実験サンプルの時点での第2反応器における修正モデル化床平均特性を算出することである。バイアスもしくはアップデート定数は下記式に従って算出することができる。
【数33】

(式中:
【数34】

=サンプル時間tsでのモデル化バルク特性
ΔE=モデルのアップデートにおいて用いられる誤差の量
【数35】

=サンプル時間tsでの修正バルク特性
【0034】
最も単純な場合において、誤差の量はモデルと実験との差である。異なる実施形態においては、誤差はモデルと実験との差のうちの僅かであり得る。
【0035】
モデル成分のうちの1つの生成速度を樹脂特性の制御に用いる場合、推定装置(estimator)109をfk条件の算出に用いることができる。情報はプロセス106から測定した。図1においては、算出においても用いられる。fk条件は以下の式を用いて算出する。
【数36】

(式中:
Δfts=サンプル時間tsでの第2反応器特性のモデルアップデート因子の変化
【数37】

=サンプル時間tsでの修正バルク特性
【数38】

=サンプル時間tsでのバルク特性
【数39】

=時間tsでの(反応器2からの)第2値の瞬間特性
1,ts=サンプル時間tsでの(反応器1からの)第1値の生成速度
2,ts=サンプル時間tsでの(反応器2からの)第2値の生成速度)。
【0036】
他のプロセス条件を操作して反応器特性を制御する場合、以下の方法論を用いて推定装置を実行することもできる。これらの場合、モード成分瞬間特性条件におけるアップデート定数条件がアップデートされる。新たなアップデート定数を算出するため、以下の一連の式を用いる。
【数40】

(式中:
【数41】

=時間tsでの(反応器2からの)第2値の修正瞬間特性
【数42】

=サンプル時間tsでの修正バルク特性
【数43】

=サンプル時間tsでのバルク特性
1,ts=サンプル時間tsでの(反応器1からの)第1値の生成速度
2,ts=サンプル時間tsでの(反応器2からの)第2値の生成速度
ts=サンプル時間tsでの第2反応器特性のモデルアップデート因子
【数44】

