説明

多相発電機

本発明は、機械的動力を多相交流(6)に変換するための回転子と固定子を備えた発電機(1)と、有利には、多相交流(6)を所望の出力交流(7)に変換するためのマトリックスコンバータ(3)とを有する、機械的動力から電力を発生させる装置に関する。当該の固定子は、固定子鉄心を有し、その中には円筒形の固定子内腔が配設されており、固定子鉄心は、間隔を開けられた平行な多数の固定子スリットを有し、それらのスリットは、固定子鉄心の長さに沿って軸方向に延びるとともに、固定子内腔の方に開いており、多数の固定子巻線バーが、固定子スリット内に差し込まれており、多相交流(6)の位相を発生する固定子の巻線が、デルタ結線されており、多相交流(6)の相の数が3よりも大きい。更に、本発明は、そのような装置の動作方法に関する。ここで提案した装置によって、出力スペクトルの歪みを著しく低減することが可能であるとともに、柔軟な周波数範囲が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相発電機用設備分野に関する。特に、本発明は、同期式発電機による発電に関し、同期式発電機は、静止形周波数変換器を介して電力を供給するとともに、電力網周波数と異なる周波数を発生させるものである。
【0002】
本発明は、詳しくは、機械的動力を多相交流に変換するための発電機とこの多相交流を所望の出力交流に変換するためのマトリックスコンバータとを有する、機械的動力から電力を発生させる装置に関する。更に、本発明は、そのような装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発電分野では、所定の出力電力のためにタービンの回転速度を上げることは、大きさとコストの両方を低下させることとなる。更に、効率をも改善することができる。既に、出力70MWまでの能力を持つ発電機用タービンが、伝動装置を用いて発電機と接続されて、より高いタービン回転速度での動作が可能となっている。しかし、出力電力が大きくなると、伝動装置の使用は、信頼性の理由から益々困難となる。そのような場合、タービンは同期速度で動作する。
【0004】
一つの代替策は、静止形周波数変換器(パワーエレクトロニクス)を使用することである。特に、容積と回転速度の積を一定とした場合の発電機コストの削減、50Hzと60Hzの両方のために標準化された発電機、タービンの部分負荷効率を回復させることを可能とする調整可能な回転速度、大幅な騒音の低減、汚れの無い(油を使用しない)冷却等々の利点が期待される。
【0005】
エネルギーを発生させる場合と駆動する場合の両方において、静止形周波数変換器の損失を減少させることは、著しいコスト削減をもたらす。通常周波数変換器の総コストの大部分が冷却に使われているので、損失の減少は、何よりも設備投資コストに影響する。
【0006】
静止形周波数変換器は、交流/直流/交流変換と交流/交流直接変換の両方において存在する。
【0007】
間接変換(交流/直流/交流)は、3相交流電源(電動機の場合には電力網、発電の場合には発電機)から整流された直流電流又は整流された直流電圧を生成することによって行われる。次に、直流電流又は直流電圧は、インバータを使用して交流に再変換される。それらの間の回路には、電流の脈動成分(リップル)又は鋭いピーク(スパイク)を軽減するために、インダクタンス(変流器)又はコンデンサーバンク(変圧器)が接続されている。
【0008】
今日では、大型の変換器はサイリスタを使用している。サイリスタの自然転流が利用可能であれば、変換器での損失が軽減される。電圧変換器は、大きなスイッチング損失を伴うGTOとIGBT又はIGCTも使用している。これらの個々のコンポーネントの設計性能は、サイリスタの性能よりも低く、それに対応して特定の電圧及び特定の電流に対して多数のコンポーネントが必要となる。電圧変換器は、電圧曲線の形状を改善するとともに、高調波を低減するパルス幅変調技術を用いて性能を向上することができる。損失と誘電体疲労は別として、スイッチング周波数が高くなるほど向上する。電流は、ほぼ正弦波状に生成することができ、その結果電気機械の負荷による性能低下が回避される。
【0009】
直接変換(交流/交流)は、例えば、所謂サイクロコンバータを用いて実現可能である。直接変換は、電流がチョッピングされた直流というより正弦波となるので、電気機械の視点からは大きな利点を有する。それは、電気機械内で追加して生じる損失を減少させるとともに、脈動する応力をも防止する。
