説明

多段階凍結濃縮システム

【課題】 従来の凍結濃縮システムは、濃縮度を高める方法については十分な対策をしていなかった。
【解決手段】 冷凍部100、濃縮部200、希薄液収納部300から構成されているものであって、濃縮部200のタンク21内の原溶液24を、冷凍部100の製氷板4に散水しながら凍結濃縮をし、濃縮液22をタンク20内に貯め、砕氷14aを分離板23を介して希薄液収納部300のタンク40内へ移送して貯える。タンク20内に貯められた濃縮液22を、再度下方部のタンク21内へ落して、その後製氷板4外面に散水して凍結濃縮操作を行ない、濃縮度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミルク、ジュース等の食品原料や、汚水等の原溶液を凍結濃縮法により、濃縮液(濃溶液)と希薄液に分離する凍結濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する発明としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3なるものがある。
【0003】
特許文献1では、第1氷蓄熱槽で排水を凍結解凍処理によって固形物の変性凝集と濃縮を行い、第2氷蓄熱槽で第1氷蓄熱槽からの浄化水を再度凍結解凍処理によって浄化水の浄化度アップと残留固形成分の濃縮を行う廃水処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献2では、凍結筒で溶剤を含有する水である溶液を冷却し、ブレードにより凍結筒内面から掻き落とされた氷粒と濃縮水を保冷タンクへ送り、保冷タンクに接続された流路の電磁弁を開放することにより濃縮水を排出する一方、保冷タンクの側面開口部に設けられたハッチを開放することで成長した氷を排出することにより、溶液の濃縮を行う凍結濃縮分離装置が開示されている。
【0005】
特許文献3では、第1晶析槽,第2晶析槽で順に、被濃縮液中の水分を凍結して氷結晶を生成・分離し、第3晶析槽で種氷結晶を投入し、この種氷結晶に溶液中の水分を吸収させ、大粒径に成長させ、さらに成長した氷結晶を氷輸送用スロープを用いて第2晶析槽,第1晶析槽に順に送り、第2晶析槽,第1晶析槽内で生成された微細な氷粒を凝縮させてさらに氷結晶を成長させることにより、被濃縮液の濃縮を行う凍結濃縮システムが開示されている。
【特許文献1】特開2000−24645号公報
【特許文献2】特開2003−245657号公報
【特許文献3】特開平9−299704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された凍結濃縮システムでは、第1氷蓄熱槽から第2氷蓄熱槽へ浄化水を移送するには、氷が融解してからでないと移送できないという問題があった。とりわけ、回収冷熱を冷房等の熱源として利用する場合には、氷が融解するまでに時間がかかる。氷を速く溶かすことも可能であるが、その場合には、解凍処理するために熱併給装置から氷蓄熱槽に温熱を供給する必要があり、一度凍らせた排水を融解させるため多くの熱エネルギーを要する。
【0007】
また、上記特許文献2に開示された凍結濃縮システムでは、凍結筒から保冷タンクへ氷粒と濃縮水を送り、間接冷却により保冷タンク内で氷粒を氷に成長させるため、冷却効率が悪いという問題があった。しかも、凍結筒のブレードや保冷タンクのハッチに駆動部を設ける必要があるため、構成が複雑になるという問題もあった。
【0008】
そして、上記特許文献3に開示された凍結濃縮システムでは、第3晶析槽内から氷結晶を取り出し、第2晶析槽,第1晶析槽まで氷結晶を輸送する氷輸送用スロープを設ける必要があるため、装置が複雑化,大型化するという問題があった。
【0009】
そこで本発明は上記各問題点に鑑み、比較的簡易な構成で、濃縮液と希薄液との濃度分離の度合いを大きくすること、すなわちできる限り濃縮液の濃度を濃く、一方希薄液の濃度を薄くする多段階凍結濃縮システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における請求項1の多段階凍結濃縮システムでは、圧縮機と凝縮器と減圧機構と製氷板とが循環路で連結され、前記循環路内部に冷媒が封入されてなる冷凍部と、原溶液を貯める原溶液用タンクと、濃縮液を貯める濃縮液用タンクと、希薄液収納部と、前記原溶液及び/又は前記濃縮液を前記製氷板に流下させる散液手段と、前記製氷板で氷結した希薄氷を適宜脱氷させる脱氷手段と、前記濃縮液タンクに前記希薄氷の氷結により生じた前記濃縮液を移送すると共に、前記希薄液収納部に前記希薄氷を移送する分離手段とを備えている。
