説明

多連スロットル装置

【課題】本発明は、スロットルポジションセンサが、今までのシャフト変位からスロットルバルブの開度を検知する方式を踏襲しながら、スロットルボディの全幅寸法の増大を抑え、さらには車両転倒時の破損からの危険性を抑えるように設けられた多連スロットル装置を提供する。
【解決手段】本発明の多連スロットル装置は、スロットルバルブ23の開度検知を行うセンサ部33として、スロットルボディ19の幅L内に、スロットルシャフトと別軸で構成されたシャフト部材35を設け、このシャフト部材にスロットルポジションセンサ37を配置する構成を採用した。同構成により、スロットルポジションセンサは、自動二輪車(車両)の転倒時、地面などと当たり難くなる。しかも、スロットルボディの全幅寸法の増大は抑えられる。そのうえ、既存の検知方式が踏襲されるから、コスト的な負担が小さくてすむ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気筒を有するエンジンに装着される多連スロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車(車両)は、高出力化を図るため、複数の気筒を直列に配置したエンジンを搭載することが行われている。多くの自動二輪車のエンジンでは、燃料タンクの下側の空間(エンジンルーム)にコンパクトに収まるよう、気筒の並ぶ方向を車両幅方向に配置している。
【0003】
こうした自動二輪車のエンジンは、応答性の確保などから、エンジンの各気筒、具体的には各気筒の吸気ポート部に多連スロットル装置を装着する構造が採用される。
多連スロットル装置は、複数の吸気ポート部に対しそれぞれスロットルバルブを配置し、これらスロットルバルブを同調させながら開閉させる装置である。この多連スロットル装置には、エンジンに組み付くスロットルボディに、エンジンの各吸気ポート部と連通する吸気通路を形成し、各吸気通路にスロットルバルブを配置し、これらスロットルバルブを同バルブが並ぶ方向に配置した長尺のスロットルシャフトで支持する構造が用いられ、スロットルシャフトの変位により、各スロットルバルブが同時に開閉動されるようにしている。
【0004】
ところで、自動二輪車でも、四輪車と同様、スロットル・バイ・ワイヤ方式の多連スロットル装置の搭載が進められている。同方式の多連スロットル装置は、スロットルシャフトを、モータや同モータの動力を伝えるギヤ機構などで構成された駆動部で駆動し、スロットルバルブの開度をスロットルポジションセンサから構成されるセンサ部で検知して、目標開度量にもとづきスロットルバルブの開度量を制御できるようにしたものである。
【0005】
スロットルポジションセンサは、スロットルバルブを制御するうえ重要な部品である。
多くの多連スロットル装置では、特許文献1に開示されているようにスロットルポジションセンサは、スロットボディの幅長(吸気通路が並ぶ方向:全長)に渡り挿通されているスロットルシャフトの端面に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−132289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうしたスロットルポジションセンサは、スロットルシャフト端に組み付くため、スロットルボディの最も外側の地点に配置される。このため、スロットルポジションセンサは、特許文献1に開示されているようにスロットルボディの幅方向端から外側に張り出るようになる。
【0008】
ところが、直列に気筒が並ぶエンジンを載せた自動二輪車は、搭載性などのため、多くは車両幅方向沿いに気筒の列を配置している。つまり、スロットルポジションセンサは、エンジンの搭載にしたがい、車両車幅方向の最も外側に配置される。
このため、スロットルポジションセンサは、実質的にスロットルボディの全幅寸法を大きくさせるため、エンジンの両側に配置されるフレーム部材と干渉しやすくなる問題がある。
また、スロットルポジションセンサは、自動二輪車(車両)が転倒したとき、地面などと当たり、破損するおそれがある。
【0009】
