説明

多重光生物反応器及びそれを利用した光合成微生物培養方法

本発明は、多重光生物反応器及びそれを利用した光合成微生物培養方法に関するもので、詳細には、菌体及び培養液を入れられる一つ以上の菌体成長用培養領域;及び前記菌体成長用培養領域に接して設置し、有用産物を生産できる菌体及び培養液を入れられる一つ以上の有用産物生産用培養領域からなるもので、前記菌体成長用培養領域と有用産物生産用培養領域は、透明板からなる分離装置を利用して分離され、有用物質の生産誘導に充分に強い光が有用産物生産用培養領域を照射した後、前記領域を通過する過程で細胞の生長に適正な光度に下がった光が菌体成長用培養領域に到達するように設置されたことを特徴とする光生物反応器及びそれを利用した光合成微生物培養方法に関するものである。
本発明の多重光生物反応器は、菌体成長と有用な代謝産物生産の最適環境状態が明確な差を示す光合成微生物を培養させられるもので、まず、太陽光または人工光源の光エネルギーを有用産物生産用培養領域の方向に供給することにより菌体内有用な代謝産物を蓄積させる。ここで、菌体成長用培養領域に供給される光エネルギーは有用産物生産用培養領域内菌体自体による相互遮蔽によって菌体成長に適合な光度に減少し、このように減少された光エネルギーを菌体成長用培養領域に供給することにより菌体を成長させられる。
このような装置を利用した光合成微生物の培養方法は、従来の菌体成長用培養槽と有用産物生産用培養槽を各々設置して行なっていた培養を1個の培養槽で調節された光の照射により菌体成長と有用産物生産のための培養を同時に遂行でき、菌体の高濃度速成培養と効果的な有用産物生産が同時に可能になり、相対的に狭い空間で少ない労力で、相対的に高いエネルギー効率で有用物質を生産できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光生物反応器及びそれを利用した光合成微生物の培養方法に関するものである。詳細には、菌体成長と有用な代謝産物生産の最適環境状態が明確な差を示す光合成微生物を培養するための光生物反応器及びそれを利用した光合成微生物の培養方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、国内外的に生命工学の新しい開拓分野として、藻類生物工学(algal biotechnology)に対する関心が高まっている。前記の藻類生物工学は、様々な光合成微生物から多様な高付加価値の有用産物を発見及び分離するもので、このような光合成微生物から得られる有用産物は、高付加価値の抗生剤、ビタミン、生理活性物質等の医薬品及び健康食品;カロチノイド(carotenoids)、ビリプロテイン(biliprotein)等の染料;バイオフロクラント(bioflocculant)、ポリオール(polyols)、炭水化物等の精製化学薬品;オイル、炭化水素等の代替燃料に活用されている。
【0003】
このような光合成微生物中には、菌体成長と有用産物生産がお互いに異なる環境条件を要求することを特徴とする種が知られている。これら光合成微生物から有用産物を得るために一般的に二段階からなる工程を行なっている。第一段階では、菌体成長に適合した培養条件(optimal growth condition)を維持して菌体を成長させ、第二段階では、成長した菌体から有用産物を得るために適合した培養条件(stressed condition)を維持して菌体がそれ以上成長しない静止期(stationary phase)の間、有用産物を生産する。このようにして得られる有用産物は、菌体成長と無関係に生成されることから2次代謝産物(secondary metabolite)または非生長関連産物(nongrowth−associated product)と呼ばれている。
【0004】
このような特徴を有した光合成微生物には、ヘマトココスヘマトコッカス(Haematococcus sp.)、ドウナリエラ(Dunaliella sp.)、クロロコックム(Chlorococcum sp.)、クロレラ(Chlorella sp.)、カサノリ(Acetabularia sp.)、ミクロキスティス(Microcystis sp.)、ネンジュモ(Nostoc sp.)、オシラトリア(Oscillatoria sp.)等がある。その中で特に、ヘマトコッカスは抗酸化剤として有用に使用されているアスタキサンチン(astaxantin)を有用産物として生産できる。
【0005】
例えば、米国特許第5,882,849号および米国特許第6,022,701号で記載されているように、このようなものを基礎として、従来光合成微生物を利用した高付加有用産物の生産方法は、菌体成長用培養槽と有用産物生産用培養槽を各々設置した2段階生物工程からなっている。詳細には、第1工程では菌体成長用培養槽で菌体成長に適合した成長条件(optimal growth condition)を維持する方法で菌体の高濃度速成培養を具現し、第2工程では有用産物生産用培養槽で適正環境条件を維持して前記第1工程で確保したバイオマス(biomass)で有用産物(2次代謝産物)を効果的に生産することからなっている。
【0006】
前記各々設置された2個の培養槽を具備した培養技術は、各々の条件を備えた培養槽を具備し、その目的に適合した成長条件を具現することにより、従来池(pond)形態や外輪(paddle wheel)で培地を循環させる水路(raceway)形態の屋外培養法に比べて高濃度培養が容易で、他の微生物により汚染されることを防ぐことができ有用産物の回収費用を減らせる長所がある。
【0007】
しかし、前記各々設置された2個の培養槽を具備した培養技術は、解決しなければならない様々な問題点を抱えている。詳細には、菌体の成長のための第1工程の培養槽と有用産物の生産のための第2工程の培養槽を各々設置しなければならないため、それによる地代(land cost)や設置費及び運転費が増加し、複雑な操業を行なうことにより高度の熟練した技術者が必要になる。また、それによって光合成微生物から由来した高付加有用産物の生産工程を商用化するのに多くの難しさを抱えているのが実情である。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、前記記述した問題点を解決するためのもので、詳細には、特定光合成微生物を利用して高付加有用産物を生産する場合、内部領域を菌体成長領域と有用産物生産領域に区分した多重光生物反応器を利用することにより、菌体成長のための培養及び有用産物誘導に必要な労動力を減らすことができ、経済的に有用産物を得られる多重光生物反応器及びそれを利用した光合成微生物の培養方法を提供することである。
