説明

多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法

【課題】多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法が開示される。
【解決手段】本発明は、現在標準との互換性を維持したまま、多重ホップ通信を支援するために標準上の命令語及び応答メッセージ形態は変更せず、既存に使用しなかった一部フィールドを使用して陰影地域のタッグが周辺の他のタッグを通じた多重ホップ通信方式でリーダーとの通信が可能であるようにした港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾でコンテナー及び各種装備の効率的な処理及び状態管理のためのものであり、各物品に433MHz能動型RFIDタッグを付着して、リーダーでタッグ情報を収集するとき、タッグの認識率を向上させることができる港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾物流で用いられる代表的なRFIDシステムは、433MHz基盤の能動型RFID通信システムであり、ISO/IEC18000−7の国際標準を使用している。そして、該当標準は大きく、ブロードキャスト命令語及びP2P(peer−to−peer)命令語に分けることができるリーダーの各種命令語パケットを定義し、これに対するタッグの応答メッセージ形態を定義する。米国では輸出入物流の流れを追跡して貨物の保安を強化するために、電子封印(e−Seal)タッグを研究しており、米国及びヨーロッパのいくつかの港湾では港湾内コンテナー及び装備に433MHz能動型タッグを付着して、各物品の識別と船積み及び荷積み作業の自動化に示範利用している。
【0003】
現在、港湾で物品を識別して追跡するために使用する方法は、作業者がPDAなどの端末機を持って手作業で物品の存在可否と状態を把握して港湾に設置された無線ランを通じてサーバーに情報を伝達する方式である。熟練された作業者であれば、この方式は正確な情報を収集、維持することができるという長所があるが、高い人件費を必要とし、時々刻々変化する物品の状態を迅速に把握することができないという可能性がある。
【0004】
最近、注目を浴びているRFID技術は、このような方式の短所を解消することができる。即ち、コンテナーのそれぞれにRFIDタッグを付着した後、リーダーを用いて収集命令を送信すると、無線ラジオを通じて各タッグの情報を自動に収集することができる。これは物品の破損や盗難のような予測できない状況にも事々作業者が確認する必要なし、迅速に対応することができる。
【0005】
図1は、現在RFID標準システムの動作を説明するための図である。
【0006】
図1を参照して説明すると、リーダー100の命令語は、無線を通じて周辺のタッグに伝達され、タッグは自分の情報を含む応答メッセージを更にリーダー100に伝達する。そうすると、リーダー100は、タッグの応答メッセージをサーバー400を通じて管理者端末機500に提供することにより、管理者は遠距離で物品の存在可否と状態を把握することになる。しかし、たまに周辺の妨害物300のせいでリーダー100の信号を受けることができないタッグ200が存在することがあるが、このような場合、管理者は物品の存在可否及び状態の把握が困難になる。
【0007】
例えば、タッグ5(200)はリーダー100との間に電波を妨害する壁300が存在する場合、前記タッグ5(200)はリーダー100の信号を受けることができず、このような理由でリーダー100に応答することができなくなる。従って、リーダー100はタッグ5(200)の存在を認識することができない。
【0008】
このようにリーダー100の信号が届かない地域を陰影地域と言うが、コンテナー港湾には金属性のコンテナーが4段5列に積載されており、クレーンやヤードトラクタのような大型装備も散在しているので、これらの電波妨害による陰影が発生する確率が高い。特に、港湾物流で使用される433MHz能動型タッグの認識距離は50〜100メートルに至ると知られているが、港湾のような特殊環境では実際にこれより非常に短く、物品が積載された形態によって認識距離が不規則である。
【0009】
このようにリーダー100でタッグの情報が全部完璧に認識されないと、全体港湾物流の効率性に大きな問題を起こすことができる。すなわち、種類、行き先、及び存在可否も明確に把握されないコンテナーは、全体コンテナーの野積形態と船積み及び荷積みスケジューリングに悪い影響を及ぼす。これは、現在港湾物流用433MHz能動型タッグ通信の国際標準(ISO/IEC 18000−7)がリーダーとタッグとの間の直接通信だけのために定義されており、リーダーとタッグとの間の多重ホップ通信を支援するには適合しないので発生される。
