説明

多要素および多特性のタグ付け

一実施形態は、物体を識別するための特徴を持つ区別できる構造を含む人工物体に関し、物体は、物体が可視光の下で観察可能であるようなサイズを有し、特徴は、物体の中または上に埋め込まれ、特徴のサイズは、可視光の下で観察可能でないようなサイズであり、特徴は、特徴から生じる属性を含み、属性は、特徴を定義する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月11日に出願された米国特許出願第12/636,370号の利益を主張し、それは、2009年8月18日に出願されたインド特許出願第1967/CHE/2009号の優先権を主張し、それらは両方とも、参照により全体として本明細書によって組み込まれる。
【0002】
本実施形態は、タグ付けの分野に関し、より詳しくは、物体の中または上に埋め込まれた特徴を有する物体を使用するタグ付けに関する。
【背景技術】
【0003】
偽造および著作権侵害は、世界中の国が政治的および経済的の両方で直面する大きな脅威である。いくつかの手法が、この問題を解決するために提案されている。例えば、WO/2006/086008は、通貨、銀行券、および関連文書での隠されたタガント(taggant)としてナノ粒子を開示し、米国特許第6,692,030号は、ナノパターンを持つセキュリティー文書を開示し、WO/2008/010822は、ナノ粒子を使用して物体を認証し、識別することを開示し、(WO/2008/030219)は、爆発物および他の有害材料の遠隔識別を開示し、米国特許第6,515,749号は、ナノ構造表面を持つ高感度の選択性化学センサーを開示し、(WO/2007/149120)は、表面増強ラマン散乱のためのナノ構造のアレイを開示し、米国特許第6,610,351号は、ラマン活性タガントおよびそれらの認識を開示し、米国特許第5853464号は、色素組成を開示し、Spectroscopy、2004年2月、26は、偽造米国通貨の蛍光検出を開示し、Microelectron.Eng.、2003年、65、439は、偽造防止応用のためのマイクロレリーフ構造を開示する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書の実施形態は、物体を識別するための特徴を持つ区別できる構造を含む人工物体に関し、物体は、物体が可視光の下で観測可能であってもよいサイズを有し、特徴は、物体の中または上に埋め込まれてもよく、特徴のサイズは、特徴が可視光の下で観測可能でなくてもよいようなサイズであってもよく、特徴は、特徴から生じる属性を含み、属性は、特徴を定義する。
【0005】
好ましくは、物体の寸法の1つは、0.1から10μmの範囲であってもよく、特徴のサイズは、約100nm以下であってもよい。
【0006】
好ましくは、特徴は、複数のユニークな要素を含み、各ユニークな要素は、別個のパターンを有する。
【0007】
好ましくは、特徴は、複数のユニークな要素を含み、各ユニークな要素は、別個の特性を有する。
【0008】
好ましくは、特徴は、タグを含み、そのタグは、タグの識別が物体の認証を可能にするように物体と関連する。
【0009】
好ましくは、タグは、分子タグ、生物学的タグ、光学タグ、電子タグ、磁性タグ、蛍光タグ、ラマン分光法用タグ、電子顕微鏡用タグ、X線顕微鏡用タグ、およびそれらの組合せから成る群から選択されてもよい。
【0010】
好ましくは、特徴は、特徴を検出するように構成される特殊デバイスなしでは観測可能でなくてもよい。
【0011】
好ましくは、特殊デバイスは、特徴の光学、ラマン、蛍光、電子、X線または磁気特性を検出するように構成されてもよい。
【0012】
好ましくは、特徴は、分子、原子または単一粒子レベルでユニークな要素を含む。
【0013】
好ましくは、特徴は、物体の認証の異なる段階で検出されるように構成される複数のユニークな要素を含む。
【0014】
好ましくは、特徴は、複数のユニークな要素を含み、各ユニークな要素は、別個のパターンおよび別個の特性を有する。
【0015】
好ましくは、特徴は、特定の構造的属性を有する。
【0016】
好ましくは、特徴は、タグを含み、そのタグは、タグの識別が物体の認証を可能にするように物体と関連する。
【0017】
別の実施形態は、物体を識別するための特徴を含む物体を認証するように構成される多重診断デバイスを含むシステムに関し、特徴は、複数のユニークな要素を含み、各ユニークな要素は、別個のパターンおよび別個の特性を有する。
【0018】
好ましくは、多重診断デバイスは、光学診断デバイス、ラマン診断デバイス、電子診断デバイス、X線診断デバイス、磁気診断デバイスまたはそれらの組合せを含む。
【0019】
別の実施形態は、物体の中または上に埋め込まれた特徴の特性を明らかにすることおよび特徴の特性を明らかにすることの結果に基づいて物体を認証することを含む方法に関し、特徴は、物体を認証することの異なる段階で検出されるように構成される複数のユニークな要素を含む。
【0020】
好ましくは、特性を明らかにすることは、多重診断デバイスを含むシステムによって行われてもよい。
【0021】
好ましくは、多重診断デバイスは、光学診断デバイス、ラマン診断デバイス、電子診断デバイス、X線診断デバイス、磁気診断デバイスまたはそれらの組合せを含む。
【0022】
前述の概要は、説明に役立つだけであり、決して限定することを意図していない。上で述べた説明に役立つ態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、および特徴が、図面および次の詳細な記述を参照することにより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、導電性ガラス基板に固定された金メソフラワー(mesoflowers)の大面積FESEM画像を示し、(b)は、金メソフラワーのFESEM画像である。挿入図は、メソフラワー粉末の写真を示す。
【図2】(a)は、挿入図で示されるメソフラワーから取得されたAuMαを使用するEDAX画像を示し、(b)は、エッジに沿ってリッジを示すメソフラワーの単一の茎の拡大FESEM画像であり、(c)は、五角形構造を示すメソフラワーの単一の茎およびその頂点(印のついた)のナノ粒子の上面図であり、(d)は、対応するモデルである。
【図3】(a)2mL、(b)5mL、および(c)6mLなどのさまざまな量のシード溶液が20mLの成長溶液に加えられたときに形成された異なるサイズのメソフラワーのTEM画像を示す図であり、(d)は、(a)で示されるメソフラワーの先端から取得された格子解像TEM画像であり、メソフラワーの先端から取得されたSAEDパターンは、(d)の挿入図で示される。
【図4】(a)は、Au/オリゴアニリンのシードナノ粒子のTEM画像を示し、(b)は、シード粒子から取得された格子解像画像であり、(c)、(d)、(e)および(f)は、それぞれ2、5、10、および60分のさまざまな成長段階で形成されたメソフラワーのSEM画像である。