【0011】
本発明における請求項2の多段階凍結濃縮システムでは、前記分離手段が前記製氷板の直下の位置に目皿部を有し、この目皿部の下部に濃縮液用のタンクが設けられている。
【0012】
本発明における請求項3の多段階凍結濃縮システムでは、前記分離手段が前記製氷板の直下から離れた位置に目皿部を有し、この目皿部の下方部に前記濃縮液用のタンクが設けられ、前記分離手段は、前記製氷部から落下する前記希薄氷と前記濃縮水を前記目皿部まで移送して、前記目皿部で両者を分離するよう構成されている。
【0013】
本発明における請求項4の多段階凍結濃縮システムでは、前記原溶液用タンクと、前記濃縮液用タンクとが一体で形成され、その内部に前記原溶液と前記濃縮液とを分離できる移動板又は移動箱が設けられている。
【0014】
本発明における請求項5の多段階凍結濃縮システムでは、前記製氷板を複数枚具備し、当該各製氷板の下方部にそれぞれ前記目皿部を介して、個別の前記濃縮液タンクと、これに付随して個別の前記散液手段とが設けられ、前記製氷板と前記濃縮液タンクと前記散液手段とから形成される一の濃縮経路を用いて濃縮された濃縮液が他の濃縮経路に移送されるよう構成されている。
【0015】
本発明における請求項6の多段階凍結濃縮システムでは、圧縮機と凝縮器と減圧機構と製氷板とが循環路で連結され、前記循環路内部に冷媒が封入されてなる冷凍部と、前記製氷板の下部に個別に設けられた原溶液と濃縮液の貯液を兼用する兼用タンクと、前記兼用タンクの下方部に設けられた希薄液収納部と、前記原溶液及び/又は前記濃縮液を前記製氷板に流下させる散液手段と、前記製氷板で氷結した希薄氷を適宜脱氷させる脱氷手段とを備えている。
【0016】
本発明における請求項7の多段階凍結濃縮システムでは、前記兼用タンクの側面が、前記製氷板から脱氷された前記希薄氷を前記希薄液収納部に移送させ易いようにした傾斜面で構成されている。
【0017】
本発明における請求項8の多段階凍結濃縮システムでは、前記製氷板と前記兼用タンクとの間に、前記希薄氷と前記濃縮液とを分離する分離機構が設けられている。
【0018】
本発明における請求項9の多段階凍結濃縮システムでは、前記分離機構は分離板とスライド板からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、濃縮液の濃度が高まり、一方希薄液の濃度が薄くなり、分離度合いが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明における多段階凍結濃縮システムの好ましい各実施例を説明する。なお、同一箇所には同一符号を付し、共通する部分の説明は重複するため極力省略する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の一実施の形態の構成図である。主要構成は冷凍部100,濃縮部200,希薄液収納部300から構成されている。
【0022】
冷凍部100は圧縮機1、凝縮器2、製氷板(蒸発器)4、アキュームレーター6、それらを循環路を構成するように連結するパイプ7,8,11,12、及び循環路の内部に封入されている冷媒(フロンなど)5から構成されている。圧縮機1により断熱圧縮された冷媒は、パイプ7を介して凝縮器2内に入り、ここで凝縮熱を放出して液化し、パイプ8,バルブ9を通って減圧機構(膨張弁)3を通る間に断熱膨張して低温度となり製氷板4内に入り、その周りを流下する液体22を冷却する。この製氷板4内に入った冷媒は蒸発しながらパイプ11を介してアキュムレーター6内に入り、気液分離された後、この蒸気はパイプ12を介して圧縮機1に戻される。
【0023】
