説明

多数のフェライト部材を有する電気フィルタコネクタ

【課題】フェライトブロックの有する問題点は、コンタクトの短絡を防止するために、非導電性のフェライト酸化物から構成しなければならず、そのために、該フェライトブロックの長さを増加させずに低周波数(約1≦50MHz)を濾波することができず、それによって、コネクタの大きさを増大させてしまうという問題点を解決する。
【解決手段】別個のコンタクト配置孔30を有するハウジング16と、前記各コンタクト配置孔30に配置される雌コンタクト領域を有する第1の電気端子18と、少なくとも2つの別個のフェライトフード20とを具備するエアバッグのガス発生装置とともに使用するフィルタコネクタである。雌コンタクト領域は、各フェライトフード20に受容され、それらフェライトフード20は、電気的に互いに隔離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気コネクタに関し、さらに詳細には、フェライト部材を有する電気フィルタコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,489,220号明細書は、2つの電気コンタクトごとにフェライトバレルを有するフィルタコネクタを開示している。米国特許第5,213,522号明細書は、多数のフェライトブロックを有するフィルタコネクタを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−241785号公報
【0004】
【特許文献2】実開昭63−69378号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのフェライトブロックの有する問題点は、コンタクトの短絡を防止するために、非導電性のフェライト酸化物から構成しなければならず、そのために、該フェライトブロックの長さを増加させずに低周波数(約1≦50MHz)を濾波することができず、それによって、コネクタの大きさを増大させてしまうということである。エアバッグコネクタのように、小さい空間において使用しようとするフィルタコネクタのためには、コネクタの大きさの増大は望ましくない。導電性フェライト酸化物材料が、1−150MHzのようなより低い周波数減衰のために使用することが必要とされる場合には、電気的な絶縁体がコンタクトとフェライトブロックとの間に追加される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一態様によれば、第1の電気端子と、フェライトフード(ferrite hoods)と、第2の電気端子とを具備する電気フィルタコネクタ装置が提供される。前記第1の電気端子は、雌コンタクト領域を有している。前記フェライトフードは、前記各第1の端子のそれぞれの雌コンタクト領域を覆って据え付けられている。前記第2の電気端子は、第1の端子の雌コンタクト領域に配置される雄コンタクト領域を有している。
【0007】
この発明の他の態様によれば、ハウジングと、第1の電気端子と、フェライトフードとを具備するフィルタコネクタが提供される。前記ハウジングは、別々に分かれたコンタクト配置孔を有している。前記第1の電気端子は、前記各コンタクト配置孔内に配置される雌コンタクト領域を有している。前記フェライトブロックは、前記各コンタクト配置孔内に配置され、前記各第1の端子の雌コンタクト領域を別々に取り囲んでいる。
【0008】
この発明の他の態様によれば、第1の電気端子と、フェライトフードと、ハウジングとを具備する電気フィルタコネクタが提供される。前記第1の電気端子は、雌コンタクト領域を有している。前記フェライトフードは、前記雌コンタクト領域の各々に装着されている。前記ハウジングは、前記フェライトフードおよび前記各雌コンタクト領域を相互に間隔をあけた状態に維持するために、前記フェライトフード場に成形されている。
【0009】
この発明の一方法によれば、第1の電気端子の別々のコンタクト領域上にフェライトフードを配置するステップと、前記フェライトフードを相互に間隔をあけた状態に維持するために該フェライトフード上にハウジングを成形するステップとを具備する、電気フィルタコネクタの製造方法が提供される。前記フェライトフードは、雌コンタクト領域を相互に間隔をあけた状態に維持する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エアバッグガス発生器に取り付けられるこの発明の特徴を組み込んだ電気コネクタを示す斜視図である。
【図2】図1に示された電気コネクタの縦断面図である。
【図3】図1に示された電気コネクタの部分的に切断した斜視図である。
【図4】搬送ストリップに接続するとともに、縦断面で示されたフェライトチューブを有する導電体が取り付けられた接触端子の他の実施形態を示す正面図である。
【図5】コネクタの他の実施形態のプラグ部を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の前記特徴および他の特徴は、添付図面と関連してなされる以下の記述において説明される。
