説明

多接点コネクタ

【課題】小型でかつ、高速伝送時のインピーダンス値を増加させることができる多接点コネクタを提供する。
【解決手段】本発明に係る多接点コネクタは、長手方向に直線状に配列された複数の端子片と、前記端子片間に延在し前記端子片を支持するとともに隣接する前記端子片を絶縁する複数の隔離壁を備え、前記隔離壁間の端子片支持空間に前記端子片が挿入される絶縁性のハウジングと、を備え、長手方向に隣接する前記端子片のうち、一の前記端子片の他の前記端子片に向き合う端面には、前記隔離壁に突き当たり一の前記端子片を固定する固定突起が設けられ、他の前記端子片の一の前記端子片に向き合う端面には、一の前記端子片の前記固定突起に相応する位置に凹部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多接点コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
信号線を用いて情報を伝送する際には、信号線と機器を接続するコネクタ等の接続部におけるインピーダンスの値が伝送速度に影響を及ぼす。とくに、高速伝送をする際には、信号を受ける側の接続部のインピーダンスを機器側と整合させなければ、伝送信号の高周波成分が反射されてしまい、伝送速度を上げることができない。
【0003】
一方で、同時に伝送する情報量を増大させる等の種々の理由により、多数の信号線を平行に接続する場合がある。このような場合には、多数の信号線をまとめて接続する形式のコネクタが用いられる。かかるコネクタでは、多数の互いに電気的に独立した接点を合成樹脂等の適宜の絶縁材料により形成されたハウジング中に配列し、対となるハウジング同士を接続することにより、多数の接点が一度に接続される。なお、以降、本明細書では、このような形式のコネクタを多接点コネクタと呼ぶこととする。
【0004】
引用文献1には、ハウジングに圧入されるグランドコンタクト及び低速伝送用信号コンタクトを有する多接点コネクタが記載されている。同文献記載のコンタクトの圧入部には、金属端子の両側に対称に突き出した部分が設けられており、係る突き出した部分がハウジングのコンタクト収容部の内面を押し付けることにより、コンタクトはハウジング内に固定される(図15及び16参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−141586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、信号伝送速度を高速化するためには、コネクタのインピーダンス値を信号側と整合させなければならない。一方、機器の小型化により、コネクタ自体も小型とすることが要求されるが、単純に多接点コネクタを小型化すると接点間の距離が近くなり、接点間に容量が形成されることにより高速伝送時のインピーダンス値が低下し、機器とのインピーダンスの整合がとれなくなってしまう。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、小型でかつ、高速伝送時のインピーダンス値の低下を抑制することができる多接点コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明に係る多接点コネクタは、長手方向に直線状に配列された複数の端子片と、前記端子片間に延在し前記端子片を支持するとともに隣接する前記端子片間を絶縁する複数の隔離壁を備え、前記隔離壁間の空間に前記端子片が挿入される絶縁性のハウジングと、を備え、長手方向に隣接する前記端子片のうち、一の前記端子片の他の前記端子片に向き合う端面には、前記隔離壁に突き当たり一の前記端子片を固定する固定突起が設けられ、他の前記端子片の一の前記端子片に向き合う端面には、一の前記端子片の前記固定突起に相応する位置に凹部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明に係る多接点コネクタによれば、小型でかつ、高速伝送時のインピーダンス値の低下を抑制することができる多接点コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る多接点コネクタを構成するオスコネクタ及びメスコネクタを示す斜視図である。
【図2】オスコネクタを接続面側から見た斜視図である。
【図3】メスコネクタを接続面側から見た斜視図である。
【図4】図1に示した多接点コネクタを接続した状態でのIV−IV線における断面図である。
【図5】メスコネクタの端子片を示す斜視図である。
