説明

多連チョークコイルおよびそれを用いた電子機器

所定の展開形状からなる金属平板を折り曲げて形成した端子一体型のコイル(1)、(4)を所定の位置関係を有して複数個配置したコイル群と、これらのコイル群をその内部に埋設した磁性体(7)とからなり、例えばコイル群を構成する複数のコイル(1)、(4)の中心軸が平行になるようにコイルを並べるとともに、複数のコイル(1)、(4)のうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と、選択されたコイル以外のコイルの中心点とが段違いになるように配置することで、全体が薄型で、かつ高周波帯域で大電流の作動が可能な多連チョークコイルを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、各種電子機器に用いられる多連チョークコイルおよびそれを用いた電子機器、特に電源機器に関する。
【背景技術】
チョークコイルなどのインダクタにおいては、電子機器の小型、軽量化に対応するために小型化、薄型化が要望されている。さらに、またCPUなどのLSIの高速化、高集積化に対して、インダクタは高周波域で数A〜数十Aの大電流で使用することが要望されている。
従って、小型化とともに発熱を抑えるための低抵抗化と、高周波帯域において損失が小さく、かつ大電流でも直流重畳によるインダクタンス値の低下が少ないインダクタを安価に供給することが望まれている。
最近では、DC/DCコンバータなどにおいては、高周波帯域で大電流化を達成するための電源回路として、マルチフェーズ方式と呼ばれる回路方式が採用されている。この回路方式は複数個のDC/DCコンバータを位相制御しながら、スイッチを用いて順次並列に作動させる方式である。この方式は、リップル電流の低減と、高周波帯域で大電流化を高効率で実現できる特徴を有している。
しかし、上記回路構成のみでは必ずしも高周波帯域で大電流化を実現するのに充分ではなく、このような電源回路機器に用いるチョークコイルについても小型化、高周波帯域で大電流化を実現することが要求されている。
このような課題に対して、例えば特開2002−246242号公報に示されたチョークコイルは、ポリウレタン等の絶縁被膜を有する導線をコイル状に巻き回して形成した空芯コイルを磁性体中に埋設した構成からなる。この磁性体としては、2種類以上の樹脂材で表面を被覆した磁性材粉を用いて固めたものである。また、磁性体には折り曲げ加工された金属端子が装着されており、空芯コイルと金属端子とは溶接、ハンダあるいは導電性接着剤等で電気的に接続されている。
しかしながら、上記従来のチョークコイルの構成においては、金属端子の後付けが必要となり、直流抵抗値を小さくすることが難しい、また、上記コイルをマルチフェーズ数に応じて複数個並べると設置スペースが大きくなり、小型化が困難となる。さらに、マルチフェーズで用いる場合に、複数のコイル間のインダクタンスのばらつきのために特性を充分発揮できないという課題もある。
また、ポリウレタン等の絶縁被膜を有する導線をコイル状に巻き回して形成する空芯コイルをマルチフェーズ方式に用いる際に、複数個の空芯コイルを、例えば縦方向に一列に配置すると、全体の高さが高くなり薄型化ができない。さらに、このような空芯コイルでは、インダクタンス値を大きくするために巻回数を増やす必要があり、チョークコイル自体も大きくなるという課題もある。
【発明の開示】
本発明はこれらの課題を解決し、直流重畳特性に優れ、高周波帯域でインダクタンス値を確保しつつ、大電流で作動可能で、かつ小型化を図ることのできる多連チョークコイルを提供することを目的とする。
本発明の多連チョークコイルは、あらかじめ設定した展開形状からなる金属平板を折り曲げて形成した端子一体型のコイルを設定された位置関係を有して複数個配置したコイル群と、これらのコイル群をその内部に埋設した磁性体とからなる構成を有する。この構成により、複数の端子一体型のコイルのコイル部は絶縁性を有する磁性体中に埋設されるので、高周波帯域での特性が良好で、インダクタンス値のばらつきも小さく、かつショート発生が少なく生産性に優れた多連チョークコイルが得られる。
また、本発明の多連チョークコイルは、上記構成においてコイル群を構成する複数のコイルの中心軸が平行になるようにコイルを並べるとともに、複数のコイルのうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と、選択されたコイル以外のコイルの中心点とが段違いになるように配置された構成としてもよい。これによって小型で、高結合が可能で、かつ大電流に対応できる多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、コイル群のうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と、この選択されたコイル以外の複数のコイルのうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点との距離を変化させて所定のインダクタンス値を得る構成としてもよい。また、コイル群のうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と、この選択されたコイル以外の複数のコイルのうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点との高さ位置を変えて所定のインダクタンス値を得る構成としてもよい。この構成とすることにより、コイルのターン数が同じであってもインダクタンス値の異なる小型、低背構成の多連チョークコイルを容易に実現できる。
さらに、上記構成において、コイル群のうちから少なくとも一つ選択されたコイルと、この選択されたコイルの両隣のコイルとがV字状または逆V字状に配置されており、上記選択されたコイルに電流を流したときに生じるコイル内を貫く磁束の向きと、両隣に配置されたコイルに電流を流したときに生じるコイル内を貫く磁束の向きとが互いに異なる方向とした構成してもよい。このような構成とすることにより、インダクタンス値をより大きくしながら、小型の多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、コイル群のうちから少なくとも一つ選択されたコイルと、この選択されたコイルの両隣のコイルとがV字状または逆V字状に配置されており、上記選択されたコイルに電流を流したときに生じる磁束の向きと、両隣に配置されたコイルに電流を流したときに生じる磁束の向きとが同じ方向とした構成としてもよい。この構成とすることにより、直流重畳特性に優れ、かつ小型で低背構成の多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、コイル群を構成するコイルの巻回数が(N+0.5)ターン(ただし、Nは1以上の整数)からなり、上記コイル群のうちから選択されたコイルのNターン部とこの選択されたコイルに隣接するコイルの(N+0.5)ターン部とが積層された配置構成としてもよい。この構成とすることにより、小型で低背構成の多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、選択されたコイルの中心点とその両隣に配置されたコイルの中心点とのそれぞれの距離を変化させて所定のインダクタンス値を得るようにしてもよい。このような構成とすることにより、コイルのターン数が同じであってもインダクタンス値の異なる小型の多連チョークコイルを実現できる。
また、本発明の多連チョークコイルは、上記構成においてコイル群を構成する複数のコイルの中心点が同一平面上になるようにコイルを配置した構成からなる。これによって、複数のコイル間でインダクタンス値のばらつきが小さく、低背で、大電流化と高周波化に対応できる多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、複数のコイルのうち、隣接する2つのコイルの中心点間の距離を変化させて所定のインダクタンス値を得るようにしてもよい。これにより、同一巻回数のコイルを使用してもインダクタンス値の異なる多連チョークコイルを容易に実現できる。
さらに、上記構成において、コイル群は複数のコイルのそれぞれに電流を流したときに生じるコイル内の磁束の向きが交互に異なるように配置してもよい。これにより、それぞれの磁束が重畳されてインダクタンス値の大きな多連チョークコイルを得ることができる。
さらに、上記構成において、コイル群は複数のコイルのそれぞれに電流を流したときに生じるコイル内の磁束の向きが同じ方向となるように配置してもよい。これにより、磁束が飽和することを抑制できるので、直流重畳特性に優れた多連チョークコイルを得ることができる。
また、本発明の多連チョークコイルは、上記構成においてコイル群を構成する複数のコイルの中心軸が平行になるようにコイルを並べるとともに、複数のコイルのうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と選択されたコイルに隣接するコイルの中心点との距離が選択されたコイルの外径と隣接するコイルの外径との和の1/2以下で、選択されたコイルの少なくとも1ターン分が隣接するコイルとかみ合うように配置された構成からなる。この構成とすることにより、小型で、高結合が可能で、かつ大電流化に対応できる多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、選択されたコイルおよび隣接するコイルの巻回数がNターン(ただし、Nは2以上の整数)からなり、選択されたコイルの(N−1)ターン分が選択されたコイルにかみ合うように配置してもよい。これにより、小型で、高結合が可能で、かつ大電流化に対応できる多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、選択されたコイルの外径と内径との差と隣接するコイルの外径と内径との差が同一で、選択されたコイルの中心点と隣接するコイルの中心点との距離が選択されたコイルの外径と隣接するコイルの内径の和の1/2に一致するようにコイル群を配置してもよい。これにより、より小型で、高結合が可能で、かつ大電流化に対応できる多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、コイル群の内で少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と選択されたコイルに隣接するコイルの中心点との距離を変化させて所定のインダクタンス値を得るようにしてもよい。これにより、コイルのターン数が同じであっても異なるインダクタンス値が得られるので、所定のインダクタンス値をより自由に設定することができる。
さらに、上記構成において、コイル群の内で少なくとも一つ選択されたコイルに電流を流したときのコイル内の磁束の向きと、選択されたコイルに隣接するコイルに電流を流したときの磁束の向きとが、同じ方向となるようにコイル群を配置してもよい。これにより、直流重畳特性に優れ、小型で低背構成とすることができる。
さらに、上記構成において、コイル群の内で少なくとも一つ選択されたコイルに電流を流したときのコイル内の磁束の向きと、選択されたコイルに隣接するコイルに電流を流したときの磁束の向きとが、異なるようにコイル群を配置してもよい。これにより、小型形状を保持しながらインダクタンス値をより大きくすることができる。
さらに、上記構成において、コイル群は複数のコイルをすべて一直線上に配置した構成としてもよい。このようにすれば、インダクタンス値を高精度に制御することが可能である。
さらに、上記説明した多連チョークコイルにおいて、複数のコイルのうちから選択された少なくとも一つのコイルは、一直線上に配置された複数の他のコイルからずれた位置に配置してもよい。これにより、磁性体内で複数のコイルを効率よく充填して配置することができるので多連チョークコイル全体形状をさらに小型化することが可能となる。
さらに、上記説明した多連チョークコイルにおいて、コイル群は選択された二つ以上の入力端子と出力端子のうち少なくとも一方が同じ表面に露出するように配置してもよい。これにより、半導体集積回路等との回路配置が容易となり、多連チョークコイルの実装やその確認作業を容易に行うことができる。
また、本発明の多連チョークコイルは、コイル群を構成する複数のコイルを磁性体の内部に縦方向に埋設した構成からなる。この構成とすることにより、作動領域を高周波領域にすることができ、かつインダクタンス値および直流抵抗値を小さくすることが可能で、しかも大電流に対応でき、小型化可能な多連チョークコイルを実現できる。
さらに、上記構成において、複数のコイル間の間隔を変化させて所定のインダクタンス値を得るようにしてもよい。これにより、同じターン数でもインダクタンス値を変えることができるので要望に応じたインダクタンス値を容易に実現できる。
さらに、上記構成において、複数のコイルに電流を流したときに生じるコイル内の磁束の向きが同じ方向になるようにコイル群を配置してもよい。これにより、リップル電流を小さくすることができる。
さらに、上記構成において、複数のコイルに電流を流したときに生じるコイル内の磁束の向きが交互に異なる方向になるようにコイル群を配置してもよい。これにより、直流重畳特性を改善することができる。
さらに、上記構成において、複数のコイルの巻回数が(N+0.5)ターン(ただし、Nは1以上の整数)からなり、上下に位置するコイルの0.5ターン部分が同一平面となる配置構成としてもよい。これにより、全体の高さを小さくすることができる。
さらに、上記構成において、複数のコイルのすべての入力端子と出力端子との少なくとも一方を同じ表面に露出させてもよい。これにより、実装性を改善することができる。
また、上記の多連チョークコイルにおいて、磁性体がフェライト磁性体、フェライト磁性粉末と絶縁性樹脂との複合体、および金属磁性粉末と絶縁性樹脂との複合体のうちから選択された少なくとも1種類から形成されたものであってもよい。これにより、絶縁性を有する磁性体の内部にコイル群を埋設するのでショート発生等を低減でき、かつ高周波帯域に対応できる多連チョークコイルを実現できる。