図1は、エアバッグガス発生器に取り付けられるこの発明の特徴を組み込んだ電気コネクタを示す斜視図である。
図2は、図1に示された電気コネクタの縦断面図である。
図3は、図1に示された電気コネクタの部分的に切断した斜視図である。
図4は、搬送ストリップに接続するとともに、縦断面で示されたフェライトチューブを有する導電体が取り付けられた接触端子の他の実施形態を示す正面図である。
図5は、コネクタの他の実施形態のプラグ部を示す横断面図である。
【0012】
図1には、この発明の特徴を有する電気コネクタ10の斜視図が示されている。この発明は、図面に示された実施形態を参照して説明されるが、この発明は他の多くの変形された形態で具現化することができることを一言しておく。加えて、任意の好適な大きさ、形状および部材または材料の形式を使用することができる。
【0013】
この実施形態において、前記コネクタ10は、導電体14,15をエアバッグガス発生器12と接続するために使用されるものである。しかしながら、コネクタ10は導体を他の装置と接続するために使用することもできる。図2を参照すると、コネクタ10は、概して、ハウジング16と、電気コンタクト18と、フェライトフード20とを具備している。
【0014】
前記ハウジング16は、第1のハウジング片22と第2のハウジング片24とを具備している。前記第1のハウジング片22は、変形可能なラッチ部26を駆動し得る2つの片持ち梁状のフィンガ部と、2つの分離した受入領域28と、前記ハウジングの底面32を貫通して前記受入領域28内に接続する2つの孔30とを具備している。
【0015】
前記ハウジング16は、前面部分34の底部において、ガス発生器12のソケット36にはめ込まれるように適合されている。前記ラッチ部26は、ソケット36内のラッチ面と係合するように適合されている。コネクタ10がガス発生器12から偶発的に外れることを防止するために、追加のコネクタ位置確保手段が設けられていることが好ましい。
【0016】
前記第2のハウジング片24は、コンタクト18およびフェライトフード20が前記受入領域28内に配置された後に、前記第1のハウジング片22の上に成形されることが好ましい。しかしながら、他の実施形態においては、他の形式のハウジングまたはハウジング構成部材が設けられていてもよい。
【0017】
図3を参照すると、電気コンタクト18は、各々が、雌コンタクト領域38と、導電体14,15に接続するための接続領域40とを具備している。前記コンタクト18は、打ち抜き成形された金属板から構成されていることが好ましい。
【0018】
前記雌コンタクト領域38は、2つのスプリングコンタクトアーム42と、先端位置決め部44とを具備している。各コンタクト18のリード部46は、前記雌コンタクト領域38と前記導体接続領域40との間に延びている。この実施形態において、前記リード部46は直角コネクタ用に90゜湾曲部を有している。しかしながら、リード部は、インラインコネクタ用に直線状であってもよい。前記導電体14,15は、前記接続領域40に、かしめられ、半田付けされ、または、溶接される。
【0019】
前記ソケット36は、固定された相互間隔をあけた、2つの雄ピンコンタクト48(一方のみが図3に示されている。)を有しており、前記ハウジング12の孔30を通して前記2つの雌コンタクト領域38に挿入されるようになっている。したがって、コンタクト18は、コンタクト48を導電体14,15に電気的に接続することができる。
【0020】
前記フェライトフード20は、2つの分離した部材として設けられている。好ましい実施形態において、前記フェライトフード20は、管状の形状を有し、導電性フェライト酸化物のような同じ材料から構成されている。しかしながら、前記フェライトフードは、異なる形状を有していてもよく、非導電性フェライト酸化物から構成されていてもよく、かつ/または、一方のフェライトフードが導電性フェライト酸化物から構成され、他方のフェライトフードが非導電性フェライト酸化物から構成される場合のように、異なる材料から構成されていてもよい。
【0021】
図示された実施形態において、2つの受入領域28は、ハウジング16の壁面50によって分離されている。受入領域28の底部には、孔30を取り囲む肩部52が設けられており、前記先端位置決め部44および前記フェライトフード20を当接状態に位置決めすることができるようになっている。
【0022】
前記フェライトフード20は、別々の受入領域28内に密着状態に受け入れられる。前記雌コンタクト領域38は前記フェライトフード20の各々の内部に受け入れられる。コンタクト18とフェライトフード20とは、コンタクト18がフェライトフード20内に挿入されるときに摩擦ばめされることが好ましい。
【0023】