【図6】端子片を短手方向から見た正面図である。
【図7】複数の端子片のうち隣接する2つの端子片の位置関係を示す図である。
【図8】隣接する端子片の変形例を示す正面図である。
【図9】隣接する端子片のさらなる変形例を示す正面図である。
【図10】端子片の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、同実施形態に係る多接点コネクタを構成するオスコネクタ1及びメスコネクタ2を示す斜視図である。同図では、オスコネクタ1は図示しないFPC(Frexible Printed Circuits)に実装され、電気的に接続される実装面が手前に見えており、メスコネクタ2はオスコネクタ1と接続される接続面が見えている。メスコネクタ2は、図示しない基板に実装される。
【0013】
なお、本実施形態では、オスコネクタ1をFPC等のケーブル側に接続されるプラグとし、メスコネクタ2を基板等の機器側に接続されるレセプタクルとしたが、これに限定されるものでなく、プラグ/レセプタクルの関係を入れ替えてもよい。或いは、オスコネクタ1及びメスコネクタ2の両方をケーブルに接続するものとしても、両方を基板に接続するものとしてもよい。
【0014】
また、図1に示した多接点コネクタでは、直線状に22個の接点が並べられた列が8列あるため、合計で176個の接点を有しているが、これに限定されるものではなく、接点数及び列の数は合目的的に設定してよい。本発明が対象とする多接点コネクタでは、少なくとも複数の接点が直線上に配列されていればよく、かかる列の数も、少なくとも1以上であればよい。
【0015】
なお、図1に示した多接点コネクタは、CPU(Central Processing Unit)間の情報転送に用いられるものであり、その通信速度は概ね15Gbpsであるが、その用途及び通信速度もこれらに限定されるものではない。
【0016】
図2は、オスコネクタ1を接続面側から見た斜視図である。オスコネクタ1は、絶縁性のハウジングであるオス側ハウジング10に、互いに導通しないようにオス側ハウジング10に取り付けられた複数の端子片11(図中では1つのみ符号を付した)、及び、オス側ハウジング10の外周部に取り付けられた取付用補助金具としてのネイル12より構成される。
【0017】
オス側ハウジング10は、概ね接続面側に開口を有する箱型をしており、本実施形態では、液晶ポリマー樹脂を成形することにより作成されている。なお、オス側ハウジング10の材質は絶縁性を有していればどのようなものであってもよいが、本実施形態で液晶ポリマー樹脂を使用しているのは、型成形時の流動性が高く、オス側ハウジング10の微細な構造の作成に適しているためである。
【0018】
端子片11は、金属板を打ち抜き、プレス加工により若干の曲げ加工を施した概ね平板状の金属部材である。しかしながら、端子片11の形状は特に限定されず、端子として機能するものであればどのようなものであってもよい。なお、本明細書で「端子片」とは、電気的な接続をする接点を構成する導電性の部材の一単位を指すものとして用いている。
【0019】
ネイル12は、オス側ハウジング10の周縁に設けられる取付用補助としての金属部材である。ネイル12には、オス側ハウジング10の内側となる位置に弾性接続部120が形成されており、オスコネクタ1がメスコネクタ2と接続された際に、後述するメスコネクタ2のネイル22と噛み合い、オスコネクタ1とメスコネクタ2を固定する。また、その際にネイル12とメスコネクタ2のネイル22は電気的に接続するようになっている。そして、ネイル12のオス側ハウジング10の実装面側の端部には、実装接続部121が突き出すように設けられており、オスコネクタ1がFPC等のケーブルに実装される際にシールド電位となるよう半田付けされる。
【0020】
なお、以降では、端子片11が直線状に配列される方向を長手方向、接続面に対して長手方向に直交する方向を短手方向と呼び、多接点コネクタが接続される方向を接続方向と呼ぶこととする。図2中にこれらの方向を示した。
【0021】
端子片11は、オス側ハウジング10に設けられ、長手方向に延び、接続方向に突き出す支持壁100の両壁面に直線状に配列されている。支持壁100の両壁面には接続方向に延びるコ字状の窪みである端子片支持空間101が端子片11と同数形成されている。そして、各々の端子片11は端子片支持空間101に、この場合は接続面側から挿入されることにより、端子片支持空間101内に固定される。以降本明細書では、端子片11が端子片支持空間101に挿入される方向を挿入方向と呼ぶこととする。なお、本実施形態では、挿入方向と接続方向は一致するが、必ずしもこれに限定されずともよく、オス側ハウジング10の形状によっては挿入方向と接続方向が異なっていてもよい。例えば、挿入方向は、短手方向であってもよい。