一方濃縮部200のタンク21内の原溶液24は、ポンプ32を駆動することにより、パイプ30を介して散水管31から製氷板4の外面に散水され、その面を流下する間に、製氷板4内を通るマイナス温度の冷媒5の冷力により冷却され固化を開始する。ここで、ポンプ32,パイプ30,散水管31が本実施例の散液手段に相当する。このように製氷板4の外面に原溶液24が流下し、これが固化する間に、原溶液24の内部の溶質は固化を開始した結晶(氷)14から押し出されて流下する液体14b内に濃縮される。その後分離板23の一部を構成している目皿23aを通過してタンク20内へ入り、そこに溜められる。このような操作によって、タンク21内の原溶液24は濃縮されて、タンク20内へ濃縮液22として貯えられる。
【0024】
また適宜、冷凍部100のパイプ8部のバルブ9を閉め、パイプ7からパイプ8部に分岐接続されているパイプ13部のバルブ10を開くと、圧縮機1によって断熱圧縮された冷媒の高温蒸気がパイプ13、8を通って製氷板4内に一時的に入る。このような操作により、製氷板4は一時的にプラス温度に加熱され、その外面に結晶していた氷14は、製氷板4から離脱し、その下方部に落下しながら破片状の砕氷14aとなる。すなわち、本実施例では、パイプ7からパイプ8部に分岐接続されているパイプ13,バルブ10,当該高温蒸気が脱氷手段に相当する。この砕氷14aは目皿23a部で濃縮された濃縮液である液体14bと分離されて、斜めに配置された分離手段としての分離板23上を滑りながら下方部へ移動し、別置の希薄液収納部300のタンク40内へ落下する。このタンク40内の砕氷14aの利用法の一例につき以下説明する。
【0025】
タンク40は、その外部の熱交換器41とパイプ44,45,47とによって循環路を構成するように連結されていて、パイプ44部に設けてあるポンプ42を駆動するとタンク40内の希薄液14cはパイプ47,44、ポンプ42を通って熱交換器41部を通り、パイプ45を介してタンク40内へ戻される。このような操作により砕氷14aは徐々に融解されて、その冷熱は熱交換器41に移送され、この冷熱は、空調やプロセス冷却に利用される。また、このような操作によって融解した希薄液14cはパイプ47部のバルブ46を開くことにより外部に排出され、原水や中水として有効に利用される。
【0026】
このような凍結濃縮操作によって、タンク21内の原溶液24の一部は希薄液14cとしてタンク40内に、また濃縮液22としてタンク20内に貯えられ、タンク21内は空になる。タンク20内に貯えられた濃縮液22を更に濃縮する必要のある場合は、この濃縮液22をパイプ25、バルブ26、パイプ29を通してタンク21内へ戻す。その後ポンプ32を駆動することにより、パイプ30、散水管31を介して製氷板4に濃縮液22を流下させれば、更にタンク20内には濃縮された濃縮液22が集められる。このようにして濃縮度を向上した濃縮液22は、パイプ29に付いているバルブ26を閉め、パイプ25とパイプ28間に付いているバルブ27を開くことによりパイプ28から外部へ排出され、所望の濃縮液22として有効に利用される。
【0027】
一方タンク40内の希薄液14cの希薄度を更に希薄化するにはタンク40とタンク21とを結んでいるパイプ49のバルブ48を開いて、タンク40内の希薄液14cをパイプ49を介してタンク21内へ移送する。今までと同様にしてポンプ32を駆動してタンク21内に移送した希薄液14cを製氷板4に流下させながら凍結濃縮させれば、分離板23を介してタンク40内へ希薄化された砕氷14aが移送されて貯えられる。このような氷は融解しながら冷熱を利用した後、パイプ47部のバルブ46を開いて外部に排出し、目的とする希薄液14cとして利用される。希薄液14cが排水の場合は、排水基準を容易に突破することが可能となる。このような操作中に濃縮されたタンク20内の濃縮液22は、次回にその下方部のタンク21内へ新たに投入される原溶液24内に、パイプ25、バルブ26、パイプ29を介して混入して、次の凍結濃縮を行う原溶液24として利用される。
【実施例2】
【0028】
