説明

多結晶シリコンの製造方法

【課題】所定の粒度分布まで粉砕された、金属シリコンから出発する多結晶シリコンの製造方法を提供する。
【解決手段】金属シリコンと無水フッ化水素(HF)とを反応させて、四フッ化ケイ素(SiF4)を得ること、および四フッ化ケイ素(SiF4)を有機溶媒または溶融塩の流体媒体におけるアルカリ金属水素化物またはアルカリ土類金属水素化物で水素添加する反応によってモノシラン(SiH4)の合成を作動させることを含む。次に、前記モノシラン(SiH4)の沸騰疑似流動床反応器において熱分解を行って、高純度粒状多結晶シリコンを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発材料として金属シリコンを用いて多結晶シリコンを製造するための方法およびプラントに関する。特に、本発明は、太陽光発電ソーラーパネル生産における使用を可能にする高純度を有する多結晶シリコン製造の技術プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在までに、多結晶シリコンを製造するいくつかの技術プロセスが知られている。
第1の分類のプロセスには、シーメンスコア型反応器においてトリクロロシランSiHCl3の水素還元が必要である。例えば、このようなプロセスは、独国特許第2447691号明細書、独国特許第1148217号明細書、特開2005336045号公報、特開2005008430号公報、露国特許第2224715C1号明細書、露国特許出願第2136950号明細書、米国特許第4,525,334号明細書に記載されている。あるいはまた、このようなプロセスには、加国特許第1218218号明細書、米国特許第5,798,137号明細書に開示されるように、トリクロロシランの水素還元により沸騰床反応器において粒状シリコンを成長させることが必要である。
第2の分類のプロセスは、例えば、独国特許出願公開第102005044328A1号明細書、米国特許第6,395,248号明細書、米国特許第6,623,801B2号明細書、米国特許第5,382,419号明細書に示され、これにはシーメンスコア型反応器におけるモノシランの熱分解、更に、特開2000178028号公報、米国特許第4,314,525号明細書、米国特許第4,786,477号明細書、米国特許第4,784,840号明細書、米国特許第4,868,013号明細書、米国特許第4,992,245号明細書に開示されるように、沸騰床反応器において種子表面上で粒状多結晶シリコンを成長させることが必要である。
【0003】
第3の生産的分類は、特開2007084398号公報、特開昭60103015号公報、特開平11011925号公報に示されるように、液体およびガス処理による溶融シリコンの精製方法、更に独国特許出願第3128979F1号明細書に開示されるように最初の高純度珪石からシリコンを回収する方法からなっている。
このような既知のプロセスの大部分の共通の特徴は、例えば、コア型反応器あるいは沸騰床反応器において熱分解するシリカ化合物の回収方法または熱分解方法による、ガス状シリコン化合物から多結晶シリコン製造を予想することである。あるいはまた、このような既知のプロセスには、溶融シリコン処理と高純度珪石回収のような出発シリカ化合物の精製が予測され、中間のガス状シリコン形成物の形成が避けられている。
【0004】
更にまた、非常に少ない多段階技術プロセスが知られ、製造に用いられる多結晶シリコンと中間のシリコン双方が、中間のガス状シリコンを適切な製造業者から購入することを必要とせずに金属シリコンから連続の技術サイクルの範囲内で生産されている。例えば、誘導結合アルゴン含有プラズマにおいて四フッ化ケイ素SiF4分解によってソーラーグレード多結晶シリコンを製造する方法が知られている。このような方法には、シリコンペレットの沸騰床に供給するフッ素化ガスによる四フッ化ケイ素の合成が含まれる。
日本国特開2000178018号公報によれば、多結晶シリコンの製造は、金属シリコンとアルコールとを反応させてトリアルコキシシランを得; トリアルコキシシランを不均化してモノシランを得; モノシランを沸騰床反応器において熱分解して粒状シリコンを付着させることを含むプロセスに基づく。このプロセスには、ガス状反応副生成物の再循環および副生成物の1つとして高純度石英の分離が含まれる。同様の技術が特開2000178028号公報に示されている。