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、菌体及び培養液を収容できる一つ以上の菌体成長用培養領域;前記菌体成長用培養領域に接して設置し、菌体及び培養液を収容できる一つ以上の有用産物培養領域;及び前記菌体成長用培養領域と有用産物培養領域を分離するために両者の間に形成した透明分離装置を含み、培養のために照射する太陽光または人工光が有用産物培養領域を通過した後、透明分離装置を経て菌体成長用培養領域に到達するようにするために、有用産物培養領域は反応器内の外側に形成し、菌体成長用培養領域は反応器内の内側に形成することを特徴とする光生物反応器を提供することである。
【0010】
また、前記のような菌体成長用培養領域、有用産物培養領域及び透明分離装置を含み、さらに光を照射するための光照射装置からなり、光照射装置を通して照射される光が前記有用産物培養領域を通過した後、透明分離装置を経て菌体成長用培養領域に到達するようにするために、有用産物培養領域は光照射装置と接するように形成し、菌体成長用培養領域は光照射装置と接しないように形成されたことを特徴とする光生物反応器を提供することである。
【0011】
さらに、本発明は、前記多重光生物反応器を利用した光合成微生物の培養方法を提供する。
【0012】
本発明を実施する最良の態様
本発明は、多重光生物反応器を提供する。
【0013】
まず、本発明の多重光生物反応器は、菌体及び培養液を収容できる一つ以上の菌体成長用培養領域と前記菌体成長用培養領域に接して設置し、菌体及び培養液を収容できる一つ以上の有用産物培養領域からなっていて、前記菌体成長用培養領域と有用産物培養領域を分離するために両領域間に形成された透明分離装置を含んでいる。
【0014】
このような光生物反応器の構造により、本発明の多重光生物反応器は光源に近い方に形成した有用産物生産用培養領域に過度の光エネルギーを供給することができ、それにより有用産物生産用培養領域内の特定菌体が高光度の光エネルギーを利用して代謝産物を蓄積するように誘導する。ここで、光エネルギーは前記有用物質生産用培養領域を通過しながら培養液内のバイオマスによる相互効果(mutual shading)の影響で照射面の反対側に低光度の残余光エネルギーとして放出され、前記低光度の残余光エネルギーは、有用産物生産用培養領域と接して多重光生物反応器の内部に設置された菌体成長用培養領域に存在する光合成微生物に供給され菌体成長のための光合成過程を行なうことになる。
【0015】
前記光エネルギーは、下記の数式1に示したようにビアランバート法則(Beer−Lambert’s Law)により光源から遠くなるほど(δ増加)そして培養液内部の菌体濃度が増加するほど(ρ増加)指数的に減少する。
【0016】
(数1)
I=Iexp(−σρδ)
【0017】
前記式中、Iは透過した光の強さ、Iは光源の強さ、σは吸収係数、ρは菌体の濃度、δは菌体が存在する吸収層の厚みを示したものである。
【0018】
ここで、有用産物生産用培養領域を透過しながら招来する光エネルギー減少量は、光源の光度(I)、誘導領域に存在するバイオマスの濃度(ρ)、菌体の大きさ及び色素含量、及び透過距離(light-penetrating depth)δ等に影響を受ける。それで、培養時菌体成長用培養領域に供給される光エネルギー供給量を菌体の成長に適正な水準になるように維持しなければならない。培養時光エネルギー供給量が、少なすぎると有用産物培養領域内で有用産物を蓄積できず、反対に光エネルギー供給量が多すぎると菌体成長用培養領域で菌体成長が阻害されるだけではなく、光合成に使用されない光エネルギーが熱エネルギーに転換され培養液の温度を上昇させる。
【0019】
本発明の多重光生物反応器で培養のために照射する光源としては、太陽光が代表的である。ここで、太陽光が有用産物培養領域を通過した後、前記透明分離装置を経て前記菌体成長用培養領域に到達するようにするために、前記有用産物培養領域を反応器内の外側に形成し、前記菌体成長用培養領域を反応器内の内側に形成する。
【0020】
本発明は、光源として太陽光だけではなく、人工光源の光照射装置を含む。ここで、光照射装置を通じて照射される光が有用産物培養領域を通過した後、透明分離装置を経て菌体成長用培養領域に到達するようにするために、前記光照射装置が有用産物培養領域と接するように形成し、菌体成長用培養領域と接しないように形成する。適用可能な光源としては、蛍光ランプ、ハロゲンランプ、光ファイバー、ネオン管及び発光ダイオード素子等、光合成に適合した光(PAR:Photosynthetically Active Radiation)を発する光源の中から選択した一つ以上のものを使用できる。また、前記光源の運転は、一種類の光源を使用したり二種類以上の光源を複合的に活用したりでき、太陽光を光エネルギー供給源に基本的に利用し、季節的(冬)、時間的(夜間)、気象的(曇りの日)要因及び菌体成長と効果的な代謝産物の蓄積により不足な光エネルギーを追加光源を利用して不充分な光エネルギーを供給する方法も可能である。詳細には、図6、図7と図10に示したように、前記光生物反応器の最外側と最内側には有用産物培養領域を形成し、太陽光が前記最外側の有用産物培養領域に照射して光照射装置が前記最内側の有用産物培養領域に照射するようにする。
【0021】
また、前記光照射装置を個別的な装置として具備するのは、前記装置が断線等の問題発生時に全体光度に影響を与えないようにするためである。
【0022】
このような光源を活用するに際して、光エネルギー供給量及び波長、光エネルギー供給時間及び周期を本発明の多重光生物反応器内に設置した菌体成長用培養領域の菌体成長に適合したり、有用産物生産領域の有用産物生産に適合したりするように調節でき、本発明ではそれに対して限定されない。
【0023】
本発明の光生物反応器は、様々な形態で製作でき、詳細には、直六面体の平面板、円筒形、チューブ形及び立体模型からなる群から選択されるいずれか一つの形態で製作できる。
【0024】
また、光生物反応器は商業的な活用のために培養容量の増加(scale−up)が必須的である。そのために各々の多重光生物反応器を単位装置(unit module)として活用してそれを連続的に設置(stacking)できる。このような複合光生物反応器は必要に応じて平面板形態の光生物反応器と光源をサンドイッチ(sandwitch)形式の1次元的な多重配列が可能で、垂直円筒形態の光生物反応器と光源は、2次元的に配列することが可能で、また、その他可能な3次元的な配列が可能で、全体規模は生物工程規模と工場敷地を考慮して決定することが好ましい。また、設置した単位光生物反応器と光源を除去したり中間連結パイプラインを遮断したりする方法で培養容量を簡単に減少(scale−down)させられる。
