説明

多重反射飛行時間型質量分析器、及び質量分析器を有する飛行時間型質量分析計

多重反射TOF質量分析計は2個の平行なグリッドのないイオンミラーを有し、各イオンミラーはドリフト方向(Z)に長い構造を有する。これらのイオンミラーは、ドリフト方向(Z)に垂直な飛行方向(X)におけるイオンの多重反射によって形成される折り返しイオン経路を提供する。分析器は、ドリフト方向(Z)にイオンを反射させるための、グリッドのない付加的なイオンミラーも有する。操作時には、イオンは折り返しイオン経路に沿う飛行時間の違いにより質量電荷比によって分離され、略同一の質量電荷比を有するイオンは、飛行方向、及びドリフト方向のそれぞれに対してエネルギー収束を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析法の分野に関し、特に、飛行時間型(time-of-flight)質量分析法に関する。特に、多重反射によって長い飛行経路を有するTOF質量分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行時間型(TOF)質量分析法は、イオン源から検出器まで同一の経路を通ってイオンが飛行するのに要する時間を計測したものに基づく。イオン源は、質量電荷比(mass-to-charge ratio)は異なるが平均エネルギーが同一であるイオンのパルスをいっせいに産出する。従って、静電界における運動法則に基づき、質量電荷比(m/e)が異なるイオンの飛行時間はm/eの平方根に反比例する。検出器に到達したイオンはパルス電流を産出し、そのパルス電流は制御システムによって計測され、スペクトルの形で表される。実験下ではイオンの質量電荷比は、そのピーク位置を既知のイオンのピークと比較することによって(相対較正)、又は到達時間を直接計測することによって(絶対較正)導き出すことができる。電圧源とシステムの寸法が安定している場合には、質量の類似したイオンのピーク幅が狭いほど、質量計測の精度は高くなる。様々なタイプの質量分析計で、相対的なピーク幅は分解能によって特徴付けられる。分解能とは、質量単位における、認識できる質量のピーク幅に対する比率である: Rm = m/Δm。TOF質量分析計の場合、質量分解能は、総飛行時間の時間単位のピーク幅に対する比率の半分に等しい: Rm = 0.5t/Δt。従って、高い精度を達成するためには、ピーク幅を可能な限り小さくするか、飛行時間を増加させるか、のいずれかが必要である。
【0003】
TOF質量分析計でピーク幅を減少させるためにはいくつかの制限がある。同一の質量電荷比を有するイオンとはいうものの、イオン源は類似した粒子を産出するが、そのエネルギーは僅かに異なる。これは、放出に先立つ、イオン源内でのイオンの初期の空間的拡がりに起因する。質量電荷比が同一だがエネルギーの異なるイオンが検出器に同時に到達するように、TOF質量分析計内で静電界を最適化することが必要である。従って、TOF質量分析計内でのイオン光学経路は、飛行経路の方向に沿って「エネルギー等時性(energy isochronous)」である。適切な最適化によって、高レベルな等時性を達成することができ、イオンが検出器に到達する時間が、イオン源内でのイオンの初期位置に殆ど依存しなくなる。ピーク幅を更に減少させることは、イオンの初期速度の拡がりによって制限される。後者は、いわゆる「反転時間(turn-around time)」を引き起こす。「反転時間(turn-around time)」とは、初期速度VTが飛行経路の方向に向いたイオンと、初期速度-VTが飛行経路の反対方向に向いたイオンの到達時間の差のことである。この差はイオン源からイオンが引き出される瞬間の電界強度に反比例している:tturn = 2VT/(eE/m)。反転時間を減少させるための一つの方法は、例えばイオン源内部でイオンを冷却することによって初期速度vTを減少させることである。他の方法としては、電界強度を増加させることである。これら双方のアプローチには実用上の制限があり、最新のTOF質量分析法ではほとんど使い果たされている。
【0004】
質量分解能を改良するもう一つの方法は、より長い飛行経路を用いて飛行時間を長くすることである。飛行経路の延長は機器のサイズを大きくすることによって単純に可能となるが、最新のTOF質量分析計の典型的サイズが既に1mであることから、かかる方法は現実的でない。飛行経路を延長する優れた方法は、静電ミラーでの多重反射を用いることである。既知の多重反射システムの中には、様々な条件を同時に充足することを試みているものがある。様々な条件とは、多重折り返し(multiply folded)ビーム軌道、イオン運動の安定性、及び、飛行時間である。つまり、多重折り返しビーム軌道を、質量電荷比は同一だがエネルギーの異なるイオンの飛行時間が、イオン源が産出するエネルギーの範囲内では殆どエネルギーに依存しないようなものとし、イオンの横軸方向の運動を安定的にすることによって、イオンビームが多重反射を切り抜けられるようにし、飛行時間を、イオンビームの横方向の角度の拡がりや空間的拡がりに殆ど依存しないようにする(横方向の収差を最小値にする)ことである。これらの条件を同時に充足するのは困難であり、これらの条件を充足する既知のシステムは製造が困難であり、かつ/又は柔軟性を欠くことが示されている。
【0005】
多くの反射を有する多重折り返し軌道は、パルス電力供給源(非特許文献1)を用いて実現することができる。軸方向に対称な、同軸のミラーを2個有するシステム(図1)では、入り口のミラーIの電圧が短時間下げられることによってイオンがシステム内に注入される。イオンがシステムに入った後、ミラーIの電圧は元に戻され、イオンは2個のミラーの間を充分長い時間往復した状態にされる。最終的に、イオンは出口のミラーIIの電圧を下げることによって、イオンはこのシステムから検出器で検出されるために解放される。残念なことに、一度の実験では極めて僅かな質量範囲のイオンしかシステムから放出することができないため、この方法では質量範囲に制限がある。より質量の小さなイオンは、より重いイオンに比べ、より早く進行し、かつより多く方向転換を行う。一定の回数(N)方向転換を行った後には、N回方向転換を行ったより重いイオンと、N+1回方向転換を行ったより軽いイオンとを区別するのは困難である。このように、下位の質量範囲に重複させずに1度の発射でシステムから放出されるイオンの質量範囲は方向転換の回数に反比例している。このような欠点は、イオンが多数の経路に向かう同様の軌道を通過し、パルス電圧によって放出されるシステムの全てに妥当する(非特許文献2)。
【0006】
多重反射を用いる静電システムの多くが、H. Wollnikによる特許文献1で提案されている。H. Wollnikによって提案されているシステムの製造は複雑で、最適化に注意を要する。よりシンプルなシステムはNazarenko等による特許文献2に記載されている(図2)。彼らのシステムは、多重反射装置に平行でグリッドのないイオンミラーを2個有する。ミラー電極11、12、13、及び21、22、23における電圧は、上部ミラーと下部ミラーにおける反射のちょうど1サイクルの周期がX(飛行)方向におけるイオンエネルギーに殆ど依存しないように最適化されている。このため、イオンパケットは、各サイクルの後、ミラー間のある場所で圧縮(エネルギー収束)される。イオンビームはシステム内部にX軸に対して小さな角度で注入される。結果として、イオンビームは比較的ゆっくりとZ(ドリフト)方向に進行する一方、2個の平行なミラーで反射を繰り返し、多重折り返しのジグザグ状の軌道を形成し、飛行時間が増加する。このシステムの利点は、イオンが検出器に到達するまでに生じる反射の回数が注入角度を変更することで調整可能である点である。一方、このシステムはドリフト方向におけるビームの拡がりを防ぐ手段を欠いている。初期の角度の拡がりのために、ビーム幅が検出器の幅を上回り、検出感度が失われるため、イオンの飛行時間の延長が実行不可能になる。