=時間tsでの実験値によって修正する前の(反応器2からの)第2値の瞬間特性
【数45】

=サンプル時間tsでの実験値によって修正した後の反応器2特性のアップデート定数
g( )=修正瞬間特性に適用される、瞬間モデルにおける特性の関数(すなわち、MIの対数、キシレン可溶性について線形)
h( )=反応器条件をサンプル時間tsでの樹脂特性に関連付ける非バイアス非線形モデル)。
【0037】
制御装置は2つの別々の経路生成装置を含む場合がある。一方の経路生成装置は経路を特性設定値に設定する。第2の経路生成装置はモデルと設定値との差のフィードバック経路を生成する。これは、その系が、経験データからのアップデートに如何に積極的に応答するかとは無関係に、設定値変化に関して如何に積極的に応答するかを制御することを可能にする。
【0038】
格別の実施形態において、制御方法論は移行の開始時にモデルバイアスを決定することを含む。幾つかのそのような方法は、移行の開始時にモデルバイアスを変化させないことを含む。他の実施形態は、そのレシピに保存される履歴モデルバイアスを用いる。さらに他の実施形態においては、この方法は期待条件に基づいてモデルバイアスを算出し、もしくはモデルバイアスに対する相対変化が適用される。
【0039】
したがって、本明細書で説明される方法の実施形態は、反応器ネットワークにおけるポリマー反応のモデル化および1またはそれ以上の制御作用の決定を提供する。格別の実施形態は、瞬間特性尺度を反応器ネットワーク全体を通して追跡し、反応器システム内での様々な反応成分の混合から生じる累積特性分布を算出する。
【0040】
前記方法はデジタル処理装置で実行され、もしくはコンピュータシステムのものであることは理解されるべきである。典型的には、適切なコンピュータシステムは、十分な作業メモリ、ディスクメモリ等を有するデジタル処理装置並びに、観察モニタ、キーボードおよびマウスを含むがこれらに限定されるものではない、当分野において一般的なI/O周辺機器。デジタル処理装置はコンピュータのネットワークにおけるノードもしくはサーバーであり得る。
【0041】
好ましくは、本明細書で説明される方法はデジタル処理装置の作業メモリにおいて実行され、利用者の入力がI/O周辺機器から受け取られて視覚出力がモニタに供給される。典型的には、反応器システム情報/データのデータベースも含まれる。このデータベースはメモリー内にローカルに存在し、もしくはディスク外などに存在する。様々なソフトウェアモジュールがそれぞれの処理のためにこのデータベース情報を共有することができる。好ましい実施形態において、本明細書で説明される制御方法は、反応器ネットワークおよびそのような反応器ネットワークにおいて実行される化学プロセス/反応を含む、反応器システムを別々に、もしくは協働して、モデル化、監視および分析するソフトウェアモジュールの多様性の一部を形成する。そのようなコンピュータ構成およびソフトウェアモジュールおよびアーキテクチャーは当業者の理解し得る範囲内にある。
【0042】
本明細書で説明される方法は様々な反応器スキームおよび反応タイプに適合することができる。幾つかの実施形態において、本明細書で説明される制御方法は、攪拌もしくは流動化床反応器内での連続気相重合反応のための、もしくは溶液重合法のための、反応器システムにおいて適用される。この反応器システムには、他の制御機構のうちでも、反応温度および反応器への気体の流入を変化させるための機構が含まれる。幾つかの実施形態においては、低分子量成分および高分子量成分が同じ反応容器内で製造される。幾つかのそのような実施形態は、低分子量成分および高分子量成分の両者を製造する単一触媒を用いる。他のそのような実施形態においては、各々の成分は異なる触媒により同じ反応器内で製造される。さらに他の実施形態においては、別々の反応器からの成分を合わせることによってポリマーを製造することができる。例えば、平行反応器プロセスにおいて、一方の反応器は低分子量成分を調製することができ、それに対して第2反応器は高分子量成分を調製することができ、その低分子量成分および高分子量成分を第3反応容器内で合わせることによって望ましい組成物が製造される。
【0043】
重合はバッチ式もしくは連続重合プロセスとして行うことができる。イベント触媒(event catalysts)、溶媒もしくは希釈剤(用いられる場合)およびコモノマー(もしくはモノマー)が反応帯に連続的に供給され、ポリマー生成物がそれらから連続的に取り出される、連続プロセスが好ましい。本発明の実施形態に従ってインターポリマーを製造するための重合条件は、適用がそれらに限定されるものではないが、一般には、溶液重合プロセスにおいて有用なものである。気相およびスラリー重合プロセスも、適切な触媒および重合条件が用いられるのであれば、有用であるものと考えられる。
【0044】