【0010】
それにも関わらず、3相サイクロコンバータの使用は、入力周波数の0〜1/3となる利用可能な周波数範囲に限られる。3相サイクロコンバータは、三つの単相サイクロコンバータから構成され、その場合バランスのとれた動作方式では、各々が電力の3分の1を処理する。周波数比率において1/3の限度を超えると、甚だしくバランスのとれていない動作方式となってしまう。この場合、各単相サイクロコンバータは、全電力の1/3を超える電力に対して設計すべきである。オーバーサイズは、電力設計において3倍までとすることができる。直接変換の別の手法は、所謂マトリックスコンバータによって得られ、マトリックスコンバータでは、多相電源(発電機又は電力網)の各相が、多相負荷(電力網、受動負荷、電動機など)の各相と双方向スイッチを介して接続されているか、或いは接続することが可能である。これらのスイッチは、相間の電圧差及び相電流に耐えるとともに、電流の逆転を可能にするために、相応の数のサイリスタから構成される。これらのスイッチは、配線部品(スナッバー)などの追加ケーブル配線又は逆向きで並列なコンポーネント用駆動パルスの電流供給部を同時に配備する手法と共に、真の双方向性コンポーネントと見做すことができる。
【0011】
これらのスイッチは、電源がm相で負荷がn相である場合、(m×n)マトリックスで配置される。それは、入力相と出力相の間にそれぞれ所望の接続を確立する選択肢を提供する。しかしながら、それと同時にマトリックスの或る接続状態は、それが許容されると、例えば、短絡という結果を発生させるので、許容されないという欠点が生じている。その上、一方の相から他方の相への転流は、スイッチング損失が出来る限り最小となるように実行することが望ましい。
【0012】
特許文献1は、マトリックスコンバータ及びその動作方法を記載しており、その場合相間の転流は部分的に自然転流として実行され、自然転流が不可能な所では強制転流として実行されている。この形式の選択では、自然転流によってスイッチング損失は軽減されるにも関わらず、強制転流によるスイッチング損失は残る。その上、強制転流を可能とするためには、マトリックスの全ての場所において、遮断可能なコンポーネントが存在する必要がある。そのことは、スイッチングの負担を著しく上昇させることとなる。
【0013】
それにも関わらず、自然転流だけを利用する方式でマトリックスコンバータを動作させることが可能である。それは、所定の条件が満たされた場合にのみ、発電機の選択的に接続されている相から発電機の選択的に接続されていない相への切り換えを許容することによって達成される。そのようなマトリックスコンバータ及びその動作方法は、特許文献2及びそれに対応する特許文献3に開示されている。そのようなマトリックスコンバータの構成及びその動作方法は、効率が高く用途が広いにも関わらず、所定の用途において高調波歪み及び利用可能な周波数条件に関して弱点を有する。
【特許文献1】米国特許第5,594,636号明細書
【特許文献2】ドイツ特許公開第10051222号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第1199794号明細書
【特許文献4】ドイツ特許公開第3123800号明細書
【特許文献5】ドイツ特許公開第2630171号明細書
【特許文献6】米国特許第5,789,840号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のことから、本発明の課題は、機械的動力から電力を発生させるための改良された装置であって、機械的動力を多相交流に変換するための回転子と固定子を備えた発電機を有し、有利には、多相交流を所望の出力交流に変換するための静止形周波数変換器、例えば、マトリックスコンバータを有する装置を提供すること、並びにそのような装置の改良された動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上述した課題は、固定子が固定子鉄心を有し、固定子鉄心の中に円筒形の固定子内腔が配設され、当該の固定子鉄心が、間隔を開けられた平行な多数の固定子スリットを有し、これらの固定子スリットは、当該の固定子鉄心の長さに沿って軸方向に延びるとともに、当該の固定子内腔の方に開いており、多数の固定子巻線バーが固定子スリット内に差し込まれている発電機構造を提案することによって解決される。そのような固定子では、多相交流の相がデルタ結線されるとともに、多相交流の相の数を3よりも大きくする形で、巻線が接続されている。