【0007】
2個の平行で平坦なイオンミラーに基づく多重反射システムにおける顕著な改良点は、A.Verentchikov と M.Yavorによる特許文献3で提案されている。ビームのZ方向の角度の拡がりはミラー間の電界自由領域(field free region)に配置されるレンズ1セットによって補正された(図3)。Nazarenkoのシステムと同様、イオンビームはミラー間の空間にX軸に対して小さな角度で注入されているが、イオンビームがレンズL1、L2...LD2のセットを通過するように角度が選択されている。結果として、イオンビームは各反射の後再度収束され、ドリフト方向に拡がらない。このシステムの最後のレンズLD2はビームの方向を、システムから出る方向に反転させるための偏向器としても操作される。このシステムは、この操作モードでは、延長された飛行経路によって、扱える質量範囲を全域とすることができる。偏向器LD2は、システムの最終セクション内で多重反射が行われるようにするため、イオンビームをシステムの最終セクション内に閉じこめるために用いることも可能である。この操作モードでは、偏向器にパルス電圧を印加することにより、イオンビームが偏光器最終セクションから放出される。この場合、このシステムは、H. Wollnikのシステムと同様、質量範囲の制限を被る。この操作モードにおける実験が示すように、200,000の分解能を伝播時の損失を50%未満で達成することが可能である。高い分解能は平坦なミラーを最適に設計したことに起因する。ミラーはエネルギーの3次収束を提供するのみならず、2次までの横収差の最小値を有する。特許文献3で提案された設計にはNazarenko(特許文献2)の独自システムと比較して多くの利点があるが、これらの利点は独自システムの極めて有益な特性を犠牲にすることで達成されている。有益な特性とはつまり、注入角度を小さくすることによって反射回数を増加できるという点である。Verentchikov と Yavorのシステムでは、注入角度が固定されており、システムの配置によって、つまり、ミラー間の距離、およびレンズの位置とスペースによって決定される。総反射回数はレンズの数の二倍に設定され、パルス操作モードを使用しない場合には変更できないが、これにより質量範囲の減少がもたらされる。これがこのシステムの欠点であり、本発明の実施例ではこれについて取り組みがされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】UK patent GB 2080021
【特許文献2】Soviet Union Patent SU 1725289
【特許文献3】WO 001878A2
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】H.Wollnik, Int. J. of Mass Spectrom. And Ion Proc., 227, (2003), 217
【非特許文献2】M.Toyoda et. all, Journal of Mass Spectrometry, 2003, v. 38, pp. 1125-1142
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、静電界発生手段を含む多重反射TOF質量分析計であって、前記静電界発生手段はそれぞれがドリフト方向に長い構造を有する、2個の平行なグリッドのないイオンミラーを規定するように構成され、前記イオンミラーは前記ドリフト方向に直交する飛行方向におけるイオンの多重反射と、前記ドリフト方向におけるイオン変位とによって形成される折り返しイオン経路を提供するものであり、前記静電界発生手段は、前記ドリフト方向にイオンを反射するための、グリッドのないイオンミラーを付加的に規定して構成され、それにより、作動時にはイオンが前記折り返しイオン経路に沿った異なる飛行時間によって、質量電荷比によって空間的に分離され、略同一の質量電荷比を有するイオンが前記飛行方向、及び前記ドリフト方向に関してエネルギー収束されるものである、多重反射TOF質量分析計が提供される。
【0011】
本発明の実施例では、TOF質量分析計は遅延線として利用することができる。これは、遅延線によってもたらされる飛行時間の延長により質量分解能を総合的に改善する目的で、実際上いずれかの既存のTOF質量分析計の飛行経路に組み込むことができる。折り返し経路という本発明の構成によって、分析計で適応可能な質量電荷比の範囲に制限がなくなり、パルス電圧を用いてイオンの軌道を操作する必要性が避けられる。更に、横軸方向のイオンの動きが比較的安定する。このことは、グリッドのないイオンミラーの使用と併せ、分析計からのイオン損失を減少させるのに役立つ。飛行時間の延長によって質量分析計の分解能が改善し、より好ましい実施例では、静電的に制御可能で、飛行方向に対する角度を制御する偏向手段を用い、反射回数を調整することができる。その偏向手段で、イオンは折り返しイオン経路上に方向付けられる。このような調整は、レンズを有する既知のシステムの利用では不可能である。
【0012】
本発明はTOFシステムの設計において全く新規な特徴を導入している。すなわち、飛行方向に対して垂直な、ドリフト方向におけるエネルギー収束である。本発明以前には、角度の拡がりを減じるために、ビームを高エネルギーにまで加速させることによって、又はビームを再収束させるレンズを用いることによって、ドリフト方向のビームの拡がりが最小限になるようにTOFシステムが構築されていた。本発明は、飛行方向にイオンミラーを供給することに加え、ドリフト方向(飛行方向に垂直な方向)にイオンミラーを利用することを提案しており、本発明は、検出器内において、飛行方向、及びドリフト方向の両方に対して最終となる位置に同時にエネルギー収束を作るために用いることができる。 このシステムにおける等時性という特質のため、飛行中のドリフト方向のビーム幅は問題とならないが、ビームは検出時に検出器より広くならないことが望ましい。これには空間電荷の影響が減少するという更なる利点がある。なぜなら、殆どの時間、イオンパケットはドリフト方向に伸ばされて移動するからである。
【0013】
以下、次の図を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】H. Wollnikによって記された、軸方向に対称な、既知の多重方向転換(multi-turn)TOF質量分析計を概略的に説明する。
【図2】Nazarenkoによって記された、既知の平坦な多重反射TOF質量分析計を概略的に説明する。
【図3】Verentchikov と Yavorによって記された、既知の平坦な多重反射TOF質量分析計を概略的に説明する。
【図4】本発明の多重反射2D等時性TOF質量分析計の望ましい実施例を示した立体図を示す。
【図5】多重反射2D等時性TOF質量分析計の望ましい実施例を概略的に説明する。
【図6】図5で示した多重反射システムにおける飛行軸に沿った電界分布を示す。
【図7】A〜Dは、エネルギー等時性のTOFシステムにおける飛行時間のイオンエネルギー依存性を示す。
【図8】3Dイオントラップ源の横断面を示す。
