説明

多発性硬化症患者の試料を分類するための手段および方法

本発明は一態様として、ヒト個体由来の細胞を分類するための方法を提供し、本方法は、I型インターフェロンへの曝露に典型的には反応性の該個体由来の細胞を含む試料を提供する工程、I型インターフェロンにより調節される経路の活性レベルを決定する工程、および決定された活性レベルに基づいて該細胞を分類する工程を含む。該試料中に存在する細胞は、好ましくは、該経路の活性レベルを決定する前にI型インターフェロンの存在下で培養される細胞である。即ち、活性は好ましくは、該培養前の該試料中の細胞の該経路の活性と比較される。好ましくは、この試料は、該試料の採集前にはI型インターフェロンで処置されていない個体由来である。好ましくは、本方法は、I型インターフェロンによる処置を開始する前に、該個体が企図される処置に対する良好、正常または不良な反応者であるかを決定するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インターフェロン類(IFN)は、ウイルス、細菌、寄生虫および腫瘍細胞等の外来病原体による攻撃に反応して免疫系の細胞により産生される天然タンパク質である。今日では、インターフェロン類は、ヘアリーセル白血病、悪性黒色腫、およびAIDS関連カポジ肉腫等の悪性疾患、慢性B型およびC型肝炎、多発性硬化症、尖圭コンジローム、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染により引き起こされる生殖器および肛門周辺の疣贅、慢性肉芽腫性疾患、腎細胞癌(RRC)および重篤な悪性大理石骨病の処置に承認されている。他の悪性疾患、ウイルス介在疾患、および、慢性関節リウマチ等の自己免疫関連疾患に対するインターフェロン含有処置の臨床的利益を示す臨床試験が、係属中であるかまたは終了している。
【0002】
多発性硬化症(MS)は、進行性の神経学的機能不全により特徴付けられる、中枢神経系の一般的な炎症性疾患である。該疾患は、軽症から重症までの脱髄疾患に亘る臨床徴候に反映される、雑多な特質を有する。現在、治癒力のある治療は存在せず、そして罹った個体の大多数は最終的に身体障害者となる(1)。
【0003】
IFN類は、再発寛解型MS(RRMS)に臨床効果を示す最初の薬剤であった。インターフェロンβ(IFNβ)は臨床的再発を減少させ、脳疾患の活性を減らし、そして、身体障害の進行を恐らく遅らせる。しかしながら、治療には、インフルエンザ様症状および一過性検査所見異常を含む多数の有害反応を伴う。さらに、IFNβに対する反応は不完全であり、即ち、疾病活性は約3分の1しか抑制されない(2)。臨床経験から、IFN「反応者」と同様に「非反応者」がいることが示唆される(3,4)。予測バイオマーカーの不在下では、誰が治療に反応性であり、そして不便とコストが重大な場合に誰を処置するべきかが疑問として残る。
【0004】
IFNβに対する非反応性の一部は免疫原性により説明することができる。IFN処置に反応して発現する抗体は結合抗体または中和抗体として特徴付けられてきた。しかしながら、全ての患者が中和抗体(Nab)を発現する訳ではなく、かつ、誘導されても、Nabは時間をかけて出現するため(5〜8)、非反応性を説明するには他の機構がかかわっている可能性がある。
【0005】
正常な生理機能下では、IFN類は、細胞表面上のマルチサブユニット受容体IFNAR-1およびIFNAR-2へ結合し、それにより分岐した2つの経路より出現する細胞内二次メッセンジャーの複雑なカスケードを開始することによりその生物学的効果を生じる。一つの経路は、転写因子ISGF3(IFN刺激遺伝子因子3)、リン酸化されたシグナル伝達因子および転写アクチベーター(Signal Transducer and Activator of Transcription; STAT)2とSTAT1の複合体、および多数の遺伝子中に存在するIFN刺激反応因子(ISRE)に結合するIFN調節因子9(IRF-9; p48)の活性化に到る(9,10)。他方の経路は、IFNガンマ活性化配列(GAS)反応因子に結合する、STAT2/1およびSTAT2/3へテロダイマー並びにSTAT1ホモダイマー(IFNα-活性化因子、AAF)が関与している(10-13)。最終的に、ISREおよびGAS増幅因子のIFNにより誘導される活性化は、広く多様な遺伝子を活性化し(14)、特異的な転写の変化へと通じる。
【0006】
I型インターフェロンに反応する可能性に応じて細胞を分類することを可能にするバイオマーカーの開発に対する明らかな要望が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ヒト個体由来の細胞を分類する方法であって、I型インターフェロンへの曝露に典型的には反応性の該個体由来の細胞を含む試料を提供する工程、I型インターフェロンにより調節される経路の活性レベルを決定する工程、および該細胞を決定された活性レベルに基づいて分類する工程を含む方法を提供する。該経路が活性化経路を含み、かつ該活性化経路が遺伝子の転写活性化を含むことが好ましい。本発明の重要な応用としては、該個体のI型インターフェロンによる処置が成功する可能性が高いかどうかを決定することである。不良な反応者と分類された細胞を有する個体は、I型インターフェロンによる処置に良く反応しない可能性がある。
【0008】
本発明の好ましい方法はさらに、該経路の活性レベルを決定する前に、該細胞をI型インターフェロンの存在下で培養することを含む。
【0009】
好ましい態様において、該個体は自己免疫疾患を患っているか患う危険がある。自己免疫疾患という用語は、通常体内に存在するか、または通常体内に存在する物質を模倣する抗原に対する免疫応答により特徴付けられる疾患を指す。典型的な自己免疫疾患は多発性硬化症(MS)、クローン病、および慢性関節リウマチを含む。インターフェロンで処置され、かつ本発明の方法に従って細胞を分類することが有益なその他の疾患は、ヘアリーセル白血病、悪性黒色腫およびAIDS関連カポジ肉腫等の悪性疾患;慢性BおよびC型肝炎;多発性硬化症;尖圭コンジローム、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染により引き起こされる生殖器および肛門周囲の疣贅;慢性肉芽腫性疾患、重篤な悪性大理石骨病、慢性ウイルス性肝炎、多発骨髄腫等の血液学的悪性疾患、並びに腎細胞癌である。慢性ウイルス性肝炎、血液学的悪性疾患および腎細胞癌はIFNαで処置されるのに対し、MSおよび多発性骨髄腫はIFNβで処置される。本発明の方法の適用が好ましい自己免疫疾患は多発性硬化症(MS)、より好ましくは再発寛解型MSである。
【0010】
多発性硬化症等の自己免疫疾患を患っている、または患う危険のある個体においては、I型インターフェロンへの曝露に対して典型的には反応性である細胞の反応性が処置前に異なっていることが見出された。この差異は、該I型インターフェロンによる処置に対する個体の反応性を示唆し、そしてI型インターフェロンにより調節される経路の活性レベルを決定することにより決定することができる。試料は好ましくは、決定された活性レベルに基づいて、該I型インターフェロンによる処置に対し非反応性または反応性である可能性が高い、低いまたは中間の個体由来のものとして分類される。
【0011】
I型インターフェロンへの曝露に対する反応は臨床的に決定することができる。当分野において幾つかの基準が知られており(3,4)、臨床反応を決定するのに使用することができる。好ましい基準は、総合障害度評価尺度(EDSS)における変化、治療の開始2年前および2年後の再発率の差異、および/または磁気共鳴画像法により測定される新T2病変の形成を決定することである。非反応性は、インターフェロンへの曝露から6ヶ月後のEDSSの増大および/またはインターフェロンに対する曝露の間の1回もしくは複数回の再発により決定される増大した無能力によって好ましくは決定される。