また、上記の多連チョークコイルにおいて、コイルの表面に絶縁膜が形成されている構成としてもよい。これにより、コイルを構成する金属平板を折り曲げて密着させても、金属平板間でショート等が生じることがなく占積率を大きくすることもできる。
また、上記の多連チョークコイルにおいて、コイル群は少なくとも2つの端子がそれぞれ異なる面から表出されている構成としてもよい。これにより、端子の幅を広く取ることができるので放熱性を改善できる。さらに、端子部分での接続強度を大きくできるので信頼性を改善することもできる。
また、上記の多連チョークコイルにおいて、コイル群は少なくとも1つの端子が底面とその周囲の面の少なくとも2面に渡って表出されている構成としてもよい。これにより、実装密度と信頼性とを改善することができる。
また、上記の多連チョークコイルにおいて、コイル群は少なくとも表面に露出する端子部分が下地層としてニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)を含む層からなり、最上層がハンダ層またはスズ(Sn)層が形成されていてもよい。これにより、ハンダ付けを確実に、かつ信頼性よく行うことができる。
また、上記の多連チョークコイルにおいて、磁性体には入力端子と出力端子の少なくとも一方を示す表示部が設けられていてもよい。これにより、実装作業や実装前後の検査が容易に行える。
また、上記の多連チョークコイルにおいて、磁性体が直方体形状に形成されていてもよい。これにより、自動実装を容易に行なうことができる。
また、上記の多連チョークコイルを電源機器に搭載することで、小型化と大電流での作動が可能な電源機器を実現でき、種々の電子機器の小型、薄型化を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施例1にかかる多連チョークコイルの透視斜視図
図2は、同実施例にかかる多連チョークコイルの配線図
図3は、同実施例にかかる多連チョークコイルに用いる端子一体型コイルとなる前の打ち抜き平板の形状を示す平面図
図4は、同実施例にかかる多連チョークコイルに用いる端子一体型コイルの斜視図
図5は、同実施例にかかる多連チョークコイルの図1に示すA1−A1線に沿った断面図
図6は、同実施例にかかる多連チョークコイルを用いるマルチフェーズ方式による電源回路の回路図
図7は、本発明の実施例2にかかる多連チョークコイルの透視斜視図
図8は、同実施例にかかる多連チョークコイルの配線図
図9は、同実施例にかかる多連チョークコイルの図7に示すB1−B1線に沿った断面図
図10は、同実施例にかかる多連チョークコイルの図7に示すB1−B1線に沿った断面図
図11は、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離または高さ位置とインダクタンス値との関係を求めるための基本構成を示す図で、端子一体型コイルのコイル部と周囲の磁性体領域部の斜視図
図12Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離および高さ位置とインダクタンス値とのそれぞれの関係を求めるための多連チョークコイルの配置構成を示す透視斜視図
図12Bは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離および高さ位置とインダクタンス値とのそれぞれの関係を求めるための多連チョークコイルの配置構成を示す断面図
図13Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離とインダクタンス値との関係を示す図
図13Bは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間の高さ位置とインダクタンス値との関係を示す図
図14は、同実施例にかかる多連チョークコイルの変形例を示す図で、一直線上に配置した複数の端子一体型コイルからずれた位置に別の端子一体型コイルを配置した構成を示す斜視図
図15は、本発明の実施例3にかかる多連チョークコイルの透視斜視図
図16は、同実施例にかかる多連チョークコイルの図15に示すB2−B2線に沿った断面図
図17Aは、本発明の実施例4にかかる多連チョークコイルで、正結合構成の場合の透視斜視図
図17Bは、同実施例にかかる正結合構成の多連チョークコイルの配線図
図18は、同実施例にかかる多連チョークコイルの図17Aに示すA2−A2線に沿った断面図
図19Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルの図17Aに示すB3−B3線に沿った断面図
図19Bは、同実施例にかかる多連チョークコイルの図17Aに示すB3−B3線に沿った断面図
図20Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルで、負結合構成の場合の透視斜視図
図20Bは、同実施例にかかる負結合構成の多連チョークコイルの配線図
図21Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルで、2つのコイル内を貫く磁束の向きを同一とした構成の多連チョークコイルの断面図
図21Bは、同実施例にかかる多連チョークコイルで、2つのコイル内を貫く磁束の向きを同一とした構成の多連チョークコイルの断面図
図22Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離とインダクタンス値との関係を求めるための基本構成を示す図で、端子一体型コイルのコイル部と周囲の磁性体領域部の斜視図
図22Bは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離とインダクタンス値との関係を求めるための多連チョークコイルの配置構成を示す透視斜視図
図22Cは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離とインダクタンス値との関係を求めるための多連チョークコイルの配置構成を示す平面図
図22Dは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離とインダクタンス値との関係を示す図
図23Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルの変形例で、3連チョークコイルを正結合構成とした場合の透視斜視図
図23Bは、同変形例の正結合構成の3連チョークコイルの配線図
図23Cは、同実施例にかかる多連チョークコイルの別の変形例で、3連チョークコイルを負結合構成とした場合の透視斜視図
図23Dは、同変形例の負結合構成の3連チョークコイルの配線図
図24Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルのさらに別の変形例で、端子一体型コイルを同一平面上でV字型に配置し、負結合構成とした多連チョークコイルの透視斜視図
図24Bは、この別の変形例の多連チョークコイルの側面図
図24Cは、この別の変形例の多連チョークコイルの配線図
図25は、同実施例にかかる多連チョークコイルのさらにまた別の変形例で、端子一体型コイルの中心点を一直線上に配置した多連チョークコイルの断面図
図26は、本発明の実施例5にかかる多連チョークコイルの透視斜視図
図27は、同実施例にかかる多連チョークコイルで、端子一体型コイルを作成するための打ち抜き平板の形状を示す平面図
図28は、同実施例にかかる多連チョークコイルで、折り曲げて端子一体型コイルとした形状を示す斜視図
図29は、同実施例にかかる多連チョークコイルの図26に示すA3−A3線に沿った断面図
図30は、同実施例にかかる多連チョークコイルの図26に示すB4−B4線に沿った断面図で、正結合構成の場合を示す図
図31は、同実施例にかかる多連チョークコイルの図26に示すB4−B4線に沿った断面図で、負結合構成の場合の図
図32Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、コイルの中心点間距離と結合との関係を説明するための図で、中心点間距離R=6mmとした構成の多連チョークコイルの断面図
図32Bは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、中心点間距離R=7mmとした構成の多連チョークコイルの断面図
図32Cは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、中心点間距離R=8mmとした構成の多連チョークコイルの断面図
図32Dは、同実施例にかかる多連チョークコイルにおいて、中心点間距離R=0mmとした構成の多連チョークコイルの断面図
図33Aは、本発明の実施例6にかかる多連チョークコイルのコイル部の構成を示す断面図
図33Bは、同実施例にかかる多連チョークコイルで、同様にコイル部の構成を示す断面図
図34は、同実施例にかかる多連チョークコイルで、コイル部の中心点間距離Sとインダクタンス値との関係を示す図
図35は、同実施例にかかる多連チョークコイルの変形例の多連チョークコイルの断面図
図36Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルの別の変形例の多連チョークコイルの透視斜視図
図36Bは、上記別の変形例の多連チョークコイルに用いる端子一体型コイルの斜視図
図36Cは、上記別の変形例の多連チョークコイルに用いる端子一体型コイルの斜視図
図36Dは、上記別の変形例の多連チョークコイルの配線図
図37Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルのさらに別の変形例の多連チョークコイルの透視斜視図
図37Bは、上記さらに別の変形例の多連チョークコイルに用いる端子一体型コイルの斜視図
図37Cは、上記さらに別の変形例の多連チョークコイルに用いる端子一体型コイルの斜視図
図37Dは、上記さらに別の変形例の多連チョークコイルの配線図
図38Aは、同実施例にかかる多連チョークコイルのまたさらに別の変形例の多連チョークコイルの透視斜視図
図38Bは、上記またさらに別の変形例の多連チョークコイルに用いる端子一体型コイルの斜視図
図38Cは、上記またさらに別の変形例の多連チョークコイルに用いる端子一体型コイルの斜視図
図38Dは、上記またさらに別の変形例の多連チョークコイルの配線図
図39は、本発明の実施例7にかかる多連チョークコイルの外観斜視図
図40は、本発明の実施例7にかかる多連チョークコイルの別の構成を示す外観斜視図
図41は、本発明の実施例7にかかる多連チョークコイルのさらに別の構成を示す外観斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
【実施例1】
図1は、本発明の実施例1の多連チョークコイルの透視斜視図である。また、図2は、この多連チョークコイルの配線図である。第一コイル1は、第一入力端子2と第一出力端子3とが一体に形成されて構成されている。第二コイル4も同様に、第二入力端子5と第二出力端子6とが一体に形成されている。第一コイル1と第二コイル4とは同方向に巻回されており、それらの巻回数はともに1.5ターンである。これによって、第一コイル1の第一入力端子2および第二コイル4の第二入力端子5から電流を流した場合、第一コイル1および第二コイル4のコイル内の磁束の向きは同一方向となる。
また、第一コイル1の中心軸と第二コイル4の中心軸とが平行で、かつ第一コイル1は上段に位置し、第二コイル4は下段に位置するように配置されている。なお、それぞれの中心軸とは、リング状のコイルの中心を通る軸線をいう。また、第一コイル1と第二コイル4とは同じ巻回数であるので、その中心点の高さ位置も異なることになる。
さらに、第一コイル1と第二コイル4とは、磁性体7の内部に埋設され、磁性体7は全体がほぼ直方体形状に形成されている。したがって、本実施例の多連チョークコイルは、全体がほぼ直方体形状となるため自動実装する際に取り扱いやすく、実装時のチャッキングミス等が生じ難くなる。
また、図3および図4は、第一コイル1と第二コイル4との作製方法と構成を説明するための図で、図3は打ち抜き平板の形状を示す平面図であり、図4はこれを折り畳んで端子一体型コイル、すなわち第一コイル1と第二コイル4とを作製した状態を示す斜視図である。
ここで、第一コイル1、第二コイル4の具体的構成について、図3および図4を用いて説明する。まず、第一コイル1と第二コイル4となる端子一体型コイルの作製方法とその構造について説明する。図3は、端子一体型コイルとなる前の打ちぬき平板の形状を示す平面図である。打ちぬき平板は、金属平板をエッチングまたは打ち抜きにより形成したリング状の3つの円弧状部31、これらの円弧状部31間を連接する連接部33および二つの円弧状部から延長される2つの端部32からなる。なお、金属平板としては、銅や銀等の低抵抗で、熱伝導率の大きな材料が主として用いられる。また、打ち抜き平板はエッチングや打ち抜き加工により形成する方法に限定されず、さらに切断加工やプレス成型加工等の加工方法で形成してもよい。
また、3つの円弧状部31の表面には、絶縁膜51が形成されている。この絶縁膜51は、例えばポリイミド等の絶縁性の樹脂を塗布すれば容易に形成できる。これにより、上記の円弧状部31を折りたたんで上下に重ねあわせてコイル部34を形成するときに、コイル間の短絡を防止する。また、連接部33には絶縁膜51を設けていないので、連接部33を折り曲げても絶縁膜51が破れや剥離がおこることがなく、このような絶縁膜51に起因する特性劣化を防止できる。
この打ち抜き平板の3つの円弧状部31は、図4に示すように連接部33にて互いに中心点が重なるように折り曲げられてコイル部34となる。また、円弧状部31を折り曲げることにより、2つの端部32はコイル部34の中心に対して放射状に設けられたものとなり、端子一体型のコイルを形成する。
