説明

多管式バイオマス燃焼バーナ

【課題】よりシンプルな構造であり、バイオマス燃料の性状に応じてスワールの強度を変更可能であり、より安定的にバイオマス燃料を燃焼させることができる多管式バイオマス燃焼バーナを提供する。
【解決手段】チップ状または粉状のバイオマス燃料と、油またはガスの少なくとも一方である着火用補助燃料と、を用いて燃焼させる多管式バイオマス燃焼バーナにおいて、異なる径の少なくとも4本の円筒状部材が同心状に最も内側の第1筒状部材から最も外側の第4筒状部材へと組み合わされ、第1筒状部材11の内部の第1空間には着火用補助燃料が供給され、第1筒状部材と第2筒状部材12の間の第2空間には補助燃料用空気が供給され、第2筒状部材と第3筒状部材13の間の第3空間にはバイオマス燃料の搬送用の1次空気とバイオマス燃料が供給され、第3筒状部材と第4筒状部材14の間の第4空間には2次空気が供給されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油やガスのみを燃料とする従来の燃焼バーナに対して、主としてバイオマスを燃料として、補助的に着火用として石油やガスを用いる、多管式バイオマス燃焼バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、石油やガスをバーナで燃焼させ、水冷炉筒で輻射熱を吸収して煙管で対流熱を吸収することで非常に高いエネルギー効率(85%以上)にて蒸気を発生させる炉筒煙管式蒸気ボイラが、小型産業用ボイラ等に広く利用され、日本全国に1万3千基以上設置されている。
しかし近年では、石油やガスの価格の高騰等によりバイオマス燃料が注目され、石油やガスのみを燃焼させるバーナの代わりとなる、バイオマス燃料を主として燃焼させるバーナの開発が進められている。
例えば特許文献1に記載された従来技術には、筒内に螺旋溝が形成された回転筒を、駆動ローラを用いて軸回りに回転させて、螺旋溝にてバイオマス燃料と1次燃焼空気をバーナの先端に搬送して燃焼させる、バイオマス燃焼装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−212119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料の性状が非常に安定している石油やガスと比較して、多様な微粉砕バイオマスを混合調整したバイオマス燃料は、原料バイオマスの性状に応じて、燃料の密度、揮発分含有量、水分、含有窒素分等が大幅に異なり、同一の条件で燃焼させた場合、燃焼状態が大きく異なる。従って、燃料の性状に応じた調整が必要であるが、燃焼負荷(燃料供給量)はボイラ等の負荷で決まるので自由に調整できず、調整できるものは、1次空気量(バイオマス燃料の搬送用の空気の量)と2次空気量(1次空気では不足する燃焼用の空気の量)と、1次空気または2次空気のスワール(渦)の強度である。
また、1次空気量と2次空気量は、燃料の性状でなく、燃料の量で決まるため、燃料の性状に応じて調整可能なものは、実質的にはスワールの強度のみである。ここで、スワールの強度は、スワールを形成する螺旋のピッチ、あるいは軸方向に対する螺旋方向の角度(図3の例における傾斜角度θ)で表すことができる。
特許文献1に記載された従来技術では、回転筒内に螺旋溝を形成し、駆動ローラを用いて回転筒を軸回りに回転させてバイオマス燃料と1次空気にスワールを発生させているが、バーナである回転筒を回転させる装置等が必要であるためバーナが複雑化するとともに、螺旋の角度が固定であるため、スワール強度を燃料性状に応じて変更することができず、種々の燃料性状のバイオマス燃料を用いた場合、それぞれの燃料性状のバイオマス燃料を適切な燃焼状態で燃焼させることは非常に困難である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、よりシンプルな構造であり、バイオマス燃料の性状に応じてスワールの強度を変更可能であり、より安定的にバイオマス燃料を燃焼させることができる多管式バイオマス燃焼バーナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの多管式バイオマス燃焼バーナである。
請求項1に記載の多管式バイオマス燃焼バーナは、チップ状または粉状のバイオマス燃料と、油またはガスの少なくとも一方である着火用補助燃料と、を用いて燃焼させる多管式バイオマス燃焼バーナにおいて、前記多管式バイオマス燃焼バーナは、異なる径の少なくとも4本の円筒状部材が同心状に最も内側の第1筒状部材から最も外側の第4筒状部材へと組み合わされている。