【図9】直交して引き出すリニアイオントラップ源の横軸横断面を示す。
【図10】軸方向に引き出すリニアイオントラップ源、及び追加加速ステージの断面図を示す。2個のステージ源の軸に沿った電位分布も示している。
【図11】A〜Cは、イオンを本発明の2D等時性TOFシステムの飛行経路内に誘導するための、異なる配置を示している。
【図12】ドリフト方向に2個のイオンミラーと、パルス偏向器を用いた、多重折り返し循環ビーム軌道を含む2DTOF分析器を概略的に説明する。
【図13】ドリフト方向に2個のイオンミラーと、パルスを用いない多重折り返し循環ビームを含む2DTOF分析計を概略的に説明する。
【図14】2DTOF分析計を概略的に説明する。A)従来のTOF質量分析計内で遅延線として用いられている。B)前駆イオンの質量選択器として用いられている。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
図4は、本発明の望ましい実施例に係る、新規の多重反射2D等時性TOF質量分析計の立体図を示している。この2DTOF分析計は、Y軸に垂直な2個の平行平面にある金属平板電極セットから成る。上部、及び下部平面の電極は対称であり、同一の電圧が印加されている。平板電極は、Z軸に平行なX1, X2,...Xn及びX-1, X-2,..,X-nのラインになるように配置されている。これらの電極は、イオンを飛行方向Xに反射させるための、グリッドのない2個の静電イオンミラーを形成している。各Xラインの電極は多数の部分に再分割されており、Z1, Z2,..,Zkという、X軸に平行に伸長する電極のラインを形成する。これらの電極のラインはドリフト方向Zにイオンミラーを形成するように用いられる。図5は2DTOFシステムの概略図を、システムを通過する典型的なイオン軌道(T)と共に三面図で示している。2DTOF分析計3は、イオン源Sとイオン受領器Dを含む。平行平面内の平板X0, X1, X2,...,Xn、及びX-1, X-2, X-nの2セットがX方向に多重反射させるためのイオンミラー(UpとDown)を、カラムZ1, Z2, ...,Zkの平板のセットがドリフト方向Zの反射のためのイオンミラー(Right)を形成する。イオンミラーのこのような配置によって、イオンが上(Up)と下(Down)の間における複数回の反射と、右(Right)のミラーで一度の反射を行う多重折り返し軌道を有することが可能になる。イオンの軌道はイオン源から始まり、イオン受領器で終わる。
【0016】
ドリフト方向の反射のためのイオンミラーを設置することは、多重反射TOF質量分析法において全く新規な特徴であり、これによりドリフト方向のビームの拡がりをレンズや偏光器の助けなしに避けることが可能になる。このような設計の2DTOF分析計によって、反射の回数を電子的に調整できるようになるが、これは固定レンズを有する従来技術の構成では不可能である。このような特性を実現するために必要なものは以下の通りである。
1)検出器表面到達時に、質量は類似するがエネルギーの異なるイオンパケットが飛行方向に圧縮(収束)される(X収束)。
2)検出器表面到達時に、質量は類似するがエネルギーの異なるイオンパケットがドリフト方向に圧縮(収束)される(Z収束)。
3)Y方向のイオンの動きがZX平面近傍の充分小さな範囲内に限定される。
4)TOFはZX平面に垂直方向のビームの角度、位置の拡がりに殆ど依存しない。
これらの特性を実現するための手段を以下に更に詳細に検討する。
【0017】
一般的に、2DTOF質量分析計のイオン光学における基本構想は、ミラー内の電界が2個の電界の合成であるように設計されている。
【数1】

φ1(x,y)とφ2(z,y)の双方の関数は、静電界の電位に関するラプラスの方程式を充たす。xとz方向のイオンの動きは以下の方程式で記述される。
【数2】

【数3】

通常、y方向の変位はかなり小さくなるため、システムの特徴的な大きさによって、上記の方程式のyをゼロとすることができる。この場合、飛行方向Xとドリフト方向Zの動きは互いに依存しておらず、独立して考えることができる。
【0018】
Xの動きを最初に検討すると、X方向の電位分布は関数φ1(x,0)として表され、これは図6で示すように、複雑な形状となりうる電位井戸の形をとる。X方向における平衡エネルギーK0は、図6で示されるように電位井戸の頂点より下方にあり、イオンを方向転換位置x1、x2の間を何度も反射させる。方程式(2)からは方向転換位置x1、x2間の振れ周期は以下のように導かれる。
【数4】

多くのTOFに適用するため、電位関数 φ1(x,0)の形は、イオンの振れ (4)周期が図7で示したK0の近傍のエネルギーΔKの範囲内においてイオンのエネルギーに依存しないようなものが選択された。関数φ1(x,0)が異なるレベルの精度でこの条件を充足する可能性は無限に存在する。ラプラスの方程式によると、軸に沿った電位分布φ1(x,0)によって、軸近傍の電界も定義づけられる;φ1(x,y)。ミラー間の多重反射のため、電界分布は、yの動きが安定し、飛行時間がイオンのy方向における初期変位(横収差)に依存しない、という要求も充たさなければならない。このような分布は、選択されたクラスの電位関数において、イオンの飛行時間が平衡エネルギーと横方向の位置に依存しないように最適化する手段によって、見出すことが出来る。現実的には、電界分布は電極X1,X2,..Xn, と X-1,X-2,..X-nのセットによって実現される。電極の合計数、サイズ、負荷電位Vx1, Vx2..., Vxnは、X軸にできる限り近傍に所望の電位分布を再生産できるように選択される。最適化されたTOFシステムには、飛行方向に等時性の特性が備わる。これは、同一の質量電荷比を有するが、飛行方向におけるエネルギーの異なるイオンが2個のイオンミラーの中間平面から同時にスタートし、ミラーで一回(又は数回)の反射を受けた後、同一平面に同時に到着するということを意味する。また、このことは、イオンが中間平面を時間を異にして横切る場合、イオンミラー間を数回反射した後にも同一の時間差を有することも意味する。このように、異なるエネルギーを有するイオンが時を異にしてシステムに入った場合、これらのイオンは同一の時間差でシステムから出ることになる。つまり、2DTOFシステムは、同一の質量電荷比を有するが飛行方向におけるエネルギーの異なるイオン同士が飛行方向で数回の反射を受けた後の、時間遅延を維持している。
【0019】
本発明の2DTOFシステムを形成するためには、Z方向に別の電界を構築することが必要であり、これによってドリフト方向における等時性特性が付与される。電位分布φ2(z,y)は、上でXミラーについて記載したものと同様の方法で2Dシステムを最適化することによって見つけられる。特に、φ1(x,y)と同一の電界分布をZ方向の電界で用いることができるが、より小さな電位を用いる。これは、ドリフト方向では、飛行エネルギーがより低いものであるためである。この場合、Z方向の電位分布は、単純に次のように表される。
【数5】

方程式(5)の電界分布によって、X方向のミラーと同一の相対エネルギーの拡がりΔKz/Kzの範囲におけるエネルギーKzで、Z方向の動きに等時性が付与される。後述のように、イオンビームは飛行方向、およびドリフト方向に、類似した相対的なエネルギーの拡がりを有する。このように、方程式(5)による電界はイオンミラーに充分なエネルギー範囲を付与する。この設計の欠点は、Zミラーの長さがX方向の長さの半分になるため、より長い飛行経路が必要な場合には不充分となる可能性がある、という点である。ドリフト方向においてより長い飛行距離が必要な場合には、Z方向の焦点距離がより長いミラーを用いることができる。
