説明

多段化樹脂構造体の形成方法

【課題】本発明の課題は、基板上に任意の厚みの多段化樹脂構造体を簡便に形成する方法を提供することである。また、薄い段も安定に形成することのできる多段化樹脂構造体の形成方法を提供することである。さらに、プリント配線板の製造においては、配線部では薄く、孔部では厚い多段化レジスト層を簡便に形成する方法を提供することである。
【解決手段】基板上の樹脂構造体形成方法において、a)基板上に第一の感光性樹脂層をラミネートする工程、b)第一の感光性樹脂層を薄層化する工程、c)第一の感光性樹脂層にパターン露光を行う工程、d)第一の感光性樹脂層上に第二の感光性樹脂層をラミネートする工程、e)第二の感光性樹脂層の上からパターン露光を行う工程、f)未露光部の感光性樹脂層の除去を行う工程、をこの順で含むことを特徴とする樹脂構造体形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上への樹脂構造体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された多段化樹脂構造体は、例えば、微細金型や金属構造体を電鋳で作製する際の型(例えば、特許文献1〜2参照)、マイクロリアクター構造体(例えば、特許文献3参照)、インプリントモールド(例えば、特許文献4参照)、プリント配線板の製造工程における多段化レジスト層(例えば、特許文献5参照)等の様々な用途に利用されている。
【0003】
図7は、基板2上に形成された多段化樹脂構造体1の概略断面図である。この多段化樹脂構造体1を所望の形状に形成するためには、用途により、総厚a、段厚b、cを任意の値にコントロールすることが求められている。例えば、スルーホール等の孔を有するプリント配線板の製造においては、配線部ではパターンを微細化できるようにレジスト層を薄くし、孔部ではテンティングのためにレジスト層を厚くした多段化レジスト層が求められている。多段化樹脂構造体の製造方法には様々な方法があるが、総厚や段厚を自由にコントロールできる簡便な方法はこれまでのところなかった。
【0004】
すなわち、特許文献1〜4記載の方法は、フォトレジストを多層化して積み重ねていく方法であるが、液状レジストを塗布する場合には、塗布乾燥設備が必要となり、塗布準備作業や終了作業等の手間もかかり、簡便に形成することはできない。また、シート状のフォトレジストフィルムを貼り合わせる場合には、液状レジストの塗布に比べれば、簡便に形成することはできるが、そのフォトレジストフィルムの厚みの倍数でしか、総厚や段厚のコントロールができないため、所望の層厚や段差の値を任意に設定した構造体を形成することには制約があった。また、特許文献5記載の方法においても、多層構成の転写フィルムの構造は転写フィルムを製造した時点で決まってしまうため、任意の総厚や段厚のコントロールは不可能であった。
【0005】
さらに、フィルム状のフォトレジストフィルムを圧着する方法は、非常に簡便で好ましいものであるが、基板上に薄い段を形成したい場合には、ラミネートを行う際に気泡の混入等が避けられないという問題があった。従って、液状レジスト等の手間のかかる方法でしか、薄い段を形成することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−208431号公報
【特許文献2】特開2008−265244号公報
【特許文献3】特開2005―329479号公報
【特許文献4】特開2009−76550号公報
【特許文献5】特開2005−136223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、基板上に任意の厚みの多段化樹脂構造体を簡便に形成する方法を提供することである。また、薄い段も安定に形成することのできる多段化樹脂構造体の形成方法を提供することである。さらに、プリント配線板の製造においては、配線部では薄く、孔部では厚い多段化レジスト層を簡便に形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)基板上の多段化樹脂構造体の形成方法において、
a)基板上に第一の感光性樹脂層をラミネートする工程
b)第一の感光性樹脂層を薄層化する工程
c)第一の感光性樹脂層に第一のパターン露光を行う工程
d)第一の感光性樹脂層上に第二の感光性樹脂層をラミネートする工程
e)第二の感光性樹脂層の上から第二のパターン露光を行う工程
f)未露光部の感光性樹脂層の除去を行う工程
