多色化粧料の製造方法
【課題】打型物を崩すことなく化粧皿への移し替えを可能にして、多色化粧料の生産ラインの自動化を図る。
【解決手段】移載機4は、移動始点θin,Hinで打型物を保持し、移動始点θin,Hinから移動終点θout,Houtに打型物を移動させ、移動終点θout,Houtで打型物を解放するという動作条件にしたがって動作する。これによって、搬送位置Cに存在する複数の打型物は、化粧皿9内における所定の収容位置に移動する。
【解決手段】移載機4は、移動始点θin,Hinで打型物を保持し、移動始点θin,Hinから移動終点θout,Houtに打型物を移動させ、移動終点θout,Houtで打型物を解放するという動作条件にしたがって動作する。これによって、搬送位置Cに存在する複数の打型物は、化粧皿9内における所定の収容位置に移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色化粧料の製造方法に係り、特に生産ラインの自動化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧皿に複数色の固形化粧料を並べて配置した多色化粧料が知られている。この類の化粧料は、色の組み合わせによる面白さを演出できる点、および、ユーザの好みに応じた色味を任意に調色できる点で人気が高い。例えば、特許文献1には、4つの矩形状の固形化粧料を2×2に並べ、丸状にくり抜かれた中心部に、丸状に予備プレスされた打型物を配置した多色化粧料が開示されている。また、特許文献2には、予備プレスによって複数色の打型物を生成した後、これらを化粧皿に移し替えた上で本プレスする多色化粧料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−201809号公報
【特許文献2】特開昭62−205009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予備プレスによって固化された打型物は、その処方にもよるが、多くの場合、緩めに加圧されているがゆえに脆く崩れ易いという特性を有する。そのため、化粧皿への移し替えは、打型物が崩れてしまわないように慎重に行う必要がある。実際、この作業は手作業で行われることが多く、作業者は、多数の打型物が収容されたトレイから1つずつ手に取って、化粧皿内に打型物を丁寧に収容していく。生産性の向上を図るためには、この作業を自動化することが好ましいが、トレイ等の内部における任意の位置に収容された個々の打型物を崩さずに取り扱うことは必ずしも容易ではなく、それが自動化を妨げる要因になっている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、打型物を崩すことなく化粧皿への移し替えを可能にして、多色化粧料の生産ラインの自動化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、以下の第1から第3のステップを有する多色化粧料の製造方法を提供する。第1のステップでは、対象物を保持して移動させる移載機を動作させるために必要な情報を登録する。この情報には、生産ライン上における第1の充填空間の位置および第2の充填空間の位置に応じた移動始点と、所定の位置にセットされる化粧皿における第1の収容位置および第2の収容位置に応じた移動終点とが含まれる。第2のステップでは、第1の充填空間における粉末化粧料の打型によって、第1の打型物を生成するとともに、第2の充填空間における粉末化粧料の打型によって、第1の打型物とは色調が異なる第2の打型物を生成する。第3のステップでは、移動始点で対象物を保持し、移動始点から移動終点に対象物を移動させ、移動終点で対象物を解放するという動作条件にしたがって、移載機を動作させる。これによって、第1の充填空間の位置に存在する第1の打型物を第1の収容位置に移動させる。それとともに、第2の充填空間の位置に存在する第2の打型物を第2の収容位置に移動させる。
【0007】
ここで、本発明の上記第3のステップにおいて、移載機は、第1の充填空間の位置に存在する第1の打型物と、第1の充填空間と並んで配置された第2の充填空間の位置に存在する第2の打型物とを、同時に保持して移動させてもよい。また、上記第3のステップにおいて、移載機は、自己に設けられた可動機構によって、第1の打型物および第2の打型物の位置または向きを移動始点時とは異なる状態に変化させてもよい。これによって、化粧皿内の配置に合致した位置または向きにすることができる。また、上記第3のステップにおいて、移載機は、第1の打型物および第2の打型物を吸引によって保持することが好ましい。
【0008】
また、本発明において、上記第2のステップは、一対の金型を組み合わせることによって形成された第1の充填空間および第2の充填空間のそれぞれに粉末化粧料を充填するステップと、第1の充填空間および第2の充填空間のそれぞれに充填された粉末化粧料をプレスするステップと、一方の金型に対して他方の金型を変位させることによって、第1の充填空間内に形成された第1の打型物と、第2の充填空間内に形成された第2の打型物とを、移載機が保持可能な状態に露出させるステップとを有していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移載機を用いて、打型物を化粧皿内に移し替える作業を自動化することによって、生産性の向上を図ることができる。トレイ等の内部に多数の打型物が収容されている状態では、個々の打型物の収容位置を一意に特定できないばかりか、これを取り出す際に打型物を崩してしまい易い。この問題は、全ての打型物を同一位置、すなわち、生産ライン上における充填空間の特定位置に固定することで解決できる。なぜなら、この位置において、生産ライン上のすべての打型物の位置や向きが一様になるからである。移し替えるべき打型物の配置状態を一様化すれば、移し替えに際して打型物に無理な負荷を与えずに済むので、打型物の崩れも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】多色化粧料の自動生産ラインの概略図
【図2】金型の断面図
【図3】充填工程の説明図
【図4】摺切工程の説明図
【図5】予備プレス工程の説明図
【図6】独立型プレスヘッドを用いた予備プレス工程の説明図