【0020】
Z方向の2Dミラーは、飛行X軸に平行で、ドリフト軸Zに垂直に調整された平板電極のセットによって形成することができる。電極kの総数、サイズ、位置、印加電位Vz1, Vz2, .., VzkはZ軸方向の電界分布の特性によって決定される。Xミラーのための平板の他にこのような平板を作るためには、Xミラーの各平板をK+2の断片(segment)に細分割し、各断片の各Zカラムの幅を同一にする。結果的に、2DTOFシステムの上部、及び下部電極平板は、図5に示すように、2N+3のラインとK+2のカラムに配置された平坦な断片とから成る平行なセットで形成される。Xラインの電極はX方向にイオンミラーを形成できるために必要な電位を保持する;Vx1, Vx2, ...,Vxn。これらの電位に重ねられた追加電位は、Z方向に電界Vz1, Vz2, ..,Vzkを作るために印加されたものである。例えば、ZY平面に電界φ2(z,y)を形成するためにVz1と同一の電位をカラムZ1の全ての平板に追加し、Vz2と同一の電位をカラムZ2の全ての平板に追加する、等である。もしくは、言い換えると、ラインiとカラムjの平板電極に印加された電位をVxi+Vzjにするようにする。このような電極配置、および印加電位の重ね合わせ原理によって、これらの間のスペースに、方程式1の電界分布が形成されるであろう。
【0021】
X及びZ方向の境界平板が無限長の場合には、方程式(1)が正確に通用するためのシステムを形成することが可能である。しかし、実際的には、電極は有限な長さであり、これはシステムのコーナー(corner)やバックプレーン(back plane)近傍の電界がひずみ、方程式(1)が適用できなくなることを意味する。(1)が適用できない場合にもシステムを最適化することは可能であるが、X及びZ方向の動きが分離された状況に対処できることが望ましい。2個の平行平板において、電界のひずみがexp(-3.42・X/R)のように指数関数的に崩壊することが知られている。ここで、xはひずみからの距離、Rは平板間の隔たりである。Rの距離では、ひずみが3%の率で崩壊し、2Rの距離ではもとの値の0.1%未満になる。従って、イオンミラーの後方平板(back plate)を充分に広いものとすることで、フリンジング電界(fringing field)の影響を無視できる程度のものにするようなシステムを作ることが常に可能である。イオンの軌道(T)がイオンミラーを形成する平行平板の間の間隔よりも後方平板の近くに接近しないことを確認することが望ましい。これは、各ミラーのバックプレーン(back plane)の幅を平面間の間隔より大きくし、又は、後方電極(back electrode)をいくつかの電極から作ることによって確保し得る。
【0022】
飛行方向、およびドリフト方向の2個の独立電界を重ね合わせることは可能だが、横方向の動きは両方の電界の影響を受ける。Y方向の動きは次の方程式で表される。
【数6】

Y方向の動きは両方の電界の影響に依存するようである。一方、これらの電界の影響は異なる。この理由は、X及びZ方向のイオンのエネルギーに大きな差があるからである。典型的には、Zミラー平板に加えられるイオンのドリフト方向のエネルギーは飛行エネルギーの100倍も小さく、それに対応して、Zミラー平板に印加される電位の最大値もX平板に印加される電位の100倍も小さい。これによって、Z方向のイオンミラーによって形成される電界は、少なくともX軸イオンミラーによって形成される電界より少なくとも2オーダーの規模で小さなものである。そのような理由で、方程式(6)の第2項が第1項より少なくとも2オーダーの規模で小さなものとなる。Z電界の影響が小さいもう一つの理由は、イオン反射の殆どがZミラーの電界自由領域、即ち電界φ2(z,y)がゼロになる領域で生じるからである。Z電界のY方向の動きに対する影響は、イオンがZミラーに入射するときにのみ効果があるものであり、電界φ2(z,y)をyに殆ど依存しないようにすることによってさらに減らすことが可能になる。これは、Z方向に線形的に依存する電界にあてはまるケースである。線形の電界を有するグリッドのないミラーは、線形の電界の始まりの部分ではY方向に依然として依存しているが、このような依存性は局部的なものであり、他のミラーより随分小さい規模のものである。線形の電界を持つミラーは高次の収束を供給しないが、ドリフト方向の動きのためには必要ではない。これは、方向転換の回数がより少ないからである。このような理由から、システムにおけるYの動きにZ電界がおよぼす影響は、X電界の影響と比較して無視できるほど小さいか、又は重要ではなく、Y方向のイオンの動きの最適化はXの動きのみ、少なくとも一次近似(first approximation)にあわせて行うことが可能である。
【0023】
平行平板電極を使用して所望の電界分布を作るための方法を先に記載した。所望の静電界を生成する別の方法を用いることもできる。伝統的なアプローチは、等電位を有する電界表面を、金属製の電極とし、これらの電極に対応する電位を印加することである。このアプローチによると電位分布が電極の形状によって構築され、電子的に変更することはできない。2個の平板の間の空間に所望の電界を得るためのもう一つの方法は、平板表面の様々な深さに電気抵抗の被膜を作ることである。電気抵抗の被膜の深さは、表面上の所望の電位分布から計算される。供給電圧が印加されると、電気抵抗性被膜のため、非線形の電位分布が平板電極の表面に構築され、平板の間に所望の電界分布が生じる。この方法は電界を電子的に調整する可能性を提示しておらず、望ましいものではない。
【0024】
X方向のエネルギー収束の要請は極めて厳格である。なぜなら、イオンは多くの反射を受けるからである。可能な限り広範なエネルギー範囲で、可能な限り縦の距離(Z方向)、及び角度の拡がり(Y方向)の大きな範囲において、より高次に収束させ、かつ収差を最小限とするためには、X方向のイオンミラーを利用することが望ましい。エネルギー範囲全域で理想的な収束特性を有するイオンミラーは、放物線状の電位分布を有するミラーのみである;φ1(x,y)=-c(x2-y2)。残念なことに、このようなミラーでは、横方向(Y方向)の動きが不安定である。他のタイプの電位分布を有するミラーはY方向に安定的な動きを提供するが、エネルギー収束特性が限られたエネルギー範囲のみとなっている。ビームのエネルギーの拡がりが小さいほど、達成されるエネルギー収束は改善する。エネルギーの拡がりの狭いイオンビームを獲得する方法は従来から知られている。このようなビームは、2個の平板の間の領域(パルサー)から、又はイオントラップからイオンをパルス状にすることで形成される。パルサーから注入する場合には、前のパルスのイオンが検出器に到達するまで新しいイオンパルスを注入できない。このため、ビームの僅かな割合しか分析できず、デューティサイクル(duty cycle)が減少する。本発明の2DTOFでは、イオントラップからのイオン注入が望ましい。図8は、US 6,380,666B1に記載の、3Dイオントラップ源の断面図を示している。これは、リング電極101とエンドキャップ102、103のペアから成る。引き出しに先立ち、イオンはRF電位の振動によりトラップ内部に閉じこめられる。中性粒子(典型的にはヘリウムガスが用いられる)と衝突することによって、イオンはトラップの中心の近傍で小雲にまとまる。しばらくすると、エンドキャップに高電位差が印加され、イオンは出口のエンドキャップ103にある孔104を通り、TOFの中に引き出される。様々な種類のイオントラップをTOFへのイオン源として利用することができる。図9はWO 2005083742に記載の、直角に引き出す(orthogonal extraction)リニアイオントラップ源の断面図を示している。このイオントラップ源の操作は、3Dイオントラップの操作と類似している。このトラップには、4個の伸長されたロッド201、202、203、204が含まれる。引き出しに先立ち、イオンはロッド上の振動RF電位によってトラップ内に放射状に、そして、隣接した電極(図示なし)に印加された斥力DC電位によってトラップ軸沿いに、閉じこめられる。イオンはトラップの中央近傍で、トラップ軸に沿って引き延ばされた小雲にまとまる。引き出しの間、ロッド203と204の間に高電位差が印加され、追加的にロッド201と202にも印加される。イオンはロッドの一つにある狭いスロット205を通ってトラップから放出される。
