説明

多方向入力装置

【課題】簡易な構成でありながら、操作部の傾動方向の検出結果の安定性や再現性を向上させることが可能な多方向入力装置を提供する。
【解決手段】本発明の多方向入力装置は、支持部を含む第1ケースと凹曲面状の内面を含む第2ケースと第1ケースの支持部に当接され第2ケースの内面に当接された状態で回動可能な回動部と回動部に設けられた操作部と、回動部に押し付けられて操作部を中立位置へ復帰させる連動部材とを有する。連動部材と連動部材とに、これらの間で、操作部の軸心回りの回転が生じることを抑制するための第1回転抑圧機構が設けられ、第1ケースと連動部材とに、これらの間で、操作部の軸心回りの回転が生じることを抑制するための第2回転抑圧機構が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10A、図10Bは、特許文献1に開示された従来のジョイスティック300の構成を説明するための断面図である。なお、図10Bは、図10Aの10B-10B断面図である。
【0003】
特許文献1に開示された従来のジョイスティック300では、ケース337の正面及び背面の側壁337C、337D(図10B)に、操作部336のX方向(図10Aの両側面方向)への傾動及びその規制を行うための連動部材350が支持されている。また、ケース337の両側面の側壁337A、337B(図10A)に、操作部336のY方向(図10Aの正面及び背面方向)への傾動及びその規制を行うための連動部材350が支持されている。操作部336のX方向への傾動は、連動部材350が含む回転軸を中心として行われ、操作部336のY方向への傾動は、連動部材345が含む回転軸を中心として行われる。また、操作部336を中立位置へ復帰させるためのバネ362が設けられている。外力によってバネ362が傾動すると、連動部材363がバネ362を縮める方向に移動する。その後、操作部336への外力が解除されると、バネ362の弾性力によって操作部336が中立位置に復帰する。
【0004】
図11は、特許文献2に開示された従来のジョイスティック400の構成を説明するための部分断面図である。
【0005】
特許文献2に開示された従来のジョイスティック400では、中空フランジ状のケース401の中心軸P上に、こま形自在継手402が固定されている。こま形自在継手402は、球面403aを有する滑性の軸受け皿403と、この軸受け皿403の球面403aに当接する球状部404とを有する。なお、軸受け皿403は、図11のV方向に分割可能なリング状部材から構成されている。球状部404にはV方向の両方向に伸びた軸405,406が設けられている。ケース401の外部に露出した軸405の端部にはつまみ407が設けられ、ケース401内に伸びた軸406の端部には円柱状の永久磁石408(発磁体)が軸406と同軸に設けられている。また、ケース401内部にはセンサ412が設けられ、これによって永久磁石408の位置を検出する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−75665号公報
【特許文献2】特開平6−161655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、操作部336のX方向への傾動及びその規制を行うための連動部材350とY方向への傾動及びその規制を行うための連動部材350とがそれぞれ必要となるため、部品点数が多くなって構成も複雑となる。
【0008】
一方、特許文献2の構成では、簡易な構成でありながら、つまみ407を備えた軸405(操作部)の全方向への傾動が可能となっている。しかしながら、特許文献2の構成は、操作部が軸回りに回転してしまうことを抑制するための構造を備えていない。このように操作部の軸回りの回転を自由に許す構造では、操作部の傾動方向の検出結果の安定性や再現性が低下する場合がある。例えば、図12Aに例示するように、製造誤差などから、永久磁石408が軸406に対して傾いた状態で取り付けられる場合がある。このような場合に操作部が軸回りに回転すると、操作部が傾動していないにもかかわらず、図12C−12Fに例示するように、センサ412に対する永久磁石408の端面408aの位置が変動する。これは、操作部の傾動方向の検出結果の安定性や再現性の低下につながる。同様なことは、図12Bに例示するように永久磁石408の着磁に偏りがある場合などにも生じる。また、このような問題は、上述の軸回りの回転によって生じる操作部の傾動方向の検出誤差に基づくものであり、操作部の傾動方向の検出方法にかかわらず発生する。