そこで、スロットルシャフトを駆動する駆動部、例えばモータからスロットルシャフトへ駆動力を伝えるギヤに、スロットルポジションセンサを配置することが考えられる。しかし、同構造にすると、センサ部は、それまでのシャフトの変位を検知する方式から専用のギヤの変位を検知する方式へ大きく変更しなければならず、専用の構造が求められ、かなりコスト的な負担が強いられる。このため、採用は難しい。
【0010】
そこで、本発明の目的は、スロットルポジションセンサが、今までのシャフト変位からスロットルバルブの開度を検知する方式を踏襲しながら、スロットルボディの全幅寸法の増大を抑え、さらには車両転倒時の破損からの危険性を抑えるように設けられた多連スロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、スロットルバルブの開度の検知を行うセンサ部として、スロットルボディの幅内に、スロットルシャフトと共に変位する、スロットルシャフトと別軸で構成されたシャフト部材を設け、シャフト部材に、当該シャフト部材の変位からスロットルバルブの開度を検知するスロットルポジションセンサを配置する構成を採用した。
【0012】
同構成によると、スロットルポジションセンサは、スロットルボディ端でなく、スロットルボディの幅寸法内に配置されることで、スロットルボディの全幅寸法の増大は抑えられる。しかも、自動二輪車(車両)の転倒時、地面などと当たり難くなる。そのうえ、シャフト変位からスロットルバルブの開度を検知する方式は、既存の方式が踏襲されるから、コスト的な負担が小さくてすむ。
【0013】
請求項2の発明は、さらに簡単に既存の検知方式が踏襲できるよう、シャフト部材には、スロットシャフトと平行に配置された短シャフト部材を採用し、この短シャフト部材の端面にスロットルポジションセンサを配置する構成とした。
請求項3の発明は、さらにエンジンの重心バランスも向上するよう、シャフト部材、スロットルポジションセンサおよび駆動部を、スロットルボディのうち吸気通路が並ぶ方向の中央寄りに配置した。
【0014】
請求項4の発明は、各機器を、コンパクトで、かつエンジンの重心バランスを向上させながら集約させるよう、センサ部および駆動部は、スロットルボディの中央に有る所定の吸気通路間に配置させることとした。
請求項5の発明は、さらにコンパクト化、エンジンの重量バランスの確保が効果的に行えるよう、スロットルシャフトの変位をシャフト部材へ伝える伝達機構も吸気通路間に配置することとした。
【0015】
請求項6の発明は、さらに所定の吸気通路間のスペースを十分に活用してセンサ部や駆動部が集約されるよう、所定の吸気通路間において、スロットルシャフトを挟んだ吸気通路の径方向一方側にシャフト部材およびスロットルポジションセンサを配置し、スロットルシャフトを挟んだ吸気通路の径方向他方側に駆動部を配置することとした。
請求項7の発明は、さらにエンジンに適する多連スロットル装置が得やすいよう、シャフト部材、スロットルポジションセンサおよび駆動部を、所定の吸気通路間を占めるスロットルボディ部分と共に1つのユニットとして構成し、所定の吸気通路間以外のスロットルボディ部分は、ユニットとは別体で、当該ユニットに着脱可能に組み付く部品とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、スロットルボディの幅内にスロットルポジションセンサを設けたから、スロットルポジションセンサは、自動二輪車(車両)の転倒時、地面などに当たり難くなる。しかも、スロットルボディの全幅寸法の増大は抑えられるから、エンジンの両側に配置されるフレーム部材とは干渉しにくくなり、エンジンの搭載性を増すことができる。そのうえ、シャフト部材の変位からスロットルバルブの開度を検知するから、既存の検知方式が踏襲でき、安価な構造ですむ。
したがって、既存のスロットルバルブの検知方式を踏襲しながら、スロットルボディの全幅寸法の抑制、車両転倒時におけるスロットルポジションセンサの破損の危険性を抑えた多連スロットル装置が提供できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、さらに簡単な構造で、既存の検知方式を踏襲したセンサ部を得ることができる。