をこの順で含む多段化樹脂構造体の形成方法、
【0009】
(2)基板がプリント配線板用の孔を有する基板であり、第一及び第二の感光性樹脂層をエッチング用のドライフィルムレジストとし、c)工程の第一のパターン露光が配線部のパターン露光であり、e)工程の第二のパターン露光がランド部のパターン露光である(1)記載の多段化樹脂構造体の形成方法、
【0010】
(3)b)工程が、アルカリ水溶液によって第一の感光性樹脂層を薄層化する工程である(1)記載の多段化樹脂構造体の形成方法、
(4)アルカリ水溶液が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種を含み、無機アルカリ性化合物の濃度が5〜20質量%である(3)記載の多段化樹脂構造体の形成方法、
(5)アルカリ水溶液が、さらに、硫酸塩、亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む(4)記載の多段化樹脂構造体の形成方法、
を見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(1)においては、第一の感光性樹脂層を基板表面にラミネートした後、薄層化の処理を行い、続いて、第一のパターン露光を行った後、第二の感光性樹脂層をラミネートし、次に、第二のパターン露光を行った後、未露光部の第一及び第二の感光性樹脂層の除去を行う工程をこの順で含む。これにより、任意の厚みの段差を有する樹脂構造体が簡便に得られる。
【0012】
また、感光性樹脂層をラミネートによって形成することで、液状レジストの塗布と比較して、塗布乾燥設備が不要で、塗布準備作業や終了作業等の手間もなく、簡便に感光性樹脂層を形成できる。また、第一の感光性樹脂層では、ラミネート後に薄層化処理を行うことにより、所望の厚み、形状に形成することが可能となる。
【0013】
さらに、所望よりも厚い第一の感光性樹脂層をラミネートしてから薄層化することにより、ラミネート時の基板への追従性が向上する。すなわち、薄い感光性樹脂層のラミネートを行うと、基板の表面の粗さによっては、基板表面形状に充分に追従せずに気泡を内包したりして、後工程において構造上の欠陥等のトラブルを引き起こす。そこで、本発明の方法のように、追従性の問題がない厚い感光性樹脂層をラミネートしてから、薄層化することにより、良好な追従性を持った樹脂構造体を形成できる。
【0014】
本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(2)においては、基板をプリント配線板用の孔を有する基板とし、第一及び第二の感光性樹脂層をエッチング用のドライフィルムレジストとし、c)工程の第一のパターン露光が配線部のパターン露光であり、e)工程の第二のパターン露光がランド部のパターン露光である多段化樹脂構造体の形成方法とすることで、配線部のレジスト層は薄く、孔のテンティングとなるランド部のレジスト層を厚く形成することができ、配線部においては解像性が向上し、ランド部においては充分なテント強度を保つという、プリント配線板製造工程において非常に有用な多段化レジスト層を簡便に形成することができる。
【0015】
本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(3)では、b)工程をアルカリ水溶液によって第一の感光性樹脂層を薄層化する工程とすることで、多段化樹脂構造体の目的に合わせて、幅広い範囲のアルカリ可溶/難溶の感光性樹脂層の中から第一の感光性樹脂層を選択することが可能となる。また、水系とすることで、環境にもやさしい処理となる。
【0016】
本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(4)では、アルカリ水溶液が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種を含み、無機アルカリ性化合物の濃度が5〜20質量%である。これにより、感光性樹脂層の薄層化を均一に行うことができる。
【0017】
本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(5)では、アルカリ水溶液が、さらに、硫酸塩、亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む。これにより、薄層化の処理がより安定化する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(1)の一例を示す断面工程図である。