コンタクト18が導電体に接続されるときには、フェライトフード20がコンタクト18に接触状態に配置され、フェライトフード20とコンタクト18とが、第1のハウジング片22内に配置され、その後、第2のハウジング片24が、前記コンタクトと前記フェライトフードとを相互に対して定まった位置に固定するために、前記第1のハウジング片22の上に成形される。オーバーモールドされた第2のハウジング片24は、導電体14,15に対して応力軽減をも提供する。他の実施形態においては、第2のハウジング片24は必ずしもオーバーモールドされなくてもよい。
【0024】
各コンタクト18に、それ自体の分離し、かつ、間隔をあけたフェライトフード20を設けることにより、該フェライトフード20を導電性のフェライト酸化物から構成することができ、そのために、非導電性のフェライト酸化物では減衰させることができなかった特定の周波数を減衰させることができる。
【0025】
フェライトフード20の形状は、米国特許第5,489,220号明細書におけるように、過剰なフェライト酸化物材料が使用されないように、最大効率を得るべく最適化される。米国特許第5,489,220号明細書におけるフェライトブロックと比較して、約75%少ないフェライト材料を使用することができる。これにより、コネクタ全体の大きさを低減することができることは明らかである。したがって、コネクタのコスト、重量および大きさを最小化することができる。
【0026】
この発明は、より良好な、または、より広い濾波範囲のために、一方を高周波減衰用に、他方を低周波減衰用にするように、同じコネクタ内に2つの異なるフェライト酸化物材料を使用することを可能としている。2つのフェライトフード20は、相互に電気的に分離されているので、たとえ、フェライトフード20を導電性材料から構成したとしても、該フェライトフード20は、間に絶縁体を使用せずにコンタクト18に直接据え付けることができる。
【0027】
フェライトブロックをより小さく構成することにより、フェライトブロックを使用したフィルタコネクタの大きさを低減しようとするときには、より多くの濾波の問題に遭遇することが予想される。この発明は、各コンタクトに対して別々のフェライトフードを提供し、不必要なフェライト酸化物材料なしに、良好な濾波のための各フェライトフード20の長さおよび幅を最適化することにより、良好な濾波を維持しながら、コネクタの大きさを低減する手段を提供することができる。
【0028】
コンタクト18とフェライトフード20との間の直接の機械的な接続によっても、フェライトフード20が導電性の材料から構成されているか、非導電性の材料から構成されているかに関わらず、装置を、より簡易かつ安価にすることができる。
【0029】
この発明は、所望により、コネクタ内のコイルフィルタと組み合わせることもでき、その場合には、ソケット36内において短絡棒とともに使用することが好ましい。フェライトフード20は、型内で圧縮され、一定形状に焼結された金属粉から構成されていることが好ましい。これに代えて、押出し成形のような他の製造方法も使用することができる。前記ハウジングが、該ハウジングを開きまたは取り外すことにより修理することを考慮に入れている場合には、コンタクトは、単に、該コンタクト18からフェライトフード20を分離し、新たなフェライトフードを取り付けることにより再使用することができる。したがって、コネクタ10は、ガス発生器12が使用された後にも使用することができる。
【0030】
図4を参照すると、コンタクトの他の実施形態が示されている。コンタクト118は、最初は搬送ストリップ119に取り付けられている金属板から構成されている。このコンタクト118は、最終的には、破線121において搬送ストリップから切断される。
【0031】
前記コンタクト118は、雌コンタクト受入領域138と、リード部146と、導電体114に接続するための導体接続領域140とを有している。前記リード部146は、前記受入領域138と前記接続領域140との間に、直角コネクタのための直角部分を提供している。また、リード部146は、前記受入領域138に面する停止面147をも提供している。前記受入領域138は、片持ち梁状のスプリングアーム部142とフード20への接続部143とを有している。前記接続部143は、前記コンタクト118上にフード20を摩擦ばめ式に据え付けるために、フード20を通して溝21内に圧力ばめされる大きさおよび形状に形成されている。他の、または、追加の接続手段を使用してもよい。
【0032】
また、電気的絶縁体をフードとコンタクトとの間に設けることもできるが、コネクタ内の2つのフードが相互に分離状態または電気的に非導電状態に保持されている場合には、その必要はない。前記停止面147は、前記フードをコンタクト118上に正確に据え付けることを可能にしている。したがって、アーム部142の端部145およびその接触領域148は、フード20およびその端部23に対して正確に配置される。
【0033】
これにより、最小限の量のフェライト材料を使用して、コンタクトの最良の濾波能力を提供するためのフード20の最小の長さを最適化することができ、それによって、コネクタの大きさを低減することができる。また、フード20のコンタクト118に組み付けることにより、単一のユニットとしてハウジング内に容易に挿入するための単一の組立体を提供することができる。