【0010】
従って、通信陰影や無線通信の不安定性によって認識されないタッグ情報は、更に手作業を通じて記録しなければならないので、既存の無線ランを使用する環境に対して大きな長所を有するのが難しい。よって、RFID技術が港湾物流自動化に寄与するためには、通信陰影問題を解決することができる方法が必要である。
【0011】
陰影発生問題を解決することができる現在の技術としては、次のような方法がある。
【0012】
第一、最も容易に考えられる方法で、陰影がよく発生する場所に固定型無線リーダーを増設することができる。しかし、この方法には、いくつの問題がある。最も大きな問題点は、港湾内で固定型リーダーを設置することができる場所が制限されているということである。港湾には稠密に野積されたコンテナーの間にヤードトラクターやフォークリフトなどのための移動経路を確保しなければならず、所々にクレーン、リフトなどの装備のための空間も必要なので、リーダーを設置することができる場所は野積場に設けられた照明塔程度である。また、固定型リーダーが十分が設置されたとしても、金属性の大型装備とコンテナーによってタッグとの円滑な通信が妨害を受ける場合が継続発生することになる。
【0013】
第二、移動型リーダーの開発と導入である。移動型リーダーは、港湾内の作業車両に付着され車両から持続的な電源の供給を受けながら、周辺にあるタッグの情報を収集する。しかし、このような移動型リーダーにも問題点はある。まず、特定地域での持続的な通信陰影地域問題が挙げられる。接近が難しい地域、例えば、作業車両の移動経路から最も遠い地域、最も高い位置に積載されたコンテナーに付着されたタッグの場合、移動型リーダーも通信が不可能である可能性がある。また、リーダーが継続動くことになるので、ネットワークトポロジーの頻繁な変化によるメッセージの負荷が発生して、ネットワークの安定性の確保が難しい。また、移動型リーダーは固定型リーダーより価格も2〜3倍であり、価格も移動型リーダーの更に他の問題点であると言える。
【0014】
このように、港湾物流環境で現在RFIDシステムの限界は、不規則的に発生する陰影地域問題を解決することができないということである。勿論、リーダーをより稠密に設置する方法もあるが、この場合、費用も高くなり、リーダー信号間の衝突であるという新しい問題も発生することができる。また、港湾には、コンテナー野積と装備の移動及び作業のための空間が確保されなければならないので、リーダーを設置することができる空間に制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明は前記のような問題点を解決するためのもので、現在標準との互換性を維持したまま、多重ホップ通信を支援するために標準上の命令語及び応答メッセージ形態を変更せず、既存に使用しなかった一部フィールドを使用して陰影地域のタッグが周辺の他のタッグを通じた多重ホップ通信方式でリーダーとの通信が可能であるようにした港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法を提供することにその目的がある。
【0016】
本発明の他の目的は、陰影地域のタッグが周辺の他のタッグを通じた多重ホップ通信方式でリーダーと通信することができるようにすることにより、固定型リーダーを新たに設置しなければならない問題、または高価の移動型リーダーを購入しなければならない問題などを避けることができるようにする多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法を提供することにある。
【0017】
本発明の更に他の目的は、現在港湾物流RFID通信標準であるISO/IEC18000−7で多重ホップ通信が可能であるようにプロトコルを修正して陰影地域のタッグが周辺の他のタッグを通じた多重ホップ通信方式でリーダーとの通信が可能であるようにして港湾でコンテナーや各種装備の識別と状態を効果的を追跡するためのRFID装置を運営する通信プロトコルが新たな種類を有する多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記のような目的を達成するための本発明による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステムの特徴は、リーダーとタッグとを含む港湾物流用能動型RFIDシステムにおいて、前記タッグは、リーダー又は他のタッグからリーダーのP2P命令語またはブロードキャスト命令語を受信する命令語受信部と、前記命令語受信部にリーダーのP2P命令語又はブロードキャスト命令語を送信したリーダー又は他のタッグに自分の応答メッセージを送信する応答メッセージ送信部と、前記命令語受信部から受信されたリーダーのP2P命令語又はブロードキャスト命令語を他のタッグに再送信する命令語伝達部と、前