説明

多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機

【課題】被研削物の外周面にあるバリや凹凸等の被研削箇所に対し、大きな研削力を連続的に発揮させて研削時間を短縮し、研削効率を向上させて、被研削物の平滑化に必要な作業時間を短くする。
【解決手段】定盤27の研削ベルト受け面形成側に、多数本の直線状突部列を研削ベルト11の走行方向に対し傾斜する方向に延ばして設け、それ等の突部33を研削ベルト受け面形成側に分散して配置し、それ等の突部33の頂面32により研削ベルト受け面28を形成すると共に、定盤27を揺動し、研削ベルト受け面28を研削ベルト11の走行方向と直角方向に連続的に往復動させる定盤揺動機構37を備える。そして、研削ベルト11を走行方向と直角方向に連続的に往復動させるベルト揺動機構47を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスの研削ベルトの表面に被研削物の外周面を押し付けて、その外周面を削り取って平滑にするベルト研削機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被研削物例えば鋳造品、プラスチック製品、木工品等の外周面を平滑にする場合、図10に示すような駆動及び従動ローラ1、2に張り渡したエンドレスの研削ベルト3と、その研削ベルト3の表面4に被研削物の外周面を押し付けた時、研削ベルト3の裏面5を受けて支持する研削ベルト受け面6を、研削ベルト3の裏面5に接触させ、平行に配置して設け、固定状態に設置した金属製の定盤7と、その駆動ローラ1に回転力を伝達する駆動源(図示なし)等とを備えた固定定盤付きベルト研削機8を用いている。そして、研削ベルト3には通常、基板となるベルトの表面に研削材を付着させた市販のものを用いる。すると、被研削物の外周面を駆動及び従動ローラ1、2の回転により走行する研削ベルト3の表面4に押し付け、その研削ベルト3の裏面5を固定定盤7の研削ベルト受け面6に当接して、研削ベルト3を固定定盤7で良好に支持できる。それ故、被研削物の外周面にあるバリや凹凸等を研削ベルト3の表面4に付着されている研削材(図示なし)で削り取って平滑にできる。
【特許文献1】特開2004−172296
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなベルト研削機8の固定定盤7の研削ベルト受け面6は、平滑な平面になっている。このため、被研削物の研削中、固定定盤7の研削ベルト受け面6から研削ベルト3の裏面5の全面に対し、均等に支持力が作用する。すると、被研削物の外周面に対し、研削ベルト3の表面4が全面当たりの状態になり、被研削物の外周面を押し付けた時、その外周面に最初に研削ベルト3の研削材が当たる初期研削時の研削力が大きくても、その研削材が研削ベルト4の走行により一旦被研削物の外周面下に潜り込むと、固定定盤7の研削ベルト受け面6から研削ベルト3の裏面5の全面に対し、均等に支持力が作用するので、大きな研削力を維持できずに研削力が小さくなる。このため、大きな研削力を連続的に発揮し難く、被研削物の外周面の粗面状態即ち外周面にバリが突出し、凹凸が存在する場合、そのバリや凹凸等のある被研削箇所の平滑化に時間が掛かり、研削効率を上げることができない。それ故、被研削物の外周面を削り取って平滑にするための作業時間が長くなるという問題がある。
【0004】
この点、特許文献1には、半導体ウェーハの被研磨面を全面にわたって均一に研磨するためのベルト研磨方式研磨装置として、互いの回転軸が平行に配置された2つのローラに懸けられたベルト状の定盤(基板)の表面に、例えば4枚のポリウレタンからなるシート状の研磨パッドを貼り付け、その貼り付け時、研磨パッドのいずれもが溝部の延伸方向を定盤の走行方向と合せると共に、定盤の走行方向に隣接する研磨パッド同士を、互いに間隔をおき且つ互いの溝部が揃わないように貼り付け、その研磨パッドの進行方向に延びる複数の溝部を、進行方向に対して斜めとなるように形成し、研磨パッドの表面に研磨剤を含むスラリを流し、各溝部により半導体ウェーハの表面上に効率良く供給しながら半導体ウェーハを研磨する半導体ウェーハに対する化学的機械的研磨装置が示されている。しかしながら、ベルト研削機は被研削物の外周面にバリが突出し、凹凸が存在する等の粗面を対象とし、研削材による削り取りにより、見た目の外観上で外周面を平滑状態にするのに対し、ベルト研磨方式研磨装置は見た目の外観上では平滑状態にある平面を対象とし、研磨材で研いで高精度の平面に仕上げるものである。