幾つかの実施形態において、重合は、直列もしくは平行に接続された2つの反応器を含む連続溶液重合システムにおいて行われる。一方もしくは両方の反応器が少なくとも2種類の触媒を含み、これらの触媒は実質的に類似するコモノマー取り込み能力を有するが、異なる分子量能力を有する。最終生成物は2つの反応器流出物の混合物であり、これは揮発物除去の前に合わせられて2つのポリマー生成物の均一混合を生じる。そのような二重反応器/二重触媒プロセスは適合された特性を有する生成物の調製を可能にする。一実施形態において、反応器は直列に接続され、すなわち、第1反応器からの流出物が第2反応器に収められ、新鮮なモノマー、溶媒および水素が第2反応器に添加される。一実施形態において、連続重合プロセスにおける第2反応器は当分野において公知の不均一チーグラー・ナッタ触媒もしくはクロム触媒を含む。
【0045】
格別の実施形態において、これらの方法は流動化床プロセスの制御に用いられる。流動化床プロセスは、典型的には、1種類またはそれ以上のモノマーを含む気流を、反応性条件下、重合触媒の存在下で、流動化床反応器を連続的に通過させることによって実施する。流動化床反応系の部品には、典型的には、容器、床、気体分配プレート、導入口および排出口配管、1またはそれ以上の圧縮器、1またはそれ以上の循環気体冷却器(熱交換器)および生成物放出システムが含まれる。典型的な流動化床反応器および手順は、例えば、米国特許第6,384,157号(Caiら)、米国特許第6,063,877号(Kocianら)、米国特許第5,990,250号(Parrishら、床温度の制御)、米国特許第5,844,054号(Samplesら)、米国特許第5,627,242号(Jacobsonら)、米国特許第4,482,687号(Noshayら)および米国特許第4,302,565号(Goekeら)に記載され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
流動化床プロセスにおいては、流動化床に導入されるモノマーのモル比を変化させることによってα−オレフィンポリマーの生成物組成を変化させることができる。樹脂生成物は、床レベルが重合で増加するに従い、顆粒もしくは粒状形態で反応器から連続的に排出される。未反応モノマーの気流は反応器から連続的に引き出され、再循環流に添加される構成モノマー並びに、所望であれば、改質剤および/または不活性坦体気体と共に反応器に再循環される。重合の過程の最中、床は、重合よって流動化された、形成されたポリマー粒子、生長するポリマー粒子および触媒粒子並びに、それらの粒子を分離させ、かつ流体として作用させるのに十分な流速もしくは速度で導入される、修飾性気体状成分を含んでなる。生成速度は、部分的には、触媒供給速度を調整することによって制御することができる。水素/モノマーモル比もしくは他の反応体濃度(例えば、コモノマー供給、鎖生長停止剤供給、例えば、水素もしくは毒、例えば、酸素)を調整して平均分子量を制御することができる。
【0047】
流動化床における気体状および液体状反応体、触媒並びに樹脂を含む反応体の混合物の滞留時間は、一般には、約1から約12時間であり、流動化床反応器内の全圧力は、一般には、約100から約600psi(ポンド毎平方インチ)である。主要α−オレフィンの分圧は望ましいポリマーの量に従って設定される。全圧力の均衡は主要α−オレフィン以外のα−オレフィンおよび/または不活性気体、例えば、窒素および不活性炭化水素によってもたらされる。反応器内の温度は、一般には、約10℃から約130℃の範囲である。
【0048】
攪拌タンク反応は、典型的には、2相(気体/固体)攪拌床逆混合反応器(stirred bed, back mixed reactor)を用いて行われる。典型的な攪拌タンク反応器は、例えば、米国特許第5,844,054号(Samplesら)に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。一般には、垂直円筒状チャンバ内で中心シャフトに平行に搭載された4つの「プラウ」の組が回転し、反応器内の粒子を機械的に流動化された状態に保つ。解放装置(disengagaer)容器が反応器上の垂直円筒の頂部に搭載される。気体は、気体組成が全体を通して均一であるように、反応器および解放装置の両者を通してブロワにより連続的に再循環される。用いられる反応器圧は、典型的には、約300から約450psigの範囲である。(分子量制御のための)モノマーおよび水素の分圧は、典型的には、約150から約300psigである。気体組成は、間をおいて、ガスクロマトグラフィー分析機によって測定することができる。反応器は、典型的には、冷却グリコールの外部ジャケットによって冷却し、約10℃から約110℃の反応器温度を維持する。触媒前駆体は乾燥のまま、もしくはスラリーとして供給することができる。反応器は、典型的には、重合が進行する間に顆粒状ポリマーが引き出される、連続モードで稼働させる。
【0049】
流動化床反応器もしくは攪拌タンク反応器のいずれかにおける典型的な稼働は、モノマーを反応器に投入し、望ましい気体組成に到達するまで供給を調整することで開始する。共触媒の初期投入は、反応器内に存在するあらゆる毒を一掃するため、触媒供給の開始の前に添加する。触媒供給が開始された後、気体濃度および比率を維持するのに十分なモノマーを反応器に添加する。共触媒供給速度は触媒供給速度に比例して維持する。作動の初期部分の最中の触媒の攪拌および分散を容易にするのに始動床(start-up bed)を用いることができる。望ましいバッチ重量が製造された後、反応器の排出口を開き、窒素を用いて樹脂からモノマーをパージする。その後、バッチを、他の触媒非活性化尺度が指定されない限り、大気に対して開放された箱に放出する。