記命令語伝達部を通じてリーダーのP2P命令語又はブロードキャスト命令語を送信したタッグから応答メッセージを受信する応答メッセージ受信部と、前記命令語受信部から受信された命令語がブロードキャスト命令語である場合、ブロードキャスト命令語に自分のタッグIDとリーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値を追加してブロードキャスト命令語を再構成して命令語伝達部に提供する命令語再構成部と、前記命令語受信部を通じて受信されたブロードキャスト命令語が他のタッグから伝送された命令語である場合、応答メッセージに他のタッグから再伝送された命令語であるかを区別する情報と、リーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値と、自分に命令を伝達したタッグのIDを追加して応答メッセージを再構成して応答メッセージ受信部に提供する応答メッセージ再構成部と、前記応答メッセージ受信部から受信される応答メッセージを送信する下位タッグを子タッグとして記録し、命令語受信部から受信されるブロードキャスト命令語を送信する上位タッグを親タッグとして記録して、ツリー形態のネットワークトポロジーを保存する子テーブルと、を含むことにある。
【0019】
前記のような目的を達成するための本発明による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法の特徴は、リーダーとタッグとを含む港湾物流用能動型RFID通信方法において、前記タッグは、(a)リーダー又は他のタッグからブロードキャスト命令語が受信されると、前記ブロードキャスト命令語に自分のタッグIDとリーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値を追加してブロードキャスト命令語を再構成する段階と、(b)前記再構成されたブロードキャスト命令語を下位タッグに伝送する段階と、(c)前記受信されたブロードキャスト命令語が他のタッグから受信された命令語である場合、標準応答メッセージに他のタッグが再伝送した命令語であるかを区別する情報と、リーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値と、自分に命令を伝達したタッグのIDを追加して応答メッセージを再構成する段階と、(d)前記再構成された応答メッセージを前記ブロードキャスト命令語を送信したタッグに伝送する段階と、(e)下位タッグから再構成された応答メッセージを受信すると、応答メッセージを送信する下位タッグを子タッグとして記録し、命令語受信部から受信されるブロードキャスト命令語を送信する上位タッグを親タッグとして記録してツリー形態の子テーブルを生成する段階と、(f)命令語受信部を通じて受信されるリーダーのP2P命令語をタッグ間の多重ホップ通信方式を利用して行う段階と、を含むことにある。
【0020】
好ましく、前記(a)段階は、既存のTag IDフィールドに命令語を再放送する第1タッグのIDを含めてRebroadcast Tag IDとして使用する段階と、前記ブロードキャスト命令語のCommand Type内使用されないビットのうち、2つをリーダーからいくつのホップを通過してきたかを示すレベル値として追加する段階と、を含むことを特徴とする。
【0021】
好ましく、前記(c)段階は、標準応答メッセージのうち、最上位4ビットであるMode Fieldに他のタッグが再伝送した命令語であるかを区別することができる情報を追加する段階と、受信されたブロードキャスト命令語がリーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値を前記Mode Field以後2ビットに追加する段階と、応答メッセージのDataフィールドの最後4バイトに自分に命令を伝達したタッグのIDを追加する段階と、を含むことを特徴とする。
【0022】
好ましく、前記(c)段階は、リーダーの直前にあるタッグがリーダーに応答メッセージを伝達する前に前記追加されたタッグIDを削除することを特徴とする。
【0023】
好ましく、前記(f)段階は、前記受信されるP2P命令語が自分である第1タッグを目的地とするP2P命令語である場合、他のタッグと関係なく応答メッセージをリーダーに送信して作業を終了することを特徴とする。
【0024】
好ましく、前記(f)段階は、(f1)前記受信されるP2P命令語が自分ではない他のタッグを目的地とするP2P命令語である場合には、受信したP2P命令語の目的地タッグが自分の子テーブルの内に存在するかを確認する段階と、(f2)前記確認結果、存在すると、受信したP2P命令語を子タッグに伝送する段階と、(f3)前記(f1)、(f2)過程を繰り返してP2P命令語を目的地タッグまで伝送する段階と、(f4)前記目的地タッグから応答メッセージが受信されると、受信された応答メッセージをリーダーに伝達する段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法は、次のような効果がある。