【図5】(a)サイズ1〜2μmの金メソフラワーおよび(b)Au/オリゴアニリンのシード粒子から収集されたXPSスペクトルを示す図であり、(a)での挿入図は、Au4f領域での拡大スペクトルを示す。
【図6】(a)は、ポジティブモードで取得されたAu/オリゴアニリンのシードのLDI MSを示す図である。オリゴマーのピークの2つの系列が、示され、系列2でのピークは、系列1での対応するピークよりもm/zが15低いところで生じ、(b)および(c)は、それぞれポジティブおよびネガティブモードで取得されたメソフラワーのLDI MSである。セチルトリメチルアンモニウムのイオンに起因する(b)でのm/z285におけるピークは、それの高い感度に起因して増強される。
【図7】(a)は、さまざまなサイズのメソフラワーの単分子層のUV−可視光−NIR吸収スペクトルおよび空のガラス基板の対応するスペクトルを示し、(b)は、空の(黒色トレース)ならびにガラス基板に塗布されたメソフラワーの単分子層(緑色トレース)および二分子層(赤色トレース)の透過率スペクトルであり、(c)は、金メソフラワーのNIR−IR吸収特性の実時間測定に使用された実験配置の写真である。段ボール箱は、サーモコル(thermocol)シートの上に置かれる。熱電対の先端は、写真で示されるように、箱の中央にある。熱電対は、サーモコルシートを貫通する。配置全体は、テーブル上に保持される。測定は、個別試料についてさまざまな日に繰り返された。(d)および(e)は、それぞれメソフラワーの単分子層および二分子層を塗布されたガラス板について露出時間の関数としての段ボール箱内部の温度変化のプロットである((e)での1500秒近辺での温度変動は、通過する雲に起因する太陽光の妨害に起因する)。ゼロ時間近くでの温度の初期増加は、非常に速い。
【図8】(a)メソフラワー塗布ガラス基板および(b)Au@クエン酸塩(球状NP)塗布ガラス基板に吸着された異なる濃度のCV溶液から収集されたラマンスペクトルを示す図であり、(c)は、200〜1800cm−1の窓で10−6mol/LのCV溶液のラマン強度を積分することによって得られた単一メソフラワーのラマン画像であり、(d)は、(c)で印のついたさまざまな点からの単一ラマンスペクトルである。(c)での挿入図は、メソフラワーの光学画像である。
【図9】(a)は、メソフラワー埋め込みインド通貨の写真を示す図である。(b)は、紙幣上のメソフラワーのラマン画像である。ラマン画像は、200から1800cm−1の範囲でラマン特徴の強度を積分することによって収集された。挿入図「b」は、ラマン撮像のために選択されたメソフラワーの対応する光学画像を示す。(c)は、紙幣上の単一メソフラワーから収集されたラマンスペクトルである。ここで示される通貨は、説明の目的のためである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で開示される実施形態は、ナノスケールの特徴を持つユニークな構造を使用して、物体がその一部である何かある物に絶対確実なセキュリティーを提供するために、物体が、検出タグとして使用されてもよく、組み合わされた光学、ラマン、蛍光、電子、X線顕微鏡法および/または磁気検出に基づく手法によって検出されてもよいような、埋め込み特徴を有する物体に関する。そのような検出技術は、同時にまたは連続して行われるいくつかのまたはすべての上述の技術を使用して、単一粒子レベルで撮像することを可能にする。物体のユニークな構造的特徴の存在は、可視光で観察可能であり、家庭でまたは他の場所で物体を認証するために使用されてもよいが、埋め込み構造および分子特徴は、精巧な装置によって観察される。
【0025】
物体とは、物体を識別するための特徴を持つ区別できる構造を有する人工物体のことであり、物体は、物体が可視光の下で観察可能であってもよいようなサイズを有する。区別できる構造は、メソスケール構造(メソ構造)またはナノスケール構造(ナノ構造)であってもよい。特徴は、物体の中または上に埋め込まれてもよく、特徴が可視光の下で観察可能でなくてもよいようなサイズを有する。特徴は、物体から生じる属性(固有特性)を有する。属性は、特徴を定義するシグネチャであってもよく、それは次に、区別できる構造および/または物体を定義してもよい。
【0026】
単一粒子レベルでの検出とは、容易に複製できない多くのユニークな情報を保持できる多要素および多特性の属性を備える特徴を持つ区別できる構造を有する単一物体、例えば単一「メソフラワー」粒子を検出する能力のことである。そのような単一メソフラワーの分析は、特徴が埋め込まれてもよい物体の認証にとって十分なこともある。
【0027】
メソフラワーは、いくつかの自然物体に似て単一粒子レベルで非対称であってもよく、独特の五角形対称を持つ多数の茎で構成されていてもよい。メソ構造材料は、星形のナノ構造の茎を持つ高度の構造純度を有してもよい。メソフラワーは、どんな汚染構造もなく高収率で得られてもよく、そのサイズは、ナノ寸法からメソ寸法まで調整されてもよい。
【0028】
本明細書の実施形態は、組み合わされた光学、ラマン、蛍光、電子、X線、および/または磁気診断法を使用する、物体を有する製品の絶対確実なセキュリティー検出に関する。例えば、本実施形態は、通貨および他の文書のためのセキュリティー特徴を作り出すために使用されてもよいメソフラワーなどのナノスケール特徴を持っている、独特のユニークなミクロンスケール物体での分子検出手順に関することもある。本実施形態は、容易に区別できるラマンもしくは蛍光スペクトルを有するラマンもしくは蛍光活性分子が吸着されてもよいまたは認証すべき製品に付着されてもよい高表面増強ラマン分光法(SERS)用もしくは蛍光活性金属メソフラワーを含んでもよい。
【0029】
メソフラワーなどのメソ構造体は、光学、ラマン、および蛍光顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)ならびにX線のエネルギー分散分析(EDAX)を使用して撮像できるので、認証方法は、ずらりと並んだ顕微鏡的および分光学的ツールを含む識別のさまざまなレベルで実施されてもよい。ユニークな構造的特徴を持つミクロンスケール物体は、光学顕微鏡の下で観察されてもよく、一方特定のナノスケール特徴は、電子およびX線顕微鏡の下で見られてもよい。特徴は、ラマンまたは蛍光分光器を使用して検出できる分子タグを含んでもよい。ラマン顕微鏡法はまた、メソ構造体上の分子分布を明らかにすることもある。メソ構造体の元素マッピングはまた、EDAXを使用して行うこともできる。基板の全構造に沿った分子/原子および特定のラマンまたは蛍光特徴を持つ合成可能な多数の分子タグの空間分布は、そのようなシステムのために多層のセキュリティーを提供する。上述の計装技術の1つまたは複数は、必要とされるセキュリティーのレベルに応じて、所与の応用のために同時に使用できる。
【0030】
