説明

多視角荷物セキュリティ検査方法

被検査物体の安全検査を有する多視角物品安全検査方法は、物品安全検査システムを実現する。物品安全検査システムは、被検査物体を透過する放射線ビームを発生する放射線源と、放射線ビームが被検査物体を透過した後に透過投影データを収集するデータ収集ユニットとを備える。方法は、スキャン工程を備える。スキャン工程は、前記非検査物体に関して回転軸の周りに回転する放射線源と、これによって放射線源は前記被検査物体に対して異なる視角を有する複数の離間位置に位置決めされ、各視角において、放射線源は前記回転軸と平行な方向に沿って直線的に移動するとともに被検査物体をスキャンして、各視角における透過投影データを取得することを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線検出の技術、特に多視角荷物セキュリティ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ検査は、反テロリズム並びに違法薬物の密輸及び密売との戦いの分野において非常に重要である。2001年9月11日のアメリカ合衆国のテロ攻撃の後、世界中の国々は民間航空のセキュリティ検査にさらなる重要性を置いている。同時に、反テロリズム並びに違法薬物の密輸及び密売との戦いの徹底的な進展とともに、様々な荷物のセキュリティ検査への要求がさらに高くなっている。空港、駅、税関及び埠頭のような公共の場所における乗客の手荷物及び物品、並びに貨物コンテナの検査のために、一連のセキュリティ検査対策が講じられている。
【0003】
コンピュータ断層撮影(略してCT)技術は、医療診断及び産業用非破壊検査の分野において幅広く用いられている。公共的なセキュリティ及び社会的なセキュリティにおけるその要求は、社会の発展とともに徐々に増している。幅広く用いられているCTスキャンシステムのうち、円軌道スキャン方法が大多数を占めている。このようなスキャン方法は単純な機械的構造を要し、したがって技術的には実現するのが容易である。加えて、対応する再構成法は成熟しているとともに信頼性がある。円軌道スキャンシステムにおいて、ファンビームCT方法またはコーンビームCT方法が通常採用されている。対応する検出器は、それぞれ直線状に配置された検出器群または平面状に配置された検出器群である。X線放射線源及び検出器の対が物体回転台の回転中心に関して対称に設けられる。
【0004】
CTスキャンシステムを用いて大きな物体をCTスキャンする場合、回転及び並進を伴うスキャンを採用するのが一般的である。すなわち、被検査物体は中央軸の周りを回転するとともに放射線源検出器は回転軸と平行な方向に同時に移動し、したがって被検査物体の周りにスパイラルスキャン軌跡を形成する。より大きな断面を有する物体に関しては、正確な再構成が望まれる場合、非常に多数の投影が必要である。これは、セキュリティ検査の速度が非常に低下し、且つ効率が非常に低下するという結果をもたらす。加えて、多数のデータは恐らく使用者に関係の無いデータである。したがって、このようなCTスキャンシステムは低い速度のため、毎日多数の荷物にセキュリティ検査を行なう必要がある空港では非実用的である。
【0005】
加えて、透視画像に関しては、ビームまたは放射線と平行な方向に複数の物品がある場合、画像中において物品は互いに重なる。一般的に、物品同士を互いに区別するのは非常に困難であり、密輸品の検査に多大な困難をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に存在する上記の問題点を鑑みて、本発明の目的は多視角荷物セキュリティ検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に採用される課題を解決するための手段は以下の通りである。
荷物セキュリティ検査システムを用いて物体を検査するための多視角荷物セキュリティ検査方法であって、前記荷物セキュリティ検査システムは被検査物体を透過する放射線ビームを発生する放射線源と、放射線ビームが被検査物体を透過した後に透過投影データを