【図7】露出工程の説明図
【図8】移載機による移動工程の説明図
【図9】化粧皿へのセット工程の説明図
【図10】本プレス工程の説明図
【図11】移載機の第1の変形例を示す図
【図12】移載機の第2の変形例を示す図
【図13】化粧皿における打型物のクリアランス調整の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る多色化粧料の自動生産ラインの概略図である。この自動生産ライン1の作業対象は、例えば、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった粉末固形化粧料であり、化粧料の粉体を打型・固化させた「色調の異なる」複数の固形化粧料を主体に形成されている。この固形化粧料は、乾式化粧料および湿式化粧料のどちらであってもよい。乾式化粧料は、化粧料の粉体を打型して固化したものである。また、湿式化粧料は、スラリー(化粧料の流動体)中の揮発成分を吸収・乾燥させて固化したものである。スラリーとしては、化粧料基材と、エタノール、水、流動パラフィン、イソパラフィン、イソプロピルアルコール等の揮発性溶剤とを混合したものが用いられる。湿式化粧料は、乾式化粧料と比べて粒子密度が疎であることに起因して、しっとりした使用感が得られるという特性がある。また、本明細書では、「異なる色調」という用語を、両者の違いをユーザが視覚的に認識できれば足りる程度の意味合いで用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、パール等を加えたものと、そうでないものといったように質感が異なるものも、ここでいう「異なる色調」の範疇に含まれる。なお、本実施形態では、2色のストライプを例示するが、より多くの色の固形化粧料を用いて3色以上のストライプとしてもよく、更には曲線状の複雑な色模様であってもよい。
【0012】
自動生産ライン1は、ターンテーブル2と、搬送路3と、これらの間に設置された移載機4とを有する。また、この搬送路上の所定の位置A,B,Eには、後述する各種の製造装置5〜7がそれぞれ設置されている。移載機4の上流に位置するターンテーブル2は、回転自在に設けられており、凹状に陥没した複数の陥没部位が所定の間隔で周方向に沿って形成されている。また、それぞれの陥没部位には、金型8が着脱自在に嵌入されている。ターンテーブル2に嵌入された金型8の上面は、ターンテーブル2の上面と面一になる。ターンテーブル2の回転および停止を繰り返すことによって、金型8は搬送位置A,B,Cの順に移動する。
【0013】
図2は、金型8の断面図である。この金型8は、一対の金型8a,8bを組み合わせることによって構成されており、上金型8aに対して下金型8bが昇降自在に組み付けられている。具体的には、上金型8aは、ターンテーブル2の陥没部位に対応した形状を有し、その中央部位は上下に貫通している。この貫通部位の内壁には、段差8cが設けられている。一方、下金型8bは、上金型8aの貫通部位に昇降自在に嵌入される。下金型8bが下降した状態では、上金型8aの頂面に対して下金型8bのそれが下方に位置し、これによって、2つの充填空間8d,8eが形成される。これに対して、下金型8bが上昇した状態、すなわち、下金型8bの外周から側方に突出した凸部8fが上金型8aの段差8cに接触した状態では、充填空間8d,8eがなくなって、上下の金型8a、8bの頂面が面一になる。充填空間8d,8eの形状や個数は、製造しようとする多色化粧料の色模様に応じて、適宜決定される。例えば、直線状の2色ストライプを形成する場合には、直方体状の打型物を2つ打型すればよい。この場合、2つの充填空間8d,8eのそれぞれの開口形状は、長方形状に形成される。
【0014】
再び図1を参照すると、移載機4は、複数の保持部4aと、移動アーム4bと、駆動部4cと、制御部4dとを主体に構成されており、予め設定された動作条件にしたがって動作する。それぞれの保持部4aは、保持対象となる打型物を保持する。保持の手法としては、一対のアーム等によって把持してもよいが、崩れ易い打型物に加わる負荷を極力低減するという観点でいえば、真空バキューム等によって吸引することが好ましい。駆動部4cは、制御部4dの制御下において、保持部4aが先端に設けられた移動アーム4bを回転方向θおよび高さ方向Hの二次元で変位させる。ここで、移載機4を動作させるためには、移載機4の動作に必要な情報を予め登録しておく必要があるが、この情報としては、移動始点θin,Hinと、移動終点θout,Houtとが含まれる。図1に示した搬送位置Cから搬送位置Dに打型物を移動させる場合、移動始点θin,Hinは、搬送位置Cにおける充填空間8d,8eのの位置に応じて設定されるとともに、移動終点θout,Houtは、搬送路3を移動して搬送位置Dにセットされる化粧皿9内の収容位置に応じて設定される。ただし、本実施形態では、充填空間8d,8e内に形成された2つの打型物を一括で移動させる関係上、移動始点および移動終点を打型物毎に個別に登録する必要はない。すなわち、2つの打型物を同時に保持できるような移動アーム4bの位置を移動始点θout,Houtとし、これらを同時に化粧皿9内に収容できるような移動アーム4bの位置を移動終点θout,Houtとすれば足りる。
【0015】
制御部4dは、以下の動作条件にしたがって、移動アーム4bの駆動制御と、保持部4aの吸引制御とを行う。
【0016】
(動作条件)
(1)移動始点θin,Hinで保持を開始した上で移動アーム4bを上昇させる。
(2)保持状態を維持しながら移動終点θoutまで移動アーム4bを回転させる。
(3)移動アーム4bを高さHoutまで下降させた上で保持を終了する。
【0017】
これによって、搬送位置Cの充填空間8dに存在する打型物が搬送位置Dに移動し、この位置Dにセットされた化粧皿9内の所定位置に収容される。それとともに、搬送位置Cの充填空間8eに存在する打型物も搬送位置Dに移動し、ここにセットされた化粧皿9内の所定位置に収容される。搬送路3上には化粧皿9が所定の間隔で並んでおり、それぞれの化粧皿9は、搬送路3上を搬送位置D,Eの順で断続的に移動する。
【0018】
なお、本実施形態では、移載機4として、移動アーム4bを回転させるタイプを例示しているが、移動アーム4bをスライドさせるタイプを用いてもよい。この場合、回転位置θの代わりに、一次元的なスライド位置を定義すればよい。
