説明

多槽構造プレハブ槽

【課題】槽を複数個連接してなる多槽構造物の構築を容易とし、槽の内寸を柔軟に拡大または縮小することができるプレハブ槽を提供する。
【解決手段】各槽11、12、13、14、15、16、17の周壁をそれぞれ複数個のプレハブブロック2、3、4を水平方向に連結して基礎上に構築する。プレハブブロックには、互いに平行な二つの連結端面に他のブロック2、3、4が連結されて直線的に延伸する壁の一部となる立壁ブロック2と、互いに非平行な二つの連結端面に他のブロック2、3、4が連結されて二方から相寄る壁同士を繋ぐ隅角となる隅角ブロック3と、三つ以上の連結端面に他のブロック2、3、4が連結されて壁と壁との交差点となる交差ブロック4とが含まれる。これら三種類のブロック2、3、4の組み合わせにより、連接する槽の個数及び寸法を柔軟に変更することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽を複数個連接してなる多槽構造物、特に、曝気槽や沈殿槽等を含む汚水処理施設の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、曝気槽、沈殿槽等を含む汚水処理施設を建築する際には、現場打ちコンクリート施工を行うことが通例となっている。が、このような現場施工では、型枠の組立、設置や脱型等、複雑かつ低能率な作業に終始し、工期が長くなり高価格となるきらいがある。
【0003】
そのため、複数個のプレハブブロックを連結して槽の周壁を構築する工法を採用し、工期短縮及び低廉化を図ることが試みられている。下記特許文献1には、円筒状の槽を分割した複数個のプレハブブロックを、円周方向に挿通した緊張材の緊張によりプレストレスを与えつつ連結する円筒槽のプレハブ施工方法が開示されている。
【0004】
上述の円筒状プレハブ槽には、幾つかの短所がある。第一に、同程度の内寸を有する槽を多数個連接したい場合には向かない。同心円状に二重、三重の円筒槽を構築することは確かに可能であるものの、外側の槽の容積は内側の槽のそれを遙かに上回ることになる。さらに、五つも六つも槽を連接しようとすると、円筒が五重、六重となり、最外周壁の半径及び占有面積が巨大になってしまう。
【0005】
第二に、槽の設計寸法を拡大または縮小することが簡単でない。円筒槽の内寸を拡縮しようとすれば、その周壁の曲率が変化することから、これまでとは異なる曲率のプレハブブロックを新たに作製する必要が生じる。換言すれば、プレハブブロックまたはプレハブブロックを製造するための型枠を共通化できない不利がある。
【特許文献1】特公平06−033712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の事情に鑑みてなされた本発明は、槽を複数個連接してなる多槽構造物の構築を容易とし、槽の内寸を柔軟に拡大または縮小することができるプレハブ槽を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプレハブ槽は、槽を複数個連接した多槽構造をなすものであって、各槽の周壁がそれぞれ複数個のプレハブブロックを水平方向に連結して基礎上に構築されており、前記プレハブブロックには、互いに平行な二つの連結端面に他のブロックが連結されて直線的に延伸する壁の一部となる立壁ブロックと、互いに非平行な二つの連結端面に他のブロックが連結されて二方から相寄る壁同士を繋ぐ隅角となる隅角ブロックと、三つ以上の連結端面に他のブロックが連結されて壁と壁との交差点となる交差ブロックとが含まれていることを特徴とする。
【0008】
立壁ブロックは、槽の外壁や槽と槽との仕切壁となり、その使用個数及び/または連結端面間寸法の変更を通じて各槽の内寸を拡縮することができる。隅角ブロックは、一個の槽の隅角、またはプレハブ槽全体の外郭の隅角となる。そして、交差ブロックは、複数個の槽の隅角と隅角とを連接する。これら三種類のブロックの組み合わせにより、連接する槽の個数及び寸法を柔軟に変更することが可能である。故に、様々な寸法、規模または用途の構造物に対し、それを構築するブロックまたはブロックを製造するための型枠を共通化でき、製造コストの低減に資する。
【0009】
各槽の周壁の一体性、連続性、水密性を担保するべく、プレハブブロックは緊張材を以てプレストレスを与えつつ相互連結することが望ましい。そのためには、前記プレハブブロックに前記連結端面を貫くように緊張材を挿通または埋設し、その緊張材を緊張してプレハブブロックの連結端面同士を圧着接合する。