収集するデータ収集ユニットとを備え、前記方法は、相対回転が生じるように前記放射線源及び/または前記物体を回転軸の周りで回転させ、それによって前記放射線源を前記被検査物体に対して異なる視角を有する複数の離間位置に位置決めすることを含むスキャン工程を備え、各視角において、前記放射線源は前記回転軸と平行な方向に直線に沿って移動するとともに同時に前記被検査物体をスキャンして各視角における透過投影データを取得する方法。
【0008】
一実施形態において、前記相対回転は、前記放射線源を静止状態に維持するとともに前記被検査物体を回転させることによって行われる。他の実施形態において、前記相対回転は、前記被検査物体を静止状態に維持するとともに前記放射線源を前記被検査物体の周りで回転させることによって行われる。
【0009】
好適には、前記放射線源及び前記データ収集ユニットは前記被検査物体を挟んで配置され、前記スキャン工程において前記データ収集ユニットは前記放射線源の移動と同期して移動する。
【0010】
好適には、異なる視角を有する前記複数の離間位置は、円周上で均等に離間した複数の位置である。
好適には、異なる視角を有する前記複数の離間位置は、3〜70の視角位置を含む。より好適には、異なる視角を有する前記複数の離間位置は、4〜60の視角位置を含む。さらに好適には、異なる視角を有する前記複数の離間位置は、8〜50の視角位置を含む。またさらに好適には、異なる視角を有する前記複数の離間位置は、10〜40の視角位置を含む。最も好適には、異なる視角を有する前記複数の離間位置は、15〜25の視角位置を含む。
【0011】
好適には、二つの隣り合う視角位置において、前記放射線源はそれぞれ前記直線に沿って反対方向に移動する。
本発明の方法は、前記データ収集ユニットによって収集された透過投影データに基づいて前記被検査物体を画像化する画像化工程をさらに備える。
【0012】
好適には、前記画像化工程において、各視角に関し、その視角の透過投影データを用いて前記被検査物体の二次元透視画を画像化する。
好適には、異なる視角を有する前記複数の離間位置は、少なくとも三つの視角位置を含む。好適には、前記画像化工程において、前記複数の視角の透過投影データを組合わせて用いて、前記非検査物体の三次元画像を再構成する。
【0013】
好適には、前記再構成は、フィルタ逆投影アルゴリズム、期待値最大化アルゴリズム、またはオーダーサブセット統計アルゴリズムを用いて行なわれる。
【発明の効果】
【0014】
1.従来技術のCTスキャンまたはスパイラルCTスキャンと比較して、本発明の方法のスキャン軌跡は多少異なっている。本発明の方法において、放射線源は、前記荷物に対して複数の平行な直線状の軌跡で異なる視角において荷物をスキャンし、したがって複数の視角において透過投影データを取得する。このようなスキャン方法はより早い速度で行うことができる。従来技術のCTスキャンまたはスパイラルCTスキャンと比較して、本発明の方法によって取得された透過投影データは三次元画像に関する限り完全ではないが、視角の数を適切に選択することで速度の要求を満たした状況において、極力精度の要求を満たす三次元画像を取得することが可能であり、したがってスキャン速度と画像精度とのバランスが得られる。
【0015】
2.本発明の方法は、荷物(例えば航空コンテナ)に対する早いセキュリティ検査を実現することが可能であり、したがって荷物のセキュリティ検査の効果を著しく増大し、したがって多数の荷物の早いセキュリティ検査という空港の要求を満足する。
【0016】
3.本発明は荷物の三次元画像を再構成することができるので、透視画像を再構成するときに物体同士が互いに重なるという問題を効果的に解決している。したがって、物品の検査の精度を効果的に向上して、密輸品の検査を著しく容易にする。
【0017】
4.本発明の方法は現在のシステムで実現できる。したがって、この方法は、荷物のセキュリティ検査をさらに柔軟な方法で実行することが可能となるよう、本発明の方法を実現する現在のシステムを用いて、通常の透視画像化及びCT画像化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において提供される技術的解決策をより明瞭かつ明確にするために、以下、本発明を添付の図面を参照して実施例とともに詳細に説明する。