【図2】本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(2)の一例を示す断面工程図である。
【図3】本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(2)の一例を示す断面工程図である。
【図4】本発明の多段化樹脂構造体の形成方法を利用してメタルマスクを作製する場合の断面工程図である。
【図5】本発明の多段化樹脂構造体の形成方法を利用してメタルマスクを作製する場合の断面工程図である。
【図6】本発明の多段化樹脂構造体の形成方法で作製された多段化樹脂構造体を利用して製造されたメタルマスクを使用して、はんだ印刷を行った例を示す断面図である。
【図7】多段化樹脂構造体の一例を表す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の多段化樹脂構造体の形成方法について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(1)の一例を示す断面工程図である。
基板2としては、用途により様々な基板を利用することが可能である。樹脂板、ガラス板、セラミック板、金属板等、また、それらの複合材料や多孔質体も基板として利用可能である。基板2の上に第一の感光性樹脂層11をラミネートする(図1(a))。その後、薄層化処理により、第一の感光性樹脂層11を所望の厚みまで均一に薄くする(図1(b))。続いて、第一のパターン露光を行って、感光性樹脂層の硬化部3を形成し、多段化樹脂構造体の最下層の形成を行う(図1(c))。次に、第二の感光性樹脂層12を第一の感光性樹脂層11の上にラミネートした(図1(d))後、第二のパターン露光を行って、感光性樹脂層の硬化部3を形成し、次の層の形成を行う(図1(e))。最後に、未露光部の第一の感光性樹脂層11及び第二の感光性樹脂層12の除去を行うことで、感光性樹脂層の硬化部3からなる多段化樹脂構造体を形成することができる(図1(f))。
【0021】
図1は、多段化樹脂構造体が二段の例であるが、(e)工程の後に、さらに、第三の感光性樹脂層のラミネート及び第三のパターン露光、というように繰り返し、最後に全段の未露光部の感光性樹脂層を除去することで、任意の段数の多段化樹脂構造体が得られる。また、本発明の方法によれば、段数を増やしていって、第nの感光性樹脂層(nは2以上の整数)のラミネートを行う際には、第(n−1)の感光性樹脂層まで形成されている基板表面が平坦なので、第nの感光性樹脂層のラミネートを欠陥なく安定に行うことができる。
【0022】
図1の例では、薄層化処理は第一の感光性樹脂層にしか行わなかったが、第nの感光性樹脂層(nは2以上の整数)に対して、ラミネートとパターン露光との間に薄層化処理を行って、感光性樹脂層の厚みのコントロールを任意に行うことが可能である。
【0023】
第二のパターン露光では、第二の感光性樹脂層に対してだけでなく、その下の第一の感光性樹脂層に対しても、硬化処理が行われる。よって、第二のパターン露光を行う部分は、第一のパターン露光の際に露光されていなくても、硬化する。第一の感光性樹脂層の硬化度を高くして、安定に硬化処理を行いたい場合には、第一のパターン露光の際に、第二のパターン露光を行う部分も露光しておくことが好ましい。ただし、多段化樹脂構造体の用途によっては、第一の感光性樹脂層と第二の感光性樹脂層の位置ずれが、何らかの弊害を及ぼす場合がある。その時には、第一のパターン露光の際には第二のパターン露光を行う部分は露光せずに、第二のパターン露光時に第一の感光性樹脂層と第二の感光性樹脂層を一緒に硬化させれば良い。
【0024】
図2及び3は、本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(2)の一例を示す断面工程図であり、プリント配線板の製造工程において有用な多段化レジスト層を得る方法である。図2の基板2は、孔8を有する絶縁性基板7の表面に導電層6を付した基板である。その基板2の両面に第一の感光性樹脂層11として、エッチングレジスト用のドライフィルムレジストをラミネートする(図2(a))。通常ドライフィルムレジストはポリエステルフィルムからなるカバーフィルムがあるが、本発明では、薄層化処理または次の層のラミネートを行う前に、少なくともカバーフィルムの除去を行う。図2において、カバーフィルムの図示は省略している。