【0025】
一方、菌体成長用培養領域と有用産物生産用培養領域の下端部から気体を上向き供給することにより炭素源としての二酸化炭素(CO)の供給と供給培養液の上向き流動を惹起でき、それによって空気浮揚(air−lift)方式とそれに機械的撹拌(impeller, magnetic stirrer等)を追加したタービン(stirred−tank)方式等が使用できる。
【0026】
また、夏期には光源から由来する熱、高い外部温度、菌体代謝熱及び菌体に吸収されない光エネルギーが、熱エネルギーに転換されて培養液の温度が増加し、反対に冬期や夜間には適正温度以下に培養温度が下がり菌体成長及び有用産物の生産を阻害する。したがって、光合成微生物成長及び有用産物の生産に最適な状態に培養液の温度を維持する必要がある場合には、冷却水または温水の熱交換機及び噴霧器(sprayer)を設置したり、日除け幕(sun screen)等を使用して培養温度を調節できる。
【0027】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0028】
第1実施形態は、太陽光を使用した場合の光生物反応器である。
【0029】
図1のa及びbは、外部照射形二重平面板(double flat−plate)形態の多重光生物反応器を示したもので、詳細には、平面板(flat plate)の両側側面に光エネルギー3が供給され、照射面を含む反応器内部領域に有用産物生産用培養領域1を設置し、前記有用産物生産用培養領域1と接して反応器内部に設置され有用産物生産用培養領域を透過した光エネルギーが供給される菌体成長用培養領域2からなる、本発明の一形態である外部照射形二重平面板(double flat−plate)形態の多重光生物反応器を示したものである。
【0030】
図2のa及びbは、外部照射形二重垂直円筒(double cylinder)形態の多重光生物反応器を示したもので、詳細には、垂直円筒形(cylinder)の外部表面に光エネルギー3が供給され、照射面を含む反応器内部領域に有用産物生産用培養領域1が設置され、前記有用産物生産用培養領域1に接して有用産物生産用培養領域を透過した光エネルギーが供給される菌体成長用培養領域2が反応器内部に設置された本発明の一形態である外部照射形二重垂直円筒(double cylinder)形態の多重光生物反応器を示したものである。
【0031】
図3のa及びbは、太陽光を利用した管形(tubular)光生物反応器を示したもので、詳細には、屋外培養時に太陽光を光エネルギー3で利用し、太陽光が直接的に照射される反応器内部領域では有用産物生産用培養領域1が設置され、前記有用産物生産用培養領域1と接して有用産物生産用培養領域を透過した光エネルギーが供給される菌体成長用培養領域2が反応器内部に設置された本発明の一形態である管形(tubular)光生物反応器を示したものである。
【0032】
図4のa及びbは、内部照射形二重平面板形態の多重光生物反応器を示したもので、詳細には、平面板の中央に設置された光エネルギー3供給装置を中心に照射面を含む反応器内部領域に有用産物生産用培養領域1が設置され、前記有用産物生産用培養領域1と接して有用産物生産用培養領域を透過した光エネルギーが供給される菌体成長用培養領域2が反応器内部に設置された本発明の一形態である内部照射形二重平面板(double flat−plate)形態の多重光生物反応器を示したものである。
【0033】
図5のa及びbは、図4の二重平面板形態の多重光生物反応器を単位装置(unit module)として活用してそれを連続的に配列する方式を示したもので、図面内に各々の単位装置の設置方法と光エネルギーの供給方向を例示している。
【0034】
図6のa及びbは、図1及び図4の複合形態の外・内部照射形三重平面板(triple flat−plate)形態の多重光生物反応器を示したもので、詳細には、平面板の両側側面と反応器の中央から光エネルギー3が供給され、照射面を含む反応器内部領域に有用産物生産用培養領域1が設置され、前記有用産物生産用培養領域1と接して有用産物生産用培養領域を透過した光エネルギーが供給される菌体成長用培養領域2が反応器内部に設置された本発明の一形態である外・内部照射形三重平面板(triple flat−plate)形態の多重光生物反応器を示したものである。
【0035】
図7のa及びbは、図6の外・内部照射形三重平面板形態の多重光生物反応器を単位装置として活用してそれを連続的に配列する方式を示したもので、図面内に各々の単位装置の設置方法と光エネルギーの供給方向を例示している。
【0036】
図8のa及びbは、内部照射形二重垂直円筒形態の多重光生物反応器を示したもので、詳細には、垂直円筒形の中央に設置された光エネルギー3供給装置を中心に照射面を含む反応器内部領域に有用産物生産用培養領域1が設置され、前記有用産物生産用培養領域1に接して有用産物生産用培養領域を透過した光エネルギーが供給される菌体成長用培養領域2が反応器内部に設置された本発明の一形態である内部照射形二重垂直円筒(double cylinder)形態の多重光生物反応器を示したものである。
【0037】
図9のa及びbは、前記内部照射形二重垂直円筒形態の光生物反応器を単位装置として活用してそれを連続的に配列する方式を示したもので、各々の単位装置の設置方法と光エネルギーの供給方向を例示した。
【0038】
図10のa及びbは、外・内部照射形三重垂直円筒形態の多重光生物反応器を示したもので、詳細には、垂直円筒形の外部と反応器の中央から光エネルギー3が供給され、照射面を含む反応器内部領域に有用産物生産用培養領域1が設置され、前記有用産物生産用培養領域1と接して有用産物生産用培養領域を透過した光エネルギーが供給される菌体成長用培養領域2が反応器内部に設置された本発明の一形態である外・内部照射形三重垂直円筒(triple cylinder)形態の多重光生物反応器を示したものである。
【0039】
図11のa及びbは、前記三重垂直円筒形態の光生物反応器を単位装置として活用してそれを連続的に配列する方式を示したもので、各々の単位装置の設置方法と光エネルギーの供給方向を例示した。