【0022】
隣接する端子片支持空間101は、短手方向に突き出す隔離壁102により長手方向に区切られている。そのため、隣接する端子片11は隔離壁102により絶縁される。また、端子片11の長手方向の端面は隔離壁102に突き当たるようになっており、これにより端子片11はオス側ハウジング10から脱落しないように支持される。すなわち、隔離壁102は、端子片11間に挿入方向に延在し、端子片11を支持するとともに隣接する端子片11を絶縁するのである。また、端子片支持空間101は、長手方向に隣接する隔離壁102間の空間である。
【0023】
図3は、メスコネクタ2を接続面側から見た斜視図である。メスコネクタ2もまた、絶縁性のハウジングであるメス側ハウジング20に、互いに導通しないようにメス側ハウジング20に取り付けられた複数の端子片21(図中では1つのみ符号を付した)、及び、メス側ハウジング20の外周部に取り付けられたネイル22より構成される。
【0024】
メス側ハウジング20も先に説明したオス側ハウジング10(図2参照)同様、概ね接続面側に開口を有する箱型をしており、液晶ポリマー樹脂の成形品である。メス側ハウジング20の材質が任意の絶縁性材料で良い点についても同様である。
【0025】
端子片21は、先のオスコネクタ1に用いられた端子片11(図2参照)と形状が異なるものの、金属板を打ち抜いたのち曲げ加工を施した金属部材である点、及び、端子として機能するものであればどのような形状であってもよい点は同様である。しかしながら、後述するように、端子片21の長手方向側の端面の形状は、メスコネクタ2のインピーダンス値を制御、この場合はインピーダンス値の低下を抑制するために重要となる。
【0026】
ネイル22は、メス側ハウジング20の周縁に設けられる取付用補助としての金属部材であり、図2に示したオスコネクタ1のネイル12の弾性接続部120により接触し、両者は噛み合うとともに導通する。ネイル22のメス側ハウジング20の実装面側の端部には、実装接続部220が突き出すように設けられており、メスコネクタ2が基板に実装される際にシールド電位となるよう半田付けされる。
【0027】
なお、長手方向、短手方向、接続方向及び挿入方向の向きについては、先のオスコネクタ1の場合と同様である。
【0028】
端子片21もまた、メス側ハウジング20に設けられ、長手方向に延び、接続方向に突き出す支持壁200の両壁面に直線状に配列されている。支持壁100(図2参照)との差異は、支持壁200がメス側ハウジング20の外周壁と繋がっているか、あるいは、外周壁の一部が支持壁200となっている点である。支持壁200の両壁面(支持壁200が外周壁である場合には内側の壁面)には接続方向に延びるコ字状の窪みである端子片支持空間201が端子片21と同数形成され、各々の端子片21は端子片支持空間201に挿入され固定される。挿入方向と接続方向は図示のように一致してもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
メスコネクタ2においても、隣接する端子片支持空間201は、短手方向に突き出す隔離壁202により区切られる、長手方向に隣接する隔離壁202間の空間である。そして、隔離壁202は、端子片21間に挿入方向に延在し、端子片21を支持するとともに隣接する端子片21を絶縁する。
【0030】
図4は、図1に示した多接点コネクタを接続した状態でのIV−IV線における断面図である。同図には、オスコネクタ1の支持壁100の両壁面に設けられた端子片11が、メスコネクタ2の支持壁200の壁面又は外周壁の内側の壁面に設けられた端子片21間の空間に挿入されることにより、端子片11及び端子片21が接触し接続されている様子が示されている。端子片11及び端子片21は、多接点コネクタの接続時に、弾性により互いに押し付け合う形状となっており、これにより端子片11と端子片21間の接触不良が防止される。
【0031】