これによって、第一コイル1と第二コイル4とは、コイル部34において絶縁膜51により絶縁処理が施されたコイル構成を実現できる。したがって、それぞれのコイル間や円弧状部31間には隙間を設けずに積層することが可能となる。この結果、占積率の大きな多連チョークコイルを実現できる。
つぎに、磁性体7は、例えば軟性磁性体合金粉末にシリコーン樹脂を3.3重量部加えて混合し、メッシュを通して整粒粉末とした複合磁性体を用いることができる。このような複合磁性体は、軟性磁性体合金粉末の粒をシリコーン樹脂が覆う構造となっている。軟性磁性体合金粉末は、例えば水アトマイズ法にて作製した平均粒径13μmの鉄(Fe)−ニッケル(Ni)を50:50の割合とした軟性磁性体合金粉末を用いることができる。
なお、本実施例の多連チョークコイルの磁性体7は金属磁性粉末として軟性磁性体合金粉末、絶縁性樹脂としてシリコーン樹脂を用いてその複合体としたが、これに限定されることはない。例えば、フェライト磁性粉末と絶縁樹脂との複合体、あるいは上記以外の金属磁性粉末と絶縁性樹脂との複合体としてもよく、さらには複合体ではなくフェライト磁性体のみとしてもよい。金属磁性粉末を用いる場合よりも抵抗は高くなるが、抵抗が高いことで逆に渦電流の発生を防ぐことができ、高周波帯域で良好な特性を得ることができる。
また、金属磁性粉末として、その組成が鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)を合計で90重量%以上含み、かつこの金属磁性粉末の充填率が65体積%から90体積%としたものを用いてもよい。このような磁性粉末を用いると、飽和磁束密度が高く、かつ透磁率の高い複合体からなる磁性体7を得ることができる。また、この金属磁性粉末の平均粒径を1μm〜100μmとすると、渦電流の低減にも効果的である。
このような磁性体7は絶縁性に優れるので、複数のコイル間やコイル部34の間でのショート等を防止することができ、高信頼性の多連チョークコイルを実現できる。また、このような磁性体7を用いることで、多連チョークコイルに電流を流すことで磁性体7に発生する渦電流を抑制することもできるため、高周波帯域に対応できる多連チョークコイルを実現することもできる。さらに、この多連チョークコイルを用いて電源回路機器等を構成した場合に、他の部品等との絶縁性を保つこともできる。
図5は、図1に示す多連チョークコイルのA1−A1線に沿った断面図を示す。端子一体型コイルと磁性体7とを用いて、図1および図5に示す多連チョークコイルを製造する方法について説明する。なお、まず、金型に磁性体7を入れ、上記端子一体型コイルを2個それぞれ設定された位置関係を有するように配置する。その後、さらに磁性体7を金型に入れてプレス成形を行う。このプレス成形時の圧力は、例えば3ton/cmを加える。また、金型より取り出した後、150℃にて1時間程度加熱処理をして硬化させる。さらに、その後それぞれの端部32を磁性体7の側面部から底面部まで表面にそって折り曲げ、第一入力端子2、第二入力端子5、第一出力端子3および第二出力端子6を形成する。
また、第一入力端子2、第一出力端子3、第二入力端子5および第二出力端子6が磁性体7の表面に露出する部分には、下地層52が形成され、その下地層52を覆うように最上層53が形成される。下地層52はニッケル(Ni)層が、最上層53はハンダ層またはスズ(Sn)層が好ましい。なお、磁性体7中に埋設されているコイル部34の表面には絶縁膜51が形成されている。
上記のように、多連チョークコイルの表面に露出した端子には、その底面部まで含めて最上層52としてハンダ層が形成されており、これにより多連チョークコイルを基板等により確実に実装することができる。また、端子が多連チョークコイルの側面でなく下面に折り曲げられるため、多連チョークコイルを基板等に実装する際の実装占有面積を小さくできる。さらに、端子には下地層52としてNi層が形成され、その上に最上層53として本実施例ではハンダ層が形成されているため、Ni層の酸化を防ぎ、かつハンダ付け性を良好にできる。
例えば、従来構成の多連チョークコイルの場合、チョークコイルの片方の端子の基板等への実装が不十分な状態で使用された場合には、発熱により基板等から端子がはずれてしまう場合や、多連チョークコイルが基板等から倒立する等の現象が生じる場合もあった。しかし、本実施例の多連チョークコイルの場合には、ハンダ付け性に優れた端子領域が側面部から底面部にかけて形成されているので、このような不良発生を確実に防止することができる。
また、第一コイル1と第二コイル4とは、金属平板を打ち抜き、折り曲げて構成されているので、導線を巻いて構成されるコイルに比べて、高周波帯域で使用しても小さな直流抵抗と充分なインダクタンス値を保持し、かつ大電流を流すことが可能である。また、コイルの巻き数を多くしなくても、充分なインダクタンス値を確保できるため、小型で、低背構成の多連チョークコイルを実現できる。
さらに、第一コイル1と第二コイル4とは磁性体7の内部に埋設されており、その磁性体7は絶縁性に優れたものであるため、複数のコイル間やコイル部34の間でのショート等の不良発生を防止できる。特に、磁性体7の金属磁性粉末の主成分として、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)のうち、少なくとも一種類以上含む材料を用いることで、大電流に対応可能な高飽和磁束密度と高透磁率を満たす磁気特性を有する磁性体7を得ることができ、大きなインダクタンス値の多連チョークコイルを実現できる。
以下、本実施例の多連チョークコイルの動作について説明する。第一コイル1と第二コイル4とは、巻き数が同数で巻き方向も同一としてある。第一入力端子2と第二入力端子5とから電流を流すと磁界が生じるが、それぞれのコイル内を貫く磁束の向きは同一方向となる。また、第一コイル1と第二コイル4とは磁気結合するように段違いに配置されている。
第一コイル1に電流を流すと磁束が生じるが、その磁束は第一コイル1のコイル内の中心を貫き、第一コイル1の外側を通り、再び第一コイル1のコイル内の中心に戻るように磁気回路を構成する。第二コイル4に電流を流した時も同様に、磁束は第二コイル4のコイル内の中心を貫き、第二コイル4の外側を通り、再び第二コイル4のコイル内の中心に戻るように磁気回路を構成する。このとき第一コイル1および第二コイル4は段違いに配置されているため、第一コイル1に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束の中で、第二コイル4に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束と重ねあう磁束が存在する。また、第二コイル4に電流を流した時も同様に、磁気回路の磁束の中で、第一コイル1に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束と重ねあう磁束が存在する。
これによって、第一コイル1と第二コイル4とに結合が生じる。また、第一コイル1と第二コイル4とは段違いに配置されているため、第一コイル1で生じる磁気回路の磁束と第二コイル4で生じる磁気回路の磁束との重なりがより増大し、高結合を実現することができる。
多連チョークコイルの場合、そのインダクタンス値は第一コイル1と第二コイル4との結合にも影響を受ける。第一コイル1と第二コイル4との結合は、第一コイル1に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束と第二コイル4に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束との重なりの程度で変わる。この重なりは、第一コイル1や第二コイル4の配置によって変わる。そのため、第一コイル1の中心点と第二コイル4の中心点との距離を変化させれば、磁束の重なりにも変化が生じる。したがって、第一コイル1や第二コイル4のターン数を変えなくても多連チョークコイルのインダクタンス値を変化させることが可能となる。すなわち、第一コイル1の中心点と第二コイル4の中心点との距離を適当に変化させることで、所定のインダクタンス値を容易に得ることができる。
また同様に、第一コイル1の中心点と第二コイル4の中心点との高さ位置を変化させても同様に磁束の重なりに変化が生じる。したがって、この方法によっても、第一コイル1や第二コイル4のターン数を変えずに多連チョークコイルのインダクタンス値を変化させることが可能となる。特に、コイルの高さ位置を変えれば、より小型で低背構成を実現しやすくなる。
上記したように、本実施例の多連チョークコイルは小型で、高結合が可能で、かつ大電流に対応できる多連チョークコイルを実現できる。特に、本実施例の多連チョークコイルは、図6にその回路図を示すように複数個のDC/DCコンバータを並列に接続した構成の電源回路に用いるのが好ましい。
図6は、マルチフェーズ方式を用いた電源回路の回路図を示す。入力電力61がスイッチング素子62に入力され、チョークコイル63とコンデンサ64とで積分回路を構成し、出力には負荷65が接続される。なお、スイッチング周波数としては、例えば500kHzを用いる。図6に示す電源回路は、複数個のDC/DCコンバータを位相制御し並列に作動させることによって、より高周波で、かつ大電流化を高効率で実現できる。しかし、従来構成では、出力としてリップル電流が生じることがあった。目標とする直流電流を出力として得るためにも、このリップル電流はできるだけ小さい方がよく、リップル電流の低減化にはチョークコイル63のインダクタンス値を大きくすることが効果的である。
一方、大電流に対応した電源回路とするためには、大電流を流した時にチョークコイル63の磁束が飽和するのを防ぐことが必要であり、そのためにはチョークコイル63のインダクタンス値は小さいほうが好ましい。インダクタンス値を小さくすると、チョークコイル63の直流重畳特性を高めることができるので、より大電流に対応することができる。また、上記の電源回路が、例えばノートパソコン等の電子機器に搭載されることを想定すると、チョークコイル63は小型であることも必要である。
そこで、本実施例の多連チョークコイルを、図6に示す電源回路のチョークコイル63として用いると、高周波帯域で使用可能で、かつ大電流化を高効率で実現できる。また、本実施例の多連チョークコイルは、各コイルの中心点の距離や高さ位置を変化させることで所定のインダクタンス値を得ることができるため、リップル電流の抑制をする場合や大電流に対応する場合等、比較的自由に対応することができる。
なお、本実施例の多連チョークコイルは、端子一体型コイルを二連としたが、三連、四連以上としてもよい。これらの端子一体型コイルを一直線上に配置してもよい。また、直線上に配置した複数の端子一体型のコイルを二列、三列以上に平面に並べても配置してもよく、あるは積み上げた配置でもよい。さらに、コイルの巻き数は1.5ターンには限定されない。さらに、各コイルの巻き数および巻き方向を同一とする必要も特にない。
以上のように、本実施例の多連チョークコイルは、小型で、高結合が可能で、かつ大電流に対応できる多連チョークコイルを実現することができるため、携帯電話等の電子機器に搭載した場合、特に有効である。
【実施例2】
本発明の実施例2の多連チョークコイルについて、図7から図10を参照しながら説明する。本実施例の多連チョークコイルの基本的な構成は、本発明の実施例1の多連チョークコイルと同様であるが、本実施例では端子一体型コイルを一つ増やしてV字状に配置したことが特徴である。
図7は、本実施例の多連チョークコイルの透視斜視図である。また、図8は、この多連チョークコイルの配線図である。第一コイル71は、第一入力端子72と第一出力端子73とが一体に形成されている。第二コイル74は、同様に第二入力端子75と第二出力端子76とが一体に形成されている。また、第三コイル77も第三入力端子78と第三出力端子79とが一体に形成されている。それぞれのコイルは同一方向に巻回されており、巻回数はすべて1.5ターンである。これによって、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77にそれぞれの入力端子から電流を流した場合は、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77のコイル内を貫通する磁束の向きは同一方向となる。
また、第一コイル71の中心軸、第二コイル74の中心軸および第三コイル77の中心軸が平行で、かつ、第一コイル71および第三コイル77は上段に位置し、第二コイル74は下段になるように配置されている。これにより、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77はV字状に配置されることになる。第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77は磁性体7の内部に埋設され、磁性体7は直方体になるよう形成されている。また、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77は、本発明の実施例1の多連チョークコイルで用いた端子一体型コイルと同様に、金属平板を打ち抜き折り畳んで形成した端子一体型のコイルであり、その製造方法については同じであるので説明を省略する。
図9および図10は、図7に示す本実施例の多連チョークコイルのB1−B1線に沿った断面図である。なお、これらの図は構成的には同一であるが、図9に示す矢印C1、C2、C3および図10に示す矢印D1、D2、D3の一部でその向きが異なる。これらの矢印C1、C2、C3、D1、D2、D3は、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77のコイル内を貫通する磁束の向きを示している。