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、被研削物の外周面に存在するバリや凹凸等の被研削箇所に対し、大きな研削力を連続的に発揮し易くして研削時間を短縮し、研削効率を向上させることにより、外周面の平滑化に必要な作業時間を短くできる多数突部付き揺動型定盤ベルト研削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機は、駆動及び従動ローラに張り渡したエンドレスの研削ベルトと、その研削ベルトの表面に被研削物の外周面を押し付けた時、研削ベルトの裏面を受けて支持する研削ベルト受け面を、研削ベルトの裏面に対し平行に配置して設けた定盤を備える。そして、上記定盤の研削ベルト受け面形成側に、多数本の直線状突部列を研削ベルトの走行方向に対し傾斜する方向に延ばして設け、それ等の突部を研削ベルト受け面形成側に分散して配置し、それ等の突部の頂面で研削ベルト受け面を形成すると共に、その定盤を揺動し、研削ベルト受け面を研削ベルトの走行方向と直角方向に連続的に往復動させる定盤揺動機構を備える。
【0007】
又、前記定盤の研削ベルト受け面形成側に、多数本の溝を研削ベルトの走行方向に対し傾斜する方向に延ばして設け、その各溝内に弾性部材を敷設し、その弾性部材上にチェーンを乗せて張設して、それ等のチェーンの突部により多数本の直線状突部列を設け、それ等の突部の頂面で研削ベルト受け面を形成すると好ましくなる。
【0008】
又、前記研削ベルトを走行方向と直角方向に連続的に往復動させるベルト揺動機構を備えるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機は、定盤の研削ベルトの受け面形成側に、多数本の直線状突部列を研削ベルトの走行方向に対し傾斜する方向に延ばして設け、それ等の突部を研削ベルト受け面形成側に分散して配置し、それ等の突部の頂面で研削ベルト受け面を形成することにより、被研削物の外周面を研削ベルトの表面に押し付けた時、研削ベルトの裏面を定盤の研削ベルト受け面を形成する分散した多数の突部の頂面により支持できる。すると、被研削物の外周面に対し、研削ベルトが各突部の頂面により夫々支えられた局部当りの状態になる。しかも、研削ベルトの走行方向と直角方向に直線状に並ぶ突部の位置が走行方向にずれて、その隣接する突部の頂面同士の位置が異なると共に、研削ベルトの走行方向に直線状に並ぶ突部の位置が直角方向にずれて、その隣接する突部の頂面同士の位置が異なるようにできる。
【0010】
そこで、その定盤を揺動し、定盤の研削ベルト受け面を研削ベルトの走行方向と直角方向に連続的に往復動させる定盤揺動機構を備えると、被研削物の外周面に存在するバリや凹凸等の各被研削箇所に夫々当接する研削ベルトの対応する各局部を、各局部毎に順次異なる突部の異なる頂面位置により夫々支持できる。このため、被研削物の外周面に存在するバリや凹凸等の被研削箇所に対し、大きな研削力を連続的に発揮して研削時間を短縮でき、研削効率が向上する。それ故、被研削物の外周面の平滑化に必要な作業時間を短くできる。
【0011】
そして、定盤の研削ベルト受け面形成側に、多数本の溝を研削ベルトの走行方向に対し傾斜する方向に延ばして設け、その各溝内に弾性部材を敷設し、その弾性部材上にチェーンを乗せて張設して、それ等のチェーンの突部により多数本の直線状突部列を設け、それ等の突部の頂面で研削ベルト受け面を形成することにより、被研削物の外周面が曲面状態であって、その外周面に存在するバリや凹凸が大きく、研削による衝撃力が大きくても、その衝撃力をチェーンの下に敷設した弾性部材により良好に吸収できる。それ故、研削作業を行い易く、曲面状態の外周面を削り易くて、研削ベルトが損傷し難くなり、曲面状態の平滑化を良好に行える。
【0012】
しかも、研削ベルトを走行方向と直角方向に連続的に往復動させると、研削ベルトを両側端部付近まで有効に使用し易くなる。それ故、先に研削ベルトの中央部付近が削り屑により目詰まりしたり、研削により摩耗したりすること等を防止できて、研削ベルトの寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図1〜9を参照して、本発明の実施の最良形態を説明する。