【0016】
従って、本発明の特徴の一つは、所謂多相発電機の使用とそれに対応した多相交流の相を多くすることによって、高調波歪みを著しく軽減することができるという事実である。巻線がバーから構成されているため、固定子の出力相の接続点は、固定子の両側における巻線バーの終端接続点の中から選択することができるので、その構造が非常に簡単かつ頑丈となる。多相出力電流の相の数を最適化するために考慮すべき主な論拠は、次の通りである。
【0017】
・相の数は、有利には、3の倍数とすべきであり、それ以外では電流及び電圧が絶えず不均衡となる。
【0018】
・多相交流の相の数を多くすると、転流周波数が高くなる。
【0019】
・転流周波数を高くすると、高調波歪みが低下する。
【0020】
・転流周波数は、転流の継続時間にもとづき制限される。
【0021】
・スイッチの総数は、相の数に比例する。コンバータの総コストは、それに直接依存する。
【0022】
・相の数を多くすることは、m相の電源におけるデューティサイクルを非常に小さくすることを意味する。その場合、発電機の利用率が相当に悪化し、そのコストは相当に高くなる。
【0023】
それに対して、(但し、星形結線である)従来技術に対応する容易に保守することが可能な6相の多相交流(二重巻線式変圧器、6相発電機)の使用は、多くの場合満足すべきものである。しかし、高調波歪みを低減しなければならない場合には、相の数を多くすることが明らかに勝っている。ここに記述した解決策は、デルタ結線された相のバー巻線をタップオフすることを含んでおり、相の数を多く、例えば、18、24、36又はそれより多くすることによって、魅力的な解決策を提供することを目指している。実際には、この解決策は、常に相の数がスリットの数以下、或いは又バーの数以下の場合に適用することが可能である。
【0024】
通常、交流発電機は星形に結線されている。しかし、巻線がバーから構成された多相発電機の場合、デルタ結線された固定子巻線を使用するのが有利であることが分かっている。デルタ結線された固定子とは、所謂多角形の固定子巻線を自動的に意味する。多角形の固定子巻線では、個々の巻線が相応の形で直列に接続され、その場合バーの隣接する接続点がm個の頂点又はインボリュート巻線部を形成し、理論的には、使用することが有利であるマトリックスコンバータの入力と接続されたm番目の相の巻線が定義される。従って、発電機の標準的な固定子を改造して、本発明にもとづき動作させることができる。そのことは、外側の巻線接続部を橋絡するとともに、マトリックスコンバータの入力をバーの終端接続部と接続することによって実現される。3相の星形結線された固定子を多相のデルタ結線された、或いは多角形の固定子に改造するためには、巻線を接続端子と接続する形で環状リングを取り除いて、その環状リングと接続していたバーの終端を溶着する。従って、固定子巻線は完全に対称形となり、単一の閉じたコイルを構成することとなる。
【0025】
発電の場合、所望の交流出力は、コンバータの出力において、通常1、2、3又は6つの相を持つ。本発明では、発電機の多相固定子の相の数は、有利には、8よりも大きく、多相固定子の相の数は、有利には、3の倍数である。有利には、多相固定子は、9、12、15、18、21又は24個の相を持つ。しかし、相の数をそれより多い36、54又は108個とすることも可能であり、そのことは、確かにマトリックスコンバータで必要なスイッチング素子の数を増加させるが、高調波歪みを低減するとともに、周波数条件に関する多彩さをも高めることとなる。原理的には、多相固定子の相の数を固定子スリットの数と等しくすることさえ可能である。
【0026】
別の実施構成では、マトリックスコンバータにおいて、(m×n)マトリックスに配置された制御可能な複数の双方向スイッチを用いて、発電機のm個の相の多相交流が、電力網又は負荷のn個(n<m)の相を有する出力交流に変換され、その結果多相交流のm個の相の各々が、少なくとも一つの双方向スイッチを介して、出力交流のn個の相の各々と接続されることとなる。典型的には、この場合の双方向スイッチは、制御システムによって制御され、その制御システムは、選択的な手法によりm個の入力をn個の出力と接続し、入力における電流の符号を決定するための第一の手段と入力間の電圧の符号を決定するための第二の手段とが配備されており、第一及び第二の手段は、制御システムと能動的に接続されている。双方向スイッチは、通常通り信号回線を介して、制御システムと接続されており、その信号回線を用いて、スイッチの切換状態に関する情報が制御システムに伝送される。双方向スイッチは、逆向きで並列に接続されたサイリスタを備えることができる。特に、発電機の多相交流の相の数が非常に多い場合には、そのパワーエレクトロニクスを固定子に統合するのが有利であることが分かっている。従って、マトリックスコンバータの少なくとも一部を発電機の固定子に統合するか、或いは直接発電機に組み込むことができる。更に、有利には、マトリックスコンバータの固定子内に統合された部分を発電機の冷却に使用される冷却剤の流れの中に配置する。