【0034】
図5を参照すると、他の実施形態の断面が示されている。コネクタ200は、誘電性プラスチックからなるハウジング202と、2つのフェライトフード204,206と、平行な雄コンタクトピン(図示略)を受け入れるための2つの電気コンタクト208,210とを有している。この実施形態において、ハウジング202は、単一の受入領域212を有している。2つのフード204,206は、隣り合った領域内に、相互に接触して配置されている。少なくとも1つのフード204,206は、非導電性のフェライト酸化物から構成されている。ハウジング212の少なくとも一部は、フード204,206上に成形されていてもよい。
【0035】
上述した説明は、単に、この発明の例示である。当業者であれば、この発明の範囲を逸脱することなく、種々の選択および変更を考案することができる。したがって、この発明は、請求項の範囲に配される、そのような選択、変更および変形の全てを包含するものである。
【符号の説明】
【0036】
16,202 ハウジング
18,118 コンタクト(端子)
20 フェライトフード
26 ラッチ部
28 コンタクト配置孔(受入領域)
38 雌コンタクト領域
40,140 配線接続領域
42,142 スプリングアーム(スプリングコンタクト)
48 雄ピンコンタクト(雄コンタクト領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
別個のコンタクト配置孔(30)を有するハウジング(16)と、
前記各コンタクト配置孔(30)に配置される雌コンタクト領域(38)を有する第1の電気端子(18)と、
少なくとも2つの別個のフェライトフード(20)と、
を具備するエアバッグのガス発生装置とともに使用するフィルタコネクタであって、
雌コンタクト領域(38)は、各フェライトフード(20)に受容され、それらフェライトフード(20)は、電気的に互いに隔離されていることを特徴とするフィルタコネクタ。
【請求項2】
前記第1の電気端子(18)が、導電体に接続される導体接続領域を有し、前記フェライトフード(20)が、前記導体接続領域から離れて配置されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
ハウジングが、互いに隔離された関係において、フェライトフードとそれらの各雌コンタクト領域とを維持するための誘電性部分を有する請求項1又は2に記載のフィルタコネクタ。
【請求項4】
前記誘電性部分がコンタクト配置孔(30)を分離する壁(50)を具備する請求項3に記載のフィルタコネクタ。
【請求項5】
前記雌コンタクト領域が、梁状のスプリングコンタクトと略方形の輪郭形状とをそれぞれ有し、前記フェライトフードが、それぞれ、それを貫通する単一の孔を有する管状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のフィルタコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングが、変形可能なラッチ部を有することを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のフィルタコネクタ。
【請求項7】
前記フェライトフードが、それぞれ、内径約1.5mm、外径約2.5mmの管状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載のフィルタコネクタ。
【請求項8】
前記フェライトフード(20)が異なる材料で製造される請求項1ないし7の何れかに記載のフィルタコネクタ。
【請求項9】
少なくとも1つの前記フェライトフード(20)が導電性フェライト酸化物からなり、少なくとも別のフェライトフード(20)が非導電性フェライト酸化物からなる請求項8に記載のフィルタコネクタ。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れかに記載のフィルタコネクタと、第1の電気端子(18)の雌コンタクト領域(38)に配置される雄コンタクト領域(48)を有する第2の電気端子とを具備することを特徴とするフィルタコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−230907(P2012−230907A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153952(P2012−153952)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2009−186481(P2009−186481)の分割
【原出願日】平成11年12月7日(1999.12.7)
【出願人】(595026324)エフシーアイ (73)
【Fターム(参考)】