第1筒状部材の内部である第1空間には、前記着火用補助燃料が供給され、前記第1筒状部材と第2筒状部材との間である第2空間には、前記着火用補助燃料を燃焼させるための空気である補助燃料用空気が供給され、前記第2筒状部材と第3筒状部材との間である第3空間には、バイオマス燃料の搬送用の空気である1次空気とともにバイオマス燃料が供給され、前記第3筒状部材と第4筒状部材との間である第4空間には、前記バイオマス燃料を燃焼させるための空気である2次空気が供給されている。
【0006】
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの多管式バイオマス燃焼バーナである。
請求項2に記載の多管式バイオマス燃焼バーナは、請求項1に記載の多管式バイオマス燃焼バーナであって、前記第4空間における任意の位置には、軸方向に流れる空気を螺旋状に旋回させるために軸方向に対して所定の取付け角度にて取付けられた単数または複数の案内部材を有する環状スワーラが嵌め込まれている。
【0007】
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの多管式バイオマス燃焼バーナである。
請求項3に記載の多管式バイオマス燃焼バーナは、請求項2に記載の多管式バイオマス燃焼バーナであって、前記案内部材を取付ける前記取付け角度を変更した複数の環状スワーラが予め用意されている。
そしてバイオマス燃料に応じて選択された環状スワーラを着脱可能に嵌め込むことが可能となるように、前記第4筒状部材は、前記2次空気の供給位置から当該第4筒状部材の先端までの任意の位置にて、軸方向に対して少なくとも2つに分割可能に構成されており、前記第4筒状部材の分割位置における第4空間には、選択された環状スワーラが着脱可能に嵌め込まれている。
【0008】
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの多管式バイオマス燃焼バーナである。
請求項4に記載の多管式バイオマス燃焼バーナは、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多管式バイオマス燃焼バーナであって、前記1次空気の空気量を調整可能な1次空気量調整手段と、前記2次空気の空気量を調整可能な2次空気量調整手段と、燃料量検出手段と、前記1次空気量調整手段と前記2次空気量調整手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記燃料量検出手段からの信号に基づいて求めたバイオマス燃料の量に応じて変動する、前記1次空気と前記2次空気の合計の空気量である全空気量と、前記1次空気の空気量である1次空気量と、を求め、前記全空気量と前記1次空気量とに基づいて前記1次空気量調整手段と前記2次空気量調整手段を制御する。
そして前記1次空気量については、予め設定した1次空気量下限値以上となるように設定されており、前記バイオマス燃料の下限量から、前記バイオマス燃料の下限量と上限量の間の第1所定量までの間は、前記1次空気量が前記1次空気量下限値となるように、前記1次空気量下限値が設定されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の多管式バイオマス燃焼バーナを用いれば、駆動ローラ等を必要とせず、よりシンプルな構造の多管式バイオマス燃焼バーナを実現することができる。
また、請求項2に記載の多管式バイオマス燃焼バーナを用いれば、よりシンプルな構造にて適切にスワールを発生させることができる多管式バイオマス燃焼バーナを実現することができる。
また、請求項3に記載の多管式バイオマス燃焼バーナを用いれば、より容易にスワールの強度を変更することができる。
また、請求項4に記載の多管式バイオマス燃焼バーナを用いれば、バイオマス燃料の量が少ない場合であっても、バイオマス燃料を搬送する1次空気の量を1次空気量下限値以上とするので、より安定的にバイオマス燃料を搬送することが可能であり、より安定的な燃焼を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の多管式バイオマス燃焼バーナ10を用いたボイラシステム1の一実施の形態を説明する図である。
【図2】多管式バイオマス燃焼バーナ10の構造の例を説明する断面図である。
【図3】環状スワーラ10Sの構造の例を説明する図である。
【図4】多管式バイオマス燃焼バーナ10において環状スワーラ10Sの着脱方法を説明する図である。