図1は多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機の概略構造を示す平面図、図2はその正面図、及び図3はそのベルト揺動スタート位置設定機構を示す側面図である。この多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機10は、エンドレスの研削ベルト11を駆動及び従動ローラ12、13に張り渡して用いる。そして、第1電動モータ14を台枠15aに駆動源として備え付け、その第1電動モータ14から回転軸16を介して駆動ローラ12に回転力を伝達する。一方、従動ローラ13には研削ベルト11に張力を加え、又その張力を解除するベルトテンション加除機構17を備え付けて、その従動ローラ13にテンションローラを兼ねさせる。
【0014】
そこで、ベルトテンション加除機構17の中核部材として、幅広部と幅狭部からなる細長い回動レバー18を用い、その回動レバー18の幅広部中央に回動の中心となる軸19を挿通して固定し、その回動レバー軸19を備え付けの軸受20で回動自在に支え、回動レバー18の一方の幅広端部で従動ローラ13の軸21を支え、他方の幅狭端部に研削ベルト11に張力を加える引張コイルスプリング22を備え付ける。更に、回動レバー18の幅狭部寄り幅広部に、ハンドル23付きの偏心カム24を回動自在に備え付ける。その際、偏心カム24の回動中心となるカム軸25として例えばピンを用いる。なお、26は矢印方向にハンドル23を操作する張力解除時に、偏心カム24を受け止めるカム受け固定部材である。それ故、回動レバー18の幅広端部を回動レバー軸19を中心にして矢印方向に揺動できて、研削ベルト11に対する張力の印加又は解除を行える。なお、回動レバー軸19は第1電動モータ14の筐体側壁付近に一端部を固定し、従動ローラ13に向けて延設して備え付けた細長い機構ベース15bに固定する。
【0015】
このようにして、駆動及び従動ローラ12、13間に張り渡し、ベルトテンション加除機構17により張力を印加した研削ベルト11に対し、その研削ベルト11の上部側として水平に張り渡したベルト中央部の直近下側に長方形平板状の定盤27を設置する。その際、定盤27の上面28を研削ベルト11の裏面(下面)29に接触させ、その裏面29と平行に配置する。すると、被研削物の外周面を研削ベルト11の上側部として張り渡したベルト中央部の表面(上面)30に押し付けた時、定盤27の上面28が研削ベルト11の裏面29を受けて支持する受け面になる。なお、定盤27は定盤取付平板31上に固定する。
【0016】
この定盤27には研削ベルト受け面28を形成するため、駆動及び従動ローラ12、13の回転により矢印方向に走行する研削ベルト11の走行方向に端から端まで延びる多数本の直線状突部列を、研削ベルト11の走行方向に対し傾斜させて、それ等の突部33が研削ベルト受け面形成側の全域に分散するように配置する。その際、定盤27として、金属製例えば鉄製の研削ベルト11の走行方向に沿う長さが220mm、幅が175mmで、厚さが8mmの長方形平板を用いる。そして、その定盤27の研削ベルト受け面形成側に、図4、5に示すように例えば研削ベルト11の走行方向に対し、一方向からの傾斜角度を50度にして、幅が3.5mm、深さが2mmの溝を5mmの間隔を置いて26本設け、更に研削ベルト11の走行方向に対し、反対方向からの傾斜角度を50度にして、幅が3.5mm、深さが2mmの溝を3.5mmの間隔を置いて33本設ける。すると、研削ベルト受け面形成側の全域に、1辺の長さが5mmと3.5mmの平行四辺形状頂面32又はその一部分に該当する頂面を有する突部33からなる多数本の直線状突部列を、研削ベルト11の走行方向に対し右方向又は左方向に傾斜させて形成できる。それ故、それ等の突部33の頂面32の全体で研削ベルト受け面28を形成できる。
【0017】
このため、被研削物の外周面を研削ベルト11の表面30に押し付けた時、その研削ベルト11の裏面29を定盤27の研削ベルト受け面形成側の全域に分散した多数の突部33の頂面32により支持できる。すると、被研削物の外周面に対し、研削ベルト11が各突部33の頂面32により夫々支えられた局部当りの状態になる。しかも、研削ベルト11の走行方向と直角方向に直線状に並ぶ突部33の位置を走行方向に僅かずつずらして、その隣接する突部33の頂面32同士の位置を異ならせると共に、研削ベルト11の走行方向に直線状に並ぶ突部33の位置を直角方向に僅かずつずらして、その隣接する突部33の頂面32同士の位置を異ならせることができる。
【0018】