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら、操作部の傾動方向の検出結果の安定性や再現性を向上させることが可能な多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記課題を解決するために、突設された支持部を含む第1ケースと、凹曲面状の内面を含み、当該内面側から外部側へ貫通する貫通孔が設けられ、第1ケースに対する相対位置が一定の第2ケースと、第1ケースの支持部に揺動自在に当接される凹曲面状の凹摺接面と第2ケースの内面に摺動自在に当接される凸曲面状の凸摺接面とを含み、凹摺接面が第1ケースの支持部に当接され凸摺接面が第2ケースの内面に当接された状態で回動可能な回動部と、回動部の凸摺接面側に設けられ、貫通孔側に配置される操作部と、操作部の傾倒を検出する検出部と、与えられた弾性力によって回動部の第1ケース側の領域である押圧部に押し付けられ、操作部を中立位置へ復帰させる連動部材と、を有し、連動部材に対向する押圧部の第1位置と押圧部に対向する連動部材の第2位置とには、連動部材に対して回動部が操作部の軸心回りに回転することを抑制するための第1回転抑制機構が設けられ、連動部材に対向する第1ケース又は第2ケースの第3位置と第1ケース又は第2ケースに対向する連動部材の第4位置とには、第1ケース又は第2ケースに対して連動部材が操作部の軸心回りに回転することを抑制するための第2回転抑圧機構が設けられている多方向入力装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、凹摺接面が第1ケースの支持部に当接され、凸摺接面が第2ケースの内面に当接された状態で回動可能な回動部が用いられることで、簡単な構成でありながら多方向入力可能な多方向入力装置が実現される。また、第1回転抑制機構によって回動部が連動部材に対して操作部の軸回りに回転することが抑制され、第2回転抑制機構によって連動部材が第1ケース又は第2ケースに対して回転することが抑制される。その結果、操作部の傾動方向の検出結果の安定性や再現性を向上させることができる。以上より、本発明では、簡易な構成でありながら、操作部の傾動方向の検出結果の安定性や再現性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態の多方向入力装置の分解斜視図である。
【図2】図2は、実施形態の多方向入力装置の分解斜視図である。
【図3】図3Aは、実施形態の多方向入力装置の平面図であり、図3Bは、実施形態の多方向入力装置の正面図である。
【図4】図4は図3Aの4-4断面図である。
【図5】図5Aは、操作部材と連動部材との結合状態を説明するための正面図であり、図5Bは、図5AのIVB部分の拡大図である。
【図6】図6は、図3Bの6-6断面図である。
【図7】図7は、操作部121が傾動した状態を説明するための図3Aの7-7断面図である。
【図8】図8A及び図8Bは、変形例を説明するための図である。ここで、図8Bは、図8Aの図8B部分の拡大図である。
【図9】図9A及び図9Bは、変形例を説明するための図である。
【図10】図10A及び図10Bは、特許文献1に開示された従来のジョイスティックの構成を説明するための断面図である。
【図11】図11は、特許文献2に開示された従来のジョイスティックの構成を説明するための部分断面図である。
【図12】図12Aは、永久磁石が軸に対して傾いた状態で取り付けられた状態を説明するための断面図である。図12Bは、永久磁石の着磁精度に偏りがある状態を説明するための概念図である。図12C−図12Fは、軸回りの回転によって永久磁石の端面の位置が変動する様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
<構成>
図1、図2及び図4に例示するように、本形態の多方向入力装置100は、ケース110(第2ケース)と、操作部121及び回動部122を含む操作部材120と、連動部材130と、バネ140と、ケース150(第1ケース)と、基準部材160と、検出部材170とを有する。
【0015】
[ケース150(第1ケース)]
図1、図2及び図4に例示するように、本形態のケース150(第1ケース)は、中央付近に貫通孔152aが設けられた略板状の基部152と、当該基部152の板面中央付近に略垂直に突設された円筒状の支持部151とを含む。この例における基部152の支持部151の周囲には、支持部151の周囲を囲む溝153が設けられている。また、この例の場合、円筒状に形成された支持部151の先端の外周側縁部には、その中心軸側から外周側に向かって傾斜又は湾曲した面取り形状部151aが設けられている。なお、「面取形状」は、その形状のみを特定するための用語であり、その形状を得るための製造方法や加工方法を限定するものではない。また、ケース150の材質には限定はなく、例えば、金属や樹脂などを用いることができる。
【0016】
[ケース110(第2ケース)]