【0012】
種々のI型インターフェロンが存在する。最も著名なものは天然に生じるインターフェロンα(IFNα)およびインターフェロンβ(IFNβ)である。しかしながら、元のインターフェロンの活性を保持する多数の異なるバリアントが作られてきた。例えば、完全に人工的なI型インターフェロンが、インターフェロンαおよびβのアミノ酸組成物より生み出された。この分子は「コンセンサス」インターフェロンと名付けられた。本発明では、インターフェロンα、インターフェロンβ、または、活性量は必ずしも同じでなくてもよいが、少なくともI型インターフェロンと種類として同じ活性を有するそれらの機能的部分、誘導体および/もしくはアナログであれば、その分子はI型インターフェロンと呼ばれる。IFNの機能的部分とは、種類としてIFN自体と同じ遺伝子活性の調節活性を含むIFNの一部である。このような部分の活性量は完全タンパク質の活性とは異なっていても良い。当業者であれば、IFNの好適な誘導体を作出することができる。誘導体は、例えば、保存的アミノ酸置換により取得でき、実際、現在処方されているヒトインターフェロンは天然ヒトインターフェロンとそのアミノ酸配列がやや異なっている。市販されているI型インターフェロンの例としては:インターフェロンβ1aの液体形、Rebif(商標);インターフェロンβ1aの凍結乾燥形、Avonex(商標);インターフェロンβ1a(Avonex(商標))のジェネリック/生物学的同等形、Cinnovex(商標);インターフェロンβ1b、Betaseron(商標);標準インターフェロン-α2a、Roferon A(商標);標準インターフェロン-α2b、Intron-A(商標);および、ペグ化インターフェロンα2a、Pegasys(商標)が挙げられる。本発明のI型インターフェロンは従って、例えば、PEGの付加により化学的に修飾されていてもよい。
【0013】
IFNの好適な部分とは、例えば、改変されたグリコシル化パターンを持つ部分または非グリコシル化部分である。グリコシル化は分子のグリコシル化部位を除くか、または変化させることにより防ぐことができる。このような(部分的に)脱グリコシル化されたIFNの産生がアミノ酸組成の変化を必要とする場合、このような脱グリコシル化IFNは、IFNの機能的部分の誘導体である。IFNの機能的部分、誘導体および/またはアナログは、種類として同じ活性を含むが、活性量としては必ずしも同じでない。
【0014】
一般に、IFNは、サイトカイン産生のプロファイルを抗炎症表現型のプロファイルへと調節してもよく(例えば、IL-10のアップレギュレーションにより)、これは全身循環系内およびCNS内で起こるようである。全I型インターフェロン(インターフェロンαおよびインターフェロンβ)は、それらの効果をI型インターフェロン受容体(IFN-R1)を介して発揮する。IFNの機能的部分、誘導体および/またはアナログは従って、好ましくは、量においては必須でないが種類においてIFN-R1を介した同じシグナリング活性を含む。本発明では、インターフェロンβが本発明の方法の有効性を証明するのに使用されたが、しかしながら、代替のI型インターフェロン(例えば、インターフェロンα)もまた有効である。
【0015】
I型インターフェロンの活性様式は哺乳動物界において広く保存されている。ラットインターフェロンはヒト細胞に対して活性を有する。ヒトおよび霊長類IFNはヒトで活性である。好ましい態様において、該I型インターフェロンは霊長類のI型インターフェロンまたはその機能的部分、誘導体および/もしくはアナログである。特に好ましい態様では、該I型インターフェロンは、ヒトI型インターフェロンである。好ましくは、該I型インターフェロンは、インターフェロンβ、または、その機能的部分、誘導体、アナログおよび/もしくは等価物である。
【0016】
多くの細胞が、I型インターフェロンに対して反応性である。「I型インターフェロンへの曝露に対して典型的には反応性である細胞」という文言は、正常(健康)な個体より得られ、通常の量/濃度に曝露された場合にI型インターフェロンに反応性の型の細胞を意味する。このような細胞のこれらに限定されない例には、口内粘膜切屑中に存在するような頬の細胞、およびケラチノサイト等の上皮細胞が含まれる。細胞試料の好ましい例は、血液または総血液細胞の試料である。好ましくは、試料は、I型インターフェロンへの曝露に対して典型的には反応性である末梢血単核細胞(PBMC)またはその細胞画分を含む。このような細胞の特に好ましい例は末梢単球、B細胞およびT細胞である。
【0017】
本発明の方法は特に、多発性硬化症を患っているかまたは患う危険のある個体の試料または細胞の分類に好適である。
【0018】
多発性硬化症を患っているかまたは患う危険のある個体の、I型インターフェロンによる処置に対する反応性は、該処置前にI型インターフェロンにより調節される経路の活性の基準レベルと逆比例して関連している。処置前の該経路の活性が増大していれば、該処置に反応する可能性は減少し、ここで、該活性は、例えば、多発性硬化症を患わない個体または多発性硬化症を患っているが該処置に対して反応性の個体由来の細胞を含む参照試料の活性に対して比較される。閾値を反応者および非反応者から得られたデータに基づき設定することができる。経路の基準活性レベルが該閾値より上の値の場合、該反応性は、非反応性である危険性が高いとして分類され得る。基準活性が該閾値より下の値の場合、該反応性は、反応性である可能性が高いとして分類され得る。導かれた分類の信頼性に依存して、ヒト個体由来の細胞を分類するのに、複数の任意の閾値を設定し得ることが当業者には明らかである。
【0019】
I型インターフェロンにより調節される経路の活性レベルは、当分野において公知の多数の手法により測定できる。公知の方法は、STAT1、STAT2およびIRF7等のシグナリング介在分子の細胞局在またはリン酸化レベルを、抗体、および例えば共焦点顕微鏡または蛍光活性化細胞分取により決定し、そして例えばインターロイキン6および15、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL8(MCP-2)、CCL19、並びにCXCL9、10および11等のインターフェロンにより制御されるサイトカインの血清レベルを複合免疫分析を用いて決定することを含む。好ましい態様において、該活性レベルは、該細胞における表2中の少なくとも1つの遺伝子、LGALS3BPまたはSiglec-1の発現レベルを決定することにより決定される。本発明において、表2に示される遺伝子、LGALS3BPおよびSiglec-1は、I型インターフェロンにより調節される経路の活性レベルを示すことが見出され、従ってそのため、該活性を決定するのに使用することができる。
【0020】
発現レベルを決定するための好ましい方法は、該細胞中のRNAレベルを決定することである。本発明では、該細胞中のRNAレベルが、表2の少なくとも1つの遺伝子、LGALS3BPまたはSiglec-1について決定されることが好ましい。好ましくは、表2の少なくとも1つの遺伝子、LGALS3BPまたはSiglec-1は少なくとも-0.65のR値を有する。好ましくは、表2の少なくとも5個、そして好ましくは10個、より好ましくは15個の遺伝子の該細胞中のRNAレベルが決定される。決定のための遺伝子数を増やすことにより分類の精度が増大する。好ましくは、該5、10または15個の遺伝子は該表中で少なくとも-0.65のR値を含む。少なくとも-0.65のR値で表に示される全15個の遺伝子を本分析に使用することができる。5個より少ない遺伝子のRNAレベルが決定される場合、決定されるRNAレベルの少なくとも1つがRSAD2のレベルを含むことが好ましい。少なくとも5個の遺伝子のRNAレベルが決定される場合、少なくともRSAD2(Viperin)、IFIT1(別名G10P1、IFI56、RNM561)、MX1(別名MxA、IFI78)、G1P2(別名ISG15、IFI15)およびImage: 1926927のRNAレベルが決定される。別の好ましい態様では、少なくとも遺伝子RSAD2、IFIT1、MX1、ISG15、EPSTI1、IRF7、LY6E、OAS1、OAS3、SERPING1の遺伝子または遺伝子産物が測定される。これらは、既に好適な表2の最初の5個よりも一層良い結果を提供する。別の好ましい態様では、表2の最初の10個の遺伝子および/または遺伝子産物が測定される(即ち、RSAD2からLY6Eまで)。これらもまた、既に好適な表2の最初の5個よりも一層良い結果を提供する。