本明細書の実施形態の物体の形状は、全体として原子レベルで複製できない指紋またはヒトデもしくは花などの生物学的物体と同じ程度にユニークであってもよい。単一メソフラワー粒子のユニークさは、(1)ヒトデ、アロエベラ、パイナップル、その他の場合のようなユニークな形状、(2)ラマン、蛍光および赤外線分光法で明確な分子特徴を有するユニークな分子マーカー、(3)金、銀、白金、その他などの埋め込み金属に起因する元素特徴、および(4)合成制御に起因して生じることもある構造のナノスケール特徴という観点で生じる。それらをすべて同時に複製することは不可能なこととなる。これは、多要素および多特性の属性を持つ単一メソフラワー粒子が、容易に複製できない多くのユニークな情報を保持できることを示唆する。単一粒子と呼ばれることもある、そのような単一メソフラワーの分析は、メソフラワーが埋め込まれる物体の認証に十分なこともある。
【0031】
物体を認証する能力は、埋め込みナノスケール特徴および特定の構造的属性を持つユニークなメソスケール(0.1〜10μmの範囲の長さの)物体の創出に少なくともある程度基づくこともある。
【0032】
物体は全体として、簡単な顕微鏡の助けを借りてエンドユーザーに観察可能なこともあるが、ナノ構造に起因する分子特徴の増強検出は、精巧な機器を使用するユニークな分光学的、顕微鏡的、および磁気的特徴付けを可能にする。ユニークな特徴のいくつかはまた、一般市民が利用できる簡単なデバイスによって突き止めることもできる。
【0033】
人が本明細書で開示される技術を通じて作製する特徴は、完全にメソスケールおよびナノスケールから原子レベルに至るまで全体として複製できない指紋またはヒトデもしくは花などの生物学的物体と同じ程度にユニークな可能性がある。
【0034】
セキュリティー読み出しの異なるレベル(光学、ラマン、蛍光、電子および/またはX線顕微鏡法)は、自動設備での認証の異なる段階で実施されてもよい。セキュリティーを提供する方法には、明確な形状の特定のナノスケール物体を作ること、ナノ構造に別個のラマン/蛍光/赤外線特徴を有する分子タグの有機分子を組み込むこと、基板に特定のパターンでまたはさもなければ隠れたセキュリティー符号を生成するように所定の場所に材料を埋め込むことが含まれる。特徴は、高速分光計によって読み出されてもよい。高感度ラマン分光計を使用すると、組み込まれたタグ分子の埋め込みラマン特徴は、数秒内に容易に分析できる。それは、機械に基づく検出技術であってもよいので、自動的に検出を行うことが可能なこともある。同様に、適した精巧な機器を使用すると、メソフラワーの組み込まれた属性の識別は、自動化できる。セキュリティー読み出しの異なるレベル(光学、ラマン、蛍光、電子およびX線顕微鏡法)は、自動設備での認証の異なる段階で実施されてもよい。これらの自動設備は、公衆の認識および情報のために集中場所に据え付けられてもよい。
【0035】
物体のすべての顕微鏡的、分光学的、および磁気的属性は、単一粒子レベルで複製できない。これらの属性は、偽造防止および認証のためにセキュリティー特徴の前例のない多要素および多特性のタグ付けを製品または物体に提供する。属性は、メソフラワーに特有の固有の構造的属性であってもよい。
【0036】
高い構造純度を持つメソフラワーは、合成法によって作られてもよい。合成での各パラメーターは、ユニークな形態を持つメソフラワーを作製する。メソフラワーのユニークさは、(1)アロエベラ、パイナップル、ヒトデ、花、その他に似たユニークな形状、(2)ラマンおよび蛍光スペクトルで明確な分子特徴を有するユニークな分子マーカー、(3)金、銀、白金、その他などの埋め込み金属に起因する元素特徴、および(4)合成制御に起因して生じることもある構造のナノスケールパターン化という観点で生じる。それらをすべて同時に複製することは不可能なこととなる。分子マーカーは、少しの分子がユニークなナノ構造の存在に起因して存在するときでさえ読み出すことができる。ユニークな分光学的特徴を持つラマンまたは蛍光活性分子の実質的に無制限な可能性がある。また、多様な分子が、メソフラワーに付着されてもよい。メソフラワーのこれらの属性はすべて、実質的に複製することが不可能である。
【0037】
メソフラワーは、ユニークな形態を有してもよい。いったんそれが、紙文書、通貨、その他などの基板に埋め込まれると、それは、容易に外へ出ないことになる。ユニークな形態は、メソフラワーが基板にしっかりとくっつくことを可能にする。例えば、写真複写によって作られた偽造通貨は、メソフラワータガントを含有しないことになる。これは、簡単な手持ち式顕微鏡によって容易に調べることができる。表面増強ラマン散乱活性または蛍光分子でタグ付けされたメソフラワーを、認証すべき物体に組み込むことは、偽造することが困難となるマルチレベルのセキュリティーを提供でき、同時にメソフラワーは、顕微鏡的または分光学的技術を使用することによって識別されてもよい。吸着ラマン活性分子は、埋め込みメソフラワーのユニークなラマンスペクトルおよびスペクトル画像を収集することを可能にする。SEMまたはTEMを使用するメソフラワーの詳細な調査は、複製が困難なこともあるメソフラワーの複雑な形状を与えて別のレベルのセキュリティーを提供することもある。これらは、本明細書の実施形態によって与えられる異なるレベルのセキュリティーのためのいくつかの例である。
【0038】
本明細書の実施形態は、認証の異なる段階で実施されてもよい。例えば、認証技術は、ナノスケール特徴を持つユニークなメソフラワーを使用して絶対確実なセキュリティーを基板に提供するために、組み合わされた光学、ラマン、電子およびX線顕微鏡法に基づく手法であってもよい。上で述べたような異なるレベルのセキュリティーは、メソスケール撮像が最初で、その後にナノスケール撮像が続く認証の異なる段階で実施されてもよく、自動設備での要件に応じたものとすることができ、そのような認証のための応答時間は10ミリ秒程度に短くできる。
【0039】
例えば、メソフラワーの表面増強ラマン分光法(SERS)特性は、セキュリティーのレベルの1つとして利用できる。ラマン分光計は、吸着タグ分子のユニークなスペクトル特徴を提供することができる。機器能力に応じてわずか数ミリ秒内にラマンスペクトルを収集することが可能となる。そのような種類のスペクトルは、タグ分子についての情報をすべて含有することになる。それ故に、ラマン分光計を使用して数ミリ秒内に物体を認証することが可能となる。
【0040】
メソフラワーの特性を明らかにすることは、少なくとも次の方法によって行うことができる。
1.拡大鏡または光学顕微鏡を使用する埋め込みメソフラワーの視覚的検出。(ここで拡大鏡を使用する、認証すべき物体の特定の場所での視覚的検査は、複雑形状の粒子の存在を明らかにすることになる。)
2.手持ち式ラマンまたは蛍光分光計をそれぞれ使用する、メソフラワー表面の吸着ラマンまたは蛍光特定分子からの分子スペクトルシグネチャ。認証すべき物体の特定の場所は、レーザーまたは蛍光源で照射されてもよく、結果として得られるスペクトルは、記録されてもよい。次いでスペクトルは、ライブラリーと照合されてもよい。
3.手持ち式ラマンまたは蛍光分光計をそれぞれ使用する、吸着ラマンまたは蛍光特定分子からの分子スペクトルシグネチャに基づく撮像。通貨の特定の場所は、レーザーまたは蛍光源で走査されてもよく、結果として得られるラマンに基づく画像は、記録されてもよい。