この定盤27を揺動可能にする。そこで、独立した駆動源として、機構ベース15bに固定したモータ取付板34に第2電動モータ35を据え付ける。そして、第2電動モータ35の回転軸36と定盤取付平板31との間に定盤揺動機構37を介在する。その際、定盤揺動機構37をクランク機構によって構成するため、第2電動モータ35の回転軸36に回転板38を固定し、その回転板38と定盤取付平板31とを、一端部に回転板38の板面から突出するピン39が嵌まる受け穴を設け、他端部に定盤取付平板31の板面から突出するピン40が嵌まる受け穴を設けた連接板41により結合する。すると、第2電動モータ35の回転により、回転板38の矢印方向への回転運動を、更に矢印で示す直線往復運動に変換して定盤取付平板31に伝達し、定盤27を研削ベルト11の走行方向と直角方向に矢印で示すように連続的に往復動させることができる。当然、研削ベルト受け面28が研削ベルト11の走行方向と直角方向に連続的に往復動する。その際、定盤取付平板31の下面の研削ベルト11の走行方向の前後に該当する両端寄り中央部に、角柱状の取付平板支持台42、43を夫々突設し、その各定盤支持台42、43の中央に設けた貫通穴に、研削ベルト11の走行方向と直角方向に向けて平行に対応させて配置し、両端部をいずれも機構ベース15cに固定した軸受44で支持した2本のスライド軸45、46を夫々挿通しておく。すると、定盤27がスライド軸45、46に沿って連続的に往復動する。
【0019】
更に、研削ベルト11を揺動可能にする。そこで、定盤取付平板31とその下側に張り渡した研削ベルト11の下側部間の空間部を主に利用して、そこにベルト揺動機構47を設置する。しかも、そのベルト揺動機構47を定盤取付平板31の動きに追随させる機構にする。そのため、先ず定盤取付平板31の下側に固定した断面L字状のカム取付部材48に対し、大略直角三角形状の板カム49をねじ止めして固定する。そして、その板カム49の斜面に、ベルト揺動レバー50の長い主要部51の一端側に設けられ、その主要部51に対し短く屈曲した屈曲部52の先端に備え付けのカムホロワローラ53を当接させる。すると、定盤27と一体に結合した板カム49の動きにカムホロワローラ53を追随させることができる。又、そのベルト揺動レバー50の屈曲部52寄り箇所に揺動軸54を挿通させて、その揺動軸54の中央部を後述する軸受58、65を用いて回動可能に支持し、主要部51の中央付近に引張コイルスプリング55を備え付ける。すると、揺動軸54の一端にコ字状のローラ支持枠56を割締め等で固定し、そのローラ支持枠56により、揺動ローラ57の軸両端を回動自在に支持して、その揺動ローラ57を研削ベルト11の裏面29に当接できる。
【0020】
更に、研削ベルト11の揺動スタートの位置を調整可能にする。そこで、ベルト揺動レバー50の主要部51に沿わせて、一端部に揺動軸54の他端を回動自在に支持する軸受58を備え、その揺動軸54の他端付近を割締め等により固定した揺動スタート位置調整用の固定レバー59を備え付ける。そして、ベルト揺動レバー50の他端部に、その他端部から立ち上がり、揺動スタート位置調整固定レバー59の端部に向って突出し、貫通穴を有するボルト設置用の突部60を設け、その突部60に揺動スタート位置調整ボルト61の先端側ねじ部を挿通して設置する。又、その揺動スタート位置調整固定レバー59の端部に、揺動スタート位置調整ボルト61の先端側ねじ部中央付近に巻回した圧縮コイルスプリング62を収納するスプリング収納凹所63付きのねじ止め部64を設ける。
【0021】
すると、揺動軸54の中央部が回動自在に貫通するベルト揺動レバー50は、その揺動軸54の一端部が固着する揺動スタート位置調整固定レバー59と、圧縮コイルスプリング62と揺動スタート位置調整ボルト61とを介して結合する。それ故、定盤取付平板31が揺動すると、その動きに板カム49、ベルト揺動レバー50、揺動スタート位置調整固定レバー59、ローラ支持枠56、揺動ローラ57が追随して、研削ベルト11と接触する揺動ローラ57の角度が変わり、研削ベルト11を走行方向と直角方向に一定範囲で連続的に往復動させることができる。しかも、揺動スタート位置調整ボルト61を右又は左回転させると、ベルト揺動レバー50の主要部51に対し、揺動スタート位置調整固定レバー59が近付き又は離れ、揺動軸54が僅か回動する。それ故、揺動軸54の他端に固定されているローラ支持枠56も僅か回動して、研削ベルト揺動のスタート位置を簡単に調整できる。なお、65も揺動軸54を回動自在に支持する軸受である。
【0022】
