説明

多発性嚢胞腎症の遺伝子分析用の組成物および方法

【課題】 常染色体優性多発性嚢胞腎に関連する遺伝子の変化またはこのような変化の非存在を同定するための遺伝子試験方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、DHPLCを使用したPKD遺伝子変異の検出法に関する。本発明は、以下の態様を含む。PKD固有部位の同定;PKD特異的プライマーのデザイン;PKD特異的産物の増幅;およびDHPLCによるPCR増幅産物の分析。本発明は、さらに、同定した固有の部位およびPKD特異的プライマーなどの組成物ならびに本発明の方法を実施するためのキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常染色体優性多発性嚢胞腎に関連する遺伝子の変化またはこのような変化が存在しないことを同定するための遺伝子試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は、800人の生産児あたり約1人発症する非常に一般的な遺伝性腎疾患である。この疾患は、進行性で、多発性嚢胞腎の両側への拡大によって特徴付けられ、典型的には65歳で末期腎疾患(ESRD)となる。より一般的な合併症には、高血圧、肉眼的血尿、尿管感染症、心臓弁の異常、および前腹壁ヘルニアが含まれる。嚢胞形成は一般的に肝臓でも認められるが、発症は器官の機能障害に関連していない。あまり報告されていないが、さらなる腎外発現には、膵嚢胞症、結合組織異常、および大脳動脈瘤が含まれる。
【0003】
典型的な発症年齢は中年であるが、年齢層は新生児から80歳までである。ADPKDの臨床的兆候は、家族間および家族内で異なり、この障害の遺伝学的に異なる性質によって部分的に説明される。ほとんど全てのADPKDの症例で2つの遺伝子PKD−1およびPKD−2の変異が認められる(例えば、概説については、Arnaout、2001、AnnuRev.Med.,52,93〜123;Koptides and Deltas、2000、Hum.Genet.、107、115〜126を参照のこと)。PKD−1およびPKD−2は、機能が完全に解明されていない内在性膜タンパク質をコードする。ADPKDを担う主要遺伝子PKD−1は完全に特徴付けられており、細胞−細胞および細胞−基質相互作用に関連すると考えられる内在性膜タンパク質ポリシスチン1をコードすることが示されている。PKD−2遺伝子は、非選択性陽イオンチャネル活性を有すると予想される内在性膜タンパク質であるポリシスチン2をコードする。電位活性化カルシウムチャネルのα1サブユニット成分との配列相同性に基づいて、ポリシスチン2は、イオンチャネリングの役割を果たし得ると仮定されている。インビトロ結合アッセイおよび指向性(directed)2ハイブリッド相互作用を使用して、ポリシスチン1およびポリシスチン2のC末端細胞質テールは相互作用することが認められている。PKD−1中のコイルドコイルドメインおよびPKD−2中のR872付近の領域を介して相互作用が生じる。ポリシスチン間の相互作用の生物学的関連性は未だ理解されていないにもかかわらず、PKD−1およびPKD−2はおそらく共通の経路に沿って機能すると示唆されている。
【0004】
ADPKD1型および2型は、腎臓および腎外の全発症範囲を共有するが、2型は1型と比較して発症が遅延するようである。高血圧、血尿、および尿管感染を含むADPKDで認められる共通の表現型合併症は、2型患者で臨床的に軽度なようである。死またはESRD発症年齢の中央値は、PKD−1を有する個体で53歳であり、PKD−2を有する個体で69歳と報告されている。女性は、男性(67歳)より有意に長い生存期間の中央値(71歳)であると報告されている。PKD−1では性別の影響は明確ではない。PKD−1遺伝子の変異は、試験した症例の約85%でADPKDの病因であり、PKD−2では15%である。ADPKD家族の部分集合が小さいのでPKD−1またはPKD−2のいずれかとの遺伝的関連を証明することができないにもかかわらず、ADPKDの第3の遺伝子の可能性が生じ、第3の疾患関連遺伝子座の存在が厳密に調査されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Arnaout、2001、Annu Rev.Med.,52,93〜123
【非特許文献2】Koptides and Deltas、2000、Hum.Genet.、107、115〜126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PKD遺伝子の変化とADPKDの発症との間の強力な関連性が発見されたにもかかわらず、日常的な臨床用のADPKD疾病素質についての遺伝子試験法の開発は、いくつかの技術的障害によって妨げられている。
【0007】
ADPKDについてのDNAベースの試験法の開発における1つの深刻な障害は、PKD転写物に関連する配列(例えば、PKD−1)は、PKD−1遺伝子座に隣接する第16染色体上で少なくとも3回重複されてPKD−1ホモログを形成することである。別の障害は、PKD−1ゲノム区間もまた他のゲノム領域中に存在する繰り返しエレメントを含むことである。さらに、PKD遺伝子の配列は、非常にGCリッチであり、完全な進化について多数のヌクレオチド(15,816bp)を分析する必要がある。
【0008】
発現したPKD遺伝子に固有であり、重複した相同配列中に存在しないこれらの配列のセグメントの同定が必要である。PKD遺伝子の変異分析用の感度が高く且つ特異的な遺伝子試験の開発も必要である。このような試験法の開発により、ADPKDの診断および管理が容易になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、本発明は、標的核酸の変異分析法であって、前記方法は、反応混合物中で前記標的核酸を含むサンプルを少なくとも1つの第1の核酸および少なくとも1つの第2の核酸の存在下でインキュベートするステップであって、前記第1の核酸は配列番号1または2の配列の固有の部位にアニーリングするプライマー配列を含み、前記第2の核酸は前記第1の核酸と逆方向であり、前記インキュベーションにより増幅産物が産生され、前記増幅産物中で二重鎖を作製するステップと、前記二重鎖由来のヘテロ二重鎖の有無を検出するステップとを含み、前記ヘテロ二重鎖の存在は前記標的核酸中の潜在的な変異の存在を示し、前記へテロ二重鎖の非存在は前記標的核酸中の変異の非存在を示す方法を提供する。
【0010】
1つの実施形態では、本方法は、ヘテロ二重鎖領域の配列を決定するステップと、前記ヘテロ二重鎖領域の配列と配列番号1または2とを比較するステップとをさらに含み、前記標的核酸によってコードされるタンパク質の機能変化が予想される配列番号1または2と比較した前記ヘテロ二重鎖領域の配列の相違は前記標的核酸の変異の指標となる。
【0011】
好ましくは、第1または第2の核酸は、配列番号3〜49からなる群から選択される配列を含む。
【0012】
別の実施形態では、本方法は、テンプレートとして前記第1および第2の核酸によって作製された前記増幅産物を使用してネスト化(nested)増幅反応を行う工程と、前記ネスト化増幅由来の増幅産物中で二重鎖を作製する工程とをさらに含む。
【0013】
好ましくは、ネスト化増幅反応を、配列番号3〜49およびその相補配列からなる群から選択される少なくとも1つのプライマーを使用して行う。
【0014】
好ましい実施形態では、二重鎖由来のヘテロ二重鎖の有無をDHPLCによって同定する。
【0015】
好ましい実施形態では、ヘテロ二重鎖領域の配列をDNA配列決定によって決定する。好ましくは、本発明の方法の第2の核酸は配列番号1または2の配列内の固有の部位にアニーリングするプライマー配列を含む。
【0016】
好ましくは、標的テンプレートを含むサンプルは、ゲノムDNA、cDNA、全RNA、mRNA、および細胞サンプルからなる群から選択される。
【0017】
1つの実施形態では、インキュベーション工程は、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応(LCR)、および核酸特異性ベースの増幅からなる群から選択される増幅反応を含む。
【0018】
本発明の方法は、1つまたは複数の制限酵素を使用して増幅産物がPKD特異的産物であるかを確認する工程をさらに含み得る。
【0019】
好ましくは、制限酵素は、PKD特異的産物を切断してPKDホモログ産物と区別可能な消化パターンが得られる。
【0020】
より好ましくは、制限酵素は、PstI、StuI、XmaI、MluI、PvuII、BssHII、FspI、MscI、およびBlnIからなる群から選択される。
【0021】
別の態様では、本発明は、PKD罹患患者を同定するための診断法であって、前記方法は、(a)個体からサンプルを得るステップと、(b)反応混合物中で前記サンプルを少なくとも1つの第1の核酸および少なくとも1つの第2の核酸の存在下でインキュベートするステップであって、前記第1の核酸は配列番号1または2中の固有の部位にアニーリングするプライマー配列を含み、前記第2の核酸は前記第1の核酸と逆方向であり、前記インキュベーションにより増幅産物が産生され、(c)前記増幅産物中で二重鎖を作製するステップと、(d)前記二重鎖由来のヘテロ二重鎖の有無を検出するステップと、(e)前記ヘテロ二重鎖領域の配列を決定するステップとを含み、配列番号1または2と比較した前記ヘテロ二重鎖領域の存在は、前記個体がPKDを罹患していることを示す方法を提供する。
【0022】
好ましくは、ヘテロ二重鎖の検出をDHPLCによって行う。
【0023】
好ましくは、配列をDNA配列決定によって決定する。
【0024】
1つの実施形態では、第2の核酸が配列番号1または2の配列中の固有の部位にアニーリングするプライマー配列を含む。
【0025】
別の実施形態では、第1または第2の核酸が配列番号3〜49からなる群から選択されるプライマー配列を含む。
【0026】
本発明の診断法は、テンプレートとして前記第1および第2の核酸によって作製された前記増幅産物を使用してネスト化増幅反応を行うステップと、前記ネスト化増幅由来の二重鎖を作製するステップとをさらに含み得る。
【0027】
1つの実施形態では、ネスト化増幅反応を、配列番号3〜49およびその相補配列からなる群から選択される少なくとも1つのプライマーを使用して行う。
【0028】
好ましくは、診断法におけるサンプルは、ゲノムDNA、cDNA、全RNA、mRNA、および細胞からなる群から選択される。
【0029】
好ましくは、増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応(LCR)、および核酸特異性ベースの増幅からなる群から選択される増幅反応を含む。
【0030】
診断方法は、特異的に増幅した産物を1つまたは複数の制限酵素を使用して実証するステップをさらに含み得る。
【0031】
好ましくは、制限酵素は、PKD特異的産物を切断してPKDホモログ産物と区別可能な消化パターンが得られる。
【0032】
より好ましくは、制限酵素は、PstI、StuI、XmaI、MluI、PvuII、BssHII、FspI、MscI、およびBlnIからなる群から選択される。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、各プライマーが配列番号3〜49またはその相補物からなる群から選択される単離核酸である、1つまたは複数の核酸プライマーを提供する。
【0034】
本発明はまた、対の少なくとも1つの核酸が配列番号3〜49〜なる群から選択される、核酸対を提供する。
【0035】
好ましくは、核酸対は逆方向であり、配列番号1または2の配列を含むテンプレート核酸のフラグメントを増幅する。
【0036】
別の態様では、本発明は、第1の核酸が配列番号3〜49およびその相補的配列からなる群から選択され、第2の鎖が第1の核酸と逆方向であり、第1および第2の核酸は配列番号1または2の配列を含むテンプレート核酸のフラグメントを増幅する、少なくとも1つの単離した第1の核酸および少なくとも1つの単離した第2の核酸を含む組成物を提供する。
【0037】
1つの実施形態では、本発明の成分は、DNAポリメラーゼ、テンプレート核酸、制限酵素、1つまたは複数のコントロールオリゴヌクレオチドプライマー、ddNTP、PCR反応緩衝液、およびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む。
【0038】
好ましくは、組成物中のテンプレート核酸は、ゲノムDNAまたはcDNAである。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、第1の核酸が配列番号1〜49およびその相補的配列からなる群から選択され、第2の鎖が第1の核酸と逆方向であり、第1および第2の核酸は配列番号1または2の配列を含むテンプレート核酸のフラグメントを増幅する、少なくとも1つの単離した第1の核酸および少なくとも1つの単離した第2の核酸、ならびにその封入材料を含む、PKD患者を同定するためのキットを提供する。
【0040】
1つの実施形態では、本発明のキットは、DNAポリメラーゼ、テンプレート核酸、制限酵素、コントロールオリゴヌクレオチドプライマー、ddNTP、PCR反応緩衝液、およびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む。
【0041】
好ましくは、キット中のテンプレート核酸は、ゲノムDNAまたはcDNA分子である。
【0042】
本発明の目的および特徴は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照してさらに理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の1つの実施形態で使用されるPKD1 cDNA配列(GenBankアクセッション番号L33243)を示す図である。エクソンおよびPCR産物連結点を、ヌクレオチド配列の上に示す。アミノ酸を、各コドンの中央の下に示す。
【図2】1つの実施形態によるPKD遺伝子のエクソン配列と2つのホモログ配列との比較を示す図である。PKDまたはホモログ配列のいずれかのみを切断する制限酵素部位を示す。
【図3】1つの実施形態による4つの正常なサンプルおよびヌクレオチド11606での19bp挿入(重複)(コドン3799)のPKD1エクソン40DHPLCパターンを示すグラフである。
【図4】1つの実施形態による正常なコントロールおよびヌクレオチド11606での19bp挿入(重複)配列(コドン3799)のPKD1エクソン40配列を示すグラフである。
【図5】1つの実施形態によるイントロン5推定多型(IVS5−9−>A)およびヌクレオチド1502でのフレームシフト(インサートG)のPKD1エクソン6DHPLCパターンを示すグラフである。
【図6】1つの実施形態によるイントロン5推定多型(IVS5−9−>A)のPKD1エクソン6配列を示すグラフである。
【図7】1つの実施形態によるヌクレオチド7518でのフレームシフト、コドン2436(インサートC)および共通の多型C7652TのPKD1エクソン18DHPLCパターンを示すグラフである。
【図8】1つの実施形態による正常なコントロールおよびヌクレオチド7518でフレームシフトを有する配列(コドン2436(インサートC))のPKD1エクソン18配列を示すグラフである。
【図9】1つの実施形態によるソフトウェア推定融解プロフィールおよびエクソン末端付近での部分的融解を確立するために必要な多数の温度の例を示すグラフである。
【図10A】本発明の1つの実施形態において同定された患者のDNA変異表現型を示すチャートである。
【図10B】本発明の1つの実施形態において同定された患者のDNA変異表現型を示す表である。
【図11】本発明のいくつかの実施形態において使用したDHPLC(WAVE)をまとめた表である。