4.メソフラワー表面の蛍光分子は、紫外光の存在下で検出されてもよい。
5.走査型電子顕微鏡を使用するメソフラワーのユニークな形態の分析。
6.透過型電子顕微鏡を使用する形態およびより微細な原子レベルの詳細の検査。
7.エネルギー分散型X線分析を使用する金属粒子の元素組成分析。
【0041】
好ましくは、メソフラワーの顕微鏡的、分光学的、および磁気的属性はすべて、分子、原子、および単一粒子レベルで複製できない。多要素および多特性の属性を持つ単一メソフラワー粒子は、多くのユニークな情報を保持することができ、それらはすべて、容易に複製できない。それ故に、そのような単一メソフラワーの分析は一般に、メソフラワーが埋め込まれることになる物体の認証に十分なこともある。
【0042】
本明細書の実施形態は、偽造防止および認証のためにセキュリティー特徴の前例のない多要素および多特性のタグ付けを製品または物体に提供する。本実施形態は、メソフラワーに基づくセキュリティータグを組み込むことによって、認証すべき物体にマルチレベルのセキュリティーを提供する。物体のメソフラワーのいくつかまたはすべては、金でできていてもよい。さまざまな金属を簡単な合成手順によってメソフラワーに組み込むことがまた可能なこともある。多要素属性は、この方法によってメソフラワーに組み込むことができる。容易に区別できるラマンまたは蛍光スペクトルを有するラマンまたは蛍光活性分子タグを合成メソフラワーに組み込んで非常にSERSまたは蛍光活性なタグ付けされた金属メソフラワーを形成することがまた可能なこともある。これらの構造的および組成的属性ならびにメソフラワーに存在する吸着分子マーカーは、偽造防止のために多要素および多特性のセキュリティーを製品または物体に提供する。
【0043】
セキュリティーを提供する方法は、明確な形状の特定のメソ/ナノスケール物体を作ること、別個のラマン、蛍光、および赤外線特徴を有する分子/イオン/種をナノ構造に組み込むことを含む。加えて、Ag、Pt、Ni、Fe、Coなどの元素、または任意の他の適切な元素は、前のAuに基づくメソフラワーに追加でき、全物体は、任意の基板/物体に特定のパターンでまたはさもなければ隠れたセキュリティー符号を生成するように所定の場所に組み込むことができる。メソ構造全体には、その上磁気特性を付与できる。
【0044】
適切な機器は、物体に利用できることもあるメソフラワーに埋め込まれた特定の特有の特徴/情報を読み出し/撮像し/認識する。これらの特徴は、使用される材料によって提示される分子、元素、形態学的および磁気的特徴を使用して読み出される。
【0045】
機器を使用して、この認証プロセスからこのようにして得られる形状および顕著な特徴は、本物の物体と偽の物体とを区別する。異なるレベルのセキュリティー読み出し(光学、ラマン、蛍光、電子、X線、および磁気特性)は、自動設備での認証の異なる段階で実施されてもよい。
【0046】
適切な画像/パターン認識システムを使用することによって偽物から物体を認証することができるプロセス全体は、自動化できる。
【実施例】
【0047】
一実施形態では、物体は、金メソフラワーであった。メソフラワーは、独特の五角形対称を持つ多数の茎でできたいくつかの自然物体に似ていた。これらの材料は、星形のナノ構造の茎を持つ高度の構造純度を提示する。
【0048】
メソフラワー材料は、シード媒介成長手順に従うことによって合成された。Au/オリゴアニリンのシードナノ粒子は、P.R.Sajanlal、T.S.Sreeprasad、A.S.Nair、T.Pradeep、Langmuir 2008、24、4607での開示に従って合成された。ポリマーとしてのオリゴアニリンのほかに、オリゴ−もしくはポリ−オルト、メタおよびパラトルイジンまたは置換アニリンのポリマーまたはエチレン、アレン、ビニレン、ピロール、ピリジン、チオフェン、もしくはそれらの置換誘導体などの分子または他の重合可能な分子のオリゴマーもしくはポリマーがまた、使用されてもよい。手短に言えば、50mgのクエン酸が、75mLの蒸留水に溶解された。溶液は、80℃に維持され、2mLの25mM HAuClが、追加された。淡黄色からピンクへの色変化の後、200μLの蒸留アニリンが、追加され、その後に1mLの25mM HAuClの追加が続いた。加熱は、5分間以上続けられた。それは、次いで室温まで冷却され、4000rpmで遠心分離されてもよく、結果として得られる薄いピンクの表面に浮かぶAu/オリゴアニリンのナノ粒子が、収集された。
【0049】
金メソフラワーを作るために、20mLの臭化セチルトリメチルアンモニウム、CATB(100mM)、335μLのAu3+(25mM)、125μLのAgNO3(10mM)および135μLのアスコルビン酸(100mM)を含有する成長溶液が、ビーカーに入れられた。この溶液に対して、2mLの調製されたままのAu/オリゴアニリンのナノ粒子が、追加された。それは次いで、80 0Cの温度に1時間保持された。結果として得られる溶液は、4000rpmで5分間遠心分離された。残留物は、蒸留水に再分散され、再度5分間遠心分離された。最後に、固形残留物が、蒸留水に再分散され、特性を明らかにされ、さらなる実験に使用された。これは、サイズ1〜2μmのメソフラワーをもたらした。0.1〜10μmに及ぶサイズのメソフラワーを得るために、成長溶液の成分の濃度および量が、10〜100mLのCTAB(0.01〜1.00M)、100〜1000μLのAu3+(10〜100mM)、125〜500μLのAgNO3(5〜100mM)および100〜1000μLのアスコルビン酸(10〜1000mM)などのある範囲に変えられた。この成長溶液に追加されるシード粒子の量もまた、1mLから10mLまで変えられた。
【0050】
図1(a)は、インジウムスズ酸化物(ITO)ガラス板に固定された金メソフラワーの単分子層の大面積電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)画像を示す。図1(a)は、合成が規則正しい構造をもたらすことを示す。実際、球状または他の構造は、見いだされなかった。メソフラワーはすべて、同じ形態を示した。単一メソフラワーの図1(b)でのFESEM画像は、アロエベラまたはパイナップルに似ている、生体模倣構造体であるメソフラワーの非常に複雑な異方性を明らかにする。各メソフラワーは、多数のとがった茎で構成され、それらは、芯から外側へあらゆる方向に突き出ている。メソフラワーのFESEM画像から、各メソフラワーの茎の数は、粒子ごとに異なることが見いだされた。これらの茎は、メソフラワーを三次元的にする。観察された個々のメソフラワーおよびすべての粒子は、10より多く、20にまで及ぶ茎を有することが見いだされた。典型的な合成(20mLの成長溶液、3.3mgのAu3+を使用する)は、2.9mgの材料を作り、固体状態でのメソフラワー粉末の写真は、図1(b)の挿入図で示される。
【0051】
