説明

多重ろ過カートリッジろ過装置

【課題】十分な浸透物生成容量を提供しつつ浸透物流れ損失を最小化させる、螺旋巻きフィルタカートリッジ構造を用いるろ過装置を提供することである。
【解決手段】入り口(14)及び出口(16)、を有するハウジングと、螺旋巻きした複数のろ過カートリッジ(18、24)とを含むろ過装置が提供される。ろ過カートリッジは、2つの層と、送給物スペーサ層と、浸透物スペーサ層と、を含む。送供物及び浸透物の前混合を防止し、デッドエンドろ過モードにおける浸透物回収を許容するシールが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重螺旋巻き式のろ過カートリッジを用いるろ過装置に関し、2008年2月8日付で提出された米国仮出願特許第61/065,117号の便益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
ろ過は、使用するフィルタの面積を最大化し、フィルタ構造の容積を最小化した上で実施することが望ましいが、それを実現する一般的手段は、フィルタ層を有する多数の層材をきつく螺旋巻きして液体が一方の螺旋端から導入され他方の螺旋端から除去されるように形成したシリンダである。導入される全液体はフィルタ媒体通過後に除去されるべきである、即ち、導入された液体が、フィルタ媒体を通過することなく、巻装したフィルタ材間の空間を単純通過するのが防止されるべきである。当該構造は例えば米国特許第3,962,097号に記載される。
【0003】
螺旋巻き構造には膜の脆性に基づく問題、例えば、限外ろ過膜におけるフィルタカートリッジ製造中の破断等の問題がある。
ある方法では螺旋巻きフィルタは、折り返してV字状の2つのフィルタ層とした膜フィルタ層と、篩層との多重層から形成する。多重積層構造の各膜層及び篩層を平坦方向において糊付けし、次いで孔開けコア上にロール状に巻き付ける。各層は送供物及び浸透物用の各篩から形成する。螺旋巻き状フィルタを形成するロール巻き操作中、膜層の持つ粘性により、各膜層は相互に摺動するよりはむしろ皺を生じる傾向がある。その結果、一体保持性が低下する。比較的短い透過チャネル(長さ約45.7cm(約18インチ))の通過流れにおいて測定された寄生損失は無視し得るものであり、流れ特性は良好である。
【0004】
他の方法では、1枚の長い薄片で螺旋状装置を構成する。糊付けはロール形態においてのみ実施する。これにより薄片数は1枚に限定されるが、ロール状巻き付け時の膜上応力が低減される。単一層フォーマットにおいて当該技法により作製した装置には一体性が有る。しかしながら、浸透物チャネルが長い(約101.6cm(約40インチ))ことから、当該チャネルにおける、主に大きな圧力低下による寄生損失は受け入れざる程に大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願特許第61/065,117号明細書
【特許文献2】米国特許第3,962,097号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
十分な浸透物生成容量を提供しつつ浸透物流れ損失を最小化させる、螺旋巻きフィルタカートリッジ構造を用いるろ過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、入口及び出口を有するハウジングと、該ハウジング内に位置決めした複数のろ過カートリッジと、を有するろ過装置が提供される。ろ過カートリッジは、孔開けコアの周囲に巻装した複数の平坦層材を含む。平坦層材は平坦フィルタシートをV字状に折り畳み形成した2つのフィルタ層を含む。送給物スペーサ層と、浸透物スペーサ層とを含む流体透過性の層も設けられる。フィルタ層と送給物スペーサ層とは孔開けコアに接着される。浸透物スペーサ層はフィルタ層を通過する浸透物を受け、受けた浸透物を孔開けコア内に配向するべくシールされる。送給物スペーサ層は、流体送給物を受け且つ受けた流体送給物をフィルタ層を通して配向するべくシールされる。ろ過カートリッジは送給物及び浸透物の前混合を防止するべくシールされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のろ過装置の斜視図である。
【図2】図2は、浸透物形成のための流体流れを例示する、図1のろ過装置の断面図である。
【図3】図3は、本発明のろ過カートリッジの分解図である。
【図4】図4は、本発明のろ過カートリッジの形成方法の略ダイヤグラム図である。
【図5】図5は、本発明のろ過カートリッジで使用し得る追加的な浸透物スペーサ層の斜視図である。
【図6】図6は、本発明のろ過カートリッジの部分断面図である。