【図12】本発明のいくつかの実施形態において使用したPCR条件をまとめた表である。
【図13】本発明の1つの実施形態における患者の検体処理工程を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、PKD遺伝子内の固有の部位の同定、PKD特異的プライマーのデザイン、およびこれらのPKD特異的プライマーの使用によって増幅されたPCR産物のDHPLC分析に基づく。
【0045】
I.定義本明細書中で使用される、「ADPKD」は、常染色体優性多発性嚢胞腎をいう。ADPKDは、非常に一般的な遺伝性腎疾患であり、腎嚢胞、最終的には腎不全の発症で特徴付けられ、あるいは、またはそれに加えて肝臓および腎臓を含む他の器官中の嚢胞ならびに胃腸、心血管、および骨格筋の異常を含み得る。
【0046】
用語「PKD遺伝子」は、染色体部位16p13.3(すなわち、PKD−1)または染色体部位4q21−23(すなわち、PKD−2)にマッピングされるゲノムDNA配列をいい、PKDタンパク質をコードする伝令RNA分子が得られる。PKD−1およびPKD−2遺伝子は、イントロンおよび推定調節配列を含む配列番号1および配列番号2の配列をそれぞれ含む。多数の他の遺伝子と同様に、PKD−1およびPKD−2遺伝子配列は、個体間で比較した場合、配列のばらつきを示す。サイレントである(すなわち、遺伝子産物の遺伝子発現または機能に関して)多型を有するこれらの遺伝子は、本明細書中では「正常」と定義する。
【0047】
「正常な」PKD遺伝子(例えば、PKD−1またはPKD−2)は、本明細書中ではPKD遺伝子(配列番号1または2に記載のものなど)と定義し、サイレント多型を有する任意の遺伝子が含まれる。
【0048】
「変異」PKD遺伝子は、本明細書中では、その配列が1つまたは複数の置換(トランジション、トランスバージョン)、欠失(遺伝子座の欠損を含む)、挿入(重複を含む)、転座、および/または正常なPKD遺伝子と比較した他の改変を含む変異で改変されているPKD遺伝子(例えば、PKD−1またはPKD−2)と定義する。変異により、PKD遺伝子産物の発現または機能が検出可能に変化し、ADPKDの原因である。変異は、1つから数千個ものヌクレオチドを含み、それにより、1つまたは複数の種々のPKD発現の変化(例えば、発現速度の減少または増加)または欠損RNA転写物またはタンパク質産物の発現が得られる。変異体PKD遺伝子には、ヒト個体のゲノム中の1つまたは複数のコピーの存在がADPKDに関連する遺伝子が含まれる。
【0049】
用語「塩基対ミスマッチ」は、配列番号1または2の配列に相補的ではない任意の核酸配列をいう。したがって、本発明の塩基対ミスマッチは、正常なPKD遺伝子の変化もしくは多型または変異PKD遺伝子中に存在する任意の改変によって生じ得る。「塩基対ミスマッチ」は、1つのヌクレオチド塩基対ミスマッチまたは2つまたはそれ以上のヌクレオチド(すなわち、3、4、5、10、20、100、もしくは500以上、または1000ヌクレオチドまで)の核酸配列を含み得る。本明細書中で定義のミスマッチの有無は、標的核酸中の潜在的変異の有無を示す。
【0050】
本明細書中で使用される、用語「真の」は、配列番号1または2のゲノム配列およびこれら由来の配列を示し、これらの真の配列は「PKDホモログ」を区別するために使用する(以下を参照のこと)。
【0051】
「PKD−1ホモログ」は、PKD−1と密接に関連しているが、発現したPKD−1遺伝子産物をコードしない配列である。染色体部位16p13.1または4q21−23にマッピングされるこのホモログのいくつかの例を同定および配列決定した。PKD−1ホモログは、真のPKD遺伝子と95%を超えて同一の配列を共有し得る。
【0052】
本明細書中で使用される、用語「特異的に増幅された産物」は、真のPKD遺伝子(例えば、配列番号1または2)内のフラグメントから増幅されるがPKDホモログから増幅されない産物である。「非特異的に増幅された産物」は、増幅反応において完全に相補的ではないテンプレート配列への核酸プライマーのアニーリングによるPKDホモログまたは他の配列から増幅された産物である。
【0053】
本明細書中で使用される、「固有の部位」は、PKDホモログ配列または他の配列中のストレッチと異なる少なくとも1つのヌクレオチドを含むPKD遺伝子中の10〜50塩基対長のストレッチをいう。固有部位の1つの例は、5’AGGTCCAGGGCGACTCGCTGG3’または5’CAGGGCCACACGCGCTGGGCG3’またはその相補的配列を含む。
【0054】
本明細書中で使用される、「PKD特異的プライマー」は、特異的なストリンジェンシー条件下でPKD遺伝子(イントロンおよびエクソンを含む)中の配列にアニーリングする核酸配列をいう。本発明のPKD特異的プライマーは、特異的なストリージェンシー条件下で真の発現PKD−1遺伝子またはPKD−2遺伝子中に存在する固有の部位にアニーリングするが、PKDホモログまたは他の配列にはアニーリングしない。PKD特異的プライマーは、PKD遺伝子内の固有の部位と95%を超える(例えば、96%、96%、97%、98%、99%を超えるか100%)配列が同一である。「PKD特異的プライマー」は、10〜60ヌクレオチド長(例えば、18〜52ヌクレオチド長)であり得る。
【0055】
本明細書中で使用される、用語「特異的ストリンジェンシー条件」は、PKD特異的プライマーがPKD遺伝子内の配列に特異的にアニーリングする増幅条件をいう。「特異的ストリンジェンシー条件」下では、PKD特異的プライマーは、PKDホモログまたは他の配列にアニーリングしない。例えば、本発明に有用な1つの特異的ストリンジェンシー条件は、TaqPrecision緩衝液(TaqPlus Precision緩衝液、Stratagene、LaJolla、カタログ番号600210)、50nMを超えるdNTP濃度(例えば、100nM、200nM、または300nM)を含む。特異的ストリンジェンシー条件におけるアニーリング温度は、最も低いプライマーアニーリング温度(Tm)である5℃を超えても5℃未満でも5℃でもよい(例えば、Tmよりも1℃、2℃、4℃、5℃、または10℃高いかTmよりも4℃、3℃、2℃、または1℃低い)。
【0056】
本明細書中で使用される、DNAの「増幅」は、DNA配列内の特定のDNA配列濃度を増加させるために使用される反応をいう。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸特異性ベースの増幅(NSBA)、または当該分野で公知の任意の他の方法を使用して増幅を行うことができる。
【0057】
本明細書中で使用される、「RT−PCR」は、逆転写とポリメラーゼ連鎖反応との組み合わせをいう。この増幅法は、特異的オリゴヌクレオチド、オリゴdTまたはランダムプライマーの混合物を使用してRNAの一本鎖cDNAへの逆転写を惹起する最初のステップを使用し、このcDNAを標準的な増幅技術(例えば、PCR)を使用して増幅する。
【0058】
「テンプレート核酸」または「標的核酸」(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)は、特定の配列(例えば、PKD−1またはPKD−2遺伝子配列)であるかこれを含む正常(例えば、野生型)または変異核酸である。日常的な組換えDNA操作の一部としてさらなるヌクレオチドを開示の配列の5’および/または3’末端に添加することができることが理解される。さらに、保存的DNA置換(すなわち、コードされるアミノ酸配列を変化させないタンパク質コード領域の配列変化)もまた適合し得る。
【0059】
本明細書中で使用される、「核酸プライマー」は、核酸テンプレートをアニーリングして核酸テンプレートと相補的な伸長産物を産生するための3’末端を得ることができるDNAまたはRNAをいう。核酸テンプレートは、標的核酸テンプレートに相補的なプライマー伸長産物を産生するように触媒する。開始および伸長条件には、4つの異なるデオキシリボヌクレオシドおよび重合誘導剤(DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素など)、適切な緩衝液(「緩衝液」には、pH、イオン強度などに影響を与える補因子が含まれる)、および適切な温度が含まれる。本発明のプライマーは、一本鎖であても二本鎖であっても良い。プライマーは、最大の増幅効率のためには一本鎖出あり、プライマーおよびその相補物は二本鎖核酸を形成する。しかしそれは二本鎖であり得る。本発明で有用な「プライマー」は、100ヌクレオチド長以下である(例えば、90、80、70、60、50、40、30、20、もしくは15ヌクレオチド長以下、または10ヌクレオチド長)。
【0060】
本明細書中で使用される、用語「逆方向」は、プライマーをいう場合、一方のプライマーが標的核酸テンプレートのセンス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含み、他方のプライマーが同一の標的核酸テンプレートのアンチセンス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むことを意味する。逆方向プライマーは、相補的な適合核酸テンプレートからPCR増幅産物を作製することができる。方向の異なる2つのプライマーを、逆方向プライマーおよび正方向プライマーということができる。
【0061】
本明細書中で使用される、用語「同一の方向」は、プライマーが標的核酸テンプレートの同一の鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むことを意味する。同一方向のプライマーでは相補的な適合核酸テンプレートからPCR増幅産物を作製されない。
【0062】
あるいは、本発明のプライマーを、検出可能な標識(放射性部分または蛍光標識など)で標識することができるか、増幅反応により標識ヌクレオチドを反応産物に組み込むことができる。したがって、増幅反応産物を、蛍光または放射性標識での「検出」によって「検出」することができる。
【0063】
本明細書中で使用される、用語「核酸」は、一般に、非改変RNAもしくはDNAまたは改変RNAもしくはDNAであり得るポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドをいう。「核酸」には、一本鎖および二本鎖核酸が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される用語「核酸」には、1つまたは複数の改変塩基を含む上記のDNAまたはRNAも含まれる。したがって、安定性または他の理由のために改変された骨格を有するDNAまたはRNAは、「核酸」である。本明細書中で使用される、用語「核酸」には、核酸のこのような化学的、酵素的、または代謝的改変形態ならびにウイルスおよび細胞(例えば、単純および複雑な細胞を含む)に特徴的な化学的DNAおよびRNA形態が含まれる。
【0064】
本明細書中で使用される、「単離」または「精製」は、核酸に関して使用する場合、正常な細胞(例えば、染色体)環境から天然に存在する配列が除去されているか、非天然の条件下(例えば、人為的に合成する)で合成されることを意味する。したがって、「単離」または「精製」配列は、無細胞溶液中に存在するか異なる細胞環境下で存在し得る。用語「精製」は、ヌクレオチドのみが存在する配列であることを意図せず、この配列に天然に関連する非ヌクレオチドまたは核酸物質を本質的に含まず(約90〜95%、99〜100%まで)、単離染色体と区別されることを意図する。
【0065】
本明細書中で使用される、「ゲノムDNA」は、RNA転写物からコピーされた相補的DNAに対するものとしての染色体DNAをいう。本明細書中で使用される、「ゲノムDNA」は、1つの細胞中に存在する全てのDNAであっても1つの細胞中のDNAの一部であってもよい。
【0066】
本明細書中で使用される、「相補的」は、核酸(またはその一部)の一本鎖の逆平行核酸一本鎖のヌクレオチド(すなわち、任意の非対合ヌクレオチドによって妨害されない)間の連続する塩基対合によって逆方向核酸鎖(またはその一部)にハイブリッド結合して相補鎖間に二本鎖核酸を形成する能力をいう。第1の各核酸が第2の核酸の相補的領域内のヌクレオチドと塩基対合を形成する場合、第1の核酸は第2の核酸に「相補的」であるという。第1の核酸の一方のヌクレオチドが第2の核酸中の対応するヌクレオチドと塩基対を形成しない場合、第1の核酸は第2の核酸に完全に相補的ではない。
【0067】
本明細書中で使用される、「サンプル」は、天然の環境から単離され、標的核酸を含み、精製もしくは単離核酸からなり得る生体物質をいうか、標的核酸を含む組織サンプル、生体流動物サンプル、または細胞サンプルなどの生体サンプルを含み得る。
【0068】
本明細書中で使用される、「二本鎖DNA」は、「二重鎖」ともいう。一方の鎖の塩基配列が他方の鎖の塩基配列に完全相補的である場合、二重鎖を「ホモ二重鎖」と呼ぶ。二重鎖が相補的ではない少なくとも1つの塩基対を含む場合、二重鎖を「ヘテロ二重鎖」と呼ぶ。本発明では、個体から採取したサンプル由来の増幅産物を変性および再アニーリングした場合、ヘテロ二重鎖の形成は、この個体中の潜在的な変異PKD遺伝子の存在を示す。
【0069】
本明細書中で使用される、「DHPLC」は、同一のbp長を有するヘテロ二重鎖(変異の存在に起因する)およびホモ二重鎖の分離によって配列変異を検出するために使用される「変性高速液体クロマトグラフィー」と呼ばれる分離プロセスをいう。この分離は、ヘテロ二重鎖がホモ二重鎖よりも低い融解温度(Tm)を有するという事実に基づく。DHPLCは、一定の条件下で1つの塩基対しか異ならないヘテロ二重鎖を分離することができる。DHPLCを使用して、異なるbp長の二重鎖を分離することもできる。
【0070】
「ヘテロ二重鎖部位分離温度」、「温度中心点」、または「Tm」を、本明細書中では、1つまたは複数の塩基対がヘテロ二重鎖DNAフラグメント中の塩基対ミスマッチ部位で変性される(すなわち、分離する)温度を意味すると定義する。
【0071】
II.PKD遺伝子の一般的説明PKD−1遺伝子(例えば、genBankアクセッション番号L398891、配列番号1)は、第16染色体(16p13.3)上に存在する約54kbのゲノムDNAであり、14kbmRNAが転写される46個のエクソンで分割された12,906bpのコード配列を含む(Mochizukiら、1996、Science、272、1339〜1342;Hughesら、1995、NatureGenet.、10、151〜160)。PKD−1のタンパク質産物ポリシスチン1は、推定分子量が460kDaの4303個のアミノ酸からなるタンパク質である。最近まで、第16染色体(16p13.1)に沿ってPKD−1に隣接してマッピングされる少なくとも3つの相同性の高い遺伝子コピーの存在により、PKD−1遺伝子の分析に影響を受けなかった。約75%のPKD−1遺伝子が重複しており、その相同性コピーと約97%同一である。整復領域は、第1の33エクソンを含む遺伝子の50kb(5’)部分を含む。エクソン34〜46を含む遺伝子のほとんどの3’(5.7kb)のみが、PKD−1に固有である。PKD−1遺伝子の別の顕著な特徴は、2.5kb長(ヒトゲノム中で最長)であるイントロン21中のポリピリミジン領域である。PKD−2遺伝子(例えば、genbankアクセッション番号AF004859−004873、配列番号2)は68kbのゲノムDNAであり、第4染色体(4q21−23)上に存在する(Mochizukiら、1996、前出)。PKD−2は15個のエクソンを含み、約110kDaの968アミノ酸タンパク質産物が作製される5.4kbの転写物をコードする。PKD−2が1コピーの遺伝子であるので、PKD−2の変異分析は、PKD−1の変異分析よりも非常に容易である。PKD遺伝子およびそのタンパク質産物をまとめた表1を参照のこと。
【0072】
【表1】