請求項3の発明によれば、シャフト部材、スロットルポジションセンサおよび駆動部がスロットルボディの中央寄りに配置されることによって、エンジンの重量バランスも向上でき、自動二輪車(車両)の運動性能を向上させることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、シャフト部材、スロットルポジションセンサおよび駆動部が、スロットルボディの中央の吸気通路間に配置されることによって、各機器を、コンパクトに、さらにはエンジンの重心バランスを向上させながら集約することができる。
請求項5の発明によれば、スロットルシャフトの変位をシャフト部材へ伝える伝達機構も上記吸気通路間に配置することによって、スロットルボディの中央の吸気通路間における集約が高まり、コンパクト化が進むうえ、エンジンの重量バランスの確保が効果的に行える。
【0019】
請求項6の発明によれば、スロットルシャフトを挟んだ吸気通路の径方向一方側にシャフト部材およびスロットルポジションセンサを配置し、スロットルシャフトを挟んだ吸気通路の径方向他方側に駆動部を配置することによって、所定の吸気通路間のスペースを十分に活用して、コンパクトにセンサ部や駆動部を集約することができる。
請求項7の発明によれば、各特徴を備えたまま、各種エンジンに適した多連スロットル装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る多連スロットル装置を搭載した自動二輪車を示す側面図。
【図2】同多連スロットル装置をエンジンと共に拡大して示す斜視図。
【図3】図2中の矢視Aから見た多連スロットル装置の側面図。
【図4】同多連スロットル装置(インジェクタを含む)の全体を示す斜視図。
【図5】図4中のB−B線に沿う多連スロットル装置の平断面図。
【図6】図4中のC−C線に沿う多連スロットル装置の側断面図。
【図7】インジェクタを取り外した多連スロットル装置を示す斜視図。
【図8】同多連スロットル装置を補機ユニットと第1スロットルボディ、第2スロットルボディとに分解した斜視図。
【図9】同補機ユニットからスロットルシャフトを取り外した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図1ないし図9に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は本発明の多連スロットル装置が搭載された自動二輪車(車両)を概略的に示し、図2は同多連スロットル装置を拡大して示し、図3は同多連スロットル装置の側面(図2中の矢視A方向)を示している。ちなみに、図1中の矢印Fは自動二輪車のフロント方向を示し、矢印Rは自動二輪車のリア方向を示している。
【0022】
自動二輪車の各部を説明すると、同二輪車の車体は、前後方向に延びるメインフレーム部材、例えばメインチューブ部材1(一部しか図示しない)をもつ。同メインチューブ部材1のフロント側の端部には、フロントフォーク3を介して前輪5が懸架され、同じくリア側の端部には、スイングアーム部材7を介して後輪9が懸架される。
【0023】
メインチューブ部材1には、フロント側から順に燃料タンク11、シート12が据え付けられている。ちなみにメインチューブ部材1を挟んだ片側(右側)には、ブレーキペダルやスロットルグリップなど加減速系統(図示しない)が設けられ、反対側(左側)には、クラッチレバーやシフトペダルなど変速系統(図示しない)が設けられる。
【0024】
メインチューブ部材1からは、燃料タンク11下の空間を囲うように各種チューブ部材1a、1bが延びていて、燃料タンク11下の空間にエンジンルームを形成している。このエンジンルームには、ピストン13aを往復動可能に収めたレシプロ式のエンジン13が、変速機14と共に据え付けられている。
【0025】
図2に示されるようにエンジン13は、複数の気筒13bを有するエンジン、例えば4つの気筒13bを所定の間隔で直列に並べた直列4気筒エンジンである。同エンジン13は、シリンダヘッド13cの幅方向中央、具体的には、2番気筒と3番気筒との間にタイミングギヤ15を収めた自動二輪車のエンジンで、エンジン中央の2番気筒と3番気筒間のスパンを他の気筒間のスパンより大きく定めてある。このエンジン13が横向きの姿勢、すなわち気筒13bの並ぶ方向(気筒列)を車両幅方向に向けた姿勢で設置してある。またエンジン13は前傾させてある。
【0026】