【図5】バイオマス燃料の量に応じた1次空気量と2次空気量の決定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の多管式バイオマス燃焼バーナ10を用いたボイラシステム1の例を示している。
本実施の形態にて説明するボイラシステム1は、主として燃焼させる燃料としてチップ状または粉状(例えば5[mm]以下の形状)のバイオマス燃料(バイオマス貯蔵タンクT1内に貯蔵されている)を用い、着火時等にて補助的に燃焼させる燃料として石油またはガス(着火用補助燃料供給源N1から供給される)を用いる。
【0012】
●[ボイラシステム1の全体構成(図1)]
図1の例に示すように、ボイラシステム1は、ボイラ本体BR、多管式バイオマス燃焼バーナ10、フィルタ装置F、排煙装置E、バイオマス貯蔵タンクT1、フィーダ装置S1、ブロア装置C1、C2、C3、CN、着火用補助燃料供給源N1、制御装置CT、配管H1、H2、HN1、HN2、バルブB1a、B1b、B2a、BN、BN1、BF等にて構成されている。
【0013】
制御装置CTは、ブロア装置C1からバルブB1a、B1bを経由して配管H1内に送風される1次空気に、バイオマス貯蔵タンクT1内のチップ状または粉状のバイオマス燃料をフィーダ装置S1を経由させて混合して多管式バイオマス燃焼バーナ10に供給する。制御装置CTは、ブロア装置C1の回転数やバルブB1aの開度等を調整して配管H1内の1次空気の量を調整可能である。また制御装置CTは、バルブB1bの開度やフィーダ装置S1のフィード量等を調整することで、1次空気に混合させるバイオマス燃料の量を調整可能である。
また制御装置CTは、ブロア装置C2の回転数やバルブB2aの開度等を調整して配管H2内の2次空気の量を調整可能である。
【0014】
着火用補助燃料供給源N1は、着火用補助燃料が石油である場合は石油貯蔵タンク等であり、着火用補助燃料がガスである場合はガスボンベや都市ガス用配管等である。
制御装置CTは、バルブBN1の開度等を調整して配管HN2内の着火用補助燃料の量を調整可能であり、ブロア装置CNの回転数やバルブBNの開度等を調整して配管HN1内の補助燃料用空気の量を調整可能である。
【0015】
多管式バイオマス燃焼バーナ10は、配管H1から供給されるバイオマス燃料と1次空気、配管H2から供給される2次空気、配管HN2から供給される着火用補助燃料、配管HN1から供給される補助燃料用空気、をボイラ本体BR内で燃焼させる。そして制御装置CTは、燃焼状態検出手段SNからの信号に基づいて燃焼状態(燃焼温度等)を検出することができる。
ボイラ本体BRには、例えばWinに示すように水が入力される。そして入力された水は、ボイラ本体BR内または排煙装置E内にて熱を吸収し、温水やスチームに変化したSoutとして取り出される。
フィルタ装置Fは、バイオマス燃料が燃焼した後に生成される灰等を除去するための装置であり、バルブBFやブロア装置C3等を備えている。
排煙装置Eは、Win(この場合、水)が循環され、排煙の熱を水に吸収させる。
【0016】
なお、バイオマス燃料を用いたボイラシステムは、図1に示すボイラシステム1の構成に限定されるものではなく、図1の「例」に示すような、バイオマス燃料を用いた種々のボイラシステムにて使用することができる、本発明の多管式バイオマス燃焼バーナ10について、以下に説明する。
【0017】
●[多管式バイオマス燃焼バーナ10の構造(図2)]
図2は、本発明の多管式バイオマス燃焼バーナ10の構造を説明する断面図を示している。なお、図2における上図は、円筒状の多管式バイオマス燃焼バーナ10の中心軸に沿って切断した断面図を示しており、図2における下図は、上図におけるA−Aの位置にて多管式バイオマス燃焼バーナ10を、中心軸に直交する面で切断したA−A断面図を示している。
【0018】
多管式バイオマス燃焼バーナ10は、異なる径の少なくとも4本の円筒状部材(第1筒状部材11、第2筒状部材12、第3筒状部材13、第4筒状部材14)が同心状(同軸状)に、最も内側の第1筒状部材11から最も外側の第4筒状部材14へと組み合わされている。
なお第4筒状部材14は、2次空気の供給位置である入力部14inから第4筒状部材14の先端(先端部10Zの側)までの任意の位置(図2では分割位置14C)において、軸方向に対して少なくとも2つ(14Aと14B)に分割可能に構成されている。
最も内側の第1筒状部材11の入力部11inには配管HN2が接続され、第1筒状部材11の内部である第1空間11Kには着火用補助燃料が供給される。