図9の場合、第一コイル71および第三コイル77はそれぞれ第一入力端子72、第三入力端子78から、また第二コイル74は第二出力端子76から、それぞれ電流を入力した時の磁束の向きを示している。したがって、第一コイル71と第三コイル77とのコイル内を貫通する磁束の向きと、第二コイル74のコイル内を貫通する磁束の向きとが逆向きとなる。この状態を正結合とよぶ。
一方、図10の場合、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77は、それぞれ第一入力端子72、第二入力端子75および第三入力端子78から電流を入力した時の磁束の向きを示している。したがって、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77のそれぞれのコイル内を貫通する磁束の向きが同一方向である。この状態を負結合とよぶ。
上記構成の多連チョークコイルについて、以下その動作を説明する。
図9において、第一コイル71に電流を流すと磁束が生じるが、その磁束は第一コイル71のコイル内の中心を貫き、第一コイル71の外側を通り、再び第一コイル71のコイル内の中心に戻るように磁気回路を構成する。第二コイル74と第三コイル77とに電流を流した時も同様に磁気回路を構成する。このとき、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77はV字状に配置されているため、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束の中で重なり合う磁束が存在する。特に、この磁束の重なりが強いのはそれぞれコイルの中心付近である。
すなわち、第一コイル71に電流を流すことで生じる磁束の中には、第二コイル74のコイル内の中心を貫く磁束があり、同様に第三コイル77に電流を流すことで生じる磁束の中にも、第二コイル77のコイル内の中心を貫く磁束がある。そして、この第二コイル74のコイル内の中心を貫く磁束の向きと、第二コイル74に電流を流した時の第二コイル74のコイル内の中心を貫く磁束の向きとが同じであるため、第二コイル74内の中心を貫く磁束が大きくなる。
また、第二コイル74に電流を流すことで生じる磁束の中には、第一コイル71および第三コイル77のコイル内の中心を貫く磁束がある。そして、この第一コイル71および第三コイル77のコイル内の中心を貫く磁束の向きと、第一コイル71および第三コイル77に電流を流した時の第一コイル71のコイル内および第三コイル77のコイル内の中心を貫く磁束の向きとが同じであるため、第一コイル71のコイル内のおよび第三コイル77のコイル内の中心を貫く磁束が大きくなる。
これによって、多連チョークコイルに大きな磁界が発生することとなり、インダクタンス値がより大きくなる。したがって、この正結合の多連チョークコイルを図6に示す電源回路のチョークコイル63として用いると、正結合の多連チョークコイルはインダクタンス値が大きいことからリップル電流を抑制し、高周波帯域で使用可能で、かつ大電流に対応できる電源回路を実現できる。
図10に示す構成の場合、第一コイル71に電流を流すと磁束が生じるが、その磁束は第一コイル71のコイル内の中心を貫き、第一コイル71の外側を通り、再び第一コイル71のコイル内の中心に戻るように磁気回路を構成する。第二コイル74および第三コイル77に電流を流した時も同様に磁気回路を構成する。このとき、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77はV字状に配置されているため、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束の内で重なり合う磁束が存在する。特に、この磁束の重なりが強いのはそれぞれコイルの中心付近である。
第一コイル71に電流を流すことで生じる磁束の中には、第二コイル74のコイル内の中心を貫く磁束がある。同様に、第三コイル77に電流を流すことで生じる磁束の中にも、第二コイル74のコイル内の中心を貫く磁束がある。そして、この第二コイル74のコイル内の中心を貫く磁束の向きと、第二コイル74に電流を流した時の第二コイル74のコイル内の中心を貫く磁束の向きとが反対方向であるため、第二コイル74のコイル内の中心を貫く磁束が小さくなる。
また、第二コイル74に電流を流すことで生じる磁束の中には、第一コイル71および第三コイル77のコイル内の中心を貫く磁束がある。そして、この第一コイル71および第三コイル77のコイル内の中心を貫く磁束の向きと、第一コイル71および第三コイル77に電流を流した時の第一コイル71のコイル内および第三コイル77のコイル内の中心を貫く磁束の向きとが異なるため、第一コイル71のコイル内および第三コイル77のコイル内の中心を貫く磁束が小さくなる。
この結果、多連チョークコイルに発生する磁界が小さくなり、インダクタンス値を小さくすることができる。したがって、このような負結合の多連チョークコイルを図6に示す電源回路のチョークコイル63として用いると、インダクタンス値が小さくなるためチョークコイル63の直流重畳特性を高めることができ、より大電流に対応できる電源回路を実現できる。
本実施例の多連チョークコイルのインダクタンス値は、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77の結合によって影響を受ける。すなわち、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77の結合は、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77に電流を流すことで生じる磁気回路の磁束の重なりの程度で変わる。この重なりは、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77の配置によって変わる。そのため、第2コイル74を基準として、その両端のコイルである第一コイル71の中心点と第三コイル77の中心点との距離をそれぞれ変化させることで、磁束の重なりを変化させることができる。この磁束の重なりの変化により、第一コイル71、第二コイル74および第三コイル77のターン数を変えることなく、多連チョークコイルのインダクタンス値を変化させることが可能となる。
ここで、正結合又は負結合している本実施例の多連チョークコイルの第一コイル71の中心点と第二コイル74の中心点との距離または高さ位置とインダクタンス値との関係を求めた結果を図11から図13Bまでに示す。
図11は、本実施例で用いた端子一体型コイルのコイル部34とその周囲の磁性体7の領域部分を抽出して示した透視斜視図である。磁性体7であるコアは、縦10mm、横10mm、高さ3.5mmの直方体であり、端子一体型コイルのコイル部34は、内径4.2mm、外形7.9mm、高さ1.7mmおよび透磁率μ=26とした。なお、図7から図10までにおいては、巻き数1.5ターンとしているが、上記関係についてはその巻き数を3ターンとして求めた。
また、図12Aと図12Bとは、図11に示す端子一体型コイルのコイル部34を用いた場合の多連チョークコイルの配置構成の透視斜視図(図12(A))と断面図(図12(B))である。これらは、第二コイル74を基準とした第一コイル71および第3コイル77間のそれぞれの距離Dとインダクタンス値との関係、および第二コイル74を基準とした第一コイル71および第3コイル77の高さ位置Hとインダクタンス値との関係をそれぞれ求めるための構成を説明する図である。
図13Aは、高さ位置HをH=2.7mmと一定にして、第一コイル71の中心点と第二コイル74の中心点との距離D(これは第三コイル77の中心点と第二コイル74の中心点との距離Dと等しい)を変化させたときのインダクタンス値Lを求めた結果である。この結果から、コイルを正結合の配置とした場合には、負結合の配置とした場合に比べてインダクタンス値を大きくすることができる。また、距離Dを変化させることで、インダクタンス値Lを可変できることがわかった。
図13Bは、距離Dを一定として、高さ位置Hを変化させた場合のインダクタンス値Lとの関係を示す図である。この図からわかるように、高さ位置Hを変化させることで、インダクタンス値Lを可変できることも見出された。なお、このときには、距離DはD=6.5mmで一定とした。
これによって、第一コイル71の中心点と第三コイル77の中心点の位置を変えて距離D、高さ位置Hを変化させることで、所望のインダクタンス値Lを得る多連チョークコイルを実現できる。なお、本実施例では、第一コイル71の中心点と第二コイルとの74の中心点との距離と、第三コイル77の中心点と第二コイル74の中心点との距離とは同じとしたが、本発明はこれに限定されない。これらの距離はそれぞれ異なっていてもよい。また、本実施例では第一コイル71と第三コイル77との高さ位置を同じとしたが、必ずしも同じである必要はなく異なっていてもよい。
これらの結果から、インダクタンス値が大きくなるように第二コイル74を基準として、第一コイル71の中心点と第三コイル77の中心点との距離を設計に応じた配置構成とした多連チョークコイルを、実施例1の多連チョークコイルと同様に図6に示す電源回路のチョークコイル63に用いると、リップル電流を抑制し、高周波帯域で大電流に対応できる電源回路を実現できる。
一方、インダクタンス値を抑制するように第一コイル71の中心点と第三コイル77の中心点との距離を同様に設計に応じた配置構成とした多連チョークコイルを、実施例1の多連チョークコイルと同様に図6に示す電源回路のチョークコイル63に用いると、チョークコイル63の直流重畳特性を高めることができ、より大電流に対応できる電源回路を実現することもできる。
なお、本実施例の多連チョークコイルでは、コイルを三連としたが、四連以上として一直線上に増やしても良い。また、直線上に配置した複数の端子一体型のコイルを二列、三列以上と平面に並べても良く、積層するようにしてもよい。さらに、コイルの巻き数は1.5ターンに限定されることもない。また、各コイルの巻回数および巻回方向を同一としなくてもよい。さらに、本実施例では、各コイルの配置をV字状としたが、逆V字状に配置してもよい。
さらに、図14に示すように、一直線上に設置した複数の端子一体型のコイル121、121からずれた位置に端子一体型コイル122を配置することもできる。これによって、磁性体7内のコイルの充填率を高め、多連チョークコイル全体をより小型化することが可能である。
以上のように、本実施例の多連チョークコイルは、小型化、高結合が可能で、大電流に対応できる多連チョークコイルを実現することができるため、携帯電話等の電子機器に用いると大きな効果を発揮する。
【実施例3】
本発明の実施例3の多連チョークコイルについて図15と図16を参照しながら説明する。本実施例の多連チョークコイルの基本的な構成は、実施例1の多連チョークコイルと同様である。
図15は、本実施例の多連チョークコイルの透視斜視図である。第一コイル131、第二コイル132および第三コイル133は、実施例1の多連チョークコイルで用いたコイルと同様に、金属平板を打ち抜き折り畳んで形成した端子一体型のコイルからなる。それぞれのコイルの巻回数はともに2.5ターンである。
図16は、図15に示す多連チョークコイルのB2−B2線に沿った断面図である。第一コイル131の中心軸、第二コイル132の中心軸および第三コイル133の中心軸が平行で、かつ、第一コイル131および第三コイル133は上段に位置し、第二コイル132は下段になるように配置されている。また、第一コイルの端部134、第二コイルの端部135および第三コイルの端部136は同一平面になるように配置されている。第一コイル131、第二コイル132および第三コイル133のコイル部は磁性体7の内部に埋設されている。
上記構成の多連チョークコイルについて、以下その動作を説明する。
本実施例の多連チョークコイルが、コイルの結合により小型化、高結合が可能で、大電流に対応できることについては実施例1と同様である。本実施例の多連チョークコイルでは、コイルのターン数および配置に特徴をもたせることで、さらに小型、低背構成を実現することができる。
図16に示すように、2ターン分の高さを有する第二コイル132の右側部分の上に、3ターン分の高さを有する第一コイル131の左側部分が積層されている。また、3ターン分の高さを有する第二コイル132の左側部分の上に、2ターン分の高さを有する第三コイル133の右側部分が積層されている。第一コイル131、第二コイル132および第三コイル133が、それぞれ2.5ターンとしてあるので、このようなコイル配置が可能となる。したがって、第一コイル131および第三コイル133を上段に、第二コイルを下段に配置する構成したときに無駄な空間を作らずに、充填度を大きくしたコイルの積層構成が容易に実現できる。これによって、さらに小型で低背構成の多連チョークコイルを実現できる。
このような多連チョークコイルを図6に示す電源回路のチョークコイル63として用いると、設計上要求されるインダクタンス値を容易に確保しながら、小型化することができ、小型で高性能の電源回路機器を実現できる。
【実施例4】
本発明の実施例4にかかる多連チョークコイルの構成を図17A、図17Bおよび図18を用いて説明する。図17Aは、本実施例の多連チョークコイルの透視斜視図であり、図17Bは、その配線図である。図18は、図17Aに示す多連チョークコイルのA2−A2線に沿った断面図である。
まず、端子一体型のコイル50は実施例1の図3と図4とに示された作製方法とおなじように作製すればよいので、説明を省略する。なお、端子一体型のコイル50の巻回数は特に整数とする必要はなく、1.5ターン、1.75ターン等と自由に設定できる。また、コイルのサイズやインダクタンス値等に関しても同様である。本実施例では、これらのコイルを単に端子一体型コイル50として、以下説明する。したがって、これらに接続されている端子についても、単に入力端子20および出力端子30として説明する。また、磁性体7も実施例1で説明した材料と同じものを同じ製造方法で作製することができるので、説明は省略する。