【0027】
更に、本発明は、上述した装置、即ち、n相の電力網/負荷に電力を供給するm相の発電機の動作方法に関する。この装置は、発電機のm個の相の多相交流を(m×n)マトリックスに配置された制御可能な多数の双方向スイッチを介して交互に接続することによって、m個の相をn個の相(n<m)の交流に変換するためのマトリックスコンバータを有し、発電機のn個の相が常に負荷と接続される一方、発電機の(m−n)個の相が負荷と接続されない形で動作するものである。この装置は、発電機の選択的に接続された相から発電機の選択的に接続されていない相への切り換えが、特許文献2及びそれに対応する特許文献3に記載されている通りの条件が満たされた場合にのみ行われることを特徴とする。これらの二つの特許文献の開示内容は、それが本発明にもとづく装置の一部を構成するマトリックスコンバータの動作方式に関する場合、この明細書の中に明らかに含まれるものとする。
【0028】
更に、本発明は、位相の数が少ない星形結線された固定子を改造する、或いは強化する方法に関する。この方法は、星形結線された固定子が、
固定子の外側の巻線接続部を接続する措置と、
選択された、或いは全てのバー接続部を多相固定子の接続端子として用いる措置と、
によって改造されるものであり、この固定子が、円筒形の固定子内腔を備えた固定子鉄心を有し、この固定子鉄心が、間隔を開けられた平行な多数の固定子スリットを有し、これらの固定子スリットは、当該の固定子鉄心の長さに沿って軸方向に延びるとともに、その固定子内腔の方に開いており、多数の固定子巻線バーが、これらの固定子スリット内に差し込まれていることを特徴とする。
【0029】
有利には、マトリックスコンバータを構成する双方向スイッチのセットは、選択されたバー接続部に直接接続される。固定子がk個の固定子スリットを有し、多相固定子の相の数がm個である場合、有利には、k/m番目毎のインボリュート巻線部を接続して、多相固定子の接続端子の一つの相を構成する。巻線を接続端子と接続する環状リングは、簡単に取り除くことができるとともに、環状リングと接続されていたバーの終端は、互いに溶接することができる。
【0030】
本発明の別の実施構成は、従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
添付図面には、本発明の有利な実施例が図示されている。ここに記載する実施例を図解する役割を果たし、それらに限定するものではない図面に関して、図1は、発電機の6個の相G1〜G6が星形結線(符号2)されている発電機1がマトリックスコンバータ3と接続されている発電機構成を図示している。従って、6相の(m=6)多相交流6が、マトリックスコンバータ3の入力を構成する。これらの相の各々は、双方向スイッチ4を介して三つの出力交流相(n=3)の中の任意の相と個々に接続される。このような双方向スイッチ4の構成は、スイッチの6×3マトリックスとなるか、或いは一般的にm個の相の多相交流6とn個の相の出力交流7に対して、マトリックスコンバータは、m×nマトリックスの双方向スイッチ4を有する。そのため、相応の制御手段を用いた場合、出力交流7に関する所望の出力パターンに応じて、如何なる時点でも任意の入力相を如何なる任意の出力相と接続することが可能である。出力交流7は、通常通り変圧器5を介して電力網(相L1,..., L3)と接続される。
【0032】
図1のマトリックスコンバータ及びそのようなマトリックスコンバータの有利な動作方式は、特許文献2及びそれに対応する特許文献3に記載されている。
【0033】
例えば、高調波歪みや周波数条件などの多くの観点に関して、多数の相、即ち、6よりもずっと多い数の相を用いるのが有利である。しかし、相の数を多くすると、固定子巻線と電力遮断器の両方の効率を悪化させる可能性がある。
【0034】
