説明

多結晶シリコン薄膜検査方法及びその装置

【課題】多結晶シリコン薄膜の表面の状態を光学的に観察して、多結晶シリコン薄膜の結
晶の状態を検査することを可能にする。
【解決手段】多結晶シリコン薄膜検査装置の基板検査部を、表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に光を照射する照明手段と、照明手段により光が照射された基板から第1の方向に発生した第1の1次回折光の光学像を撮像する第1の撮像手段と、照明手段により光が照射された基板から第2の方向に発生した第2の1次回折光の光学像を撮像する第2の撮像手段と、第1の撮像手段で第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と第2の撮像手段で第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定する信号処理・判定手段とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成したアモルファスシリコンをレーザアニールにより多結晶化さ
せた多結晶シリコン薄膜の結晶の状態を検査する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子や有機EL素子などに用いられる薄膜トランジスタ(TFT)は、高速な
動作を確保するために、基板上に形成したアモルファスシリコンの一部をエキシマレーザ
で低温アニールすることにより多結晶化した領域に形成されている。
【0003】
このように、アモルファスシリコンの一部をエキシマレーザで低温アニールして多結晶
化させる場合、均一に多結晶化させることが求められるが、実際には、レーザ光源の変動
の影響により結晶にばらつきが生じてしまう場合がある。
【0004】
そこで、このシリコン結晶のばらつきの発生状態を監視する方法として、特許文献1に
は、パルスレーザを半導体膜に照射してレーザアニールを行うとともにレーザ照射領域に
検査光を照射し、照射した検査光による基板からの反射光を検出し、この反射光の強度変
化から半導体膜の結晶化の状態を確認することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、レーザを照射前の非晶質シリコンに検査光を照射してその反射
光又は透過光を検出しておき、レーザを非晶質シリコンに照射中にも検査光を照射してそ
の反射光又は透過光を検出し、レーザ照射前とレーザ照射中の反射光又は透過光の強度の
差が最大になったときからレーザ照射前の反射光又は透過光の強度に戻るまでの経過時間
を検出してレーザアニールの状態を監視することが記載されている。
【0006】
更に、特許文献3には、基板上に形成された非晶質シリコンをエキシマレーザアニール
により多結晶シリコンに変化させた領域に可視光を基板表面に対して10−85度の方向
から照射し、照射と同じ角度の範囲に接地したカメラで反射光を検出し、この反射光の変
化から結晶表面の突起の配置の状態を検査することが記載されている。
【0007】
更に、特許文献4には、アモルファスシリコン膜にエキシマレーザを照射して形成した
多結晶シリコン薄膜に検査光を照射して多結晶シリコン薄膜からの回折光を回折光検出器
でモニタリングし、多結晶シリコン薄膜の結晶性が高い規則的な微細凹凸構造の領域から
発生した回折光の強度が結晶性の低い領域からの回折・散乱光の強度に比べて高いことを
利用して、多結晶シリコン薄膜の状態を検査することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−305146号公報
【特許文献2】特開平10−144621号公報
【特許文献3】特開2006−19408号公報
【特許文献4】特開2001−308009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アモルファスシリコンの薄膜にエキシマレーザを照射してアニールすることにより形成
した多結晶シリコン薄膜(ポリシリコン膜)の表面には、微細な凹凸がある周期で発生する
ことが知られている。そして、この微細な突起は、多結晶シリコン薄膜の結晶性の度合い
を反映しており、結晶状態が均一な(多結晶粒径がそろっている)多結晶シリコン薄膜の
表面には微細な凹凸がある規則性をもって周期的に形成され、結晶状態の均一性が低い(
多結晶粒径が不ぞろいな)多結晶シリコン薄膜の表面には微細な凹凸が不規則に形成されることが知られている。
【0010】
このように、結晶の状態が反射光に反映される多結晶シリコン薄膜の表面状態を検査す
る方法として、特許文献1にはレーザアニールした領域に照射した光の反射光の強度変化
から半導体膜の結晶化の状態を確認することが記載されているだけで、結晶の状態が反映
されている回折光を検出することについては記載されていない。
【0011】
また、特許文献2には、レーザアニール中のレーザ照射領域からの反射光をアニール前
の反射光と比較してアニールの進行状態をモニタするものであって、特許文献1と同様に
結晶の状態が反映されている回折光を検出することについては記載されていない。
【0012】
一方、特許文献3には、レーザアニールによって形成される多結晶シリコン薄膜表面の
突起の配置により反射する光の変化によって多結晶シリコンの結晶の品質を検査すること
が記載されているが、多結晶シリコン薄膜表面の突起により発生する回折光を検出するこ
とについては記載されていない。
【0013】
更に、特許文献4には、レーザアニールによって形成される多結晶シリコン薄膜表面の
突起により発生する回折光を検出することについては記載されているが、回折光検出器で
検出した回折光の強度レベルをモニタして多結晶シリコン膜の状態を検査するものであっ
て、多結晶シリコン薄膜の表面の画像を検出して多結晶シリコン薄膜の表面のある領域の
突起の状態を観察することについては記載されていない。
【0014】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決して、多結晶シリコン薄膜の表面の画
像を検出して多結晶シリコン薄膜の表面の状態を観察し、多結晶シリコン薄膜の結晶の状
態を検査することを可能にする多結晶シリコン薄薄膜の検査方法及びその装置を提供する
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するために、本発明では、基板ロード部と、基板検査部と、基板アンロード部と、全体制御部とを備えた多結晶シリコン薄膜検査装置において、基板検査部を、表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に第1の波長の光を第1の方向から照射する第1の照明手段と、基板の第1の照明手段により第1の波長の光が照射された領域に第2の波長の光を第2の方向から照射する第2の照明手段と、第1の照明手段と第2の照明手段により第1の波長の光と第2の波長の光が照射された基板から第3の方向に発生した第1の波長の光による第1の1次回折光の光学像を撮像する第1の撮像手段と、第1の照明手段と第2の照明手段により第1の波長の光と第2の波長の光が照射された基板から第4の方向に発生した第2の波長の光による第2の1次回折光の光学像を撮像する第2の撮像手段と、第1の撮像手段で第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と第2の撮像手段で第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定する信号処理・判定手段とを備えて構成した。