図1、図2及び図4に例示するように、本形態のケース110(第2ケース)は、凹曲面状(本形態では凹球面状)の内面113を含み、当該内面113側から外部側へ貫通する貫通孔111が設けられた部材である。この例のケース110は、一端の開口部111aの径が絞り込まれた貫通孔111を持つ筒状の部材である。この例場合、内面113は、貫通孔111の中心軸と同軸な円筒内周側面114と、それよりも内径が絞り込まれた貫通孔111の開口部111aと、の間の領域に環状に形成されている。また、円筒内周側面114(第3位置)には、貫通孔111の中心軸に沿った方向に形成された1つの溝である凹部112が設けられている。ここで、円筒内周側面114で囲まれた領域の内径は、ほぼ同一とされている。
【0017】
ケース110は、内面113をケース150の支持部151の外周側に向け、内面113が支持部151の面取り形状部151a側に対向配置された状態で、ケース150に直接的又は間接的に固定されている(すなわち、ケース150に対するケース110の相対位置は一定)。この際、貫通孔111と支持部151とが略同軸に配置され、凹部112が支持部151の中心軸に沿った溝として配置される。また、ケース110の材質には限定はなく、例えば、金属や樹脂などを用いることができる。
【0018】
[操作部材120]
図1、図2及び図4に例示するように、本形態の操作部材120は、操作部121と回動部122と突起部123とを含む。
【0019】
本形態の回動部122は、ケース150の支持部151の面取り形状部151aに揺動自在に当接される凹曲面状(本形態では凹球面状)の凹摺接面122dと、ケース110の内面113に摺動自在に当接される凸曲面状(本形態では凸球面状)の凸摺接面122cとを含む。回動部122は、凹摺接面122dがケース150の支持部151の面取り形状部151aに当接され、凸摺接面122cがケース110の内面113に当接された状態で、内面113に沿った回動が可能である。なお、本形態の回動部122は、ドーム状(言い換えると、中が空洞の半球状)に形成された部材である。また、凸摺接面122cを含む仮想的な球と凹摺接面122dを含む仮想的な球とは中心点が共通の球であり、凸摺接面122cを含む仮想的な球の半径は、凹摺接面122dを含む仮想的な球の半径よりも大きい。本形態の回動部122は、好ましくは、凸摺接面122cを含む仮想的な球の中心を通る仮想的な直線に対して略線対称に構成される。
【0020】
回動部122のケース150側の領域である押圧部122bには、複数の凸部122aが設けられている。本形態の押圧部122bは、回動部122のケース150側端部に位置する当該ケース150側を向いた環状の端部である。言い換えると、本形態の押圧部122bは凸摺接面122cの反対側の領域であって、回動部122の回動中心から離れた領域である。押圧部122bの所定の位置(第1位置)には、例えば、複数の凸部122aが環状に突設されている。例えば、複数の凸部122aは、ケース150側に向かって突設され、互いに略等間隔で環状(操作部121を通る仮想的な直線を中心とした周上)に配置されている。
【0021】
操作部121は、回動部122の凸摺接面122c側の面に設けられ、ケース110の貫通孔111側に配置される。本形態の操作部121は、例えば、回動部122の凸摺接面122c側の面に突設された柱状の部位であり、少なくともその一部が貫通孔111の外部に配置されている。本形態の操作部121は、例えば、凸摺接面122cを含む仮想的な球の中心を通る仮想的な直線に沿って、凸摺接面122c側の面から外側に向かって伸びた部材である。例えば、本形態の操作部121は、回動部122の回動中心を通る仮想的な直線に沿って、凸摺接面122c側の面の略法線方向に、凸摺接面122c側の面から外側に向かって突起した部材である。
【0022】
突起部123は、回動部122の凹摺接面122d側の面に設けられた部位である。本形態の突起部123は、例えば、回動部122の凹摺接面122d側の面から内側に向かって突設された柱状の部位であり、凹摺接面122dを含む仮想的な球の中心を通る仮想的な直線に沿って、当該仮想的な球の中心に向かって伸びる。本形態の場合、突起部123の先端側の一部が、円筒状の支持部151の内周側に配置される。なお、本形態の操作部材120は一体に構成された部材であり、例えば、金属や樹脂などの材料によって構成されている。
【0023】
[バネ140]
図4に例示するように、本形態のバネ140はコイル状の圧縮バネであり、その内径はケース150に突設された円筒状の支持部151の外径よりも大きい。バネ140の内周側には、支持部151が配置され、バネ140の一端は支持部151の周囲の溝153内に収容される。これにより、バネ140は、ケース150の溝153内の底部153aを支点として支持部151の延長方向(すなわち貫通孔111の中心軸に沿った方向)に沿って伸縮可能とされる。
【0024】
[連動部材130]