【0025】
プリント配線板製造工程で利用される基板2へのラミネートの際には、ラミネート時の気泡の混入を避けるため、できるだけ、第一の感光性樹脂層11として、厚めのドライフィルムレジストをラミネートすることが望ましい。
【0026】
続いて、薄層化処理を行って、第一の感光性樹脂層11の厚みを所望の厚みまで均一に薄くした(図2(b))後、第一のパターン露光を行って、配線部に相当する感光性樹脂層の硬化部3を形成する(図2(c))。次に、第二の感光性樹脂層12のラミネートを両面に行って(図2(d))、今度は孔部8のテンティングを行うために、ランド部の露光を行って、感光性樹脂層の硬化部3を形成する(図3(e))。続いて、未露光部の第一の感光性樹脂層11及び第二の感光性樹脂層12の除去を行って、テンティングのためのランド部のレジスト層が厚く、パターンを形成するための配線部のレジスト層が薄い、レジスト層としては理想的な構造となる多段化レジスト層の形成ができる(図3(f))。
【0027】
第一のパターン露光においては、少なくとも配線部の硬化処理が必要である。ランド部は、第二のパターン露光において、第一の感光性樹脂層及び第二の感光性樹脂層の両方に対して硬化が行われるため、第一のパターン露光の際にランド部へ露光しなくても良いが、安定に硬化処理を行いたい場合には、第一のパターン露光の際に、ランド部を露光しても良い。
【0028】
図2において、第一の感光性樹脂層及び第二の感光性樹脂層のそれぞれにおいて、両面の感光性樹脂層の厚みは同一としたが、これは異なっても構わない。すなわち、微細なパターンが片面にしか存在せず、もう一方の面は厚い感光性樹脂層でも構わない場合には、両面に形成する感光性樹脂層の厚みを変えても構わない。また、同様の理由から、微細なパターンが存在する片面においては、本発明の多段化樹脂構造体の形成方法(2)で多段化レジスト層を形成し、もう一方の面は厚い感光性樹脂層を用いて、薄層化処理を行わずに、一段のレジスト層を形成することも可能である。
【0029】
また、基板の片面において、配線パターンの解像性の要望等から、最適なレジスト層の厚みが異なる部分がある場合には、本発明(1)の場合と同様に、3層以上の多段化レジスト層を形成することも可能である。
【0030】
感光性樹脂層の基板上へのラミネートは、例えば、加熱したゴムロールを加圧して押し当てる熱圧着方式のラミネータ装置を用いることができる。基板には、アルカリ脱脂、酸洗等の前処理を施しても良い。
【0031】
本発明に係わるプリント配線板用の孔を有する基板としては、孔を有する絶縁性基板の表面に導電層を設けた基板が用いられ、例えば、フレキシブル基板、リジッド基板が挙げられる。
【0032】
孔を有する絶縁性基板の表面に導電層が設けられた基板は、例えば、絶縁性基板表面に金属箔層を有する基板に対して、ドリルやレーザーによって孔を形成し、次に、無電解めっき、電解めっき等のめっき処理を施して、孔内部を含む表面にめっき金属層を形成することによって作製される。
【0033】
本発明に係わる感光性樹脂層とは、露光部が架橋して現像液に不溶化する樹脂層であり、例えば、(A)カルボキシル基を含有するポリマー、(B)分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び感光性樹脂層に対して0.01〜0.3質量%の(D)重合禁止剤を含有してなるものが使用可能である。プリント配線板用としては、ネガ型のドライフィルムレジストが一般的に使用されている。市販のドライフィルムレジストは、少なくとも感光性樹脂層を有していて、ポリエステル等の支持層フィルム上に感光性樹脂層を設け、場合によってはポリエチレン等の保護フィルムで感光性樹脂層を挟んだ構成となっているものが多い。本発明において、感光性樹脂層として使用できる市販のドライフィルムレジストとしては、例えば、サンフォートシリーズ(商品名、旭化成イーマテリアルズ社製)、フォテックシリーズ(商品名、日立化成工業社製)、リストンシリーズ(商品名、デュポンMRCドライフィルム社製)、ALPHOシリーズ(商品名、ニチゴー・モートン社製)等を挙げることができる。
【0034】
本発明に係わる感光性樹脂層の厚みは、ラミネートを行ってから薄層化をして所望の厚みに調整することができるため、所望の厚み以上の膜厚であればいずれのものも使用可能であるが、好ましくは15μm以上であり、より好ましくは25μm以上である。厚みが15μm未満では、ゴミを核とした気泡の混入や凹凸追従性不良によって、欠陥が発生する場合がある。