メソフラワーでの金の空間分布を調べるために、単一メソフラワーの元素マッピングが、X線のエネルギー分散分析(EDAX)を使用して行われた。図2(a)は、AuMαに基づく画像を示す。EDAX分析から、メソフラワーは、ほとんど完全に金でできていることが確認された。図2(b)は、メソフラワーの単一の茎の拡大SEM画像を示す。各茎は、それの角に沿ってユニークな形態を生じさせるリッジを有する。5つのエッジの存在は、茎を上部から見るとき茎に星形の外観を与え、茎の角に沿ったリッジは、積層した外観を与える。茎のそれの上部からの眺めは、エッジ長〜400nmの星のように見える(図2(c))。1つのそのような星形の茎のモデルは、図2(d)で示される。
【0052】
その上、合成されたままの三次元メソフラワーのサイズは、追加される前駆体Au/オリゴアニリンのナノ粒子の量を変更することによって制御できる。サイズが1μmよりも大きいメソフラワーは、最適実験条件の下で2mLの前駆体ナノ粒子が20mLの成長溶液に追加されたときに形成された。図3(a)は、そのような単一金メソフラワーの透過電子顕微鏡法(TEM)画像を示す。メソフラワーの平均サイズは、1〜2μmであった。メソフラワーのサイズは、追加されるシード溶液の量が5mLに増加されたとき減少し、長さ0.5〜1μmのメソフラワーを与えることが見いだされた(図3(b))。サイズは、成長溶液への6mLのシード溶液の追加によってさらに〜150nmまで減少した(図3(c))。これは、メソ/ナノフラワーのサイズを調整する際の我々の合成手法の柔軟性を明らかにする。より高いシード濃度では、多数のシード粒子が、成長プロセスに関与することになり、成長溶液の金イオンの量が、それらが個々の粒子の完全な成長の前に消費されることになるので、十分でないことになる。メソフラワーの茎の格子解像TEM画像は、図3(d)で示され、対応する制限視野電子回折(SAED)は、挿入図で示される。金メソフラワーは、2.35Åの格子間隔を提示し、それは、金の(111)面に対応する。TEMは、二次元投影であるので、物体の三次元性は、SEM画像でのように明瞭でない。
【0053】
メソフラワーの形成は、前駆体Au/オリゴアニリンのナノ粒子の形態に依存する。図4(a)は、Au/オリゴアニリンのシードナノ粒子のTEM画像を示す。格子解像画像から、Au/オリゴアニリンのシード内部に存在するより小さな粒子が、多重双晶であることは明らかである。2.35Åのd間隔を持つ金(111)面は、格子解像画像で印をつけられている(図4(b))。図4(c)(f)は、反応の異なる段階で形成される中間構造体のSEM画像を示す。中間粒子を収集するために、反応は、2、5、10、および60分後に止められ、結果として得られる溶液は、過剰なCTABおよび他のイオンを除去するために10,000rpmで遠心分離された。沈殿物は、蒸留水で洗浄され、SEMを使用して分析された。反応の5分内に、シード粒子は、すべてのそれの顕微鏡的詳細で花のような形態を形成したが、しかしそれらは、サイズがより小さかった。茎は、それらの独特の五角形形態を維持した。これは、シード粒子のメソフラワーへの成長が非常に速いことを示す。茎を形成するためのナノ平板などのより小さな構造体の集合は、この時間スケールでは起こりそうもない。サイズが500nmより大きいメソフラワーは、5分間の反応後に分離された。これは、時間の関数としてメソフラワーのサイズを調整することが可能であることを示唆する。星形のピラミッドは、それのその後の進展が5つのエッジの付いた茎の形成につながり、それが徐々に増殖して星の階層的ピラミッドをもたらす、多重双晶シードの選択的かつ階段状の成長によって形成された。
【0054】
メソフラワーの元素組成は、X線光電子分光法(XPS)を使用して調べられた。図5は、メソフラワーおよび元のAu/オリゴアニリンのシード粒子の広域走査XPSスペクトルを示す。メソフラワーのXPSスペクトル(図5(a))は、それが予想される表面汚染物質と一緒に金から成ることを明らかにした。見える顕著なピークは、Auの4f、Auの4d、Cの1sおよびOの1sである。Auの4f領域での拡大XPSスペクトルは、図6(a)の挿入図で示される。Auの4f7/2およびAuの4f5/2ピークが〜83.9および〜87.8eVにそれぞれ存在することは、金がそれの金属の形で存在することを裏付ける。Cの1sおよびOの1sの強度は、弱く、薄い表面活性剤のカバーに帰することができる。Br特徴は、検出されなかったので、CTABは、XPSの検出レベルでは存在する可能性は低い(しかしながら、それは、質量分析法では見られる)。Au/オリゴアニリンのシード粒子の場合には、XPSスペクトルでのAu特徴は、高いオリゴアニリン含有量によって(または本技術の表面感度に起因して)隠され、ポリマーに起因するピークが、顕著であった(図5(b))。Cの1sおよびNの1sの存在は、シード粒子でのオリゴアニリンの存在を示唆する。Au/オリゴアニリンのCの1sピークは、284と289eVとの間の結合エネルギー範囲で3つのピークに分かれる。284.5eVでの主ピークは、芳香環のC−CおよびC−H結合から生じるオリゴアニリンのCの1sに帰せられる。より高い結合エネルギー(286.5および288.8eV)に位置する他の2つのピークは、オリゴアニリンのポリマー鎖のN原子に直接付着するC原子に起因する可能性がある。それ故に、Cの1s領域での多重ピークの観察は、シード粒子でのオリゴアニリンの存在を裏付けるが、それは、メソフラワーには存在しない。オリゴアニリンは、用いられた酸性条件の下ではプロトン化していると予想され、それは、Nの1s結合エネルギー(401.0eV)に反映されている。
【0055】
Au/オリゴアニリンのシードナノ粒子およびメソフラワーのレーザー脱離イオン化質量スペクトル(LDI MS)は、図6で示される。Au/オリゴアニリンのシード粒子の場合には、m/zが91だけ分離したピークの2つの系列が、観察された(図6(a))。これは、オリゴアニリンの存在を示す。ピークは、(C−NH)に対応し、ただしnは、1から8に対応する。2つの系列で対応するピークは、m/zが15だけ異なる(末端アミン、NHの喪失に起因して)。メソフラワーの場合には、CTAB濃度は、低いけれども、それは、任意の第四級アンモニウムイオン含有材料の典型であるように、正イオンスペクトルでの主ピーク(m/z285)である(図6(b))。これは、あらかじめ形成されたイオンに対するLDIの高感度に起因する。m/zが365および729に現れる非常に弱いピークは、洗浄の後でさえメソフラワーに吸着されている微量のオリゴアニリン(それぞれ四量体および八量体)の存在に起因する可能性がある。これは明らかに、オリゴアニリンがXPS結果と一致してメソフラワーの表面にほとんど全く存在しないことを示す。ネガティブモードLDI MS(図6(c))でのm/zが197、394、および591のピークは、金属性の金のレーザー脱離に典型的なAu、Au、およびAuイオンに対応する。
【0056】