【0025】
引き出される前、イオンはバッファーガスと略同一のエネルギーを有する。これは、飛行エネルギーと比較すると極めて小さい。静電界におけるイオンの動きの特性により、イオンエネルギーはスタート地点と最終ポイントとの間の電位差に等しい。従って、引き出しの後は、イオン間のエネルギー相違はイオン雲を横切る引き出し電位差に等しい。他方、平均的な飛行エネルギーは雲の中心と放出電極の間の電位差に等しい。引き出し電界が略均一であると仮定すると、ビームのエネルギーの拡がりは雲の幅の、雲の中心と引き出し電極との間の距離に対する割合で推定することが可能である。直径0.5mmのイオン雲で、引き出し距離が5mmであれば、この割合は0.1であり、対応するエネルギーの拡がりは10%より小さくなる。
【0026】
エネルギーの拡がりを更に減らすことは、図10の2段階加速源を利用することによって達成できる。これは、分割されたロッド302を有するリニアイオントラップに基づく。イオントラップの下流には、1対のダイヤフラム(diaphragm)電極303があり、第二加速を供給する電界を形成している。イオンはトラップされ、雲301にまとまる。雲301はイオントラップのZ軸に沿って引き延ばされている。引き出しのため、トラップの全ての断片に電位分割器304によって電位差が加えられている。付加的な加速電圧U2が電位分割器305によって第2加速段階の電極に印加されている。本システムのZ軸上の電位分布307は引き出しのために構築されている。イオンは引き出し電極306に設けられた孔を通り、孔と雲中央の元の位置との間の電位差に等しい平均エネルギーでイオントラップを離れる。雲のエネルギーの拡がりは、孔までの距離に対する相対的な雲のサイズによって決定され、10%未満と成りうる。第二加速距離303を通過すると、全てのイオンの平衡エネルギーは引き出し電極と加速段階308の最後の電極との間の電位差に等しい量まで増加する。イオン間のエネルギー差に変化はないため、エネルギーの合計は増加しても相対的なエネルギーの拡がりは減少する。例えば、100eVのビームを1kVまで加速することによって、元のエネルギーの拡がり10%は1%まで減少する。
【0027】
ロッドを断片化する他の手段は、引き出し電界をリニアイオントラップ内に作るために用いることができる。例えば、線形電位分布をトラップのZ軸沿いに形成するため、イオントラップの表面は電気抵抗的に被膜される(resistively coated)か、又は、追加的な傾斜電極をトラップ内のメインのトラップ電極の間に設置することができる。同様に、第二加速段階のための電界を、1対のダイヤフラム303によってではなく、抵抗被膜(resistive coating)を持ったチューブによって形成することができる。放射状にビームを収束させるために、第一と第二の加速電界はいずれも不均一であるかもしれない。これは、電位分割器304と305の中の抵抗鎖(resistor chain)を適切に選択することによって、又は、抵抗被膜の深さを適切なものにすることによって達成されうる。
【0028】
上のセクションではイオンをイオントラップ源からエネルギーの拡がりを所望の小ささとしたまま放出する種々の方法について説明した。
【0029】
提案された2DTOFシステムにイオンを注入する種々の方法を利用することができる。もっとも単純な場合、イオンビームはイオン源(S)からシステムにX軸に対して小さな角度θで直接注入される(図11A)。2DTOF 401の内部では、イオンビームはX方向に多数の反射を、Z方向に一度の反射を受け、最終的には検出器Dに到達する。この注入方法では、飛行方向(X軸方向)のエネルギーは、ドリフト方向(Z軸方向)の注入エネルギーと同様、次のように注入角度によって決定される;Kx = K0cos2(θ)、KZ = K0sin2(θ)。ここで、K0はビームのエネルギーの総量である。システムに入った後、イオンビームはドリフト方向に一度の反射を、X方向に偶数回の反射を受ける。このような軌道を実現するためには、X及びZ方向の反射周期はこの条件を充足しなければならない;Tz(Kz)/Tx(Kx) = 2n, n = 1, 2, ...。これは、Z及びXイオンミラーに印加する電圧として適切なものを選択することによって、常に実現可能である。ここで、X、及びZの各方向における相対的なエネルギーの拡がりは、注入ビームにおけるものと同一であるということについて言及しておくことは重要である。したがって、たとえドリフトエネルギーが飛行エネルギーと比較して極めて小さなもの、例えば1eVであったとしても、飛行方向(X)におけるエネルギーの拡がりが1%であれば、ドリフト方向(Z)におけるエネルギーの拡がりも1%である。X方向、及びZ方向のイオンミラーによって充分なエネルギー収束が提供される場合の相対的なエネルギーの拡がりは同一だが、絶対的なエネルギーは異なる。注入角の値によるが、X及びZ方向のエネルギーが2オーダーの程度で異なること(例えば、注入角tg(θ) = 0.1の場合)もあり得る。最新のTOF質量分析法では、イオンミラーは、数keVという比較的高い飛行エネルギーで、数%の相対エネルギーで最適化される。静電界におけるイオンの動きの特性によって、全ての供給電圧が比例して減少する場合、飛行エネルギーの低いところでも相対的なエネルギーの拡がりを同一として、同一のミラーで同一のオーダーのエネルギー収束が提供される。このことは、ドリフト方向Zにおけるイオンミラーがエネルギーの小さな場合にも適するように設計され得るということを示している。
【0030】
2DTOFシステムに対する他の注入方法を図11Bに示す。この場合、2個の偏向器402、403が用いられる。イオンビームはイオン源(S)から放出され、飛行エネルギーKxでX軸に平行に移動する。偏向器402を通過した後、イオンはZ方向の追加エネルギーKzを獲得し、ビームは小さな角度で偏向される;
【数7】