【0073】
正常な対立遺伝子上の体細胞変異の発生を支持する証拠に基づいて、多数の家族性癌素因症候群の病因に類似のツーヒットモデルにより、疾患の臨床的な病巣発現が説明されている(Qianら、1996、Cell、87、979〜987;Watnickら、1998、Mol.Cell.、2、247〜251)。簡単に述べれば、このモデルにより、ADPKDは細胞レベルで劣性であり、第2の体細胞性変異またはヘテロ接合PKD欠損バックグラウンドにおける「ヒット」により罹患尿細管上皮細胞におけるPKD機能がホモ接合的に喪失することが示唆される。PKD機能喪失は、固有細胞分裂に必要なシグナル伝達機構を崩壊する(すなわち、嚢胞構造での罹患細胞の異常増殖を誘導する)と仮定される。
【0074】
PKD−1遺伝子の直接配列決定により、正常な個体における多型の存在およびADPKD罹患個体における多数の異なる配列変化が明らかとなった。表2は、現在までの文献中に記載のPKD−1配列変化の概要を示す。
【0075】
【表2】











【0076】
III.PKD遺伝子中の固有部位の同定70%のPKD−1遺伝子がPKD−1と95%を超える配列が同一の非機能的ホモログとして複製されるという事実により、PKD−1固有部位の同定は、遺伝子試験法の開発に重要である。ヒトゲノム配列解読の成功により、PKD遺伝子中の固有の部位を、PKD遺伝子を含むゲノムDNA配列とPKDホモログを含むゲノムDNA配列との比較によって同定することができる。有用なデータベースおよびコンピュータプログラムは当該分野で公知である(例えば、www.ncbi.nlm.nih.govのNCBIで利用可能なデータベースおよびhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTおよびDNAStar、www.dnastar.comで利用可能なコンピュータプログラム)。固有部位は、PKDホモログまたは他の配列と80%以下(例えば、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%以下)同一であるPKD遺伝子中の配列をいう。
【0077】
いくつかの固有部位(例えば、1コピー部位)は、Rossettiら、2000、A.J.Hum.Genet.、68、46〜63(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。本出願の出願人は、PKD−1の新規の固有部位(5’AGGTCCAGGGCGACTCGCTGG3’または5’CAGGGCCACACGCGCTGGGCG3’またはその相補的配列)を同定している。他の固有部位は、例えば、米国特許第6,228,591号および同第6,031,088号(それぞれ、参照することによりその全体を本明細書中に組み込むものとする)に見出すことができる。
【0078】
同定された固有部位を、真のPKD遺伝子増幅用のPKD特異的プライマーのデザインに使用することができる。固有部位の長さは、数個のヌクレオチドから数千個のヌクレオチドまで変化することができる。同定されたほとんどの固有部位は、100個以下のヌクレオチド(例えば、50個以下のヌクレオチドまたは30個以下のヌクレオチド)を含む。PKD特異的プライマーを使用した増幅により、増幅反応の特異性が増加し、PKDホモログから増幅される副産物が減少する。個体中の対立遺伝子変異(例えば、変異PKD遺伝子)を同定するための配列決定または他の分析用のクローニングおよび/もしくは発現に特異的に増幅させた真のPKD遺伝子産物を使用することができる。
【0079】
IV.本発明に有用なPKD特異的プライマー変異の有無を分析するためのサンプルは、検出できないほど少量の物質を含む場合がある。したがって、第1の変異検出アッセイステップは、サンプル増幅である。本発明の好ましい増幅反応はPCRである。PCR増幅は、プライマーデザイン、DNAポリメラーゼ酵素の選択、増幅サイクル数、および試薬濃度などのステップを含む。これらの各工程およびPCRプロセスに関連する他のステップは、増幅産物の純度に影響を与える。複製の忠実度および産物の純度に影響を与えるPCRプロセスおよび因子がPCR分野で周知であるにもかかわらず、以前は本発明の分離法(例えば、DHPLC)を使用したPKD遺伝子の変異検出に関するこれらの因子について取り組んでいなかった。
【0080】
特異的ストリンジェンシー条件下で真のPKD遺伝子にアニーリングするがPKDホモログまたは他の配列にアニーリングしない任意のプライマーは、本発明の有用なPKD特異的プライマーである。同定した固有部位配列を、本発明に有用なPKD特異的プライマーのデザインの基本として使用する。本発明のプライマーを、PKD患者同定用の従来のキットに組み込むことができる。
【0081】
A.プライマーの選択基準PKD種特異的プライマーは、PKD遺伝子の固有の部位中に存在する配列に相補的な配列を含むことが好ましい。PKD特異的プライマーは、PKDホモログ以外の真のPKD遺伝子にアニーリングすることが好ましい限り、正常または変異PKD遺伝子の固有の部位に相補的であり得る。
【0082】
PKD種特異的プライマーを、PKD遺伝子について同定した固有部位配列の分析によって手動で選択することができる。PCRで増幅されるDNAフラグメント配列が公知である場合、市販のソフトウェアを使用して全フラグメントまたはフラグメント内の任意の配列を産生するプライマーを作成することができる。フラグメントの融解マップを、MacMelt(登録商標)(BioRadLaboratories、Hercules、Calif.)、MELT(Lermanら、Meth.Enzymol.、155、482、1987)、またはWinMelt(商標)(BioRadLaboratories)などのソフトウェアを使用して構築することができる。
【0083】
約18〜25塩基長で50%のG−C含量のプライマーは約52〜58℃のアニーリング温度で良好に作用することが当該分野で公知である。本発明のプライマーをデザインする場合、これらの性質は好ましい。より長いプライマーまたはGC含量がより高いプライマーは、より高い温度でのアニーリングが最適であり、同様に、より短いプライマーまたはGC含有量の低いプライマーはより低い温度でのアニーリングが最適である。プライマー17〜25塩基長の融解温度の概算を得るための便利且つ単純化した式は以下である。
融解温度(Tm(℃))=4×(G数+C数)+2×(A数+T数)。
【0084】
全デザインプロセスは、広範囲(すなわち、第1ラウンドのPCR)および狭い範囲のプライマー(すなわち、ネスト化PCR)デザインからなる。広範囲のプライマーデザインでは、質の良いPCR産物を産生するプライマーをデザインすることが目的である。「良質」のPCR産物は、本明細書中では、PCR産物が高収率で産生されることおよびプライマー二量体およびPCR誘導変異などの不純物の量が少ないことを意味すると定義する。良質のPCRは、他の反応パラメーター(使用酵素、PCRサイクル数、使用緩衝液の濃度および型、サーマルサイクリングの温度、ならびにゲノムテンプレートの質など)にも影響され得る。良質のPCR産物の作製法は、Eckertら(「PCR:実践アプローチ」、McPherson,Quirke,andTaylor編、IRL Press、Oxford、第1巻、225〜244、1991)で考察されている。この引例およびこの引例中の引例は、参照することによってその全体を本明細書中に組み込むものとする。
【0085】
狭い範囲のプライマーのデザインは、2つの要件を満たすべきである。第1に、全ての広範囲プライマーデザイン要件を満たし、良質のPCR産物が得られるべきである。さらに、DHPLC法により増幅フラグメント内の変異または多型の位置に関係なく変異または多型を検出可能なフラグメントが産生されなければならない。例えば、数千塩基対までを有する巨大DNAフラグメントをPCRによって増幅することができる。増幅の目的が所望フラグメントを増幅することのみである場合、この目的で使用することができるプライマーデザインの許容度は大きい。しかし、PCR増幅の目的がDHPLCによる変異検出分析用のDNAフラグメントを作製することである場合、PCR法で作製したフラグメントが検出可能であり且つDHPLで分析した場合にシグナルを発生するようにプライマーをデザインしなければならない。本発明の好ましい実施形態では、増幅産物の長さは、150〜600bpである。より好ましい実施形態では、DHPLC変異検出分析用のフラグメント長は、150〜400bpである。
【0086】
狭い範囲のプライマーのデザインには2つの目的が存在する。プライマーデザインの1つの目的は、「変異分析」試験として使用する場合である。別の目的は、研究または診断目的(PKD患者の同定)のための分析である。本明細書中では、「変異分析」を、フラグメントが集団中にばらつき(すなわち、変異または多型)を含むかどうかを同定し、このばらつきを疾患に関連付けるためのDNAフラグメントの研究または分析と定義する。本発明の文脈内で、用語「変異」には、疾患についてサイレントである多型は含まれない(例えば、正常)と理解される。DHPLCを変異分析技術として使用する場合、本発明の重要な態様は、変異部位がフラグメント内に存在することに関係なく推定変異を検出することができるフラグメントを産生するためのプライマーのデザイン法である。それに対して、変異が公知である場合、分析が至適化される(すなわち、DHPLCにおけるホモ二重鎖およびヘテロ二重鎖ピークが最大になる)ようにプライマーデザインをさらに改良することができる。公知の変異の分析分離度の改良によって、分析を正確にすることができる。変異診断への適用のために分離度の改良が必要である。さらに、改良された分離度を使用して、変異の正の存在の自動同定を、正常および変異DNAサンプルのピークの重ね合わせおよび比較測定する適切なソフトウェアおよびアルゴリズムによってより容易に行うことができる。
【0087】
変異分析に適用するための別のプライマーデザイン法は、目的の領域がフラグメント内のより低い融解ドメインで存在するようにプライマーをデザインすることである。この場合、エクソンに向かって移動するように分析を行うので、測定されるフラグメントが目的の領域に重ね合わせるようにプライマーを設計することが好ましい。これらの場合、高温融解ドメインと低温融解ドメインとの間の温度差は、5℃を超えることが好ましく、10℃を超えることが最も好ましい。
【0088】
一旦目的の変異が同定されると、診断または臨床用のプライマーを再デザインすることができる。これらの場合、末端により近いいずれかの末端の25%または25塩基内に変異が存在することが好ましい。フラグメントの他方の末端は、変異が存在する低温ドメインよりも好ましくは5℃、より好ましくは10℃、最も好ましくは15℃高い高温融解ドメインを含む。プライマー選択によりフラグメントの反対側の末端に高温融解ドメインが得られない場合、所望の末端(例えば、A−Tリッチな末端)で融解温度を増加させるためにG−Cクランプを適用することができる(Myersら、1985、NucleicAcids Res.、13、3111)。G−Cクランピングは、プライマーの片側または両側の5’末端上にさらなるG−C塩基を含む技術である。ポリメラーゼ酵素は、増幅フラグメントに組み込むこれらのさらなる塩基を超えて伸長させて、変異周辺の融解温度と比較してフラグメントの末端の融解温度を上昇させる。例えば、変異が増幅フラグメントの中央に存在し、長さが100bp未満であり、融解プロフィールの変化がない場合または変異がフラグメントの高温融解領域に存在し、高温融解領域がG−Cリッチな領域に存在する場合、G−Cクランプが必要であり得る。これらの場合、適切なプライマー選択により、変異を検出することができるフラグメントが得られる。G−Cクランプのサイズは、40bpまでであっても、4または5bpほど小さくても良い。DHPLCによる変異検出用の最も好ましいG−Cクランプは、10〜20bpである。
【0089】
PCR増幅の際に十分にTm内のフラグメント中で一定の融点範囲またはドメインを有するドメインを産生するプライマーをデザイン不可能である場合、DHPLCでの首尾の良い変異検出のために目的のドメインのTmを下げる必要があり得る。例えば、dGTPのG−C塩基対の融解温度を有効に低下させることが公知のアナログ7−デアザ−2’−dGTPとの置換によってこれを行うことができる(Dierickら、1993、Nucl.AcidsRes.、21、4427)。ドメインのTmを上昇させる必要がある場合、PCR増幅においてdGTPの代わりに2,6−アミノプリンを使用することができる。
【0090】
最も好ましい実施形態では、フラグメントの「低温融解」ドメイン中に変異が存在するようにプライマーを選択する。しかし、高温融解ドメインがフラグメント中の他のドメインと非常に異なる融点ではない場合またはフラグメントの高温融解ドメインを至適化するより高いカラム温度を使用する場合、フラグメントの高温融解ドメイン中の変異をDHPLCで検出することもできる。
【0091】
上記の広範囲プライマーデザインを、いくつかの他の因子が考慮された局所プライマーデザインによってさらに改良することができる。例えば、非テンプレートテールを有するプライマー(普遍配列決定プライマーまたはT7プロモーターなど)を回避する必要があり得る。好ましいプライマーのTmは約56℃である。正方向プライマーと逆方向プライマーとのTm差は、好ましくは約1℃である。プライマーとテンプレートとの間のTm差は、好ましくは25℃である。各プライマーの3’五量体は、好ましくはΔG°=6kcal/molよりも安定している(すなわち、よりネガティブ)。任意の可能なプライマー二量体は、好ましくは3’五量体よりも少なくとも5kcal/mol安定ではない(すなわち、5kcalよりポジティブ)。任意のプライマーの自己アニーリングループのTmは、12℃未満であることが好ましい。プライマーは、好ましくは不都合な配列を含まずに純度が高い。分解を回避するために、純水を使用したTris−HCl(pH8.0)緩衝液中で保存することが好ましい。
【0092】
いくつかの実施形態では、変異のためには5kbまで(例えば、4kbまで、3kbまで、2kbまで、または1kbまで)の長いフラグメント(例えば、エクソン)を直接分離することがより都合がよい。このような長いフラグメントは、一般に、複数の融解温度のドメインを含む。二本鎖DNAフラグメントは、温度上昇に反応して変性する温度安定性の異なる、異なる領域として一連の不連続な工程で溶解した。これらの温度安定性の異なる領域を「ドメイン」といい、各ドメインは、約50〜300bp長である。各ドメインは、各自それぞれのTmを有し、その各Tmに関連する熱力学的挙動を示す。ドメイン内の塩基ミスマッチの存在により、ドメインが不安定化し、ホモ二重鎖中で見出される完全な水素結合区画と比較してヘテロ二重鎖中のドメインのTmは減少する。一般に、塩基ミスマッチの存在により、Tmが約1〜2℃低下する。
【0093】
好ましい実施形態によれば、18〜51個の塩基長のプライマーおよび配列番号3〜49のプライマーに対するDNA配列を使用して、最適な結果が得られた(表3および表4)。しかし、当業者は、使用するプライマーの長さを変化させることができることを認識している。例えば、少なくとも15個、好ましくは17個の塩基(これらのプライマー(配列番号3〜49)のヌクレオチド配列の連続的塩基)を含むより短いプライマーが適切であり得ることが想定される。プライマー長の正確な上限は重要ではない。しかし、典型的には、プライマーは、約60塩基以下、好ましくは50塩基以下である。さらに、プライマー中に含まれる塩基を、当該分野では通常の改変(ビオチンまたは蛍光標識などの検出可能な標識の組み込みが含まれるが、これに限定されない)を行うことができる。
【0094】
【表3】






