説明

多方向スイッチ

【課題】操作ロッドを傾動操作した場合にも、操作ロッドに作用する付勢力を適正にする多方向スイッチを構成する。
【解決手段】操作ロッド20の内端位置の係合体24と、ケース10の底壁部13Bとの間に、付勢軸芯Qに沿って移動自在な受圧部材26、受圧部材26を係合体24の方向に付勢する圧縮コイルバネ48を備えた。係合体24の外周の係合片24Aに係合して一体回転するロータ56の筒状部56Aの内面には受圧部材26に接当することで傾動を規制する複数の突出片60を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに支持した操作ロッドの傾動操作を電気的に検出する傾動検出部と、この操作ロッドのロッド軸芯に沿う方向への押込み操作を電気的に検出する押込み検出部と、この操作ロッドの回転操作を電気的に検出する回転検出部とを備えている多方向スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された多方向スイッチとして特許文献1に記載されるものが存在する。この特許文献1では、操作ロッドの中間に作動体が外嵌され、操作ロッドが傾動操作された場合には、作動体に形成した4つの押圧操作部の何れかが対応する位置のバネ板材を押圧して弾性変形させ、このバネ板材が対応する電極に接触することで、この傾動操作を電気的に検出するように傾動検出部が構成されている。
【0003】
また、特許文献1では、操作ロッドの下端位置に接当部が突出形成され、操作ロッドがロッド軸芯の方向に押込み操作された際に、接当部がバネ板材を押圧して弾性変形させ、このバネ板材が対応する電極に接触することで、この押し込み操作を電気的に検出するように押込み検出部が構成されている。特に、接当部を取り囲む位置にリング状のバネ受け部材を備え、このバネ受け部材とケースの底壁との間に圧縮コイル型の戻しバネを備えている。
【0004】
更に、特許文献1では、操作ロッドの下部にギヤ状に形成された複数の係合片に係合する筒状部と、この筒状部の下端部に一体形成された鍔状部とで成るロータを備えている。このロータは操作ロッドと一体回転するものであり、操作ロッドの回転操作時には鍔状部の下面の摺接部と、ケースの底面に形成された複数の電極との接触によって回転量を電気的に検出するように回転検出部が構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007‐227006号公報 (段落番号〔0020〕〜〔0054〕、図3〜図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される多方向スイッチの戻しバネは、操作ロッドがロッド軸芯の方向に沿って押し込み操作された場合に、この操作ロッドを戻す方向に付勢力を作用させる機能するものであるが、操作ロッドが傾動操作された場合には、この操作ロッドを中立姿勢の復元させる力を作用させる機能も有している。
【0007】
この特許文献1に示される多方向スイッチにおいて、戻しバネから操作ロッドに作用する付勢力を考えると、操作ロッドを傾動操作した場合には、特許文献1の図6に示されるように、戻しバネにおける直径方向での一方の部位が圧縮されると同時に、これとは逆側の部位が伸張する形態となる。
【0008】
このように戻しバネが偏った加重によって不均一に圧縮された場合には、戻しバネの軸芯(コイルが描く円の中心を結ぶ仮想直線)から外れた方向に付勢力が作用するため操作ロッドに対して中立方向に作用する付勢力が低下していた。
【0009】
つまり、操作ロッドを傾動操作した場合には、戻しバネのうち圧縮された部位に付勢力が発生するものであるが、バネ受け部材が戻しバネの軸芯に対して傾斜するため付勢力はバネ受け部材の傾斜面に沿う方向に作用することになり、操作ロッドに作用する復元力が低下していたのである。
【0010】
特に、操作ロッドの傾動操作に伴い、前述したように戻しバネの付勢力がバネ受け部材の傾斜面に沿う方向に作用する場合には、この付勢力が戻しバネ自身を移動させる方向に作用する結果、操作ロッドの傾動操作の途中でケースの底面とバネ受け部材との間で戻しバネが変位し、操作ロッドに作用する付勢力の方向が変化して操作感が悪化するものとなり改善の余地があった。
【0011】