図5は、メスコネクタ2の端子片21を示す斜視図である。端子片21は、前述のとおり、金属板を打ち抜いたのち、曲げ加工を施すことにより作成されている。端子片21は、前述の端子片支持空間201(図3参照)に挿入され固定される概ね板状の本体210の一端である接続方向(したがって、挿入方向)下側の端部から、弾性接続部211及び基板接続部212が延び出す形状となっている。弾性接続部211は、本体210の一端から本体210側に反転してU字状に曲がって延びてバネ弾性を有し、短手方向に弾性変形可能である。これにより、図4に示したように、端子片21と端子片11は互いに押し付け合うこととなり確実な電気的接続が得られる。すなわち、弾性接続部211は、本実施形態の多接点コネクタの接点である。また、基板接続部212は、メスコネクタ2が実装される基板に端子片21をはんだ付け等により接続するための端子となる部分である。本実施形態では、基板接続部212は本体210から90度曲げられた突起となっているが、基板接続部212の形状はメスコネクタ2の実装の形態に応じて種々のものとしてよく、他にも例えば本体210から直線的に延びるリード線状の形状としてもよい。
【0032】
本体210の弾性接続部211の先端に相応する位置には、窪み213が設けられている。これは、弾性接続部211が弾性変形した際に、その先端が本体210に突き当たり、弾性接続部211自体が塑性変形してしまうのを防止するためのものである。窪み213は、端子片21を製造する際に、金属板に打ち抜き加工を施す前に、鍛造などによりあらかじめ窪み213を設けておくことにより容易に作成できる。或いは、窪み213に換えて、本体210に穴を設けてもよい。この場合には、金属板にあらかじめ穴を設けておいても、金属板の打ち抜き加工の際に同時に穴を作成するようにしてもよい。
【0033】
図6は、端子片21を短手方向から見た正面図である。本体210の長手方向の端面には、図示のとおり凹凸が設けられている。この端子片21の長手方向の端面のうち、一の面、図中左側の側面に設けられている凸部は固定突起214であり、端子片21が端子片支持空間201に挿入された際に、隔離壁202に突き当たり、強く押し付けることにより端子片21を固定する役割を有する(図3参照)。一方、反対側の他の面、図中右側の側面は、平坦な基準面215となっており、隔離壁202と面接触して端子片21の長手方向の位置を定める役割を有する。これにより、端子片21の長手方向の位置が正確に定められるため、隣接する端子片21間の距離が一定となる。これにより、メスコネクタ2のインピーダンス値のばらつきが少なくなる。
【0034】
そして、基準面215となっている端面には、凹部216が適宜設けられている。本実施形態では、凹部216の位置は、接続方向に関して、固定突起214に相応する位置となっている。
【0035】
この凹部216の働きについて図7を参照して説明する。図7は、複数の端子片21のうち隣接する2つの端子片21A及び21Bの位置関係を示す図である。メスコネクタ2自体が小型となり、接点のピッチが小さくなると、端子片21A及び21B間の距離も小さくなる。その場合、端子片21Aと端子片21Bの間に生じる容量が増加し、これにより生じるインピーダンス(容量リアクタンス)の値が無視できなくなる。端子片21Aと21Bの間に形成される容量は、端子片21Aと端子片21Bが向き合う面積に比例し、また向き合う面間の距離に反比例する。すなわち、端子片21Aと21Bが近接すればするほど、また、近接している部分の面積が大きくなればなるほど端子片21Aと21Bの間に形成される容量は大きくなる。そして、容量リアクタンスは周知のとおり、容量に反比例する。従って、端子片21Aと21Bの間に形成される容量が大きくなれば、メスコネクタ2のインピーダンスが小さくなることになる。このことは、端子片21Aと21Bの間で、近接して向き合う部分の面積が大きくなるほどメスコネクタ2のインピーダンスが低下することを意味する。
【0036】
ここで、端子片21Aで端子片21Bに最も近接する部位は、固定突起214Aが設けられている位置となる。そこで、端子片21Aに隣接する端子片21Bの端子片21Aに向き合う端面の固定突起214Aに相応する位置に凹部216Bを設ける。こうすると、凹部216Bが設けられない場合における固定突起214Aと基準面215Bとの距離d1が、固定突起214Aと凹部216Bとの距離d2(d2>d1)に広がり、端子片21Aと21Bの間に形成される容量が小さくなる。これにより、メスコネクタ2のインピーダンスの値が増大するのである。
【0037】
なお、以上の説明より明らかなように、凹部216Bは、必ずしも固定突起214Aに相応する位置の全てに設けられずともよい。固定突起214Aに相応する位置の一部にのみ凹部216Bを設けても容量は低下するため、メスコネクタ2が必要とするインピーダンスの値に応じて凹部216Bを設ける範囲を定めてよい。もちろん、固定突起214Aに相応する位置以外の部分に凹部216Bを設けてもよい。実際、図7に示した例では、3か所に示されている凹部216Bのうち一番上側のものは、固定突起214Aに相応する位置に設けられているものではない。