【0016】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、基板ロード部と、基板検査部と、基板アンロード部と、全体制御部とを備えた多結晶シリコン薄膜検査装置において、基板検査部を、表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に光を照射する照明手段と、照明手段により光が照射された基板から第1の方向に発生した第1の1次回折光の光学像を撮像する第1の撮像手段と、照明手段により光が照射された基板から第2の方向に発生した第2の1次回折光の光学像を撮像する第2の撮像手段と、第1の撮像手段で第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と第2の撮像手段で第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定する信号処理・判定手段とを備えて構成した。
【0017】
更に、上記した課題を解決するために、本発明では、多結晶シリコン薄膜を検査する方法を、表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に第1の波長の光を第1の方向から照射し、基板の第1の波長の光が照射された領域に第2の波長の光を第2の方向から照射し、 第1の波長の光と第2の波長の光が照射された基板から第3の方向に発生した第1の波長の光による第1の1次回折光の光学像を撮像し、第1の波長の光と第2の波長の光が照射された基板から第4の方向に発生した第2の波長の光による第2の1次回折光の光学像を撮像し、第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定するようにした。
【0018】
更にまた、上記した課題を解決するために、本発明では、多結晶シリコン薄膜を検査する方法を、表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に光を照射し、この光が照射された基板から第1の方向に発生した第1の1次回折光の光学像を撮像し、光が照射された基板から第2の方向に発生した第2の1次回折光の光学像を撮像し、第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定するようにした。
【0019】
また、上記した従来技術の課題を解決するために、本発明では、多結晶シリコン薄膜検
査装置を、表面に多結晶シリコン薄膜が形成された光学的に透明な基板に該基板の一方の
面の側から光を照射する光照射手段と、光照射手段により基板の一方の面の側から照射さ
れた光により基板と多結晶シリコン薄膜とを透過して基板の他方の面の側に出射した光に
より他方の面の側に発生した1次回折光の像を撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像して
得た1次回折光の像を処理して多結晶シリコン薄膜の結晶の状態を検査する画像処理手段
と、画像処理手段で処理した1次回折光の像を検査した結果の情報と共に画面上に表示す
る出力手段とを供えて構成し、表面に多結晶シリコン薄膜が形成された光学的に透明な基
板に基板の一方の面の側から光を照射し、基板の一方の面の側から照射された光のうち基
板と多結晶シリコン薄膜とを透過して基板の他方の面の側に出射した光により他方の面の
側に発生した1次回折光の像を撮像し、撮像して得た1次回折光の像を処理して多結晶シ
リコン薄膜の結晶の状態を検査し、処理した1次回折光の像を検査した結果の情報と共に
画面上に表示するようにした。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エキシマレーザでアニールされて形成された多結晶シリコン薄膜の結晶の状態からアニール時に照射されたエキシマレーザのエネルギの適否が容易に判定することができるようになった。また、判定した結果に基づいて照射エネルギを制御することで、液晶表示パネル用ガラス基板の品質を高く維持することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】エキシマレーザの照射エネルギと多結晶シリコン薄膜の結晶粒径との関係を示すグラフである。
【図2A】エキシマレーザの照射エネルギが小さいときに形成される多結晶シリコン薄膜の状態を模式的に示した多結晶シリコン薄膜の平面図である。
【図2B】エキシマレーザの照射エネルギが適正なときに形成される多結晶シリコン薄膜の状態を模式的に示した多結晶シリコン薄膜の平面図である。
【図2C】エキシマレーザの照射エネルギが大きすぎたときに形成される多結晶シリコン薄膜の状態を模式的に示した多結晶シリコン薄膜の平面図である。
【図3】多結晶シリコン薄膜が形成された基板に照明光を照射して1次回折光を検出する光学系の概略の構成を示すブロック図である。
【図4】エキシマレーザの照射エネルギと、照明光を照射したときに多結晶シリコン薄膜から発生する1次回折光の輝度との関係を示すグラフである。
【図5】エキシマレーザの照射エネルギと、照明光を照射したときに異なる検出角で検出される1次回折光の輝度との関係を示すグラフである。
【図6】図5に示した2つの特性曲線から求めたEV(x)とエキシマレーザ照射エネルギとの関係を示すグラフである。
【図7】検査装置全体の概略の構成を説明するブロック図である。
【図8】実施例1における検査ユニットの概略の構成を説明するブロック図である。
【図9】実施例1における多結晶シリコン薄膜の結晶の状態を検査するために基板を撮像する撮像シーケンスを示すフロー図である。
【図10】実施例1における多結晶シリコン薄膜の結晶の状態を検査するために撮像して得た画像を処理して欠陥部分を検出する画像処理のシーケンスを示すフロー図である。
【図11】実施例1における検査ユニットの検査結果を出力する画面の正面図である。
【図12A】実施例1における検査ユニットの検査結果を出力する画面の基板全体分布表示領域1103に表示する基板全体のエキシマレーザの照射エネルギ強度分布をマトリックス状に表示した図である。
【図12B】実施例1における検査ユニットの検査結果を出力する画面の基板全体分布表示領域1103に表示する基板全体のエキシマレーザの照射エネルギ強度のうち、しきい値を超えた領域を表示した例を示す図である。
【図13】実施例2における照明光学系の概略の構成を示すブロック図である。
【図14】実施例3における検査ユニットの概略の構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態として、液晶表示パネル用ガラス基板に形成した多結晶シリコン薄