メソフラワーは、ガラス基板(3cm×3cm×0.2cm)に塗布され、吸収スペクトルが、UV−可視光−NIR領域で測定された(溶液相測定についてと同じ方法で)。メソフラワー塗布ガラス基板は、粒子サイズが増加するにつれてそれの吸収最大に顕著な赤方偏移を示した。これは、単分子層塗布ガラス板のUV−可視光−NIRスペクトルから明らかであった(図7(a))。サイズ〜0.5μmのメソフラワーは、1400nm近辺に広い吸収最大を示し、一方〜1.5μmメソフラワーの吸収は、2500nmを越えて延びた。図7(b)は、IR吸収調査のために我々が使用したメソフラワー塗布ガラス基板の透過率スペクトルを示す。2層の塗布の後でさえ、メソフラワー塗布ガラス基板の二分子層は、可視光領域で約80%の透過率を示した(図7(b))。可視光領域でのそのような高い透明度は、かなりのNIR吸収と一緒に、それらをIR吸収材料および薄膜を開発するための有望な候補者にする。
【0057】
図7(c)は、金メソフラワーのNIR−IR吸収特性の実時間測定に使用された装置の写真を示す。実験配置は、上部および底部側が露出された正方形の段ボール箱から成る。5mmの厚さを持つ寸法15cm×15cmのガラス基板は、太陽光がガラス板の平面に垂直に入射するように段ボール箱の上部に置かれた。実験は、空のガラス基板およびメソフラワー塗布ガラス基板の両方について同時に実行された。段ボール箱内部の温度は、銅−コンスタンタン熱電対を使用して測定された。測定は、太陽光の強度が最大であったChennai(東経80°4’31’’、北緯13°00’19’’)でのピーク夏日中の午後1:00(IST)に行われた。外部温度は、約42℃であった(測定中の外部と比べた筐体内部の温度増加は、主として温室効果に起因する)。データは、10秒ごとに収集され、実験は、箱内部の温度が一定になるまで実行された。メソフラワー塗布スライドガラスの単分子層および二分子層についての個別実験は、実験対照として空のガラス基板と一緒に行われた。空のガラス基板と比較して、メソフラワー単分子層塗布ガラスは、2℃だけ低い段ボール箱内部の平均温度を与え、一方二分子層塗布基板は、4.3℃の減少を示した。
【0058】
図7(d)および7(e)は、それぞれ単分子層および二分子層被覆ガラス板について露出時間の関数として段ボール箱内部の温度変化のプロットを示す。メソフラワー塗布ガラスによって提示される温度のかなりの減少は、窓のためのコスト効率の良いNIR−IR吸収塗膜の開発に有用なはずである。対照実験は、2つの段ボール箱で同じ種類の2つの空のガラス板を使用することによって行われ、それは、測定全体にわたって両方の内部でほとんど同一の温度をもたらした。
【0059】
被分析物分子としてクリスタルバイオレット(CV)を使用するメソフラワーの単分子層のSERS活量が、測定され、収集された。異なる濃度でメソフラワーに吸着されたCVのラマンスペクトルは、図8(a)で示される。材料は、10−10mol/Lの濃度でさえCVの明確なスペクトル特徴を示した。メソフラワーのSERS活量をそれの球状類似物と比較するために、Au@クエン酸塩ナノ粒子(NP)に吸着されたCV分子のSERSスペクトルが、収集された。図8(b)は、NPに吸着されたCV(トレース1および2)ならびに空のガラス板(トレース3)から収集されたSERSスペクトルを示す。NP塗布基板は、10−6mol/LのCV濃度に至るまでSERS信号を示した。10−7mol/Lの濃度では、明確なラマン信号は、観察されなかった。空のガラス板にまだらに付けられた10−6mol/LのCVの場合には、ラマン特徴は、観察されなかった。SERS増強因子が、メソフラワーについて計算され、それは、1593cm−1特徴について〜10であることが見いだされた。NPについての対応する値は、およそ10であった。メソフラワーの高いSERS活量は、各メソフラワーの鋭い先端での大きな電場増強ならびに2つ以上のメソフラワーの連結によってメソフラワー間に生成される「ホットスポット」に起因する可能性がある。その結果は、これらの材料がSERSに基づくセンサーを作るのに有用なはずであることを示す。単一メソフラワー粒子は、10−6mol/Lの濃度で吸着CVのラマン信号を使用して観察できることが見いだされた。200から1800cm−1に及ぶSERS信号を収集することによって、単一メソフラワーが、撮像された(図8(c))。メソフラワーの対応する光学画像は、挿入図で示される。メソフラワーの異なる領域から収集されたラマンスペクトルは、図8(d)で示される。増強は、メソフラワーのすべてにわたり異なる領域についてほとんど同じであることが、ラマン特徴の強度から明らかである。
【0060】
セキュリティーマーカーとしてのメソフラワーの使用は、それらをインド通貨に組み込むことによって実証された。クリスタルバイオレットなどの分子タグは、0.1mgのメソフラワーを10−6MのCV水10mLに1時間浸すことによってメソフラワーに付着された。そのように調製されたメソフラワー懸濁液は、紙幣の特定の領域に滴下成形された。図9(a)は、メソフラワー埋め込みインド通貨の写真を示す。CVをタグ付けされたメソフラワーが付けられた通貨の部分は、流水の下で1分間洗浄された。繰り返される水洗浄、その後の乾燥、機械的摩擦および空気の吹き付けの後でもメソフラワーおよび分光学的特徴が存在することが、突き止められた。それ故に、メソフラワーは、引っかきおよび洗浄の後でさえ表面に保持されている。ラマン画像は、200から1800cm−1領域でラマン特徴の強度を積分することによって収集された(図9(b))。挿入図「b」は、ラマン撮像のために選択されたメソフラワーの対応する光学画像を示す。紙幣の単一メソフラワーから収集されたラマンスペクトルは、図9(c)で示される。
【0061】
メソフラワーは、ヒトデ、アロエベラ、パイナップルなどのいくつかの自然発生物体に似ている生体模倣構造体であってもよい。各メソフラワーは、多数のとがった茎でできていて、それらは、芯から外側へあらゆる方向に突き出ている。茎は、それ自体星の形状を有して星のピラミッドを形成し、ナノ寸法を有する薄片または平板状サブユニットの階層的アレイとの高い類似性を持っていた。そのような平板の厚さおよび各薄片状サブユニット間のすき間もまた、ナノスケールの寸法であった。これらの茎は、独特の五角形対称を示し、星の各連続突出部間で〜72度の角度を維持する。メソフラワーの各茎は、5つの頂点を持つ簡単で著しく明確な一様な星を持つ。単一の茎の詳細な調査から、各茎は、それの角に沿ってリッジを有することが見いだされた。これらのリッジは、ナノメートルの厚さを有した。これらのリッジは、ユニークな形態を茎に与えた。茎の鋭い球状先端の直径は、5〜10nmの範囲であった。特徴は、メソフラワーの固有の特徴である。複製できないこれらの特徴は、ユニークであった。上述の固有でユニークな構造的特徴は別として、特徴は、ラマンまたは蛍光タグおよび多重元素成分の形で追加の属性を有することができた。これらの特徴はさらに、異なる認証段階でセキュリティーのレベルを改善することができた。分子タグの組み込みは、簡単な吸着技術によって行うことができる。化学結合を介して分子タグを付着させることもまた可能である。そのようなタグ分子の存在は、メソフラワーの構造的属性に影響を及ぼさないことになる。