第1筒状部材11の外側に配置された第2筒状部材12の入力部12inには配管HN1が接続され、第1筒状部材11と第2筒状部材12との間である第2空間12Kには着火用補助燃料を燃焼させるための空気である補助燃料用空気が供給される。
【0019】
第2筒状部材12の外側に配置された第3筒状部材13の入力部13inには配管H1が接続され、第2筒状部材12と第3筒状部材13との間である第3空間13Kにはバイオマス燃料の搬送用の空気である1次空気とともにバイオマス燃料が供給される。
第3筒状部材13の外側に配置された第4筒状部材14の入力部14inには配管H2が接続され、第3筒状部材13と第4筒状部材14との間である第4空間14Kにはバイオマス燃料を燃焼させるための空気である2次空気が供給される。
そして第4空間14Kにおける任意の位置には、軸方向に流れる空気を、時計回りあるいは反時計回りの螺旋状に旋回させるため、軸方向に対して所定の取付け角度θ(図3参照)にて取付けられた単数または複数の案内部材10Scを有する環状スワーラ10Sが嵌め込まれている。
また、第2空間12Kにおける任意の位置には、補助燃料用空気に所定強度のスワールを発生させる(環状の)スワーラ10Tが設けられており、第3空間13Kにおける任意の位置には、バイオマス燃料と1次空気に所定強度のスワールを発生させる(環状の)スワーラ10Uが設けられている。
【0020】
●[環状スワーラ10Sの構造(図3)]
次に図3を用いて環状スワーラ10Sの構造について説明する。
環状スワーラ10Sは、第3筒状部材13の外径よりやや大きな内径ΦBを有する内周円筒部材10Sbと、第4筒状部材14の内径よりもやや小さい外径ΦAを有する外周円筒部材10Saと、フランジ部10Sdと、案内部材10Scにて構成されている。
なお、案内部材10Scは、板状の部材を湾曲させて成形してもよいし、任意の方向に湾曲可能なフレキシブルチューブ等を用いてもよい。
内周円筒部材10Sbと外周円筒部材10Saは同軸上に配置され、内周円筒部材10Sbと外周円筒部材10Saとの間である第5空間10Skには、第5空間10Sk内を軸方向に進行する空気を時計回りまたは反時計回りに螺旋状に旋回させる単数または複数の案内部材10Scが取付けられている。
また案内部材10Scは、軸方向に対して取付け角度θとなるように取付けられており、この取付け角度θは、バイオマス燃料の燃料性状に対して必要なスワール強度が得られる角度に設定されている。
なおフランジ部10Sdは、図2における分割位置14Cに環状スワーラ10Sを固定するため等の目的で設けられている。
【0021】
●[スワール強度を変更する環状スワーラ10Sの交換方法(図4)]
次に図4を用いて環状スワーラ10Sの交換方法について説明する。
環状スワーラ10Sは、バイオマス燃料の燃料性状のそれぞれに必要なスワール強度を得るために、それぞれ異なる取付け角度θで案内部材10Scが取付けられた複数の環状スワーラ10Sが予め用意されている。
そこで、作業者は、バイオマス燃料の燃料性状に必要なスワール強度を発生させる環状スワーラ10Sを選択し、以下の手順にて、選択した環状スワーラ10Sを第4空間14Kに嵌め込む。
例えば、水分や揮発成分が多いバイオマス燃料に対しては、スワール強度がより強い環状スワーラを選択し、発熱量が高いバイオマス燃料や窒素分が多いバイオマス燃料に対しては、スワール強度がより弱い環状スワーラを選択する。
【0022】
作業者は、多管式バイオマス燃焼バーナ10がボイラ本体BRに取付けられている図2の上図の状態から、バーナ本体部10Yをボイラ本体BRから引き抜く。引き抜いた状態は、図4の上図に示すとおりである。
次に作業者は、分割位置14Cにて第4筒状部材14を14Aと14Bに分割し、14Bを軸方向に抜き取る。
そして作業者は、露出した環状スワーラ10Sを軸方向に抜き取り、選択した環状スワーラ10Sを軸方向に沿って第4空間14Kに嵌め込むことで、環状スワーラ10Sを交換する。このように環状スワーラ10Sは着脱可能に構成されている。
そして14Bを元通りとなるように軸方向に沿って取付け、バーナ本体部10Yをボイラ本体BRに取付ける。
【0023】
以上、環状スワーラ10Sを交換可能(着脱可能)に構成する例を説明したが、バイオマス燃料の燃料性状が比較的安定している場合は、環状スワーラ10Sのフランジ部10Sdを省略し、第4筒状部材14を14Aと14Bに分割せずに構成し、第4空間14Kの任意の位置に、当該燃料性状に適した角度θにて案内部材10Scを取付けた環状スワーラ10Sを嵌め込んで、環状スワーラ10Sを交換できない構成としてもよい。
【0024】
●[バイオマス燃料の燃焼に用いる1次空気量と2次空気量の決定方法(図5)]