膜を検査する装置に適用した例を説明する。
【0023】
検査対象の液晶表示パネル用ガラス基板(以下、基板と記す)には、基板上にアモルファスシリコンの薄膜が形成されている。そのアモルファスシリコンの薄膜の一部の領域にエキシマレーザを照射して走査することにより、エキシマレーザが照射された部分のアモルファスシリコンを加熱して溶融し(アニール)、エキシマレーザが走査された後、溶融したアモルファスシリコンが徐々に冷却されて多結晶化し、多結晶シリコンの状態に結晶が成長する。
【0024】
図1のグラフには、エキシマレーザでアモルファスシリコンをアニールするときのエキシマレーザの照射エネルギと多結晶シリコンの結晶粒径の概略の関係を示す。アニール時のエキシマレーザの照射エネルギを大きくすると多結晶シリコンの結晶粒径も大きくなる。
【0025】
アニール時のエキシマレーザの照射エネルギが弱い(図1の範囲A)場合には、図2Aに示すように多結晶シリコン膜の結晶201の粒径が小さく、かつ、ばらつきが大きい状態となってしまう。このような結晶状態では、多結晶シリコン膜として安定した特性を得ることができない。
【0026】
これに対して、アニール時のエキシマレーザのエネルギを適切な範囲(図1の範囲B)に設定すると、図2Bに示すように結晶202の粒径が比較的揃った多結晶シリコン膜が形成される。このように、結晶粒径が揃った状態に膜が得られると、多結晶シリコン膜として安定した特性を得ることができる。
【0027】
アニール時のエキシマレーザの照射エネルギを更に上げていくと(図1の範囲C)、多結晶シリコンの結晶粒径が大きくなっていく。しかし、照射エネルギを大きくすると結晶粒の成長速度のばらつきが大きくなり、図2Cに示すように結晶203の粒径のばらつきが大きな多結晶シリコン膜となってしまい、多結晶シリコン膜として安定した特性を得ることができない。
【0028】
従って、アモルファスシリコンに照射するエキシマレーザのエネルギを図1のBの範囲に安定に維持することが重要になる。
【0029】
一方、特許文献3に記載されているように、アモルファスシリコンをエキシマレーザでアニールして形成した多結晶シリコン膜には、結晶粒界に微小な突起が形成されることが知られている。
【0030】
このような多結晶シリコン膜301が形成されたガラス基板10に図3に示すように裏側に配置した光源310から光を照射すると、多結晶シリコン膜301の結晶粒界の微小な突起302で散乱された光によりガラス基板10の表面の側に回折光が発生する。この回折光が発生する位置は、光源310から照射する光の波長や多結晶シリコン膜301の結晶粒界に形成される微小な突起302のピッチによって異なる。
【0031】
図3に示した構成において、基板300を照射する光の波長をλ、多結晶シリコン膜301の結晶粒界に形成される微小な突起302のピッチをP,基板300を照射する光の基板300の法線方向からの角度をθi、基板300から発生する1次回折光の基板300の法線方向からの角度をθoとすると、それらの間には、
sinθi+sinθo=λ/P ・・・(数1)
という関係が成り立つ。
【0032】
従って、多結晶シリコン膜301の結晶粒界に微小な突起302が所定のピッチPで形成されている状態で、光源310から出射して角度θiの方向から照射された波長λの光により発生する1次回折光を、角度θoの位置に配置した撮像カメラ320で観察することにより、多結晶シリコン膜301からの1次回折光を観察することができる。
【0033】
一方、多結晶シリコン膜301の結晶粒径は、図1に示したようにアニール時のエキシマレーザの照射エネルギに依存し、図1のエキシマレーザの照射エネルギがA,B及びCの領域では、結晶粒径がエキシマレーザの照射エネルギの増加に伴って大きくなる。従って、アニール時にエキシマレーザの照射エネルギが変動すると多結晶シリコン膜301の結晶粒径が変化すると共に図2A乃至図2Cで説明したように粒径のばらつきが大きくなる。この結晶粒径が変化して微小な突起302のピッチのばらつきが大きくなった状態の多結晶シリコン膜301に光源310から光を照射した場合、多結晶シリコン膜301から発生する1次回折光の進行方向が変化すると主にその強度が低下してしまうために、撮像カメラ320で検出される1次回折光の輝度が減少する。
【0034】
このように、1次回折光の輝度が減少して撮像カメラ320による1次回折光の検出強度が低下する現象は、図4に示すように、アニール時のエキシマレーザの照射エネルギが大きい方向に変動して多結晶シリコン膜301の結晶粒径が全体として大きくなった場合と、アニール時のエキシマレーザの照射エネルギが小さい方向に変動して多結晶シリコン膜301の結晶粒径が全体として小さくなった場合とに同様に発生する。
【0035】
従って、撮像カメラ320による1次回折光の検出強度信号だけでは、多結晶シリコン膜301の結晶粒径が大きい状態なのか、小さい状態なのかを判別することが難しい。
【0036】
これを解決するためには、図5に示すように多結晶シリコン膜301の微小な突起302からの回折光に対して異なる検出特性を有する2つの検出系を設け、それぞれの検出系の出力を用いて多結晶シリコン膜301の結晶粒径の変化の状態を検知すればよい。
【0037】
即ち、図5に示すように、アニール時のエキシマレーザの照射エネルギをxとし、複数の実測値を求めてそれらが2次関数分布をしていると仮定して求めた第1の検出系の検出特性をf(x)とし、第2の検出系の検出特性をg(x)として、
f(x)=a(x−α)+b
ここで、a,bは定数、αはf(x)が最大となるときのx値
g(x)=c(x−β)+d
ここで、c,dは定数、βはg(x)が最大となるときのx値
と表したときに、f(x)とg(x)との合成関数としてEV(x)を以下のように定義する。
EV(x)=−cf(x)+ag(x)
=−2ac(β−α)x+ac(β−α)+c(d−b) ・・・(数2)
即ち、EV(x)はxの1次関数として表すことができ、例えば図6のようになるので、f(x)とg(x)とを検出してEV(x)を求めることにより、エキシマレーザの照射エネルギxを一義的に求めることが可能になる。
【0038】
本発明では、多結晶シリコン薄膜を照明して膜表面の微小な突起により発生する回折光の像を撮像し、撮像して得た回折光の画像を処理することにより、基板上に多結晶シリコン薄膜が結晶の粒径がそろった状態の正常な膜として形成されているかどうかを検査して多結晶シリコン薄膜の結晶の状態を評価する方法及びその装置を提供するものである。
以下に、本発明の実施例を図を用いて説明する。
【実施例1】
【0039】
本発明に係る液晶表示パネル用ガラス基板の多結晶シリコン薄膜検査装置700の全体の構成を図7に示す。
【0040】
多結晶シリコン薄膜検査装置700は、基板ロード部710、検査部720、基板アンロード部730、検査部データ処理・制御部740及び全体制御部750で構成されている。
【0041】