【0040】
また、本発明は、前記多重光生物反応器を利用した光合成微生物の培養方法において、より詳細にはバッチ式(batch)、連続式(continuous)及び流加式(fed−batch)培養方法を提供しているが、本発明の培養方法に対する理解を助けるためのものに過ぎず、本発明がそれに限定されるものではない。
【0041】
詳細には、本発明の多重光生物反応器を利用したバッチ式培養方法において、光合成微生物を光生物反応器の菌体成長用培養領域及び有用産物生産領域に注入する工程(バッチ培養1段階)、前記有用産物生産領域に向かって光を照射して光合成微生物を培養して有用産物蓄積量を最大化する工程(バッチ培養2段階)、及び前記培養後、有用産物生産領域と菌体成長領域の光合成微生物を収穫する工程(バッチ培養3段階)からなる光合成微生物の培養方法を提供する。
【0042】
バッチ培養1段階では、本発明の光生物反応器内部の各培養領域に光合成微生物を注入する。本発明の光生物反応器を利用して培養する時、菌体成長用培養領域と有用産物培養領域には同一な濃度を接種でき、必要に応じてお互いに異なる濃度で接種したり、また、すでに各光度に適応された光合成微生物を利用したりして接種することもできる。それは、菌体成長培養条件下で二領域すべてに注入された光合成微生物を菌体成長させるためである。ここで、最初の注入濃度は、供給する光の量が細胞の大きさによって相互遮蔽(mutual shading)が生じない濃度で注入しなければならない。一例として、クロレラ(Chlorella)の場合、10〜10cells/mlの濃度で注入して、ヘマトコッカス(Haematococcus)の場合、10〜10cells/mlの濃度で注入する。ここで、培地は、光合成微生物により選択して使用できる。
【0043】
バッチ培養2段階では、菌体成長及び有用産物生産を進めるために前記有用産物培養領域に向かって光を照射する。ここで、最初の光の光度は、光生物微生物の菌体成長(optimal condition)に合うように調節する。それは、最初に注入した光合成微生物を菌体成長させるためのもので、一例として、ヘマトコッカスの場合、有用産物生産領域の表面光度が40〜200μmol/m/s水準になるように光の光度を調節する。ここで、有用産物生産領域を透過した後、菌体成長領域に到達した光の光度は、10〜50μmol/m/s 水準に減少する。その他のpH、温度及びガス注入量は、光合成微生物により調節できる。一例として、ヘマトコッカスを使用する場合、pH7.0、温度25℃そしてガス注入量は、10ml/minで95%の空気に5%の二酸化炭素を含んだガスを使用できる。
【0044】
前記光度で一定時間照射すると、有用産物生産領域内の光合成微生物の菌体成長を止める静止期が到来する。ここで、光合成微生物は二次代謝産物を蓄積する。このような静止期は、培養領域内に注入した光合成微生物の濃度、最初に照射された光度及び光合成微生物の種類により次があり、下記の実施例の条件下では10日の静止期を確認した。アスタキサンチンの蓄積量は、20〜360mg/Lに増加した(図13c及び図13d参照)。
【0045】
このような静止期以後、光度を有用産物生産条件(stressed condition)に調節して照射する。前記菌体成長培養条件に比べて高光度で照射することになる。前記有用産物生産条件の光度は、光合成微生物の種類により多様に調節できる。一例として、ヘマトコッカスの場合、アスタキサンチン生産領域へ照射される光エネルギーの表面光度は、菌体濃度により200〜2,000μmol/m/s水準に調節する。この時から各培養領域により区別され培養することになる。詳細には、高光度の光エネルギー照射を受けるる有用産物培養領域内の光合成微生物は、高濃度の有用産物を蓄積し、光エネルギーは前記領域を通過しながら減少して菌体成長培養領域を照射する時にはそれに適合した光度を持つようになる。一例として、ヘマトコッカスの場合、菌体成長領域の表面光度が、10〜100μmol/m/s水準に減少することになり、それを利用して菌体を成長させることになる。添付した図14a及び図14bにはこのような結果を示したグラフを見ることができる。上述したように、光生物反応器への光エネルギー供給は、光合成微生物の誘導に適合するように高い光度で照射して有用産物を優先的に生産・蓄積するように誘導する。ここで、消耗されないで放出される光エネルギーを菌体成長のために使用することにより光生物反応器に供給される光エネルギーの効率を極大化できる。
【0046】
バッチ培養3段階では、有用産物蓄積量が最大に到達した後、有用産物生産領域の菌体を収穫して菌体から有用産物を分離、精製、濃縮する工程(downstream process)へ進行する。同時に菌体成長用培養領域の菌体は、次回のバッチ式培養の接種用に活用する。
【0047】
次に、本発明の多重光生物反応器を利用したバッチ式培養方法としては、培養過程において必要な営養分を一時的または連続的に供給する過程を含む光合成微生物の培養方法を提供する。
【0048】
本発明の多重光生物反応器を利用した連続式培養方法において、
前記バッチ式培養後、菌体成長用培養領域で成長した光合成微生物を有用産物培養領域へ移動させた後、新しい光合成微生物を菌体成長用培養領域に注入する工程(連続培養1段階)、前記有用産物生産領域に向かって光を照射して光合成微生物を培養して有用産物を蓄積する工程(連続培養2段階)、及び前記連続培養2段階を経た後、有用産物生産領域の光合成微生物を収穫して、前記連続培養1段階と連続培養2段階を反復的に行なう工程(連続培養3段階)を含む光合成微生物の培養方法を提供する。
【0049】
連続培養1段階は、バッチ式培養後、バッチ培養1段階と同様に光生物反応器の各領域に光合成微生物を注入する。詳細には、有用産物を蓄積した有用産物生産領域内の光合成微生物を収穫して、菌体成長用培養領域内の光合成微生物を有用産物生産領域へ移動させる。以後、菌体培養に使用する新しい光合成微生物を継代培養で収穫して培地と共に菌体成長用培養領域内に注入する。また、菌体成長用培養領域で成長した光合成微生物中の一部を残して有用産物培養領域へ移動させた後、新しい培地を菌体成長用培養領域に注入して新しい培養を実施する場合に代替できる。
【0050】
ここで、光合成微生物の移動方法は、連動ポンプ(peristaltic pump)を利用したり、空気圧力により押し上げる方法等を使用したりする。前記連動ポンプを利用した場合、収縮が容易な管を通じて成長用培養領域で高濃度に成長した菌体を含んだ流体を有用産物培養領域へ押し入れる。また、空気圧力により押し上げる方法を利用した場合、菌体成長用培養領域内の細胞と培養液を外部空気と遮断された滅菌状態で収穫した後、空気の圧力によって押し上げる。前記の方法で新しい光合成微生物を注入する。このような方法により連続的に移動させられる長所がある。