本実施例の多連チョークコイルは、磁性体7の中に複数の端子一体型のコイル50を配置することによって構成されている。多連チョークコイルは、まず金型に端子一体型のコイル50をそれぞれ所定の位置関係として配置し、端部を除く部分を磁性体7で覆いプレス成型を行なう。このプレス成型条件も実施例1と同じようにすればよいので、説明を省略する。
磁性体7から突出した端部は外層の表面へと表出され折り曲げられ、その露出部には銅や銀からなる端子の酸化の防止と半田等の接続信頼性の向上のためにニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)を含む合金からなる下地層52が形成される。さらに、そのNiまたはNiを含む合金の下地層52上にハンダまたはスズ(Sn)あるいは鉛(Pb)の最上層53が形成されている。
この表出された全ての端部は、多連チョークコイルの底面および底面に隣接する面に沿って折り曲げられて入力端子20と出力端子30とが形成される。これにより、実質的にリードレス構造となるのでリード付き構成の従来の多連チョークコイルに比べて高密度な実装が可能となる。上記の製造方法についても実施例1と基本的には同じである。
なお、磁性体7は直方体形状とすることが好ましいことは、実施例1の場合と同じである。これにより、自動実装のための吸着やプリント基板上への位置合せ等も容易にできるようになる。なお、実装の向きや端子の極性を表示してもよいし、面取りをしてもよい。さらに、多角形や円柱形状でも、上面が平坦形状であれば特に制約はない。
以下、磁性体7の中に埋設する複数のコイルの配置構成について説明する。本実施例では、図17Aに示すように、コイルのサイズ、巻数とも同じ2つのコイルを同じ平面で、かつ、それぞれのコイルの中心にて発生する磁束が逆向きに発生するように配置している。図17Bはその配線図であり、それぞれの端子一体型のコイル50、50の入力端子20と出力端子30とには、それぞれ電源接続部I1、I2、O1、O2を表示してある。
以上の構成とした場合、生じる磁界がどのようになるかを説明する。図19Aと図19Bとは、図17Aに示すB3−B3線に沿った断面図で、電流を流した際にそれぞれのコイル内を貫く磁束の向きがそれぞれ交互に異なる。したがって、それぞれのコイル内を貫通する磁束は重畳されるように磁気回路が形成されている。この結果、それぞれのコイルのインダクタンス値が大きくなる。このような磁束の結合を生ずるコイルの向きの配置は正結合構成である。
一方、図17Aと同じようにコイルのサイズや巻回数が同じ2つのコイルを同じ平面に配置するが、それぞれに電流を流した際にコイル内を貫く磁束の向きが同一になるように配置する多連チョークコイル構成もある。図20Aは、同じ巻回方向の端子一体型コイル50を同じ平面に配置した多連チョークコイルの透視斜視図である。また、図20Bはその配線図を示す。それぞれの端子一体型のコイル50、50の入力端子20と出力端子30とには、それぞれ電源接続部I1、I2、O1、O2を示してある。
図21Aと図21Bとは、この多連チョークコイルの断面図で、電流を流した際にそれぞれのコイル内を貫く磁束がすべて同一方向である。したがって、それぞれのコイル内を貫く磁束はコイルの外側を通り元に戻るが、この場合の磁束の結合は弱く、多連チョークコイル全体で発生する磁束が打ち消し合う方向にそれぞれ磁気回路が形成されている。つまり、磁束の飽和を抑制する効果が得られる。すなわち、このコイルの配置構成は負結合である。
以上、述べたように、正結合と負結合の配置では、それぞれ異なった特性が得られる。以下、正結合をしている2つのコイルの中心点間距離Rとインダクタンス値Lとの関係、および負結合の配置をとっている場合の2つのコイルの中心点間距離Rとインダクタンス値Lとの関係を求めた結果について説明する。
図22Aは、一個のコイル部34とその周囲を取り囲む磁性体7の一部とを示す透視斜視図である。コイル部34のサイズは内径4.2mm、外径7.9mm、高さ1.7mmで、その巻数は3ターンとした。また、磁性体7からなるコアは、透磁率μ=26、サイズが10mm×10mm×3.5mmとし、これらから得られるインダクタンス値LはL=0.595μHである。
図22Bと図22Cとは、図22Aに示す単位構成のコイル部34と磁性体7とを2つ同一平面上に配置した構成を示す透視斜視図と平面図である。このような構成の多連チョークコイルにおいて、正結合構成と負結合構成との構成の違いをパラメータとして、中心点間距離Rとインダクタンス値Lを比較した結果を図22Dに示している。
2つのコイル50、50の中心点間の距離Rを10mmとしたとき、正結合構成ではインダクタンス値Lが0.579μH、負結合構成ではインダクタンス値Lは正結合構成のインダクタンス値Lの−1.4%小さい0.571μHとなった。同様に、中心点間距離Rを9.2mmとしたとき、正結合構成ではインダクタンス値Lが0.583μHとなり、負結合構成ではそれよりも−2.7%小さい0.567μHとなった。
すなわち、正結合構成においては、中心点間距離Rを小さくするにつれて、そのインダクタンス値Lは大きくなる。一方、負結合構成においては、中心点間距離Rを小さくするにつれて、そのインダクタンス値Lも小さくなる。つまり、正結合構成では、中心点間距離Rを小さくすればインダクタンス値Lを大きくすることができ、各コイルの巻回数を増やさなくても、大きなインダクタンス値を得ることができる。さらに、コイルの中心点間距離Rが小さいほど、インダクタンス値Lを大きくすることができるので、多連チョークコイルの小型化を図るうえでも好ましい。
一方、負結合構成では、コイルの中心点間距離Rが小さいほど、インダクタンス値Lも小さくなる。負結合構成においては、それぞれのコイルで発生する直流磁界成分が打ち消し合うので、大電流を流しても磁束が飽和することを防止しやすい。すなわち、負結合構成では、複数のコイルを内蔵したチョークコイルとすることで、コイル1つからなるチョークコイルを複数組み合わせて使用する場合よりも、小型化が可能であるだけでなく、直流重畳特性も大幅に改善することができる。
つぎに、3つの端子一体型のコイルを磁性体7中に配置した多連チョークコイル(以下、3連チョークコイルとよぶ)について説明する。
図23Aは、3つの端子一体型のコイル501、502、503を一直線上に配置した構成を示す透視斜視図である。なお、これらの端子一体型コイルのそれぞれを区別して、以下では右コイル501、中央コイル502および左コイル503とよぶ。図23Bは、このような配置構成で、かつ、それぞれが正結合構成となるように配置した3連チョークコイルの配線図を示す。また、図23Cは、同様に3つの端子一体型のコイル501、503、504を一直線上に配置し、負結合構成の3連チョークコイルの透視斜視図である。同様に、これらの端子一体型コイル501、503、504のそれぞれを区別して、以下では右コイル501、中央コイル504および左コイル503とよぶ。この構成では、中央コイル504も含めて、右コイル501と左コイル503ともに同じ巻回方向である。図23Dは、この多連チョークコイルの配線図を示す。なお、図23Bおよび図23Dにおいて、入力端子20と出力端子30との電源接続部を、それぞれI1、I2、I3、O1、O2、O3と表示している。
表1は、本実施例におけるコイルの正結合構成と負結合構成との違いによる各コイルのインダクタンス値Lの結果を示す。

表1からわかるように、3つのコイルの平均インダクタンス値は正結合構成の方が、負結合構成の配置の場合よりも大きくなる。中央コイル502のみをみると、負結合構成では0.5704μHで、正結合構成の場合の0.5870μHよりも−2.8%小さい。
以上、述べたように、3つの端子一体型のコイル501、502、503を用いた3連チョークコイルにおいても、2つの端子一体型のコイル50を用いた場合と同様、正結合構成または負結合構成、あるいはコイルの中心点間距離Rによって、インダクタンス値Lを任意に調節可能であり、多連チョークコイルの使用目的に合せてインダクタンス値Lを設定できるので最適な設計が容易に行なえる。
なお、本実施例では、2連および3連構成について説明したが,本発明はこれに限定されない。さらに端子一体型のコイルを4連以上として、一直線上に配置してもよい。また、直線上の複数の端子一体型のコイルを並べて2列以上に配置してもよい。
しかも、一直線上に配置した複数の端子一体型のコイルからはずれた位置に、少なくとも一個の端子一体型コイルを配置してもよい。図24Aは、同じ巻回数の3つの端子一体型のコイル505、506、507を同一平面上でV字型に配置して、負結合構成とした多連チョークコイルの透視斜視図である。また、図24Bはその側面図で、図24Cは配線図である。端子一体型のコイル505、506、507は、それぞれ入力端子5052、5062、5072と出力端子5053、5063、5073とが同じ方向に表出するような構成としてある。このようなコイルも実施例1と同じように金属平板をエッチングまたは打ち抜き加工して作製することができる。このように、複数のコイルを交互に配置することにより、磁性体7内の端子一体型のコイル505、506、507の充填率を大きくでき、全体を小型化することも可能である。
また、図23Aに示すような構成の多連チョークコイルでは、異なる巻回数のコイルの組み合わせも可能である。例えば、図25は、端子一体型のコイルの中心点を一直線上になるように配置した構成の多連チョークコイルの断面図である。この構成の場合、巻回数2ターンの端子一体型のコイル509、510と巻回数3ターンの端子一体型のコイル508とを、それぞれのコイル508、509、510の中心点を一直線上に並べて配置している。
このように本実施例によれば、巻回数やサイズによらず、複数のコイルを正結合構成または負結合構成とすることや、それぞれのコイルの中心点間距離を調整して磁性体7の中に埋設させることで、設計に対応して高精度にインダクタンス値を制御できるだけでなく、小型で低背構成の多連チョークコイルを実現できる。
これらの構成からなる多連チョークコイルを実施例1の図6で説明した電源回路のチョークコイルとして用いると、例えば、正結合構成の配置をとっている複数の端子一体型のコイルを内蔵した多連チョークコイルでは、大きなインダクタンス値を得ることができる。したがって、これをチョークコイル63として用いると、リップル電流を抑制できる電源回路が可能である。
また、例えば負結合構成の配置をとっている複数の端子一体型のコイルを内蔵した多連チョークコイルでは、インダクタンス値を小さくすることが容易に行なえるので、より大電流に対応した電源回路を実現できる。なお、このような電源回路はパソコンや携帯電話などの電源回路として用いることが好ましい。
【実施例5】
図26は、本発明の実施例5にかかる多連チョークコイルの透視斜視図である。本実施例では、端子一体型のコイルを2個用いて磁性体607中に埋設している。第一コイル601は、第一入力端子602と第一出力端子603とが一体に形成されている。第二コイル604は、第二入力端子605と第二出力端子606とが同様に一体に形成されている。それぞれのコイルの巻回方向は異なるが、巻回数はともに2.0ターンである。これにより、第一コイル601および第二コイル604に、それぞれの第一入力端子602と第二入力端子605とから電流を流した場合、第一コイル601および第二コイル604のそれぞれのコイル内の磁束の向きは異なる方向となる。
また、第一コイル601の中心軸と第二コイル604の中心軸とが平行で、かつ、第一コイル601の2ターン分で第二コイル604の1ターン分をかみ合わせた配置としている。第一コイル601と第二コイル604とは、磁性体607の内部に埋設され、磁性体607は直方体形状に形成されている。このような配置により、第一コイル601および第二コイル604は磁気結合することができる。
このように、本実施例の多連チョークコイルは直方体形状であるため、多連チョークコイルを自動実装する際に取り扱いやすい。
ここで、第一コイル601および第二コイル604となる端子一体型のコイルの製造方法とその具体的構成を図27と図28とを用いて説明する。
まず、図27に示すように、金属平板をエッチングまたは打ち抜いて形成された2つの円弧状部631、この2つの円弧状部631をつなぐ連接部633および2つの円弧状部631の一端部から延長されたそれぞれの端部635からなる打ち抜き平板を作製する。なお、金属平板は銅や銀等の低抵抗で、高熱伝導性の材料であれば特に限定されない。
さらに、2つの円弧状部631の表面には絶縁膜632を形成する。これにより、打ち抜き平板の2つの円弧状部631を折り畳んで上下に重ね合わせて構成されるコイル部634において、コイルとなる円弧状部631間の短絡を防止できる。なお、連接部633の表面には絶縁膜632は形成しない。このように、連結部633を除いた領域に絶縁膜632を設けているので、連接部633を折曲しても絶縁膜632の破れや剥離等が発生せず、このような絶縁膜632に起因するコイルの特性劣化を抑制できる。
この打ち抜き平板は、図28に示すように2つの円弧状部631の連接部633にて互いに中心点が重なるように折り曲げられて、2つの円弧状部631はコイル部634となる。また、2つの端部635はコイル部634の中心に対して放射状に設けられたものとなり、端子一体型のコイルが形成される。なお、本実施例では、第一コイル601と第二コイル604とは、第一コイル601の2ターン分で第二コイル604の1ターン分をかみ合わせる構成としているので、それぞれのコイル部634については円弧状部631の厚み分だけ隙間を設けて積層している。
このような打ち抜き平板を用いることにより、円弧状部631が積層されてなるコイル部634には絶縁膜632による絶縁処理が施されているため、円弧状部631間に隙間を設けることなく積み上げることが可能となり、占積率の高い多連チョークコイルを実現することができる。
なお、図27および図28では、端子一体型のコイルとして2ターンの場合を示しているが、打ち抜き平板状態で円弧状部631の数をさらに増加させていけば3ターン以上でも容易に作製できることは明らかである。