【0035】
本発明に係わるパターン露光の露光方式としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、フォトツールを用いた片面あるいは両面密着露光方式、プロキシミティ方式、プロジェクション方式やレーザー走査露光方式等が挙げられる。
【0036】
本発明に係わる薄層化する工程とは、感光性樹脂層の厚みを略均一に薄くする処理のことであり、任意の値まで薄くすることができるが、好ましくは、薄層化処理を施す前の厚みの0.05〜0.9倍の厚みまで薄くすることが適当である。
【0037】
本発明のアルカリ水溶液は、無機アルカリ性化合物を5〜20質量%含有すると、より均一に感光性樹脂層の除去ができるので好ましい。より好ましくは7〜15質量%である。5質量%未満では、薄層化処理で面内むらが発生する可能性が大きい。また、20質量%を超えると、無機アルカリ性化合物の析出が起こりやすく、液の経時安定性、作業性に劣る。溶液のpHは9〜12の範囲とすることが好ましい。また、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜少量添加することもできる。
【0038】
無機アルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または重炭酸塩等のアルカリ金属炭酸塩、カリウム、ナトリウムのリン酸塩等のアルカリ金属リン酸塩、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物等のアルカリ金属水酸化物、カリウム、ナトリウムのケイ酸塩等のアルカリ金属ケイ酸塩、カリウム、ナトリウムの亜硫酸塩等のアルカリ金属亜硫酸塩を使用することができる。このうち、本発明の導電パターンの作製方法(3)のように、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。さらには、アルカリ金属炭酸塩が、感光性樹脂層の溶解能力、処理液のpHを維持する緩衝能力、装置のメンテナンス性等の点から特に好ましい。
【0039】
さらに、アルカリ水溶液が硫酸塩、亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。硫酸塩または亜硫酸塩としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属硫酸塩または亜硫酸塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属硫酸塩または亜硫酸塩が挙げられる。このうちアルカリ金属硫酸塩または亜硫酸塩が特に好適に用いられる。硫酸塩または亜硫酸塩に含まれる硫酸イオンまたは亜硫酸イオンにより、薄層化処理の均一性の向上が可能となる。
【0040】
薄層化処理の方法として、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、スプレー方式が感光性樹脂層の溶解速度の点からは最も適している。スプレー方式の場合、処理条件(温度、時間、スプレー圧)は、使用する感光性樹脂層の溶解速度に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃である。また、スプレー圧は0.01〜0.5MPaとするのが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.3MPaである。
【0041】
本発明に係わる薄層化の工程は、特にアルカリ水溶液に無機アルカリ性化合物を5〜20質量%含有させた液による処理の場合は、その処理の後に、処理された感光性樹脂層を再分散させ、除去を行う工程が必要となる。感光性樹脂層成分再分散可能な水系の処理液であればいずれのものも使用可能であるが、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち少なくともいずれか1種を含むpH5〜10の水溶液で処理することが好ましい。
【0042】
本発明に係わる未露光部の第一及び第二の感光性樹脂層の除去に用いる液は、感光性樹脂層がドライフィルムレジストであれば、通常の現像液である0.8〜1.2質量%の炭酸ナトリウムの水溶液により処理を行うことが望ましい。薄層化で用いた処理と同一の処理を使用して未露光部の感光性樹脂層の除去を行うことも可能ではあるが、通常の現像液を使用した方が迅速に未露光部の感光性樹脂層の除去を行うことができるため好ましい。