イオンがZ方向で受け取ったエネルギーの総量は、偏向器を通過する飛行時間に依存し、従ってX方向のエネルギーに依存する。元のビームがX方向に小さなエネルギーの拡がりを有する場合、偏向器を通過した後、ビームはドリフト方向Zに同様の相対的なエネルギーの拡がりを有するだろう。前のケースでは、両方向における相対的なエネルギーの拡がりは同一である。ミラーX、及びミラーZは、同様の相対エネルギーの拡がりの範囲に対応したエネルギーKx、及びKzでエネルギー収束するように最適化されている。図11Bの注入方法には、注入角θを電子的に修正できるという利点がある。より小さな注入角度を利用した場合、反射の回数を増加させることが可能であり、従って、飛行時間、及び質量分析の分解能を増加させることになる。この特徴によって、システムは従来技術と比較してかなり有利となる。VerenchikovとYavorのシステム(図2)では、注入角は固定されており、レンズの位置によって決定される。これは変更することはできない。反射回数を増加させる唯一の方法は、レンズLD1、及びLD2におけるパルス偏向を利用するものであり、結果的にイオン軌道を循環状にし、質量範囲の制限を上げる。図11Bにおけるシステムにはこの欠点がないが、異なる注入角を利用するにはイオンミラーX、及びZに印加される電圧を対応するものに再調整する必要がある。異なるエネルギーに対応してミラーを再調整するには、供給電圧を比例的に変化させることだけを要する。例えば、X方向のエネルギーが10%増加し、Z方向のエネルギーが50%減少する場合、供給電圧Vx1, Vx2, ...,Vxnは全て10%増加し、供給電圧Vz1, Vz2, ..., Vzkは50%減少し、Vxnに各カラムの電圧が重複印加される。提案された2DTOFでは、異なる角度での注入が可能である。
【0031】
図11Cに示すように、電界自由領域に追加的に設置された偏向器404を利用することによってビームを循環軌道に誘導することも可能である。ビームがシステムに注入される時、この偏向器のスイッチは切られ、ビームに影響を及ぼさない。Zミラーで最初の反射が行われた後、ビームは出口に戻り偏向器404に対して二度目の通過をする。このとき、偏向器のスイッチが入れられ、ビームはZミラーに向かって戻される。このように、偏向器のスイッチが入っている限り、ビームは偏向器404とZミラーの間で反射される。充分な回数の反射の後、偏向器のスイッチは切られ、ビームは検出器Dに移されるか、又は、後続の過程に移される。同様のタイプの操作が、Z方向に2個のミラーを有する、図12で示された閉鎖性の2DTOFシステム501内で可能である。この場合、追加的な偏向器504がミラーの電界自由領域に設置され、Y、及びZ方向の両方のビームを一斉に偏向することができる。イオン源Sからのイオンビームは2個の偏向器502、及び504によって飛行経路上に導かれる。注入の直後、偏向器504のスイッチは切られ、ビームはXとZミラーの間で充分な回数反射される。最終的に、偏向器504のスイッチが入れられ、ビームは偏向器503を通り、検出器Dの方に向けて導かれる。
【0032】
循環状の軌道の上を何度も方向転換させるシステムでは、一度のショットで放出される質量範囲は制限されており、Z方向の反射回数に反比例して減少する。望ましい実施例では、たった一度Z方向に反射させるだけでも充分な長さの飛行経路が得られるため、Z方向における方向転換の回数を少なくすることが可能である。一度の方向転換による飛行経路が不充分な場合には、図13に示すように2個のZミラーを有する閉鎖システムを用いて、より長い飛行経路を得ることができる。この場合、イオンビームは、離れた位置にある2個の偏向器502、504を利用してシステム内に導かれる。偏向器504は2DTOF分析計の平面内のビームをY方向に偏向させることによって整列させ、また、ビームをZ方向に偏向させることによってドリフト方向の速度を付与する、という2つの方法で用いられる偏向器である。2DTOFシステム内部におけるビームの軌道は、イオンビームが、Z方向の第一の反射の後、偏向器504、及び505の間を通過し、1対の偏向器504、505を通ってシステムを離れる前にZ方向で再度反射を受けるようにアレンジされている。X方向における反射回数は、ビームが偏向器504、505に交差しない限り、注入角度を適切に決定することによって調整可能である。ドリフトのZ方向における反射回数は、偏向器が充分小さく、ビームの軌道が偏向器に交差しない限り、さらに大きくすることが可能である。
【0033】
静電的なセクター電界を、イオンを誘導し、又は2DTOF内の飛行経路から誘導するために、偏光器を利用する代替手段として利用できるということは高く評価されるであろう。
【0034】
上記の検討は、システムを実際上構築し、その操作方法を説明することが可能であることを示している。この種類のシステムをいかに利用すれば改良されたTOFシステムを構築でき、又は既存のTOFシステムのパフォーマンスを改良できるかについて、これから検討する。
【0035】
図11、12、13に示したように、本発明に係る2DTOFシステムの実施例は、高い分解能を有する独立型の質量分析計として利用することが可能である。高分解能を得るためには、同様の質量を有するイオンパケットを検出器(D)の表面で圧縮(エネルギー収束)しなければならない。つまり、イオンパケットは検出器表面に垂直な方向、つまり飛行方向Xに圧縮される。これは、種々の方法によって実施可能かもしれない。一個の加速ステージを有するシンプルなイオン源(図8,9)を利用する場合、同一の質量電荷比を持つが、エネルギーの拡がりのあるイオンは、イオン源から、加速ステージの約2倍の長さの距離に位置する、等時性のポイントで収束するようになる。そして、この等時性のポイントを通過すると、高いエネルギーを有するイオンはエネルギーの低いイオンより前に移動する。典型的には、加速ステージが短い(例えば、1〜10mm)場合など、実際には等時性のポイントは2DTOFシステムの外部、すなわち上流に存在するかもしれない。この場合、イオンは2DTOFシステムに入るまで、かなりの距離を電界自由飛行をするため、イオンはその速度の差によって分離されることになる。このような分離はイオンエネルギーに非線形に依存する。イオンエネルギーとイオン速度の間には非線形の関係が存在するからである。
【0036】
方程式4と図7を用いて示したエネルギー依存周期T(K)は最適化された等時性システムに基づく。このシステムは、先に述べたように、同一の質量電荷比を持つがエネルギーが異なり、時を異にしてシステムに入るイオン相互の時間差を維持するであろう。このように、先に述べた最適化された等時性のシステムは、2DTOFシステムの外部における電界自由飛行に基づいて生じる、上述のイオン分離を補正するために用いることができない。従って、検出器Dのところでイオンビームのエネルギー収束を行うことができない。
【0037】
この問題は、本発明に係る2DTOFの実施例により克服される。本実施例では、2DTOFが修正され、システム外部での電界自由飛行によるイオン相互の時間差がシステム内部で補正されるようになっている。これを行うため、飛行方向、即ちX軸方向のイオンミラーが最適化され、飛行方向における一回の反射の周期T(K)が、図7に示すように、エネルギーに非依存でないように、しかし、小さな1次(および高次)収差を有するようにされている。このような収差は、数回の反射の累積により、同一の質量電荷比を有するがエネルギーの異なるイオン相互の時間差を補正するようにアレンジすることができる。この時間差は、システム外における電界自由飛行によって分離されたことに起因するものである。このように、検出器ではより高次の収束を実現することが可能である。この方法では、より低いエネルギーのイオンに先だって2DTOFに入る、より高いエネルギーのイオンが、より低いエネルギーのイオンの後に2DTOFを出るようにアレンジすることが可能であるため、全てのイオンが、エネルギーに関係なく検出器に同時に到達する。同様に、エネルギー依存性を有する反射周期T(K)を利用して、より低いエネルギーのイオンと同時に2DTOFに入ってくる、より高いエネルギーのイオンが、より低いエネルギーのイオンの後に2DTOFを出て、再び全てのイオンが、そのエネルギーに関係なく、検出器に同時に到達するようにする。
【0038】