【0051】
連続培養2段階は、光合成微生物の移動及び注入後、有用産物生産領域の方向に光を照射する。ここで、光の光度はバッチ培養2段階と同様に有用産物培養のための高光度(stressed environment)で照射し、バッチ培養2段階の後半部の光度と同一な光度で照射して、同一な効果を得られる。
【0052】
連続培養3段階では、光合成微生物を連続的にそして大量に生産するために、前記連続培養1段階及び2段階を反復的に遂行するための中間段階である。詳細にはポンプや空気圧力を利用して菌体成長用培養領域で成長した光合成微生物を有用産物培養領域へ移動させて、新しい光合成微生物を菌体成長用培養領域に注入移動させる連続培養1段階と、高光度の光を照射して有用産物の蓄積と菌体培養が同時に起きる連続培養2段階を反復的に遂行することにより、有用産物を蓄積した光合成微生物を連続的かつ大量に得られる。
【0053】
本発明の多重光生物反応器を利用した流加式培養方法において、
前記バッチ式及び連続式培養が進行するにつれ栄養成分が枯渇する場合、光合成微生物の菌体成長及び有用産物の生産に適合した濃度を維持するために必要な栄養成分を供給する必要がある。一例として、ヘマトコッカスの培養の場合に窒素源の濃度を培養初期濃度に維持することが菌体成長に効果的であることが報告されているので(Enzyme Microbial Technol.,2003年,第33巻,403−409頁)、菌体成長領域では窒素源の流加式培養を遂行する必要がある。
【0054】
本発明の多重光生物反応器及びそれを利用した培養方法に適用できる光合成微生物は、菌体成長と有用な代謝産物生産の最適環境状態が差を示すすべての光合成微生物を含む。一例として、ヘマトコッカス(Haematococcus sp.)、ドウナリエラ(Dunaliella sp.)、クロロコックム(Chlorococcum sp.)、クロレラ (Chlorella sp.)、カサノリ(Acetabularia sp.)、ミクロキスティス(Microcystis sp.)、ネンジュモ(Nostoc sp.)、オシラトリア(Oscillatoria sp.)等がある。
【0055】
以下では添付した図面を参照して本発明の実施例をより詳細に例示する。しかし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明がそれに限定されるものではない。
【0056】
実施例1:光合成微生物の培養
実施例1では、図12a及び図12bに示した下部気体注入形二重垂直円筒(double cylinder)形態の気泡塔光生物反応器を使用した。詳細には、前記多重光生物反応器は垂直円筒形の外部に設置された発光体8を利用して光エネルギーを供給し、光エネルギーが直接的に照射される外部ジャケット部分に有用産物生産用培養領域1を設置し、前記有用産物生産用培養領域の内部コア(inner core)部分に菌体成長用培養領域2を設置した形態に製作した。また、前記気泡塔光生物反応器は700ml容量の外部ジャケットと700ml容量の内部コアに設計製作した。
【0057】
ここで、各々の領域の下端部には、有用産物生産用培養領域のための気体供給装置5と菌体成長用培養領域のための気体供給装置6を設置して、ガスを上向き供給することにより培養液の上向流動を惹起させ、光エネルギー供給のための発光体としては直管蛍光ランプ8を使用して、安定器と点滅スイッチを設置した。
【0058】
光合成微生物は、高付加有用産物のアスタキサンチン(astaxanthin)を生産すると報告されているヘマトコッカス(Haematococcus pluvialis UTEX16)菌株を培養した。栄養培地には、MBBM(Modified Bold’s Basal Medium)を使用した。
【0059】
バッチ培養1段階:光合成微生物の注入
前記の光生物反応器に具備された外部ジャケット(有用産物培養領域)と内部コア(菌体成長用培養領域)に、各々1.2×10cell/ml水準で注入した。
【0060】
バッチ培養2段階:光合成微生物の培養
直管蛍光ランプ8を利用して光エネルギーを供給することにより培養を遂行した。ここで、最初の培養から10日間は外部ジャケットの表面光度を80μmol/m/sに維持した。10日以後、光エネルギーを増加して770μmol/m/sに維持した。
【0061】
培養時、流体の流れと培養液の混合及び炭素源の供給のために5%CO気体を空気と混合して注入した。通気量は、外部ジャケットと内部コア共に100ml/minに調節した。
【0062】
連続培養1段階:光合成微生物の移動及び再接種
前記最初の培養日から24日以後に培養を終り、連動ポンプを利用して有用産物培養領域及び菌体成長用培養領域の光合成微生物を各々押出し及び有用産物培養領域へ移動させた後、新しい光合成微生物を菌体成長用培養領域に注入した。
【0063】
連続培養2段階:光合成微生物の培養
光エネルギー供給量を表面光度が770μmol/m/s水準で照射して外部ジャケットに存在する菌体がアスタキサンチン((3S,3’S)-3,3’-dihydroxy-,-carotene-4,4’-dione)を蓄積できるように誘導(induction)した。菌体成長領域(内部コア)は、外部有用産物生産領域(外部ジャケット)を透過した光エネルギーが菌体成長に適合な光度に減少して菌体が持続的に成長できるようにした。以外の環境条件は、前記2の後半部に記述した高光度の照射時の環境条件と同一に維持した。
【0064】
実験例1
本発明のバッチ培養1段階及び2による菌体の生体重量及びアスタキサンチンの総量を測定するために実験を遂行した。
【0065】
詳細には、光生物反応器は前記実施例1の下部気体注入形二重垂直円筒形態の気泡塔光生物反応器を使用した(図12のa及びb参照)。
【0066】
光合成微生物は、高付加有用産物のアスタキサンチンを生産すると報告されたヘマトコッカス(Haematococcus pluvialis UTEX16)菌株を培養し、栄養培地は、MBBM(Modified Bold’s Basal Medium)を使用した。
【0067】
反応器外部ジャケットの表面光度を80μmol/m/sを維持し、外部ジャケットと内部コアを1.2×10cell/ml水準で注入して培養を開始した。