【0021】
従って、好ましい態様において、該試料は、該I型インターフェロンによる処置の開始前に該個体より得られた試料である。一度処置が開始されれば、個体の反応性を追跡しかつ/または決定するために、遺伝子サインもまた使用できる。この後者の場合、該試料は、該I型インターフェロンによる処置開始前および開始後の両方において個体より得られた試料を含むことが好ましい。
【0022】
本発明の方法中の分類は、好ましくは、決定された活性レベルを参照と比較することにより行われる。参照は、該個体の他の細胞試料の該経路の決定された活性レベルであり得る。この場合、該試料のうちの1つがI型インターフェロンによる処置開始前に採集され、かつ該試料の他方が該処置の開始後に採集されていることが好ましい。好ましくは、本発明の方法はさらに、I型インターフェロンによる処置を受けている間、該活性レベルを、該患者から細胞試料中の該経路の活性レベルと比較することを含む。別の好ましい態様では、試料中の細胞は2つの画分に分けられ、該経路の活性レベルは、該画分の両方の細胞について決定され、ここで、該画分のうち第一の画分は未処置細胞(休止細胞)を含み、かつ該画分のうち第二の画分は、該経路の活性レベルを決定する前にI型インターフェロンの存在下で培養された細胞を含み、該方法はさらに、該2つの画分中の活性レベルの比較に基づいて該細胞を分類することを含む。未処置細胞は、採集後直接凍結された細胞でもよい。未処置細胞はまた、血清および/または最終試料中の他の細胞から凍結前に分離されてもよい。未処置細胞はまた、全血試料であってもよい。細胞は培養されてもよいが、しかしながら、「未処置」のままとするため、I型インターフェロンと一緒に培養してはならない。試料がタンパク質試料である場合、未処置の試料は血清試料であることが好ましい。
【0023】
別の好ましい態様において、休止およびI型インターフェロン(好ましくはIFNβ)で処置した精製PBMCの間で、発現レベルが比較される。好ましくは、該PBMCは同じ試料由来であり、該試料の一部は休止PBMCに相当する。該試料の別の部分は、本発明に従って、I型インターフェロン(好ましくはIFNβ)の存在下で培養され、I型インターフェロン(好ましくはIFNβ)で処置した精製PBMCに相当する。この態様では、該試料が、試料採集時にインターフェロンで処置されていない個体由来の試料であることが特に好ましい。好ましくは、該個体は、好ましくは該個体がMSについてI型インターフェロンにより処置されるべきかどうか決定するために、I型インターフェロン反応性について予めスクリーニングされる個体である。遺伝子RSAD2、MxAおよびSTAT1について比較のための発現レベルが決定されることが好ましい。好ましくは、定量的PCRの手段により、好ましくは定量的リアルタイムPCRの手段により、該発現レベルが決定される。
【0024】
遺伝子セットの発現プロファイルは、多様な方法を用いて決定され得る。ノーザンブロット解析等のRNA発現レベルを決定するための方法が、当分野において公知であり、かつ本発明に適用することができる。好ましい例は、PCR等の定量的増幅方法、および、相当するRNA群についてのプローブを含む(マイクロ)アレイの使用を含む方法である。好ましいPCRに基づく方法は、マルチプレックスPCRおよび多重連鎖反応依存性プローブ増幅を含む。アレイ形式は特に、この目的に有用である。アレイ形式を使用すると、I型インターフェロンによる処置への反応が高い、低い、または中程度の可能性を有する個体間で区別する遺伝子サインを作り出すことが可能である。
【0025】
マイクロアレイは、整列されたアレイ上に個々の遺伝子由来のDNA断片が配置された固体支持体からなる。これらのアレイは、細胞mRNAから調製された蛍光cDNAプローブとハイブリダイズされる。2つの型のマイクロアレイが最も一般的に使用される。一つは、写真平板マスキング技術を用いて、インサイチューオリゴヌクレオチド合成により製造されるオリゴヌクレオチドを含む。この型では、遺伝子は、その中央における単一塩基のミスマッチを除いて同一である完全なマッチおよびミスマッチをそれぞれが含む11から16個のオリゴヌクレオチド(25mer)により代表される。別の型のマイクロアレイは、顕微鏡ガラススライド上に印刷される別個の遺伝子を代表する個々の要素を有する、cDNA(PCR産物)またはオリゴヌクレオチドのより長い配列(20〜2000bp)からなる(15〜16)。
【0026】
マイクロアレイへのcDNAプローブのハイブリダイゼーションの結果、マイクロアレイ上の公知の位置にある対応する遺伝子配列との特異的な塩基対が形成される。洗浄後、各DNAスポットにおける蛍光cDNAプローブの特異的ハイブリダイゼーションシグナルを、共焦点走査装置を用いて定量する。スキャンされたイメージは、遺伝子発現マトリックスに変換される。続いて、データを分析するため、種々のバイオインフォマティックスソフトウェアを適用することができる。データ分析には、実験内および実験間の偏りを減らすため、データの標準化が含まれる。
【0027】
RNA発現レベルを決定するための好ましい方法は、TaqmanリアルタイムPCRに基づく標的クラスおよび経路研究のための、予め充填されたカスタム仕様可能な384ウェルのマイクロ液体カードであるTaqman低密度アレイ(TLDA; Applied Biosystems)を含む。カスタム仕様のTLDAカードは、所望の遺伝子を測定するのに使用することができる。このハイスループット系を使用することにより、最高8つの試料について、最少量の試料を用いて全ての遺伝子の発現を同時に分析することができる。
【0028】
表2の少なくとも一つの遺伝子、LGALS3BPまたはSiglec-1の発現レベルを決定するための代わりの方法は、タンパク質発現レベルを決定することによる。該タンパク質発現レベルは、当業者に公知のいずれの方法により決定してもよく、これに限定されないが、ウェスタンブロット法、フローサイトメトリー、免疫組織化学、および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を含む。好ましい方法はフローサイトメトリーおよび/またはELISAを含む。
【0029】
本発明はさらに、表2の少なくとも5個、そして好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも15個の遺伝子のRNAに特異的なプローブまたはプライマーのセットを含む部分のキットを提供する。好ましくは、該少なくとも5、10、または15個の遺伝子は、該表中少なくとも-0.65のR値を各々含む。
【0030】
本発明はさらに、多発性硬化症を患っているかまたは患う危険性のある個体の試料を分類するための、本発明に係るキットの使用を提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、I型βインターフェロンによる治療に反応する能力が低い個体として、個体を分類する方法を提供する:
該個体由来のタンパク質を含む試料中の1種または複数種のタンパク質または糖タンパク質のレベルを決定する工程、
決定された1つまたは複数のレベルを、I型βインターフェロンによる治療への反応の低下と関連付けられた予め決定された1つまたは複数のレベルと比較する工程、および