【図7】図7は、送給物スペーサ層及び浸透物スペーサ層に関する接着模様の例示図である。
【図8】図8は、本発明の浸透物スペーサ層の交互する接着模様の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照するに、本発明のろ過装置10が示され、入口14及び出口16、複数、好ましくは5〜6のろ過カートリッジ18、20、22、24、26とを有するハウジング12を含んでいる。
ろ過装置内の流体流路を図2、3、6、7を参照して以下に詳しく説明する。図示の如く、流入する流体送給物39が入口14を通してハウジング12に入る。流体送給物はろ過カートリッジ18、20、22、24、26にその上面及び底面位置から流入し、次いで送給物スペーサ層28に入る。流体送給物をろ過カートリッジにその上面及び底面位置から流入させると、送給物流路に沿った所望されざる圧力損失が流体送給物を上面または低面のみから流入させる場合と比較して低減される。浸透物スペーサ層32の上面30はハウジング12の内側からシール31によりシールされる。ろ過層33及び34は送給物スペーサ層28と浸透物スペーサ層32との間に位置決めされる。送給物スペーサ層28及び浸透物スペーサ層32の各底面29及び35はシール36及び37によりシールされる(図7)。送給物スペーサ層28はサイドシール43及び45を含む。浸透物スペーサ層32はサイドシール42を含む。ろ過カートリッジ18、20、22、24、26の各外側面は流体不透過性シート38によりシールされる(図2)。流入する流体送給物39は、各ろ過カートリッジ18、20、22、24、26間の空間40を充填し(図2)、次いで、螺旋巻きした送給物スペーサ層28を通して矢印43で示す如く各ろ過カートリッジ内に入る。送給物39はろ過層33及び34を通過した後、浸透物44を形成する。浸透物44は、矢印46で示す如く浸透物スペーサ層32内の螺旋通路を移動し、コア50の孔48を通過する。浸透物は、更に通路52(図2)を通過した後、矢印54で示す如く出口16から出る。
【0010】
ろ過層はV字状フィルタシートから成るフィルタ層を1層以上含み得る。各フィルタ層はV字交差部55(図3)位置で相互に接着され得る。2つ以上のV字状フィルタシートを相互接触状態に位置決めしてろ過層33及び34とするのが好ましい。
図4を参照するに、本発明の螺旋巻き多層フィルタカートリッジの形成プロセスが示される。ろ過層33及び34は接着剤等を使用してV字交差部位置に形成される。ろ過層33はロール57から巻き解かれ、ろ過層34はロール58から巻き解かれる。送給物スペーサ層28はロール59から巻き解かれ、浸透物スペーサ層32はロール60から巻き解かれる。送給物スペーサ層28及び浸透物スペーサ層32は図7に示す如くシールされる。
【0011】
V字交差部55はコア50に接着される。あるいは、浸透物スペーサ層が、孔48を通しての浸透物流れを促進させつつコア50への接着を促進させる、離間した複数のシール61及び62を含み得る。
本発明の、単一のスペーサ層を有するろ過カートリッジは、その螺旋巻き方向の長さが約61cm(約24インチ)未満、好ましくは約41〜51cm(約16〜20インチ)、最も好ましくは約46cm(約18インチ)である場合に有効ろ過を提供する。
図5を参照するに、第2浸透物スペーサ層32bが示される。第2浸透物スペーサ層32bは浸透物スペーサ層32に隣接して位置決めされ、図4に示す如くロール状とされている。これにより、浸透物スペーサ層厚が増大され、浸透物流れが促進される。
【0012】
送給物スペーサ層及び浸透物スペーサ層は、大きな空隙容量を持つ織ったまたは不織の何れかの材料を含み得る。前記材料は、高い入口圧力を必要とすることなく、流体のエッジ方向流れに関して適度に高い流量における浸透性を有する。また、スペーサ層は、十分な流量を許容するには十分であるが、所定のフィルタ容量のためのフィルタ表面積及びフィルタ容量を実質的に減少させない程度の厚さを有するべきである。スペーサ層の厚さは約0.05〜0.07cm(約0.020〜0.030インチ)であることが好ましい。好適なスペーサ層は2組の平行なプラスチックストランドにより形成したネットを含み、前記2組のプラスチックストランドの一方は他方のプラスチックストランドの1表面上に、各プラスチックランド組がある角度で交差する配列下に横設される。好適なネットは、E.I.DuPont deNemours & Co.より“Vexar”の商標下に入手可能である。前記ストランドは一般に円形断面を有する。前記ストランドは、2つの平坦なフィルタ層に隣り合わせて配置すると、各ストランド組が隣り合うフィルタ層の一方のみと接触し、かくして流体はスぺーサ層内及び隣り合う2つのフィルタ層間内を容易に通過し得る。