【0026】
多重ホップRFIDリーダータッグ間の通信が可能であるように設定することにより、港湾環境にRFIDシステムの導入に妨害になった陰影地域問題を別途の施設費用なしに解決することができる。
【0027】
港湾物流環境でRFIDシステムが電撃的に現在の無線ランを代替することにより、物品に人が事々に接近して確認する必要がなくなり、物流処理速度が向上され、人件費が節減されるという効果がある。
【0028】
第三、盗難や破損のような予想できない状況に迅速に対応することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】現在RFID標準システムの動作を説明するための図である。
【図2】本発明の実施例による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステムのネットワーク形態を示す図である。
【図3】このような機能を行うことができるように具現されたタッグの構成を示すブロック図である。
【図4】図3の命令語再構成部から受信されたブロードキャスト命令語を再構成した命令語形式を示す図である。
【図5】図3の応答メッセージ再構成部でタッグから他のタッグに送信する応答メッセージの形式を示す図である。
【図6】図3の子テーブルの構造及びこれを説明するための図である。
【図7】本発明の実施例による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法でブロードキャスト命令語を処理しながら、ツリー基盤のネットワークトポロジーを構成する流れ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム及びその通信方法の好ましい実施例を、添付した図面を参照して説明する。
【0031】
図2は、本発明の実施例による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステムのネットワーク形態を示す図である。
【0032】
図2を参照して説明すると、点線円10は、リーダー100の無線ラジオ到達範囲を示し、実線円20は、タッグ5(210)のラジオの伝送範囲を示す。そして、タッグ5(210)の場合、リーダー100と相互の通信範囲を外れるので、既存標準の方法では通信することができず、タッグ3又はタッグ4がリーダー命令語と応答メッセージを中継しなければならない。また、タッグ6(200)の場合にもリーダー200との間に電波進行を妨害する壁300があって、リーダー100と直接通信を不可能であり、タッグ2を通じてリーダーと通信しなければならない。
【0033】
このため、前記タッグは、リーダーの命令語を陰影地域タッグに伝達するモジュールと、他のタッグの応答メッセージをリーダーの方向に伝達するモジュールが必要である。そして、命令語と応答メッセージの移動方向を決定するためのツリー基盤のネットワークトポロジーを自動構成する技術も必要である。
【0034】
図3は、このような機能を行うことができるように具現されたタッグの構成を示すブロック図である。
【0035】
図3のように、1つのタッグは、命令語受信部210、応答メッセージ送信部220、命令語伝達部230、応答メッセージ受信部240、命令語再構成部250、応答メッセージ再構成部260、及びツリー基盤の子テーブル270を含む。
【0036】
この際、1つのタッグは場合によって、目的地であるタッグがリーダーの命令語を直接受けることができる位置にある場合(タッグ1、タッグ2)は、リーダー100の命令語に直接応答することで終了されることもあり、目的地であるタッグがリーダーの命令語を直接受けることができない位置にある場合(タッグ5、タッグ6)は、リーダー100と前記タッグ(タッグ5、タッグ6)の間でパケットの中継役割を行うこともある。
【0037】
一方、リーダーの命令語は、大きく、目的地タッグに特定命令を指示するか、目的タッグの状態情報を要請するときに使用されるP2P(Peer−To−Peer)命令語と、リーダー100の周辺のタッグを収集するときに使用するブロードキャスト命令語とに分けることができ、タッグは命令語受信部301から受けたリーダー命令語によって次の3つの場合に分けられる。
【0038】
まず、一番目の場合は、命令語受信部301から受けたリーダー100の命令が該当タッグを目的地とするP2P命令語である。この場合は、他のタッグと関係なく応答メッセージ送信部302を通じてすぐ応答メッセージをリーダー100に送信して作業を終了する。
【0039】