該個体がI型βインターフェロンによる治療に反応する能力が低いかを、比較に基づき評価する工程。
【0032】
本発明のこの態様では、該試料が体液試料であることが好ましい。好ましくは血液試料である。より好ましくは該個体の血清または血漿試料である。好ましい態様において、表2の遺伝子、LGALD3BPまたはSiglec-1によりコードされるタンパク質のレベルが決定される。好ましい態様においては、遺伝子LGALD3BPによりコードされるタンパク質のレベルが決定される。
【0033】
本発明はさらに、以下の工程を含む、I型インターフェロンによる治療に反応する能力が低い個体として、個体を分類する方法を提供する:
該個体由来の核酸試料中で、IFR5遺伝子における、I型インターフェロンによる治療への低下した反応と関連付けられる1つまたは複数の多型を決定する工程、および
該1つまたは複数の多型の遺伝子型に基づき、該個体がI型インターフェロンによる治療に反応する能力が低いかどうかを決定する工程。
【0034】
好ましい態様において、該1つまたは複数の多型は、図10に図示されるようなエクソン6中のSNP rs2004640中、SNP rs4728142中の多型、または30bpの挿入-欠失多型を含む。臨床データ(治療開始前の2年間対治療開始後2年間に測定されたEDSSスコアおよび/または再発率)に基づいて、患者を良好または不良反応者(または未決定者)に分類した場合、rs2004640のT対立遺伝子について同型接合性、かつ/またはrs4728142のA対立遺伝子について同型接合性の患者群において高い割合で不良な反応者が見られる。
【0035】
rs2004640のTT遺伝子型は、低い/不良な生物学的反応に関連する。
rs2004640のTT遺伝子型は、低い/不良な臨床反応に関連する。
rs4728142のAA遺伝子型は、低い/不良な生物学的反応に関連する。
rs4728142のAA遺伝子型は、低い/不良な臨床反応に関連する。
rs2004640のTT遺伝子型は、遺伝子セットのIFN反応遺伝子の高いベースラインレベルに関連する。
rs4728142のAA遺伝子型は、遺伝子セットのIFN反応遺伝子の高いベースラインレベルに関連する。
5bp CGGGG欠失について同型接合性の患者は、低い/不良な生物学的反応を示す。
5bp CGGGG欠失について同型接合性の患者は、不良な臨床反応を示す。
【0036】
好ましい態様では、個体がI型インターフェロンによる処置への良好または不良な反応者であるかを示すために、複数の多型が決定される。示された多型のハプロタイプを決定し、決定されたハプロタイプに基づいて個体の細胞を分類することが好ましい。この態様では、ハプロタイプ1(rs4728142(A)rs2004640(T)エクソン6indel(del)rs10954213(A))は不良/低い生物学的反応に関連し、ハプロタイプ8(rs4728142(G)rs2004640(G)エクソン6indel(in)rs10954213(G))は良好/高い生物学的反応に関連する。従って、一態様において本発明は、図10に示されるように、個体がI型インターフェロンによる処置に対する良好、不良、または普通の反応者であるかを決定するための多型の使用を提供する。好ましい態様において、該多型は、図11に示されるようにrs4728142、rs2004640、エクソン6indel(del)もしくはエクソン6indel(in)、またはrs10954213の多型である。好ましい態様において、示された多型のうちの少なくとも2個、および好ましくは少なくとも3個、およびさらに好ましくは全ての多型について、ハプロタイプが決定される。多型はまた、本発明において、相補鎖が分析される場合にも決定される。この場合、上述される相関および予測は、勿論、対応する相補ヌクレオチドの存在と関連づけられる。結びつける特徴は、これらの多型が全てIRF5遺伝子の中または近くに位置している点にある。この遺伝子はさらに多型部位を示す可能性があるので、当業者であれば、示された多型と良く相関するさらなる多型部位を見出すこともできる。従って、本発明は、以下の工程を含む、I型インターフェロンによる治療に反応する能力が低い個体として個体を分類する方法を提供する:
該個体由来の核酸試料中で、IRF5遺伝子に関連するさらなる多型部位を決定する工程、および
該さらなる多型部位が、図10中に示される多型と90%以上相関する1つまたは複数の多型を示すかどうか決定する工程。
【0037】
本発明はさらに、IFR5遺伝子の対立遺伝子を区別し、かつ図10および上記において示されるようにI型インターフェロンによる処置の不良または良好な反応者に関連する多型と90%以上相関する多型を、I型インターフェロンによる治療に反応する能力が低い、正常な、または良好な個体として個体を分類するために使用することを提供する。
【0038】
本発明はさらに、IFR5のエクソン6中の、SNP rs2004640、SNP rs4728142中の多型、もしくは30bpの挿入-欠失多型、または、IFR5遺伝子に関連し、図10および上記において示されるようにI型インターフェロンによる処置の不良または良好な反応者に関連する多型と90%以上相関する多型に特異的なプローブまたはPCRプライマーのセットを含む、本発明に係る方法において使用するためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】MS患者におけるIFNβ治療への生物学的反応。遺伝子発現率をセンタリングせず、二元階層クラスター解析後の中央発現率に関して少なくとも2倍の遺伝子発現率(生物学的反応)の差異を示す遺伝子を表すツリービュー。治療後にアップレギュレートされた遺伝子は赤色、ダウンレギュレートは緑色、および治療後発現に何の変化も示さない遺伝子は黒で示される。
【図1B】IFN誘導遺伝子のクラスター。患者群内で類似の生物学的反応プロファイルに基づいて一緒にクラスター形成する遺伝子の選抜。遺伝子は0.925の相関で一緒にクラスターを形成し、IFNにより誘導されることが知られている。このIFNクラスター中の全遺伝子の平均発現率は、生物学的IFN反応と呼ばれる。
【図2】ベースライン遺伝子発現レベルおよびIFNβ治療への生物学的反応との間の相関。IFN誘導遺伝子セットの、ベースライン上の平均発現レベルおよび平均生物学的反応を計算し、互いに相関して、結果として有意の負の相関を得た;図1B中に記載されるようなIFNクラスター;15個の遺伝子のB選抜。
【図3】ベースラインRSAD2遺伝子発現レベルおよび22人の個体群におけるIFNβ治療への生物学的反応の間の相関。定量的リアルタイムPCRにより測定されるRSAD2の相対的ベースライン発現レベルが横座標軸に示される。縦座標軸は、生物学的反応(IFNβ治療開始前のRSAD2の遺伝子発現レベルをIFNβ治療開始後(=治療中)のRSAD2の遺伝子発現レベルで割った)を示す。
【図4】SNP rs2004640の遺伝子型GG、GT、およびTTの患者における、表2の上から10個のI型IFN反応遺伝子のセット(RSAD2、IFIT1、MX1、ISG15、EPSTI1、IRF7、LY6E、OAS1 、OAS3、SERPING1)のベースラインにおける平均遺伝子発現レベル。T対立遺伝子について同型接合性の患者は、異型接合性の患者より有意に高いベースラインI型IFN反応遺伝子発現(P=0.0198)を有した。rs2004640のTT遺伝子型は、遺伝子セットのIFN反応遺伝子の高いベースラインレベルに関連する。
【図5】IFN-bによる薬理学的介入後の、表2の上から10個のI型IFN反応遺伝子のセット(RSAD2、IFIT1、MX1、ISG15、EPSTI1、IRF7、LY6E、OAS1 、OAS3、SERPING1)の、SNP rs2004640の遺伝子型GG、GT、およびTTにおける平均遺伝子発現レベル。異型接合性の患者(P=0.0057)およびG対立遺伝子について同型接合性の患者(0.0340)に対し、T対立遺伝子について同型接合性の患者では有意に減少した生物学的反応が観察された。