【0010】
汚水処理施設等の建築に用いる場合には、プレハブ槽の少なくとも下半部を土中に埋没させる。多槽構造プレハブ槽の外郭の形状が平面視略矩形であれば、このプレハブ槽を埋めるための穴を掘削しやすく、施工上有利である。
【0011】
また、多槽構造プレハブ槽における各槽は矩形枡形に成形することができる。さすれば、その一部の槽を、各種機器・設備類を収容する部屋として利用するのに好都合となる。
【0012】
本発明に係るプレハブ槽は、汚水処理施設における曝気槽及び沈殿槽等を構成する用途に好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、槽を複数個連接してなる多槽構造物の構築が容易となり、各槽の内寸を柔軟に拡大または縮小することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態の多槽構造プレハブ槽1を示す。このプレハブ槽1は、汚水処理施設における曝気槽12、13、沈殿槽14等を構成するものであって、三個以上の槽11、12、13、14、15、16、17を連接した構造をなす。本実施形態では、流量調整槽11、曝気槽第一室12、曝気槽第二室13、沈殿槽14、計量槽ピット15、汚泥濃縮貯留槽16及び汚泥貯留槽17を包有している。
【0015】
汚水は、流量調整槽11を経由して曝気槽12、13に導き入れ、曝気槽12、13において曝気して好気性微生物による分解を促す。しかる後、沈殿槽14において汚泥を沈殿させ、上澄み水を消毒等して放流する。沈殿槽14において沈殿した汚泥は、汚泥引抜ポンプ(図示せず)を使用して引き抜き、計量槽ピット15を経由して返送汚泥として曝気槽第一室12へ戻し、一部は余剰汚泥として汚泥濃縮貯留槽16に導き入れる。計量槽ピット15は、汚泥を計量する計量装置やその他の機器・設備類(図示せず)を収容する部屋である。最終的に、汚泥は汚泥貯留槽17から搬出し、汚泥処理施設に輸送する。
【0016】
図2に示すように、プレハブ槽1は、下部の六割方を土中に埋設する。プレハブ槽1の外郭の形状は、平面視略矩形である。また、各槽11、12、13、14、15、16、17は矩形枡形をなしている。通常、各槽11、12、13、14、15、16、17には、上方からプレキャストコンクリート製または繊維強化プラスチック製の蓋(図示せず)を被せる。
【0017】
各槽11、12、13、14、15、16、17の周壁は、それぞれ複数個のプレハブブロック2、3、4を水平方向に連結して構築している。このプレハブブロックには、立壁ブロック2、隅角ブロック3、交差ブロック4の三種類のプレキャストコンクリートブロックが含まれる。
【0018】
図3、図6及び図7に示すように、立壁ブロック2は平面視略一字型をなし、互いに平行な二つの連結端面5を備えており、それら連結端面5の各々に他のブロック2、3、4が連結されて直線的に延伸する壁の一部となる。連結端面5の外縁部には、連結端面5の法線方向から見て上下に拡張した略U字型をなす凹溝51と、この凹溝51のすぐ内側にあって上下に延伸するグラウト溝52とを形成してある。凹溝51には、水密シール材である水膨張ゴム53を収める。グラウト溝52は、相互に連結する二個のブロック2、3、4の連結端面5間に充填するグラウトを広範に行き渡らせるために存在する。
【0019】
そして、立壁ブロック2の内部を水平方向に貫くシース孔61、71を複数、上下方向に沿って間欠的に穿っている。シース孔61、71は、緊張材たるPC鋼材62、72を挿通するためのものであり、その一端が一方の連結端面5に開通し、他端が他方の連結端面5に開通している。本実施形態では、緊張材として、PC鋼棒62及びPC鋼より線72の二種類のPC鋼材を使用する。連結端面5における、PC鋼棒62を挿通するシース孔61の両端の開口部位は凹穴63としている。凹穴63は、緊張したPC鋼棒62を係止して緊張状態を維持するアンカープレート64及びナット65や、PC鋼棒62同士を連結するカップラー66を配置する空間となる。他方、PC鋼より線72を挿通するシース孔71の両端の開口部位は凹穴とせず、替わりにグラウトパッキン73を装着する。
【0020】