この効率を悪化させる問題に対処するための方策は、多角形の固定子を考慮することである。多角形の巻線は、外側の巻線接続部を接続(短絡)することによって容易に得ることができる。それは、巻線がバー巻線である固定子構造を使用し、そのような構造において存在するインボリュート巻線部がスイッチの端子を提供するという事実にもとづいて、容易に実現可能である。この場合、インボリュート巻線部とは、例えば、特許文献4又は5、或いは特許文献6の図1bに開示されている通りの形状であるとする。そして、スイッチは、インボリュート巻線部の最も外側の部分と容易に接続することができる。原理的に、相の数は、固定子スリットの数と同じ多さ(即ち、数十個)とすることができる。例えば、固定子スリットの各々に二つの巻線バーを配置した場合、原理的には、固定子スリットの数の2倍の数の相を持つことさえ可能である。
【0035】
その場合、多相発電機を用いて発電する際に、例えば、マトリックスコンバータの6相の出力を3相の電力網又は負荷と接続する多相変圧器を使用することも可能であることに留意しなければならない。
【0036】
それに対して、マトリックスコンバータは、通常の3相の電力網、負荷又は電源網の場合にはm×3又はm×6個の相を持つことができる。3相の接続機器、即ち、m×3マトリックスコンバータを使用する場合、実効起電力は低下する(巻線比が低下する)。出力電力比が僅かに低下し、発電機は、それを少し上回る容量で(約15%)設計すべきある。
【0037】
6相の出力を使用する場合、出力電力は本来の巻線による場合とちょうど等しい。ここで、母線及び主変圧器において欠点が生じる。母線の特別な設計によって、追加的なコストが大幅に削減される。昇圧変圧器の場合の二重巻線に対する追加的なコストは無視できるほど小さい。出力電流が大きく、サイリスタの定格を超える場合には、6相の出力は非常に魅力的である。
【0038】
従って、図2は、12相での多相の発電機1の実現可能な構成を図示している。ここに述べる通りの実施例は、相の数が大きい、即ち、24、36又はそれ以上の場合の魅力的な解決策を提供することを目指している。実際には、この解決策は、如何なる数の相でも使用することができる。この実施例は、m相の発電機がマトリックスコンバータによって3相の電力網(n=3)と接続されている場合に関して記述している。多相交流6の12個の相と所望の出力交流の3相に対して提示されている発電機構成は、従来技術の標準的な同期式交流発電機に非常に似ている。相違点は、固定子バーの終端巻線の結線構成であり、これは改造しなければならない。
【0039】
先ずは、コイルを接続端子と接続している環状リングを取り除く。環状リングと接続されていたバーの終端を溶着させて、各バーが、コイルを構成するようにする。そうすることによって、固定子巻線は完全に対称形となり、単一の閉じたコイルを構成することとなる。実際相の間には、もはや端子の特別な断片は存在しない。更に、もはや巻線の最初と最後のバーを特別に構成する必要もない。
【0040】
次に、数個の、出来れば全ての溶接した接続部を双方向スイッチ4と接続する。その結果得られる多相交流の相の数は、3、4、5、6... バーの数、即ち、駆動される終端と駆動されない終端の両方がスイッチを備えている場合には、スリットの数の2倍とすることができる。
【0041】
原理的には、全ての標準的な発電機を改造して、この新しい構成にもとづき使用することが可能である。
【0042】
交流発電機は、通常星形結線されているが、この場合発電機は、デルタ結線されている。この固定子構成は、直流電動機の回転子巻線と同じ類似点を有する。
【0043】
そのような構成における基本的な動作原理は変わらず、相の数が多い場合に適用されるものである。
【0044】
ここで示した技術思想は、特に、固定子を強化するためにも好適である。それは、図3から理解することができる。図3aは、6相の多相交流6を構成するように接続された、54個の固定子スリットを有する星形結線された固定子の標準的な接続構成を図示している。これらの相は、図3ではU1,V1,W1及びU2,V2,W2で表示されている。固定子スリットの各々は、二つの固定子バーを備えている。
【0045】