【0050】
溶液重合プロセスを実施するための従来のシステムはシングルループ反応器もしくはデュアルループ反応器を含む。フローループ再循環反応器は、例えば、米国特許第5,977,251号およびWO97/36942(Kaoら、The Dow Chemical Company)に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。フローループ反応器は、モノマー導入口、触媒導入口、溶媒導入口および生成物排出口並びに、例えば添加物導入口、スタティックミキサー、再循環ラインおよび精製床を含む、他の特徴を含む。ポンプが反応体物質およびポリマーをフローループ周辺に移動させる。
【0051】
そのようなシステムにおいては、モノマー/コモノマーおよび鎖生長停止剤を溶媒導入口を介して配送される溶媒中に流動させた後、モノマー導入口でフローループ反応器に導入することができる。触媒および共触媒は組み合わせて触媒溶液、固体活性化触媒が懸濁された混合物もしくは触媒が吸着した支持体粒子が溶媒媒体中に懸濁されたスラリーを形成し、触媒導入口を介してフローループ内に注入もしくは流動させる。ポリマーはポリマー排出口を介して反応器外に流動させる。連続システムにおいては、反応流内の物質の幾らかが生成物排出口を通過して連続的に流動し、ループを介して戻る。
【0052】
生成されるポリマーはポリオレフィン、例えば、エチレン性および/またはアセチレン性不飽和モノマーのホモポリマーもしくはコポリマーであり得る。そのようなモノマーにはC2−C20α−オレフィンモノマーが含まれ、これには、これらに限定されるものではないが、とりわけ、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−オクテン、1−ノネン、1−ウンドセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセンが含まれる。他のモノマーには、スチレン、C1−−C4アルキル置換スチレン、テトラフルオロエチレン、ビニルベンゾシクロブテン、ジエン、例えば、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,7−オクタジエンおよび1,9−デカジエン並びにシクロアルケン、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテンが含まれる。
【0053】
様々なオレフィン重合反応器を用いることができ、かつ様々なポリマー生成物が生成されるように調整することができる。本発明に従って生成することができる例示的ポリマーには、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびC3−C12α−オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー;エチレン、少なくとも1種類のC3−C12α−オレフィンおよびジエンのターポリマー、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM);ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン;並びに他のゴムが含まれる。一般には、所定の反応器システムによって製造されるポリマー生成物は、同じ反応体を用いるが、異なる比率および異なる温度で用いる。これらのポリマー生成物の各々は幾つかの異なる樹脂特性、すなわち、グレードで製造することができる。ポリマー生成物の各々のグレードはその特性、例えば、密度およびメルトインデックスに関して狭い限度を有する。
【0054】
これらの反応器は様々なポリマーのタイプの調製に用いることができ、そのポリマーのタイプには、これらに限定されるものではないが、均一ポリマー、不均一ポリマー、実質的に直鎖のポリマー、実質的なランダムエチレン/スチレンインターポリマーおよびオレフィン系エラストマーが含まれる。
【0055】
均一直鎖エチレンポリマーは、Elstonの米国特許第3,645,992号(参照により本明細書に組み込まれる)において例示されるように、チーグラー型触媒、例えば、ジルコニウムおよびバナジウム触媒系を用いる通常の重合プロセスで調製することができる。Ewenらの米国特許第4,937,299号およびTsutsuiらの米国特許第5,218,071号(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)は、均一直鎖エチレンポリマーの調製へのメタロセン触媒、例えば、ジルコニウムおよびハフニウムに基づく触媒系の使用を開示する。均一直鎖エチレンポリマーは、典型的には、約2の分子量分布Mw/Mnを有するものとして特徴付けられる。均一直鎖エチレンポリマーの商業的に入手可能な例には、Mitsui Petrochemical IndustriesによりTafmer(商標)樹脂として、およびExxon Chemical CompanyによりExact(商標)樹脂として、販売されるものが含まれる。