【図6】SNP rs4728142の遺伝子型GG、GT、およびTTの患者中における、表2の上から10個のI型IFN反応遺伝子のセット(RSAD2、IFIT1、MX1、ISG15、EPSTI1、IRF7、LY6E、OAS1 、OAS3、SERPING1)のベースラインにおける平均遺伝子発現レベル。A対立遺伝子について同型接合性の患者は、異型接合性の患者より有意に高いベースラインI型IFN反応遺伝子発現(P=0.0394)を有する。
【図7】SNP rs4728142の遺伝子型GG、GT、およびTTにおける、IFN-bによる薬理学的介入後の、表2の上から10個のI型IFN反応遺伝子のセット(RSAD2、IFIT1、MX1、ISG15、EPSTI1、IRF7、LY6E、OAS1 、OAS3、SERPING1)の平均遺伝子発現レベル。異型接合性の患者(p=0.1198)およびG対立遺伝子について同型接合性の患者(p=0.1421)に対し、A対立遺伝子について同型接合性の患者は、低い生物学的反応を有する。
【図8】IFNβによる処置前および処置後の15人のMS患者のLGALS3BPの発現レベルは、処置後殆どの患者において発現がアップレギュレートされていることを示す。
【図9】ベースラインLGALS3BP遺伝子発現レベルと、15人の個体群のIFNβ治療への生物学的反応の間の相関。LGALS3BPの相対的ベースライン発現レベルを横座標軸に示す。縦座標軸は、生物学的反応(IFNβ治療開始前のLGALS3BPの遺伝子発現レベルをIFNβ治療開始後(=治療中)のLGALS3BPの遺伝子発現レベルで割った)を示す。
【図10】多型の特性。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実施例
実施例1(van Baarsen LG, Vosslamberら、PLoS ONE. 2008も参照)
患者
臨床的に明確な再発寛解型MSの16人のオランダ人患者(10人の女性および6人の男性)の一群が、MS Centre Amsterdamの外来患者診療所より募集された。IFNβ治療開始時の平均年齢は40.6±7.7、平均EDSSは2.3±1.3(範囲1〜6)であった。血液試料を処置直前および治療開始から1ヶ月後に得た。患者は、Avonex(n=4)、Betaferon(n=7)、Rebif22(=2)、またはRebif44(n=3)を受けた。
【0041】
血液採取
PAXgene採血管(PreAnalytix, GmbH, ドイツ)および3本のヘパリン管(Beckton Dickinson, Alphen a/d Rijn, オランダ)に、各患者より血を抜き取った。血液採集後、ヘパリン管よりリンホプレップ(lymphoprep; Axis-Shiel, Lucron)密度勾配遠心を用いて新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)を分離するために、管は診療所より研究室へ1時間内に移された。PAXgene採血管は、全血液細胞の完全な溶解を確実にするため、室温(RT)で2時間貯蔵し、その後、RNA分離まで採血管は-20で貯蔵した。総RNAは貯蔵から7ヶ月以内に分離した。RNA分離前、採血管はRTで2時間解凍した。次に、ゲノムDNAを除くDNAse(Qiagen)工程を含む製造者の指示に従って、RNAをPreAnalytix RNA分離キットを用いて分離した。RNAの量および品質を、Nanodrop分光光度計(Nanodrop Technologies, Wilmington, Delaware, 米国)を用い、ゲノムDNAを除くDNAse(Qiagen)工程を含む製造者の指示に従って試験した。RNAの量および品質を、Nanodrop分光光度計(Nanodrop Technologies, Wilmington, Delaware, 米国)を用いて試験した。
【0042】
マイクロアレイハイブリダイゼーション
本発明者らは、Stanford Functional Genomics Facility (http://microarray.org/sfgf/)からの、アミノシラン被覆スライド上に印刷された〜17,000個の独特の遺伝子を含む43K cDNAマイクロアレイを用いた。最初に、DNAスポットをスライドに150〜300ミリジュールでUV-クロスリンクした。試料をハイブリダイズさせる前に、スライドは摂氏42度で15分間、40%超純粋ホルムアミド(Invitrogen, Breda, オランダ)、5%SSC(Biochemika, Sigma)、0.1%SDS(Fluka Chemie, GmbH, スイス)、および50μg/ml BSA(Panvera, Madison, 米国)を含有する溶液中でプレハイブリダイズさせた。プレハイブリダイゼーション後、スライドを軽くMilliQ水で流し、煮沸水および95% エタノール中で良く洗浄し、そして風乾した。上記の後加工およびプレハイブリダイゼーションが異なっている以外は、試料調製およびマイクロアレイハイブリダイゼーションは、以前記載されたように行われた(17)。
【0043】
マイクロアレイ分析
イメージ解析およびデータフィルタリングは、Stanford Microarray Database(18)(http://genome-www5.stanford.edu//)を用いて以前記載されたように行った(19)。マイクロアレイの統計分析(20)(Statistical Analysis of Microarrays; SAM)を、有意に異なって発現される遺伝子を決定するために用いた。過誤発見率(False Discovery Rate; FDR)が同等または5%より少ない場合に、遺伝子は有意に異なって発現されていると見なされた。調和して変化した遺伝子のクラスターを定義するために、クラスター解析(21)を用い、その後、データをツリービューを用いて可視化した。
【0044】
リアルタイムPCR
RNA(0.5μg)を、Revertaid H-minus cDNA合成キット(MBI Fermentas, St. Leon-Rot,ドイツ)を用いて、製造者の指示に従い、cDNAに逆転写した。定量的リアルタイムPCRを、ABI Prism 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems, Foster City, CA,米国)とSybrGreen(Applied Biosystems)を用いて行った。プライマーはPrimer Expressソフトウェアおよびガイドライン(Applied Biosystems)を用いて設計し、表4に列挙する。mRNAレベルの任意値を計算し、プライマー効率の差異を補正するため標準曲線を構築した。標的遺伝子の発現レベルは、同一のcDNA試料中で平衡して検出されたハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対して標準化した。
【0045】
インビトロ研究
新しく分離されたPBMCを、1%仔ウシ胎児血清(FCS; BioWhittaker, Cambrex)を含有するPBSを用いて洗浄し、各ウェル当たり2×106の密度で24ウェル培養プレートに平板培養した。細胞を、10ユニットの組換えIFNβ(Abcam, Cambridge,イギリス)で4時間刺激するか、または刺激せず、その後、Rneasy Qiagen RNA分離キット(Qiagen, Venlo,オランダ)を製造者の指示に従って使用して、RNAを分離した。ゲノムDNAを除くためにDNAse(Qiagen)工程を含めた。RNAの量および品質を、Nanodrop分光光度計(Nanodrop Technologies, Wilmington, Delaware, 米国)を用いて試験した。
【0046】
統計分析