図2は図1の変形実施例の構成図である。この実施例では製氷板4の直下の分離板23には目皿23aは付いていず、製氷板4部から砕氷14aと、液体14bが傾斜分離板23に落下した後、右側下方部に移動した途中に目皿23aが設けてある。この目皿23aの下方部にはタンク20が設けてあり、目皿23aからこぼれ落ちた液体14bを貯めるようになっている。タンク20内に貯められた濃縮液22の濃度が所望の濃度に高まっている場合はパイプ28部のバルブ27を開いて外部に排出して利用する。所望の濃度に高まっていない場合は、パイプ25部のバルブ26を開いてタンク20内の濃縮液22をパイプ29を介してタンク21部へ移送し、その後製氷板4を用いて凍結濃縮操作を行う。一方分離板23を移動してタンク40内へ入った砕氷14aの冷熱は、融解しながら、熱交換器41を介して利用される。このようにして利用されたタンク40内の希薄液14cが、所望の薄さに精製されていない時は、タンク20とタンク21を空にしておいた後、パイプ49部のバルブ48を開いて、パイプ49,29を介してタンク21内へ導入し、その後製氷板4を用いて凍結濃縮操作を行ない、さらに希薄化する。
【実施例3】
【0029】
図3は図1の変形実施例の構成図である。これはタンク20とタンク21を同一のもので構成し、原溶液24と濃縮液22との間に分離用の移動板34(たとえばプラスチックなど)を設けたものである。移動板34の下部の原溶液24はポンプ32を駆動することにより、パイプ30,バルブ33を介して散水管31に導入され、ここから製氷板4に散水される。製氷板4の中に導入されるマイナス温度の冷媒によって、製氷板4外面に流下する原溶液24は製氷板4外面に氷結し始める。これによって氷結した氷14から溶質が液体側に押し出される。このようにして原溶液24は製氷板4に散水され流下する間に濃縮され、移動板34の上部に溜められる。移動板34の密度は原溶液24及び濃縮液22とほぼ同等の密度を有するものを選定するのがよい。この移動板34の材質は紙やビニール等の膜であってもよい。またこの水平状の移動板34の周縁に移動板34の上方向に対して垂直状に立てた縁を設けて箱状にし、その凹部に濃縮液22を貯めることができる移動箱34であると、その役目を好適に発揮することができる。
【0030】
原溶液24をタンク20から抜き取る必要のある時は、タンク20の下部に設けてあるパイプ51に付いているバルブ50を開くことによって重力によって、外部に抜き取ることができる。また濃縮液22を途中で抜き取る必要のある時は、タンク20の上部に接続されているパイプ28部のバルブ27を開くことにより外部に取出すことができる。水中ポンプを利用して濃溶液22を外部に排水してもよい。また、移動板34が箱状の移動箱である場合には、移動箱34を外部に取り出して、その中の濃溶液22を外部に排出すればよい。
【実施例4】
【0031】
図4は本発明の他の実施例の構成図である。これは複数枚の製氷板4,4a,4bの下部に、それらに対応したタンク20,20a,20bを設けたものである。
【0032】
原溶液24を収納したタンク21にはパイプ30を設けて、その途中にポンプ32を設けて原溶液24をパイプ30を介して散水管31から製氷板4に散水して原溶液24をその外面に凍結させながら濃縮する。この過程で濃縮された濃縮液22は、その下方部のタンク20内に溜められる。タンク20にはパイプ30aが設けてあり、この途中にポンプ32aが設けてあり、このポンプ32aを駆動するとタンク20内の濃縮液22はパイプ30aを介して散水管31aに導入され、ここから製氷板4aに散水される。このような過程により濃縮液22は、さらに濃縮されて製氷板4aの下方部のタンク20a内に濃縮液22aとして貯えられる。タンク20aにはパイプ30bが設けてあり、この途中に設けてあるポンプ32bを駆動することによりタンク20a内の濃縮液22aはパイプ30bを介して散水管31bに導入される。この散水管31bより濃縮液22aは製氷板4bに散水され、さらに凍結濃縮される。このような過程により、製氷板4bの下方部に設けてあるタンク20bには更に濃縮された濃縮液22bが貯えられる。タンク20bに貯えられた濃縮液22bの濃度が所望の濃度に達している場合は、タンク20bの下方部に設けてあるパイプ25、バルブ27を介してパイプ28から濃縮液22bは外部に排出される。所望の濃度に達していない時には、バルブ27を閉じ、パイプ25とパイプ29との間に設けてあるバルブ26を開いてタンク20b内の濃縮液22bをタンク21内に導入して再度多段凍結濃縮を行う。