本発明の目的は、操作ロッドを傾動操作した場合にも、操作ロッドに対して適正に付勢力を作用させる多方向スイッチを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、ケースに支持した操作ロッドの傾動操作を電気的に検出する傾動検出部と、この操作ロッドのロッド軸芯に沿う方向への押込み操作を電気的に検出する押込み検出部と、この操作ロッドの回転操作を電気的に検出する回転検出部とを備えている多方向スイッチであって、
傾動操作方向で中立姿勢にある前記操作ロッドのロッド軸芯と同軸芯となる付勢軸芯に沿って前記操作ロッドに付勢力を作用させる付勢部材を備え、前記操作ロッドのうちケース内の内端部に対して前記付勢部材からの付勢力によって接当する受圧部材を備えると共に、この受圧部材は操作ロッドの傾動操作時における傾動限界が設定されている点にある。
【0013】
この構成によると、操作ロッドが傾動操作され、操作ロッドの内端の外周部の一方の部位が付勢部材を圧縮する方向に変位し、操作ロッドの内端の外周部の他方の部位が付勢部材を伸張する方向に変位した場合でも、受圧部材の傾動限界が設定されているので、受圧部材のうち、付勢部材が伸張する位置に対応する部位が操作ロッドの方向に大きく変位する現象を阻止して、この受圧部材の姿勢を付勢軸芯に直交する姿勢に近い姿勢に維持できる。このように受圧部材の傾動限界が設定されているので操作ロッドを傾動操作した場合には、押圧側において受圧部材と操作ロッドが接触するものの他方が離間するため、この接触する部位から付勢部材の付勢力だけを操作ロッドに作用させ、操作ロッドの復元力を高めるものとなる。その結果、操作ロッドを傾動操作した場合にも、操作ロッドに対して付勢力を適正に作用させる多方向スイッチが構成された。
【0014】
本発明では、前記受圧部材に接当することにより前記傾動限界を設定する突出片を備えても良い。これによると、受圧部材に接当する突出片を備えると云う簡単な構造により受圧部材の傾動限界を設定できる。
【0015】
本発明では、前記回転検出部が、前記操作ロッドとともに回転するロータと、このロータの回転位置を検出する複数の電極とを備えて構成され、前記ロータが、前記操作ロッドの内端部の外周に係合して一体的に回転可能な筒状部を備えて構成され、前記付勢部材と受圧部材とが前記筒状部の内部に配置され、前記突出片が、前記筒状部の内面に形成されても良い。これによると、突出片を備えるための部材を特別に形成しなくともロータの筒状部を利用することで部品点数を増大させることなく受圧部材の傾動限界を設定できる。
【0016】
本発明では、前記押込み検出部が、前記操作ロッドの押込み方向への操作に起因する押圧力の作用で弾性変形する導体で成るバネ板材と、このバネ板材の弾性変形時にバネ板材との接触によって導通状態に達する一対の電極とを備えて構成され、前記付勢部材が圧縮コイルバネで構成されると共に、この圧縮コイルバネが前記バネ板材を取り囲む位置に配置されても良い。これによると、操作ロッドをロッド軸芯に沿って押込み操作した場合には、バネ板材と電極との接触によって押し込み操作を検出できる。また、操作ロッドを傾動操作した場合には、この傾動に伴って受圧部材が変位し圧縮コイルバネが圧縮されるため、この圧縮コイルバネから受圧部材に作用する付勢力を操作ロッドを中立姿勢に復帰させる方向に作用させることも可能となる。
【0017】
本発明では、前記傾動検出部が、前記操作ロッドと一体的に傾動する作動体と、この作動体からの押圧力の作用で弾性変形する導体で成るバネ板材と、このバネ板材の弾性変形時にバネ板材との接触によって導通状態に達する一対の電極とを前記操作ロッドを取り囲む位置に配置して構成しても良い。これによると、操作ロッドを傾動操作した場合には、対応するバネ板材と電極とが接触することにより、この傾動操作の方向を電気的に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1〜図4に示すように、ケース10に対して上下方向に向かう姿勢の操作ロッド20を備えると共に、この操作ロッド20の傾動操作を電気的に検出する傾動検出部Aと、この操作ロッド20のロッド軸芯Yに沿う方向への押込み操作を電気的に検出する押込み検出部Bと、この操作ロッド20の回転操作を電気的に検出する回転検出部Cとを備えて多方向スイッチが構成されている。
【0019】
この多方向スイッチは、携帯電話機、PDA、ゲーム機器のコントローラや、家庭電化製品のリモートコントローラ等に備えられるものである。尚、この多方向スイッチでは使用時において上下方向は無関係であるが、本実施形態では図3の上側を上方と称し、下側を下方と称している。