図2および図3に示されるようにエンジン13の吸気側、例えば気筒13bと同じ配列(直列)でシリンダヘッド13cから突き出ている筒形の吸気ポート部13dには、多連スロットル装置、ここではインジェクタ16が付いたスロットル・バイ・ワイヤ式の4連スロットル装置17が組み付けられている。この4連スロット装置17の吸気側に、エアクリーナ(図示しない)が組み付く。
【0027】
図4には、この4連スロットル装置17の外観が示され、図5には同4連スロットル装置17の全体の平断面(図4中のB−B線に沿う)が示され、図6には同4連スロットル装置17の中央部における側断面(図4中のC−C線に沿う)が示されている。
【0028】
図4および図5を参照して4連スロットル装置17を説明すると、図中19はスロットルボディを示す。このスロットルボディ19は、吸気ポート部13dの配列に応じて配置された4個の直列に並ぶ短筒形の胴部20aを有している。これら胴部20a間は連結部20bで連結され、吸気ポート部13dと組み合うスロットルボディ全体を構成している。
【0029】
詳しくは、胴部20aは、いずれもエンジン13の吸気ポート部13dと対応した円筒状をなしていて、内腔に吸気通路21を形成している。各胴部20aの一端部が導出部21aをなし、他端部が導入部21bをなす。このうちの導出部21aがエンジン13の吸気ポート部13dに接続され、導入部21bがエアクリーナ(図示しない)に接続される。
【0030】
各胴部20a内には、例えば円盤状の弁体で形成されたスロットルバルブ23が収められている。またスロットルボディ19には、スロットルバルブ23の並ぶ方向沿って全体(全長;幅方向全体)に、長尺なスロットルシャフト25が回転自在に挿通されている。むろん、スロットルシャフト25の各部、ここでは両端は、スロットルボディ端に設けた軸受部27で回転自在に支持してある(図5)。
【0031】
スロットルシャフト25は、胴部20a内を貫通している。この胴部20a内を通過するスロットルシャフト部分に、それぞれスロットバブル23の中央が着脱可能に固定(例えばねじ部材24による)され、スロットルシャフト25が回動変位すると、各気筒13bと対応する4つのスロットルバルブ23が同時に回動変位し、吸気される吸気量が変わるようにしてある。これら各スロットルバルブ23を挟んだ胴部20aの下流側に、インジェクタ16や燃料配管29が据付けてある。
【0032】
スロットルボディ19には、図4〜図6に示されるようにスロットルシャフト25を駆動する駆動部26が設けられている。ここでは、例えば駆動部26は、駆動源をなすモータ部31と、同モータ部31の出力回転を減速してスロットルシャフト25へ伝える伝達部である減速ギヤ機構32とを組み合わせた構造が用いられている。つまり、スロットルボディ19は、モータ部31から出力される駆動力で駆動される。
【0033】
さらに、スロットルボディ19には、図4〜図6に示されるようにスロットルバルブ23の開度を検知するセンサ部33が設けられている。このセンサ部33には、スロットルボディ端に据え付けるのではなく、図4に示すような吸気通路21が並んだ範囲内、すなわちスロットルボディ19の幅寸法L内(本願の幅内に相当)に据え付ける構造が用いられている。しかも、安価ですむよう、今までの検知方式を踏襲したセンサ構造が用いられている。
【0034】
ここで、センサ部33を説明すると、図5に示されるようにセンサ部33は、スロットルシャフト25とは別軸のシャフト部材、例えばセンサシャフト35と、このセンサシャフト35の変位からスロットルバルブ23の開度を検知するスロットルポジションセンサ37(以下、TPS37という)とを有する。さらにセンサ部33は、スロットルシャフト25からの回転変位をセンサシャフト35へ伝える伝達機構、ここではギヤ機構39を有し、センサシャフト35が、スロットルシャフト25と共に回転変位される構造となっている。
【0035】
さらに述べると、図5に示されるようにセンサシャフト35は、短シャフト部材から構成されている。TPS37は、同短シャフト部材の一端面に配置されるセンサ部品で構成されている。つまり、センサ部33は、今までのシャフト変位で検知する方式を踏襲する構造となっている。