次に図5を用いて、バイオマス燃料の搬送に用いる1次空気(バイオマス燃料の燃焼にも使用される)の量と、バイオマス燃料を燃焼させるための(1次空気では不足する空気を補うための)空気である2次空気の量の決定方法について説明する。
図5に示す燃料量−空気量特性は、横軸が単位時間あたりに搬送されるバイオマス燃料の量を示しており、縦軸が単位時間あたりに必要な空気の量を示している。
全空気量(QT)、1次空気量(Q1)、2次空気量(Q2)は、バイオマス燃料の量に応じて変動する。
【0025】
燃料量(W)に対応する理論空気量をQ0(W)として、全空気比をft(一定)とすると、全空気量QT(W)は、QT(W)=ft*Q0(W)となり、図5における直線状のグラフ(全空気量(QT))にて表される。なお全空気量は、1次空気量と2次空気量の合計空気量を示す。
また、ボイラの負荷(燃料量)の制御範囲を燃料量下限値(Wmin)から燃料量上限値(Wmax)とする。
多管式バイオマス燃焼バーナ10では、チップ状または粉状のバイオマス燃料を用いるが、例えば5[mm]以下のバイオマス燃料を用いる場合、バイオマス燃料を搬送する1次空気の流量が少ないと、安定してバイオマス燃料を搬送することが困難となる可能性がある。そこで、バイオマス燃料を安定的に搬送できる1次空気量の下限値をQ1minとする。
この場合、燃料量(W)に対する1次空気量(バイオマス搬送用空気量)Q1(W)は、図5に示すように、燃料量下限値(Wmin)≦燃料量(W)≦燃料量(Wch)の範囲では、Q1(W)=Q1minとなり、図5における折れ線状グラフ(1次空気量(Q1))にて表される。また燃料量(Wch)≦燃料量(W)≦燃料量上限値(Wmax)の範囲では、Q1(W)=f1*Q0(W)(f1=1次空気比(一定))となり、図5における折れ線状グラフ(1次空気量(Q1))にて表される。
ここで、Wchは燃料量下限値(Wmin)と燃料量上限値(Wmax)の間の第1所定量に相当し、Q1(W)=f1*Q0(W)の直線と、Q1(W)=Q1minの直線との交点における燃料量の値である。
【0026】
燃料量はボイラ本体BRの負荷で決まり、制御装置CTは、ボイラ本体BRの負荷に応じた燃料量(W)を求め、求めた燃料量(W)となるようにフィーダ装置S1を調整する。
そして制御装置CTは、求めた燃料量(W)と、図5に示す燃料量−空気量特性の1次空気量(Q1)より、必要な1次空気の量であるQ1(W)を求める。Wmin≦燃料量(W)≦Wchの範囲である場合は、Q1(W)=Q1minであり、Wch≦燃料量(W)≦Wmaxの範囲である場合は、Q1(W)=f1*Q0(W)から求める。
更に、制御装置CTは、求めた燃料量(W)と、図5に示す燃料量−空気量特性の全空気量(QT)より、必要な全空気の量(1次空気量+2次空気量)であるQT(W)を、QT(W)=ft*Q0(W)から求める。そして、全空気量QT(W)と1次空気量Q1(W)から、必要な2次空気の量であるQ2(W)を、Q2(W)=QT(W)−Q1(W)にて求める。
【0027】
そして制御装置CTは、1次空気量が上記で求めたQ1(W)となるように、図1に示すブロア装置C1の回転数やバルブB1aの開度等を制御する。この場合、ブロア装置C1、バルブB1aが1次空気量調整手段に相当する。
また制御装置CTは、2次空気量が上記で求めたQ2(W)となるように、図1に示すブロア装置C2の回転数やバルブB2aの開度等を制御する。この場合、ブロア装置C2、バルブB2aが2次空気量調整手段に相当する。
例えば5[mm]以下のバイオマス燃料を安定して搬送することができるQ1minを1次空気量の下限値として設定したことで、燃料量が少ない場合(燃料量下限値(Wmin)≦燃料量(W)≦第1所定量(Wch))であっても、安定した搬送を維持することが可能であり、安定した燃焼を維持することができる。
【0028】
以上、本実施の形態にて説明した多管式バイオマス燃焼バーナ10は、駆動ローラ等を有することなく、複数の筒状部材を同軸状に組み合わせた、よりシンプルな構造とすることができる。また、第4筒状部材14を分割式にして環状スワーラ10Sを着脱式とすることで、スワール強度を容易に変更することができる。また、1次空気量の下限値を設定することで、バイオナス燃料の量が少ない場合であっても、安定的にバイオマス燃料を搬送して安定的な燃焼を維持することができる。
【0029】
本発明の多管式バイオマス燃焼バーナ10は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造、制御等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