【0020】
多方向スイッチは、非操作状態にある場合には前記操作ロッド20が中立姿勢Nを維持する。傾動検出部Aは中立姿勢Nを基準にして十字の方向(4方向)への傾動操作を検出する。操作ロッド20の軸芯を前記ロッド軸芯Yと称し、前記押込み検出部Bはロッド軸芯Yに沿う方向への押込み操作を電気的に検出する。前記回転検出部Cは、中立姿勢Nのロッド軸芯Y周りでの回転操作量を電気的に検出する。
【0021】
この多方向スイッチでは傾動検出部Aとして操作ロッド20を十字方向の何れかに操作した際の4方向への操作を検出するように構成しているが、傾動検出部Aが例えば2方向のように4方向未満の方向への傾動を検出するものであって良く、また、8方向等、5方向以上の方向への傾動を検出するものであっても良い。
【0022】
ケース10は、何れも絶縁性の樹脂材料で成るトップカバー11と上部ケース12と下部ケース13とを連結して構成されている。これらトップカバー11と上部ケース12と下部ケース13とは、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに沿う方向視(平面視)の断面形状が正8角形となるように型成形されている。
【0023】
トップカバー11には操作ロッド20が上下方向に貫通する貫通孔11Aが形成されている。このトップカバー11の下面側には操作ロッド20の傾動中心Pから等距離となる凹状の案内面11Gが形成されている。更に、このトップカバー11の外周部には4つの連結片14が下方に向けて一体的に突設形成され、この連結片14の先端に孔状となる係合連結部14Aが形成されている。
【0024】
貫通孔11Aは平面視で傾動方向に沿う十字状の案内溝11AGを有した構造であり、この案内溝11AGの内面には前記傾動中心Pの方向に向かう傾斜面が形成されている。
【0025】
上部ケース12は、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに沿う姿勢の筒状の側壁部12Aと、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに対して直交する姿勢の中間壁部12Bとが一体形成されている。また、中間壁部12Bの中央位置には開口12Hが形成され、側壁部12Aの外面には凸状となる8つの係合片12Tが周方向で等間隔に形成されている。
【0026】
図10に示すように、この上部ケース12の中間壁部12Bの上面側には前記操作ロッド20を挟んで十字方向に対応する4箇所の検出位置に導体で成るセンター電極31が形成され、このセンター電極31を取り囲む位置に導体で成るリング電極32が形成されている。
【0027】
この上部ケース12の中間壁部12Bには4つの前記センター電極31と個別に導通する独立した傾動検出回路と、4つの前記リング電極32と導通するコモン回路とがインサートの技術によって形成されている。また、この上部ケース12には、傾動検出回路に導通する4つの傾動検出リード33が下方に向けて突出形成され、コモン回路と導通する単一のコモンリード34が下方に向けて突出形成されている。
【0028】
下部ケース13は、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに沿う姿勢の筒状の側壁部13Aと、中立姿勢Nのロッド軸芯Yに対して直交する姿勢の底壁部13Bとが一体形成されている。また、底壁部13Bの上面中央には前記押込み検出部Bが配置される環状のリブ状となる規制部13Cと、この外周位置に環状のリブ状となるバネ受け部13Dとが同心円状に突出形成されている。
【0029】
この下部ケース13の側壁部13Aには上方に向けて4つの連結片15が一体的に突出形成され、この連結片15の先端に孔状となる係合連結部15Aが形成されている。
【0030】
図7に示すように、下部ケース13の底壁部13Bのうち、規制部13Cに取り囲まれる部位の中央位置には導体で成るセンター電極41が形成され、このセンター電極41を取り囲む位置には導体で成るリング電極42が形成されている。この下部ケース13の底壁部13Bにはセンター電極41に導通する押し操作検出回路と、リング電極42に導通するリング回路とがインサートの技術によって形成されている。更に、押し操作検出回路に導通する押し操作検出リード43が下方に向けて突出形成され、前記リング回路に導通するリングリード44が下方に向けて突出形成されている。