検査対象の液晶表示パネル用ガラス基板(以下、基板と記す)300は、ガラス基板303上に形成されたアモルファスシリコンの薄膜に、本検査工程の直前の工程で一部の領域にエキシマレーザを照射して走査し加熱することにより加熱された領域がアニールされてアモルファスの状態から結晶化し、図3に示したように、多結晶シリコン薄膜301の状態になる。多結晶シリコン薄膜検査装置700は、基板300の表面を撮像して、この多結晶シリコン薄膜301が正常に形成されているかどうかを調べるものである。
【0042】
検査対象の基板300は、図示していない搬送手段でロード部710にセットされる。ロード部710にセットされた基板300は、全体制御部750で制御される図示していない搬送手段により検査部720へ搬送される。検査部には検査ユニット721が備えられており、検査データ処理・制御ユニット740で制御されて基板300の表面に形成された多結晶シリコン薄膜の状態を検査する。検査ユニット721で検出されたデータは検査データ処理・制御ユニット740で処理されて基板300の表面に形成された多結晶シリコン薄膜301の状態が評価される。
【0043】
検査が終わった基板300は、全体制御部750で制御される図示していない搬送手段により検査部720からアンロード部730に搬送され、図示していないハンドリングユニットにより検査装置700から取り出される。なお、図7には、検査部720に検査ユニット721が1台備えられている構成を示しているが、検査対象の基板300のサイズや形成される多結晶シリコン薄膜301の面積や配置に応じて2台であっても、又は3台以上であっても良い。
【0044】
検査部720における検査ユニット721の構成を図8に示す。
検査ユニット721は、照明光学系810、撮像光学系820、基板ステージ部830及び検査部データ処理・制御部840で構成されており、検査部データ処理・制御部840は図7に示した全体制御部750と接続している。
【0045】
照明光学系810は、第1の波長λ1の光を発射する第1の光源811、第1の光源811から発射された第1の波長λ1の光の光路を変換する第1のミラー812、第1のミラー812で光路を変換された第1の波長λ1の光を集光して線状の光に成形して基板ステージ部830に保持されているガラス基板300に照射する第1のシリンドリカルレンズ813と、第1の波長λ1の光よりも波長が長い第2の波長λ2の光を発射する第2の光源814、第2の光源814から発射された第2の波長λ2の光の光路を変換する第2のミラー815、第2のミラー815で光路を変換された第2の波長λ2の光を集光して線状の光に成形して基板ステージ部830に保持されているガラス基板300の第1の波長λ1の光が照射されている領域に照射する第2のシリンドリカルレンズ816とを備えている。
【0046】
第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光とは、300nm〜700nmの範囲の波長の光であり、第1の光源811と第2の光源814には、例えば、レーザダイオードを用いる。
【0047】
第1のシリンドリカルレンズ813は、第1の光源811から発射されて第1のミラー812で光路を変換させられた第1の波長λ1の光を、基板300上の検査領域の大きさに合わせて効率よく照明できるように照明光束を一方向に集光させて断面形状が一方向に長い線状の形状に成形する。第1のシリンドリカルレンズ813で一方向に集光した光を基板300に、法線方向に対してθ1の角度方向から照射することにより、基板300上の検査領域の照明光量が増加し、撮像光学系820で、よりコントラストの高い画像を検出することができる。
【0048】
第2のシリンドリカルレンズ816も、第2の光源814から発射されて第2のミラー815で光路を変換させられた第2の波長λ2の光を、基板300上の第1のシリンドリカルレンズ813により第1の波長λ1の光が照射された検査領域に合わせて効率よく照明できるように照明光束を一方向に集光させて断面形状が一方向に長い線状の形状に成形する。第2のシリンドリカルレンズ816で一方向に集光した光を基板300に、法線方向に対してθ2の角度方向から照射することにより、基板300上の検査領域の照明光量が増加し、撮像光学系820で、よりコントラストの高い画像を検出することができる。
【0049】
撮像光学系820は、第1の波長の光を選択的に透過する第1の波長選択フィルタ821と、第1の波長選択フィルタ821を透過した第1の波長の光による基板300から発生する1次回折光による像を撮像する第1の結像レンズ系822を備えた第1のカメラ823、第2の波長の光を選択的に透過する第2の波長選択フィルタ824と、第2の波長選択フィルタ824を透過した第2の波長の光による基板300から発生する1次回折光による像を撮像する第2の結像レンズ系825を備えた第2のカメラ826とを備えている。
【0050】
波長選択フィルタ821は、基板300からの回折光のうち第1の波長の光を選択的に透過させるものであり、基板300及び周辺からの第1の波長の光以外の波長の光をカットすることができる。
【0051】
波長選択フィルタ823も、基板300からの回折光のうち第2の波長の光を選択的に透過させるものであり、基板300及び周辺からの第2の波長の光以外の波長の光をカットすることができる。
【0052】
第1のカメラ823は、基板300の法線方向に対してθ3傾いた角度方向に設置されている。第1のカメラ823は、第1のシリンドリカルレンズ813により成形された第1の波長λ1の光が照明された基板300の表面の一方向に長い領域に存在する多結晶シリコン薄膜301の結晶粒界にピッチP1で形成された微小突起302からの1次回折光による光学像を撮像する。第1のカメラ823は、基板300の照明された一方向に長い領域の像に合わせて配置された1次元のCCD(電化結合素子)イメージセンサ(図示せず)、又は2次元のCCDイメージセンサ(図示せず)を備えている。
【0053】
すなわち、第1のカメラ823の傾き角度θ3は、多結晶シリコン薄膜301の結晶粒界の微小突起302のピッチP1と、第1の波長の光の波長λ1、及び第1の波長の光の基板300への入射角度θ1により、数1の関係に基づいて決まる。決まる。
【0054】
第2のカメラ826は、基板300の法線方向に対してθ4傾いた角度方向に設置されている。第2のカメラ826は、第2のシリンドリカルレンズ816により第2の波長λ2の光が照明された基板300の表面の一方向に長い領域に存在する多結晶シリコン薄膜301の結晶粒界にピッチP2で形成された微小突起302からの1次回折光による光学像を撮像する。第2のカメラ826は、基板300の照明された一方向に長い領域に合わせて配置された1次元のCCD(電化結合素子)イメージセンサ(図示せず)、又は2次元のCCDイメージセンサ(図示せず)を備えている。
【0055】
すなわち、第2のカメラ826の傾き角度θ4は、多結晶シリコン薄膜301の結晶粒界の微小突起302のピッチP2と、第2の波長の光の波長λ2、及び第2の波長の光の基板300への入射角度θ2により、数1の関係に基づいて決まる。
【0056】