【0095】
【表4】


【0096】
B.PKD特異的増幅に有用なプライマーの組み合わせ。
特異的増幅産物を、1つまたは複数のPKD特異的プライマーの使用によって作製することができる。好ましくは、1つの増幅産物の作成に使用した両プライマーは、PKD特異的プライマーである。しかし、1つのPKD特異的プライマーを、PKD遺伝子の固有部位に相補的ではない別の非PKD特異的プライマーと組み合わせて使用することができる。非PKD特異的プライマーを、PKD特異的プライマーについての上記の同一の基準にしたがってデザインすることが好ましく、PKD遺伝子中の固有の配列以外の配列に完全に相補的であることが好ましい。非PKD特異的プライマーを、コントロール産物を作製するための増幅反応に含まれるコントロールプライマーとして使用することもできる。
【0097】
表4および表5に列挙した1つの正方向および1つの逆方向プライマーの使用によって最適な結果を得ることができるが、他の組み合わせを使用することもできる。好ましい実施形態では、増幅産物の長さが150〜600bpであるように、プライマー対を選択する。好ましい実施形態では、DHPLC変異検出分析用の増幅フラグメント長が150〜400bpであるようにプライマー対を選択する。
【0098】
C.プライマー合成プライマー合成法は、当該分野で利用可能である。本発明のオリゴヌクレオチドプライマーを、任意の従来のDNA合成法(Narangら(1979、Meth.Enzymolo.、68、90)またはItakura(米国特許第4,356,270号)に記載のリン酸トリエステル法、Brownら(1979、Meth.Enzymol.、68、109)に記載のリン酸ジエステル法、またはMullisら(米国特許第4,683,202号)に記載のその自動化実施形態など)を使用して調製することができる。特に、Sambrookら、1989、「分子クローニング:実験マニュアル」、第2版、ColdSpring HarborLaboratory、Plainview、N.Y.(本明細書中で参考として援用される)もまた参照のこと。
【0099】
V.増幅反応用のテンプレートの調製配列番号1または2またはその変異体(例えば、多型形態または変異形態)の全部または一部を含む核酸を含む任意のサンプルを、本発明の増幅反応のテンプレートとして使用することができる。本発明の有用なテンプレートには、ゲノムDNA調製物、全RNA調製物、粗細胞溶解物、および組織サンプルが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明のPKD特異的増幅用のテンプレートとしてゲノムDNAを使用することが好ましい。粗細胞溶解物または組織サンプルを使用することができると想定されるが、当業者は、サンプル中に存在する任意の非DNA物質がポリメラーゼ反応またはその後の分析を妨害し得ると認識する。
【0101】
組織サンプルまたは細胞からゲノムDNAを単離することができる。好ましくは、本発明でテンプレートとして使用されるゲノムDNAを、分解および汚染を回避する条件下で単離する。DNアーゼ活性がほとんどないか全くなくなるように組織サンプルまたは細胞をプロテアーゼで消化することができる。消化物をDNA溶媒で抽出する。抽出ゲノムDNAを、例えば透析またはクロマトグラフィーによって精製することができる。適切なゲノムDNA単離技術は、例えば、「現代の分子生物学プロトコール」、Ausugel編、JohnWeley& Sons,Inc.,1997に記載のように当該分野で公知である。
【0102】
好ましくは、ゲノムDNAまたはcDNAを個体から採取した組織サンプルの細胞溶解物から抽出し、PKD増幅のテンプレートとして使用する。組織サンプルの回収はまた、個体組織由来の培養ヒト細胞のインビトロ採取または、例えば採血、脊椎穿刺、組織塗抹標本、または組織生検による被験体からの直接インビボサンプリング手段を含む。任意選択的に、組織サンプルを、分析前に、分析可能な条件下でサンプルの核酸を保管する周知の保存手段(急速凍結、凍結制御レジメ(controlledfreezing regime)、凍結防止剤(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、プロパンジオール−スクロース)の存在下など)によって保存する。組織サンプルを、分析のための増幅の保存の前後にプールすることもできる。いくつかの実施形態では、サンプルは、2人またはそれ以上の個体由来のDNA、組織、または細胞を含む。
【0103】
本発明の方法の実施のために、核酸を含む任意のヒト組織をサンプリングおよび採取することができる。採取に最も好ましく且つ都合の良い組織は血液である。患者は、採血前に準備する必要はない。投薬がサンプル採取または試験を妨害することは知られていない。有用な無菌技術および汚染の回避が必要である。
【0104】
好ましくは、採血日に血液からDNAを抽出する。使用前に血液を室温(72°Fまたは25℃)で保存することが好ましい。しかし、全血を短期間4℃で保存することができるが、室温が推奨される。全血試料は、48時間安定であり得る。その後の溶血はDNA回収および完全性に支障をきたす。PCRアッセイ用のDNA抽出に至適な血液量は、5mlを超える(例えば、10.0mlを超える)ことが好ましい。
【0105】
VI.PKD特異的プライマーを使用したPCR増幅本発明は、本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応での標的核酸を含むサンプル由来のDNAの増幅および特異的増幅産物における標的核酸中の変異の有無の検出による、配列番号1または2またはその変異体を含む標的核酸の変異分析法を提供する。
【0106】
当該分野で周知の手段(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写ベースの増幅(逆転写)、鎖置換増幅)によって増幅を行うことができる(「現代の分子生物学プロトコール」を参照のこと)。好ましくは、Mullis(米国特許第4,683,202号)(その内容が本明細書中で参考として援用される)に記載のようなPCRによって増幅を行う。
【0107】
PCRにより、「プライマー」と呼ばれる小さなDNA鎖を「テンプレート」に沿って伸長させるためにDNAポリメラーゼと呼ばれる選択性の高い酵素の利用によって、小さなDNAサンプルまたは任意の塩基対の長さ(サイズ)の他の核酸の増幅(複製)が可能である。小さなDNAサンプルを、テンプレートとして使用する。PCRは、テンプレートまたはその任意の選択部分中に存在するデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の相補配列を再生する。PCRは、一般に、例えば、検出限界未満の濃度のDNAサンプルをPCR法によって増幅し、その後このようにして得られた大量のサンプルを分析する診断技術と組み合わせて使用する。
【0108】
PCR増幅装置(例えば、Air Thermo Cycler(IdahoTechnologies))および試薬は、多数の業者から市販されている(例えば、Perkin−Elmerカタログ「PCRシステム、試薬、および消耗品」、Perkin−ElmerApplied Biosystems、FosterCity、Calif.)。
【0109】
典型的には、PCRはpH5〜8の緩衝液中で行う。緩衝液は、増幅すべき二本鎖DNAサンプル、正方向プライマー、逆方向プライマー、マグネシウム(例えば、MgCl2)、および一般に「dNTP」と呼ばれる4つのデオキシヌクレオチド三リン酸(dATP、dTTP、dCTP、およびdGTP)(DNAの構築ブロック)を含む。反応混合物を、DNAサンプルの変性に十分な温度(例えば、>90℃)に加熱し、それにより2つの相補核酸鎖が分離する。あるいは、周囲温度でヘリカーゼ酵素を使用して、DNAを酵素的に変性することができる。変性が熱に影響を受け、且つ熱安定性DNAポリメラーゼを使用する場合、反応開始前にDNAポリメラーゼを添加する。他の変性条件は当業者に周知であり、米国特許第5,698,400号に記載されている。DNAポリメラーゼは種々の業者から市販されている(例えば、Perkin−ElmerApplied Biosystems、FosterCity、Calif.およびStratagene(La Jolla、Calif.))。
【0110】
PCRで複製すべき変性DNA鎖の同定部分に相補的になるように、プライマー配列をデザインする。反応物の適切なアニーリング温度への冷却の際、各プライマーを複製すべき変性DNAサンプルの各鎖中の相補塩基配列にアニーリングする。DNAポリメラーゼ、4つのdNTP、およびMg2+の存在下で約70℃に加熱し、複製により相補dNTPの添加によりその3’末端から鎖の長さに沿ってプライマーが伸長する。dNTPは種々の業者から市販されている(例えば、Pharmacia(Piscataway、N.J.))。このプロセスの多数の反復により、本プロセスの初期段階で所望のDNA鎖数が相乗的に増加するか、反応液中に十分に過剰な試薬が存在する限り増加する。したがって、元のDNAサンプル量が増加する。
【0111】
ポリメラーゼ量は、所定の増幅サイクル数を通してDNA合成の促進に十分でなければならない。実際のポリメラーゼ量に関するガイドラインは、一般に、PCR試薬の供給者が提供しており、あるいは当業者によって容易に決定可能である。好ましくは、校正活性(proofreadingactivity)を有するDNAポリメラーゼを使用する。
【0112】
各プライマーの量は、実質的に過剰量の増幅すべき標的DNA量でなければならない。当業者は、反応混合物に必要なプライマー量を、反応の終了後に最終的な所望の増幅フラグメント数に関して評価することができる。
【0113】
偽陽性の結果を回避するために、当業者は、当該分野で従来のようにアッセイはネガティブコントロールを含むべきであることを認識する。例えば、適切なネガティブコントロールは、プライマーおよびDNAを含まない(すなわち、「水コントロール」)。偽陰性の結果を回避するために、コントロールプライマーによってポジティブコントロールを得る(以下を参照のこと)。
【0114】
A.PCR条件の至適化首尾の良い特異的増幅(例えば、本発明による最大量の特異的増幅産物を産生し、且つ最小量の非特異的増幅産物を産生する増幅)は、対応する適合テンプレートへのPKD特異的プライマーに非常に依存する。プライマーが反応混合物中の多数の異なる配列に非特異的にアニーリングする場合、増幅プロセスは特異的ではない。ほとんどの実施形態で非特異的アニーリングまたは非特異的増幅が回避される可能性が低いにもかかわらず、非特異的増幅が減少する一方で特異的増幅が増加するようにPCR増幅反応条件を至適化することが望ましい。
【0115】
さらに、非相補塩基をテンプレートに添加するPCR誘導変異が、サンプル増幅中に形成される場合がある。検出された変異がサンプル中に存在するかPCRプロセス中に産生されたかは明白ではないので、このようなPCR誘導変異は変異検出結果をあいまいにする。出願人は、PCR誘導変異の形成を最小にし、推定上の変異含有サンプルの正確且つ明白な分析を確実にするためのPCRサンプル増幅至適化の重要性を認識していた。
【0116】
B.PKD特異的プライマーのPKD特異的アニーリングの特異性の制御PCRによるDNAフラグメント複製の忠実度は、当該分野で長く認識されている多数の要因に依存する。これらの要因のいくつかは、1つの要因の量または濃度の増減によって生じるPCR産物プロフィールの変化を相殺し得るか異なる要因の変化によって逆になるという意味で相関関係がある。例えば、酵素濃度の増加により複製忠実度が減少し得る一方で、反応温度の低下により複製忠実度が増大し得る。マグネシウムイオン濃度またはdNTP濃度の増加により、PCR忠実度の減少に影響を与え得る反応速度が増加し得る。PCR忠実度に寄与する要因の詳細な考察は、Eckertら(「PCR:実践アプローチ」、1991、McPherson,Quirke,andTaylor編、IRL Press、Oxford、第1巻、225〜244)、Andreら(1977、「ゲノム研究」、ColdSpring HarborLaboratory Press、843〜852)に示されている。これらの引例およびこの引例中の引例は、その全体が本明細書中で参考として援用される。したがって、PCRプロセスの産物プロフィールの利用可能性により、PCR条件を非常に有効な様式が得られるように改良することができる。
【0117】
PCR増幅では、アニーリングの特異性は、第1の数サイクルで最も重要である。残りのサイクルは、最初の数サイクルで増幅されたテンプレートのプールを拡大するためだけに使用される。テンプレートへのプライマーアニーリングの特異性を、緩衝液のイオン強度(主に、K+濃度)、Mg2+濃度(dNTPに結合するのでdNTP量の影響を受ける)、および各複製サイクルのアニーリング温度によって制御する。好ましい実施形態では、dNTP濃度は、50nM、好ましくは100nM、より好ましくは200nMである。
【0118】
特定のテンプレート標的へのプライマーの特異的アニーリング条件を、通常、アニーリング温度の幾らかの上昇の変化およびアガロースゲル電気泳動による増幅プロセスの特異性および感度の比較によって経験的に決定しなければならない(「現代の分子生物学プロトコール」、前出を参照のこと)。
【0119】
PKD特異的プライマーに相補的な固有領域はホモログ配列と数個のヌクレオチドのみ(1つのヌクレオチドのみの場合もある)が異なり得るので、増幅反応の特異性は反応で使用した各PKD特異的プライマーについて試験する必要がある。
【0120】
上記のプライマーアニーリング温度の計算式は、大まかな指針であり、その後の異なるアニーリング温度での試験は、PKD特異的増幅反応におけるこの重要なパラメーターを至適化する有用な方法である。特定のプライマー−温度対の異なるアニーリング温度の同時試験に装置を利用することができ、これは最適なアニーリング温度を迅速且つ確実に決定することができる(例えば、ロボサイクラー・グラジエント・テンペラチャー・サイクラー、カタログ番号400864、Stratagene;エッペンドルフマスターサイクラーグラジエント、カタログ番号5331000.045、Brinkmann Instruments,Inc.、Westbury、NY)。
【0121】
いくつかの実施形態では、プライマー対のTmよりも1℃〜10℃高いアニーリングおよび伸長温度で標的配列を増幅する。この温度での増幅は不十分であるにもかかわらず、得られた任意のプライマー伸長物は標的特異的である。したがって、高温サイクル中、サンプルは特定の標的配列が富化し、任意のサイクル数(すなわち、1〜15サイクル)で産物特異性が向上する。次いで、アニーリング温度を低下させて増幅効率を上げ、検出可能な量のPCR産物を得ることができる。テンプレートとして第1のPCR反応物由来の増幅産物を使用してネスト化(nested)増幅反応を行うこともできる(以下を参照のこと)。
【0122】
あるいは、最少量の非特異的産物を含む高収率の特異的産物を得るための至適条件を定義するために、一定の温度であるがKClまたはMgCl2濃度が異なるか、種々の量のホルムアミド(例えば、0、2、4、6%)、DMSO(1〜10%)などの変性剤を添加する反応を同時に行うことができる。
【0123】
1つの実施形態では、配列番号3〜49からなる群から選択される少なくとも1つを含むプライマー対を、増幅反応混合物で使用する。1つまたは複数の特異的に増幅する産物が作製されるように、2つのプライマーは逆方向である。