【0031】
この下部ケース13の底壁部13Bのうち、前記バネ受け部13Dの外周部分には導体で成るリング状の共通電極51と、導体で成る複数のカウント電極52を配置しており、このカウント電極52を取り囲む位置にはクリック用の多数の凹凸部53が形成されている。
【0032】
また、共通電極51は下部ケース13の底壁部13Bの内部にインサートの技術によって形成された回路を介して共通リード54に導通し、カウント電極52はインサートの技術によって形成された回路を介してカウントリード55に導通している。この共通リード54とカウントリード55とは下方に向けて突出形成されている。また、この下部ケース13の外面下部には4つの傾動検出リード33と、1つのコモンリード34とが挿通する孔部を形成したリードホルダ部13Hが形成されている。
【0033】
〔操作ロッド〕
前記操作ロッド20は銅合金などの比較的剛性が高い素材が用いられると共に、ケース10から上方に突出する上端部21にはノブ等が取付けられるDカット部21Aが形成されている。この上端部21の下側に小径部21Bと、中間部22とが形成され、この中間部22より下側でケース10の内部に位置する部位には大径部23が形成されている。
【0034】
小径部21Bはトップカバー11の案内溝11AGに入り込む直径に設定され、大径部23から下方に突出する部位には回転力を出力するギヤ状となる複数の係合片24Aを有する係合体24が連結され、この係合体24の下端には接当部25が突出形成されている。尚、接当部25は図3に示す傾動中心Pを中心として下方に突出する半球面状に成形されている。
【0035】
バネ受け部13Dには付勢部材としての圧縮コイルバネ48を備え、この圧縮コイルバネ48と、操作ロッド20の内端部に位置する係合体24との間には樹脂製の受圧部材26が配置されている。この受圧部材26は、その中央位置に接当部25が挿通する孔部26Aが形成されている。この受圧部材26は、後述するロータ56の筒状部56Aの内面に形成された複数の突出片60に接当することで傾動限界が決まる。
【0036】
特に、この圧縮コイルバネ48の付勢軸芯Q(コイルが描く円の中心を結ぶ仮想直線)は、中立姿勢Nにある操作ロッド20のロッド軸芯Yと同軸芯上に配置される。これにより、受圧部材26は付勢軸芯Qに沿って移動自在となり、複数の突出片60に接当することにより傾動限界が決まる。
【0037】
〔傾動検出部〕
前記傾動検出部Aは、前述したように上部ケース12の中間壁部12Bの4箇所に形成されたセンター電極31と、リング電極32と、これらを覆う位置に配置される導体で成るドーム状のバネ板材35と、この4つのバネ板材35の上面に接する緩衝体36Aを一体形成したゴムリング36と、このゴムリング36の上面に密着配置されたリング状のバネ材で成るバネリング37と、操作ロッド20の傾動時に緩衝体36Aを介してバネ板材35に押圧力を作用させる作動体38とを備えている。
【0038】
前記バネ板材35は、銅合金や鉄合金等の導体で成る円盤状の素材が用いられ、その中央部が上方に膨出するドーム状に成形されている。このバネ板材35は押圧力が作用しない状況では周囲が前記リング電極32に接触しており、中央部がセンター電極31から離間している。
【0039】
このバネ板材35の中央部に上方から押圧力が作用した場合には弾性変形によりバネ板材35の中央部がセンター電極31に接触することにより、このセンター電極31とリング電極32とが導通状態に達する。尚、図面には検出位置に単一のバネ板材35を配置した構造を示しているが、このバネ板材35を複数枚重ねて用いても良い。
【0040】
前記ゴムリング36は、シリコンゴム等の柔軟で絶縁性の材料が用いられ、このゴムリング36の4箇所の表裏両面に突出する形態で前記緩衝体36Aが一体的に形成されている。尚、バネリング37には前記緩衝体36Aが貫通する孔部37Aが形成されている。これと同様に、ゴムリング36とバネリング37とには嵌合孔36S、37Sが形成され、中間壁部12Bに突設された嵌合片12Sを嵌合孔36S、37Sに嵌合させることにより、ゴムリング36とバネリング37とが適正な位置に支持される。
【0041】