【0019】
つぎに、ある一つの作業対象に着目した一連の作業内容を、自動生産ライン1の時系列的な流れに沿って説明する。
【0020】
まず、ターンテーブル2が回転して、作業対象が搬送位置Aにセットされると、充填工程が実行される。この工程では、図3に示すように、上金型8aに対して下金型8bが下降しており、2つの充填空間8d,8eが互いに区分された状態で近接している。充填空間8d,8eの直上に配置された充填機5は、色調が異なる乾式または湿式の粉末化粧料を吐出して、これらを充填空間8d,8e内に充填する。その際、充填空間8d,8eに対する粉末化粧料の充填を同時に行った方が、これらを別個に行う場合よりも作業工程を減らせるので、生産性の向上を図る上で好ましい(ただし、別工程化を排除するものではない)。
【0021】
充填工程の終了後、ターンテーブル2の回転によって、作業対象が搬送位置Aから搬送位置Bに搬送される。この搬送過程では、図4に示すように、充填機5における吐出口の先端(下端)を上金型8aの上面と当接させたまま相対的に移動させる。これによって、充填された粉末化粧料の上部が摺り切られて、充填空間8d,8eのそれぞれに粉末化粧料が定量充填される。なお、その際の擦切り方向は、粉末化粧料の混色が生じないよう、色境界に沿った方向(色境界を跨がない方向)とする。
【0022】
そして、作業対象が搬送位置Bに到達すると、予備プレス工程が実行される。この工程では、図5に示すように、充填空間8d,8e内に充填された2つの粉末化粧料が予備プレス機6の一体型プレスヘッド6a、すなわち複数のプレスヘッド6aが一体で変位するものによって一括でプレスされる。このプレスは、移載機4が取り扱うことができる程度の固化を目的としているので、後工程での本プレスよりも緩い加圧で足りる。充填空間8d,8e内の充填物を一括で打型することによって、色調が異なる2つの打型物が同時に形成される。
【0023】
この予備プレス工程では、図6に示すように、互いに独立して動作可能な複数のプレスヘッド6a,6bを備えた独立型プレスヘッドを用いて、充填空間8d,8eのそれぞれの充填物に対するプレス条件を変えてもよい。これにより、それぞれの充填物の処方に応じて、粉末化粧料の量目を変えられるほか、プレス圧を相違させることが可能になり、粉末化粧料の処方毎にプレスを最適化することができる。なお、この場合、プレス後の充填物の高さ(上面)が一致する必要性は必ずしもない。
【0024】
つぎに、ターンテーブル2の更なる回転によって、作業対象が搬送位置Bから搬送位置Cに搬送される。この搬送過程では、固定された上金型8aに対して下金型8bを相対変位させることによって、下金型8bを上昇させる。そして、搬送位置Cへの到達時には、図7に示すように下金型8bが完全に上昇する。下金型8bを上下に変位させる手段としては、典型的には、ターンテーブル2に沿って設けられた起伏付ガイドレール(これとの摺接によって下金型8bが上下する)を用いることができるが、アクチュエータ等で直接変位させてもよい。下金型8bの上昇にともない、充填空間8d,8e内に形成された打型物10も上昇する。
【0025】
図7に示した状態では、上下の金型8a,8bの上面が金型8の上面から突出する。このように突出して露出させることで、打型物10,11を崩すことなく、移載機4による保持が可能になる。ターンテーブル2によって搬送されるすべての作業対象は、搬送位置Cを必ず通過するので、共通の位置として一意に特定される。また、この搬送位置Cにおける充填空間8d,8eの位置も一意に特定される。したがって、搬送位置C上に露出した打型物10,11の位置や向きは、すべての作業対象に関して一様化される。
【0026】
つぎに、移載機4は、搬送位置C上に露出した打型物10,11を搬送位置Dに移動させ、搬送位置Dにセットされた化粧皿9内に収容する。この化粧皿9への移し替えは、ターンテーブル2の回転および搬送路3の移動と同期しており、本実施形態ではこれらが停止した状態で実行される。具体的には、まず、図8に示すように、回転角θinに位置した移動アーム4bを高さHin相当まで下降させた上で、保持部4aによって搬送位置C上の打型物10,11を同時に吸引・保持する。その際、打型物10,11の高さが同じ場合には、2つの保持部4aの先端位置も揃えればよいが、これらの高さが異なる場合には、打型物10,11との上下方向の隙間を調整すべく、それぞれの保持部4aの先端位置を変える。なお、この調整は、保持部4aの高さを可変に調整する稼働機構によって行ってもよい。
【0027】
つぎに、この保持状態を維持しながら回転角θoutまで移動アーム4bを回転・移動させる。最後に、移動アーム4bを高さHoutまで下降させた上で、保持部4aによって保持されていた打型物10,11を同時に解放する。これにより、図9に示すように、搬送位置D上にセットされた化粧皿9の内部に打型物10,11が収容される。なお、図示したケースでは、個々の打型物10,11を区分するための仕切りが化粧皿9に設けられていないが、これが設けられた化粧皿9を用いてもよい。また、本工程における打型物10,11の移し替えは、空きの化粧皿9のみならず、他の化粧料が一部に既に収容された化粧皿9に対して行ってもよい。この場合、化粧皿9の空きスペースが打型物10,11の収容先(移動先)となる。
【0028】
その後、搬送路3の移動によって、作業対象が搬送位置Cから搬送位置Dに搬送される。そして、作業対象が搬送位置Dに到達すると、本プレス工程が実行される。この工程では、図10に示すように、化粧皿9内に収容された打型物10,11が本プレス機7によって一括でプレスされる。これによって、化粧皿9内における打型物10,11の隙間が解消され、最終的な打型品としての多色化粧料が完成する。
【0029】