【0056】
不均一直鎖エチレンポリマーは、The Dow Chemical CompanyからDowlex(商標)LLDPEおよびAttane(商標)ULDPE樹脂として入手可能である。不均一エチレンポリマーは、典型的には、3.5から4.1の範囲の分子量分布Mw/Mnを有するものとして特徴付けられる。不均一に分岐したエチレンポリマーは、様々なエチレン対コモノマーモル比および約30パーセント未満の短鎖分岐分布指数(SCBDI)を有するインターポリマー分子の混合物として特徴付けられる。不均一ポリマーは複数の溶融ピークをも有する(すなわち、少なくとも2つの異なる溶融ピークを示す)。すべての公知不均一分岐エチレンポリマーは直鎖であり、測定可能もしくは実証可能な長鎖分岐は有していない。不均一直鎖エチレンポリマーは、エチレンおよび1種類またはそれ以上の任意のα−オレフィンコモノマーを、チーグラー・ナッタ触媒の存在下で、米国特許第4,076,698号(Andersonら)および米国特許第5,231,151号(Spencerら)(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるような方法により溶液、スラリーもしくは気相重合することによって調製することができる。チーグラー・ナッタ型重合法は、例えば、米国特許第4,314,912号(Lowery,Jr.ら)、米国特許第4,612,300号(Coleman,III)、米国特許第5,869,575号および米国特許第5,844,045号(Kolthammerら)並びに米国特許第5,231,151号(Spencerら)(すべてThe Dow Chemical Company)にも記載され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
実質的に直鎖のエチレンポリマー(SLEP)は長鎖分岐を有する均一ポリマーであり、例えば、米国特許第5,272,236号、第5,278,272号、第5,665,800号および第5,783,638号(Laiら、Dow Chemical)(それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。「実質的に直鎖」という用語は、均一コモノマー取り込みに起因する短鎖分岐に加えて、エチレンポリマーが、ポリマー主鎖が0.01から3長鎖分岐/1000炭素の平均で置換されるように、長鎖分岐を有することを意味する。SLEPのメルトインデックスは、一般には、少なくとも約0.1グラム/10分(g/10分)で約100g/10分までである。SLEPはInsite(商標) Process and Catalyst Technologyによって製造され、The Dow Chemical CompanyからAffinity(商標)ポリオレフィンプラストマーとして、およびDuPont Dow Elastomers, LLCからEngage(商標)ポリオレフィンエラストマーとして入手可能である。SLEPは、エチレンおよび1種類またはそれ以上の任意のα−オレフィンコモノマーを、連続法により、拘束幾何触媒、例えば、欧州特許出願第416,815−A号、米国特許第5,132,380号、第5,189,192号、第5,374,696号、第5,453,410号、第5,470,993号、第5,494,874号および第5,532,394号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものの存在下で、溶液、スラリーもしくは気相、好ましくは、溶液相重合することによって調製することができる。
【0058】
実質的なランダムインターポリマーは、α−オレフィン(1種類またはそれ以上)をビニルもしくはビニリデン芳香族モノマー(1種類またはそれ以上)および/またはヒンダード脂肪族もしくは脂環式ビニルもしくはビニリデンモノマー(1種類またはそれ以上)と重合させることによって調製することができる。実質的なランダムインターポリマーは、例えば、米国特許第6,211,302号(Hoら)、米国特許第6,190,768号(Turleyら)、米国特許第6,156,842号(Hoenigら)および米国特許第6,111,020号(Orianiら)に記載され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。実質的なランダムインターポリマーの調製は、重合性モノマーの混合物を、様々な共触媒と組み合わせられた1種類またはそれ以上のメタロセンもしくは拘束幾何触媒の存在下で重合させることを含む。稼働条件には大気圧から3000気圧までの圧力および−30℃から200℃の温度が含まれる。適切な触媒およびインターポリマーの調製方法の例は欧州特許第0,416,815(B1)号および米国特許第5,703,187号(Timmers)に記載され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