吸着されたラマンまたは蛍光分子のユニークなスペクトル特徴は、メソフラワーが非常に優れたセキュリティーを提供することを可能にする。これらのメソフラワーは、アスコルビン酸の存在下でPtまたはAg塩を使った処理で二金属メソフラワーをもたらす。適切な還元剤の存在下でFe、Ni、Coなどのさまざまな常磁性金属の追加成長(overgrowth)によって磁気的属性をメソフラワーに組み込むことが可能である。そのために、ヒドラジン水和物、水素化ホウ素ナトリウム、その他などの還元剤が、使用できる。このようにして、コア−シェル型の磁性メソフラワーを作ることができた。磁性シェルの存在のために、メソフラワーは、磁気的性質を示すことができた。二金属メソフラワーで元のメソフラワーと同じ構造的属性を維持することは可能となる。そのような多金属メソ構造体の組成もまた、実験パラメーターを調節することによって調整できる。メソフラワーの検出のための適切な機器には、1)手持ち式顕微鏡または光学顕微鏡、2)紫外線ランプ、3)ラマンおよび蛍光分光計、4)走査型および透過型電子顕微鏡、5)エネルギー分散型X線分析器、6)磁力計が含まれる。利便性およびセキュリティーに応じて、分子タグは、メソフラワーに追加でき、それによってメソフラワーの化学組成を変えることができる。そのような材料はどれも、マルチレベルのセキュリティー目的に使用できる。例は、ラマンまたは蛍光タグ吸着の金メソフラワー、Au/Ag、Au/Pt、Au/Pd、Au/Feなどの二金属メソフラワー、同様の三金属メソフラワー(Au/Pt/Ni、Au/Pt/Fe、その他)、その他である。
【0062】
詳細な記述では、本明細書の一部を形成する付随の図面が参照される。図面では、同様の符号は典型的には、文脈がそうでないと指示しない限り、同様の構成要素を同一視する。詳細な記述、図面、およびクレームで述べられる説明に役立つ実施形態は、限定することを意図していない。本明細書で提示される主題の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態が、利用されてもよく、他の変形が、なされてもよい。本明細書で一般的に述べられ、図で例示されるような本開示の態様は、すべてが本明細書で明確に熟考される多種多様な異なる構成で配置され、置換され、組み合わされ、分離され、設計されてもよいことが容易に理解されよう。本開示は、この出願で述べられる特定の実施形態の観点から限定されるべきでなく、その特定の実施形態は、さまざまな態様の説明として意図されている。多くの変更形態および変形形態は、当業者には明らかとなるように、それの精神および範囲から逸脱することなくなされてもよい。本開示の範囲内の機能的に等価な方法および装置は、本明細書で列挙されたそれらに加えて、先の記述から当業者には明らかとなる。そのような変更形態および変形形態は、添付のクレームの範囲内に入ることが意図されている。本開示は、そのようなクレームが権利を有する等価物の完全な範囲と一緒に、添付のクレームの術語によってのみ限定されるべきである。この開示は、特定の方法、試薬、化合物組成または生物系に限定されず、それらは、もちろん変わり得ることを理解すべきである。また、本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するものであり、限定することを意図するものでないことも理解すべきである。本明細書における実質的にすべての複数形および/または単数形の用語の使用に対して、当業者は、状況および/または用途に適切なように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換することができる。さまざまな単数形/複数形の置き換えは、理解しやすいように、本明細書で明確に説明することができる。通常、本明細書において、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体部)において使用される用語は、全体を通じて「オープンな(open)」用語として意図されていることが、当業者には理解されよう(例えば、用語「含む(including)」は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むがそれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、など)。導入される請求項で具体的な数の記載が意図される場合、そのような意図は、当該請求項において明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、理解の一助として、添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」を使用して請求項の記載を導くことを含む場合がある。しかし、そのような句の使用は、同一の請求項が、導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、そのように導入される請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、単に1つのそのような記載を含む実施形態に限定する、ということを示唆していると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記載を導入するのに使用される定冠詞の使用にも当てはまる。また、導入される請求項の記載で具体的な数が明示的に記載されている場合でも、そのような記載は、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることが、当業者には理解されよう(例えば、他の修飾語なしでの「2つの記載(two recitations)」の単なる記載は、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、BおよびC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。「A、B、またはC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。2つ以上の代替用語を提示する事実上いかなる離接する語および/または句も、明細書、特許請求の範囲、または図面のどこにあっても、当該用語の一方(one of the terms)、当該用語のいずれか(either of the terms)、または両方の用語(both terms)を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」あるいは「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。加えて、本開示の特徴または態様が、マーカッシュ群の観点から述べられる場合には、当業者は、本開示がまたそれによってマーカッシュ群の任意の別々の要素または要素のサブグループの観点から述べられることを認識することになる。当業者に理解されることになるように、文書の記述を提供する観点からなどの、ありとあらゆる目的のために、本明細書で開示されるすべての範囲はまた、ありとあらゆる可能な部分的範囲およびそれの部分的範囲の組合せも包含する。