このとき、第1の波長の光の波長λ1を第2の波長の光の波長λ2よりも短くし、微小突起302のピッチP1を微小突起302のピッチP2よりも小さくし、かつ、第1の波長の光の基板300への入射角度θ1を第2の波長の光の基板300への入射角度θ2よりも大きく設定すると、第1のカメラ823の傾き角度θ3は第2のカメラ826の傾き角度θ4よりも十分小さく設定することができ、基板ステージ831の上方で第1のカメラ823と第2のカメラ826とを、互いに干渉することなく設置することができる。
【0057】
また、第1のカメラ823をピッチP1の微小突起302からの1次回折光を検出する位置に設置し、第2のカメラ826をピッチP2の微小突起302からの1次回折光を検出する位置に設置することにより、それぞれのカメラの検出信号から図5に示したようなピーク位置の異なる2つの特性曲線を得ることができ、図6に示したような1次関数EV(x)の関係を求めることができる。
【0058】
基板ステージ部830は、駆動手段832によりXY平面内で移動可能なステージ831の上面に検査対照の基板300を載置して保持する。駆動手段832は、例えばステッピングモータ又はロータリエンコーダが備えられたサーボモータを用いればよい。
【0059】
検査データ処理・制御部840は、第1のカメラ823から出力されるアナログ画像
信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換部841、第2のカメラ826から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換部842、A/D変換部841とA/D変換部842とでそれぞれA/D変換されたデジタル画像信号を(数1)を用いて演算して基板300上の多結晶シリコン薄膜301に照射されたエキシマレーザのエネルギを算出する演算部843、演算部843で基板300上の各領域ごとのエキシマレーザの照射エネルギの分布を求めて画像化する処理判定部844、処理判定部844で処理された結果を表示する表示部8451を備えた入出力部845、第1の光源811と第2の光源814との電源部846、基板ステージ部830の駆動手段832を制御する駆動手段制御部847、及び、演算部843と処理判定部844と出力部845と電源部846と駆動手段制御部847とを制御する制御部848とを備えている。
また、制御部847は全体制御部750と接続されている。
【0060】
このような構成で、照明光学系810は基板ステージ831に載置された基板300を裏面側から照明し、基板300を透過した光により発生した1次回折光の像を撮像光学系820で撮像し、検査データ処理・制御部840で処理して基板300上に形成された多結晶シリコン薄膜301の結晶の状態を検査する。
【0061】
次に、図8に示した構成の検査ユニット721を用いて基板300上のエキシマレーザでアニールされて多結晶化した多結晶シリコン薄膜301の状態を検査する方法について説明する。
【0062】
先ず、基板300上のエキシマレーザのアニールにより形成された多結晶シリコン薄膜301の検査領域を検査する処理の流れを説明する。検査処理には、基板300の所定の領域又は全面を撮像する撮像シーケンスと、撮像して得た画像を処理して欠陥部分を検出する画像処理のシーケンスとがある。
【0063】
先ず、撮像シーケンスについて図9を用いて説明する。
最初に、多結晶シリコン薄膜301の検査領域の検査開始位置が撮像光学系820の第1のカメラ823及び第2のカメラ826の視野に入るように駆動手段制御部847で駆動手段832を駆動して基板ステージ831の位置を制御し、基板300を初期位置(検査開始位置)に設定する(S901)。
【0064】
次に、電源制御部846で第1の光源811と第2の光源814とを制御して、第1のシリンドリカルレンズ813により線状に成形された第1の波長の光をθ1の入射角度で、第2のシリンドリカルレンズ816により線状に成形された第2の波長の光をθ2の入射角度でそれぞれ基板300上の多結晶シリコン薄膜301の同じ領域に照射する(S902)。照明光学系810により第1の波長の光と第2の波長の光とが照明された多結晶シリコン薄膜301の検査領域に沿って撮像光学系820の撮像領域が移動するように、駆動手段制御部847で駆動手段832を制御して基板ステージ831を一定の速度での移動を開始する(S903)。
基板ステージ831を一定の速度で移動させながら、照明光学系810の第1のシリンドリカルレンズ813により線状に成形されてθ1の角度で入射した第1の波長の光により照明された多結晶シリコン薄膜301の一方向に長い検査領域の結晶粒界の微小突起302からθ3の方向に発生した1次回折光による光学像を波長選択フィルタ821を介して第1のカメラ823で撮像する。また、同時に、照明光学系810の第2のシリンドリカルレンズ816により線状に成形されてθ2の角度で入射した第2の波長の光により照明された多結晶シリコン薄膜301の一方向に長い検査領域の結晶粒界の微小突起302からθ4の方向に発生した1次回折光による光学像を、波長選択フィルタ824を介して第2のカメラ826で撮像する(S904)。
【0065】
第1の波長の光の1次回折光による光学像を撮像した第1のカメラ823からの検出信号は、検査データ処理・制御部840のA/D変換部841に入力してA/D変換されて演算処理部843に入力される。第2の波長の光の1次回折光による光学像を撮像した第2のカメラ826からの検出信号は、検査データ処理・制御部840のA/D変換部842に入力してA/D変換されて演算処理部843に入力される。演算処理部843に入力された検出信号は、駆動手段制御部847を介して得られた基板ステージ831の位置情報を用いて処理されて、第1のカメラ823で撮像して得られた信号による第1のデジタル画像と第2のカメラ826で撮像して得られた信号による第2のデジタル画像とが作成される(S905)。以上の操作をX方向又はY方向に沿った1ライン分の検査が終了するまで繰り返して実行する(S906)。
【0066】
次に、検査した1ライン分の領域に隣接する検査領域が有るか否かをチェックし(S9
07)、隣接する未検査領域が有る場合には、基板ステージ831を隣接する検査領域に移動させて(S908)、S903からのステップを繰り返す。検査すべき領域が全て検査を終了するとXYテーブルの移動を停止し(S909),電源制御部846で第1の光源811と第2の光源814を制御することにより照明を消して(S910)撮像シーケンスを終了する。
【0067】
次に、S905の撮像シーケンスで得られた第1のデジタル画像と第2のデジタル画像とを処理する画像処理シーケンスについて図10を用いて説明する。
【0068】
撮像シーケンスのデジタル画像作成ステップ(S905)において演算処理部843で作成された第1のデジタル画像と第2のデジタル画像とは処理判定部844に入力され(S1001)、第1のデジタル画像と第2のデジタル画像とを合成し(S1002)、第1のデジタル画像と第2のデジタル画像との対応する画像信号に対して(数2)で示した演算式を用いて処理することにより、結晶シリコン膜301の対応する箇所に照射されたエキシマレーザの照射エネルギを、基板300の所定の領域に渡って算出し(S1003)、