作動体38は、絶縁性の樹脂材料を型成形することにより、中央に孔部38Aが形成され、中央の上面には前記トップカバー11の下面側に形成された前記案内面11Gに摺接する凸状の摺接面38Gが形成され、外周部分には下方に向けて4つの押圧操作部38Bが突出形成されている。
【0042】
孔部38Aの内周面には操作ロッド20のロッド軸芯Yと平行姿勢となる複数の溝部Tが形成され、この孔部38Aに前記操作ロッド20を挿通している。この操作ロッド20の中間部22を操作ロッド20に外嵌した状態では、孔部38Aの内面の突出した部位だけが操作ロッド20に接触するため、操作ロッド20との接触面積を小さくして前記ロッド軸芯Y周りでの相対回転と、ロッド軸芯Y方向での相対的なスライド移動とを軽快に行える。また、前記摺接面38Gは前記操作ロッド20の傾動中心Pから等距離となる滑らかな球面の一部に形成され、円滑で安定した傾動を現出する。
【0043】
この作動体38の上面の外周近くには4つの凹部38Sが形成され、この凹部38Sを前記トップカバー11の下面側に突出形成した位置決め片(図示せず)に嵌合させることにより、この作動体38の押圧操作部38Bと前記検出位置との相対的な位置関係が適正に維持される。
【0044】
〔押込み検出部〕
前記押込み検出部Bは、下部ケース13の底壁部13Bに形成されたセンター電極41と、リング電極42と、これらを覆う位置に配置されるドーム状のバネ板材45と、このバネ板材45の上部に配置される第1接当部材46と、これに嵌合連結する第2接当部材47とを備えている。
【0045】
前記バネ板材45は、傾動検出部のものと同様に、銅合金や鉄合金等の導体で成る円盤状の素材が用いられ、その中央部が上方に膨出するようにドーム状に成形されている。このバネ板材45は押圧力が作用しない状況では周囲が前記リング電極42に接触しており、中央部がセンター電極41から離間している。
【0046】
このバネ板材45に上方から押圧力が作用した場合には弾性変形によりバネ板材45の中央部がセンター電極41に接触することにより、センター電極41とリング電極42とが導通状態に達する。尚、図面には単一のバネ板材45を配置した構造を示しているが、このバネ板材45を複数重ねて用いても良い。
【0047】
下側の前記第1接当部材46はシリコンゴム等の比較的柔軟で絶縁性を有する樹脂材料で形成され、上側の前記第2接当部材47は絶縁性で比較的硬質な樹脂材料を用い、この第1接当部材46と第2接当部材47とは嵌合連結している。下側の第1接当部材46は前記規制部13Cの内面に案内させる形態で上下方向に作動自在であり、上側の第2接当部材47の上面には操作ロッド20の下端の接当部25の形状に沿う凹状面を上面に形成することにより、前記操作ロッド20が多少傾斜した状態でも、この接当部25からの圧力を第1接当部材46を介してバネ板材45に伝えるように機能する。
【0048】
リブ状の規制部13Cは、操作ロッド20を押込み操作した際に、この操作ロッド20からの押圧力によって前記押込み検出部Bが検出状態に達した後に、受圧部材26に接当するように、下部ケース13の底壁部13Bからの突出量が設定されている。
【0049】
〔回転検出部〕
前記回転検出部Cは、操作ロッド20の内端位置に形成された係合体24のギヤ状に形成された複数の係合片24Aから回転力が伝えられるロータ56と、図8、図9に示すように、このロータ56の下面に形成した接触子57と、このロータ56の下面に形成したクリックバネ58とを備えている。
【0050】
このロータ56は、絶縁性の樹脂材料を型成形することにより、中央部に筒状部56Aを形成し、この筒状部56Aの下端側に鍔状部56Bを形成している。筒状部56Aの上端に前記係合片24Aが嵌り込む溝状の係合部56Cを形成している。この係合部56Cは前記操作ロッド20の傾動に伴うギヤ状の係合体24の傾動を許すように構成されている。
【0051】
図3〜図6及び図8〜図10に示すように、筒状部56Aの上部には周方向に4つの係合部56Cが形成されている。夫々の係合部56Cの周方向での中間部位置に、この筒状部56Aの内部に突出する形態で突出片60が形成されている。
【0052】
また、このロータ56の筒状部56Aの外径を前記上部ケース12に形成した開口12Hに入り込む値に設定し、この筒状部56Aの下端部の内径を前記下部ケース13のバネ受け部13Dの外径より僅かに大きい値に設定している。これにより、この多方向スイッチを組み立てた状態では、このロータ56の筒状部56Aの外面が上部ケース12に形成した開口12Hの内面に軽く接触すると同時に、この筒状部56Aの下端部の内面が下部ケース13のバネ受け部13Dに軽く接触することになり、このロータ56の回転時には開口12Hの内面と、バネ受け部13Dの外面とにガイドされる形態で安定した回転が実現する。