任意の記載された範囲は、同じ範囲が少なくとも均等な半分、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一、その他に分解されることを十分に述べかつ可能にすると容易に認識できる。限定されない例として、本明細書で論じられる各範囲は、下側の三分の一、真ん中の三分の一および上側の三分の一、その他に容易に分解できる。当業者にまた理解されることになるように、「に至るまで」、「少なくとも」、「を上回る」、「に満たない」、および同様のものなどのすべての言葉は、列挙される数を含み、上で論じたような部分的範囲にその後分解できる範囲のことである。最後に、当業者に理解されることになるように、範囲は、各個別要素を含む。それ故に、例えば、1〜3セルを有する群は、1、2、または3セルを有する群のことである。同様に、1〜5セルを有する群は、1、2、3、4、または5セルを有する群のことなどである。さまざまな態様および実施形態が、本明細書で開示されたが、他の態様および実施形態は、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されるさまざまな態様および実施形態は、説明の目的のためであり、限定することを意図しておらず、真の範囲および精神は、次のクレームによって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工物体であって、前記物体を識別するための特徴を持つ区別できる構造を含み、前記物体は、前記物体が可視光の下で観察可能であるようなサイズを有し、前記特徴は、前記物体の中または上に埋め込まれ、前記特徴のサイズは、前記特徴が可視光の下で観察可能でないようなサイズであり、前記特徴は、前記特徴から生じる属性を含み、前記属性は、前記特徴を定義する、物体。
【請求項2】
前記物体の最長寸法は、0.1から10μmの範囲であり、前記特徴のサイズは、約100nm以下である、請求項1に記載の物体。
【請求項3】
前記特徴は、複数のユニークな要素を含み、各ユニークな要素は、別個のパターンを有する、請求項1に記載の物体。
【請求項4】
前記特徴は、複数のユニークな要素を含み、各ユニークな要素は、別個の特性を有する、請求項1に記載の物体。
【請求項5】
前記特徴は、タグを含み、前記タグは、前記タグの識別が前記物体の認証を可能にするように前記物体と関連する、請求項1に記載の物体。
【請求項6】
前記タグは、分子タグ、生物学的タグ、光学タグ、電子タグ、磁性タグ、蛍光タグ、ラマン分光法用タグ、電子顕微鏡用タグ、X線顕微鏡用タグ、およびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項5に記載の物体。
【請求項7】
前記特徴は、前記特徴を検出するように構成される特殊デバイスなしでは観察可能でない、請求項1に記載の物体。
【請求項8】
前記特殊デバイスは、前記特徴の光学、ラマン、蛍光、電子、X線または磁気特性を検出するように構成される、請求項7に記載の物体。
【請求項9】
前記特徴は、分子、原子または単一粒子レベルでユニークな要素を含む、請求項1に記載の物体。
【請求項10】
前記特徴は、前記物体の認証の異なる段階で検出されるように構成される複数のユニークな要素を含む、請求項1に記載の物体。
【請求項11】
物体を識別するための特徴を含む前記物体を認証するように構成される多重診断デバイスを含むシステムであって、前記特徴は、複数のユニークな要素を含み、各ユニークな要素は、別個のパターンおよび別個の特性を有する、システム。
【請求項12】
前記多重診断デバイスは、光学診断デバイス、ラマン診断デバイス、電子診断デバイス、X線診断デバイス、磁気診断デバイスまたはそれらの組合せを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記特徴は、特定の構造的属性を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記特徴は、タグを含み、前記タグは、前記タグの識別が前記物体の認証を可能にするように前記物体と関連する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記物体の最長寸法は、0.1から10μmの範囲であり、前記特徴は、前記物体の中または上に埋め込まれ、前記特徴のサイズは、約100nm以下である、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
物体の中または上に埋め込まれた特徴の特性を明らかにすることおよび前記特徴の前記特性を明らかにすることの結果に基づいて前記物体を認証することを含む方法であって、前記特徴は、前記物体を前記認証することの異なる段階で検出されるように構成される複数のユニークな要素を含む、方法。
【請求項17】
前記特性を明らかにすることは、多重診断デバイスを含むシステムによって行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記多重診断デバイスは、光学診断デバイス、ラマン診断デバイス、電子診断デバイス、X線診断デバイス、磁気診断デバイスまたはそれらの組合せを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記特徴は、複数のユニークな要素を含み、各ユニークな要素は、別個のパターンおよび別個の特性を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記物体の最長寸法は、0.1から10μmの範囲であり、前記特徴は、前記物体の中または上に埋め込まれ、前記特徴のサイズは、約100nm以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
メソフラワーを含むNIR−IR吸収塗膜であって、前記NIR−IR吸収塗膜は、赤外線放射を吸収して、前記NIR−IR吸収塗膜で包まれない第2の筐体の温度に対して前記NIR−IR吸収塗膜で包まれる第1の筐体の温度の低減を引き起こし、前記第1および第2の筐体は、実質的に同じ形状および寸法であり、前記第1および第2の筐体は、実質的に同じ環境にさらされる、NIR−IR吸収塗膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−502570(P2013−502570A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525219(P2012−525219)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002006
【国際公開番号】WO2011/021085
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(512041436)インディアン インスティテュート オブ テクノロジー マドラス (4)
【Fターム(参考)】