二番目の場合は、命令語受信部301から受けたリーダー100の命令が自分ではない他のタッグに向かわなければならないP2P命令語である。この際、受信したP2P命令語の目的地タッグが自分の子テーブル270の内に存在すると、受信された命令語を命令語伝達部230を通じて自分の子タッグの命令語受信部210に伝送する。以後、応答メッセージ受信部240を通じて目的地タッグから応答メッセージが受信されると、このメッセージを応答メッセージ送信部220を通じてリーダー100に伝達する。また、受信したP2P命令語の目的地タッグが自分の子テーブル270の内にいないと、無視する。参考として、前記子テーブル270の構成は後述する。
【0040】
三番目の場合は、命令語受信部301から受けたリーダー100の命令がブロードキャスト命令語の場合である。この場合は、応答メッセージ再構成部260を通じて自分の応答メッセージを作って応答メッセージ送信部220を通じて命令語を送信したリーダー100や他のタッグに応答した後、更に命令語再構成部250を通じて受信された命令語を再構成して命令語伝達部230を通じて再放送する。
【0041】
図4は、図3の命令語再構成部から受信されたブロードキャスト命令語を再構成した命令語形式を示す図である。
【0042】
図4のように、命令語再構成部250を通じて再構成された命令語は、現在標準であるISO/IEC 18000−7と基本形態は同じであり、ブロードキャスト命令語伝送のときに使用されない2つのフィールドに情報を追加した。
【0043】
即ち、既存のTag IDフィールドに命令語を再放送するタッグのIDを含めてRebroadcast Tag ID610として使用し、Command Type620の内に使用されないビットのうちに3番、4番のビットの2つをリーダー100からいくつのホップを通過してきたかを示すレベル621値として定義する。この際、リーダー100から直接受けた命令語はレベルが0で、1ホップを通過する度に前記レベル621の値が1ずつ増加する。
【0044】
一方、命令語に対する応答メッセージは、リーダー100に直接応答する場合は、当然に標準に提示されたメッセージ形式に従うが、上位の他のタッグに送信する応答メッセージは、いつくの情報が追加されるべきである。即ち、ISO/IEC 18000−7標準に提示された、リーダーの命令語に対するタッグの応答メッセージのうち、最も上位の2バイトはTag Statusであるが、他のタッグに送信する応答メッセージではこの内容が少し変わらなければならない。これは図5に示した。
【0045】
図5は、図3の応答メッセージ再構成部でタッグから他のタッグに送信する応答メッセージの形式を示す図である。
【0046】
図5を参照して説明すると、リーダーの命令語に対するタッグの応答メッセージのうち、最上位4ビットであるMode Field710は、受信した命令語がブロードキャスト命令語であるか、P2P命令語であるかを示すもので、本発明では前記Mode Field710にRelay Command711という値を1つ追加して他のタッグが再伝送した命令語を区別することができるようにする。
【0047】
そして、前記Mode Field710以後、2ビット720は本来使用しない部分であるが、この2ビットを利用して命令語に含めていたレベル720値を含める。参考として、前記レベル720の値は、命令語受信部210を通じて入力される命令語のCommand Type620に保存されたレベル621値をそのまま利用する。前記レベル720値は、命令語がいくつのホップを通過して自分に到着したかを示すので、結局、この応答メッセージがリーダー100に到達するためにいくつのホップを通過しなければならないかを知らせる。
【0048】
そして、この応答メッセージが誰に送信されるかを示すために、標準の応答メッセージに存在する可変長のDataフィールド730の最後4バイトに自分に命令語を伝達したタッグのIDを含める。このタッグIDはリーダーの直前にあるタッグがリーダー100に応答メッセージを伝達する前に削除するようにすることにより、タッグ間の通信プロトコル及びソフトウェアのみに最小限の変更を与え、リーダー100との通信においては現在標準との互換性の維持のために変更されないようにする。
【0049】
最後に、各タッグは、自分が誰に命令語を伝達しなければならないかを知るべきである。これはブロードキャスト命令語を伝送するとき、下位タッグの応答メッセージを見て、子テーブル600を構成することにより解決することができる。前述したように、ブロードキャスト命令語の伝達を受けたタッグは、これを伝達したタッグを親タッグとして記録して応答メッセージを送信する。
【0050】