このように、本実施形態によれば、移載機4を用いて、打型物10,11を化粧皿9内に移し替える作業を自動化することによって、これを手作業で行う場合と比較して、生産性の向上を図ることができる。トレイ等の内部に多数の打型物が収容されている状態では、個々の打型物の収容位置が様々なので、収容位置が一意に特定できないばかりか、これを取り出す際に打型物を崩してしまい易く、これらが自動化を妨げる問題となっていた。そこで、本実施形態では、移載機4が打型物10,11を保持する移動元(移動始点)を、既知の搬送位置Cにおける充填空間8d,8eの位置に固定して、ターンテーブル2を含む搬送路を流れるすべての作業対象(打型物10,11)に関して共通化する。また、この移動元では、すべての作業対象の位置や向きが一様になっている。このような移動元の固定と、打型物10,11の配置状態の一様化とによって、移載機4の制御を複雑化することなく、打型物10,11の移し替えが可能になる。それとともに、この移し替えに際して、打型物10,11に無理な負荷を与えずに済むので、打型物10,11の崩れも抑制できる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、移載機4として、打型物10,11の保持・移動を同時に行うマルチヘッド型(複数の保持部4aを備えたもの)を例示したが、図11に示すように、単一の打型物を保持するシングルヘッド型(単一の保持部4aを備えたもの)を用いてもよい。この場合には、打型物の移し替えを打型物の個数分だけ繰り返すといった逐次的な動作になる。移載機4を動作させるのに必要な情報としては、移動始点および移動終点よりなる情報のセットを打型物の個数分だけ実行順序付で登録しておく。
【0031】
また、図12に示すように、移載機4の移動アーム4bに少なくとも一つの可動機構4e〜4gを設けて、移し替えるべき打型物10,11の位置または向きを移動始点時とは異なる状態に変化させるようにしてもよい。第1の可動機構4eは、移動アーム4bの延在長を可変に調整する。第2の可動機構4fは、移動アーム4bに対するヘッド部分の回転位置を可変に調整する。第3の可動機構4gは、一対の保持部4aの間隔を可変に調整する。これらの可動機構4e〜4gは、予め設定された動作条件に応じた制御部4dの制御下で、アクチュエータやステッピングモータ等によって動作する。これによって、搬送位置C上における打型物10,11の位置や向きに依存することなく、化粧皿9内の配置に合致した位置または向きを任意に設定することができる。特に、図13に示すように、第3の可動機構4gによって一対の保持部4aの間隔を調整すれば、打型物10,11を化粧皿9にセットする際、両者のクリアランスを最適化できる。一般に、打型物10,11の膨張率(プレスされた打型物がプレス後に再膨張する程度)は処方によって異なる。打型物10,11の成型用金型8を設計する際には、この膨張率を考慮する必要があるが、これを見越した金型設計は容易ではない。また、打型物10,11の再膨張に応じて、両者のクリアランスが変化するので、これが化粧皿9に収容する際の問題になる。これらの問題は、第3の可動機構4gによって、打型物10,11のクリアランスを調整することによって解消できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明に係る多色化粧料の製造方法は、その生産ラインの自動化によって生産性の向上を図る用途に対して広く適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 自動生産ライン
2 ターンテーブル
3 搬送路
4 移載機
5 充填機
6 予備プレス機
7 本プレス機
8 金型
9 化粧皿
10,11 打型物
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色化粧料の製造方法に係り、特に生産ラインの自動化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧皿に複数色の固形化粧料を並べて配置した多色化粧料が知られている。この類の化粧料は、色の組み合わせによる面白さを演出できる点、および、ユーザの好みに応じた色味を任意に調色できる点で人気が高い。例えば、特許文献1には、4つの矩形状の固形化粧料を2×2に並べ、丸状にくり抜かれた中心部に、丸状に予備プレスされた打型物を配置した多色化粧料が開示されている。また、特許文献2には、予備プレスによって複数色の打型物を生成した後、これらを化粧皿に移し替えた上で本プレスする多色化粧料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−201809号公報
【特許文献2】特開昭62−205009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予備プレスによって固化された打型物は、その処方にもよるが、多くの場合、緩めに加圧されているがゆえに脆く崩れ易いという特性を有する。そのため、化粧皿への移し替えは、打型物が崩れてしまわないように慎重に行う必要がある。実際、この作業は手作業で行われることが多く、作業者は、多数の打型物が収容されたトレイから1つずつ手に取って、化粧皿内に打型物を丁寧に収容していく。生産性の向上を図るためには、この作業を自動化することが好ましいが、トレイ等の内部における任意の位置に収容された個々の打型物を崩さずに取り扱うことは必ずしも容易ではなく、それが自動化を妨げる要因になっている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、打型物を崩すことなく化粧皿への移し替えを可能にして、多色化粧料の生産ラインの自動化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、以下の第1から第3のステップを有する多色化粧料の製造方法を提供する。第1のステップでは、対象物を保持して移動させる移載機を動作させるために必要な情報を登録する。この情報には、生産ライン上における第1の充填空間の位置および第2の充填空間の位置に応じた移動始点と、所定の位置にセットされる化粧皿における第1の収容位置および第2の収容位置に応じた移動終点とが含まれる。第2のステップでは、第1の充填空間における粉末化粧料の打型によって、第1の打型物を生成するとともに、第2の充填空間における粉末化粧料の打型によって、第1の打型物とは色調が異なる第2の打型物を生成する。第3のステップでは、移動始点で対象物を保持し、移動始点から移動終点に対象物を移動させ、移動終点で対象物を解放するという動作条件にしたがって、移載機を動作させる。これによって、第1の充填空間の位置に存在する第1の打型物を第1の収容位置に移動させる。それとともに、第2の充填空間の位置に存在する第2の打型物を第2の収容位置に移動させる。