【0068】
ここで、流体の流れと培養液の混合及び炭素源の供給のために5%CO気体を空気と混合して注入した。通気量は、外部ジャケットと内部コア共に100ml/minに調節した。
【0069】
培養時間は、0〜24日である。2日経過後、菌体の生体重量(fresh weight)及びアスタキサンチン総量を測定した。その結果は、図12c及び図12dに示した。ここで、矢印は低光度から高光度への変化時点を表示したものである。
【0070】
図12c及び図12dから分かるように、培養を開始後、外部ジャケットと内部コアの菌体がほぼ等しい水準で成長して、培養6日が経過して外部ジャケットと内部コアの生体重量に差を示し始めた。このような現象は、外部ジャケットの菌体が高濃度に増加するにつれて相互遮蔽が増加して内部コアに存在する菌体に不充分な光エネルギーが供給されて発生する現象である。
【0071】
培養10日の時点から光エネルギー供給量を表面光度が770μmol/m/s水準になるように増加させる方法で外部ジャケットに存在する菌体がアスタキサンチンを蓄積できるよう誘導(induction)し、内部コア領域は外部ジャケット領域を透過した光エネルギーが菌体成長に適合な光度に減少して菌体が持続的に成長できるようにした。ここで、光条件以外の環境条件は、内部コアの菌体が最適成長できるように高濃度の栄養成分を周期的に供給した反面、外部ジャケット領域には栄養成分が枯渇した状態が維持されるようにした。その結果、外部ジャケットと内部コアに存在する菌体成長及びアスタキサンチンの蓄積パターンが図13と図14に示したように明確な差を現わし、最終的に外部ジャケット領域の菌体は効果的な有用産物の生産がなされてアスタキサンチン総量が332mg/lに到達した。ここで、細胞の大きさは平均36.27μmに拡大され、最大細胞濃度5.8×10cells/mlと生体重量(fresh weight)9.94g/lの菌体を得ることができた。同時に内部コア領域では、菌体が持続的に成長して最大細胞濃度3.2×10cells/ml及び生体重量6.1g/lに到達した反面、アスタキサンチンの蓄積量は31mg/lに維持され、有用産物の生産が抑制された状況で持続的な菌体成長が可能であることが確認できた。
【0072】
実験例2
他の形態の光生物反応器を利用した菌体成長及びアスタキサンチンの総量を調べるために実験を遂行した。
【0073】
実験例2では、図13aおよび13dに示したように、気体注入方法が異なる上部及び下部気体注入形二重垂直円筒(doble cylinder)形態の気泡塔光生物反応器を使用した。詳細には、前記光生物反応器は本発明の一実施例の外部照射形二重垂直円筒光生物反応器(double cylinder photobioreactor)を示したもので、図12aおよび12bの反応器の場合と同様に培養液を入れられる反応器内部領域は、有用産物生産用培養領域1に該当する垂直円筒形の外部ジャケットと菌体成長用培養領域2に該当する内部コアで構成されている。また、垂直円筒形の外部に設置された直管蛍光ランプ8を利用して光エネルギーを供給し、有用産物生産用培養領域1のためのガス供給装置5は、反応器下部に設置してガス供給による密度差を利用して培養液内の菌体を混合する。図12に示した反応器と異なる点は、内部コア領域のためのガス供給装置6が図12aおよび12bは反応器の下部に設置されていたのに対して、本実験の反応器は反応器上部に設置された直立ステンレス管を通して内部コアの下端部で気体を発生できるように設置されている点である。
【0074】
ここで、前記気泡塔光生物反応器は、500ml容量の外部ジャケットと500ml容量の内部コアに設計して製作した。
【0075】
有用産物生産用培養領域2の外部ジャケットは、気泡塔光生物反応器基底から混合ガス(5%CO)を注入する反面、菌体成長用培養領域1の内部コアは反応器上部からステンレス直立ガス注入管を通して内部コア領域の下部まで連結されるように設置して混合ガスを注入した。
【0076】
菌株及び培地は、前記実施例1と同じヘマトコッカス菌株とMBBM培地を使用した。
【0077】
通気量は、外部ジャケットと内部コア各々100ml/minに維持する方法で流加式培養を遂行した。
【0078】
発光体は、外部発光体として直管蛍光ランプを利用し、培養初期外部ジャケットの表面光度は80μmol/m/sを維持し、培養10日目から770μmol/m/s水準に光度を増加させ外部ジャケットと内部コア領域が各々有用産物蓄積と菌体成長が起きるようにした。
【0079】
培養時間は、0〜24日で、2日経過後、菌体の生体重量(fresh weight)及びアスタキサンチン総量を測定した。その結果は、図13c及び図13dに示した。前記図面で矢印は培養10日に低光度から高光度への光度の変化が起きた時点を表示したものである。
【0080】
図13c及び図13dから分かるように、培養結果を比較してみると、外部ジャケット領域で効果的な有用産物生産が起こり、最終的に培養を終了した時点では356mg/l水準のアスタキサンチンの蓄積を誘導できた。これは、菌体成長領域に該当する内部コア領域のアスタキサンチン蓄積量と比べて10倍以上の高い値に該当するもので、これを通してアスタキサンチン生産用外部ジャケット領域と菌体成長用内部コア領域からなる二重光生物反応器を実際光合成微生物の培養に適用が可能であることを確認できた。
【0081】
実験例3
本発明の連続培養1段階を仮定して外部ジャケット及び内部コアにお互いに異なる菌体濃度の接種を通して菌体及び有用産物を得るために実験を実施した。
【0082】
実施例3では図13aおよび13dに示したように、気体注入方法が異る上部及び下部気体注入形二重垂直円筒(doble cylinder)形態の気泡塔光生物反応器を使用し、発光体は光生物反応器の外部に設置した。ここで、前記気泡塔光生物反応器は500ml容量の外部ジャケットと500ml容量の内部コアに設計して製作した。
【0083】
有用産物生産用培養領域1の外部ジャケットは、気泡塔光生物反応器基底から混合ガス(5%CO)を注入した反面、菌体成長用培養領域1の内部コアは反応器上部からステンレス直立ガス注入管を通して内部コア領域の下部まで連結されるように設置して混合ガスを注入した。
【0084】
菌株及び培地は、前記実施例1と同じヘマトコッカス菌株とMBBM培地を使用した。ここで、外部ジャケットには実施例1及び実施例2の内部コアから得られる菌体を2.5×10cells/mlの水準で接種し、内部コアには新しい菌体を1.0×10cells/mlの水準で接種した。