また、チップ状または粉状のバイオマス燃料は、ペレット状のバイオマス燃料も含み、バイオマス燃料の製造方法、形状等を限定するものではない。
【符号の説明】
【0030】
1 ボイラシステム
10 多管式バイオマス燃焼バーナ
10S 環状スワーラ
10Sc 案内部材
11 第1筒状部材
11K 第1空間
12 第2筒状部材
12K 第2空間
13 第3筒状部材
13K 第3空間
14 第4筒状部材
14K 第4空間
14C 分割位置
B1a、B1b、B2a、BN、BN1、BF バルブ
BR ボイラ本体
C1、C2、C3、CN ブロア装置
CT 制御装置
E 排煙装置
F フィルタ装置
S1 フィーダ装置
T1 バイオマス貯蔵タンク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ状または粉状のバイオマス燃料と、油またはガスの少なくとも一方である着火用補助燃料と、を用いて燃焼させる多管式バイオマス燃焼バーナにおいて、
前記多管式バイオマス燃焼バーナは、
異なる径の少なくとも4本の円筒状部材が同心状に最も内側の第1筒状部材から最も外側の第4筒状部材へと組み合わされており、
第1筒状部材の内部である第1空間には、前記着火用補助燃料が供給され、
前記第1筒状部材と第2筒状部材との間である第2空間には、前記着火用補助燃料を燃焼させるための空気である補助燃料用空気が供給され、
前記第2筒状部材と第3筒状部材との間である第3空間には、バイオマス燃料の搬送用の空気である1次空気とともにバイオマス燃料が供給され、
前記第3筒状部材と第4筒状部材との間である第4空間には、前記バイオマス燃料を燃焼させるための空気である2次空気が供給されている、
多管式バイオマス燃焼バーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の多管式バイオマス燃焼バーナであって、
前記第4空間における任意の位置には、軸方向に流れる空気を螺旋状に旋回させるために軸方向に対して所定の取付け角度にて取付けられた単数または複数の案内部材を有する環状スワーラが嵌め込まれている、
多管式バイオマス燃焼バーナ。
【請求項3】
請求項2に記載の多管式バイオマス燃焼バーナであって、
前記案内部材を取付ける前記取付け角度を変更した複数の環状スワーラが予め用意されており、
バイオマス燃料に応じて選択された環状スワーラを着脱可能に嵌め込むことが可能となるように、前記第4筒状部材は、前記2次空気の供給位置から当該第4筒状部材の先端までの任意の位置にて、軸方向に対して少なくとも2つに分割可能に構成されており、前記第4筒状部材の分割位置における第4空間には、選択された環状スワーラが着脱可能に嵌め込まれている、
多管式バイオマス燃焼バーナ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の多管式バイオマス燃焼バーナであって、
前記1次空気の空気量を調整可能な1次空気量調整手段と、
前記2次空気の空気量を調整可能な2次空気量調整手段と、
燃料量検出手段と、
前記1次空気量調整手段と前記2次空気量調整手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記燃料量検出手段からの信号に基づいて求めたバイオマス燃料の量に応じて変動する、前記1次空気と前記2次空気の合計の空気量である全空気量と、前記1次空気の空気量である1次空気量と、を求め、前記全空気量と前記1次空気量とに基づいて前記1次空気量調整手段と前記2次空気量調整手段を制御し、
前記1次空気量については、予め設定した1次空気量下限値以上となるように設定されており、
前記バイオマス燃料の下限量から、前記バイオマス燃料の下限量と上限量の間の第1所定量までの間は、前記1次空気量が前記1次空気量下限値となるように、前記1次空気量下限値が設定されている、
多管式バイオマス燃焼バーナ。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−12836(P2011−12836A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154840(P2009−154840)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390021278)株式会社タカハシキカン (10)
【出願人】(500029866)名古屋港木材倉庫株式会社 (5)
【Fターム(参考)】