検出器におけるエネルギー収束を実現する第2の方法では、イオン源の設計を異なったものにする必要がある。この場合、追加される加速ステージは、第一の加速ステージの直後、第一収束の前に誘導される。このような設計は、図8の3Dイオントラップ源や図9のLIT源と伴に利用することができるが、ここでは図10の軸方向への放出源と組み合わせて説明する。これまで説明したように、加速を追加することは、ビームの相対的エネルギーの拡がりを減少させるのに有用である。加速の追加は、第一の収束位置も変化させる。引き出しパルスが加えられると、第一加速ステージからの出口の近傍に位置するイオンが最初に放出されるが、低いエネルギーしか有しない。これは、加速距離が短いからである。2個のステージの加速源では、イオンは第二加速電界によって追加的に加速される。このため、低エネルギーイオンと高エネルギーイオンの間では、飛行経路に沿った分離が促進し、より高エネルギーのイオンが第二加速ステージを離れてからより低エネルギーのイオンに追いつくためには、より長い時間を要する。結果として、第一収束の位置はより遠いところにシフトする。第一収束の実際の位置は、各ステージの電界強度と長さに依存し、所要の距離でエネルギー収束するように最適化することが可能である。シミュレーションによると、第一、及び第二加速でのギャップがそれぞれ10mm、50mmで、電界強度がそれぞれ96V/mm、130V/mmの場合には、第一収束が400mmの距離で生じるが、これは検出器に適合するようにアレンジすることができる。源と検出器の間の距離が充分であるので、図11Bに示すように、イオンビームが検出器に到達する前にイオンビームを2DTOFシステム内に方向転換させることができる。この場合、ビームを2DTOFシステム内に方向転換させても、収束位置を変化させてはならない。かかる要請はX方向における飛行時間がイオンの長手方向のエネルギーに依存しない場合に充足される。これは、先に記載したように、最適化された等時性システムにおいては、同一の質量電荷比を有するがエネルギーの異なるイオン相互の時間差は、このシステムによって変化を受けず、維持されるからである。即ち、イオンがシステムを出るときの時間差は、イオンがシステムにはいるときの時間差と全く同一となり、2DTOFが除外されたような場合と同様に、検出器のところで収束されることになる。勿論、システム内部での飛行経路の延長のために、質量電荷比の異なるイオンの分離が促進し、質量分解能が改善されることになる。先に、本発明の他の実施例に関連して記載したように、飛行方向における等時性という特性は多くの方法で実現することが出来る。システムを最適化することにより、X方向における一度の反射による飛行時間がイオンエネルギーに依存しないようにすることもできる。この場合、システムはX方向の反射回数と同数の等時性ポイントを有し、ビームは空間内で複数回圧縮される。X方向におけるイオンミラーを最適化し、等時性ポイントが反射を数回経た後に生じるようにすることも、軌道が全て終わった後に生じるようにすることさえも可能である。このような種類の最適化は、空間の帯電のひずみの観点から望ましい。なぜなら、後者の場合、イオンパケットは殆どの時間、圧縮されない状態で移動するからである。ドリフト方向においては、Zビームを偏光器402からの出口のポイントから、偏光器403への入り口ポイントの間で、再収束するべきである。ドリフト方向における、これらの2ポイント間のイオンの飛行時間は、ドリフトエネルギーから充分独立しているべきである。実際には、ドリフト方向では高次の収束は必要とされていないが。イオンビームが検出器Dの幅より狭く、質量分析の分解能がビーム幅に影響されない限り、伝送における損失は発生しない。
【0039】
2DTOFシステムにおける等時性の特性のため、2DTOFシステムは従来からのいずれのTOFシステムにおいても、質量分析の分解能を改善するための遅延線として使用することが可能である。図14Aはこのようなシステムの具体例を示している。従来からのTOFシステムは、源(S)とイオンミラー601を有しており、イオンミラー601は、類似の質量を有するイオンパケットが検出器(D)表面直前で収束され(空間内で圧縮され)るように構築され、最適化されている。これは、類似の質量を有するイオンの相対位置と長手方向のエネルギーとの間の、特定の相関関係に基づいて常に生じる。本発明に係る2DTOFシステムを最適化すると、2方向(X及びZ)の飛行時間を、一定の範囲におけるイオンエネルギーから独立したものとすることができる。このような特性によって、2DTOFシステムを電界自由ビーム飛行経路のいずれの場所に設置することも可能となり、また、イオンパケットの遅延線として利用することが可能となる。図14Aでは、本発明に係る2DTOFシステムは、イオン源とイオンミラー601との間におけるビームの電界自由飛行経路上に設置されている。偏光器402によってイオンビームは2DTOF内に導かれ、偏光器403はビームをミラー601に向かう飛行経路に戻して誘導するために用いられる。同一の質量電荷比を有するが、エネルギーの異なるイオンの空間的分離は、イオンが偏光器403を通って2DTOFを離れる場合と、2DTOFが完全に省略された場合とで同一となる。これは、イオンの飛行時間が、エネルギーから独立した同一量だけ増加するためである。従って、イオンパケットは残りのシステムによって、2DTOFが存在しない場合に生じるのと同様に検出器表面で収束されるが、異なる質量電荷比を有するイオンは2DTOF内での延長された飛行時間によって時間的に分離が促進され、結果的に質量分解能がかなり改善される。
【0040】
2DTOFシステムの他の適用を図14Bに示す。この場合には、イオン選択のための分離装置として用いられている。2DTOFにおける飛行時間のかなりの差によって、質量の異なるイオンは2DTOFを出た後、空間内で分離される。偏光器403をパルスモードで使用し、イオンをほんの短い時間で伝送する。この手段によって、質量範囲か、下位の範囲のいずれかが高分解能で選択される。2DTOFの下流には、衝突セル603が存在し、衝突ガスを含むチャンバーを利用することができる。アルゴン、クリプトン、又はキセノンのような分子質量の高いガスが望ましい。選択されたイオンはバッファーガス分子との衝突によって活性化され、開裂される。フラグメントはイオンミラー602(この場合にはリフレクトロン)に向かって進行を続け、検出器のところで収束され、2DTOFで選択されたイオン種のフラグメントの質量スペクトルを産出する。保存則により、フラグメントは元の親イオンと略同一速度であり、従って、より低いエネルギーを有する。この場合、ミラー602は大きく異なったエネルギーのイオンを収束できるものである必要があり、従って、飛行軸に沿って略放物線状の電位分布を有するミラーが望ましい。
【0041】
記載した実施例は、例示として示したものである。当業者であれば、請求項に沿う範囲内で多数の変更が可能であることが分かるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電界発生手段を含む多重反射TOF質量分析器であって、前記静電界発生手段はそれぞれがドリフト方向に長い構造を有する、2個の平行なグリッドのないイオンミラーを規定するように構成され、前記イオンミラーは、前記ドリフト方向に直交する飛行方向におけるイオンの多重反射と前記ドリフト方向におけるイオン変位とによって形成される折り返しイオン経路を提供するものであり、前記静電界発生手段は、前記ドリフト方向にイオンを反射するための、付加的なグリッドのないイオンミラーをさらに規定するように構成され、それにより、作動時にイオンは前記折り返しイオン経路に沿った異なる飛行時間のために質量電荷比によって空間的に分離され、略同一の質量電荷比を有するイオンが前記飛行方向、及び前記ドリフト方向に関してエネルギー収束されるものである、多重反射TOF質量分析器。