連結端面5と交わる壁面の下端部には、予めインサートナット81を埋設する。インサートナット81は、各槽11、12、13、14、15、16、17の底版9の鉄筋(差し筋)91を螺着するためのものである。また、立壁ブロック2の連結端面5、壁面、上端面または下端面の適宜の部位に、このブロック2の運搬時に利用する吊上金具(図示せず)を埋設している。吊上金具の頭部は、連結端面5、壁面、上端面または下端面に形成した凹穴(図示せず)内に露出するが、これらの面からは飛び出さない。さらに加えて、グラウト溝52やシース孔61、71にグラウトを注入するためのグラウトホース82をも埋設している。グラウトホース82は、グラウト溝52に直結し、あるいはPC鋼棒62を挿通するシース孔61に直結している。
【0021】
プレハブ槽1の槽間には、汚水や汚泥を流通させる通路を設ける必要がある。立壁ブロック2のうち、このような通路と重なるものについては、通路となるための貫通孔21を所要の高さ位置に予め穿っておく。
【0022】
図4、図6及び図7に示すように、隅角ブロック3は平面視略L字型をなし、互いに非平行な二つの連結端面5を備えており、それら連結端面5の各々に他のブロック2、3、4が連結されて一個の槽11、12、14、17の隅角、またはプレハブ槽1全体の外郭の隅角となる。立壁ブロック2と同様、連結端面5の外縁部には、水膨張ゴム53を収める凹溝51、グラウトを流通させるグラウト溝52を形成してある。
【0023】
そして、隅角ブロック3の内部を水平方向に貫くシース孔61、71を複数、上下方向に沿って間欠的に穿ち設けている。これらのシース孔61、71は、その一端が何れかの連結端面5に開通し、他端がその連結端面5に対向する出隅の壁面に開通している。連結端面5の一方から延伸するシース孔61、71と他方から延伸するシース孔61、71とは平面視交差するので、両者が互いに干渉し合わないよう穿設位置を上下方向にずらしてある。PC鋼棒62を挿通するシース孔61の両端の開口部位は凹穴63として、アンカープレート64及びナット65やカップラー66を配置する。PC鋼より線72を挿通するシース孔71の一端の開口部位即ち連結端面5側の開口部位は凹穴とせず、替わりにグラウトパッキン73を装着する。翻って、このシース孔71の他端の開口部位即ち対向壁面側の開口部位は凹穴74としている。この凹穴74は、緊張したPC鋼より線72を係止して緊張状態を維持するアンカープレート75及びグリップ76を配置する空間となる。因みに、隅角ブロック3の出隅の壁面の一部が外側方に突出して(それにより隅角ブロック3が平面視L字型からややT字型に近い形状となって)いるのは、この凹穴74を作り込むしろを確保するためでもある。
【0024】
隅角ブロック3の入隅の壁面の下端部には、各槽11、12、13、14、15、16、17の底版9の鉄筋91を螺着するためのインサートナット81を埋設する。また、隅角ブロック3の連結端面5、壁面、上端面または下端面の適宜の部位に、このブロック3の運搬時に利用する吊上金具を埋設している。さらに、これらに加えて、グラウト溝52やシース孔61、71にグラウトを注入するためのグラウトホース82をも埋設している。グラウトホース82は、グラウト溝52に直結し、あるいはPC鋼棒62を挿通するシース孔61、PC鋼より線72を挿通するシース孔71に直結している。
【0025】
図5、図6及び図7に示すように、交差ブロック4は平面視略T字型をなし、互いに平行な二つの連結端面5と、これらとは非平行な直交方向を向いた一つの連結端面5とを備えており、それら連結端面5の各々に他のブロック2、3、4が連結されて複数個の槽11、12、13、14、15、16、17の隅角と隅角とを連接、換言すれば壁と壁との交差点となる。交差ブロック4と隅角ブロック3とは、同一の型枠を使用して作製することが可能である。つまり、平面視略T字型の交差ブロック4用型枠の左右何れか一方を切り詰めるように仕切を設置した上でコンクリートを打設すれば、平面視略L字型の隅角ブロック3となる。連結端面5の外縁部には、水膨張ゴム53を収める凹溝51、グラウトを流通させるグラウト溝52を形成してある。
【0026】
そして、交差ブロック4の内部を水平方向に貫くシース孔61、71を複数、上下方向に沿って間欠的に穿ち設けている。一部のシース孔61、71は、一端が互いに平行な連結端面5の一方に開通し、他端が他方に開通している。残りのシース孔61、71は、一端が直交方向を向いた連結端面5に開通し、他端がその連結端面5に対向する壁面に開通している。両者のシース孔61、71は平面視交差するので、互いに干渉し合わないよう穿設位置を上下方向にずらしてある。PC鋼棒62を挿通するシース孔61の両端の開口部位は凹穴63として、アンカープレート64及びナット65やカップラー66を配置する。PC鋼より線72を挿通するシース孔71のうち、互いに平行な連結端面5間を連通するものについては、その両端の開口部位にグラウトパッキン73を装着する。直交方向を向いた連結端面5とこれに対向する壁面との間を連通するものについては、その一端の開口部位即ち連結端面5側の開口部位にはグラウトパッキン73を装着するが、他端の開口部位即ち対向壁面側の開口部位は凹穴74として、アンカープレート75及びグリップ76を配置する。