なお、磁性体607としては、実施例1で説明した材料および製造方法により作製できるので説明を省略する。
図26に示す多連チョークコイルの製造方法についても、実施例1と同じ製造方法により作製できるので、同様に説明を省略する。
図29は、図26に示す多連チョークコイルのA3−A3線に沿った断面図を示す。第一コイル601の第一入力端子602および第一出力端子603は、磁性体607の側面から底面に沿うように形成されている。また、第一入力端子602および第一出力端子603が磁性体607の表面に露出する部分には下地層52が形成され、この下地層52を覆うように最上層53が形成される。下地層52はメッキにより形成したニッケル(Ni)層が好ましく、最上層53はハンダ層またはスズ(Sn)層が好ましい。これらについても実施例1と同じである。
これによって、第一入力端子602、第二入力端子605、第一出力端子603および第二出力端子606は、それぞれ磁性体607の底面に折り曲げられた領域部にも最上層53として、例えばハンダ層が形成されているために多連チョークコイルをプリント基板等に対して、より確実に実装することができる。また、これによりリードレス構造となるので高密度で実装することもできる。
本実施例の多連チョークコイルは、第一コイル601および第二コイル604は金属平板を打ち抜き折り曲げて構成されている。したがって、導線を巻き、導線の先端部に端子を取り付けて構成される従来のコイルに比べて、高周波領域で必要とされるインダクタンス値および低い直流抵抗値を確保しやすく、この結果大電流に対応することが容易になる。
また、コイルの巻回数を多くしなくても必要とされるインダクタンス値を確保できるため、小型で低背構成の多連チョークコイルを実現することができる。
また、第一コイル601および第二コイル604は磁性体607の内部に埋設され、その磁性体607は絶縁性に優れ、コイル間やコイル部634の間でのショート不良発生を防止でき、高信頼性の多連チョークコイルを実現できる。特に、金属磁性粉末の主成分を鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちから選択された一種類以上を含んだ磁性体607とすることによって、大電流に対応可能な高飽和磁束密度と高透磁率の磁気特性を有する磁性体607を得ることができ、インダクタンス値の大きな多連チョークコイルを実現することができる。
上記構成の多連チョークコイルについて、以下その動作を説明する。
第一コイル601および第二コイル604は、巻回数が同数で、巻回方向は逆である。したがって、第一入力端子602および第二入力端子605から電流を流すと、生じた磁界によりそれぞれのコイル内を貫く磁束の向きは逆向きとなる。図30は、図26に示す本実施例の多連チョークコイルのB4−B4線に沿った断面図で、それぞれのコイル内を貫く磁束の向きを矢印で示している。第一コイル601および第二コイル604のそれぞれのコイル内の磁束の向きが逆向きであり、正結合構成である。
一方、図31は、同様に図26に示す多連チョークコイルのB4−B4線に沿った断面図で、それぞれのコイル内を貫く磁束の向きを矢印で示している。この場合には、第一コイル601は第一入力端子602から、第二コイル604は第二出力端子606から電流を入力しており、第一コイル601のコイル内の磁束の向きと、第二コイル604のコイル内の磁束の向きとが同じ向きであり、負結合構成である。
上記構成の多連チョークコイルについて、以下その動作を説明する。
図30に示すように、第一コイル601に電流を流すと磁束が生じるが、その磁束は第一コイル601のコイル内を貫き、第一コイル601の外側を通り、再び第一コイル601のコイル内に戻る磁気回路を構成する。第二コイル604に電流を流した時も同様に磁気回路を構成する。
このとき、第一コイル601および第二コイル604は、一部がかみ合うように配置されているため、第一コイル601および第二コイル604に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束の中で重なり合う磁束が存在する。特に、この磁束の重なりが強いのはそれぞれのコイルの中心付近である。
すなわち、第一コイル601に電流を流すことで生じる磁束の中には第二コイル604のコイル内を貫く磁束があり、同様に第二コイル604に電流を流すことで生じる磁束の中にも第一コイル601のコイル内を貫く磁束がある。そして、この第一コイル601のコイル内を貫く磁束の向きと、第二コイル604に電流を流した時の第一コイル601のコイル内を貫く磁束の向きとが同じであるため、これらが重畳されて第一コイル601のコイル内を貫く磁束が大きくなる。また、第二コイル604についても同様に重畳されるため、第一コイル601のコイル内を貫く磁束が大きくなる。
これによって、多連チョークコイルに大きな磁界が発生することとなり、インダクタンス値がより大きくなる。したがって、正結合構成とした多連チョークコイルを、実施例1の図6に示した電源回路のチョークコイル63として用いると、正結合の多連チョークコイルはインダクタンス値が大きくできるので、リップル電流を抑制でき、高周波帯域で大電流に対応できる電源回路を実現できる。
また、図31に示す構成の多連チョークコイルでも、第一コイル601に電流を流すと磁束が生じるが、その磁束は第一コイル601のコイル内を貫き、第一コイル601の外側を通り、再び第一コイル601のコイル内に戻る磁気回路を構成する。さらに、第二コイル604に電流を流した時も同様に磁気回路を構成する。このとき、第一コイル601および第二コイル604は一部のコイルがかみ合うように配置されているため、第一コイル601および第二コイル604に電流を流すことで生じた磁気回路の磁束の内で重なり合う磁束が存在する。特に、この磁束の重なりが強いのはそれぞれコイルの中心付近となる。
図31に示すように、第一コイル601に電流を流すことで生じる磁束の中には、第二コイル604のコイル内を貫く磁束があり、同様に第二コイル604に電流を流すことで生じる磁束の中にも第一コイル601のコイル内を貫く磁束がある。
そして、第二コイル604に電流を流して生じるコイル内を貫く磁束の向きと、第一コイル601に電流を流したときに第二コイル604のコイル内を貫く磁束の向きとが反対であるため、第二コイル604のコイル内を貫く磁束が小さくなる。また、同様に第一コイル601に電流を流して生じるコイル内を貫く磁束の向きと、第二コイル604に電流を流したときに第一コイル601のコイル内を貫く磁束の向きとが異なるため、第二コイル604のコイル内を貫く磁束が小さくなる。これによって、多連チョークコイルに発生する磁界を小さくすることが可能となり、磁束が飽和するのを抑制できる。
したがって、負結合構成の多連チョークコイルを、同様に実施例1の図6に示す電源回路のチョークコイル63として用いると、磁束の飽和を抑制できるのでチョークコイル63の直流重畳特性を高めることができ、より大電流に対応できる電源回路を実現できる。
また、多連チョークコイルのインダクタンス値は、第一コイル601と第二コイル604との結合状態により影響される。この第一コイル601および第二コイル604の結合は、第一コイル601および第二コイル604に電流を流すことで生じる磁気回路の磁束の重なりの程度で変わり、この重なりは第一コイル601および第二コイル604の配置によって変えることができる。
そのため、多連チョークコイルの第一コイル601のコイルの中心点と第二コイル604のコイルの中心点との距離を変化させれば、磁束の重なりの程度を変えることができ、結果として第一コイル601および第二コイル604の巻回数を変えなくても、多連チョークコイルのインダクタンス値を変化させることが可能となる。これによって、設計上必要とされるインダクタンス値を簡単に得ることができる。
以下、第一コイル601のコイルの中心点と第二コイル604のコイルの中心点との距離を変化させたときの中心点との距離Rと結合との関係について、具体例をもとに説明する。以下では、第一コイル601および第二コイル604のサイズは、外形を8.0mm、内径を4.0mm、板厚を0.5mmとし、磁性体607のサイズは縦10mm、横16mm、高さ3.5mmとする。
図32Aは、第一コイル601の中心点と第二コイル604の中心点との距離RをR=6mmとした構成の多連チョークコイルの断面図である。図32Bは同様に中心点間の距離RをR=7mmとした場合、図32Cは中心点間の距離RをR=8mmとした場合の断面図である。これらの図の基本的の構成は図26に示した構成であり、B4−B4線に沿うような断面形状を示している。また、図32Dは、中心点間の距離RをR=0mmにした場合の断面図である。この場合には、全体をより小型化できるので、磁性体607のサイズは図32Aから図32Cまでに示す構成に比べて小さくしている。
図32Aに示す構成の多連チョークコイルでは、2つのコイルのかみ合わせ部分については、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631の間に第二コイル604のコイル部を構成する円弧状部631がかみ合っている。また、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631のそれぞれの左側のコイル断面の中心点641、642と第二コイル604のコイル部を構成する2つの円弧状部631のそれぞれの右側のコイル断面の中心点643、644とがすべて同一線上になるよう配置されている。これは、第一コイル610と第二コイル604ともに、コイル部の外径が8mm、内径が4mmとし、コイルの中心点間の距離を6mmとしていることによる。
また、図32Bに示す構成の多連チョークコイルでは、2つのコイルのかみ合わせ部分については、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631の間に第二コイル604のコイル部を構成する円弧状部631がかみ合っている。また、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631のそれぞれの左側のコイル断面の中心点641、642と第二コイル604のコイル部を構成する2つの円弧状部631のそれぞれの右側のコイル断面の外周部645、646とが同一線上になるよう配置されている。これは、第一コイル610と第二コイル604ともに、コイル部の外径が8mm、内径が4mmとし、コイルの中心点間の距離を7mmとしていることによる。
また、図32Cに示す構成の多連チョークコイルでは、2つのコイルのかみ合わせ部分については、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631の間に第二コイル604のコイル部を構成する円弧状部631の一部が重なるように設けられている。その重なりの程度は、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631のそれぞれの左側のコイル断面の外周部647、648と第二コイル604のコイル部を構成する2つの円弧状部631のそれぞれの右側のコイル断面の外周部645、646とが同一線上になるよう配置されている。これは、第一コイル610と第二コイル604ともに、コイル部の外径が8mm、内径が4mmとし、コイルの中心点間の距離を8mmとしていることによる。
さらに、図32Dに示す構成の多連チョークコイルでは、2つのコイルのかみ合わせ部分については、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631と第二コイル604のコイル部を構成する2つの円弧状部631とがまったく重なるよう配置されている。すなわち、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631の中心点649、650と第二コイル604のコイル部を構成する2つの円弧状部631の中心点651、652とが同一線上になるよう配置されている。なお、第一コイル601のコイルの中心軸は、これらの2つの円弧状部631の中心点649、650を通る線であり、同様に第二コイル604のコイルの中心軸は2つの円弧状部631の中心点651、652を通る線である。これは、第一コイル601と第二コイル604ともに、コイル部の外径が8mm、内径が4mmとし、コイルの中心点間の距離を0mmとしていることによる。
図32Aに示す多連チョークコイルの構成の場合、第一コイル601に電流を流したとき発生する第二コイル604のコイル内の磁束は第二コイル604の円弧状部631に遮られることはない。同様に、第二コイル604に電流を流したとき発生する第一コイル601内の磁束は第一コイル601の円弧状部631に遮られることはない。したがって、この構成の多連チョークコイルでは、第一コイル601および第二コイル604によって磁路がふさがれることがなく、この結果それぞれのコイル内で結合する有効断面積を大きくすることができる。
なお、この構成の多連チョークコイルは上記のようにかみ合うコイルの外径と内径とがまったく同じである場合だけでなく、かみ合うコイルの外径と内径の差がそれぞれ同一の場合であっても成立する。例えば、第一コイル601のコイル部の外径を9mm、内径を7mmとし、第二コイル604のコイル部の外径を8mm、内径を6mmとした場合、第一コイル601のコイルの中心点と第二コイル604のコイルの中心点との距離を6.5mmとすれば、上記のような高結合の多連チョークコイルを実現することができる。
なお、図32Aに示す多連チョークコイルの構成においては、第一コイル601の中心点と第二コイルの604の中心点との距離を、第一コイル601のコイル部を構成する2つの円弧状部631のそれぞれの左側のコイル断面の中心点641、642と第二コイル604のコイル部を構成する2つの円弧状部631のそれぞれの右側のコイル断面の中心点643、644とがすべて同一線上になるように設定したが、必ずしもこのように設定する必要はなく、コイル内で結合する有効断面積を充分に確保できる程度に一致させておけばよい。