【0038】
なお、ここで示した実施形態では、図6に示したように、端子片21の長手方向の一の端面に固定突起214が設けられ、他の端面には固定突起214に相応する位置に凹部216を設けた。この構造では、単一の形状の端子片21を長手方向に並べて配置するのみで固定突起214に相応する位置に隣接する端子片21の凹部216が配置されることとなる。しかしながら、固定突起214に相応する位置に隣接する端子片21の凹部216が配置されるのであれば他の構成を採用してもよい。
【0039】
図8は、隣接する端子片21A,21Bの変形例を示す正面図である。この変形例では、端子片21Aと端子片21Bの形状が異なっている。そして、例えば、端子片21A単体を見ると、凹部216Aは、固定突起214Aに相応する位置には形成されていない。端子片21B単体を見た場合も同様である。
【0040】
この変形例では、端子片21Aと端子片21Bは長手方向に交互に配列されるよう企図されている。そして、その際、端子片21Aの固定突起214Aに相応する位置に端子片21Bの凹部216Bが位置するようになっている。端子片21Bの固定突起214Bと端子片21Aの凹部216Aについても同様である。このように、形状の異なる複数種類の端子片21A,21Bを用意し、長手方向に隣接して配置される端子片21Aと21Bの固定突起214A及び214Bの挿入方向の位置を互いに異ならしめることによっても、固定突起214A(又は固定突起214B)に相応する位置に隣接する端子片の凹部216B(又は凹部216A)が配置されるようにできる。
【0041】
なお、この変形例では端子片として21A及び21Bの2種類を用意したが、3種類以上を用いてもよい。
【0042】
図9は、隣接する端子片21A,21Bのさらなる変形例を示す正面図である。この変形例では、端子片21Aと端子片21Bの形状は基板接続部212を除き互いに等しいが、端子片21A,21Bの凹部216A及び216Bは、それぞれ固定突起214A及び214Bに相応する位置には形成されていない。そして、長手方向に隣接して配置された端子片21A,21Bの挿入方向位置、すなわち、メス側ハウジング20(図3参照)に対する差し込み深さが互いに異なるように配置されている。すなわち、この変形例では、差し込み深さが異なる端子片21A,21Bが交互に長手方向に配列されることになる。
【0043】
このようにしても、固定突起214A(又は固定突起214B)に相応する位置に隣接する端子片の凹部216B(又は凹部216A)が配置されるようにできる。なお、この場合には、端子片21A,21Bの差し込み深さが異なるため、端子片21A,21Bの形状が完全に同一であると、基板接続部212の接続方向の位置が異なってしまうため、メスコネクタ2の基板への実装が困難になる。そのため、ここで示した変形例では、基板接続部212の接続方向の長さを端子片21A,21Bでそれぞれ異ならしめている。しかしながら、前述したように、基板接続部212をリード線状の形状や他の形状とした場合、接続方向と挿入方向が異なっている場合などには、端子片21A,21Bの形状を同一としてもよい。
【0044】
なお、以上説明した実施形態及び各変形例では、固定突起214の設けられた端面の反対側の端面は、基準面215とされていたが、基準面215は必須のものではない。例えば、図10に示すように、長手方向の両端面に固定突起214を設けるようにしてもよい。この場合、固定突起214に挟まれた部分は凹部216となる。このようにすると、端子片21の長手方向の位置の正確さはやや損なわれるものの、端子片21をメス側ハウジング20に強固に固定することができる。
【0045】
なお、以上の説明では、メスコネクタ2に用いられる端子片21において、固定突起214と凹部216の位置関係を説明したが、同様の構造をオスコネクタ1に用いられる端子片11において採用してもよいことはもちろんである。オスコネクタ1、メスコネクタ2の双方に上述の構造を採用することにより、全体としてインピーダンス値の高い多接点コネクタが得られる。
【0046】
なお、以上説明した本発明の実施形態の一つの観点においては、端子片の長手方向の一の端面には固定突起が設けられ、前記端子片の長手方向の他の端面には前記固定突起に相応する位置に前記凹部が設けられている。このようにすると、単一形状の端子片を用いて、インピーダンス値の高い多接点コネクタが得られる。