【0007】
ここで、本発明の上記第3のステップにおいて、移載機は、第1の充填空間の位置に存在する第1の打型物と、第1の充填空間と並んで配置された第2の充填空間の位置に存在する第2の打型物とを、同時に保持して移動させてもよい。また、上記第3のステップにおいて、移載機は、自己に設けられた可動機構によって、第1の打型物および第2の打型物の位置または向きを移動始点時とは異なる状態に変化させてもよい。これによって、化粧皿内の配置に合致した位置または向きにすることができる。また、上記第3のステップにおいて、移載機は、第1の打型物および第2の打型物を吸引によって保持することが好ましい。
【0008】
また、本発明において、上記第2のステップは、一対の金型を組み合わせることによって形成された第1の充填空間および第2の充填空間のそれぞれに粉末化粧料を充填するステップと、第1の充填空間および第2の充填空間のそれぞれに充填された粉末化粧料をプレスするステップと、一方の金型に対して他方の金型を変位させることによって、第1の充填空間内に形成された第1の打型物と、第2の充填空間内に形成された第2の打型物とを、移載機が保持可能な状態に露出させるステップとを有していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移載機を用いて、打型物を化粧皿内に移し替える作業を自動化することによって、生産性の向上を図ることができる。トレイ等の内部に多数の打型物が収容されている状態では、個々の打型物の収容位置を一意に特定できないばかりか、これを取り出す際に打型物を崩してしまい易い。この問題は、全ての打型物を同一位置、すなわち、生産ライン上における充填空間の特定位置に固定することで解決できる。なぜなら、この位置において、生産ライン上のすべての打型物の位置や向きが一様になるからである。移し替えるべき打型物の配置状態を一様化すれば、移し替えに際して打型物に無理な負荷を与えずに済むので、打型物の崩れも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】多色化粧料の自動生産ラインの概略図
【図2】金型の断面図
【図3】充填工程の説明図
【図4】摺切工程の説明図
【図5】予備プレス工程の説明図
【図6】独立型プレスヘッドを用いた予備プレス工程の説明図
【図7】露出工程の説明図
【図8】移載機による移動工程の説明図
【図9】化粧皿へのセット工程の説明図
【図10】本プレス工程の説明図
【図11】移載機の第1の変形例を示す図
【図12】移載機の第2の変形例を示す図
【図13】化粧皿における打型物のクリアランス調整の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る多色化粧料の自動生産ラインの概略図である。この自動生産ライン1の作業対象は、例えば、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった粉末固形化粧料であり、化粧料の粉体を打型・固化させた「色調の異なる」複数の固形化粧料を主体に形成されている。この固形化粧料は、乾式化粧料および湿式化粧料のどちらであってもよい。乾式化粧料は、化粧料の粉体を打型して固化したものである。また、湿式化粧料は、スラリー(化粧料の流動体)中の揮発成分を吸収・乾燥させて固化したものである。スラリーとしては、化粧料基材と、エタノール、水、流動パラフィン、イソパラフィン、イソプロピルアルコール等の揮発性溶剤とを混合したものが用いられる。湿式化粧料は、乾式化粧料と比べて粒子密度が疎であることに起因して、しっとりした使用感が得られるという特性がある。また、本明細書では、「異なる色調」という用語を、両者の違いをユーザが視覚的に認識できれば足りる程度の意味合いで用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、パール等を加えたものと、そうでないものといったように質感が異なるものも、ここでいう「異なる色調」の範疇に含まれる。なお、本実施形態では、2色のストライプを例示するが、より多くの色の固形化粧料を用いて3色以上のストライプとしてもよく、更には曲線状の複雑な色模様であってもよい。
【0012】
自動生産ライン1は、ターンテーブル2と、搬送路3と、これらの間に設置された移載機4とを有する。また、この搬送路上の所定の位置A,B,Eには、後述する各種の製造装置5〜7がそれぞれ設置されている。移載機4の上流に位置するターンテーブル2は、回転自在に設けられており、凹状に陥没した複数の陥没部位が所定の間隔で周方向に沿って形成されている。また、それぞれの陥没部位には、金型8が着脱自在に嵌入されている。ターンテーブル2に嵌入された金型8の上面は、ターンテーブル2の上面と面一になる。ターンテーブル2の回転および停止を繰り返すことによって、金型8は搬送位置A,B,Cの順に移動する。
【0013】
図2は、金型8の断面図である。この金型8は、一対の金型8a,8bを組み合わせることによって構成されており、上金型8aに対して下金型8bが昇降自在に組み付けられている。具体的には、上金型8aは、ターンテーブル2の陥没部位に対応した形状を有し、その中央部位は上下に貫通している。この貫通部位の内壁には、段差8cが設けられている。一方、下金型8bは、上金型8aの貫通部位に昇降自在に嵌入される。下金型8bが下降した状態では、上金型8aの頂面に対して下金型8bのそれが下方に位置し、これによって、2つの充填空間8d,8eが形成される。これに対して、下金型8bが上昇した状態、すなわち、下金型8bの外周から側方に突出した凸部8fが上金型8aの段差8cに接触した状態では、充填空間8d,8eがなくなって、上下の金型8a、8bの頂面が面一になる。充填空間8d,8eの形状や個数は、製造しようとする多色化粧料の色模様に応じて、適宜決定される。例えば、直線状の2色ストライプを形成する場合には、直方体状の打型物を2つ打型すればよい。この場合、2つの充填空間8d,8eのそれぞれの開口形状は、長方形状に形成される。
【0014】