【0027】
交差ブロック4の壁面の下端部には、各槽11、12、13、14、15、16、17の底版9の鉄筋91を螺着するためのインサートナット81を埋設する。また、交差ブロック4の連結端面5、壁面、上端面または下端面の適宜の部位に、このブロック4の運搬時に利用する吊上金具を埋設している。さらに、これらに加えて、グラウト溝52やシース孔61、71にグラウトを注入するためのグラウトホース82をも埋設している。グラウトホース82は、グラウト溝52に直結し、あるいはPC鋼棒62を挿通するシース孔61、PC鋼より線72を挿通するシース孔71に直結している。
【0028】
本実施形態の多槽構造プレハブ槽1の施工手順を述べる。はじめに、地面にプレハブ槽1の外郭よりも大形の穴を掘削し、その穴底に基礎0を構築する。しかる後、基礎0上で複数個のプレハブブロック2、3、4を水平方向に連結し、各槽11、12、13、14、15、16、17の周壁を構築する。図6にPC鋼棒62によるブロック2、3、4の連結構造を、図7にPC鋼より線72によるブロック2、3、4の連結構造を、それぞれ示している。
【0029】
具体的には、既設のブロック2、3、4の隣に、新たに敷設するブロック2、3、4を、双方の連結端面5同士が近接するように基礎0上に据え置く。続いて、双方の連結端面5の凹溝51に挟まれる位置に、水膨張ゴム53を接着する等して取り付ける。並びに、新たに敷設するブロック2、3、4のシース孔61にPC鋼棒62を挿入する。シース孔61に挿入したPC鋼棒62の両端部は、シース孔61から凹穴63内に突出する。PC鋼棒62の両端部には、予め雄ねじを切ってある。この雄ねじにカップラー66を螺着することで、既設のブロック2、3、4に配したPC鋼棒62の基端部と、新たに敷設するブロック2、3、4に配したPC鋼棒62の先端部とを連結する。そして、新たに敷設するブロック2、3、4の反既設ブロック側において、PC鋼棒62の基端部を通すようにしてアンカープレート64を配置し、そのPC鋼棒62の基端部をジャッキで強力に牽引してPC鋼棒62に緊張力を与えて、既設のブロック2、3、4と新たに敷設するブロック2、3、4とを圧着連結する。十分な緊張力を付加した暁には、ナット65をPC鋼棒62の基端部に螺合緊締する。これにより、PC鋼棒62の緊張力が維持される状態となる。上記の工程を、連結対象となる複数個のブロック2、3、4に対して反復する。
【0030】
全てのブロック2、3、4をPC鋼棒62を以て連結し終えたならば、ブロック2、3、4間の目地に変成シリコン樹脂等の目地材54を施す。
【0031】
次に、ブロック2、3、4に亘って連続したシース孔71にPC鋼より線72を挿通する。シース孔71に挿入したPC鋼より線72の両端部は、シース孔71から凹穴74内に突出する。そして、連結した複数個のブロック2、3、4の一方側において、PC鋼より線72の始端部を通すようにしてアンカープレート75を配置し、その上からグリップ76をPC鋼より線72の始端部に固着する。それから、連結した複数個のブロック2、3、4の他方側において、PC鋼より線72の終端部を通すようにしてアンカープレート75を配置し、そのPC鋼より線72の終端部をジャッキで軽く牽引してPC鋼より線72に仮の緊張力を与える。これは、PC鋼より線72の弛みを取るためである。
【0032】
その後、グラウトホース82からモルタル等のグラウトを注入して、ブロック2、3、4の連結端面5間の(凹溝51に対応した略U字型をなす水膨張ゴム53で包囲された)空隙及びPC鋼棒62用のシース孔61、凹穴63にグラウトを充填する。
【0033】
ブロック2、3、4の連結端面5間の空隙に充填したグラウトの強度が出たことを確認したら、PC鋼より線72の終端部をジャッキで強力に牽引してPC鋼より線72に緊張力を与える。十分な緊張力を付加した暁には、グリップ76をPC鋼より線72の終端部に固着する。これにより、PC鋼より線72の緊張力が維持される状態となる。
【0034】