図3bの接続構成によって図示されている通り、本発明にもとづき、それ以前に多相交流6の相が接続されていた所において隣接する出力同士を接続することによって、そのような固定子をデルタ結線された固定子に変換することができる。言い換えると、図3aで二つの黒い点が互いに直接隣り合って配置されている場所において、これらの接続部を橋絡する。ここでインボリュート巻線部は、個々に一つのセットの双方向スイッチと接続される。54相の出力が所望されている場合、各インボリュート巻線部は一つの双方向スイッチと接続される。図3bでは、三つのインボリュート巻線部毎に一つのセットの双方向スイッチと接続されており、そのため18相の多相交流出力となっている。これらの18相は、一つのセットの双方向スイッチを用いて、出力交流の配線と接続されている。多相固定子とマトリックスコンバータ間の母線のデューティサイクルは、相の数に逆比例して相当に低くなり、それに対応して母線を小型化することができる。母線のバーの代わりに、標準的な中圧ケーブルを使用することが可能であり、その結果大幅なコスト削減が得られる。
【0046】
図3cは、バー巻線を備えた固定子の終端巻線領域の外観とインボリュート巻線部の最も外側の部分から出力相を取り出す場所を模式的に図示している。その目的のために、幾つかのインボリュート巻線部に対して、双方向スイッチのセットを記号で表示している。図3cでは、本発明にもとづき改造された固定子が完全に対称形であるという事実を同様に見ることができる。
【0047】
相の数が多いために、見掛け上の転流周波数は高くなる。電圧に生じる高調波は、より高い周波数で発生し、振幅が低下して行く。それに対応する高調波電流は、発電機の相間インダクタンスのために、更に減少する。
【0048】
図4に表されているグラフは、(例えば、図3bに模式的に図示されている通りの)6相(図4a)と18相(図4b)の発電機の理論的なスペクトルを図示している。図4aでは、6相の多相交流に関して、1次高調波では振幅が14となる高調波が含まれ、2次高調波では振幅が20%となる高調波が含まれていることを認識することができる。
【0049】
18相の多相交流(図4b)では、5次及び6次の高調波で10%未満となる明らかに優れた挙動が実現されている。
【0050】
単位時間当たりの転流回数は、相の数に比例して増加する、即ち、転流の間の利用可能な時間は、相の数の増加に応じて減少する。同時に、切換プロセスにおいて関連するインダクタンス又はエネルギーが著しく低下するので、転流の継続時間は、同じ比率で減少する。最終的に、転流のための時間全体は、実際に使用される相の数とは関係無く同じとなる。
【0051】
実際の相の数は、動作中に動的に変更することができる。3×54個の双方向スイッチ4を備えた54個のスリットを有する発電機について考えてみる。それは、対称的な運転に関して、4、6、9、12、18、27、36又は54相の発電機として動作させることができる。一つのスイッチが故障した場合、動作時の性能への影響を限定する形で、これらの中間の如何なる相数をも使用することができる。相数の変更は、マトリックスコンバータの制御ソフトウェアによって行われる。一つのスイッチが故障した場合、その故障したスイッチを取り除けば、それでもシステムを動作させることができる。
【0052】
ここで提案している巻線構造では、固定子の所与のバーにおける電流は、大部分の時間の間真正の正弦波である。固定子巻線のデューティサイクルは高い。転流の結果、磁場パターンが非常に局所的に変化することとなる。それに対応して、電機子の作用は、如何なる同期式発電機とも非常に近いものとなる。
【0053】
発電機1が静止形周波数変換器を介して動作される場合、回転子の制動巻線は、通常IEC34−4などの規則に定められている通りの標準的な逆相順の場合を超える大きな負荷を受ける。ここで提案した構造では、そのようなことにはならず、そのため標準的な回転子制動巻線で十分である。
【0054】
「バルブ」、即ち、スイッチ(サイリスタ、IGBT、IGCT、GTO等)は多数有る。この新しい技術思想は、「バルブ」の個々の設計とコストを最適化するような大きな柔軟性を提供する。重要なことは、これらの「バルブ」がパルス的な動作方式で恒常的に動作されているということである。
【0055】
しかし、パルス的な動作方式によって、低いデューティサイクルでの極めて大きな電流が可能となり、それは、正に計画されている用途に対応するものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来技術によるマトリックスコンバータを備えた発電機の模式図
【図2a】本発明によるマトリックスコンバータを備えた多相発電機の模式図
【図2b】多角形の特徴を示す別の図示方法による図2aと同じ接続構成の模式図