図1、図2及び図4に例示するように、本形態のバネ140の他端(ケース110側の端部)には、バネ140の内径よりも外径が大きな略リング状の連動部材130が配置される。連動部材130のバネ140側を向く面には、支持部151の外径よりも内径が大きく、バネ140の内径よりも外径が小さい円筒部134が突設される。図4に例示するように、円筒部134はその内周が支持部151の外周側に配置され、その外周がバネ140の内周側に配置される。また、連動部材130のケース110の内面113側を向く凹部形成面133側には、回動部122の押圧部122b側が配置される。凹部形成面133側の所定の位置(第2位置)には、複数の凹部131が設けられている。ここで、複数の凹部131は、それぞれ、回動部122の押圧部122bに設けられた複数の凸部122aに対向する位置に設けられている。この例の複数の凹部131は、互いに略等間隔で環状に設けられている。連動部材130の凹部形成面133側は、バネ140から与えられた弾性力によって回動部122の押圧部122b側に押し付けられる。これにより、押圧部122bの各凸部122aが凹部形成面133の各凹部内に配置される(図5A及び図5B)。なお、連動部材130の凹部形成面133側が回動部122の押圧部122b側に押し付けられた際、押圧部122bの各凸部122aが凹部形成面133の各凹部131内にスムーズに挿入されるように、各凸部122aの先端部の角が面取り形状とされているか、凹部131の入り口部分がテーパー状に形成されていることが望ましい。そして、少なくとも一部の凸部122aが何れかの凹部131内に挿入されることで、連動部材130に対して回動部122が操作部121の軸心回りに回転することが抑制できる。すなわち、凸部122aと凹部131との組み合わせは、連動部材130に対して回動部122が操作部121の軸心回りに回転することを抑制するための第1回転抑制機構に相当する。なお、操作部121がどの方向に傾動したとしても、少なくとも一部の凸部122aが必ず凹部131内に配置される状態となることが望ましい。例えば、凸部122aや凹部131がそれぞれ略等間隔で環状に配置される場合、凸部122aや凹部131はそれぞれ3個以上設けられることが望ましい。また、操作部121がどの方向に傾動したとしても、少なくとも一部の凸部122aが必ず凹部131内に配置される状態となるのであれば、凸部122aや凹部131がそれぞれ2個ずつ設けられていてもよい。また、操作部121がどの方向に傾動したとしても、すべての凸部122aが凹部131の外部に配置される状態とならないのであれば、凸部122aや凹部131がそれぞれ等間隔に配置されていなくてもよい。
【0025】
連動部材130の外周側面(第4位置)には、そこから外側方向に(連動部材130の中心から外周へ向かう方向に)突起した凸部132が突設されている。凸部132は、前述したケース110の円筒内周側面114に設けられた凹部112内に配置される(図4及び図6)。これにより、ケース110に対して連動部材130が操作部121の軸心回りに回転することを抑制できる(図6)。よって、凸部132と凹部112との組は、ケース110に対して連動部材130が操作部121の軸心回りに回転することを抑制するための第2回転抑圧機構に相当する。なお、後述のように、連動部材130は、操作部121の傾動に応じ、支持部151の延長方向(すなわち貫通孔111の中心軸に沿った方向)に沿ってスライドする。この場合でも、貫通孔111の中心軸に沿った溝である凹部112の長さが十分であれば、操作部121の傾動を妨げることはない。また、操作部121の軸心回りに回転する方向は、貫通孔111の中心軸に沿った溝である凹部112と略垂直である。そのため、連動部材130が操作部121の傾動に応じて連動部材130がスライドしても、ケース110に対して連動部材130が操作部121の軸心回りに回転することを抑制できる。
【0026】
[基準部材160]
図4に例示するように、回動部122の突起部123に定められた基準点には、基準部材160が取り付けられている。本形態の場合、突起部123の先端部が基準点とされ、永久磁石が基準部材160とされている。例えば、回動部122の突起部123には凹部が設けられ、この凹部内に基準部材160である永久磁石が固着されている。
【0027】
[検出部材170]
図1、図2及び図4に例示するように、ケース150の支持部151の内部には、121操作部の傾動を検出するための検出部材170が設けられている。本形態の検出部材170は、通過する磁界の方向を示す信号を出力するセンサIC171と、センサIC171が実装された実装基板172と、信号の出力端子173とを含む。なお、センサIC171の一例は、センサIC171内の複数のホール素子又は磁気抵抗素子(検出部)の信号を演算処理してセンサIC171を通過する磁界の方向を2つの信号として出力する素子である。このようなセンサIC171の具体例は、Melexis社のMLX90333などである。検出部材170は、回動部122の突起部123に設けられた基準部材160である永久磁石からの磁界の方向を検出することで、操作部121の傾動を検出できる。