【0043】
薄層化処理を行った後、再度カバーフィルムのラミネーションを行っても良い。薄層化処理から露光工程までの間のハンドリングによる傷等の危険を回避することができる。露光工程では、カバーフィルムをラミネーションされている状態で露光しても良いし、カバーフィルムの除去を行ってから露光しても良い。
【実施例】
【0044】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例1
ガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板に、ドリルを用いて直径200μm及び500μmの貫通孔を100穴ずつ形成した後、貫通孔内部と銅箔上に10μm厚のめっき銅層を形成した孔を有する銅張積層板にドライフィルムレジスト(商品名:サンフォートAQ2575、旭化成イーマテリアルズ社製、厚み25μm)を両面にラミネートし、第一の感光性樹脂層の形成を行った。
【0046】
カバーフィルムを剥離した後、表1に示すアルカリ水溶液Aを用いて、第一の感光性樹脂層の厚みが平均10μmになるように、表2に記載の時間処理を行い(液温度25℃、スプレー圧0.05MPa)、充分な水洗処理、冷風乾燥により、第一の感光性樹脂層の薄層化を行った。薄層化処理後、感光性樹脂層の膜厚を10点で測定し、膜厚のばらつきを標準偏差σの値で評価した。結果を表2に示す。膜厚測定後、カバーフィルムを再度ラミネーションを行った。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
ライン/スペース=40/40μmのパターンが描画されたフォトツールを用い、出力3kwの超高圧水銀灯(商品名:URM−300、ウシオライティング社製)を光源に備えた真空密着露光装置で密着露光(第一のパターン露光)を行った。
【0050】
続いて、カバーフィルムを除去した後、基板の両面の第一の感光性樹脂層上に、さらに、第二の感光性樹脂層として、ドライフィルムレジスト(商品名:サンフォートAQ2575、旭化成イーマテリアルズ社製、厚み25μm)を両面にラミネートした。
【0051】
次に、各孔に対して、ランドパターンのみが描画されたフォトツールを用い、出力3kwの超高圧水銀灯(商品名:URM−300、ウシオライティング社製)を光源に備えた真空密着露光装置で密着露光(第二のパターン露光)を行った。
【0052】
続いて、カバーフィルムを剥がした後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度30℃、スプレー圧0.15MPa)を用いて現像処理を行い、多段化レジスト層(多段化樹脂構造体)を形成した。
【0053】
ランド部の樹脂層の総厚は35μmであり、配線部の樹脂層の段厚は10μmであった。
【0054】
エッチングを行って、多段化レジスト層の機能を確認したところ、ランド部のテンティングは完全に保たれ、また、配線部は良好にエッチングが行われていた。また、樹脂層と基板との密着性も良好に保たれており、剥がれや欠け等の欠陥も観察されなかった。
【0055】
実施例2〜10
アルカリ水溶液Aの代わりに、表1に記載のアルカリ水溶液B〜H、AH、AIを用い、表2に記載の時間処理を行った以外は、実施例1と同じ方法で多段化レジスト層を形成した。第一の感光性樹脂層の薄層化を行った後で、第一の感光性樹脂層の膜厚を10点で測定し、膜厚のばらつきを標準偏差σの値で評価した。結果を表2に示す。実施例2〜8において、標準偏差の値は小さく、第一の感光体樹脂層に関しては良好な面内均一性が得られた。さらに、得られた多段化レジスト層に実用上問題となる欠陥は見られなかった。無機アルカリ性化合物として亜硫酸ナトリウムを用いた実施例9〜10では、第一の感光性樹脂層の面内の膜厚のばらつきは良好だったが、薄層化処理後の感光性樹脂層表面に不溶解成分の析出による弱いタック性が認められた。しかしながら、得られた多段化レジスト層には実用上問題となる欠陥は見られなかった。
【0056】
実施例11〜28
アルカリ水溶液Aの代わりに表3に記載のアルカリ水溶液I〜Zを用い、薄層化処理として、スプレー圧0.05MPaで噴射するスプレー処理の他に、アルカリ水溶液に浸漬するディップ処理を行い、充分な水洗処理、冷風乾燥により薄層化処理を行った以外は、実施例1と同じ方法で多段化レジスト層を形成した。
【0057】
【表3】

【0058】