例えば、図6(a)のように、タッグ5はタッグ2に応答メッセージを送信し、タッグ8及びタッグ9はタッグ5に応答メッセージを送信する方式である。そうすると、タッグ2はタッグ5のメッセージを受けるとき、タッグ5を子テーブルに記録し、タッグ8及びタッグ9のメッセージを更にタッグ5から伝達を受けるとき、タッグ8及びタッグ9をテーブルに記録することになる。このように記録されたタッグ2の子テーブルを図6(b)に示している。
【0051】
図6(b)のように、子テーブルには目的地タッグ毎に次タッグを示すフィールドがあって、命令語を誰に伝達しなければならないかがわかる。即ち、この子テーブルのおかげて、タッグ2はタッグ5又はタッグ8及びタッグ9に向かうP2P命令語を受けたとき、これをタッグ5に伝達しなければならないと判断することができる。
【0052】
すべてのタッグがこのような子テーブルを維持することにより、図6(a)のようなリーダーをルートとするツリー形態のネットワークトポロジーを構成することになる。
【0053】
このように構成された本発明による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステムの動作を添付した図面を参照して詳細に説明すると次のようである。図1乃至図6(a)(b)と同じ参照符号は、同じ機能を行う同じ部材を示す。
【0054】
図7は、本発明の実施例による多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法でブロードキャスト命令語を処理しながらツリー基盤のネットワークトポロジーを構成する流れ図である。
【0055】
図7を参照して説明すると、まず、第1タッグは命令語受信部210を通じてリーダーのブロードキャスト命令語を受信すると(S10)、応答メッセージ再構成部260を通じて自分の応答メッセージを再構成して応答メッセージ送信部220を通じて前記ブロードキャスト命令語を送信した上位第2タッグ又はリーダーに応答メッセージを送信する(S20)。
【0056】
この際、前記応答メッセージの再構成は、まず、第1タッグに受信されたブロードキャスト命令語が第2タッグから伝送された命令語である場合、応答メッセージ再構成部260を通じて応答メッセージのうち、最上位4ビットであるMode Field710にRelay command711という値を1つ追加して他のタッグが再伝送した命令語であるかを区別することができるようにする。そして、受信されたブロードキャスト命令語のCommand Type620に保存されたレベル621値を前記Mode Field710以後の2ビット720に保存して再構成された応答メッセージがリーダー100に到達するためにいくつのホップを通過しなければならないかがわかるようにする。そして、応答メッセージのDataフィールド730の最後4バイトに自分に命令を伝達したタッグのID、即ち、ここでは前記第2タッグのIDを追加してこの応答メッセージが誰に送信されるかがわかるようにする。この際、前記追加されるタッグIDはリーダー100の直前にあるタッグがリーダー100に応答メッセージを伝達する前に削除する。
【0057】
続いて、第1タッグは命令語再構成部250を通じて前記受信されたブロードキャスト命令語を再構成した後、命令語伝達部230を通じて下位タッグに伝達する(S30)。
【0058】
この際、前記ブロードキャスト命令語の再構成は、既存のTag IDフィールドに命令語を再放送する第1タッグのIDを含めてRebroadcast Tag ID610として使用し、Command Type620内使用されないビットのうち、3番4番ビットをリーダー100からいくつのホップを通過してきたかを示すレベル621値として定義する。この際、リーダー100に直接受けた命令語はレベルが0で、1ホップを通過する度に前記レベル621値が1ずつ増加する。
【0059】
そして、前記第1タッグは下位タッグから前述したように再構成された応答メッセージを受信すると(S50)、応答メッセージを送信する下位タッグを子タッグとして記録し、命令語受信部から受信されたブロードキャスト命令語を送信する上位タッグを親タッグとして記録してツリー形態の子テーブルを生成する(S60)。このように生成された子テーブルには目的地タッグ毎に次タッグを示すフィールドがあって、命令語を誰に伝達しなければならないかがわかることになる。
【0060】
そして、応答メッセージが到着するのに必要な最大時間を意味するタイマーをリセットする(S40)。
【0061】
続いて、タイマーの最大時間の間、更に存在するかも知れない新しい子タッグの応答を待機する(S70)。そして、前記タイマーの最大時間が完了されるまで、応答メッセージを受けなければ、これ以上の子タッグはないと判断して、周辺タッグIDの収集を終了する(S80)。
【0062】