同様に、露国特許第2 078 304号明細書には、四フッ化ケイ素SiF4を二酸化物に、次に、高温で水素の援助により回収され得る一酸化シリコンに変換することによって多結晶シリコンを製造する技術プロセスが開示されている。このような場合、四フッ化ケイ素は、ケイフッ化物Na2SiF6の熱分解の結果である。
代わりに、米国特許第4,084,024号明細書には、多結晶シリコンを製造する閉鎖プロセスが開示され、最初に金属シリコンとハロゲンやハロゲン化水素とを単一サイクルで反応させることによってハロゲン含有シリコン化合物が得られ、その後、精製されたガス状化合物が熱分解を受けて、高純度多結晶シリコンが得られる。
【0005】
露国特許第2122971号明細書には、トリクロロシラン水素還元に続いて水素還元を含み且つ多結晶シリコンを得る閉鎖技術サイクルにおける多結晶シリコンの製造が開示され; ガス状混合物(SiCl4、H2、HCl)の副生成物が分離され、金属シリコンからトリクロロシランSiHCl3を製造するのに再使用される。
米国特許第6712908号明細書に記載される技術には、金属シリコンとヨウ素とを反応させて四ヨウ化シリコンを得、続いてそれをガス状反応副生成物から分離し、二ヨウ化シリコンを反応器の壁上に付着させて、結果として多結晶シリコンを得る連続工程が必要とされる。
独国特許第3311650号明細書には、金属シリコンと四塩化シリコンおよび水素とを反応させることによって製造における再使用のために副生成物を再循環しながら金属シリコンから得られるクロロシランからの多結晶シリコンの製造が開示されている。
しかしながら、多結晶シリコンを製造する上述の既知の解決法は、重大な欠点を有する。特に、エネルギー使用量が大きいことおよび有用な反応生成物の収率が低いことおよび高品質の原材料(高純度金属シリコン)または製造開始のためのシリカガスを購入する必要があることが報告されている。
既知の解決法の関連した他の欠点は、経済的および環境的双方の観点から処理されることが難しい廃棄物の高い生産量である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の範囲は列記した問題を克服することであるが、特に太陽光発電ソーラーパネル生産またはその類似体の生産に使われる、最適な方法で金属シリコンから出発する多結晶シリコンの製造を作動させることを可能にするプロセスである。
本発明の上述の目的からみて、本発明の目的は、更に、低エネルギー使用量で多結晶シリコンを製造することを可能にするプロセスを提供することである。
本発明の範囲は、更に、入口原材料と比較して高収率を有する多結晶シリコンの製造を可能にするプロセスを提供することである。
本発明の他の目的は、構造的にも機能的にもより簡易で且つ作動状態の信頼性が高い構造によって上述のプロセスに従い多結晶シリコンを製造するプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上述の目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
本発明の詳細は、同封図面に示される金属シリコンから出発する多結晶シリコンの製造方法の好ましい実施態様の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のプロセスに従って多結晶シリコンを製造する技術プロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
所定の粒度分布まで粉砕された、金属シリコンから出発する多結晶シリコンの製造方法は、以下の工程を含む:
a.金属シリコンと無水フッ化水素(HF)とを実質的に1.1バールの圧力下に250-600℃の温度で、好ましくは500℃で反応させて、四フッ化ケイ素(SiF4)を得る工程;
b.四フッ化ケイ素(SiF4)を有機溶媒または溶融塩の流体媒体におけるアルカリ金属ハライド又はアルカリ土類金属ハライドで水素添加する反応によってモノシラン(SiH4)を合成する工程;
c. モノシラン(SiH4)の熱分解を沸騰疑似流動床反応器において実質的に2バールの圧力下に実質的に650℃の温度で行って、高純度粒状多結晶シリコンを得る工程。
【実施例1】
【0010】
工程a.