オレフィン系エラストマーの一例は、エチレン−プロピレンジエンモノマー(EDPM)から製造されるターポリマーである。EPMポリマーの調製方法は、例えば、米国特許第3,341,503(Paigeら、Uniroyal,Inc.)に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。EDPMを調製するための例示的な触媒系は、バナジウム化合物、例えば、バナジウムオキシトリクロライドもしくはテトラクロライド、典型的には有機アルミニウム化合物である共触媒並びに活性化剤、例えば、ニトロプロパンおよびキノンを含む。
【0060】
上記ポリマーの製造に従来用いられるあらゆる触媒を本発明の方法における重合に用いることができる。そのような触媒には、フィリップス触媒、チーグラー触媒、遷移金属、例えば、バナジウム。クロム、チタンを含むチーグラー・ナッタ触媒およびメタロセンが含まれ得る。当分野において公知の有用なメタロセン触媒の例は、例えば、米国特許第5,455,366号(Rohrmann)、米国特許第5,329,033号(Spaleckら)、米国特許第5,317,036号(Bradyら)、米国特許第5,145,819号(Winterら)および米国特許第5,106,806号(Job)に開示され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
均一エチレンインターポリマーの製造において用いられる均一触媒には、チタン錯体を含む、当分野において拘束幾何金属錯体(CGC触媒)として記載されるモノシクロペンタジエニル遷移金属錯体に基づくメタロセン種が含まれる。有用なメタロセン種には、米国特許第5,869,575号および第5,844,045号(Kolthammerら)、米国特許第5,783,638号、第5,665,800号、第5,278,272号および第5,272,236号(Laiら)、米国特許第5,703,187号(Timmers)並びに米国特許第5,677,383号(Chumら)(これらはすべてThe Dow Chemical Companyに対するものであり、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示される拘束幾何金属錯体が含まれる。
【0062】
用いることができる不均一触媒には典型的なチーグラー型触媒が含まれる。不均一触媒は支持された遷移金属化合物(例えば、チタン化合物もしくはチタン化合物およびバナジウム化合物の組み合わせ)および共触媒/活性化剤を含む。そのような触媒の例は、米国特許第5,231,151号(Spencerら)、米国特許第4,612,300号(Coleman,III)、米国特許第4,547,475号(Glassら)、米国特許第4,314,912号(Lowery,Jr.ら)および米国特許第4,076,698号(Andersonら)に記載され、これらはすべてThe Dow Chemical Companyに対するものであって、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
クロム系触媒の例は、例えば、米国特許第4,540,755号(Mayhewら)、米国特許第4,619,980号(McDaniel)、米国特許第4,668,838号(Briggs)、米国特許第4,735,931号(McDaniel)、米国特許第5,066,736号(Dumainら)、米国特許第5,244,987号(Bernardら)、米国特許第5,115,068号(Baileyら)、米国特許第5,137,994号(Goodeら)、米国特許第5,473,027号(Batchelorら)および米国特許第4,804,714号(Olivo)に記載され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。クロム系触媒には他のフルオライドおよびチタン修飾クロム触媒およびシリルクロメートも含まれる。クロム系触媒系においては、生成速度および樹脂特性、特には、樹脂の流動特性、典型的には、メルトインデックスもしくはフローインデックスのいずれかを設定酸素対α−オレフィンモル比および触媒供給速度で修正して望ましい樹脂特性および望ましい生成速度を達成するのに、酸素を用いることができる。
【0064】
樹脂に導入することができる従来の添加物には、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、静電防止剤、光増感剤、顔料、染料、成核剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定化剤、煙阻害剤(smoke inhibitors)、粘度制御剤、および架橋剤、触媒、ブースター、濃厚剤、および粘着防止剤が含まれる。
【0065】