【0085】
通気量は、外部ジャケットと内部コア各々100ml/minに維持する方法で流加式培養を遂行した。
【0086】
発光体は、外部発光体として直管蛍光ランプを利用し、培養初期外部ジャケットの表面光度は200μmol/m/sを維持した。ここで、外部ジャケット内菌体によって内部コアの表面 光度は40μmol/m/sを維持した。
【0087】
培養時間は、0〜16日で、1日経過後、菌体の生体重量(fresh weight)及びアスタキサンチン総量を測定した。その結果は、図14a及び図14bに示した。
【0088】
図14aは、培養時間の経過による光生物反応器内部の有用産物生産用培養領域1と菌体成長用培養領域2の生体重量の変化を示したもので、図14bは各領域のアスタキサンチン蓄積量の変化を示したものである。培養結果を比較してみると、効果的な有用産物生産が起き、最終的に培養を終了した時点では356mg/l水準のアスタキサンチンの蓄積を誘導できた。これは菌体成長領域に該当する内部コア領域のアスタキサンチン蓄積量の比べて24.5倍以上の高い値に該当する。同時に内部コア領域では菌体が持続的に成長して最大細胞濃度3.5×10cells/ml及び生体重量3.01g/lに到達した反面アスタキサンチンの蓄積量は15mg/lに維持され、有用産物の生産が抑制された状況で持続的な菌体成長が可能だった。
【0089】
本発明の生物工程を通して外部ジャケットの菌体が高濃度の有用産物を蓄積するので、それを収穫し、内部コアの菌体成長領域で培養した菌体を次の培養時に外部ジャケットの高濃度接種に活用する。したがって、持続的に内部コアでは新しく菌体を接種し、外部ジャケットの接種は、以前の培養で高濃度に成長した内部コアの菌体の活用が可能になり、既存の2段階培養を単一反応器で具現できることを確認できた。
【0090】
産業上の利用可能性
上述したように、本発明の多重光生物反応器及びそれを利用した光合成微生物の培養方法は、従来の2段階生物工程を単一反応器で具現したもので、既存の菌体の高濃度速成培養段階と有用な代謝産物の生産段階からなる2段階生物工程を、本発明の多重光生物反応器の内部領域を菌体成長領域と有用産物生産領域に区分して設置する方法により工程を単純化した。それによって一つの光エネルギーを利用して有用産物培養及び菌体成長培養を同時に遂行することができ、菌体成長のための培養及び生産物誘導に必要な労動力を減らすことができ、不必要な2段階過程の省略することにより地代(land cost)、装置設置費、運転費の費用節減と電力消費量を減らすことができ、それを通して有用産物の生産工程の経済性を向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
(図1)外部照射形二重平面板(double flat−plate)形態の光生物反応器構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図2)外部照射形二重垂直円筒(double cylinder)形態の光生物反応器構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図3)太陽光を利用した管形(tubular)光生物反応器の構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図4)内部照射形二重平面板形態の光生物反応器構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図5)図4の内部照射形二重平面板形態の光生物反応器を連続的に配列した構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図6)外・内部照射形三重平面板(triple flat−plate)形態の光生物反応器構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図7)図6の外・内部照射形三重平面板形態の光生物反応器を連続的に配列した構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図8)内部照射形二重垂直円筒形態の光生物反応器構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図9)図8の内部照射形二重垂直円筒形態の光生物反応器を連続的に配列した構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図10)外・内部照射形三重垂直円筒(triple cylinder)形態の光生物反応器の構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図11)図10の外・内部照射形三重垂直円筒形態の光生物反応器を連続的に配列した構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図12aおよびb)下部気体注入形二重垂直円筒形態の気泡塔光生物反応器に外部発光体を具備した構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図12c)図12の光生物反応器を利用した実施例1の培養時間の経過による生体重量の変化を示したグラフである。
(図12d)図12aの光生物反応器を利用した実施例1の培養時間の経過によるアスタキサンチン量の変化を示したグラフである。
(図13aおよびb)気体注入方法が異なる、上部及び下部気体注入形二重垂直円筒形態の気泡塔光生物反応器に外部発光体を備えた構造を概略的に示した側面図a及び断面図bである。
(図13c)図13aの光生物反応器を利用した実施例2の培養時間の経過による生体重量の変化を示したグラフである。
(図13d)図13aの光生物反応器を利用した実施例2の培養時間の経過によるアスタキサンチン量の変化を示したグラフである。
(図14a)図13aの光生物反応器を利用した実施例3の培養時間の経過による生体重量の変化を示したグラフである。
(図14b)図13aの光生物反応器を利用した実施例3の培養時間の経過によるアスタキサンチン量の変化を示したグラフである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12a】

【図12b】

【図12c】

【図12d】

【図13a】

【図13b】

【図13c】

【図13d】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌体及び培養液を収容できる一つ以上の菌体成長用培養領域;