【0124】
いくつかの実施形態では、PKD特異的増幅で使用するプライマーが配列番号3〜49から選択される場合、GeneAmpPCR緩衝液IIおよびMgCl2溶液を含むAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ、Perkin ElmerのrTth DNAポリメラーゼXL&XL緩衝液IIパック、およびStratageneのTaqPlus精密PCRシステムを使用した。PFUTurbo(商標)は、Stratageneから提供されているより高い校正を有する別の忠実度の高いDNAポリメラーゼである。
【0125】
他の実施形態では、配列番号3〜49から選択されるプライマーを使用したPKD特異的増幅に65℃を超えるアニーリング温度(例えば、68〜72℃)を使用する。
【0126】
一般に、プライマーおよびテンプレートを添加後にDNAポリメラーゼを増幅反応混合物に添加することが好ましいが必須ではない。あるいは、例えば、酵素およびプライマーを最後に添加するか、反応緩衝液またはテンプレート+緩衝液を最後に添加する。一般に、重合に不可欠な少なくとも1つの成分がプライマーおよびテンプレートが共に存在するときまで存在せず、酵素が所望のプライマー/テンプレート基質に結合および伸長することができることが望ましい。「ホットスタート」と呼ばれるこの方法は、「プライマー−二量体」の形成を最少にし、増幅特異性を改良する。
【0127】
DNAポリメラーゼの特異性の程度は、使用した反応条件および使用酵素の型で変化する。完全にエラーのないプライマー伸長が得られる酵素は存在しない。したがって、非相補塩基を随時移入することができる。このような酵素関連エラーにより、元のDNAサンプルの正確なコピーではないがPCR誘導変異を含む二本鎖DNA産物が得られる。他のPCRプロセスの特徴(反応温度、プライマーアニーリング温度、酵素濃度、dNTP濃度、Mg2+濃度、およびその組み合わせなど)は全て本明細書中に記載のPCRプロセスによるDNA複製の精度または忠実度の低下させる可能性がある。
【0128】
C.PKD特異的増幅感度本発明のPKD特異的増幅感度は、増幅反応で使用したテンプレートおよびプライマーならびに増幅の各サイクルのイオン強度およびアニーリング温度に依存する。
【0129】
テンプレートとしてゲノムDNAを使用する場合、反応条件が至適化されている場合に首尾の良いPCR増幅には1つまたは2つほどのテンプレートコピー(約3〜5pg)を使用することができる。しかし、より高いテンプレート濃度により増幅の特異性および効率を増大することができることが当該分野で公知である。
【0130】
長いフラグメントよりも短いフラグメントのほうが増幅効率が高い。好ましくは、1kb未満、より好ましくは600bp長未満、または450bp長未満の増幅産物を作製するプライマーを使用して、増幅アッセイの感度を上げる。
【0131】
好ましくは、増幅アッセイの感度は、100ngゲノムDNAテンプレート未満である。より好ましくは、アッセイ感度は10ngゲノムDNAテンプレート未満である。より好ましくは、アッセイ感度は1ngゲノムDNAテンプレート未満である。より好ましくは、アッセイ感度は0.1ngゲノムDNAテンプレート未満である。さらにより好ましくは、アッセイ感度は0.01ngゲノムDNAテンプレート未満である。
【0132】
D.ネスト化増幅本発明のいくつかの実施形態では、テンプレートとして最初の増幅反応の増幅産物を使用してネスト化増幅を行う。好ましくは、ネスト化増幅反応は、テンプレートとして最初のPCR反応由来のPCR増幅産物を使用したネスト化PCRである。プライマーのアニーリング温度の至適化に加えて、「ネスト化」増幅を使用して、PKD特異的増幅アッセイの特異性および感度を上げることができる。
【0133】
例えば、ネスト化PCRを含む方法は、2つの連続するPCR反応を含む。少なくとも1つのPKD特異的プライマーを含む第1のプライマー対(例えば、PKD特異的プライマーおよびコントロールプライマーまたは2つのPKD特異的プライマー)を使用した多サイクルのPCR後(例えば、10〜40、10〜30、または10〜20サイクル)、少量のアリコートの第1の反応物(例えば、50μlの反応物のうち1μl)を、第1の対の内部または第1の対の間に存在する配列にアニーリングする少なくとも1つのPKD特異的プライマーを含む新規のプライマー組(例えば、PKD特異的プライマーおよびコントロールプライマーまたは2つのPKD特異的プライマー)を使用した第2の多サイクル(例えば、10〜40、10〜30、または10〜20サイクル)PCR反応用のテンプレートとして使用する。
【0134】
ネスト化プライマーのデザインおおびネスト化PCR法は、当該分野で公知である(現代の分子生物学プロトコール、前出を参照のこと)。上記のプライマーの一般的な選択基準もまた、ネスト化プライマーのデザインに適用する。両ネスト化プライマーは第1のプライマー対の内部(例えば、プライマー内)の配列および少なくとも1つのネスト化プライマーにアニーリングする必要があるが、本発明によれば、PKD特異的であることが必要である。
【0135】
ネスト化PCR法を使用して、PKD特異性が2倍の首尾よく増幅したテンプレートを選択する。1つのプライマー対のみでは失敗する場合、ネスト化PCRの使用により、種特異的産物の収率も非常に増大し、アッセイ感度を挙げることができる。
【0136】
ゲノムDNAまたはcDNAを含むサンプルを使用して、増幅反応用のDNAテンプレートを得ることができる。好ましくは、テンプレートとしてゲノムDNAを使用する。ゲノムDNAを含むサンプルを反応混合物で使用する場合、配列番号〜49からなる群から選択される少なくとも1つを含むプライマー対により、少なくとも2つの特異的増幅産物(ゲノムDNAテンプレート中の各PKD対立遺伝子由来の産物)が作製される。
【0137】
E.増幅コントロールコントロールプライマーを、PKD特異的増幅のポジティブコントロールとして使用することができる。コントロールプライマーを、PKD特異性増幅用の同一の反応混合物に添加するか、同一のパラメーター下の同一のPCR装置で運転するコントロール反応に添加することができる。コントロールプライマーは、PKD遺伝子とPKDホモログとの間の任意の同一の配列に相補的な配列を含み得る。好ましくは、コントロールプライマーによりそのサイズが少なくとも1つのPKD特異的プライマーを含むプライマー対によって増幅されたサイズと区別することができる1つの増幅産物が作製される。コントロールプライマーによる増幅産物のサイズは、少なくとも1つのPKD特異的プライマーを含むプライマー対によって作製した増幅産物のサイズより大きくても小さくても良い。好ましくは、少なくとも1つのPKD特異的プライマーを含むプライマー対によって同一の増幅反応で作製した増幅産物と比較して少なくとも100bp、より好ましくは少なくとも500bp、より好ましくは少なくとも1000bpサイズが異なるコントロール産物が作製されるようにコントロールプライマーを選択する。
【0138】
PKD特異的プライマーがアニーリングする位置で欠失したPKD対立遺伝子を分析する場合、コントロール増幅は特に重要である。増幅コントロール産物の存在下での特異的増幅の欠損は、PKD遺伝子の特定の位置での欠失を示し得る。いくつかの実施形態では、反応混合物中に1対を超えるコントロールプライマーを使用する。
【0139】
本発明の遺伝子試験法で使用することができる種々のコントロールについては実施例2を参照のこと。
【0140】
増幅産物を精製して当該分野で公知の方法による増幅に使用した遊離のプライマーを除去することができる(例えば、「現代の分子生物学プロトコール」、前出)。好ましい実施形態では、EdgeBiosystemsのQuickstep(商標)の96ウェルPCR精製キットを使用してPCR産物を精製する。
【0141】
VII.PCR増幅産物の存在の検出DNA変性、プライマーアニーリング、およびプライマーの5’末端によって規定されるDNAセグメントの合成のサイクルを、検出に十分な量の種特異的または普遍産物のいずれかが利用可能になるまでテンプレート標的の増幅に必要な回数だけ反復する。増幅反応の完了後、増幅産物の存在を当該分野で従来の技術を使用して検出することができる。
【0142】
検出を容易にするために、プライマーを標識することができる。プライマーを、検出可能なタグ(例えば、32P、35S、14C、または125Iなどの放射性標識、フルオレセインまたはローダミンなどの蛍光化合物、ペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素、またはアビジンもしくはビオチン)で直接標識することができる。PKD特異的産物の作製に使用するPKD特異的プライマーおよびコントロール産物の作製のみで使用するコントロールプライマーは、同一または異なる標識を有し得る。
【0143】
好ましい実施形態では、増幅産物をゲル電気泳動によって分析することが都合がよい。
【0144】
フラグメントの所望の分離度をもたらす条件下で電気泳動を行う。通常、約500pbほど小さいサイズが異なるフラグメントを分離する分離度で十分である。好ましくは、分離度は約100bpである。より好ましくは、分離度は約10bpである。フラグメントのサイズを評価するために、サイズマーカーもまたゲル上で電気泳動することができる。特異的増幅産物の予備サイズ分析は、PKD遺伝子内の挿入または欠失を示すことができ、その後のDHPLCおよび配列分析から得た結果と併せて、得られた情報を解釈することができる。
【0145】
増幅産物パターンを視覚化することができる。増幅プライマーを標識した場合、この標識を明らかにすることができる。分離された標識DNAフラグメントを含む基質を、標識の存在を検出する試薬と接触させる。例えば、放射性標識プライマーから作製された増幅産物を、オートラジオグラフィーで検出することができる。増幅プライマーが検出されない場合、PCR産物を有する基質を、臭化エチジウムと接触させて、DNAフラグメントを紫外線下で視覚化することができる。
【0146】
VIII.PCR増幅産物の分離完全に相補的な配列のみがアニーリングし、1つまたは複数の非相補ヌクレオチドを含む配列はアニーリングしない最もストリンジェントな条件下で、PKD特異的プライマーは、真のPKD遺伝子テンプレートのみとアニーリングし、PKDホモログとはアニーリングしない。したがって、最もストリンジェントな条件下では、PKD特異的プライマーは、PKD特異的であるか特異的な逆方向プライマーと組み合わせて、PKDホモログではなく真のPKDテンプレートから増幅産物のみを作製する。しかし、典型的なPCR増幅反応の際、PKD特異的プライマーは、特にPCR反応に必要な温度サイクリングによって真のPKD遺伝子およびPKDホモログを含むテンプレートにアニーリングすることができる。したがって、特異的増幅産物および非特異的増幅産物の両方を産生することができるにもかかわらず、非特異的増幅産物の量を少なくとも1つのPKD特異的プライマーの使用によって減少させることができる。
【0147】
A.ホモ二重鎖およびヘテロ二重鎖の形成本発明の1つの実施形態では、ホモ二重鎖とヘテロ二重鎖との混合物を、DHPLC分析前に形成する。標準的な核酸ホモ二重鎖(例えば、正常なPKD対立遺伝子由来の増幅産物)をサンプルに添加し、混合物の約90℃または約95℃への加熱によって混合物を変性させることができる。変性プロセスで形成された変性一本鎖核酸を、混合物の周囲温度への緩やかな冷却によってアニーリングする。サンプルが変異を含む場合、ホモ二重鎖とヘテロ二重鎖との新規の混合物が形成される。サンプルが変異を含まない場合、標準的な核酸のホモ二重鎖のみが形成される。好ましい実施形態では、標準的な核酸は、「正常な」核酸である。
【0148】
ほとんどの場合、PKD患者は、PKD遺伝子を含む遺伝子座でヘテロ接合性である。すなわち、キャリアはたった1つのPKD対立遺伝子および変異形態を有し、正常な形態(例えば、野生型)の他の対立遺伝子を有する。ほとんどのPKD変異により優性表現型が得られるので、ADPKDの発症リスクの付与には1つの変異対立遺伝子で十分である。両方の対立遺伝子が変異しているが、それぞれ1つまたは複数の異なる変異を有する場合、別のヘテロ接合状況が存在する。ヘテロ接合性PKD患者について、少なくとも1つのPKD特異的プライマーを含むプライマー対を使用したPCR増幅(ネスト化PCR増幅を含む)により、少なくとも2つの特異的増幅PKD産物(各対立遺伝子由来の産物)が得られる。2つの特異的増幅PKD産物同一の長さであってもなくてもよく(例えば、1つの対立遺伝子上の変異が欠失または挿入を含む場合、異なる長さ)、それぞれの産物由来の少なくとも1つのヌクレオチドで異なる。
【0149】
増幅産物を変性し、互いに再アニーリングして二重鎖を形成することができる。正常な対立遺伝子由来の特異的増幅産物または変異対立遺伝子由来の特異的増幅産物が同一の対立遺伝子由来の別の特異的増幅産物にアニーリングする場合、これらはホモ二重鎖を形成する。しかし、正常な対立遺伝子由来の特異的増幅産物が変異対立遺伝子由来の特異的増幅産物にアニーリングする場合、これらはヘテロ二重鎖を形成する。
【0150】
まれな場合、変異はホモ接合性形態である(すなわち、個体(例えば、PKD患者)中の両対立遺伝子は同一の変異を含む)。ホモ接合性PKD患者からサンプルを採取する場合、PCR増幅により、変性および再アニーリングの際にヘテロ二重鎖を形成することができる特異的増幅産物は得られない。本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのPKD特異的プライマーを含むプライマー対を有する増幅により正常なPKD遺伝子由来の特異的増幅産物が産生されて、PCR増幅後の変性および再アニーリングプロセスの際にヘテロ二重鎖の形成が確実になるように、正常な(例えば、野生型)PKD遺伝子を含むサンプルをPCR反応混合物に添加する。
【0151】
変性および再アニーリングプロセスで形成されたホモ二重鎖はまた、非特異的増幅産物によって形成されるものを含み得る。非特異的増幅産物が得られるテンプレート対立遺伝子(例えば、PKDホモログ配列)中の配列が1つまたは複数の変異も含むような非常にまれな場合、ヘテロ二重鎖もまた形成され得る。非特異的増幅産物間で形成されたヘテロ二重鎖を、さらなる同定プロセスの分離にも供する。
【0152】
B.ヘテロ二重鎖の分離および同定PKD特異的増幅産物によって形成されたヘテロ二重鎖の存在は、PKD遺伝子中の変異の存在を示す。ヘテロ二重鎖野分離によって、変異対立遺伝子が、(例えば、個体から)採取したサンプル中に存在するかどうかを同定することができる。この分離プロセスにより非特異的増幅産物が除去され、それにより正常な対立遺伝子由来の特異的増幅産物は、変異対立遺伝子およびPKD患者の同定効率および特異性を改良する。
【0153】
ヘテロ二重鎖は塩基対ミスマッチ部位で選択的に変性し、ヘテロ二重鎖の残存物(すなわち、相補塩基対を含むヘテロ二重鎖の一部)の変性に必要な低温で「バブル」を形成することがDNA分野で周知である。ミスマッチ塩基間の水素結合が相補塩基間の水素結合よりも弱いので、一般に部分変性と呼ばれるこの現象が起こる。したがって、変異部位でのヘテロ二重鎖の変性にはエネルギーはあまり必要ないので、鎖の残存物中よりも塩基対ミスマッチ部位でヘテロ二重鎖を部分的に変性するためには低温を必要とする。
【0154】