このセンサシャフト35が、TPS37と共に、スロットルボディ19の幅寸法L内の地点、例えばスロットルボディ19の中央寄りの地点、具体的には中央寄りに有る吸気通路間に配置されている。
【0036】
特にここでは、センサ部33は、スロットルボディ19のうち、スパンが他よりも広いエンジン13の2番気筒と3番気筒間に対応する胴部20a間(所定の吸気通路間)に配置させてある。具体的には、図5に示されるように2番気筒と3番気筒間に対応する胴部20a間のスロットルボディ部分に、センサ収容部19aを形成し、このセンサ収容部19a内に、センサシャフト35とTPS37とを収めてある。
【0037】
さらに述べれば、センサシャフト35は、センサ収容部19a形成された軸孔内に挿入することによって、シャフト全体をスロットルシャフト25と平行に配置させてある。このセンサシャフト35の両端部は、軸孔の両端側に設けた軸受部19cで回転自在に支持され、センサシャフト35全体を、スロットルシャフト25と別軸に設けている。このセンサシャフト35の端面にTPS37が配置され、スロットルシャフト25と共に回動変位するセンサシャフト35から、スロットルバルブ23の開度が検知できるようにしている。
【0038】
同構造により、自動二輪車のエンジン13の特徴、すなわち2番気筒と3番気筒の間が他よりも大きい特徴を活かして、センサ部33をスロットルボディ25の幅方向中央にコンパクトに配置させている。
またスロットルボディ19の幅方向中央寄りには、センサ部33だけでなく、重量の有るモータ部31や減速ギヤ機構32(いずれも駆動部を構成するもの)も配置されている。ここでは、モータ部31や減速ギヤ機構32は、コンパクトにスロットルボディ19に配置されるよう、エンジン13の全長方向中央に相当する、スロットルボディ19の幅方向中央である2番気筒の胴部20aと3番気筒の胴部20a間に配置されている。さらにこの胴部20a間には、ギヤ機構39も配置され、点在する各機器をスロットルボディ19の幅方向中央(エンジン13の全長方向中央)に集約させている。
【0039】
特に各機器は、2番気筒の胴部20aと3番気筒の胴部20a間(所定の通気吸気路間)のスペースを効率よく活用して配置させてある。これは、図4〜図6に示されるように2番気筒の胴部20aと3番気筒の胴部20a間のうち、スロットルシャフト25を挟んだ吸気通路21の径方向上側(一方側)にセンサ部33を配置し、反対側の径方向下側(他方側)に駆動部26を配置するものである。
【0040】
具体的には、図4〜図6に示されるようにスロットルシャフト25を挟んだ上側のスロットルボディ部分に、センサシャフト35、TPS37を収めたセンサ収容部19aを形成し、反対の下側のスロットルボディ部分に、モータ部31を収めたモータケース部41を形成し、センサ収容部19aとモータケース部41との間に、減速ギヤ機構32およびギヤ機構39を収めたギヤケース部43を形成して、2番気筒の胴部20aと3番気筒の胴部20a間のスペース全体を占めるよう、駆動部26、センサ部33、ギヤ機構39を配置(集約)させている。
【0041】
ちなみに、図6に示されるようにピニオンギヤ31aからセンサシャフト35上のセンシングギヤ35aまでの距離は、できる限り、短く設定され、また重量の有るモータ部31や各ギヤは、できる限りシリンダヘッド13c側へ寄せてあり、重量的バランスを良好なものにしている。
【0042】
同構造によると、モータ部31の出力は、同モータ部31の出力軸のピニオンギヤ31aから、ピニオンギヤ31aと噛みあう複数の減速ギヤ32aを経てスロットルシャフト25へ伝わる。と共に、同スロットルシャフト25上の減速ギヤ32aから、センサシャフト35に設けたセンシングギヤ35aへ伝わり、センサシャフト35端に配置されているTPS37により、スロットルバルブ23の開度が検知される。この検知信号にしたがい、スロットルバルブ23が目標開度に制御されていく。
ちなみにスロットルシャフト25上の減速ギヤ32aには、スロットルバルブ23を復帰させるための復帰用スプリング部材46が組み込んである(図5)。
【0043】
また4連スロットル装置17には、こうした特徴を備えながら各種エンジン13に適する4連スロットル装置17が容易に得られるよう、各部を分解可能とした構造が用いられている。
【0044】