その後、グラウトホース82からグラウトを注入して、PC鋼より線72用のシース孔71、凹穴74にグラウトを充填する。グラウトホース82は、グラウトが硬化した後に切断し、切り口はモルタル等で隠蔽する。以上で、各槽11、12、13、14、15、16、17の周壁の構築が完了する。
【0035】
引き続き、各槽11、12、13、14、15、16、17の底版9の施工を行う。図8に示しているように、槽11、12、13、14、15、16、17の周壁を構成しているプレハブブロック2、3、4の壁面の下端部において、対向したブロック2、3、4間に鉄筋91を配置する。鉄筋91の端部には予め雄ねじを切ってあり、この鉄筋91の端部をブロック2、3、4の壁面の下端部に埋設しているインサートナット81に螺着する。そして、底版9のコンクリートを打設する。底版9のコンクリートが硬化したら、プレハブブロック2、3、4と底版9との間の目地に変成シリコン樹脂等の目地材93を施す。加えて、各槽11、12、13、14、15、16、17の用途や性質等の必要に応じて、プレハブブロック2、3、4と底版9との入隅にハンチ92となるコンクリートを打設したり、槽(特に、計量槽ピット15)内に砂等を詰めて槽の底面を嵩上げしたりする。
【0036】
最後に、立壁ブロック2に穿ってある貫通孔21に配管するとともに、計量槽ピット15内に計量装置やその他の機器・設備類を設置する。また、各槽11、12、13、14、15、16、17の上端部に蓋を装着する。
【0037】
本実施形態の多槽構造プレハブ槽1では、互いに平行な二つの連結端面5に他のブロック2、3、4が連結されて直線的に延伸する壁の一部となる立壁ブロック2、互いに非平行な二つの連結端面5に他のブロック2、3、4が連結されて二方から相寄る壁同士を繋ぐ隅角となる隅角ブロック3、並びに三つ以上の連結端面5に他のブロック2、3、4が連結されて壁と壁との交差点となる交差ブロック4の三種類のプレハブブロックを用い、これらプレハブブロック2、3、4を基礎0上で水平方向に連結して各槽11、12、13、14、15、16、17の周壁を構築することとした。本実施形態によれば、立壁ブロック2の使用個数及び/または連結端面5間寸法の変更を通じて各槽11、12、13、14、15、16、17の内寸を拡縮することができ、また、隅角ブロック3及び交差ブロック4の使用個数の変更を通じて連接する槽11、12、13、14、15、16、17の個数を増減させることができる。故に、様々な寸法、規模または用途の多槽構造物を容易に構築することが可能となる上、それを構築するブロック2、3、4またはブロック2、3、4を製造するための型枠を共通化でき、製造コストの低減にも奏効する。
【0038】
前記プレハブブロック2、3、4に前記連結端面5を貫くように緊張材62、72を挿通し、その緊張材62、72を緊張してプレストレスを与えつつプレハブブロック2、3、4の連結端面5同士を圧着接合しているので、各槽11、12、13、14、15、16、17の周壁の一体性、連続性、水密性を十分に確保できる。
【0039】
本実施形態のプレハブ槽1の外郭の形状は平面視略矩形であるので、このプレハブ槽1を埋めるための穴を掘削しやすく、施工上有利である。
【0040】
また、多槽構造プレハブ槽1における各槽11、12、13、14、15、16、17は矩形枡形となるので、その一部の槽15を各種機器・設備類を収容する部屋として利用するのにも好都合となる。
【0041】
本実施形態の多槽構造プレハブ槽1は、汚水処理施設における曝気槽12、13及び沈殿槽14等を構成する用途に特に好適である。
【0042】
なお、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態のプレハブ槽は、塩素等を投入するための消毒槽を包有していなかったが、このような消毒槽を沈殿槽に連接して構築しても構わない。
【0043】
上記実施形態では、プレハブブロックの連結時にシース孔に緊張材を挿通するものとしていたが、プレハブブロックの作製時に予め緊張材を埋設しておいてもよい。
【0044】
各槽の形状は、矩形枡形に限定されない。三種類のブロックの組み合わせにより、各槽の周壁の平面視形状を任意の多角形状に組むことができる。
【0045】
交差ブロックは、平面視略T字型をなすとは限られない。例えば、図9に示すように、三つの連結端面5を持ち平面視略T字型に近いL字型をなすブロック4であってもよいし、図10に示すように、四つの連結端面5を持つブロック4であってもよい。
【0046】