様々な物品を、開示される制御方法論を用いて調製されるオレフィンポリマー生成物から調製することができる。そのような生成物は、注型、ブロー成型、回転成型製品、ワイヤコーティング、配管およびフィルムにおいて用いることができる。有用な物品には、フィルム、例えば、キャスト、ブローンおよび押出しコート型のフィルム;繊維、例えば、ステープル繊維、スパンボンデッド繊維もしくは溶融吹き付け繊維系(例えば、米国特許第4,340,563号(Appelら、Kimberly−Clark);米国特許第4,663,220号(Wisneskiら、Kimberly−Clark);米国特許第4,668,566号(Braun、Kimberly−Clark);もしくは米国特許第4,322,027号(Reba、Crown Zellerbach)に開示される系を用いるもの);およびゲルスパン繊維系(例えば、米国特許第4,413,110号(Kaveshら、Allied Corporation)に開示される系)、織物および不織布の両者、例えば、スパンレース繊維(米国特許第3,485,706号(Evans)に開示されるようなもの)、または、例えば、これらの繊維と他の繊維、例えば、PETもしくは木綿との配合物を含む、そのような繊維から製造される構造;並びに成形物品、例えば、注型法、ブロー成型法もしくは回転成型法を用いて製造される物品が含まれる。本明細書で説明されるポリマー生成物は、ワイヤおよびケーブル被覆操作、シュリンクフィルム用途に加えて、真空形成操作のためのシート押出しにおいても有用である。これらの方法によって製造されるポリマーはパイプ用途、例えば、ガスおよび水パイプにも有用である。少なくとも1種類の均一に分岐した実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィンインターポリマーおよび少なくとも1種類の不均一に分岐したエチレンポリマーを含むエチレンポリマー配合物から製造される組立物品がChumらにより米国特許第5,677,383号に記載される。オレフィンポリマーを含む組成物は組立物品、例えば、ポリオレフィン加工の分野の当業者に周知である、従来のポリオレフィン加工技術を用いて言及されるものに成形することができる。
【0066】
開示される方法の様々な実施形態が上述されているが、それらが例のみとして提示されており、限定ではないことは理解されるべきである。例えば、例示実施形態は2反応器システムにおいて適用されるシステムおよび方法をしてはいるが、システムは、例えば、2種類の触媒を含む単一反応器システムであってもよい。したがって、本発明の広がりおよび範囲は上述の例示実施形態のいずれによっても限定されるものではなく、この開示に由来するあらゆる請求項およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。さらに、説明される実施形態において上記利点および特徴がもたらされているが、そのような発行された請求項の適用を上記利点のいずれかもしくはすべてを達成する方法および構造に限定するべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを少なくとも1つの反応器において生成するためのプロセスを制御する方法であって、
(a)第1ポリマー成分の少なくとも1つの特性の第1値を、第1触媒により、もしくは第1の反応条件の組の下で生成される第1ポリマー成分の数理モデルを用いて算出する工程と;
(b)第2ポリマー成分の少なくとも1つの特性の第2値を、第2触媒により、もしくは第1の反応条件の組の下で生成される第2ポリマー成分の数理モデルを用いて算出する工程と;
(c)第1および第2ポリマー成分の生成の相対速度を決定する工程と;
(d)少なくとも1つの特性のバルク平均値を、バルク平均組成物の数理モデルを用いて算出する工程と;
(e)1またはそれ以上の反応条件を調整し、それにより第1もしくは第2ポリマー成分の少なくとも一方の少なくとも1つの特性の瞬間値を生成して、または第1もしくは第2ポリマー成分の少なくとも一方の生成速度をもたらして、バルク平均値を望ましい設定値に移動させる工程と、
を含む方法。
【請求項2】
(f)推定もしくは算出されたプロセスおよび樹脂条件並びに独立した実験室もしくは機器測定からアップデート因子を任意に決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの特性の第1値が瞬間値である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(g)経験データから決定もしくは誘導されるアップデート因子を用いて第1ポリマー成分の数理モデルを任意に調整する工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの特性の第2値が瞬間値である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
経験データから決定もしくは誘導されるアップデート因子を用いて第2ポリマー成分の数理モデルを任意に調整する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
経験データから決定もしくは誘導されるアップデート因子を用いて生成速度の数理モデルを任意に調整する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