図32Bに示す多連チョークコイルの構成では、第一コイル601に電流を流したときに発生する第二コイル604のコイル内の磁束は、第二コイル604のコイル部の円弧状部631によって一部遮られる。同様に、第二コイル604に電流を流したときに発生する第一コイル601のコイル内の磁束は、第一コイル601のコイル部の円弧状部631によって一部遮られる。この結果、この構成の多連チョークコイルは、第一コイル601および第二コイル604によってそれぞれ磁路が塞がれる部分が生じる。したがって、図32Aに示す構成の多連チョークコイルと比較して結合を抑制することが可能となる。
図32Cに示す多連チョークコイルの構成では、第一コイル601に電流を流したときに発生する第二コイル604のコイル内の磁束は、第二コイル604のコイル部の円弧状部631によって一部遮られる。同様に、第二コイル604に電流を流したときに発生する第一コイル601のコイル内の磁束は、第一コイル601のコイル部の円弧状部631によって一部遮られる。この結果、この構成の多連チョークコイルは、第一コイル601および第二コイル604によってそれぞれ磁路が塞がれる部分が生じる。したがって、図32Aや図32Bに示す構成の多連チョークコイルと比較して、さらに結合を抑制することが可能となる。
図32Dに示す多連チョークコイルの構成では、第一コイル601と第二コイル604のコイル部の中心軸が同じとなるように配置されているので、より結合を強くすることができるだけでなく、小型化も可能となる。
上記したように、第一コイル601のコイルの中心点と第二コイル604のコイルの中心点との距離Rを変化させることで、結合度合いだけでなく、コイル内で結合する有効断面積も調節することができるため、多連チョークコイルの全体の結合をより自由に調節することができる。これによって、設計上必要とされるインダクタンス値を有する多連チョークコイルを容易に実現できる。
【実施例6】
図33Aと図33Bとは、本発明の実施例9にかかる多連チョークコイルのコイル部の構成を示す断面図である。2つの端子一体型のコイル711、712を縦方向に配置して磁性体713の内部に埋設した構成である。なお、これらの図においては、磁界の向きを破線の矢印で示し、電流の向きを実線の矢印で示している。
図33Aに示す構成の多連チョークコイルは、2つの端子一体型のコイル711、712のそれぞれのコイル部715、716を縦方向に配置し、かつ電流を流した時に発生するコイル内の磁界の向きが同じ方向になるように端子から電流を入力する構成としている。この構成は正結合である。この構成により、発生する磁束の向きが同じとなるため、それぞれの磁束が重畳されるためインダクタンス値を大きくでき、多連チョークコイルの小型化を図ることができる。
なお、3つ以上の端子一体型のコイルについても同様な配置を行い、同様に電流を流した時に発生するコイル内の磁界の向きが同じ方向になるよう端子から電流を入力すれば同様の効果が得られる。
図33Bに示す構成の多連チョークコイルは、2つの端子一体型のコイル711、712を同様に縦方向に配置し、かつ電流を流した時に発生するコイル内の磁界の向きがそれぞれ逆方向になるように端子から電流を入力するように構成している。この構成は負結合である。この構成により、発生する磁束が互いに打ち消しあうため、磁束の飽和を抑制することができ、多連チョークコイルの直流重畳特性を高めることができる。
なお、3つ以上の端子一体型のコイルについても同様な配置を行い、同様に電流を流した時に発生するコイル内の磁界の向きが交互に異なる方向になるように端子から電流を入力すれば同様の効果が得られる。
このような正結合構成と負結合構成の多連チョークコイルについて、2つの端子一体型のコイル711、712のコイル部の中心点間距離Sとインダクタンス値の関係について説明する。図34は、中心点間距離Sとインダクタンス値Lとの関係である。この結果は、端子一体型のコイル711、712のサイズを内径4.2mm、外径7.9mm、高さは1.7mm、巻回数は3ターンとし、また磁性体713からなるコアは透磁率μ=26、サイズが縦、横および高さがそれぞれ10mm、10mm、3.5mmとして求めた。また、インダクタンス値LはL=0.595μHとした。
中心点間距離SがS=3.5mmの場合、正結合構成の多連チョークコイルのインダクタンス値LはL=0.747μHで、負結合構成の多連チョークコイルのインダクタンス値Lは正結合構成の場合より24.9%小さいL=0.560μHであった。
同様に、中心点間距離SをS=2.7mmにした場合、正結合構成の多連チョークコイルのインダクタンス値LはL=0.794μHで、負結合構成の多連チョークコイルのインダクタンス値Lは正結合構成の場合より41.0%小さいL=0.468μHであった。
以上の結果より、中心点間距離Sが同じであれば、正結合構成の多連チョークコイルの方が負結合構成の多連チョークコイルより大きなインダクタンス値Lとなることが見出された。
一方、正結合構成で中心点間距離Sを変化させた場合、例えばS=3.5mmではL=0.747μHであり、S=2.7mmではL=0.794μHであった。この値は、S=3.5mmの場合のインダクタンス値Lより6.3%大きい。同様に、負結合構成で中心点間距離Sを変化させた場合、例えばS=3.5mmではL=0.560μHであり、S=2.7mmではL=0.468μHであった。この値は、S=3.5mmの場合のインダクタンス値Lよりも16.5%小さい。
以上の結果より、正結合構成の場合には、中心点間距離Sが短くなるようにそれぞれのコイルを配置するとインダクタンス値Lが大きくできる。また、負結合構成の場合には、中心点間距離Sが短くなるようにそれぞれのコイルを配置するとインダクタンス値が小さくできる。したがって、端子一体型のコイル711、712の巻回数を変えなくても、中心点間距離Sを調整することで、多連チョークコイルのインダクタンス値Lをある程度任意に設定することができる。
なお、2つの端子一体型のコイル711、712の場合について説明したが、3個以上の端子一体型のコイルを用いた場合でも同様に中心点間距離をそれぞれ調整すれば、多連チョークコイルのインダクタンス値を比較的容易にかえることができる。
図35は、本実施例にかかる多連チョークコイルの変形例を示す断面図である。この変形例の多連チョークコイルは、端子一体型のコイルを正結合および負結合に配置した多連チョークコイルのうち、巻回数が(N+0.5、ただしNは一以上の自然数)ターンである端子一体型のコイル721、722の配置構成を示す断面図である。なお、端子一体型コイル721、722は縦方向に積層されて磁性体723中に埋設されている。図35においては、端子一体型のコイル721、722はそれぞれ巻回数が2.5ターンであり、コイル721の2ターン分である右側部分上にコイル722の2.5ターン分が積層されている。また、コイル721の2.5ターン分である左側部分上にコイル722の2ターン分が積層されている。この構造により、無駄な空間をなくし、コイルを高密度に積層することができるので、小型で低背構成の多連チョークコイルを実現できる。
以下、このような本実施例の多連チョークコイルのコイルの配置と入力端子および出力端子の表出方向について説明する。
図36Aは、直方体形状の磁性体730の内部に、図36Bに示す端子一体型のコイル731と、図36Cに示す端子一体型のコイル732とを縦方向に配置した構成を示す透視斜視図である。また、図36Dは、その配線図である。2つのコイル731、732は、それぞれ巻回数が1.5ターンであり、それぞれ入力端子733、735と、それぞれ出力端子734、736とを有している。
図36Aからわかるように、コイル731の入力端子733とコイル732の入力端子735とが同じ面から表出され、コイル731の出力端子734とコイル732の出力端子736とが上記の面に対向する面から表出されている。
この配置により、入力端子733、735と出力端子734、736を各々同じ面から表出できるため、多連チョークコイルをプリント基板などへ実装する際に半導体集積回路等との回路構成での配置が容易となり実装密度を向上できる。
また、入力側にIN、出力側にOUTなどの表示を設けることも容易に行うことができる。なお、この変形例では、2つのコイル731、732の巻回数を1.5ターンとしたが、巻回数は2.5ターン、3.5ターン等にしても同様の効果が得られる。
なお、必ずしも全ての入力端子または出力端子を1つの面から表出させる必要はなく、入力端子と出力端子の少なくとも2つを1つの面から表出させるようにしてもよい。また、全ての入力端子と出力端子を同一面から表出する際には、入力端子と出力端子とを交互に表出するようにしてもよい。
また、図37Aは、さらに別の構成からなる多連チョークコイルの透視斜視図である。この多連チョークコイルは、図37Bに示す端子一体型のコイル741と、図37Cに示す端子一体型のコイル742とを縦方向に配置した構成である。また、図37Dは、その配線図である。この多連チョークコイルの場合には、一方のコイル741の入力端子743と出力端子744とを磁性体740の同じ面から表出し、かつもう一方のコイル742の入力端子745と出力端子746とを上述の面に対向する面から表出した構成である。
この構成においても、コイルは2つには限定されず、3つ以上のコイルを同様に積層してもよい。
図38Aは、また別の構成からなる多連チョークコイルの透視斜視図である。この多連チョークコイルは、図38Bに示す端子一体型のコイル751と、図38Cに示す端子一体型のコイル752とを縦方向に配置した構成である。また、図38Dは、その配線図である。この多連チョークコイルでは、それぞれ巻回数が1.5ターンのコイル751、752が磁性体750の内部に図38Dに示す配線構成となるように埋設されている。すなわち、コイル751は入力端子755と出力端子756とを有し、コイル752は入力端子753と出力端子754とを有する。コイル751とコイル752とは、それぞれの入力端子753、755およびそれぞれの出力端子754、756を各々異なる面に表出するように配置されている。
この構造により、入力端子と出力端子の面積を大きくしても端子同士が接触し難くなる。したがって、プリント基板上への実装や放熱性をより改善することもでき、さらに端子の抵抗値を低くすることもできるため大電流化に対応した多連チョークコイルを実現することができる。
また、この構造によれば端子のハンダ付け箇所が均一に分散されるので、実装強度も大きくすることができる。
この構成の多連チョークコイルでは、コイルは2つに限定されることはなく、3つ以上のコイルを同様に重ねてもよい。その際には、複数の端子が同じ面に表出するように配置することもできる。
なお、磁性体は直方体形状として説明したが、向きの判別が容易なように面取りをしてもよいし、磁性体の上部に入力端子や出力端子を表示する表示を設けてもよい。
以上のように、本実施例の多連チョークコイルは高周波帯域で必要なインダクタンス値を確保するとともに、小さな直流抵抗値を保持し、かつ大電流に対応でき、小型化も可能である。したがって、実施例1の図6で説明したような電源回路に用いると、小型で高性能の電源回路を実現できる。この電源回路をパソコンや携帯電話のような電子機器に搭載すると小型化が可能となり好ましい。
【実施例7】
本発明の実施例7の多連チョークコイルについて、図39から図41を参照しながら説明する。本実施例の多連チョークコイルの基本的な構成は実施例1から実施例6までに説明した多連チョークコイルと同様である。なお、図39から図41においては多連チョークコイルの外観形状を示しており、端子一体型コイルについては入力端子と出力端子のみを図示している。
図39に示す多連チョークコイルでは、すべての入力端子151は直方体形状とした磁性体7の一つの面から、また出力端子(図示せず)はその一つの面に対向する面からすべて表出させた構成としていることが特徴である。これによって、多連チョークコイルをプリント基板などへ実装する際に、半導体集積回路等に近接して配置することも可能となりプリント基板の実装密度を高めることができる。また、磁性体7の上部表面には、入力端子151を示す表示として、例えばIN−1、IN−2、IN−3等が、また出力端子を示す表示として、例えばOUT−1、OUT−2、OUT3等が印刷等により表示された表示部121も設けられている。これにより、多連チョークコイルを、例えばプリント基板上へ実装する場合や実装後に正しく実装されたかどうかの確認を容易に行える。
なお、入力端子と出力両端子を一つの面からすべて表出させた構成としてもよい。例えば、図40に示すように、入力端子161と出力端子162とを交互に配置して表出させるようにしてもよい。この場合、磁性体7の上部表面には、入力端子161を示す表示として、例えばIN−1、IN−2、IN−3等が、また、出力端子162を示す表示として、例えばOUT−1、OUT−2、OUT−3等が、それぞれ対応する位置に印刷等により表示された表示部121も設けられている。これにより、多連チョークコイルを、例えばプリント基板上へ実装する場合や実装後に正しく実装されたかどうかの確認を容易に行える。
また、必ずしも全ての入力端子161と出力端子162とを一つの面から表出させる必要はなく、二つ以上の入力端子と出力端子とから選択された少なくとも二つの端子を一つの面から表出させてもよい。
また、巻数がNターン(Nは1以上の自然数)からなる端子一体型のコイルの場合には、入力端子と出力端子が上下に同方向に突出する構成となるので、このまま上下セットで入力端子と出力端子とを磁性体の一つの面に並べて配置しても良い。
さらに、少なくとも二つの端子をそれぞれ異なる方向へ表出するようなコイルの配置も可能である。例えば、図41に示す多連チョークコイルは、3つの出力端子172がそれぞれ異なる面から表出されており、3つの入力端子171がすべて同じ面から表出された構成である。なお、この多連チョークコイルの場合にも、磁性体7の上部表面には、入力端子171を示す表示として、例えばIN−1、IN−2、IN−3等が、また、出力端子172を示す表示として、例えばOUT−1、OUT−2、OUT−3等が、それぞれ対応する位置に印刷等により表示された表示部121も設けられている。これにより、多連チョークコイルを、例えばプリント基板上へ実装する場合や実装後に正しく実装されたかどうかの確認を容易に行える。