ヘテロ二重鎖中の少なくとも1つの塩基対が相補的でない場合、その部位の塩基の分離にはホモ二重鎖中の完全に相補的な塩基対アナログと比較して少ないエネルギーを使用する。これにより、ホモ二重鎖と比較してヘテロ二重鎖の融解温度が低下する。局所変性より、塩基対ミスマッチ部位に「バブル」(一般名)が形成される。バブルは、同一の塩基対長の完全に相補的なホモ二重鎖と比較してDNAフラグメント構造が歪んでいる。部分的変性条件下でのこの構造のゆがみを、ヘテロ二重鎖とホモ二重鎖を分離するためのDHPLCの基本として使用する。
【0155】
「変性HPLC」(DHPLC)と呼ばれる分離プロセスは、ヘテロ二重鎖(変異の存在から得る)を分離すること、および同一のbp長を有するホモ二重鎖によって変異体が検出された。DHPLCを経に検出に適用する(例えば、Underhillら、1997、GenomeResearch、7、996;Liuら、1998、Nucleic Acid Res.、26、1396を参照のこと)。この分離は、ヘテロ二重鎖がホモ二重鎖よりも融解温度(Tm)が低いという事実に基づく。DHPLCを部分的変性温度(すなわち、塩基ミスマッチ部位でのヘテロ二重鎖の変性に十分な温度)で行う場合、ホモ二重鎖を、同一の塩基対長を揺するヘテロ二重鎖から分離することができる(Hayward−Lesterら、1995、CenomeResearch、5、494;Underhillら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93、193;Dorisら、1997、DHPLCWorkshop、Stanford University)。これらの引例およびこの引例中の引例は、その全体が本明細書中で参考として援用される。したがって、DHPLCの使用を、変異検出に適用した(Underhillら、1997、GenomeResearch、7、996;Liuら、1998、Nucleic Acid Res.、26、1396)。DHPLCは、一定の条件下でわずか1つの塩基対が異なるヘテロ二重鎖を分離することができる。上記の引例およびこの引例中の引例を参照することによってその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0156】
規則正しい二重鎖由来のDNA構造の塩基対を含まない無秩序かつ重なっていない構造への変化は、二重鎖−ランダム鎖移行(helix−randomchain transition)(すなわち、融解)と呼ばれる。天然の配列の二本鎖分子についての温度の関数としてこの変化を示す平衡の統計学的機械的分析は、Wartelland Montroll(1972、Adv.Chem.Phys.、22、129)に示されている。この理論は、各塩基対が以下の内2つの可能な状態(積み重ね、らせん、および水素結合または無秩序)でのみで存在することができると仮定する。塩基配列および非常に少数の経験的に較正したパラメーターのみが与えられた場合、任意の温度で各塩基対がらせんまたは融解する可能性を計算可能である。統計的−機械的理論は、各塩基対または塩基付近のクラスターの本来の安定性の相違、隣接塩基対がらせんまたは融解(協同性)している可能性に対する隣接らせん構造の影響、および両末端がらせん構造で区切られた場合の無秩序領域の高次構造自由度の制限を考慮する。
【0157】
厳密に区切られた一連の温度工程での可能性の計算および補間法の繰り返しにより、各塩基対がらせんと融解状態との間で50/50の平衡を保つ温度中心点が同定される。MELTプログラムにより、温度中間点およびいくつかの他の関数が得られる。分子に沿った位置の関数としての温度中心点のプロットを、融解マップと呼ぶ。これは、隣接塩基対の融解が個体間の安定性の相違にもかかわらず分子の実質的な長さを超えて密接に結合することを明白に示す。ほとんど同一の温度で全ての塩基が融解するドメインと呼ばれるわずかに長い領域(30〜300bp)の存在が典型的である。融解マップは分子の最も低い融解ドメインをそのまま表す。
【0158】
部分的変性温度では、サンプル配列中の塩基対ミスマッチを有するヘテロ二重鎖はミスマッチ部位で変性し、残りのサンプル配列は無傷のままである。部分的変性へテロ二重鎖を、DHPLCを使用して分離および検出することができる。
【0159】
ホモ二重鎖とヘテロ二重鎖との混合物を分離するための部分変性条件下(例えば、DHPLC)でHPLCを使用する場合、ヘテロ二重鎖は、通常、ホモ二重鎖の前に溶出される。
【0160】
本発明の特定の実施形態では、DHPLCによってホモ二重鎖からヘテロ二重鎖を分離および同定し、ヘテロ二重鎖の存在はPKD遺伝子中の少なくとも1つの変異(例えば、変異対立遺伝子中に存在する1つまたは複数のヌクレオチドの置換(または1つまたは複数のヌクレオチドの挿入もしくは欠失))の存在を示す。
【0161】
別の特定の実施形態では、DHPLC勾配を、Transfenomic,Inc.(SanJose、CA)のWavemaker(商標)4.0ソフトウェアによって決定する。
【0162】
分離への適用には、変異がフラグメント上のどこに存在するかに関係なく変異を検出することができることが必要である。この状況では、変異はフラグメントの中央または高温融解ドメイン中に存在し得るが、両者とも検出が困難である。フラグメントの融解温度範囲のばらつきは10℃未満が好ましく、ばらつきの範囲が5℃未満であることが最も好ましい。
【0163】
いくつかの変異分析では、DHPLC分析でたった2つのピークまたは部分的に解析されるピークが認められる。2つのホモ二重鎖ピークは、1つのピークまたは部分的に解析されたピークとして認められ、2つのヘテロ二重鎖ピークは、1つのピークまたは部分的に解析されたピークとして認められ得る。いくつかの場合、部分的変性条件下では広がった最初のピークのみが認められる。
【0164】
サンプルがサンプル長のホモ接合性DNAフラグメントを含む場合、ヘテロ二重鎖が形成されないので、ハイブリッド形成およびDHPLCによる分析により任意の温度で1つのピークのみが得られる。本方法の操作では、既知の野生型フラグメントとのホモ接合性サンプルとのハイブリッド形成および部分的変性温度でのDHPLC分析の実施によって変異を同定することができる。サンプルが正常な対立遺伝子を含む場合、ヘテロ二重鎖が形成されないので、DHPLC分析では1つのピークが認められる。サンプルがヘテロ接合性変異対立遺伝子を含む場合、DHPLCでの分析により、ホモ二重鎖およびヘテロ二重鎖の分離が認められる。
【0165】
50%の一定の融解ドメインが変性する温度もまた、温度に対するDNAサンプルのUV(UV)吸光度のプロッティングによって実験的に贈呈することもできる。吸光度は、温度に伴って増加し、得られたプロットを融解プロフィールと呼ぶ(Breslauerら、1986、Proc.Natl.Acad.USA、83、3746;Breslauer、1987、「任意の反応分子数の移行についての熱力学的データの計算」、221、Markyら編、J.Wileyand Sons)。融解プロフィールに対する吸光度の軸の中心点は、融解温度(Tm)(すなわち、二重鎖中のDNA鎖の50%が変性する温度)を示す。本発明の1つの実施形態では、この認められたTmを、変異検出用のDHPLCの出発温度として使用する。次いで、この温度を、異なるコントロールを使用して認められたパターンにしたがって調整する(以下を参照のこと)。1つの実施形態では、一定のTmを使用して、異なるサンプル由来の同一のアンプリコン(すなわち、同一のプライマー対によって産生される)を分析する。
【0166】
本発明の別の実施形態では、MELT(Lermanら、1987、Meth.Enzymol.、155、482)またはWinMelt(商標)バージョン2.0などのソフトウェアを使用して、変異検出用のDHPLC実施のための出発温度として使用する計算したTmが得られる。これらのソフトウェアプログラムは、塩基対の安定性がそれぞれ異なるにもかかわらず、隣接する塩基部位の融解温度は密接に協力している(すなわち、協同効果が存在する)ことを示す。したがって、融解温度が適切に一定している「ドメイン」と呼ばれる30〜300塩基対長の領域が存在する。類似の様式では、ソフトウェアMELTSCAN(Brossetteら、1994、NucleicAcid Res.、22、4321)は、DNAフラグメントにおける融解ドメインおよびその対応する融解温度を計算する。1つのヘテロ変異部位の選択温度での任意のドメイン部分の変異の検出が可能であるので、一定温度の融解ドメインの概念は重要である。
【0167】
別の特定のヘテロ二重鎖の分離および同定法は、適合イオン核酸クロマトグラフィー(MatchedIon NucleicAcid Chromatography)(MIPC)である。二本鎖核酸と一般的にはDNAとの混合物有効に分離するために、分離が塩基対長に基づくMIPCを導入した(米国特許第5,585,236号、同第6,287,822号;Huberら、1993、Chromatographia、37、653;Huberら、1993、Anal.Biochem.、212、351)。これらの引例およびこの引例中の引例は、その全体が本明細書中で参考として援用される。MIPC分離は10分以内に完了し、5分以内に完了することが多い。MIPCシステム(WAVE(商標)DNAフラグメント分析システム、Transgenomic,Inc.、SanJose、Calif.)は、カラムおよびカラムインレット部を含むコンピュータ制御のオーブンを備えている。
【0168】
DHPLCおよびMICPはヘテロ二重鎖の分離および同定について説明した方法であるにもかかわらず、当該分野で公知の他の方法をヘテロ二重鎖の同定に使用することもできることが理解される。例えば、高分離能ゲル基質でのヘテロ二重鎖分析もまた、1つのヌクレオチド多型でさえも検出することができる。(Hauserら、1998、Plant.J.、16、117〜25)。ヒトPKD遺伝子の3’末端中のSNPを検出するための増幅産物の分析のためにPCR/OLA法を使用することができる(Glickand Pasternak、1994、「分子生物工学:組換えDNAの原理と応用」、ASMPress、Washington,D.C.、197〜200)。当業者は、本発明の方法の実施における分析手段として増幅産物の高次構造感受性ゲル電気泳動を使用することもできる。(Markoffら、1998、Eur.J.Genet.、6、145〜50)。1つの塩基の置換、欠失、または挿入を検出することができるPCR−制限フラグメント−SSCPなどの技術によってこれを達成することができる(Tawataら、1996、Genet.Anal.、12(3〜4)、125〜27;Leeら、1992、Anal.Biochem.、205、289〜93)。従来の任意の種々のスラブまたはキャピラリー電気泳動法の使用によって、増幅産物分析のための電気泳動を迅速且つ高感度に行い、実施者は任意の容易な核酸フラグメント検出手段(放射性核種、UV吸収、またはレーザー誘導蛍光(Keparnikら、1998、Electorophoresis、19、249〜55;Inoueら、1998、J.Chromatogr.A.、802、179〜84;Dovichi、1997、18、2393〜99;Arakawaら、1997、J.Pharm.Biomed.Anal.、15、1537〜44;Baba、1996、J.Chromatgr.B.Biomed.Appl.、687、271〜302;Chanら、1997、J.ChromatogrB.Biomed.Sci.Appl.、695、13〜15)が含まれるが、これらに限定されない)の使用を任意選択的に選択することができる。任意選択的に任意の種々の蛍光色素を使用して、分析を容易にするために本発明のプライマーまたは増幅産物を標識することができ、この色素には、SYBRグリーンI、TIO−PRO−1、チアゾールオレンジ、Hex(すなわち、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオロセイン)、ピクログリーン、エダンス、フルオレセイン、FAM(すなわち、6−カルボキシフルオレセイン)、またはTET(すなわち、4,7,2’,7’−テトラクロロ−6−カルボキシフルオロセイン)(例えば、Skeidsvolland Ueland、1995、Anal.Biochem.、231、359〜65;Iwahanaら、1996、Biotechniques、21、510〜14、516〜19)が含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
変異検出の目的でホモ二重鎖およびヘテロ二重鎖の分離を行うための好ましい実施懈怠における本発明の使用では、上記の混合物の変性およびアニーリングによってDNAサンプルを正常なDNAフラグメントとハイブリッド形成させる。DNAサンプルを、正常なDNAと直接ハイブリッド形成することができる。DNAサンプルを、PCRによって増幅し、その後正常なDNAとハイブリッド形成することもできる。あるいは、PCR増幅前に正常なフラグメントをサンプルに添加することができる。次いで、増幅混合物を、増幅後にハイブリッド形成することができる。これら3つの各ハイブリッド形成シナリオでは、サンプル中に変異が存在する場合、ホモ二重鎖とヘテロ二重鎖との混合物が得られる。このようにして調製したサンプルを、本発明の方法を使用した変異の存在について、部分的変性条件下(好ましくは、56〜58℃)でのDHPLCによって分析する。
【0170】
本発明の方法を変異の存在について多数のサンプルの分離のために使用する場合、フラグメント一括範囲のための広範囲勾配を使用した各サンプルの分析の高速化によってサンプル処理量を有意に増加させることができる。
【0171】
本発明の全ての実施形態および態様では、DHPLCカラムで分離および溶出されたとき、核酸フラグメントが検出される。核酸を検出することができる任意の検出器を、DHPLC変異検出法で使用することができる。好ましい検出器は、オンラインUV検出器である。DNAフラグメントを蛍光標識または放射性標識でタグ化する場合、それぞれ蛍光検出器または放射能検出器を使用することができる。検出後、分離フラグメントを個別にビデオディスプレイ上に表示するかプリンターでプリントする。このようにして表示したフラグメントは、ピークまたはレーン中のバンドとして認められる。
【0172】
C.PKD−2およびPKD−1固有領域についてのDHPLC評価に有益な品質管理DHPLCでヘテロ二重鎖−ホモ二重鎖混合物とホモ二重鎖のみとを区別する化学的原理により、(1)緩衝液の組成、(2)分析時のオーブン温度、(3)カラム条件、および(4)サンプル注入時のシステム条件に非常に感度の高い方法が得られる。溶出パターンのゆらぎは正常であり、アンプリコンのサイズおよび配列ならびに分析時の特異的DHPLC条件に依存して変化する。当業者は、例えば、DHPLC装置の製造者から提供されたプロトコールにしたがって得られた溶出パターンを解釈する知識をもっている。しかし、ゆらぎ範囲の限度は、条件がDNA変異体を有効に分離すると予想される範囲内であることを確実にするのを援助するのに適切である。以下の品質管理コントロール溶液は、一貫したアッセイパフォーマンスを確実にするための各分析条件について確立した有用な例である。
【0173】