【0028】
<製造方法>
本形態の多方向入力装置100は、例えば、以下のように製造される。
【0029】
(1)上述のようにケース150の支持部151の内周側に検出部材170を固着する。
【0030】
(2)上述のようにバネ140をケース150の支持部151に取り付ける。
【0031】
(3)上述のように連動部材130を支持部151及びバネ140に取り付ける。
【0032】
(4)連動部材130の凹部形成面133側に、基準部材160が固着された回動部122の押圧部122b側を配置し、凹部形成面133側の複数の凹部131に、押圧部122b側の複数の凸部122aをそれぞれ嵌合させる。
【0033】
(5)連動部材130の外周側面の凸部132をケース110の円筒内周側面114の凹部112内に配置し、操作部121の少なくとも一部をケース110の開口部111aから外部に突出させた状態で、ケース110をケース150に熱カシメする。
【0034】
<動作>
次に、本形態の多方向入力装置100の動作を説明する。
【0035】
前述のように回動部122は、凹摺接面122dがケース150の支持部151に当接され、凸摺接面122cがケース110の内面113に当接された状態で回動可能である。また、前述のように、回動部122の環状の押圧部122bには、バネ140からの弾性力が与えられた連動部材130が押し当てられる。操作部121に外力が与えられていない場合、回動部122は、連動部材130から与えられた力と、ケース110の内面113やケース150の支持部151からの反力との均衡がとれた位置に配置される(図4)。この位置が操作部121及び回動部122を中立位置である。
【0036】
この状態で操作部121を軸回りに回転させた場合であっても、回動部122の凸部122aが連動部材130の凹部131内に挿入されているため、連動部材130に対して回動部122が操作部121の軸心回りに回転することが抑制される。さらに、連動部材130の凸部132がケース110の凹部112内に配置されることで、ケース110に対して連動部材130が操作部121の軸心回りに回転することが抑制される。その結果、ケース110に対して操作部材120が操作部121の軸心回りに回転することを抑制できる。
【0037】
一方、操作部121に外力が与えられて操作部121が傾動すると、それに伴って回動部122が回動し、連動部材130が支持部151に沿ってケース150側にシフトし、バネ140を圧縮する(図7)。この状態では、回動部122の一部の凸部122a(例えば、図7のA1部)は連動部材130の凹部131の外部に配置されるが、一部の凸部122a(例えば、図7のA2部)は連動部材130の凹部131内に配置される。操作部121の傾動方向とその傾動角度は、検出部材170によって基準部材160である永久磁石からの磁界の方向として検出され、その検出結果を表す信号が出力される。
【0038】
この状態で操作部121を軸回りに回転させた場合であっても、一部の凸部122aが凹部131内に挿入されているため、連動部材130に対して回動部122が操作部121の軸心回りに回転することが抑制される。さらに、連動部材130の凸部132がケース110の凹部112内に配置されることで、ケース110に対して連動部材130が操作部121の軸心回りに回転することが抑制される。その結果、ケース110に対して操作部材120が操作部121の軸心回りに回転することが抑制される。このように、回動部122に複数の凸部122aが設けられ、連動部材130に複数の凹部112が設けられることで、操作部121が傾動した場合であっても、ケース110に対して操作部材120が操作部121の軸心回りに回転することを抑制できる。特に、操作部121がどの方向に傾動した場合であっても、少なくとも一部の凸部122aが必ず凹部131内に配置される状態となるように凸部122aや凹部131が形成されている場合には、操作部121がどの方向に傾動した場合であっても、ケース110に対して操作部材120が操作部121の軸心回りに回転することを抑制できる。
【0039】
さらに、操作部121に与えられていた外力が開放された場合、操作部121及び回動部122が、連動部材130から与えられた力とケース110の内面113やケース150の支持部151からの反力との均衡がとれた中立位置に復帰する。
【0040】
以上のように、本形態の多方向入力装置100では、簡単な構成でありながら、外力によって操作部121を任意の方向に傾動させることができ、その傾動方向と傾動角度を検出でき、さらに、操作部121への外力が開放されることで操作部121を中立位置に復帰させることができる。さらに、本形態の多方向入力装置100では、操作部材120が操作部121の軸心回りに回転することを抑制できるため、基準部材160や検出部材170の取り付け位置に誤差があったり、基準部材160の着磁に偏りがあったりした場合であっても、操作部材120が操作部121の軸心回りに回転することに起因して、操作部121の傾動方向の検出結果がばらつくことを抑制できる。