上記の構成では端子一体型コイルを3個用いた場合について説明しているが、端子一体型コイルの個数は特に限定されず、また端子取り出し方向についても限定されず、端子取り出し方向に対応した面上に表出させるようにすればよい。
このように、任意の面から端子を表出させた端子一体型のコイルの配置の場合は、端子間の距離を大きくすることが可能となる。これにより、端子面積を大きくでき、したがって放熱特性をさらに改善できる。また、端子の抵抗値を低くすることもできるため、大電流化に対応した多連チョークコイルを実現することができる。また、このような構成とすることにより、端子のハンダ付け部分が底面とその近傍部分に分散されるので、実装強度も各方向からの力に対して大きくすることができる。なお、本実施例において磁性体は直方体形状としたが、向きの判別が容易なように一部の辺で角を落としてもよいし、それぞれの端子に表示部をさらに設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
本発明の多連チョークコイルは、金属平板をエッチングまたは打ち抜き等により形成した打ち抜き平板を折り曲げて端子一体型のコイルを作製し、この端子一体型のコイルを複数個所定の位置関係を有して磁性体の内部に埋設した構成からなり、高周波帯域で使用が可能で、必要なインダクタンス値の確保と小さな直流抵抗値を保持することができるので、各種の電子機器、特に携帯電話等の形態機器分野に有用である。
図面の参照符号の一覧表
1,71,131,601 第一コイル
2,72,602 第一入力端子
3,73,603 第一出力端子
4,74,132,604 第二コイル
5,75,605 第二入力端子
6,76,606 第二出力端子
7,607,713,723,730,740,750 磁性体
31,631 円弧状部
32,134,135,136,635 端部
33,633 連接部
34,634,715,716 コイル部
50,505,506,507,508,509,510,711,712,721,722,731,732,741,742,751,752 コイル
51,632 絶縁膜
52 下地層
53 最上層
61 入力電力
62 スイッチング素子
63 チョークコイル
64 コンデンサ
65 負荷
77,133 第三コイル
78 第三入力端子
79 第三出力端子
121 表示部
501 右コイル(端子一体型コイル)
502,504 中央コイル(端子一体型コイル)
503 左コイル(端子一体型コイル)
641,642,643,644,649,650,651,652 中心点
645,646,647,648 外周部
20,151,161,171,733,735,743,745,753,755,5052,5062,5072 入力端子
30,162,172,734,736,744,746,754,756,5053,5063,5073 出力端子
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】



【図14】

【図15】

【図16】


【図18】








【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】




【図34】

【図35】




【図39】

【図40】

【図41】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ設定した展開形状からなる金属平板を折り曲げて形成した端子一体型のコイルを設定された位置関係を有して複数個配置したコイル群と、前記コイル群をその内部に埋設した磁性体とからなることを特徴とする多連チョークコイル。
【請求項2】
前記コイル群は、前記コイル群を構成する複数の前記コイルの中心軸が平行になるように前記コイルを並べるとともに、複数の前記コイルのうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と、前記選択されたコイル以外のコイルの中心点とが段違いになるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の多連チョークコイル。
【請求項3】
前記コイル群のうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と、前記選択されたコイル以外の複数の前記コイルのうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点との距離を変化させて所定のインダクタンス値を得ることを特徴とする請求項2に記載の多連チョークコイル。
【請求項4】
前記コイル群のうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と、前記選択されたコイル以外の複数の前記コイルのうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点との高さ位置を変えて所定のインダクタンス値を得ることを特徴とする請求項2に記載の多連チョークコイル。
【請求項5】
前記コイル群のうちから少なくとも一つ選択されたコイルと、前記選択されたコイルの両隣のコイルとがV字状または逆V字状に配置されており、前記選択されたコイルに電流を流したときに生じる前記コイル内を貫く磁束の向きと、前記両隣に配置されたコイルに電流を流したときに生じる前記コイル内を貫く磁束の向きとが互いに異なる方向としたことを特徴とする請求項2に記載の多連チョークコイル。
【請求項6】
前記コイル群のうちから少なくとも一つ選択されたコイルと、前記選択されたコイルの両隣のコイルとがV字状または逆V字状に配置されており、前記選択されたコイルに電流を流したときに生じる磁束の向きと、前記両隣に配置されたコイルに電流を流したときに生じる磁束の向きとが同じ方向としたことを特徴とする請求項2に記載の多連チョークコイル。
【請求項7】
前記コイル群を構成する前記コイルの巻回数が(N+0.5)ターン(ただし、Nは1以上の整数)からなり、前記コイル群のうちから選択されたコイルのNターン部と前記選択されたコイルに隣接するコイルの(N+0.5)ターン部とが積層された配置構成からなることを特徴とする請求項2に記載の多連チョークコイル。
【請求項8】
前記選択されたコイルの中心点と、前記両隣に配置されたコイルの中心点とのそれぞれの距離を変化させて所定のインダクタンス値を得ることを特徴とする請求項5または6に記載の多連チョークコイル。
【請求項9】
前記コイル群は、前記コイル群を構成する複数の前記コイルの中心点が同一平面上になるように前記コイルを配置したことを特徴とする請求項1に記載の多連チョークコイル。
【請求項10】
複数の前記コイルのうち、隣接する2つのコイルの中心点間の距離を変化させて所定のインダクタンス値を得ることを特徴とする請求項9に記載の多連チョークコイル。
【請求項11】
前記コイル群は、複数の前記コイルのそれぞれに電流を流したときに生じる前記コイル内の磁束の向きが交互に異なるように配置されたことを特徴とする請求項9に記載の多連チョークコイル。
【請求項12】
前記コイル群は、複数の前記コイルのそれぞれに電流を流したときに生じる前記コイル内の磁束の向きが同じ方向となるように配置されたことを特徴とする請求項9に記載の多連チョークコイル。
【請求項13】
前記コイル群は、前記コイル群を構成する複数の前記コイルの中心軸が平行になるように前記コイルを並べるとともに、複数の前記コイルのうちから少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と前記選択されたコイルに隣接するコイルの中心点との距離が前記選択されたコイルの外径と前記隣接するコイルの外径との和の1/2以下で、前記選択されたコイルの少なくとも1ターン分が前記隣接するコイルとかみ合うように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の多連チョークコイル。
【請求項14】
前記選択されたコイルおよび前記隣接するコイルの巻回数がNターン(ただし、Nは2以上の整数)からなり、前記選択されたコイルの(N−1)ターン分が前記選択されたコイルにかみ合うように配置されたことを特徴とする請求項13に記載の多連チョークコイル。
【請求項15】
前記選択されたコイルの外径と内径との差と、前記隣接するコイルの外径と内径との差が同一で、前記選択されたコイルの中心点と前記隣接するコイルの中心点との距離が前記選択されたコイルの外径と前記隣接するコイルの内径の和の1/2に一致するように前記コイル群が配置されたことを特徴とする請求項13に記載の多連チョークコイル。
【請求項16】
前記コイル群の内で少なくとも一つ選択されたコイルの中心点と前記選択されたコイルに隣接するコイルの中心点との距離を変化させて所定のインダクタンス値を得ることを特徴とする請求項13に記載の多連チョークコイル。
【請求項17】
前記コイル群の内で少なくとも一つ選択されたコイルに電流を流したときのコイル内の磁束の向きと、前記選択されたコイルに隣接するコイルに電流を流したときの磁束の向きとが同じ方向となるように前記コイル群を配置したことを特徴とする請求項13に記載の多連チョークコイル。
【請求項18】
前記コイル群の内で少なくとも一つ選択されたコイルに電流を流したときのコイル内の磁束の向きと、前記選択されたコイルに隣接するコイルに電流を流したときの磁束の向きが異なるように前記コイル群を配置したことを特徴とする請求項13に記載の多連チョークコイル。
【請求項19】
前記コイル群は、複数の前記コイルがすべて一直線上に配置されていることを特徴とする請求項9または13に記載の多連チョークコイル。
【請求項20】
複数の前記コイルのうちから選択された少なくとも一つのコイルは、一直線上に配置された複数の他のコイルからずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項1、2、9または13に記載の多連チョークコイル。
【請求項21】
前記コイル群は、選択された二つ以上の入力端子と出力端子のうち少なくとも一方が同じ表面に表出するように配置されていることを特徴とする請求項1、2、9または13に記載の多連チョークコイル。
【請求項22】
前記コイル群は、前記コイル群を構成する複数の前記コイルを前記磁性体の内部に縦方向に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の多連チョークコイル。
【請求項23】
複数の前記コイル間の間隔を変化させて所定のインダクタンス値を得ることを特徴とする請求項22に記載の多連チョークコイル。
【請求項24】
複数の前記コイルに電流を流したときに生じる前記コイル内の磁束の向きが同じ方向になるように前記コイル群を配置したことを特徴とする請求項22に記載の多連チョークコイル。
【請求項25】
複数の前記コイルに電流を流したときに生じる前記コイル内の磁束の向きが交互に異なる方向になるように前記コイル群を配置したことを特徴とする請求項22に記載の多連チョークコイル。
【請求項26】
複数の前記コイルの巻回数が(N+0.5)ターン(ただし、Nは1以上の整数)からなり、上下に位置するそれぞれのコイルの0.5ターン部分が同一平面となる配置構成としたことを特徴とする請求項22に記載の多連チョークコイル。
【請求項27】
複数の前記コイルのすべての入力端子と出力端子との少なくとも一方を同じ表面に表出させたことを特徴とする請求項22に記載の多連チョークコイル。
【請求項28】
前記磁性体が、フェライト磁性体、フェライト磁性粉末と絶縁性樹脂との複合体、および金属磁性粉末と絶縁性樹脂との複合体のうちから選択された少なくとも1種類から形成されたことを特徴とする請求項1、2、9、13または22に記載の多連チョークコイル。
【請求項29】
前記コイルの表面に絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1、2、9、13または22に記載の多連チョークコイル。
【請求項30】
前記コイル群は、少なくとも2つの端子がそれぞれ異なる面から表出されていることを特徴とする請求項1、2、9、13または22に記載の多連チョークコイル。
【請求項31】
前記コイル群は、少なくとも1つの端子が底面とその周囲の面の少なくとも2面に渡って表出されていることを特徴とする請求項1、2、9、13または22に記載の多連チョークコイル。
【請求項32】
前記コイル群は、少なくとも表面に露出する端子部分が下地層としてニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)を含む層からなり、最上層はハンダ層またはスズ(Sn)層が形成されていることを特徴とする請求項1、2、9、13または22に記載の多連チョークコイル。
【請求項33】
前記磁性体には、入力端子と出力端子の少なくとも一方を示す表示部が設けられていることを特徴とする請求項1、2、9、13または22に記載の多連チョークコイル。
【請求項34】
前記磁性体が直方体形状に形成されていることを特徴とする請求項1、2、9、13または22に記載の多連チョークコイル。
【請求項35】
請求項1、2、9、13または22に記載の多連チョークコイルを搭載したことを特徴とする電子機器。

【国際公開番号】WO2004/055841
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502490(P2005−502490)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015858
【国際出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】