1.無DNAコントロールこのコントロールは、試薬および材料が患者の分析を妨害し得る特定のシグナルを発生しないことを示す。いくつかの実施形態では、コントロールは、例えば組織から抽出したDNAを含むサンプルに同一の処理をした無DNAサンプルにおいて最小のシグナル(正常なコントロールピークの高さの10%未満)を示さなければならない。分析システムのハードウェアの全てが各サンプル分析で再利用され、DHPLC分析は成分の分離であるので、正常なコントロールの10%までのピークの高さが許容される。異なる配列との実際の汚染により、10%汚染物質を検出すると予想されない配列決定に反射して惹起される偽りの正のDHPLCパターン差が得られる。配列の相違が検出される事象では、フラグメントは、結果を確認するためにPCRポイントから繰り返される。同様に、正常配列の10%の事実上正の汚染は、存在するDNAの50%が既に正常であるので、パターンを有意に変化させないと予想される。非常にわずかなパターンの変化が10%過剰によって混乱されるまれな場合は、注入中の正常なDNAは、感度の推定値が78〜96%である。しかし、アンプリコンを分析するたびにDNAシグナルが認められないことは、全体的および持続的なDNAシグナルの消滅を最小にするかなくすために分析条件を変化させる必要がある。
【0174】
2.正常コントロール1つの実施形態では、正常コントロールのパターンは、歴史的パターンに一致しなければならない。確立されたパターンとの一致は、許容可能な増幅、保持時間、ピークの高さ、およびピークの形状を示す。したがって、実施例においてPCRおよびDHPLC条件(機械および緩衝液など)を行う。確立された正常コントロールパターンと比較したところ、ホモログまたは他の非特異的増幅シグナルは存在しない。
【0175】
3.ポジティブコントロールポジティブコントロールは、確立されたDHPLC分析条件(ポジティブコントロールのヘテロ二重鎖を検出する)が分析時に有効であることを示すために使用された「DHPLC分析条件のコントロール」である。正常なコントロールと区別され、歴史的パターンと一致するポジティブコントロールパターンは、許容可能な保持時間、ピークの高さ、ピークの形状、およびパターンを示す。ヘテロ二重鎖検出は、各フラグメントに至適な特異的DHPLC分析条件が患者分析時に有効であることを示す。コントロールは必ずしもPKDポジティブシグナルではないことに留意することが重要である。各83PKDフラグメントについての特異的PKDポジティブサンプルは利用できない。存在しない場合、分析時に適切な分析条件を示すポジティブ指標として別のヘテロ二重鎖(ポジティブおよび正常コントロール)を使用する。
【0176】
4.さらなるポジティブコントロールさらなるポジティブコントロールにより、この特異的変異についての歴史的パターンに一致するパターンが得られ、これを使用して非常に共通する多型を分離することができる。一般に、特異的DNA変異体からサンプルからサンプルに高度に再生可能な固有の性質のヘテロ二重鎖パターンが得られる。確立されたパターンに一致するパターンは、許容可能な保持時間、ピークの高さ、ピークの形状、およびパターンを示す。特異的ヘテロ二重鎖パターンは、このDNA変異体に至適な特異的DHPLC分析条件が患者の分析の際に有効であるので、これに適合する患者のパターンを共通の多型を有すると見なすことができることを示す。共通多型についてのこの任意選択的な分離法は、固有のアンプリコンおよび変異体に非常に特異的であり、変異体に対して固有の適切な確認研究に依存する。
【0177】
D.DHPLC結果の分析DHPLCが分離プロセスであるので、正常コントロールと異なるシグナルを有する任意の検体(例えば、DNA、細胞溶解物、または組織サンプル)を、潜在的なポジティブと見なし、環境に依存して利用可能ないくつかのオプションのうちの1つで処理すべきである。いくつかの実施形態のために、弱すぎて解釈できないシグナル(正常コントロールのピーク高さの25%未満)は、PCRの失敗、波動輻射(waveinjection)の失敗、またはサンプル特有のいくつかの他の散発的な装置の問題によって発生し得る。オプションには、PCRポイントの反復、波動輻射(全てのコントロールを使用)の反復、または決定的でない波動の報告、および配列決定が含まれる。正常コントロールとパターンが異なるシグナルを、ポジティブと見なし、「P」と記録し、配列決定すべきである。正常コントロールパターンとほんのわずか異なるシグナルを「B」と記録し、配列決定すべきである。正常コントロールシグナルよりもはるかに強力なシグナルを「P」と記録し、配列決定すべきである。患者の検体はこれらの結果のみに基づいて得ていないことに留意のこと。使用した特異的オプションは、アンプリコンおよびそのDHPLC動作歴ならびに検体についての特異的環境によって変化する。
【0178】
いくつかの実施形態では、DHPLCから放出された結果のみが波動分析によって「正常」と記録された結果である。正常と記録されるために、検体のDHPLCパターンは、以下のQC基準によって正常なコントロールと一致しなければならない。(a)ピーク数、(b)ピークの高さ、(c)ピークパターン、(d)保持時間、(e)ベースラインの形状。言い換えれば、個体の検体のパターンは、妥当な推定ばらつき範囲内で正常コントロールの外観でなければならない。必要ならば、検証データ基準パターンを考察する。DHPLC分離感度を、正常コントロールと実質的に異なるパターンの計数によって評価した。パターンが真に正常コントロールと異なると考えられる場合、疑いの余地がなく、ポジティブと記録して配列決定に移る。特異的アンプリコンの要件を満たし、正常コントロールと一致するパターンを有する配列を記録し、正常とみなす。
【0179】
「一致する」と判断するために使用した特定の数値の基準には、(a)ピークがシグナル強度の局所的最大を示すピーク数、(b)ピークの高さまたは最大シグナル強度(通常、正常コントロールの高さの0.5倍と2.0倍との間)、(c)ピークの保持時間(対応する正常コントロールと比較して+/−60秒でなければならない)が含まれるが、これらに限定されない。ピークパターンは、ピーク内の各傾斜の変化の相対的対応ならびに複合体パターン内の各ピークの相対強度および保持時間によって判断される。ベースラインパターンは、通常、全てのサンプルにおいて滑らかで一貫している。相対的に低いベースラインの変化は、ホモ二重鎖ピークと有意に異なる保持時間で溶出およびおそらく融解するヘテロ二重鎖を示し得る。各アンプリコンについての保持時間およびピークの高さの基準を、実施例に添付の表に明記する。
【0180】
1つの実施形態では、ピークパターン評価は、(1)正常コントロールと同一の運転コントロール基準を満たすサンプルシグナルと、(2)運転コントロールとの相対的比較に基づいた正常コントロールと一致するサンプルシグナルパターンとの組み合わせである。正常コントロールパターンは、運転毎にわずかに変化すると予想されるにもかかわらず許容可能であるので、正常と記録した各サンプルは、(1)正常コントロールと同一の運転コントロール基準、(2)上記の正常コントロールと各患者サンプルとの比較において固有の相対コントロール基準を満たす組み合わせである。患者サンプルパターンのわずかな変化は正常コントロールの絶対的運転基準と一致することが明白なようであり、運転内での正常と患者との相対的比較を使用すると明白である。運転内の相対的比較は常に歴史的パターンと交換可能であり、正常コントロールはコントロール基準をパスし、運転は許容されると予想される。
【0181】
IX.ヘテロ二重鎖の検証任意選択的に、同定したヘテロ二重鎖を、1つまたは複数の制限酵素での増幅産物の消化によって検証することができる。この目的に有用な制限酵素を、真のPKD遺伝子配列とPKDホモログ配列との比較またはPKD多型の比較によって選択する。本発明の有用な制限酵素により、真のPKD遺伝子およびPKDホモログについての区別可能なフラグメントプロフィールが作製される。このような制限酵素の例には、PstI、StuI、XmaI、MluI、PvuII、BssHII、FspI、MscI、およびBlnIが含まれるが、これらに限定されない。有用な制限酵素はまた、正常なPKD遺伝子および変異PKD遺伝子についての区別可能なフラグメントプロフィールを作製することができる。PKD遺伝子とPKDホモログ遺伝子または正常なPKD対立遺伝子と変異PKD対立遺伝子との単純比較によってより多数の制限酵素を同定することができることが理解される。切断部位を破壊するか作製するために他方の配列中ではなく一方の配列中に認識部位または切断部位を有する制限酵素を、本発明の有用な制限酵素と見なすことができる。核酸の制限後に変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)または上記の電気泳動(制限−キャピラリー電気泳動を含む)における得られたフラグメントの分離およびフラグメントの長さまたは異なるフラグメントの移動度の分析を行う。
【0182】
X.DHPLCによって同定されたヘテロ二重鎖の配列決定DHPLCによって同定された1つまたは複数の変異の存在を示すヘテロ二重鎖を、クローン化し、増幅し、そして/または配列決定することができる。当該分野で公知の任意の配列決定法を使用して、ヘテロ二重鎖を配列決定することができる。いくつかの実施形態では、同定されたヘテロ二重鎖を、PCR増幅用のテンプレートとして使用し、増幅産物をSequetechCorporation(Mountain View、CA)によって配列決定する。好ましい実施形態では、配列番号3〜49を含むプライマーの1つを使用して配列決定を行う。
【0183】
いくつかの実施形態では、同定したヘテロ二重鎖を増幅し、プラスミド(例えば、ZeroBluntTOPO PCRクローニングキット、Invitrogen、Carlsbad、CA、カタログ番号4560−01)にクローン化後、配列決定する。PCRフラグメントを含むプラスミドを、当該分野で周知の方法によって増殖させ、配列決定する。
【0184】
XI.方法の臨床用途本出願書類に記載の遺伝子試験法は、ADPKDの病因であると報告されているスプライス連結受容体/供与体配列を含むPKD−1またはPKD−2のコード領域のDNAの変化の同定を目的とする。以下を医師が評価するために本方法を行う。
【0185】
A.症状を示す個体のPKDに起因するADPKDの診断。
B.発症年齢または発症年齢付近の個体における1つまたは2つの嚢胞の存在を示す超音波の結果の追跡。
C.家族歴、超音波、および他の臨床データからの決定が好ましくないADPKD(1型および2型)の異なる変異体の診断。
D.一旦家族にADPKD発端者が同定された場合の他の危険性のある家族のメンバーの遺伝子カウンセリングの決定および提供。
E.移植の場合の生存関連ドナーの適合性の決定。
【0186】
XII.キット本発明はまた、本発明の変異分析法およびPKD患者同定法を行うためのキットを提供する。本発明の方法による本発明のキットの実施形態には、第1の核酸が配列番号3〜49およびその相補配列からなる群から選択され、第2の配列が第1の核酸と逆方向であり、第1および第2の核酸が配列番号1または2の配列を含むテンプレート核酸のフラグメントを増幅する、少なくとも1つの単離した第1の核酸および少なくとも1つの単離した第2の核酸ならびにパッケージング材料が含まれる。本発明のキットは、DNAポリメラーゼ、テンプレート核酸、制限酵素、コントロールオリゴヌクレオチドプライマー、ddNTP、PCR反応緩衝液、およびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含み得る。試薬に加えて、本発明のキットは、本発明の方法の実施のための取扱い説明書を含むことが好ましい。キットは、好ましくは、ユニットコンテナに封入し、所望の結果を得るために相互に操作するようにデザインされた予め測定した量の試薬を含み得る。
【0187】
実施例本発明を、以下の材料と方法を使用する以下の非限定的な実施例によって例示する。
【0188】
実施例1 試薬、特定の備品、および装置A.化学薬品以下は、PKD−1増幅およびDHPLC(WAVE)分析で使用した化学薬品のリストである。
1%アガロース、1×TBE、臭化エチジウムを含む54ウェルゲル(Embitec、カタログ番号GE4580)
2%アガロース、1×TBE、臭化エチジウムを含む54ウェルゲル(Embitec、カタログ番号GE4582)
96ウェルゲル濾過ブロック(Edge Biosystems、カタログ番号91751)
Quickstep(商標)96ウェルPCR精製キット(Edge Biosystems、カタログ番号99605)
GeneAmp PCR緩衝液IIおよびMgCl2溶液を含むAmpliTaqGold(Perkin Elmer、カタログ番号N808−0241)
rTth DNAポリメラーゼ、XL&XL緩衝液IIパック(PerkinElmer、カタログ番号N808−00193)
TapPlus精密PCRシステム(Stratagene、カタログ番号600211)
ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma、カタログ番号D−2650)
Ready−Load 100bpDNAラダーまたは等価物(GibcoBRL、カタログ番号10380−012)
Ready−Load 1kbDNAラダーまたは等価物(GibcoBRL、1800−828−6686、カタログ番号10380−010)
BigDyeターミネーターレディ反応キット(Perkin Elmer、カタログ番号4303150)
ゲル濾過カートリッジ(Edge Biosystems、カタログ番号42453)
Long RangerSingel(商標)(FMC BioProducts、カタログ番号50691または50693)
オリゴヌクレオチド(Operon Technologies,Inc.)
WAVE変異スタンダード(209bp)(カタログ番号560077)(180μl)
アセトニトリル−HPLCグレード(VWR、カタログ番号BJ015−1)
HPLCグレード水(VWR、カタログ番号BJ365−4)
酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)(Transgenomic、カタログ番号SP5890)
【0189】
B.試薬および溶液10μMのオリゴヌクレオチドプライマー:TE緩衝液に溶解した10μMの作業アリコートのPCRプライマーをPre−PCR冷却装置に4℃で保存すべきであり、配列決定プライマー作業アリコートを、Post−PCR冷却装置に4℃で保存すべきである。
【0190】
溶液X−127:アップグレードブルーデキストランの50mM EDTA(pH=8.0)溶液15mlの滅菌遠心分離用コニカルチューブ中で0.5mlの50mM EDTA(pH=8.0)(溶液X−35)、500mgのブルーデキストラン、AND9.5mlの高圧蒸気滅菌し、濾過滅菌したDiH2Oを組み合わせる。ボルテックスによって溶液を完全に混合する。
【0191】
溶液X−126:アップグレードゲルローディング緩衝液:1.5mlの滅菌微量遠心分離チューブ中で、200μlの脱イオンホルムアミドおよび40μlのアップグレードブルーデキストランの50mMEDTA溶液(溶液X−127)を組み合わせる。完全にボルテックスする。
【0192】
WAVE溶液A:溶液A(0.025%ACN)
2Lの調製物:100mlイオン対合剤(TEAA)
500μlアセトニトリル(ACN)
HPLCグレート水で2Lにする。
WAVE溶液B:溶液B(25%ACN)
2Lの調製物:100mlイオン対合剤(TEAA)
500mlアセトニトリル(ACN)
HPLCグレート水で2Lにする。
WAVEシリンジ洗浄溶液:シリンジ洗浄液(8%ACN)
2Lの調製物:160mlアセトニトリル(ACN)
HPLCグレート水で2Lにする。
WAVE溶液D:溶液D(75%ACN)
2Lの調製物:500mlHPLCグレート水 アセトニトリル(ACN)で2Lにする。
【0193】
C.装置および備品
【表5】