【0053】
このロータ56の鍔状部56Bの下面側には前記下方に向けて突出するリブが形成され、このリブの下端と、この鍔状部56Bの上面との距離を、下部ケース13に形成される空間の上下方向の寸法より僅かに小さい値に設定されている。これにより、この多方向スイッチを組み立てた状態では、このロータ56の鍔状部56Bの上面が上部ケース12の中間壁部12Bの下面に軽く接触することになり、ロータ56の一層の安定回転を現出する。
【0054】
前記接触子57は、銅合金等の導体をリング状に成形し、その内周側に前記共通電極51に常時接触する主摺接部57Aを形成し、また、その外周側には、円周方向での特定位置において前記カウント電極52に摺接可能な副摺接部57Bを形成した構造を有している。このような構造であるため、ロータ56の回転時には接触子57の外周側の副摺接部57Bがカウント電極52に接触したタイミングでカウント電極52と共通電極51とが導通状態に達し、副摺接部57Bがカウント電極52から離間したタイミングでカウント電極52と共通電極51とが絶縁状態になる。
【0055】
前記クリックバネ58は柔軟に弾性変形する金属材料をリング状に成形し、その周方向での2箇所を下方に突出させた突出部58Aを備えた構造を有し、ロータ56の回転時には突出部58Aが前記下部ケース13の底壁部13Bに形成されたクリック用の凹凸部53に係脱してクリック感を作り出す。
【0056】
〔検出形態〕
前記4つの傾動検出リード33と、1つのコモンリード34との何れか一方の電圧を印加する状態において、中立姿勢Nを基準にして操作ロッド20を何れかの方向に傾動操作した場合には、図5に示すように、この傾動に伴って作動体38が傾動し、対応する方向に位置するバネ板材35に対して緩衝体36Aを介して作動体38の押圧操作部38Bからの押圧力が作用することにより、バネ板材35が弾性変形してセンター電極31とリング電極32とが導通状態に達し、この傾動操作を対応する傾動検出リード33の電圧信号の変化として取り出せる。
【0057】
このように操作ロッド20を傾動操作した場合には、この操作ロッド20に支持された作動体38の摺接面38Gがトップカバー11の下面側に形成された案内面11Gに沿って移動することにより、傾動中心Pを中心にする形態で操作ロッド20を傾動させる。そして、傾動操作に伴って傾動方向に対応するバネ板材35が弾性変形する際にクリック感を作り出し、傾動操作が検出された状況に達したことを操作する者に認識させ得るものにしている。また、傾動操作時には、緩衝体36Aを介して作動体38の押圧操作部38Bからの押圧力が作用するため、強い押圧力が作用する状況であっても、緩衝体36Aが圧縮変形することにより、強い力がバネ板材35に作用して破損する不都合を回避できるものにしている。そして、この傾動操作の後に操作ロッド20の傾動操作を解除した際には、バネリング37と圧縮コイルバネ48とからの付勢力によって操作ロッド20が中立姿勢Nに復元する。
【0058】
特に、操作ロッド20を傾動操作した場合には、係合体24の底面の外周部分の一部が受圧部材26の外周部分に接当し、この受圧部材26を傾斜させる力を作用させることになる。しかしながら、受圧部材26は突出片60によって傾動が規制されると共に、上方への移動が規制されているので、係合体24が接当する部位と逆側の部位が持ち上がる現象を突出片60が阻止し、図5に示すように、受圧部材26を大きく傾斜させず、殆ど水平姿勢に維持する。これにより、圧縮コイルバネ48から操作ロッド20に対して偏った方向に付勢力が作用する現象を回避できるものにしている。更に、操作ロッド20を傾動操作した場合には、押圧側において受圧部材26と操作ロッド20の下端の係合体24の底面が接触するものの、この係合体24の底面の他方が離間するものとなるため、接触する部位からの圧縮コイルバネ48からの付勢力のみを操作ロッド20を復元方向に作動させ復元力を高めるものとなる。
【0059】