前記菌体成長用培養領域に接して設置され、菌体及び培養液を収容できる一つ以上の有用産物培養領域;及び
前記菌体成長用培養領域と有用産物培養領域を分離するために両領域間に形成された透明分離装置を包み、培養のために照射される太陽光または人工光が前記有用産物培養領域を通過した後、前記透明分離装置を経て前記菌体成長用培養領域に到達するようにするために、前記有用産物培養領域は反応器内の光源側に形成し、前記菌体成長用培養領域は反応器内の光源が有用産物培養領域を通過して到達する側に形成したことを特徴とする、光生物反応器及び前記光生物反応器の多段階の空間的配列による光生物反応器。
【請求項2】
菌体及び培養液を収容できる一つ以上の菌体成長用培養領域;
前記菌体成長用培養領域に接して設置され、菌体及び培養液を収容できる一つ以上の有用産物培養領域;
前記菌体成長用培養領域と有用産物培養領域を分離するためにその間に形成された透明分離装置;及び
光を照射するための光照射装置を含み、前記光照射装置を通じて照射される光が前記有用産物培養領域を通過した後、前記透明分離装置を経て前記菌体成長用培養領域に到達するようにするために、前記有用産物培養領域は前記光照射装置と接するように形成し、前記菌体成長用培養領域は前記光照射装置と接しないように形成したことを特徴とする、光生物反応器及び前記光生物反応器の多数単位の空間的配列による光生物反応器。
【請求項3】
前記光生物反応器の最外側には、有用産物培養領域が形成され太陽光が前記最外側の有用産物培養領域に照射されることを特徴とする、請求項2記載の光生物反応器。
【請求項4】
前記光照射装置が、蛍光ランプ、ハロゲンランプ、光ファイバー、ネオン管、発光ダイオード素子からなる群から選択された一つまたはそれ以上の発光装置であることを特徴とする、請求項2または請求項3記載の光生物反応器。
【請求項5】
前記光照射装置が、個別的な装置で具備されることを特徴とする、請求項2または請求項3記載の光生物反応器。
【請求項6】
前記光生物反応器が、直六面体の平面板、円筒形、チューブ形及び立体模型からなる群から選択されたいずれか一つの形態であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の光生物反応器。
【請求項7】
前記菌体成長用培養領域及び有用産物培養領域にガスを注入するためのガス注入装置が追加形成されたことを特徴とする、請求項1または請求項2記載の光生物反応器。
【請求項8】
前記菌体成長用培養領域及び有用産物培養領域内に機械的撹拌のためのインぺラーまたは磁石撹拌機が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の光生物反応器。
【請求項9】
前記光生物反応器が、1次元的、2次元的または3次元的に連続配列されていることを特徴とする、請求項1、請求項2または請求項6記載の光生物反応器。
【請求項10】
前記光生物反応器をバッチ式、連続式または流加式で運転することを特徴とする、請求項1または請求項2記載の光合成微生物培養方法。
【請求項11】
前記光生物反応器が、温度変化装置及び日除け幕を具備することを特徴とする、請求項1または請求項2記載の光生物反応器。
【請求項12】
前記温度変化装置が、熱交換装置、恒温循環器または噴霧装置であることを特徴とする、請求項11記載の光生物反応器。
【請求項13】
光合成微生物を請求項1または請求項2の光生物反応器に具備された菌体成長用培養領域及び有用産物培養領域に注入する工程(バッチ培養1段階)、前記有用産物培養領域に向かって光を照射して培養する工程(バッチ培養2段階)及び、前記培養後、有用産物生産領域と菌体成長領域の光合成微生物を収穫する工程(バッチ培養3段階)を含む、光合成微生物の培養方法。
【請求項14】
光合成微生物を請求項1または請求項2の光生物反応器に具備された菌体成長用培養領域でバッチ培養後、成長した光合成微生物を有用産物培養領域へ移動させた後、新しい光合成微生物を菌体成長用培養領域に注入する工程(連続培養1段階)、前記有用産物生産領域に向かって光を照射して光合成微生物を培養して有用産物を蓄積する工程(連続培養2段階)及び、前記培養後、有用産物生産領域の光合成微生物を収穫して、菌体成長用培養領域で成長した光合成微生物の全体または一部を有用産物生産領域へ移動する前記1段階と2段階を反復的に遂行する工程(連続培養3段階)を含む、光合成微生物の培養方法。
【請求項15】
光合成微生物を請求項1または請求項2の光生物反応器を利用して培養を進行するにつれ、枯渇する栄養成分を選択的に菌体成長領域または有用産物生産領域に供給することを特徴とする、光合成微生物の培養方法。
【請求項16】
前記段階2の光照射を最初の照射から光合成微生物の静止期まで菌体成長培養条件(optimal condition)で照射した後、静止期以後は有用産物培養条件(stressed condition)で照射することを特徴とする、請求項13または請求項14記載の光合成微生物の培養方法。
【請求項17】
前記段階3の移動が連動ポンプを利用したり空気の圧力を利用したりして遂行することを特徴とする、請求項14記載の光合成微生物の培養方法。
【請求項18】
前記段階4の照射光度を有用産物培養条件(stressed condition)に調節することを特徴とする、請求項14記載の光合成微生物の培養方法。
【請求項19】
前記光合成微生物が、ヘマトコッカス、ドウナリエラ、クロロコックム、クロレラ、カサノリ、ミクロキスティス、ネンジュモ及びオシラトリアを含むことを特徴とする、請求項13記載の光合成微生物の培養方法。

【公表番号】特表2006−512930(P2006−512930A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518325(P2005−518325)
【出願日】平成16年2月16日(2004.2.16)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000309
【国際公開番号】WO2005/059087
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(505224569)インハ インダストリー パートナーシップ インスティテュート (17)
【氏名又は名称原語表記】Inha−Industry Partnership Institute
【Fターム(参考)】