この算出したエキシマレーザの照射エネルギが予め設定した基準の照射エネルギ範囲に入っているか、又は大きいか小さいかを基板300の所定の領域に渡って判定する(S1004)。
【0069】
次に、基板300の所定の領域に渡って判定した結果に基づいて、基板300の所定の領域におけるエキシマレーザの照射エネルギ強度のマップを作成して入出力部845の表示画面8451上に表示して(S1005)、処理・判定のシーケンスを終了する。この表示画面8451上に表示されるエキシマレーザの照射エネルギ強度のマップ上には、S1004で予め設定した基準の照射エネルギ範囲よりも大きいまたは小さいとして不良と判定された領域が正常な領域と区別できるように表示される。また、入出力部845から入力して判定基準を変えた場合、その変えた欠陥判定基準に対応して不良領域も変化して表示される。
【0070】
表示部8451に表示する検査結果表示画面1100の一例を図11に示す。
検査結果表示画面1100は、図11に示すように、表示対象基板を指定する、基板指定部1101、指定した基板の表示の実行を支持する実行ボタン1102、指定した基板の全体のエキシマレーザの照射エネルギ強度分布を表示する基板全体分布表示領域1103、基板全体像表示領域1103表示された基板の全体のエキシマレーザの照射エネルギ強度分布のうち拡大して表示する領域を指定する拡大表示指定手段1104、拡大表示指定手段1104で指定された領域のエキシマレーザの照射エネルギ強度分布を拡大して表示する拡大表示領域1105、および、基板の検査結果を表示する検査結果表示部1106が一つの画面上に表示される。
【0071】
基板全体像表示領域1103に表示される基板の全体のエキシマレーザの照射エネルギ強度分布の画像には、画像処理・判定部844で判定した結果が強調されて表示される。すなわち、画像処理・判定部844で基準の照射エネルギ範囲よりも大きいまたは小さいとして不良と判定された領域は、正常と判断された領域とそれぞれ色を変えて表示される。
【0072】
基板全体分布表示領域1103に表示するエキシマレーザの照射エネルギ強度分布の例を、図12A及び図12Bに示す。
【0073】
図12Aは、基板全体をマトリックス状に分割して、各領域においてS1003で算出したエキシマレーザの照射エネルギを、エネルギに応じて256階調で表示した例を示す。
【0074】
また、図12Bには、S1004で判定した結果に基づいて、基準の照射エネルギ範囲よりも大きいとして不良と判定された領域と、小さいとして不良と判定された領域とが識別できるようにして表示した例を示す。
【0075】
上記した構成で検査することにより、本実施例1によればエキシマレーザでアニールさ
れて形成された多結晶シリコン薄膜の結晶の状態を比較的高い精度で検査することができ、液晶表示パネル用ガラス基板の品質を高く維持することが可能になる。
【0076】
なお、照明光学系200にシリンドリカルレンズ205を用いて基板1上の一方向に
長い領域を照明する構成で説明したが、これを通常の円形のレンズに置き換えても同様の
効果が得られる。
【実施例2】
【0077】
実施例1においては、照明光学系810に波長の異なる光を発射する2つの光源を用いたが、本実施例においては光源として複数の波長の光を発射する単一の光源を用いた例について説明する。実施例2における液晶表示パネル用ガラス基板の多結晶シリコン薄膜検査装置の全体構成は、実施例1において図7を用いて説明したものと同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0078】
また、実施例2における撮像光学系と基板ステージ部、検査データ処理・制御部の構成及びその動作・作用は実施例1で説明した撮像光学系820及び基板ステージ部830、検査データ処理・制御部840と同じであるので、説明を省略する。
【0079】
図13に、本実施例における照明光学系1310の構成を示す。本実施例における照明光学系1310は、波長λ1とλ2とを含む複数の波長の光を発射する光源1311、波長λ1の光を反射してそれ以外の波長の光を透過する第1のダイクロイックミラー1312、第1のダイクロイックミラー1312を透過した光のうち波長λ2の光を反射してそれ以外の波長の光を透過する第2のダイクロイックミラー1313、第1のダイクロイックミラー1312で反射された波長λ1の光の光路を変換するミラー812、ミラー812で光路を変換された波長λ1の光を一方向に集光して線状の光に成形し基板ステージ831に保持されている基板300に法線方向に対してθ1の方向から照射する第1のシリンドリカルレンズ813、第2のダイクロイックミラー1313で反射された波長λ2の光の光路を変換するミラー815、ミラー815で光路を変換された波長λ2の光を一方向に集光して線状の光に成形し基板ステージ831に保持されている基板300に法線方向に対してθ2の方向から照射する第2のシリンドリカルレンズ816を備えている。
【0080】
上記構成において、光源1311から発射された光は第1のダイクロイックミラー1312に入射し、波長λ1の光が反射されて、他の波長の光は第1のダイクロイックミラー1312を透過する。第1のダイクロイックミラー1312で反射された波長λ1の光は、ミラー812に入射して全反射し光路を変換して第1のシリンドリカルレンズ813に入射する。第1のシリンドリカルレンズ813に入射した波長λ1の光は、一方向に絞られて収束し、他の方向(図13の紙面に垂直な方向)には収束しない線状の形状に成形されて、実施例1の場合と同様に基板ステージ831に保持されている基板300に法線方向に対してθ1の角度方向から入射する。
【0081】
一方、光源1311から発射されて第1のダイクロイックミラー1312を透過した光は第2のダイクロイックミラー1313に入射し、波長λ2の光が反射されて、他の波長の光は第2のダイクロイックミラー1313を透過する。第2のダイクロイックミラー1313で反射された波長λ2の光は、ミラー815に入射して全反射し光路を変換して第2のシリンドリカルレンズ816に入射する。第2のシリンドリカルレンズ816に入射した波長λ2の光は、一方向に絞られて収束し、他の方向(図13の紙面に垂直な方向)には収束しない線状の形状に成形されて、実施例1の場合と同様に基板ステージ831に保持されている基板300の第1のシリンドリカルレンズ813により線状に成形された波長λ1の光が照射されている領域に、法線方向に対してθ2の角度方向から入射する。
【0082】
本実施例において、波長λ1の光と波長λ2の光とが照射された基板300から発生した回折光の像を撮像光学系で撮像して検査データ処理・制御部で信号を処理する撮像シーケンス及び画像処理のシーケンスは、実施例1で図9及び図10を用いて説明したものと同じであるので、説明を省略する。
【0083】
本実施例によれば、照明光学系の光源を1つにすることができるので、照明光学系をコンパクトに設計することが可能になる。
【実施例3】
【0084】