【0194】
実施例2.手順段階I:患者検体由来のDNAおよび/またはRNAの調製Puregene(商品名)DNA抽出キットを使用して、全血またはリンパ球からDNAを抽出した。これらの試薬を使用して抽出したDNAは、アッセイに特異的な条件下で首尾よくPCR増幅されるはずである。プロトコール中で特定したアッセイの実行および確認済みのポジティブDNAコントロールを用いて得られた結果との比較によってこれを試験する。抽出したDNAを定量し、260/280比は1.4以上得ある。より低い比のサンプルは、DNAの品質が不十分であり、PCR標準を満たさないことを示す。アッセイの最終結果が解釈されない場合、サンプルを再抽出すべきである。
【0195】
段階II:PCRによるDNAの増幅PCR反応混合物およびサイクリングパラメータ(例えば、PKD−1遺伝子のエクソン1)を、表5に例示のように調整する。PCR条件を同様に調整するが、他のエクソンの特異的且つ効率的な増幅について至適化する。
【0196】
【表6−1】

【0197】
1つのワックスビーズを各ウェルに添加し、80℃で5分間サーマルサイクラー中にてインキュベートしてワックスを溶かし、25℃でさらに5分間インキュベートし、さらなる操作のために氷上に置く。
【0198】
【表6−2】

【0199】
【表6−3】

【0200】
【表7】

【0201】
【表8】

【0202】
PCR増幅フラグメントを、確認済みのポジティブコントロールDNAコントロールと、サイズ、シグナル強度、および移動パターンについて比較することができる。PCR増幅フラグメントのサイズを、ゲル上の分子量マーカー(DNAMASS(商標)Ladder−GibcoBRL)との比較によって決定する。範囲の狭いDNA分子量ラダーにより、臭化エチジウムでのゲルの染色により二本鎖(100〜2000bp)DNAの6つのバンドが得られる。
【0203】
段階III:PCR産物のDHPLC分析PCR増幅産物によって形成されたヘテロ二重鎖を、Transgenomic,Inc.(Omaha、NE68164)のWAVE核酸フラグメント分析システムを使用して分析する。
【0204】
段階IV:サイクル配列決定表9および10は、本発明の1つの実施形態で使用した配列決定条件の例を提供する。
【0205】
【表9】

【0206】
【表10】

【0207】
実施例3.結果のまとめ1つの実験では、PKD−1遺伝子のエクソン1〜34中の変異の検出を、以下のサイズのDNAフラグメントを増幅するための8つの異なる第1ラウンドのPCR反応中の8セットのオリゴヌクレオチドプライマーの使用によって行った。a)LR1は2.2kbであり、エクソン1を含む、b)LR2は4.6kbであり、エクソン2〜7を含む、c)LR3は4.2kbであり、エクソン8〜12を含む、d)LR4は4.4kbであり、エクソン13〜15を含む、e)LR5は3.4kbであり、エクソン15(3’末端)〜21を含む、f)LR6は0.3kbであり、エクソン22を含む、g)LR7は4.2kbであり、エクソン23〜28を含む、h)LR8は5.8kbであり、エクソン29〜34を含む。第1ラウンドの増幅由来の増幅産物を1:104または1:105に連続希釈して、ゲノム汚染物を除去し、その後第2ラウンドのネスト化PCRでのテンプレートとして使用した。ネスト化PCR産物をヘテロ二重鎖にし、DHPLCにて配列の変化についてスクリーニングした。各フラグメントを、アンプリコンに特異的な温度およびアセトニトリル勾配を使用して正常およびポジティブコントロールに対して分析した。DHPLC分析によってポジティブな任意の試験サンプルを、精製および配列決定した。サイクル配列決定産物を、ABI377自動化シークエンサーで分離し、結果を、配列決定ソフトウェアの分類を使用して分析した。表11〜12および図1〜13は、本発明のいくつかの実施形態の結果および手順を示す。
【0208】
【表11】

【0209】
【表12】

【0210】
他の実施形態上記の実施例は、本発明を構築および実施した本発明者らによって実施および熟慮した実験を示す。これらの実施例には、本発明の実施技術の通告、およびその有用性の証明のために使用する技術の開示が含まれると考えられる。本明細書中に開示の技術および実施形態は好ましい実施形態のみであり、一般に、多数の等価な方法および技術を使用して同一の結果を達成することができることが当業者に認識される。図面および表を含む全ての出願書類、特許書類、および明細書で参照された文献は、その全体を参照することにより本明細書中に組み込むものとする。
【0211】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のPKD1遺伝子及びPKD2遺伝子の変異分析方法であって、
少なくとも一の第1の核酸プライマーおよび少なくとも一の第2の核酸プライマーの存在下で、反応混合物中においてPKD1遺伝子及びPKD2遺伝子の両方を含むサンプルをインキュベートするステップと、ここで、前記第1の核酸プライマーは配列番号1または2の配列にアニーリングするプライマー核酸配列を含み、前記第2の核酸プライマーは前記第1の核酸プライマーと逆方向であり、前記第1の核酸プライマーまたは第2の核酸プライマーは配列番号3〜49からなる群から選択される配列を含んでなり、前記インキュベーションにより、真のPKD1遺伝子産物を含むが、PKD1ホモログ産物及びPKD2遺伝子産物を含まない増幅産物が産生され、
前記増幅産物を変性させ、前記反応混合物中において二本鎖を再び作成するステップと、
前記二重鎖由来のヘテロ二重鎖の有無を検出するステップと
を含み、前記ヘテロ二重鎖の存在は前記PKD1遺伝子又はPKD2遺伝子中の潜在的な変異が存在することを示し、前記へテロ二重鎖の非存在は前記PKD1遺伝子及びPKD2遺伝子中の変異が存在しないことを示す、方法。
【請求項2】
ヘテロ二重鎖領域の配列を決定するステップと、前記ヘテロ二重鎖領域の配列と配列番号1または2とを比較するステップとをさらに含み、前記PKD1遺伝子又はPKD2遺伝子によってコードされるタンパク質の機能変化が予想される、配列番号1または2と比較した前記ヘテロ二重鎖領域の配列の相違は、前記PKD1遺伝子又はPKD2遺伝子の変異の指標となる、請求項1の方法。
【請求項3】
前記方法が、テンプレートとして前記第1の核酸プライマーおよび第2の核酸プライマーによって作製された前記増幅産物を使用してネスト化増幅反応を行うステップと、前記ネスト化増幅由来の増幅産物中で二重鎖を作製するステップとをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記ネスト化増幅反応を、配列番号3〜49およびその相補配列からなる群から選択される少なくとも一のプライマーを使用して行う、請求項3の方法。
【請求項5】
前記二重鎖由来のヘテロ二重鎖の有無の同定をDHPLCによって行う、請求項1の方法。
【請求項6】
前記ヘテロ二重鎖領域の配列をDNA配列決定によって決定する、請求項1の方法。
【請求項7】
前記PKD1遺伝子及びPKD2遺伝子を含むサンプルが、ゲノムDNA、cDNA、全RNA、mRNA、および細胞サンプルからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記インキュベーションステップが、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応(LCR)、および核酸特異性ベースの増幅からなる群から選択される増幅反応を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
1つまたは複数の制限酵素を使用して増幅産物がPKD特異的産物であるかを確認するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記制限酵素がPKD特異的産物を切断して、PKDホモログ産物と区別可能な消化パターンが得られる、請求項9の方法。
【請求項11】
前記制限酵素が、PstI、StuI、XmaI、MluI、PvuII、BssHII、FspI、MscI、およびBlnIからなる群から選択される、請求項9の方法。
【請求項12】
常染色体優性多発性嚢胞腎を示唆するヘテロ二重鎖を検出するための方法であって、
(a)1の核酸プライマーおよび第2の核酸プライマーの存在下で、反応混合物中においてPKD1遺伝子及びPKD2遺伝子の両方を含むサンプルをインキュベートするステップであって、前記第1の核酸プライマーは配列番号1または2にアニーリングするプライマー核酸配列を含み、前記第2の核酸プライマーは前記第1の核酸プライマーと逆方向であり、前記第1の核酸プライマーまたは第2の核酸プライマーは配列番号3〜49からなる群から選択される配列を含んでなり、前記インキュベーションにより、真のPKD1遺伝子産物を含むが、PKD1ホモログ産物及びPKD2遺伝子産物を含まない増幅産物が産生され、
(b)前記増幅産物を変性させ、前記反応混合物中において二本鎖を再び作成するステップと、
(c)前記二重鎖由来のヘテロ二重鎖の有無をDHPLCにより検出するステップと、
(d)前記ヘテロ二重鎖領域の配列を決定するステップと
を含み、配列番号1または2と比較した前記ヘテロ二重鎖領域における変異の存在は、前記個体がPKD常染色体優性多発性嚢胞腎を罹患していることを示す、方法。
【請求項13】
前記配列をDNA配列決定によって決定する、請求項12の方法。
【請求項14】
テンプレートとして前記第1の核酸プライマーおよび第2の核酸プライマーによって作製された前記増幅産物を使用してネスト化増幅反応を行うステップと、前記ネスト化増幅由来の二重鎖を作製するステップとをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項15】
前記ネスト化増幅反応を、配列番号3〜49およびその相補配列からなる群から選択されるプライマーを使用して行う、請求項17の方法。
【請求項16】
前記サンプルが、ゲノムDNA、cDNA、全RNA、mRNA、および細胞からなる群から選択される、請求項12の方法。
【請求項17】
前記増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応(LCR)、および核酸特異性ベースの増幅からなる群から選択される、請求項12の方法。
【請求項18】
前記特異的に増幅した産物を1つまたは複数の制限酵素を使用して実証するステップをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項19】
前記制限酵素がPKD特異的産物を切断して、PKDホモログ産物と区別可能な消化パターンが得られる、請求項21の方法。
【請求項20】
前記制限酵素が、PstI、StuI、XmaI、MluI、PvuII、BssHII、FspI、MscI、およびBlnIからなる群から選択される、請求項19の方法。

【図1】
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【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図1−10】
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【図1−11】
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【図1−12】
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【図1−13】
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【図1−14】
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【図1−15】
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【図1−16】
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【図1−17】
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【図1−18】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図2−10】
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【図2−11】
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【図2−12】
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【図2−13】
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【図2−14】
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【図2−15】
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【図2−16】
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【図2−17】
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【図2−18】
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【図2−19】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−65988(P2009−65988A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1743(P2009−1743)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【分割の表示】特願2002−300040(P2002−300040)の分割
【原出願日】平成14年10月15日(2002.10.15)
【出願人】(502373190)アテーナ・ダイアグノスティクス,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】