【図3a】従来技術による54個のスリットを有する星形結線された3相固定子の模式的な接続構成図
【図3b】インボリュート巻線部と直接接続された双方向スイッチのセットを有する、固定子巻線がデルタ結線された固定子の模式的な接続構成図
【図3c】固定子スリット毎に二つの巻線バーを備えた固定子の終端領域の模式的な斜視図
【図4a】6相発電機、即ち、6相の多相交流用マトリックスコンバータの出力交流の理論的な周波数スペクトル
【図4b】18相発電機、即ち、18相の多相交流用マトリックスコンバータの出力交流の理論的な周波数スペクトル
【符号の説明】
【0057】
1 発電機
2 星形結線の中性点
3 マトリックスコンバータ
4 双方向スイッチ
5 変圧器
6 多相交流
7 出力交流
G1〜G6 発電機の相
L1〜L3 負荷(電力網)の相
m 多相固定子の相の数
n 電力網、負荷又は主電源における交流の相の数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的動力を多相交流(6)に変換するための回転子と固定子を備えた発電機(1)を有する、機械的動力から電力を発生させる装置であって、
固定子が、円筒形の固定子内腔を備えた固定子鉄心を有し、固定子鉄心が、間隔を開けられた平行な多数の固定子スリットを有し、それらのスリットは、固定子鉄心の長さに沿って軸方向に延びるとともに、固定子内腔の方に開いており、多数の固定子巻線バーが、固定子スリット内に差し込まれており、
多相交流(6)の位相を発生する固定子の巻線が、デルタ結線されており、
多相交流(6)の相の数が3よりも大きい、
装置。
【請求項2】
多相交流(6)を所望の出力交流(7)に変換するための静止形周波数変換器(3)を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
多相交流(6)を所望の出力交流(7)に変換するためのマトリックスコンバータ(3)を有する請求項2に記載の装置。
【請求項4】
多相交流(6)を所望の出力交流(7)に変換するための多相変圧器を有する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
固定子は、外側の巻線接続部が橋絡されるとともに、マトリックスコンバータ(3)の入力がバーの終端接続部と接続される形で保持された多角形の固定子であることを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項6】
所望の出力交流(7)の相の数(n)が3又は6であり、多相交流(6)の相の数(m)が8よりも大きい請求項2、3又は5に記載の装置。
【請求項7】
多相交流(6)の相の数(m)が3の倍数である請求項6に記載の装置。
【請求項8】
多相交流(6)の相の数(m)が9、12、18、21又は24である請求項5又は6に記載の装置。
【請求項9】
各固定子スリット内には、一つ又は二つの固定子巻線バーが配置されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
マトリックスコンバータ(3)において、発電機(1)のm個の相の多相交流(6)が、(m×n)マトリックスに配置された制御可能な多数の双方向スイッチ(4)を用いて、負荷のn個(n<m)の相の出力交流(7)に変換され、その結果m個の相の多相交流(6)の各々が、少なくとも一つの双方向スイッチ(4)を介して、n個の相の出力交流の各々と接続されることを特徴とする請求項2、3又は5から9までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
双方向スイッチ(4)が、選択的な手法でm個の入力をn個の出力と接続する制御システムによって制御され、入力電流の符号を決定する第一の手段と入力間の電圧の符号を決定する第二の手段とが配備されており、第一及び第二の手段が、この制御システムと能動的に接続されていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
双方向スイッチ(4)が、信号回線を介して、制御システムと接続されており、これらの信号回線を介して、スイッチの切換状態に関する情報が制御システムに伝送されることを特徴とする請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
双方向スイッチ(4)が、逆向きで並列に接続されたサイリスタ又は相応に配置されたIGBT、IGCT又はGTOを有することを特徴とする請求項10から12までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