経験データから決定もしくは誘導されるアップデート因子を用いて少なくとも1つの特性のバルク平均値の数理モデルを任意に調整する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2ポリマー成分が単一触媒系によって多反応器システムにおいて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2ポリマー成分が混合触媒系によって単一反応器において生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1および第2ポリマー成分が少なくとも2つの触媒的に活性の部位を有する触媒系によって単一反応器において生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1成分が第1触媒によって生成され、前記第2ポリマー成分が第2触媒によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
反復的、周期的もしくは断続的に反復する工程a〜eを含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
反復的、周期的もしくは断続的に反復する工程a〜fを含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
反復的、周期的もしくは断続的に反復する工程a〜gを含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ポリマー組成物を生成するためのプロセスを制御する方法であって、
(a)ポリマー組成物の既存体積を決定する工程と;
(b)第1ポリマー成分の特性および生成速度の第1瞬間値を、第1時間の数理モデルを用いて算出する工程と;
(c)第2ポリマー成分の特性および生成速度の第2瞬間値を、第1時間の数理モデルを用いて算出する工程と;
(d)前記第1ポリマー成分および前記第2ポリマー成分を含むポリマー組成物の特性の床平均値を、(a)、(b)において算出された前記第1および第2瞬間値並びに前記既存体積から、前記第1時間t1での混合規則の組に基づいて算出する工程と;
(e)前記床平均特性の値を前記床平均特性の望ましい値に移動させる制御作用を実行する工程と、
を含む方法。
【請求項17】
制御作用が第1ポリマー成分の特性の瞬間値に影響を及ぼす工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
制御作用が第2ポリマー成分の特性の瞬間値に影響を及ぼす工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
制御作用が前記第1もしくは第2ポリマー成分の少なくとも一方の相対生成速度に影響を及ぼす工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
特性の床平均値の算出が以下の式に記載の混合規則を用いて達成される、請求項16から19のいずれか1項に記載の方法、
【数46】

(式中:
【数47】

=時間kでの第1値の瞬間特性
【数48】

=時間kでの第2値の瞬間特性
【数49】

=時間k−1での修正バルク特性
【数50】

=時間kでのバルク特性
1,k=時間kでの第1値の生成速度
2,k=時間kでの第2値の生成速度
total,k=放出される合計速度
k=時間kでのモデルアップデート因子
k-1=時間k−1での全ポリマーの体積
k=時間kでの全ポリマーの体積
Δt=算出間隔
b=混合係数)。
【請求項21】
前記第1および第2ポリマー成分が単一触媒系により多反応器システムにおいて生成される、請求項16から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1および第2ポリマー成分が混合触媒系により単一反応器において生成される、請求項16から20に記載の方法。
【請求項23】
前記第1および第2ポリマー成分が少なくとも2つの触媒的に活性の部位を有する触媒系により単一反応器において生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記第1成分が第1触媒によって生成され、前記第2ポリマー成分が前記第2触媒によって生成される、請求項16から20に記載の方法。
【請求項25】
反復的、周期的もしくは断続的に反復する工程a〜eを含む、請求項16から20のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−504390(P2010−504390A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529163(P2009−529163)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/036849
【国際公開番号】WO2008/036093
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】