四フッ化ケイ素(SiF4)の製造方法は、金属シリコンと無水フッ化水素HFとを反応させることによって行われる:
Si + 4HF → SiF4 + 2H2
好ましくは1.1バールの圧力下に範囲250-600℃に含まれる温度で; より効果的な温度は、約500℃である。反応は、2バール以下の圧力下に、1〜1.5 mmサイズの金属シリコンペレットの沸騰床において行われる。SiHF3、SiH22のようなフルオロカーボンガス状化合物の発生は、0.1〜1.1%の最大過剰フッ化水素で上記の反応を行いつつかなり阻止される。四フッ化ケイ素SiF4は、HF微量の回収可能な吸収体において精製を受け、次に低温凝縮器-蒸発器において凝結される。進行反応は、本来は、発熱反応である(反応熱は、524.23キロジュール/モルである); 従って、材料流れ加熱のための外部ヒータからの熱供給は、プロセスの初めに必要なだけである。その後、反応熱は、プロセス全体で反応の温度を維持するのに足りるほど充分である。反応から過剰の熱を除去するために、反応器は、拡張表面熱交換要素を含有する。
【0011】
四フッ化ケイ素SiF4の製造方法は、以下の段階を含む:
- 反応器を計算量の金属シリコン結晶粒で充填する段階;
- シリコンペレット床を不活性ガスの援助で疑似流動化状態に、必要な化学量論的フッ化水素使用量を著しく超えないようなペレット床液化に充分な算出速度で変換する段階;
- 混合物中の不活性ガスを同時還元しつつ反応器へ供給する同期ガス(HF)を反応させる段階。このプロセスは、0.1〜0.2 mmの直径まで出発金属シリコンペレットの粉砕に対応する瞬間まで過剰のHFで行われる。反応器からの排出量四フッ化ケイ素SiF4は、凝縮のために移され、一時凝結ドラム内に蓄積する。
【0012】
工程b.
四フッ化ケイ素SiF4からのモノシラン合成は、塩化リチウムと塩化カリウムの共晶融媒体において行われる:
SiF4 + 2CaH2 → SiH4 + 2CaF2
上記反応は、懸濁液の形で部分的に水素化カルシウムを含有し且つ部分的に溶解した三元塩混合物イオン性融液のバブリング反応器において行われる。反応器における最大圧力は、2.5バールである。プロセス温度は、一方の側で、塩混合物共融点に対する条件、もう一方の側で、直接反応器内で生産されるモノシランの瞬間熱分解を防止する必要に対する条件である。これらの問題に基づいて、最適プロセス温度範囲は、360〜380℃であると思われる。
フッ化カルシウムを含有する仕上げ溶融塩は、再循環を受け、その間にフッ化カルシウムCaF2がろ過によって分離され、塩混合物がプロセスに戻される。
モノシランは、機械的粒子を除去するために吸着剤を用いて精製されるかまたはろ過され、その後、ダイアフラム式圧縮機の援助によってガスホルダへ圧縮される。
長石の形のフッ化カルシウムは、HFの製造業者に供給されて反応が行われる:
CaF2 + H2SO4 = 2HF + CaSO4
【0013】
本方法のモノシランの製造方法は、次の工程を含む:
- 2チャンババブリング反応器のチャンバの1つを計算量のLiCl + KCl塩化物で充填する工程。充填量は、プロセス温度における融液中の水素化カルシウム溶解度が5%であるという仮定に基づいて算出される;
- 抵抗加熱によって塩化物混合物を融解する(融液の共融点は、360〜380℃の温度範囲の反応器内で達する)工程;
- バブリング反応器の第2のチャンバ内の棚に水素化カルシウムCaH2を共融充填量の5%の量で充填する工程;
- 溶融塩混合物を差圧を生じることによって2つのチャンバを接続するエアリフトパイプを通って反応器の第2のチャンバに送る工程;
- 溶融塩混合物にエアリフトパイプを通って四フッ化ケイ素を供給し且つ共融液に溶解あるいは懸濁した水素化カルシウムと反応させる工程。
【0014】
プロセスは、不溶性フッ化カルシウムCaF2の沈殿が随伴する。これをLiCl + KCl溶融物から分離するために、沈殿物の沈降は算出時間内で行われ、次に、フッ化カルシウムCaF2が以下の方法の1つの援助で除去される:
- 溶融塩は、不活性ガス差圧を生じることによって反応器の第1のチャンバに移され、LiCl + KCl混合物中にある程度まで含有する沈殿したCaF2を反応器から個別容器に排出され、分離のための塩再循環装置に達する。分離されたLiCl + KClは、反応器に戻され、そこでモノシラン合成が行われる;
- その中に懸濁したLiCl + KCl溶融物およびCaF2を遠心ケミカルポンプの援助で反応器の一方からもう一方にポンプで送りこむ。ポンプで送りこまれた材料はミクロ孔フィルタを通過し、その結果、CaF2沈殿物が分離される。得られたモノシランは、機械的粒子を除去するために吸着剤による処理およびろ過に供し、次に、ダイアフラム式圧縮機の援助でガスホルダへ圧縮される。
CaF2は、上述のために誘導された副生成物として用いられる。
【0015】
工程c.
沸騰床反応器内でモノシラン含有反応混合物の熱分解によって粒状多結晶を製造するプロセスは、以下の反応に従って行われる:
SiH4 → Si + 2H2
上記の反応に対応するプロセスは、モノシラン水素の混合物に分散したシリコンペレットの沸騰床において行われる。反応器シェルは、石英でできており; 塩を含んだ生成物が加熱した壁上に付着することを避けるために、反応器加熱は、赤外線によって行われる。最適プロセス温度は、650℃であり; 反応器内の圧力は、2バールに維持される。気相にシリコン凝集体の発生を阻止するために、反応器に供給されるモノシランは、水素で希釈される。次に、プロセスの間に生成される水素が精製され、3バールまで圧縮され、製造プロセスに再使用するために送られる。
【0016】
粒状多結晶の製造のためのプロセスには、次の工程が予測される:
- 直径約0.125 mmの計算量のシリコン顆粒-種子を沸騰床反応器に放出する工程;
- 最小限の疑似流動化速度以上の流量の水素流れによってシリコンペレット床を疑似流動化する工程;
- 水素使用量の同時還元による反応器へモノシランを供給するので、1〜50%のモノシラン含量を有するモノシラン・水素混合物が供給される工程。ペレットの慣用の仕上がり径が達されるまでプロセスが進行する。プロセスを行うのに必要とされる時間は、以下の式に基づいて求めることができる:
【0017】
【数1】

【0018】

は、現在の顆粒径、mmであり; MSiは、シリコンの分子量、g/モルであり; d0は、出発顆粒径、mmであり; Sは、床径、mmであり; Hは、床高さ、mmであり;εは、シリコンペレット床細孔率であり; wSiH4は、化学反応の速度定数、s-1である)。
算出プロセス時間が式に従って経過するか、または顆粒の算出仕上げ直径に達したときに、プロセスが終わる。
このプロセスは、また、製造された多結晶シリコンペレットおよびコアシードの一定の回収が行われる連続反応器において行われ得る。
記載された方法に従って技術プロセスを明確に理解するために、シリコンシードは、粒状多結晶シリコン付着だけでなく、SiF4製造の過程でエッチングする出発シリコンに調製されなければならない。これらのために、2つの個別ボール圧砕機が用いられる。
【実施例2】
【0019】
四フッ化ケイ素SiF4からモノシランSiH4を製造するプロセスは、以下の反応に従って行われる:
SiF4 + 4NaH → SiH4 + 4NaF
反応は、上記の実施例に用いたものと同様のバブリング反応器において行われる。有機溶媒の反応媒体は、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコール、またはいくつかのエーテルであり得る; 塩化亜鉛の使用が好ましい。触媒に適用される他の亜鉛含有材料は、金属亜鉛、酸化亜鉛、一般式R2Zn(式中、Rは、一般式Cn2n+1を有する水素基である)を有する亜鉛アルキレート、および水素化亜鉛である。亜鉛触媒を微細に粉砕された形で用いることが好ましく、通常は反応の過程で撹拌され、エーテルおよび固体試薬後の反応容器に導入され得る。
【0020】
本発明によれば、反応プロセスの過程で、反応器内で反応媒質の自動粘度制御が行われ、その値は粘度が上昇するにつれて液体有機溶媒を添加することによって一定に維持される。