再び図1を参照すると、移載機4は、複数の保持部4aと、移動アーム4bと、駆動部4cと、制御部4dとを主体に構成されており、予め設定された動作条件にしたがって動作する。それぞれの保持部4aは、保持対象となる打型物を保持する。保持の手法としては、一対のアーム等によって把持してもよいが、崩れ易い打型物に加わる負荷を極力低減するという観点でいえば、真空バキューム等によって吸引することが好ましい。駆動部4cは、制御部4dの制御下において、保持部4aが先端に設けられた移動アーム4bを回転方向θおよび高さ方向Hの二次元で変位させる。ここで、移載機4を動作させるためには、移載機4の動作に必要な情報を予め登録しておく必要があるが、この情報としては、移動始点θin,Hinと、移動終点θout,Houtとが含まれる。図1に示した搬送位置Cから搬送位置Dに打型物を移動させる場合、移動始点θin,Hinは、搬送位置Cにおける充填空間8d,8eのの位置に応じて設定されるとともに、移動終点θout,Houtは、搬送路3を移動して搬送位置Dにセットされる化粧皿9内の収容位置に応じて設定される。ただし、本実施形態では、充填空間8d,8e内に形成された2つの打型物を一括で移動させる関係上、移動始点および移動終点を打型物毎に個別に登録する必要はない。すなわち、2つの打型物を同時に保持できるような移動アーム4bの位置を移動始点θout,Houtとし、これらを同時に化粧皿9内に収容できるような移動アーム4bの位置を移動終点θout,Houtとすれば足りる。
【0015】
制御部4dは、以下の動作条件にしたがって、移動アーム4bの駆動制御と、保持部4aの吸引制御とを行う。
【0016】
(動作条件)
(1)移動始点θin,Hinで保持を開始した上で移動アーム4bを上昇させる。
(2)保持状態を維持しながら移動終点θoutまで移動アーム4bを回転させる。
(3)移動アーム4bを高さHoutまで下降させた上で保持を終了する。
【0017】
これによって、搬送位置Cの充填空間8dに存在する打型物が搬送位置Dに移動し、この位置Dにセットされた化粧皿9内の所定位置に収容される。それとともに、搬送位置Cの充填空間8eに存在する打型物も搬送位置Dに移動し、ここにセットされた化粧皿9内の所定位置に収容される。搬送路3上には化粧皿9が所定の間隔で並んでおり、それぞれの化粧皿9は、搬送路3上を搬送位置D,Eの順で断続的に移動する。
【0018】
なお、本実施形態では、移載機4として、移動アーム4bを回転させるタイプを例示しているが、移動アーム4bをスライドさせるタイプを用いてもよい。この場合、回転位置θの代わりに、一次元的なスライド位置を定義すればよい。
【0019】
つぎに、ある一つの作業対象に着目した一連の作業内容を、自動生産ライン1の時系列的な流れに沿って説明する。
【0020】
まず、ターンテーブル2が回転して、作業対象が搬送位置Aにセットされると、充填工程が実行される。この工程では、図3に示すように、上金型8aに対して下金型8bが下降しており、2つの充填空間8d,8eが互いに区分された状態で近接している。充填空間8d,8eの直上に配置された充填機5は、色調が異なる乾式または湿式の粉末化粧料を吐出して、これらを充填空間8d,8e内に充填する。その際、充填空間8d,8eに対する粉末化粧料の充填を同時に行った方が、これらを別個に行う場合よりも作業工程を減らせるので、生産性の向上を図る上で好ましい(ただし、別工程化を排除するものではない)。
【0021】
充填工程の終了後、ターンテーブル2の回転によって、作業対象が搬送位置Aから搬送位置Bに搬送される。この搬送過程では、図4に示すように、充填機5における吐出口の先端(下端)を上金型8aの上面と当接させたまま相対的に移動させる。これによって、充填された粉末化粧料の上部が摺り切られて、充填空間8d,8eのそれぞれに粉末化粧料が定量充填される。なお、その際の擦切り方向は、粉末化粧料の混色が生じないよう、色境界に沿った方向(色境界を跨がない方向)とする。
【0022】
そして、作業対象が搬送位置Bに到達すると、予備プレス工程が実行される。この工程では、図5に示すように、充填空間8d,8e内に充填された2つの粉末化粧料が予備プレス機6の一体型プレスヘッド6a、すなわち複数のプレスヘッド6aが一体で変位するものによって一括でプレスされる。このプレスは、移載機4が取り扱うことができる程度の固化を目的としているので、後工程での本プレスよりも緩い加圧で足りる。充填空間8d,8e内の充填物を一括で打型することによって、色調が異なる2つの打型物が同時に形成される。
【0023】
この予備プレス工程では、図6に示すように、互いに独立して動作可能な複数のプレスヘッド6a,6bを備えた独立型プレスヘッドを用いて、充填空間8d,8eのそれぞれの充填物に対するプレス条件を変えてもよい。これにより、それぞれの充填物の処方に応じて、粉末化粧料の量目を変えられるほか、プレス圧を相違させることが可能になり、粉末化粧料の処方毎にプレスを最適化することができる。なお、この場合、プレス後の充填物の高さ(上面)が一致する必要性は必ずしもない。
【0024】
つぎに、ターンテーブル2の更なる回転によって、作業対象が搬送位置Bから搬送位置Cに搬送される。この搬送過程では、固定された上金型8aに対して下金型8bを相対変位させることによって、下金型8bを上昇させる。そして、搬送位置Cへの到達時には、図7に示すように下金型8bが完全に上昇する。下金型8bを上下に変位させる手段としては、典型的には、ターンテーブル2に沿って設けられた起伏付ガイドレール(これとの摺接によって下金型8bが上下する)を用いることができるが、アクチュエータ等で直接変位させてもよい。下金型8bの上昇にともない、充填空間8d,8e内に形成された打型物10も上昇する。
【0025】
図7に示した状態では、上下の金型8a,8bの上面が金型8の上面から突出する。このように突出して露出させることで、打型物10,11を崩すことなく、移載機4による保持が可能になる。ターンテーブル2によって搬送されるすべての作業対象は、搬送位置Cを必ず通過するので、共通の位置として一意に特定される。また、この搬送位置Cにおける充填空間8d,8eの位置も一意に特定される。したがって、搬送位置C上に露出した打型物10,11の位置や向きは、すべての作業対象に関して一様化される。
【0026】