【0047】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、長手方向に隣接して配置される端子片は、固定突起の当該端子片の挿入方向の位置が互いに異なる。このようにしても、インピーダンス値の高い多接点コネクタが得られる。
【0048】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、長手方向に隣接して配置された端子片のハウジングに対する端子片の挿入方向の位置が互いに異なる。このようにしても、インピーダンス値の高い多接点コネクタが得られる。
【0049】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、凹部が設けられている端面は隔離壁に接触し端子片の位置を定める基準面である。このようにすると、端子片の位置が正確にきめられ、インピーダンス値のばらつきを抑制できる。
【0050】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、端子片は、板状の本体と、前記本体の一端から前記本体側に曲がって延び、弾性を有する弾性接続部を有し、前記本体の前記弾性接続部の先端に相応する位置に窪み又は穴が設けられている。このようにすると、弾性接続部が弾性変形した際に本体と突き当たり変形するのを防止できる。
【0051】
なお、本明細書で示した実施形態は、本発明を実施する上での一例を示すものであり、本発明の技術的範囲を実施形態において示された具体的な構成に限定するものではない。実施形態において示された各部材の形状や配置、数等は、必要に応じて適宜設計乃至は変更されてよい。
【符号の説明】
【0052】
1 オスコネクタ、2 メスコネクタ、10 オス側ハウジング、11 端子片、12 ネイル、20 メス側ハウジング、21 端子片、22 ネイル、100 支持壁、101 端子片支持空間、102 隔離壁、120 弾性接続部、121 実装接続部、200 支持壁、201 端子片支持空間、202 隔離壁、210 本体、211 弾性接続部、212 基板接続部、213 窪み、214 固定突起、215 基準面、216 凹部、220 実装接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に直線状に配列された複数の端子片と、
前記端子片間に延在し前記端子片を支持するとともに隣接する前記端子片を絶縁する複数の隔離壁を備え、前記隔離壁間の端子片支持空間に前記端子片が挿入される絶縁性のハウジングと、
を備え、
長手方向に隣接する前記端子片のうち、一の前記端子片の他の前記端子片に向き合う端面には、前記隔離壁に突き当たり一の前記端子片を固定する固定突起が設けられ、他の前記端子片の一の前記端子片に向き合う端面には、一の前記端子片の前記固定突起に相応する位置に凹部が設けられている、
多接点コネクタ。
【請求項2】
前記端子片の長手方向の一の端面には前記固定突起が設けられ、前記端子片の長手方向の他の端面には前記固定突起に相応する位置に前記凹部が設けられている請求項1に記載の多接点コネクタ。
【請求項3】
長手方向に隣接して配置される前記端子片は、前記固定突起の当該端子片の挿入方向の位置が互いに異なる請求項1に記載の多接点コネクタ。
【請求項4】
長手方向に隣接して配置された前記端子片の前記ハウジングに対する当該端子片の挿入方向の位置が互いに異なる請求項1に記載の多接点コネクタ。
【請求項5】
前記凹部が設けられている端面は前記隔離壁に接触し前記端子片の位置を定める基準面である請求項1乃至4のいずれかに記載の多接点コネクタ。
【請求項6】
前記端子片は、板状の本体と、前記本体の一端から前記本体側に曲がって延び、弾性を有する弾性接続部を有し、
前記本体の前記弾性接続部の先端に相応する位置に窪み又は穴が設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載の多接点コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−20919(P2013−20919A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155952(P2011−155952)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】