本発明に係る多槽構造プレハブ槽を、汚水処理施設以外の設備へ応用することも可能である。例えば、浄水施設における沈砂池、沈殿槽や濾過槽、消毒槽等の構築に本発明を適用することができる。水処理施設以外にも、薬品槽や反応槽、貯水槽等の構築に本発明を適用することができる。
【0047】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の多槽構造プレハブ槽を示す斜視図。
【図2】同多槽構造プレハブ槽を示す側断面図。
【図3】同実施形態における立壁ブロックを示す斜視図。
【図4】同実施形態における隅角ブロックを示す斜視図。
【図5】同実施形態における交差ブロックを示す斜視図。
【図6】同実施形態におけるブロックの連結構造を示す部分拡大平断面図。
【図7】同実施形態におけるブロックの連結構造を示す部分拡大平断面図。
【図8】同実施形態におけるブロックと底版との連結構造を示す部分拡大側断面図。
【図9】本発明の一変形例に係る交差ブロックを示す部分拡大平断面図。
【図10】本発明の一変形例に係る交差ブロックを示す部分拡大平断面図。
【符号の説明】
【0049】
0…基礎
1…多槽構造プレハブ槽
11、12、13、14、15、16、17…槽
2…立壁ブロック
3…隅角ブロック
4…交差ブロック
5…連結端面
62、72…緊張材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽を複数個連接した多槽構造をなすプレハブ槽であって、
各槽の周壁がそれぞれ複数個のプレハブブロックを水平方向に連結して基礎上に構築されており、
前記プレハブブロックには、
互いに平行な二つの連結端面に他のブロックが連結されて直線的に延伸する壁の一部となる立壁ブロックと、
互いに非平行な二つの連結端面に他のブロックが連結されて二方から相寄る壁同士を繋ぐ隅角となる隅角ブロックと、
三つ以上の連結端面に他のブロックが連結されて壁と壁との交差点となる交差ブロックと
が含まれている多槽構造プレハブ槽。
【請求項2】
前記プレハブブロックには前記連結端面を貫くように緊張材が挿通または埋設され、その緊張材を緊張してプレハブブロックの連結端面同士を圧着接合する請求項1記載の多槽構造プレハブ槽。
【請求項3】
外郭の形状が平面視略矩形である請求項1または2記載の多槽構造プレハブ槽。
【請求項4】
各槽が矩形枡形をなしている請求項1、2または3記載の多槽構造のプレハブ槽。
【請求項5】
汚水処理施設における曝気槽及び沈殿槽を構成する請求項1、2、3または4記載の多槽構造プレハブ槽。
【請求項6】
互いに平行な二つの連結端面に他のブロックが連結されて直線的に延伸する壁の一部となる立壁ブロック、
互いに非平行な二つの連結端面に他のブロックが連結されて二方から相寄る壁同士を繋ぐ隅角となる隅角ブロック、並びに、
三つ以上の連結端面に他のブロックが連結されて壁と壁との交差点となる交差ブロックを用い、
これらプレハブブロックの複数個を基礎上で水平方向に連結して各槽の周壁を構築し、かつその槽を複数個連接した多槽構造をなすプレハブ槽を形成する多槽構造プレハブ槽の施工方法。
【請求項7】
請求項1、2、3、4または5記載の多槽構造プレハブ槽を形成するために用いられるものであって、
互いに平行な二つの連結端面を備えそれら連結端面の各々に他のブロックが連結されて直線的に延伸する壁の一部となる立壁ブロック。
【請求項8】
請求項1、2、3、4または5記載の多槽構造プレハブ槽を形成するために用いられるものであって、
互いに非平行な二つの連結端面を備えそれら連結端面の各々に他のブロックが連結されて二方から相寄る壁同士を繋ぐ隅角となる隅角ブロック。
【請求項9】
請求項1、2、3、4または5記載の多槽構造プレハブ槽を形成するために用いられるものであって、
三つ以上の連結端面を備えそれら連結端面の各々に他のブロックが連結されて壁と壁との交差点となる交差ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−121278(P2010−121278A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293146(P2008−293146)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(594053947)社団法人地域資源循環技術センター (1)
【出願人】(000116769)旭コンクリート工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】