実施例2においては、照明光学系1310に波長λ1とλ2を含む複数の波長の光を発射する単一の光源を用い、2つのダイクロイックミラーを用いて波長λ1の光と波長ラムダ2の光とを分離してそれぞれθ1の角度方向とθ2の角度方向から基板300に入射させる構成について説明したが、本実施例においては、波長λ1とλ2を含む複数の波長の光を発射する単一の光源から発射された光をそのまま基板300に照射する例について、図14を用いて説明する。実施例3における液晶表示パネル用ガラス基板の多結晶シリコン薄膜検査装置の全体構成は、実施例1において図7を用いて説明したものと同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0085】
また、図14に示した構成において、実施例1で説明した図8に記載した構成と同じものについては、同じ番号を付して、その詳細な説明を省略する。実施例1の構成と異なるのは、照明光学系1410と、撮像光学系1420である。
【0086】
このうち、照明光学系1410は、ある波長幅を有する光を発射する光源1411と、光源1411から発射された光の光路を変換するミラー812、ミラー812で光路を変換された光を集光し線状の光に成形して基板ステージ831に保持されているガラス基板300に、法線方向に対してθ10の方向から照射するシリンドリカルレンズ813を備えている。
【0087】
また、撮像光学系1420は、シリンドリカルレンズ813により線状に成形されたある波長幅を有する光が照射されたガラス基板300上の多結晶シリコン薄膜301の結晶粒界に生じた微小突起により発生した1次回折光の内、法線方向に対して角度θ3の方向に進行した波長がλ1の1次回折光を透過させる第1の波長選択フィルタ1421と、この第1の波長選択フィルタ1421を透過した波長がλ1の1次回折光の像を撮像する第1の結像レンズ系822を備えた第1のカメラ823、微小突起により発生した1次回折光の内、法線方向に対して角度θ4の方向に進行した波長がλ2の1次回折光を透過させる第2の波長選択フィルタ1424と、この第2の波長選択フィルタ1424を透過した波長がλ2の1次回折光の像を撮像する第2の結像レンズ系825を備えた第2のカメラ826とを備えている。
【0088】
本実施例において、第1のカメラ823と第2のカメラ826とからの検出信号を検査データ処理・制御部で信号を処理する撮像シーケンス及び画像処理のシーケンスは、実施例1で図9及び図10を用いて説明したものと同じであるので、説明を省略する。
【0089】
本実施例によれば、実施例2に比べて照明光学系をよりコンパクトに設計することが可能になる。
【符号の説明】
【0090】
300…基板 700…検査装置 720…検査部 721…検査ユニット 740,840…検査データ処理・制御部 750…全体制御部 810,1310,1410…照明光学系 811…第1の光源 814…第2の光源 813…第1のシリンドリカルレンズ 816…第2のシリンドリカルレンズ 820,1420…撮像光学系 821…第1の波長選択フィルタ 824…第2の波長選択フィルタ 822…第1の結像レンズ 825…第2の結像レンズ 823…第1のカメラ 826…第2のカメラ 830…基板ステージ部 831…基板ステージ 840…画像処理部 841,842…A/D変換部 843…画像生成部 844…処理・判定部 845…入出力部 8451…表示画面 848…制御部 1311,1411…光源 1312…第1のダイクロイックミラー 1313…第2のダイクロイックミラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板ロード部と、基板検査部と、基板アンロード部と、全体制御部とを備えた多結晶シリコン薄膜検査装置であって、
前記基板検査部は、
表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に第1の波長の光を第1の方向から照射する第1の照明手段と、
前記基板の前記第1の照明手段により前記第1の波長の光が照射された領域に第2の波長の光を第2の方向から照射する第2の照明手段と、
前記第1の照明手段と前記第2の照明手段により第1の波長の光と前記第2の波長の光が照射された前記基板から第3の方向に発生した前記第1の波長の光による第1の1次回折光の光学像を撮像する第1の撮像手段と、
前記第1の照明手段と前記第2の照明手段により第1の波長の光と前記第2の波長の光が照射された前記基板から第4の方向に発生した前記第2の波長の光による第2の1次回折光の光学像を撮像する第2の撮像手段と、
前記第1の撮像手段で前記第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と前記第2の撮像手段で前記第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して前記基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定する信号処理・判定手段と
を備えたことを特徴とする多結晶シリコン薄膜検査装置。
【請求項2】
前記第1の照明手段は、第1の波長の光を発射する第1の光源部と、該第1の光源部から発射された第1の波長の光を一方向に集光して線状の光に成形して前記基板に照射する第1のシリンドリカルレンズを備え、前記第2の照明手段は、第2の波長の光を発射する第2の光源部と、該第2の光源部から発射された第2の波長の光を一方向に集光して線状の光に成形して前記基板に照射する第2のシリンドリカルレンズを備えることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン薄膜検査装置。
【請求項3】
前記第1の照明手段と前記第2の照明手段とは、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを含む多波長の光を発射する光源部を共有し、前記第1の照明手段は前記光源部から発射された多波長の光のうち前記第1の波長の光を反射して他の波長の光を透過する第1のダイクロイックミラーと、該第1のダイクロイックミラーで反射された前記第1の波長の光を一方向に集光して線状の光に成形して前記基板に照射する第1のシリンドリカルレンズを備え、前記第2の照明手段は前記光源部から発射された多波長の光のうち前記第1のダイクロイックミラーを透過した光のうち第2の波長の光を反射して他の波長の光を透過する第2のダイクロイックミラーと、該第2のダイクロイックミラーで反射された前記第2の波長の光を一方向に集光して線状の光に成形して前記基板に照射する第2のシリンドリカルレンズを備えることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン薄膜検査装置。
【請求項4】
前記基板の表面の法線方向に対して前記第1の方向は前記第2の方向よりも大きい角度となるように前記第1の照明手段と前記第2の照明手段とを配置し、前記基板の表面の法線方向に対して前記第3の方向は前記第4の方向よりも小さい角度となるように前記第1の撮像手段と前記第2の撮像手段とを配置したことを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン薄膜検査装置。