【0013】
フィルタ層は、フィルタを破損することなくコアの周囲に巻装し得るに十分な柔軟性を有すべきである。フィルタ材料はその多くが当該目的上十分な柔軟性を有するが、幾つかのものは脆過ぎて使用に耐えず、多層ウェブに組み込む以前に改変する必要がある。それらのフィルタ材料には、セルロースアセテートやセルロースニトレート等のセルロースエステルから形成され、平均孔径が約0.025マイクロメートルもの小ささであるサブマイクロメートル範囲に渡る微孔質限外ろ過フィルタが含まれる。当該微孔質限外ろ過フィルタはMillipore Corporationにより市販され、Celolate(商標名)フィルタ、Duralon(商標名)フィルタ、Mitex(商標名)フィルタ、Polyvic(商標名)フィルタ、Solvinert(商標名)フィルタ、Microweb(商標名)フィルタ、が含まれる。これらのフィルタを十分柔軟化させるためには、ポリエステル繊維などから形成した織布等の2枚の柔軟な多孔質材料間に、ポリエステル、ポリエチレンまたはポリアミド繊維等のヒートシール可能な樹脂繊維で形成したネット状接着剤と共に積層し得る。しかしながら、本発明は限外ろ過フィルタ層又は微孔質フィルタ層の使用に限定されるものではなく、図示された所望形態に巻装し得る任意の平坦なフィルタ媒体の使用を含むものとする。
使用する接着剤の形式及び量は、塗布した接着剤はフィルタ層内に侵入するがフィルタ層を貫通はせず、かくして、フィルタ層の一方の表面をシールしても反対側の表面はシールしないようなものである。エポキシ又はポリウレタンベースの接着剤が所望のシールを提供するために特に有益である。
【符号の説明】
【0014】
10 過装置
12 ハウジング
14 入口
16 出口
18 ろ過カートリッジ
28 送給物スペーサ層
29 底面
30 上面
31 シール
32 浸透物スペーサ層
32b 第2浸透物スペーサ層
33、34 ろ過層
36 シール
38 流体不透過性シート
39 流体送給物
40 空間
42、43 サイドシール
44 浸透物
48 孔
50 コア
52 通路
55 V字交差部
57、58、59、60、61 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過装置であって、
入り口及び出口を有するハウジングと、
入り口手段及び出口手段を有する複数のろ過カートリッジにして、穴あけコアと、螺旋巻きした多数の層材料にして、対向する2つの螺旋端部表面を有する2つの層材料にして、1枚のフィルタシートを折り曲げて形成した2つの平坦なフィルタ層を含む層材料と、
浸透物スペーサ層及び送供物スペーサ層と、
各フィルタ層における、前記浸透物スペーサ層と接触する第1表面及び、各フィルタ層における、前記送供物スペーサ層と接触する第2表面と、
を含み、
前記送供物スペーサ層が、流体送供物の前記送供物スペーサ層への流入及び前記フィルタ層の通過を許容するべくシールされ、
前記浸透物スペーサ層が、前記フィルタ層からの浸透物を受け、受けた浸透物を前記コア内に配行するべくシールされ、
ハウジング入り口の流体送供物がろ過カートリッジにその上面及び底面から流入し、次いで当該ろ過カートリッジの送供物スペーサ層に入るろ過装置。
【請求項2】
フィルタカートリッジ数が5及び6の間である請求項1のろ過装置。
【請求項3】
浸透物スペーサ層の螺旋巻き方向での長さが約61cmである請求項1のろ過装置。
【請求項4】
浸透物スペーサ層の螺旋巻き方向での長さが約41〜51cmである請求項1のろ過装置。
【請求項5】
浸透物スペーサ層の螺旋巻き方向での長さが約46cmである請求項1のろ過装置。
【請求項6】
平坦なフィルタ層が限外ろ過膜である請求項1のろ過装置。
【請求項7】
平坦なフィルタ層が微孔質膜である請求項1のろ過装置。
【請求項8】
各ろ過カートリッジのコアがハウジングの出口に通路により接続される請求項1のろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86220(P2012−86220A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281491(P2011−281491)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2010−545837(P2010−545837)の分割
【原出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(390019585)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (212)
【Fターム(参考)】