【0041】
<変形例>
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。
【0042】
例えば、上述の実施形態では、操作部材120の回動部122における押圧部122bの所定の位置(第1位置)に複数の凸部122aが設けられ、連動部材130における凹部形成面133の所定の位置(第2位置)に複数の凹部131が設けられ、これらが第1回転抑制機構を構成していた。しかし、操作部材120及び連動部材130の代わりに、図8A及び図8Bに例示するような操作部材220及び連動部材230が用いられてもよい。なお、操作部材220は、操作部材120の回動部122を回動部222に置換した構成である。図8A及び図8Bに例示する変形例では、操作部材220の回動部222における押圧部222bの所定の位置(第1位置)に複数の凹部222aが設けられ、連動部材230における凸部形成面233の所定の位置(第2位置)に複数の凸部231が設けられ、これらが嵌合することで第1回転抑制機構として機能する。
【0043】
また、上述の実施形態では、連動部材130の外周側面(第4位置)に凸部132が設けられ、ケース110の円筒内周側面114(第3位置)に凹部112が設けられ、これらが第2回転抑制機構を構成していた。しかし、上述したケース110及び連動部材130の代わりに、図9Aに例示するようなケース210及び連動部材230が用いられてもよい。この変形例では、連動部材230の外周側面(第4位置)に凸部ではなく凹部232が設けられ、ケース210の円筒内周側面(第3位置)に凹部ではなく1つの凸部212が設けられ、凸部212が凹部232内に配置されることで第2回転抑制機構として機能する。
【0044】
また、ケース110の代わりに、図9Bに例示するようなケース280が用いられてもよい。この変形例では、連動部材130の外周側面(第4位置)に凸部132が設けられ、ケース280の円筒内周側面(第3位置)に凹部282が設けられ、凸部132が凹部282内に配置されることで第2回転抑制機構として機能する。ただし、凹部282の内径は凸部132の外径よりも或る程度大きい。これにより、凸部132が凹部282内の所定の溝幅内を移動可能とされている。その結果、連動部材130は、ケース280に対し、所定の許容範囲α内で、操作部121の軸心回りの回転(β方向の回転)が許容される。さらに、ケース280又はケース150に対する凸部132の位置を検出する検出部材(接触又は非接触)、又は、ケース280又はケース150に対する凸部132の位置に応じて動作するスイッチ(接触又は非接触)である付加部材290が設けられる。これにより、操作部121の軸心回りの回転入力や、操作部121の軸心回りの回転によるON/OFFが可能な多方向入力装置が構成できる。なお、所定の許容範囲αは、操作部121の傾動方向の検出結果のばらつきが許容できる範囲内で定めればよい。許容範囲αの例は3°〜45°である。
【0045】
その他、例えば、操作部121が回動部122の凸摺接面122cから突起していない構成であってもよい。例えば、操作部121が回動部122の凸摺接面122cに含まれる一部の領域であってもよいし、回動部122の凸摺接面122cよりも窪んだ領域であってもよい。また、操作部材120が操作部121に対して線対称でなくてもよい。また、操作部材が操作部と回動部と突起部とが一体となった部材ではなく、操作部と回動部と突起部の一部が分離可能とされてもよい。また、本形態では、第2ケースの内面が凹球面状に形成され、回動部の凹摺接面が凹球面状に形成され、凸摺接面が凸球面状に形成された例を示した。しかし、第2ケースの内面が円筒内面状その他の凹曲面状に形成され、回動部の凹摺接面が円筒内面状その他の凹曲面状に形成され、凸摺接面が円筒外面状その他の凸曲面状に形成されてもよい。また、基準点に設けられた基準部材160である永久磁石からの磁界が検出部材170を通過する方向によって操作部121の傾動を検出するのではなく、レーザ光線用いて操作部121の傾動を検出するなど、その他の手段で操作部121の傾動を検出する構成でもよい。また、回動側に凸部と凹部とを設け、連動部材側に凸部と凹部とを設け、それらの組み合わせによって第1回転抑制機構が構成されてもよい。また、複数の凸部及び凹部によって第1回転抑制機構を構成するのではなく、1つの凸部及び凹部の組によって第1回転抑制機構が構成されてもよい。また、ケース110に第2回転抑制機構を構成する凹部や凸部が構成されるのではなく、ケース150側に第2回転抑制機構を構成する凹部や凸部が構成されてもよい。また、ケース150とケース110とが一体に構成されていてもよい。また、バネ140としてコイル状の圧縮バネを用いるのではなく、板バネその他のバネが用いられてもよい。その他、バネ140の代わりにゴムその他の弾性体が用いられてもよい。