反応が発熱性であることから、温度制御は、液体窒素あるいは再循環水であり得る媒体を冷蔵する循環によって冷却する反応容器によって行われる。さもなければ相間気液接触を低下させるキャビテーション状況に進むことから、液体反応混合物の沸騰を避けることが好ましい。反応が0℃より低い温度で進行する場合であっても、効果的な製造速度は短時間に達成され得る。それ故、テトラヒドロフランを用いる場合、0〜5℃の温度範囲でプロセスを行うことが好ましい。より高い沸騰エーテルが用いられるほど、改善された触媒効果の利点が高温で達成され、反応媒体の特性に左右される。いずれにしても、5〜35℃の範囲の反応温度が最も効果的である。このような温度が操作の便利さと単純さのために好ましい。
【0021】
プロセスは、本来は自動的に開始し、発熱性である。用いられる試薬の量は、四フッ化ケイ素の所定の水素添加度に基づいて必要な水素化物量を推定する少なくとも化学量論量である。エーテルの量は、反応混合物を液状に保つのに充分な量でなければならない。触媒の量は、広範囲の値より選ばれ得る; しかし、モル比触媒:四フッ化ケイ素は、1:10〜15:1の範囲を含む。より好ましくは、範囲は、1:8〜2:1、特に1:2である。試薬の接触は、混合の間に行われる; 水素化ナトリウム粉砕が金属水素化物に対する効果を得て有効な反応表面を得るために反応混合物に添加される塩化ナトリウムのような研磨剤と行われなければならないことが望ましい。
【0022】
本反応のモノシランの製造方法は、すでに記載されたものと同様に2チャンババブリング反応器において行われる。このプロセスによるモノシラン製造の間に行われる技術工程は、以下の通りである:
- 反応媒体として作用する計算量の液体有機化合物で反応器の第1のチャンバを充填する工程;
- 選ばれる有機化合物によって30〜60質量%の計算量の水素化ナトリウムで反応器の第2のチャンバを充填する工程;
- 不活性ガス差圧によって反応性の有機化合物を反応器の第2のチャンバに移す工程;
- 撹拌デバイスに切り替えて、有機溶媒容積中の水素化ナトリウムの均質懸濁液を得る工程;
- 四フッ化ケイ素をエアリフトパイプを通って反応媒体に供給し、水素化ナトリウムと反応させる工程。
【0023】
プロセスは、フッ化ナトリウムNaF沈殿物の分離が随伴する。これを有機溶媒から分離するために、有機溶媒とフッ化ナトリウムの混合物が再循環装置に移され、そこで固体沈殿物の遠心分離に続いて有機溶媒を蒸発させる。次に、蒸発した有機化合物は、熱交換装置に入り、そこでこのプロセスに可能な再使用のために溶離する。
四フッ化ケイ素と水素化カルシウムとの反応によるモノシラン合成プロセスにおいて、プロセスに用いられる水素化カルシウムは、カルシウム金属直接水素添加によって得られる。
反応は、疑似流動反応器において好ましくは500℃の温度で2.5バールの圧力下で、直径が1.5〜5 mmの粒状カルシウム粒子の相互作用によって行われる。
本発明によれば、プロセスサイクルの異なる段階で精製した後(カルシウム水素添加、沸騰床反応器におけるモノシラン熱分解)、反応器の出口における未反応水素の再循環は、その再利用のために企図される。
【0024】
水素化カルシウムの製造方法は、以下の作用的工程を企図する:
- 疑似流動反応器を計算量の粒状カルシウムで充填する工程;
- 水素を最小カルシウム顆粒疑似流動速度以上で且つこの反応に対する化学量論的水素使用量より著しく多くない流量で供給する工程。カルシウムと水素反応の指標は、反応の間、反応器において消費される水素の圧力低下である。一方、プロセスの終わりの徴候は反応器における一定圧の確立であり、これはプロセスの間に見られる圧力より高い;
- 水素化カルシウムペレットを個別気密容器に放出する工程。
各請求項において述べられる技術的特徴は、引用符号が続き、このような引用符号は請求項をより良く理解するために含まれているので、請求項はこのような引用符号によって確認される各要素の範囲に制限するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の粒度分布まで粉砕された、金属シリコンから出発する多結晶シリコンの製造方法であって:
a. 前記金属シリコンと無水フッ化水素(HF)とを実質的に1.1バールの圧力下に250-600℃の温度で反応させて、四フッ化ケイ素(SiF4)を得る工程;