つぎに、移載機4は、搬送位置C上に露出した打型物10,11を搬送位置Dに移動させ、搬送位置Dにセットされた化粧皿9内に収容する。この化粧皿9への移し替えは、ターンテーブル2の回転および搬送路3の移動と同期しており、本実施形態ではこれらが停止した状態で実行される。具体的には、まず、図8に示すように、回転角θinに位置した移動アーム4bを高さHin相当まで下降させた上で、保持部4aによって搬送位置C上の打型物10,11を同時に吸引・保持する。その際、打型物10,11の高さが同じ場合には、2つの保持部4aの先端位置も揃えればよいが、これらの高さが異なる場合には、打型物10,11との上下方向の隙間を調整すべく、それぞれの保持部4aの先端位置を変える。なお、この調整は、保持部4aの高さを可変に調整する稼働機構によって行ってもよい。
【0027】
つぎに、この保持状態を維持しながら回転角θoutまで移動アーム4bを回転・移動させる。最後に、移動アーム4bを高さHoutまで下降させた上で、保持部4aによって保持されていた打型物10,11を同時に解放する。これにより、図9に示すように、搬送位置D上にセットされた化粧皿9の内部に打型物10,11が収容される。なお、図示したケースでは、個々の打型物10,11を区分するための仕切りが化粧皿9に設けられていないが、これが設けられた化粧皿9を用いてもよい。また、本工程における打型物10,11の移し替えは、空きの化粧皿9のみならず、他の化粧料が一部に既に収容された化粧皿9に対して行ってもよい。この場合、化粧皿9の空きスペースが打型物10,11の収容先(移動先)となる。
【0028】
その後、搬送路3の移動によって、作業対象が搬送位置Cから搬送位置Dに搬送される。そして、作業対象が搬送位置Dに到達すると、本プレス工程が実行される。この工程では、図10に示すように、化粧皿9内に収容された打型物10,11が本プレス機7によって一括でプレスされる。これによって、化粧皿9内における打型物10,11の隙間が解消され、最終的な打型品としての多色化粧料が完成する。
【0029】
このように、本実施形態によれば、移載機4を用いて、打型物10,11を化粧皿9内に移し替える作業を自動化することによって、これを手作業で行う場合と比較して、生産性の向上を図ることができる。トレイ等の内部に多数の打型物が収容されている状態では、個々の打型物の収容位置が様々なので、収容位置が一意に特定できないばかりか、これを取り出す際に打型物を崩してしまい易く、これらが自動化を妨げる問題となっていた。そこで、本実施形態では、移載機4が打型物10,11を保持する移動元(移動始点)を、既知の搬送位置Cにおける充填空間8d,8eの位置に固定して、ターンテーブル2を含む搬送路を流れるすべての作業対象(打型物10,11)に関して共通化する。また、この移動元では、すべての作業対象の位置や向きが一様になっている。このような移動元の固定と、打型物10,11の配置状態の一様化とによって、移載機4の制御を複雑化することなく、打型物10,11の移し替えが可能になる。それとともに、この移し替えに際して、打型物10,11に無理な負荷を与えずに済むので、打型物10,11の崩れも抑制できる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、移載機4として、打型物10,11の保持・移動を同時に行うマルチヘッド型(複数の保持部4aを備えたもの)を例示したが、図11に示すように、単一の打型物を保持するシングルヘッド型(単一の保持部4aを備えたもの)を用いてもよい。この場合には、打型物の移し替えを打型物の個数分だけ繰り返すといった逐次的な動作になる。移載機4を動作させるのに必要な情報としては、移動始点および移動終点よりなる情報のセットを打型物の個数分だけ実行順序付で登録しておく。
【0031】
また、図12に示すように、移載機4の移動アーム4bに少なくとも一つの可動機構4e〜4gを設けて、移し替えるべき打型物10,11の位置または向きを移動始点時とは異なる状態に変化させるようにしてもよい。第1の可動機構4eは、移動アーム4bの延在長を可変に調整する。第2の可動機構4fは、移動アーム4bに対するヘッド部分の回転位置を可変に調整する。第3の可動機構4gは、一対の保持部4aの間隔を可変に調整する。これらの可動機構4e〜4gは、予め設定された動作条件に応じた制御部4dの制御下で、アクチュエータやステッピングモータ等によって動作する。これによって、搬送位置C上における打型物10,11の位置や向きに依存することなく、化粧皿9内の配置に合致した位置または向きを任意に設定することができる。特に、図13に示すように、第3の可動機構4gによって一対の保持部4aの間隔を調整すれば、打型物10,11を化粧皿9にセットする際、両者のクリアランスを最適化できる。一般に、打型物10,11の膨張率(プレスされた打型物がプレス後に再膨張する程度)は処方によって異なる。打型物10,11の成型用金型8を設計する際には、この膨張率を考慮する必要があるが、これを見越した金型設計は容易ではない。また、打型物10,11の再膨張に応じて、両者のクリアランスが変化するので、これが化粧皿9に収容する際の問題になる。これらの問題は、第3の可動機構4gによって、打型物10,11のクリアランスを調整することによって解消できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明に係る多色化粧料の製造方法は、その生産ラインの自動化によって生産性の向上を図る用途に対して広く適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 自動生産ライン
2 ターンテーブル
3 搬送路
4 移載機
5 充填機
6 予備プレス機
7 本プレス機
8 金型
9 化粧皿
10,11 打型物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多色化粧料の製造方法において、
対象物を保持して移動させる移載機を動作させるために必要な情報として、生産ライン上における第1の充填空間の位置および第2の充填空間の位置に応じた移動始点と、所定の位置にセットされる化粧皿における第1の収容位置および第2の収容位置に応じた移動終点とを登録する第1のステップと、