また、前記押し操作検出リード43と、リングリード44との何れか一方の電圧を印加する状態において、操作ロッド20を押込み操作した場合には、図6に示すように、操作ロッド20がロッド軸芯Yに沿って移動する。そして、この移動に伴いバネ板材45に対して第1接当部材46と第2接当部材47とを介して操作ロッド20からの押し操作力が作用し、バネ板材45が弾性変形してセンター電極41とリング電極42とが導通状態に達し、この押し操作を押し操作検出リード43の電圧信号として取り出せる。
【0060】
このように操作ロッド20を押し操作した際には、前記バネ板材45が弾性変形する際にクリック感を作り出し、押し操作が検出された状況に達したことを操作する者に認識させ得るものにしている。また、操作ロッド20を押込み操作した際には、バネ板材45が弾性変形してセンター電極41とリング電極42とが導通状態に達した直後に、リブ状の規制部13Cに対して操作ロッド20の受圧部材26が接当する。そして、前記第1接当部材46が柔軟に弾性変形するため、操作ロッド20が強い力で押込み操作された場合でも、過大な力をセンター電極41やリング電極42、あるいは、バネ板材45に作用させて破損させる不都合を回避できるものにしている。
【0061】
操作ロッド20を押し操作する際には操作ロッド20が中立姿勢Nにあることが理想であるが、この操作ロッド20が多少傾動した状態での押し操作も可能である。特に、操作ロッド20が大きく傾動した状態で、押し操作した場合には、操作ロッド20の下端の受圧部材26のうち、傾動によって最も下方に突出した部位が規制部13Cに接当することにより、この操作ロッド20を中立姿勢Nに向かう方向への力を作用させ、操作ロッド20を中立姿勢Nに近づけた状態での押し操作を実現するものにしている。
【0062】
更に、共通電極51と、カウント電極52との何れか一方に電圧を印加する状態において、操作ロッド20を回転操作した場合には、ロータ56の回転に伴い接触子57の外周側の副摺接部57Bがカウント電極52に接触したタイミングでカウント電極52と共通電極51とが導通状態に達し、この副摺接部57Bがカウント電極52から離間したタイミングでカウント電極52と共通電極51とが絶縁状態になる結果、前記カウントリード55の電圧が逆方向に変化する。このように電圧が変化する毎に、この多方向スイッチの外部の基板等において電圧信号の変化をカウント(計数)することにより、初期回転姿勢を基準にして操作ロッド20の回転量を把握できる(インクリメンタル型のロータリエンコーダとして機能する)。
【0063】
また、操作ロッド20を回転操作した際には、前記クリックバネ58の突出部58Aが凹凸部53に係脱することになり、この回転が行われていることを操作ロッド20に作用するクリック感で把握できる。
【0064】
〔実施形態の作用・効果〕
このように本発明によると、操作ロッド20の傾動操作を傾動検出部Aで電気的に検出し、この操作ロッド20のロッド軸芯Yに沿う方向への押込み操作を押込み検出部Bで電気的に検出し、操作ロッド20のロッド軸芯Y周りでの回転操作を回転検出部Cで電気的に検出する。
【0065】
そして、操作ロッド20が非操作状態にある場合には、傾動検出部Aを構成するバネ板材35、ゴムリング36からの中立姿勢N方向への付勢力、及び、圧縮コイルバネ48からの付勢力により、この操作ロッド20が中立姿勢Nに維持される。この中立姿勢Nから操作ロッド20を傾動操作した場合には、操作ロッド20の内端の係合体24の外周部から受圧部材26を介して圧縮コイルバネ48の外周(コイルの外周)に対して圧力が作用することになる。
【0066】
このように偏った力が圧縮コイルバネ48に作用する状況では、圧力が作用した位置を基準にして付勢軸芯Qを挟んで対向する外周(コイルの外周)が伸張する方向に変形する方向に現象に繋がる。しかしながら、このように伸張する部位に対応する受圧部材26の持ち上がりを突出片60が規制することにより、受圧部材26が殆ど水平姿勢(付勢軸芯Qに直交する姿勢)に維持されるので、操作ロッド20の復元力が低下する不都合や、操作ロッド20の操作の途中において操作感が悪化する不都合を回避できるものにしている。
【0067】
〔別実施形態〕
【0068】
本発明は上記した実施形態以外に、例えば、受圧部材26の外周部の複数箇所に外方に突出する規制片を形成し、ロータ56の筒状部には、規制片が入り込むよう縦方向に沿う複数のスリット、あるいは、溝を形成し、このスリットや溝の上端位置に規制片を接当させることで、付勢部材(圧縮コイルバネ48)から作用する付勢力による傾動限界を設定するように構成しても良い。