これは、図7〜図9に示されるように2番気筒の胴部20aと3番気筒の胴部20a間を占めるスロットルボディ部分を、駆動部26(モータ部31、減速ギヤ機構32)、センサ部35(センサシャフト35、TPS37、ギヤ機構39)と共に集約した1つの補機ユニット51(本願のユニットに相当)として構成し、この胴部20a間以外のスロットルボディ部分、すなわち左右の1,2番気筒の胴部20a(連結部20bを含む)と、3,4番気筒の胴部20a(連結部20bを含む)とを、それぞれ補機ユニット51とは別体な第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53b(補機ユニットに着脱可能に組み付く部品に相当)としたものである。
【0045】
補機ユニット51と第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53bとの間は、連結部、例えば補機ユニット51から上下へ張り出した一対の受けアーム部55と、第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53b端の胴部20a(2番気筒、3番気筒)から上下へ張り出した一対の結合アーム57とを、ボルト部材58で締結するといった連結構造により(図4、図7)、着脱可能に組み付けられる。これで、エンジン13に応じて、各種の多連スロットル装置17が組み立てられるようにしてある。
【0046】
本実施形態では、スロットルシャフト25も、補機ユニット51から外せる構造となっている。ちなみに、この構造を成立させるため、図9に示されるようにスロットルシャフト25は、軸方向中央に凸部25aを有している。またスロットルシャフト25上の減速ギヤ32aの軸孔の内面は、軸心方向に延びる溝部(図示しない)を有していて、スロットルシャフト25の挿入により、凸部25aが溝部内に配置されだけで、スロットルシャフト25から、凸部25aおよび溝部を介して、減速ギヤ32aへ駆動力が伝わるようにしてある。
【0047】
このようにスロットル・バイ・ワイヤ方式の4連スロットル装置17は、スロットルボディ19の幅内にセンサシャフト35、TPS37を配置したことにより、誤って自動二輪車(車両)が転倒したとしても、スロットルボディ19端が地面などと当たるだけで、センサシャフト35、TPS37は地面と当たり難くなる。しかも、スロットルボディ19の全幅寸法は、幅内にセンサシャフト35、TPS37を配置したことで、増大が抑えられるから、エンジン13の両側に配置されるチューブ部材1b(フレーム部材)とは干渉しにくく、その分、エンジン13の搭載性が増す。そのうえ、センサシャフト35(シャフト部材)の変位からスロットルバルブ23の開度を検知する構造は、今までの多連スロットル装置で採用されてきた既存の検知方式をそのまま踏襲するので、既存の部品が流用でき、コスト負担が強いられる専用の検知構造に比べ、安価なコストですむ。
【0048】
それ故、4連スロットル装置17は、既存のスロットルバルブ23の検知方式を踏襲しながら、スロットルボディ19の全幅寸法の抑制や車両転倒時におけるTPS37の破損の危険性を抑えることができ、安価で、高い搭載性や信頼性をもたらす4連スロットル装置17(多連スロットル装置)を提供することができる。
【0049】
しかも、センサ部33には、短シャフト部材で構成されたセンサシャフト35と、同センサシャフト35の端面に配置されるTPS37とを用いたことにより、簡単、かつ安価な構造で、既存の検知方式が踏襲できる。
そのうえ、センサシャフト35、TPS37および駆動部26は、スロットルボディ19のうち胴部20aが並ぶ方向の中央寄りに配置したことで、これら機器の重量がスロットルボディ19の幅方向の中央側に集まるから、エンジン13の重量バランスも向上でき、自動二輪車(車両)の運動性能を向上させることもできる。特にスロットルボディ19の幅方向中央に有る胴部20a間に配置すると、デッドスペースを利用して、エンジン13の幅方向中央に機器を集中できる。つまり、各機器は、コンパクト、さらには一層、エンジン13の重心バランスを向上させながら集約される。さらにスロットルシャフト25の変位をセンサシャフト35へ伝えるギヤ機構39も加わると、コンパクト化が、一層、進むうえ、エンジン13の重量バランスの確保も効果的に行える。