b. 前記四フッ化ケイ素(SiF4)を有機溶媒または溶融塩の流体媒体においてアルカリ金属水素化物またはアルカリ土類金属水素化物で水素添加する反応によってモノシラン(SiH4)を合成する工程;
c. 前記モノシラン(SiH4)の熱分解を沸騰疑似流動床反応器において実質的に2バールの圧力下に実質的に650℃の温度で行って、高純度粒状多結晶シリコンを得る工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記金属シリコンと前記フッ化水素(HF)とを実質的に500℃の温度で反応させる必要があることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記四フッ化ケイ素(SiF4)を0.1 - 1.1%の質量百分率の過剰のフッ化水素で得る必要があることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属水素化物が、水素化ナトリウム(NaH)によって構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記四フッ化ケイ素(SiF4)と水素化ナトリウム(NaH)との前記水素添加反応をテトラヒドロフラン、ジエチレングリコールまたは単エーテルのような有機溶媒の液体媒体中で実質的に0℃の温度で行う必要があることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属水素化物が、水素化カルシウム(CaH2)によって構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
四フッ化ケイ素と水素化カルシウム(CaH2)とを塩化リチウム(LiCl)と塩化カリウム(KCl)の共晶融液の媒体中360℃〜380℃の温度で実質的に2.5バールの圧力下に反応させることによって前記モノシラン合成(SiH4)を行う必要があることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水素を有する粒状カルシウムを実質的に500℃の温度で実質的に2.5バールの圧力下に疑似流動層反応器内で水素添加することによる、四フッ化ケイ素(SiF4)との前記反応における水素供与体としての水素化カルシウム(CaH2)の使用を必要とすることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モノシラン(SiH4)の前記熱分解が、放射線によって加熱された、前記モノシラン(SiH4)石英容器の熱分解反応器内のシリコンペレットの疑似流動床において行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
所定の粒度分布まで粉砕された、金属シリコンから出発する多結晶シリコンの製造のためのプラントであって、前記金属シリコンと無水フッ化水素(HF)とを実質的に1.1バールの圧力下に250-600℃の温度で反応させて、四フッ化ケイ素(SiF4)を得る手段; 前記四フッ化ケイ素(SiF4)を有機溶媒または溶融塩の流体媒体におけるアルカリ金属水素化物またはアルカリ土類金属水素化物で水素添加反応することによってモノシラン(SiH4)の合成を行う手段; 前記モノシラン(SiH4)の熱分解を疑似流動化沸騰床反応器において実質的に2バールの圧力下に実質的に650℃の温度で作動させて、高純度粒状多結晶シリコンを得る手段を備えることを特徴とする、前記プラント。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−505825(P2012−505825A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532730(P2011−532730)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007166
【国際公開番号】WO2010/046751
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511099548)
【Fターム(参考)】