【0069】
このように構成したものでは、操作ロッド20が傾動操作された場合のように、係合体24の底面の外周部分の一部が受圧部材26の外周部分に接当し、この受圧部材26を傾斜させる力を作用させる状況でも、受圧部材26は規制片がスリットや溝の上端に接当することで上方への移動が規制されるので、係合体24が接当する部位と逆側の部位が持ち上がる現象を規制片がスリットや溝の上端に接当することで阻止する。その結果、受圧部材26を大きく傾斜させず、殆ど水平姿勢に維持し、圧縮コイルバネ48から操作ロッド20に対して偏った方向に付勢力が作用する現象を回避できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】多方向スイッチの斜視図
【図2】多方向スイッチの底面図
【図3】多方向スイッチの縦断側面図
【図4】多方向スイッチの分解斜視図
【図5】傾動操作状態の多方向スイッチの縦断側面図
【図6】押込み操作状態の多方向スイッチの縦断側面図
【図7】下部ケースの底壁部の電極配置を示す平面図
【図8】ロータの底面図
【図9】ロータの斜視図
【図10】上部ケースの中間壁部の電極配置を示す平面図
【符号の説明】
【0071】
10 ケース
20 操作ロッド
26 受圧部材
31、32 電極(センター電極、リング電極)
35 バネ板材
38 作動体
48 付勢部材・圧縮コイルバネ
41、42 電極(センター電極、リング電極)
45 バネ板材
52 電極(カウント電極)
56 ロータ
56A 筒状部
60 突出片
A 傾動検出部
B 押込み検出部
C 回転検出部
N 中立姿勢
Y ロッド軸芯
Q 付勢軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに支持した操作ロッドの傾動操作を電気的に検出する傾動検出部と、この操作ロッドのロッド軸芯に沿う方向への押込み操作を電気的に検出する押込み検出部と、この操作ロッドの回転操作を電気的に検出する回転検出部とを備えている多方向スイッチであって、
傾動操作方向で中立姿勢にある前記操作ロッドのロッド軸芯と同軸芯となる付勢軸芯に沿って前記操作ロッドに付勢力を作用させる付勢部材を備え、前記操作ロッドのうちケース内の内端部に対して前記付勢部材からの付勢力によって接当する受圧部材を備えると共に、この受圧部材は操作ロッドの傾動操作時における傾動限界が設定されている多方向スイッチ。
【請求項2】
前記受圧部材に接当することにより前記傾動限界を設定する突出片を備えている請求項1記載の多方向スイッチ。
【請求項3】
前記回転検出部が、前記操作ロッドとともに回転するロータと、このロータの回転位置を検出する複数の電極とを備えて構成され、前記ロータが、前記操作ロッドの内端部の外周に係合して一体的に回転可能な筒状部を備えて構成され、前記付勢部材と受圧部材とが前記筒状部の内部に配置され、前記突出片が、前記筒状部の内面に形成されている請求項2記載の多方向スイッチ。
【請求項4】
前記押込み検出部が、前記操作ロッドの押込み方向への操作に起因する押圧力の作用で弾性変形する導体で成るバネ板材と、このバネ板材の弾性変形時にバネ板材との接触によって導通状態に達する一対の電極とを備えて構成され、前記付勢部材が圧縮コイルバネで構成されると共に、この圧縮コイルバネが前記バネ板材を取り囲む位置に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の多方向スイッチ。
【請求項5】
前記傾動検出部が、前記操作ロッドと一体的に傾動する作動体と、この作動体からの押圧力の作用で弾性変形する導体で成るバネ板材と、このバネ板材の弾性変形時にバネ板材との接触によって導通状態に達する一対の電極とを前記操作ロッドを取り囲む位置に配置して構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の多方向スイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−176432(P2009−176432A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10706(P2008−10706)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】