【0046】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の多方向入力装置は、例えば、ジョイスティックその他の入力装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100 多方向入力装置
110,150,210,280 ケース
111 貫通孔
112,131,222a,232,282 凹部
122a,132,212,231 凸部
113 内面
120,220 操作部材
121 操作部
122,222 回動部
122b,222b 押圧部
122c 凸摺接面
122d 凹摺接面
130,230 連動部材
151 支持部
170 検出部材
290 付加部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突設された支持部を含む第1ケースと、
凹曲面状の内面を含み、当該内面側から外部側へ貫通する貫通孔が設けられ、前記第1ケースに対する相対位置が一定の第2ケースと、
前記第1ケースの前記支持部に揺動自在に当接される凹曲面状の凹摺接面と前記第2ケースの前記内面に摺動自在に当接される凸曲面状の凸摺接面とを含み、前記凹摺接面が前記支持部に当接され前記凸摺接面が前記内面に当接された状態で回動可能な回動部と、
前記回動部の凸摺接面側に設けられ、前記貫通孔側に配置される操作部と、
前記操作部の傾動を検出する検出部材と、
与えられた弾性力によって前記回動部の前記第1ケース側の領域である押圧部に押し付けられ、前記操作部を中立位置へ復帰させる連動部材と、を有し、
前記連動部材に対向する前記押圧部の第1位置と前記押圧部に対向する前記連動部材の第2位置とには、前記連動部材に対して前記回動部が前記操作部の軸心回りに回転することを抑制するための第1回転抑制機構が設けられ、
前記連動部材に対向する前記第1ケース又は前記第2ケースの第3位置と前記第1ケース又は前記第2ケースに対向する前記連動部材の第4位置とには、前記第1ケース又は前記第2ケースに対して前記連動部材が前記操作部の軸心回りに回転することを抑制するための第2回転抑圧機構が設けられている、
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
請求項1の多方向入力装置であって、
前記第1回転抑制機構は、前記第1位置の凸部と前記第2位置の凹部との組、又は、前記第1位置の凹部と前記第2位置の凸部との組を含む、
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項3】
請求項2の多方向入力装置であって、
前記第1回転抑制機構は、環状に配置された複数の前記第1位置の各凸部と環状に配置された複数の前記第2位置の各凹部との組み合わせ、又は、環状に配置された複数の前記第1位置の各凹部と環状に配置された複数の前記第2位置の各凸部との組み合わせを含む、
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの多方向入力装置であって、
前記第2回転抑圧機構は、前記第3位置の凹部と前記第4位置の凸部との組、又は、前記第3位置の凸部と前記第4位置の凹部との組、を含む、
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項5】
請求項4の多方向入力装置であって、
前記第2回転抑圧機構は、前記第3位置の凹部と前記第4位置の凸部との組であり、
前記第3位置の凹部の内径は、前記第4位置の凸部の外径よりも大きく、前記連動部材は、前記第1ケース又は前記第2ケースに対し、所定の許容範囲内で、前記操作部の軸心回りの回転が可能であり、
前記多方向入力装置は、さらに、前記第1ケース又は前記第2ケースに対する前記第4位置の凸部の位置を検出する第2検出部材、又は、前記第1ケース又は前記第2ケースに対する前記第4位置の凸部の位置に応じて動作するスイッチを含む、
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの多方向入力装置であって、
前記第2ケースの前記凹曲面状の内面は凹球面状に形成され、前記回動部の前記凹摺接面は凹球面状に形成され、前記回動部の前記凸摺接面は凸球面状に形成される、
ことを特徴とする多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−154596(P2011−154596A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16427(P2010−16427)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000220033)東京コスモス電機株式会社 (26)
【Fターム(参考)】