Graphpad Prism 4ソフトウェアを用いて相関分析を行った。最初にデータを正規分布について試験した。データが正規試験を合格した場合、相関はピアソン相関を用いて試験された。データがノンパラメトリック分布の場合には、スピアマン相関を用いた。p値が0.05よりも少ない場合に、相関は有意であると判断した。
【0047】
実施例2(van Baarsen LG, Vosslamberら、PLoS ONE. 2008も参照)
MSにおけるIFNβ治療の薬理ゲノミクス
IFNβ治療の薬力学を理解するため、本発明者らは、治療の開始前および開始後1ヶ月の、16人のRRMS患者の末梢血遺伝子発現プロファイルを分析した。マイクロアレイの有意分析(Significant Analysis of Microarrays; SAM)(偽発見率(FDR)<5%)を用いた、治療前および後のデータの間の2クラス組合せ解析が、有意に異なる遺伝子を同定するために適用された。驚くべきことに、3つの遺伝子、「インターフェロンα誘導性タンパク質27」(IFI27)、「リングフィンガータンパク質36」(RNF36)、および「上皮間質相互作用タンパク質1(胸)」(EPST11)のみが、有意に異なって発現されているとして同定された。ゆえに、本発明者らは、IFNβへの生物学的反応は全体としてMS患者人口において低いかまたは無視できる程度であると結論付けた。この結果は、MSにおける最適下限のI型IFNシグナリングの発見と一致している(22)。
【0048】
MSの雑多な性質を考慮し、本発明者らは、全MSコーホートのIFNβ処置において観察されたインビボにおける不良な反応が、患者間の薬力学的反応性における差異を平均化したことを反映しているのではないかという疑問を持った。この仮定を検証するため、本発明者らは、個々の患者レベルで生物学的反応を調査し、各患者および各遺伝子について、治療前対治療後の遺伝子発現の割合を計算した(log-2比)。IFNβ誘導発現に患者間で差異のあった遺伝子を選択するために、二元階層(未管理)クラスター解析を用いた。この解析により、患者間でIFNβに対する生物学的反応に著しい多様性があることが示された。全部で126個の遺伝子が、遺伝子発現比において少なくとも2倍の差異を、少なくとも7人の患者において示した(図1A)。この解析は、IFNβ治療後、幾人かの患者がアップレギュレートされた遺伝子を示すのに対して、他の患者においては同じ遺伝子がダウンレギュレートされるか、または未変化であることを明らかにした。予期されたように、この遺伝子発現パターンの一部は、公知のIFN反応遺伝子(14)の発現と一致していた(図1B)。28個のIFN誘導遺伝子が密にクラスター形成し(r=0.925)、これらの遺伝子の関連した機能を示唆したが、患者間では異なった示差相対的反応比を示した。IFN誘導遺伝子の幾つかの発現データをリアルタイムPCRで確認したところ、マイクロアレイデータと良い相関を示した(表1A)。これらの発見は、RRMSの患者間において、IFNβの薬力学的効果にかなりの多様性が存在するという仮定を裏付ける。
【0049】
実施例3(van Baarsen LG, Vosslamberら、PLoS ONE. 2008も参照)
IFNβ治療の示差薬力学とIFN反応遺伝子のベースライン発現との間の関係
以前、本発明者らは、未処置RRMS患者間におけるI型IFN誘導遺伝子の発現の有意差を証明した(19)。ここでは本発明者らは、IFNβに対する異なるインビボ反応性とIFN誘導遺伝子のベースライン発現レベルとの間に関係が存在するかどうかを調査した。そのために、本発明者らは各患者について、I型IFN反応遺伝子クラスター(図1Bに示される)の治療前の発現レベルおよび治療後の反応比の間に関わりがあるかどうかを試験した。この解析は、28個のI型IFN遺伝子の平均ベースライン発現が、インビボにおいてIFN誘導された反応レベルと負に相関することを証明した(p=0.0049およびピアソンr=-0.6657)(図2A)。
【0050】
IFNβに対する薬理学的反応を最も良く予測する遺伝子セットを作製するため、本発明者らは、その発現が、ベースラインおよび生物学的反応の間で最も良い負の相関を示す遺伝子を選択した(p<0.01およびピアソンr<-0.65)(表2)。ベースラインにおける遺伝子選抜の潜在的偏りを排除するため、本発明者らは、選択された15個のIFN誘導遺伝子の平均生物学的反応と、アレイ上の全遺伝子のベースライン値との相関を分析した。その結果、IFNβ治療への薬力学反応と有意に相関する3個の追加の遺伝子(IFI44L、MT1E、およびIMAGE:1879725;ピアソンr<0.65および分散>1.00)を得た。これらの遺伝子は、先に選択された遺伝子と密にはクラスター形成しないが、IFNβの薬力学においては重要であるかもしれない。
【0051】
実施例4(van Baarsen LG, Vosslamberら、PLoS ONE. 2008も参照)
精製PBMCを用いたIFNβの薬力学
観察された薬力学的差異が末梢血細胞の異なった反応性によるものであり、中和抗体等の阻害性の血漿タンパク質の存在によるIFNβの低曝露によるものでないことを確認するため、本発明者らは、休止およびIFNβ処置精製PBMC中の選択された3個の公知のIFNβ反応遺伝子のセットおよびIFNβ自身の発現を定量的リアルタイムPCRで測定した。選択されたIFNβ反応遺伝子は次の通りである:(i)RSAD2(単一遺伝子レベルで生物学的反応対ベースラインの最も有意な相関を示す)(表2)、(ii)MxA(良好な負の相関を示し、かつ、IFN生物活性のマーカーとして知られる)(23)、およびiii)STAT1(IFNβシグナリングに重要である要素の一つ)。本発明者らは、処置により、IFNβのベースライン発現レベルが、続くIFNβシグナリングに影響するとの仮説を立てた。これらの遺伝子のインビトロの生物学的反応を、15個の遺伝子の選抜の平均インビボ生物学的反応と比較した場合、有意の関連が明らかにされた(表3)。これらの結果から本発明者らは、MSにおける異なるIFNβ反応性は、末梢血細胞の薬力学的際の結果であると結論付ける。
【0052】
これらのデータは明確に、MSの患者間においてIFNβ薬力学に差異があるという証拠を示す。これまでずっと、IFNβへの非反応性の一部はIFNの効率の減少に伴うことが示されていた持続的な中和抗体(Nab)の出現により説明されていた(24、25)。Nabは時間をかけて出現するため、Nabがベースライン前に患者中に存在する可能性は低い。そこで本発明者らは、異なったIFN反応パターンが、IFNβ処置前に分離されたMS患者由来のPBMCでも明らかであることを観察した。インビトロの反応の差異は、インビボの反応結果と一致していた。ゆえに、本発明者らの発見は、MSにおけるIFNβへの示差的反応は、患者間の病態生理学的差異の結果であり、患者の部分集合中で観察された反応の欠損の説明として、中和抗体が関与している可能性を排除するものである。
【0053】
これらのRRMS患者間の差異は、生物学的反応者と非反応者との間で区別する優勢な経路としてのIFN反応ベースラインレベルの生理病理学的重要性を証明する。本発明者らは、I型IFN反応遺伝子として知られる遺伝子のクラスターを指定した(表2中に挙げられる上位15個)。
【0054】
実施例5(van Baarsen LG, Vosslamberら、PLoS ONE. 2008も参照)
IFNβ治療前および治療後の22人のRRMS患者由来の全血中のRSDA2遺伝子発現
以前記載されたように、多数のIFN誘導遺伝子のベースライン発現レベルが、RRMS患者におけるIFNβ処置への生物学的反応を予測させるものであるかも知れない(=処置前/処置後の遺伝子発現比)。この予備的研究では、本発明者らは、22人のRRMS患者の第二群よりIFNβ処置開始前および後に全血液を採集した。
【0055】