以後、第1タッグは命令語受信部210を通じて受信されるリーダーのP2P命令語を受信すると、その目的地タッグが自分の子テーブルに含まれているかを観察し、仮に、自分の子であれば、その目的地タッグに行くための次ホップタッグに伝送する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特徴請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
100 リーダー
300 壁
210 命令語受信部
220 応答メッセージ送信部
230 命令語伝達部
240 応答メッセージ受信部
250 命令語再構成部
260 応答メッセージ再構成部
270 ツリー基盤子テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダーとタッグとを含む港湾物流用能動型RFIDシステムにおいて、前記タッグは、
リーダー又は他のタッグからリーダーのP2P命令語またはブロードキャスト命令語を受信する命令語受信部と、
前記命令語受信部にリーダーのP2P命令語又はブロードキャスト命令語を送信したリーダー又は他のタッグに自分の応答メッセージを送信する応答メッセージ送信部と、
前記命令語受信部から受信されたリーダーのP2P命令語又はブロードキャスト命令語を他のタッグに再送信する命令語伝達部と、
前記命令語伝達部を通じてリーダーのP2P命令語又はブロードキャスト命令語を送信したタッグから応答メッセージを受信する応答メッセージ受信部と、
前記命令語受信部から受信された命令語がブロードキャスト命令語である場合、ブロードキャスト命令語に自分のタッグIDとリーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値を追加してブロードキャスト命令語を再構成して命令語伝達部に提供する命令語再構成部と、
前記命令語受信部を通じて受信されたブロードキャスト命令語が他のタッグから伝送された命令語である場合、応答メッセージに他のタッグから再伝送された命令語であるかを区別する情報と、リーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値と、自分に命令を伝達したタッグのIDを追加して応答メッセージを再構成して応答メッセージ受信部に提供する応答メッセージ再構成部と、
前記応答メッセージ受信部から受信される応答メッセージを送信する下位タッグを子タッグとして記録し、命令語受信部から受信されるブロードキャスト命令語を送信する上位タッグを親タッグとして記録して、ツリー形態のネットワークトポロジーを保存する子テーブルと、を含むことを特徴とする多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム。
【請求項2】
前記命令語受信部は、既存のTag IDフィールドに命令語を再放送する第1タッグのIDを含めてRebroadcast Tag IDとして使用し、Command Type内使用されないビットのうち、2つをリーダーからいくつのホップを通過してきたかを示すレベル値として定義することを特徴とする請求項1記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム。
【請求項3】
前記レベル値はリーダーから直接受けた命令語のレベルが0であり、1ホップを通過する度に前記レベル値が1ずつ増加することを特徴とする請求項1記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム。
【請求項4】
前記応答メッセージ再構成部は、応答メッセージのうち、最上位4ビットであるMode FieldにRelay commandという値を1つ追加して他のタッグが再伝送した命令語であるかを区別し、前記命令語再構成部で追加されたレベル値を前記Mode Field以後2ビットに保存し、応答メッセージのDataフィールドの最後4バイトに自分に命令を伝達したタッグのIDを追加することを特徴とする請求項1記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム。
【請求項5】
前記応答メッセージ再構成部は、リーダーの直前にあるタッグがリーダーに応答メッセージを伝達する前に前記追加されたタッグIDを削除することを特徴とする請求項4記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFIDシステム。
【請求項6】
リーダーとタッグとを含む港湾物流用能動型RFID通信方法において、前記タッグは、
(a)リーダー又は他のタッグからブロードキャスト命令語が受信されると、前記ブロードキャスト命令語に自分のタッグIDとリーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値を追加してブロードキャスト命令語を再構成する段階と、