第一の感光性樹脂層の薄層化を行った後で、第一の感光性樹脂層の膜厚を10点で測定し、膜厚のばらつきを標準偏差σの値で評価した。結果を表4に示す。それぞれのアルカリ水溶液において、浸漬処理によってもスプレー処理によっても標準偏差の値は小さく、良好な面内均一性が得られた。得られた多段化レジスト層には、実用上問題となる欠陥は見られなかった。
【0059】
【表4】

【0060】
比較例1
実施例1において、10μmの厚みのドライフィルムレジストをラミネートすることで、第一の感光性樹脂層を形成し、その後の薄層化処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして多段化レジスト層の形成を行った。
【0061】
多段化レジスト層の欠陥を観察したところ、第一の感光性樹脂層と基板との界面において多数の気泡が観察され、配線部に欠けも観察された。
【0062】
比較例2
実施例1において、液状レジストの塗布及び乾燥により、10μmの厚みの第一の感光性樹脂層を形成し、その後の薄層化処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして多段化レジスト層の作成を行った。
【0063】
塗布膜厚のコントロールのための調整や乾燥条件の設定、また、貫通孔部まわりの均一塗布が困難である等、液状塗布を行うにあたっての難しい点が多々あって手間がかかり、簡便に10μmの厚みの第一の感光性樹脂層を形成することはできなかった。
【0064】
実施例29
本発明の方法を用いて、図4及び5に示すように、3種類の異なる厚み(厚部41、中厚部42、薄部43)を有するメタルマスク40をアディティブ(電鋳)法により作製した。基板として、板厚0.2mmのSUS304のステンレス板からなるベース基材20を用い、その表面に第一の感光性樹脂層11として、40μm厚の感光性メッキレジスト層をラミネートした(図4(a))。次に、膜厚が32μmになるように、実施例1で使用したアルカリ現像液Aを用いて、薄層化処理を行った(図4(b))。続いて、メタルマスクの厚部に対応する領域以外の領域に第一のパターン露光を行い、感光性樹脂層の硬化部3を形成した(図4(c))。露光は直描露光機(商品名:LI−8500、大日本スクリーン製造社製)を用いた。
【0065】
次に、第二の感光性樹脂層12として、同様の40μm厚の感光性メッキレジスト層をラミネートした(図4(d))後、アルカリ現像液Aを用いて、第二の感光性メッキレジスト層の厚みが23μmとなるように薄層化処理を行った(図4(e))。その後、薄部及び開口部に対応した領域の第二のパターン露光を直描露光機を用いて行い、感光性樹脂層の硬化部3を形成した(図4(f))。
【0066】
さらに、第三の感光性樹脂層13として、40μm厚の感光性メッキレジスト層をラミネートした(図5(g))。次に、開口部に対応する領域に第三のパターン露光を行い、感光性樹脂層の硬化部3を形成した(図5(h))。続いて、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いてアルカリ現像を行い、未露光部の感光性メッキレジスト層の除去を行い(図5(i))、多段化樹脂構造体1を形成した。感光性メッキレジスト層に対して、追露光及び追乾燥を行った後、スルファミン酸ニッケルメッキ浴に浸漬し、電気メッキを行い、厚さ90μmのニッケル層21を形成させた(図5(j))。その後、研磨処理を行ってメッキ表面を研磨し、厚さ85μmとした(図5(k))。続いて、感光性樹脂層の硬化部3を剥離した後、ニッケル層21をベース基材から剥離し、3種類の異なる厚み(厚部41、中厚部42、薄部43)を有するメタルマスクを得た(図5(l))。
【0067】
このメタルマスク(図5(l))では、厚部41、中厚部42、薄部43の3種類の厚みによって、例えば、はんだ印刷時のはんだペースト量が調整できる。図6は、このメタルマスク40を使用して、はんだ印刷を行った例を示す断面図である。図6(m)のように、スキージ31によって、はんだペースト30をスクリーン印刷すると、はんだペーストの厚みが、厚部41では85μm、中厚部42では53μm、薄部43では30μmとなっていた(図6(n))。本発明の多段化樹脂構造体の形成方法で作製された多段化樹脂構造体1を利用することで、任意の厚みを持ったメタルマスク40を簡便に作製することができた。
【0068】
実施例30
ガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板に、ドリルを用いて直径200μm及び1000μmの貫通孔を100穴ずつ形成した後、貫通孔内部と銅箔上に10μm厚のめっき銅層を形成した孔を有する銅張積層板にバフ研磨を行って表面に密着性改良のための粗面化を行った。次にドライフィルムレジスト(商品名:サンフォートAQ4038、旭化成イーマテリアルズ社製、厚み38μm)を両面にラミネートし、第一の感光性樹脂層の形成を行った。
【0069】
カバーフィルムを剥離した後、研磨ロールを用いて感光性樹脂層表面を厚みが20μmになるまで研磨し、薄層化した。感光性樹脂層の膜厚を10点で測定し、膜厚のばらつきを標準偏差σの値を評価したところ、σは1.9であった。
【0070】
ライン/スペース=40/40μmのパターンが描画されたフォトツールを用い、出力3kwの超高圧水銀灯(商品名:URM−300、ウシオライティング社製)を光源に備えた真空密着露光装置で密着露光(第一のパターン露光)を行った。
【0071】
続いて、基板の両面の第一の感光性樹脂層上に、さらに、第二の感光性樹脂層として、ドライフィルムレジスト(商品名:サンフォートAQ4038、旭化成イーマテリアルズ社製、厚み38μm)を両面にラミネートした。
【0072】
次に、各孔に対して、ランドパターンのみが描画されたフォトツールを用い、出力3kwの超高圧水銀灯(商品名:URM−300、ウシオライティング社製)を光源に備えた真空密着露光装置で密着露光(第二のパターン露光)を行った。
【0073】
続いて、カバーフィルムを剥がした後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度30℃、スプレー圧0.15MPa)を用いて現像処理を行い、多段化レジスト層(多段化樹脂構造体)を形成した。
【0074】
ランド部の樹脂層の総厚は58μmであり、配線部の樹脂層の段厚は20μmであった。
【0075】
エッチングを行って、多段化レジスト層の機能を確認したところ、ランド部のテンティングは完全に保たれ、また、配線部は良好にエッチングが行われていた。また、樹脂層と基板との密着性も良好に保たれており、剥がれや欠け等の欠陥も観察されなかった。
【符号の説明】
【0076】
1 多段化樹脂構造体
2 基板
3 感光性樹脂層の硬化部
6 導電層
7 絶縁性基板
8 孔
11 第一の感光性樹脂層
12 第二の感光性樹脂層
13 第三の感光性樹脂層
20 ベース基材
21 ニッケル層
30 はんだペースト
31 スキージ
32 被印刷基材
40 メタルマスク
41 厚部
42 中厚部
43 薄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の樹脂構造体形成方法において、
a)基板上に第一の感光性樹脂層をラミネートする工程
b)第一の感光性樹脂層を薄層化する工程
c)第一の感光性樹脂層にパターン露光を行う工程
d)第一の感光性樹脂層上に第二の感光性樹脂層をラミネートする工程
e)第二の感光性樹脂層の上からパターン露光を行う工程
f)未露光部の感光性樹脂層の除去を行う工程
をこの順で含むことを特徴とする多段化樹脂構造体形成方法。
【請求項2】
基板がプリント配線板用の孔を有する基板であり、感光性樹脂層がエッチング用のドライフィルムレジストであり、(c)工程のパターン露光が配線部のパターン露光であり、(e)工程のパターン露光がランド部のパターン露光である請求項2記載の多段化樹脂構造体形成方法。
【請求項3】
(b)工程が、アルカリ水溶液によって第一の感光性樹脂層の薄層化を行う工程である請求項1記載の多段化樹脂構造体形成方法。
【請求項4】
アルカリ水溶液が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種を含み、無機アルカリ性化合物の濃度が5〜20質量%であることを特徴とする請求項3記載の多段化樹脂構造体形成方法。
【請求項5】
アルカリ水溶液が、さらに、硫酸塩、亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む請求項4記載の多段化樹脂構造体形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−71406(P2011−71406A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222429(P2009−222429)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】