図1に示されるように、図1は本発明の方法を実現するために用いられることができる従来の荷物セキュリティ検査システムの模式図である。放射線源101は荷物を透過するX線ビームまたは他の放射線ビームを発生する。前記放射線ビームは回転台104上に載置される荷物102(一実施形態において前記荷物102は航空コンテナである)を透過する。ビームが荷物を透過した後の透過投影データがデータ収集ユニット103(例えば検出器群)によって収集されるとともにホスト/データ処理コンピュータ(図示せず)に伝送される。前記データ収集ユニット103は放射線源101の反対側に位置する。すなわち、前記データ収集ユニットと前記放射線源とは回転台の中央軸に関して対称に設けられる。前記ホスト/データ処理コンピュータは人間‐機械相互インターフェースを提供するとともに、受信した投影データの画像を再構成し、且つ再構成画像を表示する。前記回転台104は前記荷物102を回転させることができる。
【0019】
前記荷物検査システムは通常、コンテナを回転台に搬送するとともに検査が完了した後にコンテナを回転台から運び出す搬送装置(図2参照)をさらに備える。前記荷物検査システムは通常、放射線源及び検出器を支持するとともにそれらを同期的に昇降させるスキャン昇降機(図示せず)をさらに備える。前記スキャン昇降機は、放射線源とデータ収集ユニットとをそれぞれ搭載する2組の昇降台で構成することができる。加えて、昇降台は水平コリメータを搭載することができる。
【0020】
前記システムは、ホスト/データ処理コンピュータから受信した指令に基づいて、放射線源、データ収集ユニット及び回転台の駆動を制御するスキャン制御装置をさらに備えることができる。
【0021】
早く且つ正確な検査を実現するために、前記荷物検査システムは通常、以下のシステムパラメータを測定または検査する装置をさらに備える。システムパラメータは、放射線源からデータ収集ユニットまでの距離D、放射線源から回転台の回転軸までの距離R、放射線源のマッピング位置P(u,v)、画像画面の画素サイズd及び回転台の回転角度θである。これらのシステムパラメータを測定または検査する装置は当該技術において公知であるので、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0022】
図2に示すように、図2は本発明の方法を実現する多視角荷物セキュリティ検査システムの模式図である。前記システムが作動するとき、荷物は移送ローラ路201によって回転台204に搬送される。放射線源202及び検出器群203は回転台204の両側にそれぞれ位置する。回転台204は連続的に回転するか、または所定の角度に位置決めする
ことができる。放射線源202及び検出器群203は同期的に上昇及び下降する(すなわち、図2の紙面に垂直な方向に移動する)ことができる。回転台204が静止しているとき、現在の視角における航空コンテナの透過投影データは、放射線源202及び検出器群203の一回の同期的な昇降によって取得することができる。
【0023】
図2に示されるシステムは従来の環状軌跡スキャンを実現することもできる。このとき、放射線源202及び検出器群203は、固定高さに維持されるとともに回転台204は荷物を連続的に回転させ、したがって現在のスライス位置における荷物のCT投影データを取得する。図3は従来の環状軌跡ファンビームスキャンの模式図である。図3において、放射線源1及びデータ収集ユニット3はそれぞれ荷物2の両側に設けられている。荷物2に関して、放射線源1及びデータ収集ユニット3は環状軌跡内を移動する。
【0024】
本発明の方法の一実施形態のスキャン処理は以下において説明され、以下の工程を備える。
(1)放射線源及びデータ収集ユニットが荷物に対して相対回転を行なうようにシステムを起動して、前記放射線源及びデータ収集ユニットを前記荷物に対する第1視角に位置決めする。図1及び2に示されるシステムによって前記スキャン処理が実行されるとき、前記放射線源及び前記データ収集ユニットは前記相対回転の過程において静止状態が維持される一方、前記荷物は前記回転台によって駆動されて回転する。しかしながら、前記相対回転の過程において、前記荷物を静止状態に維持する一方、前記放射線源及び前記データ収集ユニットを前記荷物の周囲で回転させることも可能であることは非常に容易に理解でき、この時前記放射線源及びデータ収集ユニットが前記荷物の下端近傍に位置することができる。