このような多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機10は、使用時、研削ベルト11を走行させ、その走行する研削ベルト11の表面30に被研削物の外周面を押し付けると、その研削ベルト11の裏面29を定盤27の研削ベルト受け面形成側の全域に分散した多数の突部33の頂面32が支えているので、被研削物の外周面に対し、研削ベルト11が局部当りの状態になる。しかも、定盤27の研削ベルト受け面形成側の全域に多数の突部33の頂面32が分散し、研削ベルト11の走行方向と直角方向に直線状に並ぶ突部33の位置が走行方向に僅かずれて、その隣接する突部33の頂面32同士の位置が異なると共に、研削ベルト11の走行方向に直線状に並ぶ突部33の位置が直角方向に僅かずれて、その隣接する突部33の頂面32同士の位置が異なっている。それ故、被研削物の外周面に存在するバリや凹凸等の各被研削箇所を、定盤27の各突部33の頂面32に夫々支えられた研削ベルト11の各局部により、特に凹部内には食い込んで、連続的に研削できる。
【0023】
そして、定盤27を揺動させ、定盤27の研削ベルト受け面28を研削ベルト11の走行方向と直角方向に連続的に往復動させることにより、被研削物の各被研削箇所が夫々当接する研削ベルト11の対応する各局部を、各局部毎に順次異なる突部33の異なる頂面32の位置により夫々支持できる。このため、被研削物の外周面に存在するバリや凹凸等の被研削箇所に対し、大きな研削力を連続的に発揮して研削時間を短縮でき、研削効率が向上する。それ故、被研削物の外周面の平滑化に必要な作業時間を短くできる。そして、更に研削ベルト11を走行方向と直角方向に連続的に往復動させることにより、研削ベルト11を両側端部付近まで有効に使用し易くなる。それ故、先に研削ベルト11の中央部付近が削り屑により目詰まりしたり、研削により摩耗したりすること等を防止できて、研削ベルト11の寿命を長くすることができる。
【0024】
上記実施の形態では、定盤27の研削ベルト受け面形成側に、多数本の直線状突部列を、研削ベルト11の走行方向に対し傾斜する方向に延ばして端から端まで設け、それ等の突部33を研削ベルト受け面形成側の全域に分散して配置し、それ等の突部33の頂面32の全体により研削ベルト受け面28を形成する場合について説明したが、図6〜9に示すように定盤66の研削ベルト受け面形成側に、多数本の溝68を研削ベルト11の走行方向に対し傾斜する方向に延ばして端から端まで設け、その各溝68内に弾性部材69を敷設し、その弾性部材69上にチェーン70を乗せて張設して、多数本の直線状突部列を形成することができる。その際、例えば定盤66の基板71として、研削ベルト11の走行方向に沿う長さが232.2mm、幅が175mmで、厚さが10mmのアルミ製の長方形平板を用いる。そして、その基板71の研削ベルト受け面形成側の面に研削ベルト11の走行方向に対し、左方向の傾斜角度を37度にして、幅が7mm、深さが5mmの溝68を4mmの間隔を置いて、22本設ける。又、その溝68内に敷く弾性部材69として細長いゴム製平板を用い、その上に乗せるチェーン70としてリンクチェーンを用いる。なお、リンクチェーン70を構成する各リング72の相対する両側面にある最突出部分を、いずれも平面状に形成したものが市販されているので、その種のチェーンを採用すると、チェーン70の各リング72にある平面状頂面76付き突部73の列により、直線状突部列を簡単に作れる。
【0025】
又、チェーン70は設置時に、基板71に設けた溝68内に対し、いずれもチェーン70の一端にあるリング72を基板71の後側又は前側寄り側端付近にねじ74を用いて螺着し、その他端部付近を基板71の前側又は後側寄り側端付近に巻き付けて、チェーン70を張った状態にして、その他端にあるリング72に引張コイルスプリング75の一端を接続し、その他端を基板71の裏面にねじ74を用いて固着する。すると、チェーン70の各リング72毎に1対の突部73があるので、各チェーン70毎に2本の平行な直線状突部列ができ、基板71の研削ベルト受け面形成側の平面より各突部73の頂面76をいずれも1.5mm突出でき、それ等の突部73の頂面76で研削ベルト受け面67を形成できる。なお、基板71の前後側端に螺着により鉄製の細長い補強部材76を夫々固定する。このようにして完成した定盤66を使用すると、被研削物が曲面状態であって、その外周面に存在するバリや凹凸が大きく、研削による衝撃力が大きくても、その衝撃力をチェーン70の下に敷設した弾性部材69により良好に吸収できる。それ故、研削作業を行い易く、曲面状態の外周面を削り易くて、研削ベルトが損傷し難くなり、曲面状態の平滑化を良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機の概略構造を示す平面図である。