前記第1の充填空間における粉末化粧料の打型によって、第1の打型物を生成するとともに、前記第2の充填空間における粉末化粧料の打型によって、前記第1の打型物とは色調が異なる第2の打型物を生成する第2のステップと、
前記移動始点で対象物を保持し、前記移動始点から前記移動終点に対象物を移動させ、前記移動終点で対象物を解放するという動作条件にしたがって、前記移載機を動作させることによって、前記第1の充填空間の位置に存在する前記第1の打型物を前記第1の収容位置に移動させるとともに、前記第2の充填空間の位置に存在する前記第2の打型物を前記第2の収容位置に移動させる第3のステップと
を有することを特徴とする多色化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記第3のステップにおいて、前記移載機は、前記第1の充填空間の位置に存在する前記第1の打型物と、前記第1の充填空間と並んで配置された前記第2の充填空間の位置に存在する前記第2の打型物とを、同時に保持して移動させることを特徴とする請求項1に記載された多色化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記第3のステップにおいて、前記移載機は、自己に設けられた可動機構によって、前記第1の打型物および前記第2の打型物の位置または向きを前記移動始点時とは異なる状態に変化させ、これによって、前記化粧皿内の配置に合致した位置または向きにすることを特徴とする請求項1または2に記載された多色化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記第3のステップにおいて、前記移載機は、前記第1の打型物および前記第2の打型物を吸引によって保持することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載された多色化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記第2のステップは、
一対の金型を組み合わせることによって形成された前記第1の充填空間および前記第2の充填空間のそれぞれに粉末化粧料を充填するステップと、
前記第1の充填空間および前記第2の充填空間のそれぞれに充填された粉末化粧料をプレスするステップと、
一方の前記金型に対して他方の前記金型を変位させることによって、前記第1の充填空間内に形成された前記第1の打型物と、前記第2の充填空間内に形成された前記第2の打型物とを、前記移載機が保持可能な状態に露出させるステップと
を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された多色化粧料の製造方法。
【請求項1】
多色化粧料の製造方法において、
対象物を保持して移動させる移載機を動作させるために必要な情報として、生産ライン上における第1の充填空間の位置および第2の充填空間の位置に応じた移動始点と、所定の位置にセットされる化粧皿における第1の収容位置および第2の収容位置に応じた移動終点とを登録する第1のステップと、
前記第1の充填空間における粉末化粧料の打型によって、第1の打型物を生成するとともに、前記第2の充填空間における粉末化粧料の打型によって、前記第1の打型物とは色調が異なる第2の打型物を生成する第2のステップと、
前記移動始点で対象物を保持し、前記移動始点から前記移動終点に対象物を移動させ、前記移動終点で対象物を解放するという動作条件にしたがって、前記移載機を動作させることによって、前記第1の充填空間の位置に存在する前記第1の打型物を前記第1の収容位置に移動させるとともに、前記第2の充填空間の位置に存在する前記第2の打型物を前記第2の収容位置に移動させる第3のステップと
を有することを特徴とする多色化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記第3のステップにおいて、前記移載機は、前記第1の充填空間の位置に存在する前記第1の打型物と、前記第1の充填空間と並んで配置された前記第2の充填空間の位置に存在する前記第2の打型物とを、同時に保持して移動させることを特徴とする請求項1に記載された多色化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記第3のステップにおいて、前記移載機は、自己に設けられた可動機構によって、前記第1の打型物および前記第2の打型物の位置または向きを前記移動始点時とは異なる状態に変化させ、これによって、前記化粧皿内の配置に合致した位置または向きにすることを特徴とする請求項1または2に記載された多色化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記第3のステップにおいて、前記移載機は、前記第1の打型物および前記第2の打型物を吸引によって保持することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載された多色化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記第2のステップは、
一対の金型を組み合わせることによって形成された前記第1の充填空間および前記第2の充填空間のそれぞれに粉末化粧料を充填するステップと、
前記第1の充填空間および前記第2の充填空間のそれぞれに充填された粉末化粧料をプレスするステップと、
一方の前記金型に対して他方の前記金型を変位させることによって、前記第1の充填空間内に形成された前記第1の打型物と、前記第2の充填空間内に形成された前記第2の打型物とを、前記移載機が保持可能な状態に露出させるステップと
を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された多色化粧料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−17109(P2012−17109A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153686(P2010−153686)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】
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