【請求項2】
請求項1に記載のTOF質量分析器であって、前記2個の、平行な、グリッドのないイオンミラーはそれぞれ、前記ドリフト方向に平行に延びる個別の電極セットを有し、前記の付加的なイオンミラーは前記ドリフト方向に垂直に延びる電極セットを更に有し、前記各電極セットは前記折り返しイオン経路の平面に関して対称性を有する、TOF質量分析器。
【請求項3】
イオンを前記折り返しイオン経路上に誘導する誘導手段を含む、請求項1、又は請求項2に記載のTOF質量分析器。
【請求項4】
前記折り返しイオン経路からイオンを誘導する誘導手段を有する、請求項3に記載のTOF質量分析器。
【請求項5】
前記誘導手段は偏向手段を有する、請求項3、又は請求項4に記載のTOF質量分析器。
【請求項6】
請求項5に記載のTOF質量分析器であって、前記偏向手段は、イオンが前記折り返し経路に誘導される角度を、前記飛行方向に対して、静電的に制御可能であるTOF質量分析器。
【請求項7】
請求項3、又は請求項4に記載のTOF質量分析器であって、前記誘導手段が静電セクター電界手段を有するTOF質量分析器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のTOF質量分析器であって、静電的に制御可能な偏向手段を含み、該偏向手段は、前記折り返しイオン経路に配置され、イオンを前記付加的なイオンミラーに選択的に反射するためのものであって、それにより前記折り返しイオン経路は循環構造となっている、TOF質量分析器。
【請求項9】
請求項8に記載のTOF質量分析器であって、前記折り返しイオン経路上に配置された前記静電的に制御可能な偏向手段は、イオンを前記付加的なイオンミラーまで繰り返し選択的に反射させるようにアレンジされているTOF質量分析器。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のTOF質量分析器であって、前記付加的なイオンミラーを前記長手構造の各端部に有するTOF質量分析器。
【請求項11】
偏向手段を有する請求項10に記載のTOF質量分析器であって、前記偏向手段は前記付加的なイオンミラーの間に配置され、イオンを前記折り返しイオン経路に選択的に誘導し、又はイオンを前記折り返しイオン経路から選択的に誘導するようにアレンジされている、TOF質量分析器。
【請求項12】
請求項11に記載のTOF質量分析器であって、前記偏向手段は前記付加的なイオンミラーの間に配置され、前記付加的なイオンミラーで反射させるために前記折り返しイオン経路上にイオンを誘導する第一の偏向手段と、前記付加的なイオンミラーでの反射の後に前記折り返しイオン経路からイオンを誘導する第二の偏向手段を有するTOF質量分析器。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のTOF質量分析器であって、前記エネルギー収束は前記飛行方向における各反射周期がイオンエネルギーに依存するようなものであるTOF質量分析器。
【請求項14】
イオンを供給するイオン源と、該イオン源によって供給されるイオンを分析する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のTOF質量分析器と、検出器と、を有するTOF質量分析計であって、該検出器は、同一の質量電荷比を有しエネルギーの異なるイオンを、前記TOF質量分析器によって質量電荷比によって分離された後に、略同時に受け取るものである、TOF質量分析計。
【請求項15】
請求項14に記載のTOF質量分析計であって、前記TOF質量分析器での前記エネルギー収束は、前記飛行方向における前記各反射周期がイオンエネルギーに依存しており、同一の質量電荷比を有しエネルギーの異なるイオンの間の時間差を補正するために十分な効果をもち、前記時間差は前記TOF質量分析器の外部の電界自由飛行に起因するものであり、これによってイオンが略同時に前記検出器に到達し得るものである、TOF質量分析計。
【請求項16】
請求項15に記載のTOF質量分析計であって、前記補正は、連続的にエネルギーが減少しつつTOF質量分析器に入るイオンを、連続的にエネルギーを増加しつつTOF質量分析器から出すようなものであるTOF質量分析計。
【請求項17】
請求項14に記載のTOF質量分析計であって、前記TOF質量分析器における前記エネルギー収束は、前記飛行方向での前記各反射周期がイオンエネルギーに依存しないようなものであり、前記イオン源は、前記イオン源によって供給され、同一の質量電荷比を有しエネルギーの異なるイオン等時性ポイントを前記検出器のところに形成するべくアレンジされるようなものであるTOF質量分析計。
【請求項18】
請求項17に記載のTOF質量分光計であって、前記イオン源は、イオン蓄積素子と、該イオン蓄積素子からイオンを放出させる手段と、エネルギーを増加させるために放出されたイオンを加速する手段と、を有し、それにより、放出されたイオンの相対的なエネルギーの拡がりを減少させ、検出器のところで前記等時性ポイントを形成するものであるTOF質量分析計。
【請求項19】
付加的な質量分析器を有する請求項14に記載のTOF質量分析計であって、該付加的な質量分析器は、前記TOF質量分析器と前記検出器との間の飛行経路上に配置され、前記TOF質量分析器でのエネルギー収束は、前記飛行方向における前記各反射周期がイオンエネルギーに依存せず、前記TOF質量分析器が、同一の質量電荷比を有しエネルギーの異なるイオンを同量遅延させる効果を持つ、TOF質量分光計。
【請求項20】
前記TOF質量分析器によって遅延されたイオンを開裂させる開裂手段を有する、請求項19に記載のTOF質量分析計であって、前記TOF質量分析器は偏向手段を有し、該偏向手段は、選択された質量電荷比範囲を有するイオンを、前記折り返し手段から前記開裂手段に誘導するようにアレンジされている、TOF質量分析計。
【請求項21】
請求項20に記載のTOF質量分析計であって、前記開裂手段は衝突室であるTOF質量分析計。
【請求項22】
請求項19から請求項21のいずれか1項に記載のTOF質量分析計であって、前記付加的な質量分析器はリフレクトロンを有するTOF質量分析計。
【請求項23】
イオン蓄積素子と、該イオン蓄積素子からイオンを放出する手段と、該放出されたイオンを加速してそのエネルギーを増加させ、放出されたイオンの相対的なエネルギーの拡がりを減少させる加速手段と、を有するイオン源。
【請求項24】
請求項1に記載の多重反射TOF質量分析器であって、添付の図面を参照して本書面で実質的に説明されているTOF質量分析計。
【請求項25】
請求項14に記載のTOF質量分析計であって、添付の図面を参照して本書面で実質的に説明されているTOF質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−506349(P2010−506349A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516766(P2009−516766)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/JP2007/070400
【国際公開番号】WO2008/047891
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】