本発明者らが先の研究において観察したように、(他のものと共に)RSAD2の遺伝子発現レベルによりIFNβ処置に対する生物学的反応を予測できるかもしれない。本発明者らは、この第二の患者群において定量的リアルタイムPCRを用いて、RSAD2の発現を測定した。
【0056】
処置開始前に高いRSAD2発現である患者では、処置後/処置中の発現レベルは低いのに対して、処置前にRSAD2が低発現の患者中では、IFNβ処置後/処置中に発現は明らかに上昇する(図3参照)。このベースラインレベルおよび処置後/処置中のRSAD2遺伝子発現レベルの間の負の相関は、先の研究の結果を裏付ける。
【0057】
実施例6
生物学的反応を決定するため、30人のRRMS患者からIFN-b治療前および治療中に末梢血を採取した。経時的ベースライン値の安定性を分析するため、20人の未処置RRMS患者からは、3から12ヶ月の期間をあけた2つの時点で末梢血を採取した。ベースライン安定性および生物学的反応率は、表2の上から10個のI型IFN反応遺伝子(RSAD2、IFIT1、MX1、ISG15、EPSTI1、IRF7、LY6E、OAS1、OAS3、SERPING1)の平均遺伝子レベルを用いて、Taqman低密度アレイ(TLDA)により分析した。IFNシグナリングカスケードの構成要素であるIRF5遺伝子について、遺伝的変異を決定した。エクソン6中の、3つの一塩基多型(SNP)(rs2004640、rs10954213、rs4728142)の一団、および一つの30bp挿入-欠失多型を遺伝子型決定した。これらのSNPは、Taqman遺伝子型決定分析(Applied Biosystems)を用いて遺伝子型決定した。慣用のPCRを用いて、30bp indelを、115/145bpの断片として増幅した。PCR増幅された断片を、2.5%アガロースゲル上で分離し、エチジウムブロミド染色により可視化した。
【0058】
生物学的反応の程度は、I型IFN反応遺伝子セットのベースライン発現と負に相関した(R=-0.3891;p=0.0336)。経時的ベースライン安定性は、r=0.54、P=0.029(n=20)の相関効率により反映された。
【0059】
次に本発明者らは、IRF5遺伝子における3つのSNPおよび30bp挿入-欠失多型の、ベースラインおよびIFNβによる薬理学的介入後のI型IFN反応遺伝子活性との関連を決定した。本発明者らは、rs2004640については、T対立遺伝子について同型接合性の患者は、異型接合性の患者よりも有意に高いベースラインI型IFN反応遺伝子発現(P=0.0198)を有することを示した(図4)。従って、T対立遺伝子について同型接合性の患者では、異型接合性の患者(P=0.0057)およびG対立遺伝子について同型接合性の患者(0.0340)に対し、有意に低い生物学的反応が観察された(図5)。rs4728142については、A対立遺伝子について同型接合性の患者は、異型接合性の患者よりも有意に高いベースラインI型IFN反応遺伝子発現(P=0.0394)を有し(図6)、かつ、G対立遺伝子について異型接合性の患者(p=0.1198)および同型接合性(p=0.1421)よりも低い生物学的反応を示す傾向にあった(図7)。
【0060】
本発明者らはハプロタイプ分析を行い、ハプロタイプ1が、不良/低生物学的反応に関連し、ハプロタイプ8が良好/高生物学的反応に関連することを決定した。
ハプロタイプ1:rs4728142(A)rs2004640(T)エクソン6indel(del)rs10954213(A)
ハプロタイプ8:rs4728142(G)rs2004640(G)エクソン6indel(in)rs10954213(G)
【0061】
患者を臨床データ(治療開始前2年の間対治療開始後2年の間に測定されたEDSSスコアおよび/または再発率)に基づいて、良好または不良反応者(または未決定者)に分けたところ、rs2004640のT対立遺伝子について同型接合性であり、かつ/またはrs4728142のA対立遺伝子について同型接合性である患者群において、本発明者らは、不良反応者の高い割合を見出した。
結論:
・rs2004640のTT遺伝子型は、低/不良生物学的反応に関連する。
・rs2004640のTT遺伝子型は、低/不良臨床反応に関連する。
・rs4728142のAA遺伝子型は、低/不良生物学的反応に関連する。
・rs4728142のAA遺伝子型は、低/不良臨床反応に関連する。
・rs2004640のTT遺伝子型は、遺伝子セットのIFN反応遺伝子の高いベースラインレベルに関連する。
・rs4728142のAA遺伝子型は、遺伝子セットのIFN反応遺伝子の高いベースラインレベルに関連する。
・5bp CGGGG欠失について同型接合性の患者は、低/不良生物学的反応を示す。
・5bp CGGGG欠失について同型接合性の患者は、不良臨床反応を示す。
【0062】
実施例7
IFNβ治療前および治療後の15人のMS患者由来の全血中のLGALS3BP(別名、タンパク質90K/Mac-2BP)遺伝子発現
以前記載されたように、多数のIFN誘導遺伝子のベースライン発現レベルは、MS患者において、IFNβ処置への生物学的反応(=治療前/治療後の遺伝子発現比)を予測させ得るかもしれない。この予備的研究で本発明者らは、IFNβ処置開始前および開始後の15人のMS患者の一群について全血を採集した。
【0063】
先の研究において本発明者らが観察したように、(他のものと同様に)LGALS3BPの遺伝子発現レベルは、IFNβ処置に対する生物学的反応を予測させ得るかもしれない。処置開始前にLGALS3BPが高発現の患者では、処置後/処置中の発現レベルが低いのに対し、処置前にLGALS3BPが低発現の患者では、IFNβ処置後/処置中に発現は明らかに上昇する(図8および9参照)。従って、LGALS3BPの上昇した血清レベルは、以前、慢性C型肝炎感染のインターフェロン-α処置患者について示されている(Artini Mら、Hepatol. 1996年8月、25(2): 212-7)ように、I型IFN処置に反応しないことを予測するバイオマーカーである。
【0064】
実施例8
IFNb治療への反応のためのバイオマーカーとしての末梢血中の単球上に発現されたSiglec-1
シアル酸結合Ig様レクチン1(Siglec-1、シアロアドヘシン、CD169)は、最も著名なI型IFNにより調節される候補遺伝子の一つとして知られている。Biesenら(Arthr. Rheum. 2008年4月、58(4): 1136-45)は、炎症性および内在単球中でのSiglec-1発現が、全身性紅斑性狼瘡における疾病活性および治療の成功をモニターするための、潜在的バイオマーカーであることを証明した。Siglec-1のレベルが、マルチカラーフローサイトメトリーを用いて決定された。Siglec-1発現単球部分集合の頻度が疾病活性と相関し(SLE疾患活動性指数により測定されたように)、かつ、補体因子のレベルと逆比例相関することが示された。最も興味深いことに、抗-二重鎖DNA(抗-dsDNA)抗体のレベルは、内在単球の割合と高度に相関していたが、Siglec-1を発現する炎症性単球とは相関しなかった。高用量糖質コルチコイド処置は、活性なSLEの患者由来の細胞中のSiglec-1発現を劇的に減少させる結果となった。従って、内在血液単球中のSiglec-1発現は、I型IFN反応についての疾病活性を示唆する潜在的なバイオマーカーである。よって、MSおよび他のIFN関連疾患(黒色腫、C型肝炎感染)中の単球で発現されるSiglec-1レベルは、処置への反応を予測させるベースラインI型IFN反応活性のバイオマーカーとして使用できる。
【0065】
関連文献




【0066】
(表1)マイクロアレイデータとリアルタイムPCRデータの間の相関

【0067】
(表2)ベースライン対IFNクラスターの単一遺伝子レベルにおける生物学的反応の相関

【0068】
(表3)15遺伝子のインビトロにおける単一IFN誘導遺伝子とインビボにおける平均生物学的反応との相関

【0069】
(表4)リアルタイムPCRに使用されたプライマー