【0025】
(2)前記回転台上に載置される荷物を透過するように放射線源に前記第1視角において放射線ビームを発生させ、且つ前記放射線源及び前記データ収集ユニットを直線状の軌跡に沿って同期的に上方に移動させるとともに前記荷物をスキャンする。前記直線状の軌跡はステップ(1)における相対回転の面に垂直であり、例えば前記相対回転が水平面内において行われるとき、前記直線状の軌跡は鉛直方向である。言い換えると、前記直線状の軌跡の方向は前記相対回転の回転軸と平行である。さらに、放射線源がスキャンするのと同時に、前記データ収集ユニットは荷物を透過した放射線ビームの透過投影データを受信する。
【0026】
(3)前記放射線源及び前記データ収集ユニットが頂部に移動した後にそれらの移動を停止する。回転台は、前記放射線源が前記荷物に対する第1視角と異なる第2視角に位置決めされるような角度だけ荷物を回転させるように駆動する。
【0027】
(4)前記放射線源に、前記回転台上に載置される前記荷物を透過するように前記第2視角で放射線ビームを発生させるとともに、同放射線源を垂直方向に下方へ移動させる。データ収集ユニットは前記放射線源と同期的に移動するとともに、荷物を透過した放射線ビームの透過投影データを受信する。
【0028】
(5)データ収集ユニットが前記荷物を透過された放射線ビームの透過投影データの全てを受信するように回転台が荷物を一周回転させるまで、前述と同様の処理を繰り返す。
図4は、一実施形態における放射線源と荷物との相対位置関係を示す。図4において、放射線源は荷物2に対して視角S1、S2、S3及びS4の4つの異なる位置に配置される。各視角位置は、上記の一つの直線スキャンに相当する。本発明の方法において、複数の視角位置は、図4に示されるように円周上で均等に離間した複数位置であることができる。これらの視角位置の数は、所望のスキャン速度及び画像精度の要求に応じて選択されることができる。これは当業者には容易なことである。例えば、前記複数の離間視角位置
は、3〜70の視角位置を含むことができる。スキャン速度をさらに向上させるために、前記複数の離間視角位置は4〜60の視角位置を含むことができる。スキャン速度をさらに向上させるために、前記複数の離間視角位置は、8〜50の視角位置を含むことができる。スキャン速度をまたさらに向上させるために、前記複数の離間視角位置は10〜40の視角位置を含むことができる。好適には、前記複数の離間視角位置は、15〜25の視角位置を含むことができる。前記複数の視角位置が円周上で均等に離間しているとき、視角位置の数に応じて各相対回転の角度を判断することは非常に容易である。例えば、視角位置の数が24であるとき、回転台は荷物をその都度15度回転させる。
【0029】
前述のスキャン処理において取得した透過投影データに基づいて、ホスト/データ処理コンピュータはこれらの投影データを画像に再構成して表示する。本発明において、画像化中の各視角に関する限り、その視角における前記荷物の二次元画像を画像化するために同視角における透過投影データを用いること、または前記荷物の三次元画像を再構成するために前記複数の視角の透過投影データを組合わせて用いることが可能である。もちろん、前記荷物の二次元透視画像だけでなく各視角における前記荷物の三次元透視画像を取得することもできる。三次元透視画像が再構成されるとき、好適には少なくとも三つの視角位置において取得された透過投影データを要する。
【0030】
前記三次元画像の再構成は、フィルタ逆投影アルゴリズム(略してFBP)、期待値最大化アルゴリズム(略してEM)またはオーダーサブセットEM(略してOSEM)によって行われる。
【0031】
取得した複数の視角の投影データをFBPによって画像に再構成するとき、再構成処理は以下の工程を備える。
(1)受信した複数の視角の投影データをフィルタリングする。詳細な手順は以下のとおりである。
【0032】
(ρ、θ)をデータ収集ユニットの受信面に平行な方向における複数の視角の受信投影データの一次元フーリエ変換と仮定すると、フィルタは、複数の視角の投影データのフィルタ処理結果を取得するために、式[数1]に従い、複数の視角の受信投影データを処理する。ここでρ及びθはそれぞれ動径座標及び角座標である。
【0033】
【数1】