【実施例5】
【0033】
図5は本発明の他の実施例の構成図である。これは製氷板4,4a,4bに対応して、それらの下方部に、それぞれタンク20,20a,20bを設け、これらのタンク20,20a,20bより、さらに下方部に希薄液14cを収納するためのタンク40を設け、原溶液24を収納するタンク21を省略したものである。タンク20,20a,20bが原溶液24の収納を兼用している。兼用タンクとしてのタンク20,20a,20bには、それぞれパイプ30,30a,30bが連結されていて、全てポンプ32に連なっていて、パイプ30を介して散水管31に接続されている。ポンプ32を駆動すると、タンク20,20a,20b内の液体22はポンプ32を介して、パイプ30,散水管31から製氷板4,4a,4bに散水される。液体22は製氷板4,4a,4bを流下する間に凍結濃縮される。このような過程により、タンク20,20a,20b内の液体22は徐々に濃縮されていく。製氷板4,4a,4b面で氷結し、脱氷された砕氷14aは、タンク20,20a,20bの外面を通り抜け、下方部のタンク40内へ集められる。このようにしてタンク20,20a,20b内に濃縮液22が貯められ、タンク40内には氷14,砕氷14a,希薄液14cが集められる。
【0034】
この実施例においてタンク20,20a,20bの外面は図示のように、その上方部が製氷板4,4a,4bに対して接近していて、製氷板4,4a,4bから脱氷された砕氷14aをタンク40に移送させ易いように、下方部に末広がりな傾斜面を構成しておくと、砕氷14aは好適にそれらの外面を滑りながら下方部のタンク40内へ落下する。
【実施例6】
【0035】
図6は、図5に対する変形実施例の縦断面図であり、図7はその正面図である。これは製氷板4の下端部とタンク20との結合部分に特徴を有するものである。製氷板4の下端部に分離板60を設け、この分離板60の下方部にスライド板61を設け、分離板60とスライド板61とにより分離機構が形成されているものである。このスライド板61の一部は、タンク20内に臨ませた構成となっている。分離板60は製氷板4に平行で互いにそれらの端面を接触させてある。必要に応じてそれらの接触面は点付け溶着してもよい。脱水過程において、この分離板60の外面を滑り落ちる、砕氷14aを、その下方部に移動させ易くするため、その下部にスライド板61が、分離板60に対して垂直方向に取り付けてある。このスライド板61は複数枚取付けるのがよい。
【0036】
図8は図6のスライド板61周りの拡大図である。このスライド板61の端面は傾斜片61aと垂直片61bとによって構成をされていて、傾斜片61aの上端は分離板60の下端部と接触するように取付けてある。一方下方部の垂直片61bの一部は、下部のタンク20内に挿入されているが、この全部の区間を挿入するのではなく、垂直部の区間aの部分はタンク20の上方部に設けることが重要である。この区間aの距離は、傾斜片61aの延長線Rよりも、タンク20の上端cが下方部に位置するように配置して決めるのが重要である。これは砕氷14aがスライド板61の傾斜片61aを滑り落ちて来る際、砕氷14aの一部がタンク20の上端cに接触して、引っかかることがないようにするために重要なことである。
【0037】
なお図6、図7、図8に示す、分離板60とスライド板61からなる、砕氷14aと液体14bとを分離する構成は、凍結濃縮システム以外に、通常の製氷装置や氷蓄熱装置にも、そのまま適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の構成図
【図2】図1の変形実施例の構成図
【図3】図1の変形実施例の構成図
【図4】本発明の他の実施例の構成図
【図5】本発明の他の実施例の構成図
【図6】図5に対する変形実施例の縦断面図
【図7】図6の平面図
【図8】図6のスライド板周りの拡大図
【符号の説明】
【0039】
1 圧縮機
2 凝縮器
3 減圧機構
4 蒸発器(製氷板)
5 冷媒
7,8,11,12 パイプ(循環路)
10 バルブ(脱氷手段)
13 パイプ(脱氷手段)
14 氷(希薄氷)
14a 砕氷(希薄氷)
14b液体(濃縮液)