【図2】同多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機の正面図である。
【図3】同多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機に備えるベルト揺動機構の概略構造を示す側面図である。
【図4】同多数突部付き定盤の一実施形態を、その研削ベルト受け面形成側の全域に表示すべき突部の大部分を省略して示す平面図である。
【図5】同多数突部付き定盤のA−A断面図である。
【0027】
【図6】同多数突部付き定盤の他の実施形態を、その研削ベルト受け面形成側の全域に表示すべきチェーンの大部分を省略して示す説明図である。
【図7】同多数突部付き定盤のB−B断面図である。
【図8】同多数突部付き定盤のC−C断面図である。
【図9】同多数突部付き定盤のD−D断面図である。
【図10】従来の固定定盤付きベルト研削機の主要部の概略構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10…多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機 11…研削ベルト 12、13…駆動、従動ローラ 14、35…第1、第2電動モータ 16、36…回転軸 17…ベルトテンション加除機構 18…回動レバー 19…回動レバー軸 20、44、58、65…軸受 21…従動ローラ軸 22、55、75…引張コイルスプリング 23…ハンドル 24…偏心カム 25、39、40…ピン 26…カム受け固定部材 27、66…定盤 28、67…研削ベルト受け面 29…研削ベルト裏面 30…研削ベルト表面 31…定盤取付平板 32、76…突部の頂面 33、73…突部 37…定盤揺動機構 38…回転板 41…連接板 42、43…定盤支持台 45、46…スライド軸 47…ベルト揺動機構 48…カム取付部材 49…板カム 50…ベルト揺動レバー 53…カムホロワローラ 54…揺動軸 56…ローラ支持枠 57…揺動ローラ 59…揺動スタート位置調整固定レバー 60…ボルト設置用突部 61…揺動スタート位置調整ボルト 62…圧縮コイルスプリング 63…スプリング収納凹所 64…ねじ止め部 68…溝 69…弾性部材 70…チェーン 71…基板 72…リング 74…ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動及び従動ローラに張り渡したエンドレスの研削ベルトと、その研削ベルトの表面に被研削物の外周面を押し付けた時、研削ベルトの裏面を受けて支持する研削ベルト受け面を、研削ベルトの裏面に対し平行に配置して設けた定盤を備えたベルト研削機であって、上記定盤の研削ベルト受け面形成側に、多数本の直線状突部列を研削ベルトの走行方向に対し傾斜する方向に延ばして設け、それ等の突部を研削ベルト受け面形成側に分散して配置し、それ等の突部の頂面で研削ベルト受け面を形成すると共に、その定盤を揺動し、研削ベルト受け面を研削ベルトの走行方向と直角方向に連続的に往復動させる定盤揺動機構を備えることを特徴とする多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機。
【請求項2】
定盤の研削ベルト受け面形成側に、多数本の溝を研削ベルトの走行方向に対し傾斜する方向に延ばして設け、その各溝内に弾性部材を敷設し、その弾性部材上にチェーンを乗せて張設して、それ等のチェーンの突部により多数本の直線状突部列を設け、それ等の突部の頂面で研削ベルト受け面を形成することを特徴とする請求項1記載の多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機。
【請求項3】
研削ベルトを走行方向と直角方向に連続的に往復動させるベルト揺動機構を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の多数突部付き定盤揺動型ベルト研削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−62806(P2011−62806A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218194(P2009−218194)
【出願日】平成21年9月19日(2009.9.19)
【出願人】(509265782)
【出願人】(509265793)
【Fターム(参考)】