静止形周波数変換器又はマトリックスコンバータ(3)の少なくとも一部が、発電機の固定子に統合されていることを特徴とする請求項2、3又は5から13までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項15】
当該の静止形周波数変換器又はマトリックスコンバータ(3)の固定子内に含まれる部分が、発電機の冷却に使用される冷却剤の流れの中に配置されていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
多相交流(6)の相の数(m)が固定子スリットの数と一致することを特徴とする請求項1から15までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
マトリックスコンバータ(3)において、発電機(1)のm個の相の多相交流(6)が、(m×n)マトリックスに配置された制御可能な多数の双方向スイッチ(4)を介してこれらの相を交互に接続することによって、負荷のn個(n<m)の相(L1,... ,L3)の出力交流に変換され、その際常に発電機(1)のn個の相が負荷と接続される一方、発電機(1)の(m−n)個の相が負荷と接続されない請求項1から16までのいずれか一つに記載の装置の動作方法において、
発電機(1)の選択的に接続された相(Gk )から発電機(1)の選択的に接続されない相(Gl )への切り換えが、次の条件を満たす場合にのみ行われ、

k *(Vk −Vl )*Kijkl<0

ここで、Ik 及びVk は選択的に接続された相(Gk )の電流及び電圧であり、Vl は選択的に接続されない相(Gl )の電圧であり、Kijklは、各切換プロセスに関して発電機(1)の相(G1 ,... ,Gm )間の相互インダクタンス及び負荷のインダクタンスに固有の定数であることを特徴とする方法。
【請求項18】
星形結線された固定子を強化するための方法において、
固定子が、固定子鉄心を有し、固定子鉄心の内部には円筒形の固定子内腔が配設されていることと、
固定子鉄心が、間隔を開けられた平行な多数の固定子スリットを有し、それらの固定子スリットは、固定子鉄心の長さに沿って軸方向に延びるとともに、固定子内腔の方に開いており、多数の固定子巻線バーが、固定子スリット内に差し込まれていることと、
固定子の外側の巻線接続部を橋絡する措置と、
巻線バーの終端接続部を多相固定子の出力として使用する措置と、
を有することと、
を特徴とする方法。
【請求項19】
有利には、マトリックスコンバータを構成する双方向スイッチのセットを巻線バーの終端接続部と直接接続することによって、静止形周波数変換器、有利には、マトリックスコンバータを巻線バーの終端接続部に直接接続することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
固定子がk個の固定子スリットを有することと、
多相の出力がm個の相を有することと、
巻線バーのk/m番目毎の終端接続部又はインボリュート巻線部の各々が接続されて、多相固定子出力の一つの相を構成することと、
を特徴とする請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
コイルを接続端子と接続している環状リングを取り除くことと、
それ以前に環状リングと接続されていたバーの終端を溶着することと、
を特徴とする請求項18から20までのいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2a)】
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【図2b)】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2008−535452(P2008−535452A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503467(P2008−503467)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060657
【国際公開番号】WO2006/103159
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】