【0034】
(2)フィルタリング処理された複数の視角の投影データを逆投影する。詳細な手順は以下のとおりである。
式[数2]は再構成された画像であると仮定する。
【0035】
【数2】

【0036】
逆投影は、複数の視角の投影データの再構成画像を取得するために、式[数3]に従い、フィルタリング処理された結果を処理する。
【0037】
【数3】

【0038】
ここで、xおよびyはそれぞれ水平座標及び垂直座標である。
複数の視角の投影データをEMによって画像に再構成するとき、再構成処理は以下の二つの工程を備える。すなわち、条件付き尤度関数の期待値を算出するEステップと、予想関数の最大値を算出するMステップである。
【0039】
以下、詳細な例とともにEM処理を詳細に説明する。
(1)xは再構成画像であり、αijは投影行列係数であり、初期値[数4]は正数であると仮定する。
【0040】
【数4】

【0041】
(2)収束するまで以下の工程を行なう。
a)
【0042】
【数5】

【0043】
b)投影値を算出する。ここで、[数6]
【0044】
【数6】

【0045】
c)投影値を逆投影する。
【0046】
【数7】

【0047】
d)[数8]を取得する。
【0048】
【数8】

【0049】
OSEMはEMに類似しているが、その収束速度はEMのそれよりも高く、且つその画像品質はEMのそれに近い。本発明はOSEMを採用することもできる。受信した複数の視角の投影データがOSEMによって画像に再構成されるとき、再構成処理は以下の工程を備える。
【0050】
(1)xは再構成画像であり、αijは投影行列係数であり、初期設定[数9]は整数であると仮定する。
【0051】
【数9】