【0050】
しかも、スロットルボディ19の幅方向中央に、センサシャフト35、TPS37および駆動部26を配置するに際し、スロットルシャフト25を挟んだ一方側にセンサシャフト35、TPS37を配置し、他方側に駆動部26を配置すると、中央の胴部20a間のスペースを十分に効率よく活用して、コンパクトにセンサシャフト35、TPS37や駆動部26を集約することができる。特にシリンダヘッド13cの中央にタイミングギヤ15が配置され、エンジン13の中央となる2番気筒と3番気筒との間のスパンが他の気筒間のスパンよりも大きくなった自動二輪車用エンジン(4気筒の場合)の場合、このスパンが大きいことを活用して、センサシャフト35、TPS37および駆動部26をスロットルボディ19の幅方向中央にコンパクトに集約させることができる。
【0051】
さらにセンサシャフト25、TPS37および駆動部26を、スロットルボディ19の幅方向中央を占める部分、ここでは2番気筒と3番気筒の胴部20a間と共にユニット化して補機ユニット51(本願のユニットに相当)とし、同胴部20a以外のスロットルボディ部分、ここでは1,2番気筒の胴部20aや3、4番気筒の胴部20aを、補機ユニット51に着脱可能に組み付く第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53bとしたことにより、上述した各特徴を備えたまま、各種エンジン13に適した多連スロットル装置、ここでは4連スロットル装置17を得ることができる。
【0052】
図7〜図9には、この4連スロットル装置17の組付け手順が示されている。同手順を説明すると、4連スロットル装置17は、まず、図9に示すようにあらかじめセンサ部33、駆動部26、ギヤ機構39(伝達機構)を組付けた補機ユニット51に対し、スロットルシャフト25を挿通する。スロットルシャフト25を挿通することにより、スロットルシャフト25と減速ギア32aが連結され、スロットルシャフト25への動力伝達及びシャフト変位の伝達が可能となる。
【0053】
続いて、図8に示すように補機ユニット51に対して双方向から第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53bを組付け、ボルト部材58で補機ユニット51に第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53bを固定する。このとき、第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53bに設けられた孔にスロットルシャフト25が回転自在に挿通される。
【0054】
次に、図7に示すようにスロットルシャフト25にスロットルバルブ23をねじ部材24で固定し、加えて、インジェクタ16、燃料配管29を組付けることにより、図4に示される4連スロットル装置17(多連スロットル装置)となる。
このように、補機ユニット51に対して双方向から組付けられる構成とすることにより、スロットルボディに対して様々な部品が取付けられるスロットル装置において多方向から組付けを行なう必要がなく、組付け作業を容易に行なうことができる。
【0055】
むろん、上記の組付け手順は一例であって、必ずしも上記の手順に限定されるものではなく、あらかじめ補機ユニット51と第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53bを各々組み立てた後に連結させる等の、その他の手順に従って組み付けてもよい。
ちなみに、エンジン13の機種に応じて組み立てるときは、同エンジン13に応じて選んだスロットルシャフト25を補機ユニット51に組み付けてから、エンジン13の機種に応じた胴部群を備える第1スロットルボディ53a,第2スロットルボディ53bを補機ユニット51に組み付けると、上述した特徴を備える多連スロットル装置がエンジン13の機種毎に組み上がる。
【0056】