20,20a,20b タンク(濃縮液用タンク)
21 タンク(原溶液用タンク)
23 分離板(分離手段)
23a 目皿
22,22a,22b 濃縮液
24 原溶液
30,30a,30b パイプ(散液手段)
31,31a,31b 散水管(散液手段)
32,32a,32b ポンプ(散液手段)
34 移動板(移動箱)
60 分離板(分離機構)
61 スライド板(分離機構)
100 冷凍部
200 濃縮部
300 希薄液収納部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と凝縮器と減圧機構と製氷板とが循環路で連結され、前記循環路内部に冷媒が封入されてなる冷凍部と、原溶液を貯める原溶液用タンクと、濃縮液を貯める濃縮液用タンクと、希薄液収納部と、前記原溶液及び/又は前記濃縮液を前記製氷板に流下させる散液手段と、前記製氷板で氷結した希薄氷を適宜脱氷させる脱氷手段と、前記濃縮液タンクに前記希薄氷の氷結により生じた前記濃縮液を移送すると共に、前記希薄液収納部に前記希薄氷を移送する分離手段とを備えたことを特徴とする多段階凍結濃縮システム。
【請求項2】
前記分離手段が前記製氷板の直下の位置に目皿部を有し、この目皿部の下部に濃縮液用のタンクが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の多段階凍結濃縮システム。
【請求項3】
前記分離手段が前記製氷板の直下から離れた位置に目皿部を有し、この目皿部の下方部に前記濃縮液用のタンクが設けられ、前記分離手段は、前記製氷部から落下する前記希薄氷と前記濃縮水を前記目皿部まで移送して、前記目皿部で両者を分離するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の多段階凍結濃縮システム。
【請求項4】
前記原溶液用タンクと、前記濃縮液用タンクとが一体で形成され、その内部に前記原溶液と前記濃縮液とを分離できる移動板又は移動箱が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多段階凍結濃縮システム。
【請求項5】
前記製氷板を複数枚具備し、当該各製氷板の下方部にそれぞれ前記目皿部を介して、個別の前記濃縮液用タンクと、これに付随して個別の前記散液手段とが設けられ、前記製氷板と前記濃縮液用タンクと前記散液手段とから形成される一の濃縮経路を用いて濃縮された濃縮液が他の濃縮経路に移送されるよう構成されたことを特徴とする請求項2に記載の多段階凍結濃縮システム。
【請求項6】
圧縮機と凝縮器と減圧機構と製氷板とが循環路で連結され、前記循環路内部に冷媒が封入されてなる冷凍部と、前記製氷板の下部に個別に設けられた原溶液と濃縮液の貯液を兼用する兼用タンクと、前記兼用タンクの下方部に設けられた希薄液収納部と、前記原溶液及び/又は前記濃縮液を前記製氷板に流下させる散液手段と、前記製氷板で氷結した希薄氷を適宜脱氷させる脱氷手段とを備えたことを特徴とする多段階凍結濃縮システム。
【請求項7】
前記兼用タンクの側面が、前記製氷板から脱氷された前記希薄氷を前記希薄液収納部に移送させ易いようにした傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の多段階凍結濃縮システム。
【請求項8】
前記製氷板と前記兼用タンクとの間に、前記希薄氷と前記濃縮液とを分離する分離機構が設けられたことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の多段階凍結濃縮システム。
【請求項9】
前記分離機構は分離板とスライド板からなることを特徴とする請求項8に記載の多段階凍結濃縮システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−110416(P2006−110416A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297999(P2004−297999)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(802000019)株式会社新潟ティーエルオー (27)
【Fターム(参考)】