(b)前記再構成されたブロードキャスト命令語を下位タッグに伝送する段階と、
(c)前記受信されたブロードキャスト命令語が他のタッグから受信された命令語である場合、標準応答メッセージに他のタッグが再伝送した命令語であるかを区別する情報と、リーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値と、自分に命令を伝達したタッグのIDを追加して応答メッセージを再構成する段階と、
(d)前記再構成された応答メッセージを前記ブロードキャスト命令語を送信したタッグに伝送する段階と、
(e)下位タッグから再構成された応答メッセージを受信すると、応答メッセージを送信する下位タッグを子タッグとして記録し、命令語受信部から受信されるブロードキャスト命令語を送信する上位タッグを親タッグとして記録してツリー形態の子テーブルを生成する段階と、
(f)命令語受信部を通じて受信されるリーダーのP2P命令語をタッグ間の多重ホップ通信方式を利用して行う段階と、を含むことを特徴とする多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法。
【請求項7】
前記(a)段階は、
既存のTag IDフィールドに命令語を再放送する第1タッグのIDを含めてRebroadcast Tag IDとして使用する段階と、
前記ブロードキャスト命令語のCommand Type内使用されないビットのうち、2つをリーダーからいくつのホップを通過してきたかを示すレベル値として追加する段階と、を含むことを特徴とする請求項6記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法。
【請求項8】
前記レベル値は、リーダーから直接受けた命令語のレベルが0で、1ホップを通過する度に前記レベル値が1ずつ増加することを特徴とする請求項6記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法。
【請求項9】
前記(c)段階は、
標準応答メッセージのうち、最上位4ビットであるMode Fieldに他のタッグが再伝送した命令語であるかを区別することができる情報を追加する段階と、
受信されたブロードキャスト命令語がリーダーからいくつのホップを通過してきたかによるレベル値を前記Mode Field以後2ビットに追加する段階と、
応答メッセージのDataフィールドの最後4バイトに自分に命令を伝達したタッグのIDを追加する段階と、を含むことを特徴とする請求項6記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法。
【請求項10】
前記(c)段階は、リーダーの直前にあるタッグがリーダーに応答メッセージを伝達する前に前記追加されたタッグIDを削除することを特徴とする請求項9記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法。
【請求項11】
前記(f)段階は、
前記受信されるP2P命令語が自分である第1タッグを目的地とするP2P命令語である場合、他のタッグと関係なく応答メッセージをリーダーに送信して作業を終了することを特徴とする請求項6記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法。
【請求項12】
前記(f)段階は、
(f1)前記受信されるP2P命令語が自分ではない他のタッグを目的地とするP2P命令語である場合には、受信したP2P命令語の目的地タッグが自分の子テーブルの内に存在するかを確認する段階と、
(f2)前記確認結果、存在すると、受信したP2P命令語を子タッグに伝送する段階と、
(f3)前記(f1)、(f2)過程を繰り返してP2P命令語を目的地タッグまで伝送する段階と、
(f4)前記目的地タッグから応答メッセージが受信されると、受信された応答メッセージをリーダーに伝達する段階と、を含むことを特徴とする請求項6記載の多重ホップ通信を有する港湾物流用能動型RFID通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図7】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−178326(P2010−178326A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242509(P2009−242509)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(504457359)プサン ナショナル ユニバーシティー インダストリー − ユニバーシティー コーオペレイション ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】