なお、本発明は一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば一実施形態のスロットル・バイ・ワイヤ式の多連スロットル装置では、センサ部、駆動部を、2番気筒と3番気筒の胴部間(吸気通路間)に配置する例を挙げたが、これに限らず、センサ部、駆動部は、1番気筒と2番気筒の胴部間や3番気筒と4番気筒の胴部間に配置してもよく、要はスロットルボディの幅内であればよい。また一実施形態では、本発明を4連スロットル装置に適用したが、これに限らず、3気筒や5気筒や6気筒など複数気筒エンジンに用いられる多連スロットル装置に適用しても構わない。むろん、V形のエンジンでもよい。
【符号の説明】
【0057】
13 エンジン
13b 気筒
13d 吸気ポート部
17 4連スロットル装置(多連スロットル装置)
16 インジェクタ
19 スロットルボディ
20a 胴部
21 吸気通路
23 スロットルバルブ
25 スロットルシャフト
26 駆動部
33 センサ部
35 センサシャフト(シャフト部材、短シャフト部材)
37 TPS(スロットルポジションセンサ)
51 補機ユニット(ユニット)
53a 第1スロットルボディ(部品)
53b 第2スロットルボディ(部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に並んだ複数の気筒を有するエンジンに装着される多連スロットル装置であって、
前記エンジンの各気筒の吸気ポート部と対応して並んだ吸気通路を有するスロットルボディと、
前記各吸気通路に配置されたスロットルバルブと、
前記並ぶスロットルバルブに沿って前記スロットルボディに回動自在に設けられ、前記各スロットルバルブを開閉自在に支持するスロットルシャフトと、
前記スロットルシャフトを駆動する駆動部と、
前記スロットルバルブの開度の検知を行うセンサ部とを有し、
前記センサ部は、
前記スロットルボディの前記スロットルボディの幅内に設けられ、前記スロットルシャフトと共に変位する、前記スロットルシャフトと別軸で構成されたシャフト部材と、
前記シャフト部材に配置され、当該シャフト部材の変位から前記スロットルバルブの開度を検知するスロットルポジションセンサとを有して構成される
ことを特徴とする多連スロットル装置。
【請求項2】
前記シャフト部材は、前記スロットシャフトと平行に配置された短シャフト部材から構成され、
前記スロットルポジションセンサは、前記短シャフト部材の端面に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の多連スロットル装置。
【請求項3】
前記シャフト部材および前記スロットルポジションセンサは、前記スロットルボディのうち前記吸気通路が並ぶ方向の中央寄りに配置され、
前記駆動部は、前記シャフト部材および前記スロットルポジションセンサと共に、前記スロットルボディのうち前記吸気通路が並ぶ方向の中央寄りに配置される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多連スロットル装置。
【請求項4】
前記シャフト部材、前記スロットルポジションセンサおよび前記駆動部は、前記スロットルボディの中央に有る所定の吸気通路間に配置されることを特徴とする請求項3に記載の多連スロットル装置。
【請求項5】
前記センサ部は、前記スロットルシャフトの変位を前記シャフト部材へ伝える伝達機構を有し、当該伝達機構が前記吸気通路間に配置されることを特徴とする請求項4に記載の多連スロットル装置。
【請求項6】
前記シャフト部材および前記スロットルポジションセンサは、前記所定の吸気通路間において、前記スロットルシャフトを挟んだ前記吸気通路の径方向一方側に配置され、
前記駆動部は、同じく、前記スロットルシャフトを挟んだ前記吸気通路の径方向他方側に配置される
ことを特徴する請求項4または請求項5のいずれか一つに記載の多連スロットル装置。
【請求項7】
前記シャフト部材、前記スロットルポジションセンサおよび前記駆動部は、前記所定の吸気通路間を占めるスロットルボディ部分と共に1つのユニットとして構成され、
前記所定の吸気通路間以外のスロットルボディ部分は、前記ユニットとは別体で、当該ユニットに着脱可能に組み付く部品としてある
ことを特徴とする請求項6に記載の多連スロットル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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