【0052】
(2)収束するまで以下の過程を行なう。
a)
【0053】
【数10】

【0054】
b)各サブセットi=1、2、…、nについて投影値を算出する。
ここで[数11]、且つ投影値の逆投影を行なう。
【0055】
【数11】

【0056】
ここで
【0057】
【数12】

【0058】
c)[数13]を取得する。
【0059】
【数13】

【0060】
複数の視角の受信投影値の画像再構成が完了した後、ホスト/データ処理コンピュータは再構成画像を表示する。再構成画像の詳細な結果のために図5を参照する。図5(a)及び5(b)はシップ−ローガン・ヘッド・モデル(Shepp−Logn head model)のシミュレーション結果である。
【0061】
加えて、本発明を実現するシステムは二視角スキャンモード及びCTスライススキャンモードを実現することもできる。
二視角スキャンモードにおいて、システムは二つの直交する視角における二次元透視画像のみを取得するとともに使用者の判断のためにコンピュータ画面上に二つの透視画を表示する。前記モードは短いスキャン時間及び高い通過率を有する。しかしながら、使用者の判断方法及び基準は、現在の検査システムと同様、高い経験と責任を必要とする。
【0062】
CTスライススキャンモードにおいて、システムはまず、航空コンテナの前述のスライス位置におけるCT投影データを取得し、次にデータ再構成を通じて前記位置の対応CT画像を発生するとともに警報を発する。前記スライス画像は、対応する箇所における荷物の情報密度の度合いと分布態様とを反映することができるので、警報の精度は大きく向上するが、スキャン時間は長くなる。
【0063】
本発明の多視角スキャンモードにおいて、システムは異なる視角における複数の二次元透視画像を連続的に取得し、不完全データを用いた再構成によって、物体全体の三軸のデータを近似的に再構成して、使用者の判断のためにそれらをコンピュータ画面上に表示する。加えて、人間−機械インターフェースを介して関連する投影データについての相互動作が行なわれるとともに、同時に重要な疑わしい領域が目立って表示される。このモードにおいて、システムは爆発物のような危険な物品に関しては警報を行なうことを予備的に実現することができる。加えて、スキャン時間は適度である。したがって、このモードは本発明の好適なスキャン方法として機能する。
【0064】
システムはこれらの三つのスキャンモード間を自動的に切り換わることができるとともに切り換え時間を必要としない。したがって、航空コンテナの危機評価または空港の警備レベルの要求に応じて、実際の適用の段階で異なるスキャンモードを柔軟に使用することができる。通過率を求める状況下では、二視角スキャンモードが選択される。通常の状況においては多視角スキャンモードがまず用いられ、次に、三軸のデータの判定中に明らかにできなかった疑わしい航空コンテナの特定位置についての状況に応じてCTスライスス
キャンが行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】従来の荷物セキュリティ検査システムの模式図。
【図2】本発明の方法を実現する多視角荷物検査システムの模式図。
【図3】従来の環状軌跡ファンビームスキャンの模式図。
【図4】本発明において提供される多視角荷物検査システムの多視角スキャン方法の模式図。
【図5】(a)及び(b)はシップ−ローガン・ヘッド・モデルのシミュレーション結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物セキュリティ検査システムを用いて物体を検査するための多視角荷物セキュリティ検査方法であって、前記荷物セキュリティ検査システムは被検査物体を透過する放射線ビームを発生する放射線源と、放射線ビームが被検査物体を透過した後に透過投影データを収集するデータ収集ユニットとを備え、前記方法は、
相対回転が生じるように前記放射線源及び/または前記物体を回転軸の周りで回転させ、それによって前記放射線源を前記被検査物体に対して異なる視角を有する複数の離間位置に位置決めすることを含むスキャン工程を備え、各視角において、前記放射線源は前記回転軸と平行な方向に直線に沿って移動するとともに同時に前記被検査物体をスキャンして各視角における透過投影データを取得する方法。
【請求項2】
前記相対回転は、前記放射線源を静止状態に維持するとともに前記被検査物体を回転させることによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相対回転は、前記被検査物体を静止状態に維持するとともに前記放射線源を前記被検査物体の周りで回転させることによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記放射線源及び前記データ収集ユニットは前記被検査物体を挟んで配置され、前記スキャン工程において前記データ収集ユニットは前記放射線源の移動と同期して移動する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
異なる視角を有する前記複数の離間位置は、円周上で均等に離間した複数の位置である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
異なる視角を有する前記複数の離間位置は、3〜70の視角位置を含む請求項1または5に記載の方法。
【請求項7】
異なる視角を有する前記複数の離間位置は、4〜60の視角位置を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
異なる視角を有する前記複数の離間位置は、8〜50の視角位置を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
異なる視角を有する前記複数の離間位置は、10〜40の視角位置を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
異なる視角を有する前記複数の離間位置は、15〜25の視角位置を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
二つの隣り合う視角位置において、前記放射線源はそれぞれ前記直線に沿って反対方向に移動する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記データ収集ユニットによって収集された透過投影データに基づいて前記被検査物体を画像化する画像化工程をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記画像化工程において、各視角に関し、その視角の透過投影データを用いて前記被検査物体の二次元透視画を画像化する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
異なる視角を有する前記複数の離間位置は、少なくとも三つの視角位置を含む請求項1
2に記載の方法。
【請求項15】
前記画像化工程において、前記複数の視角の透過投影データを組合わせて用いて、前記非検査物体の三次元画像を再構成する請求項12または14に記載の方法。
【請求項16】
前記再構成は、フィルタ逆投影アルゴリズム、期待値最大化アルゴリズム、またはオーダーサブセット統計アルゴリズムを用いて行なわれる請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2009−536321(P2009−536321A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508092(P2009−508092)
【出願日】平成19年4月28日(2007.4.28)
【国際出願番号】PCT/CN2007/001432
【国際公開番号】WO2007/128224
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(502192546)清華大学 (20)
【出願人】(503414751)同方威視技術股▲分▼有限公司 (18)
【Fターム(参考)】