【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
I型インターフェロンへの曝露に典型的には反応性であるヒト個体由来の細胞を含む試料を提供する工程、
I型インターフェロンにより調節される経路の活性レベルを決定する工程、および
決定された活性レベルに基づいて該細胞を分類する工程
を含む、ヒト個体由来の細胞を分類するための方法。
【請求項2】
前記経路の活性レベルを決定する前に、I型インターフェロンの存在下で前記細胞を培養する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記個体が自己免疫疾患を患っているか、または自己免疫疾患を患う危険がある、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記分類が、I型インターフェロンによる治療に反応する能力が低い個体由来のものであると前記細胞を分類することを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記I型インターフェロンがインターフェロンβまたはその等価物である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
I型インターフェロンにより調節される経路の前記活性レベルが、前記細胞中の、表2のうちの少なくとも1つの遺伝子、LGALS3BPまたはSiglec-1の発現レベルを決定することにより決定される、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記発現レベルが前記細胞中のRNAレベルを決定することにより決定される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの遺伝子が、前記表中で少なくとも-0.65のR値を含む、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
表2の少なくとも5個、および好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも15個の遺伝子の前記細胞中でのRNAレベルを決定する工程を含む、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも5、10または15個の遺伝子が、各々、前記表において少なくとも-0.65のR値を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1個の遺伝子がRSAD2を含む、請求項7〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも5個の遺伝子が、少なくともRSAD2、IFIT1、MX1、G1P2およびImage: 1926927を含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記RNAレベルがアレイを用いて測定される、請求項8〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記発現レベルがタンパク質発現レベルを決定することにより決定される、請求項7記載の方法。
【請求項16】
前記発現レベルがフローサイトメトリーおよび/またはELISAにより決定される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、I型インターフェロンへの曝露に典型的には反応性である末梢血単核細胞またはその細胞画分を含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記分類が、決定された活性レベルを参照と比較する工程をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、I型インターフェロンによる処置前に個体より得られる、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記活性レベルを、I型インターフェロンによる処置を受けている前記個体由来の細胞試料中の前記経路の活性レベルと比較する工程をさらに含む、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
試料中の細胞が2つの画分に分けられ、前記経路の活性レベルが両画分の細胞について決定され、かつ、該画分の第一画分が未処置細胞(休止細胞)を含み、かつ該画分の第二画分が前記経路の活性レベルを決定する前にI型インターフェロンの存在下で培養された細胞を含む、方法であって、
2つの画分中の活性レベルの比較に基づいて該細胞を分類する工程をさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
表2の少なくとも5個、および好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも15個の遺伝子のRNAに特異的なプローブまたはプライマーのセットを含む部分のキット。
【請求項23】
前記少なくとも5、10または15個の遺伝子各々が、前記表中で少なくとも-0.65のR値を含む、請求項22記載のキット。
【請求項24】
多発性硬化症を患っているか、または患う危険のある個体の試料を分類するための、請求項22または23記載のキットの使用。
【請求項25】
a)個体由来のタンパク質を含む試料中の1つまたは複数のタンパク質または糖タンパク質のレベルを決定する工程、
b)工程aで決定した1つまたは複数のレベルを、I型インターフェロンによる治療への反応の低下と関連付けられた予め決められた1つまたは複数のレベルと比較する工程、
c)工程bの比較に基づき、個体がI型インターフェロンによる治療に反応する能力が低いかどうか評価する工程
を含む、個体をI型インターフェロンによる治療に反応する能力が低い個体として分類するための方法。
【請求項26】
タンパク質がLGALS3BP遺伝子の産物である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
個体由来の核酸試料において、IFR5遺伝子に関しかつI型インターフェロンによる治療への反応のタイプと関連する1つまたは複数の多型を決定する工程、
該1つまたは複数の多型の遺伝子型に基づいて、個体がI型インターフェロンによる治療への反応が低い、正常、および/または良好な能力を有するかを決定する工程
を含む、個体をI型インターフェロンによる治療に反応する能力が低い個体として分類するための方法。
【請求項28】
1つまたは複数の多型が、図10に示すようなエクソン6中の、SNP rs2004640、SNP rs4728142、および/または30bpの挿入-欠失多型を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
図10に示すようなエクソン6中の、SNP rs2004640、SNP rs4728142中の多型、およびIFR5遺伝子の30bpの挿入-欠失多型の検出に特異的なプローブまたはPCRプライマーのセットを含む、請求項28記載の方法において使用するための、キット。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2010−530216(P2010−530216A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510246(P2010−510246)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050343
【国際公開番号】WO2008/147206
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(507329561)
【Fターム(参考)】