【請求項5】
前記第1の波長の光は前記第2の波長の光よりも波長が短いことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の多結晶シリコン薄膜検査装置。
【請求項6】
基板ロード部と、基板検査部と、基板アンロード部と、全体制御部とを備えた多結晶シリコン薄膜検査装置であって、
前記基板検査部は、
表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に光を照射する照明手段と、
前記照明手段により光が照射された前記基板から第1の方向に発生した第1の1次回折光の光学像を撮像する第1の撮像手段と、
前記照明手段により光が照射された前記基板から第2の方向に発生した第2の1次回折光の光学像を撮像する第2の撮像手段と、
前記第1の撮像手段で前記第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と前記第2の撮像手段で前記第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して前記基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定する信号処理・判定手段と
を備えたことを特徴とする多結晶シリコン薄膜検査装置。
【請求項7】
前記第1の撮像手段は、第1の波長の光を透過してそのほかの波長の光を遮光する第1の波長選択フィルタを備え、該第1の波長選択フィルタを透過した第1の波長の光による前記第1の1次回折光の光学像を撮像し、前記第2の撮像手段は、第2の波長の光を透過してそのほかの波長の光を遮光する第2の波長選択フィルタを備え、該第2の波長選択フィルタを透過した第2の波長の光による前記第2の1次回折光の光学像を撮像することを特徴とする請求項6記載の多結晶シリコン薄膜検査装置。
【請求項8】
前記第1の波長の光は前記第2の波長の光よりも波長が短く、前記基板の法線方向に対して前記第1の方向は前記第2の方向よりも傾き各が小さいことを特徴とする請求項7記載の多結晶シリコン薄膜検査装置。
【請求項9】
表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に第1の波長の光を第1の方向から照射し、
前記基板の前記第1の波長の光が照射された領域に第2の波長の光を第2の方向から照射し、
前記第1の波長の光と前記第2の波長の光が照射された前記基板から第3の方向に発生した前記第1の波長の光による第1の1次回折光の光学像を撮像し、
前記第1の波長の光と前記第2の波長の光が照射された前記基板から第4の方向に発生した前記第2の波長の光による第2の1次回折光の光学像を撮像し、
前記第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と前記第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して前記基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定する
ことを特徴とする多結晶シリコン薄膜検査方法。
【請求項10】
前記第1の波長の光を第1の方向から照射することを、第1の光源部から発射された第1の波長の光を第1のシリンドリカルレンズにより一方向に集光し線状の光に成形して前記第1の方向から前記基板に照射することにより行い、前記第2の波長の光を第2の方向から照射することを、第2の光源部から発射された第2の波長の光を第2のシリンドリカルレンズにより一方向に集光し線状の光に成形して前記第2の方向から前記基板に照射することにより行うことを特徴とする請求項9記載の多結晶シリコン薄膜検査方法。
【請求項11】
前記第1の波長の光を第1の方向から照射することを、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを含む多波長の光を発射する光源部から発射された光のうち前記第1の波長の光を反射する第1のダイクロイックミラーで反射された前記第1の波長の光を第1のシリンドリカルレンズにより一方向に集光し線状の光に成形して前記第1の方向から前記基板に照射することにより行い、前記第2の波長の光を第2の方向から照射することを、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを含む多波長の光を発射する光源部から発射された光のうち前記第2の波長の光を反射する第2のダイクロイックミラーで反射された前記第2の波長の光を第2のシリンドリカルレンズにより一方向に集光し線状の光に成形して前記第2の方向から前記基板に照射することにより行うことを特徴とする請求項9記載の多結晶シリコン薄膜検査方法。
【請求項12】
前記第1の波長の光を照射する前記第1の方向は、前記基板の表面の法線方向に対して前記第2の方向よりも大きい角度方向であり、前記第1の波長の光による第1の1次回折光の光学像を撮像する前記第3の方向は、前記基板の表面の法線方向に対して前記第4の方向よりも小さい角度方向であることを特徴とする請求項9記載の多結晶シリコン薄膜検査方法。
【請求項13】
前記第1の波長の光は前記第2の波長の光よりも波長が短いことを特徴とする請求項9乃至12の何れかに記載の多結晶シリコン薄膜検査方法。
【請求項14】
表面に多結晶シリコン薄膜が形成された基板に光を照射し、
該光が照射された前記基板から第1の方向に発生した第1の1次回折光の光学像を撮像し、
前記光が照射された前記基板から第2の方向に発生した第2の1次回折光の光学像を撮像し、
前記第1の1次回折光の光学像を撮像して得た信号と前記第2の1次回折光の光学像を撮像して得た信号とを処理して前記基板上に形成された多結晶シリコン膜の結晶の状態を判定する
ことを特徴とする多結晶シリコン薄膜検査方法。
【請求項15】
前記が照射された前記基板から第1の方向に発生した第1の1次回折光の光学像を、第1の波長の光を透過してそのほかの波長の光を遮光する第1の波長選択フィルタを介して撮像し、前記が照射された前記基板から第2の方向に発生した第2の1次回折光の光学像を、第2の波長の光を透過してそのほかの波長の光を遮光する第2の波長選択フィルタを介して撮像することを特徴とする請求項14記載の多結晶シリコン薄膜検査方法。
【請求項16】
前記第1の波長の光は前記第2の波長の光よりも波長が短く、前記基板の法線方向に対して前記第1の方向は前記第2の方向よりも傾き角が小さいことを特徴とする請求項15記載の多結晶シリコン薄膜検査方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−243929(P2012−243929A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112128(P2011−112128)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】