説明

多重毛管センサ分析システム

ヒトまたは動物の体液を分析するための毛管センサ分析システムが開示されており、該システムは、毛管センサと評価装置(2)とを備えており、該毛管センサには少なくとも2つの壁部によって囲まれ、試薬を含む毛管ダクトが設けられ、分析を実行し、分析されるべきサンプル液と接触させるために、その取込口(13)がサンプル液に接近し得るように、毛管センサ(14)を測定位置(22)に位置づけるために、該評価装置には毛管センサホルダ(23)が設けられ、当該サンプル液は、毛管力により毛管ダクト内に浸透してこれを充填する。前記毛管センサは多数の毛管センサストリップ(3)として具体化され、該センサストリップは複数の毛管センサ(14)を有し、該毛管センサは互いに相前後して設けられている。多数の毛管センサストリップ(3)は前記評価装置(2)の毛管センサホルダ(23)内でガイドされ、保持され、前記ストリップ(3)の1つの毛管センサが測定位置(22)に設けられ、その取込口(13)が接近することができてサンプル液(19)と接触し、該多数の毛管センサストリップ(3)が評価装置内で該多数の毛管センサストリップ(3)の連続した毛管センサが測定位置(22)に運搬されるように移動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中に含まれている分析物に関して試料液を分析するための毛管センサ分析システムに関するものであり、ならびに、そのようなシステムの構成要素として適している多重毛管センサストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に人間や動物の体液等の液体試料の成分を定性的、定量的に分析するために、一回だけの使用が意図される分析部材と、特定の型式の分析部材向けとして専用に設定された評価装置とで構成される分析システムが広範囲で用いられている。分析を実施するために、専門界では「バイオセンサ」とも呼ばれる分析部材を試料と接触させる。バイオセンサに含まれる少なくとも1つの試薬と試料との反応が、測定可能な物理特性(測定量)の、分析を特徴づける変化につながる。評価装置は、測定量を測定し、測定された測定値に基づいて所望の分析情報(通常は分析物の濃度)を判定するするための測定・評価電子装置を含んでいる。
【0003】
開発の初期の時代には、特に、試薬を含む少なくとも1つの試験領域を備えるプラスチック支持体からなる試験用ストリップの形態の分析部材が広く用いられていた。たとえば指への穿刺で得られた血液滴を分析するために、指に付着している血液を試験領域の上に直接載せる。その後で血液の余剰分を拭きとるか、洗い落す。試験領域に含まれる試薬と血液の反応が試薬の色の変化につながり、その変化を、評価装置に含まれる測光器で評価することができる。
【0004】
しかしこのような手順にはいくつかの欠点がある。特に、試験領域に浸透して分析に利用される試料量の変動が比較的大きい。さらに、少なからぬ利用者にとって取扱が困難である。このことは特に、分析システムが患者自身によって利用するための用途に定められている場合(「ホームモニタリング」)に当てはまる。そのような利用者はしばしば疾患および/または高齢のために運動の正確さが制約されているからである。
【0005】
このような問題を克服するために、試料液の取込口と排気口とを備える、少なくとも2つの壁部で包囲された毛管通路を有し、その毛管通路の中に分析に必要な試薬を含んでいる毛管センサが、同じくすでに何年も前から提案されている。このような毛管センサを使用するときは、試料液の液滴(通常は血液)を取込口に接触させ、毛管作用によって毛管通路に吸い込み、その中で分析にとって特徴的な反応が行われる。それにより、いっそう簡単な取扱と、反応に関与する試料液の正確な調量とが実現される。
【0006】
比色毛管センサは、たとえば次の文献に記載されている:
1)米国特許第4,088,448号明細書
2)英国特許出願公開第2090659A号明細書
3)欧州特許第0057110号明細書
4)国際公開第86/00138号パンフレットには、分析が電気化学の原理に依拠する毛管センサが記載されている。この場合、毛管通路は少なくとも2つの電極(ワーク電極とカウンター電極)を含んでおり、試薬は、分析反応の結果として電極で電気的に測定可能な(電流または電圧の)変化が生じるように選択されている。評価装置との所要の接続を成立させるために、この毛管センサは、一方では電極と接続され、他方では毛管センサを評価装置へ差し込んだときに相応の装置接触部と接触し、それによって装置の測定・評価電子装置への電気接続を成立させるセンサ接触部を有している。このような電気化学式毛管センサの比較的最近の実施形態は、たとえば次の文献に記載されている:
5)米国特許第5,437,999号明細書
6)国際公開第99/32881号パンフレット
7)米国特許第6,103,033号明細書
8)特開2000−2588382のアブストラクト
9)米国特許第6,071,391号明細書
【発明の開示】
【0007】
以上を前提とする本発明の技術的な課題は、毛管センサによる体液の分析、特に血液の分析を、特に簡単な取扱性という面でさらに改善することにある。
【0008】
この課題は、上に説明した形式の毛管センサ分析システムにおいて、毛管センサが、毛管センサストリップの中に相前後して配置された複数の毛管センサをそれぞれ備える多重毛管センサストリップとして構成されており、この多重毛管センサストリップは評価装置の毛管センサ保持部で、ストリップの毛管センサの取込口がそのつど試料液との接触のためにアクセス可能なように案内・保持されており、多重毛管センサストリップは評価装置の内部で、毛管センサストリップの相前後して連続する毛管センサが測定位置へ運ばれるように可動であることによって解決される。これに準ずる多重毛管センサストリップも、本発明の対象物である。
【0009】
本発明のシステムは電気化学式毛管センサで作動するのが好ましい。1つの有利な実施形態に基づいて、評価装置が切断装置を有しており、この切断装置により、測定が実施されるたびに、測定時に使用された毛管センサが多重毛管センサストリップから切り離されると、格別に簡単な取扱性が実現される。
【0010】
毛管通路を備えていない従来式の比色分析部材については、複数の分析部材が1つのストリップにまとめられている設計形態がすでに以前から公知である。たとえば
10)欧州特許出願公開第0299517A2号明細書
には、多数の多層分析部材を含むストリップ状の分析フィルムが使用される分析システムが記載されている。このストリップ状の分析フィルムは装置の内部で第1の巻枠に巻かれて準備されており、使用後は第2の巻枠に巻き取られる。これに類似する設計形態は、
11)ドイツ特許出願公開第19819407A1号明細書
にも記載されている。相互に結合された一連の比色分析部材からなる多重ストリップの例は、
12)米国特許第5,757,666号明細書、
13)ドイツ特許出願公開第19714674A1号明細書、
14)米国特許第6,027,689号明細書
から公知である。
【0011】
しかしこれらの設計形態は、たとえば毛管通路の組み込みやこれと結びついた製造プロセスの特殊性、および適用時の必要性(たとえば取込口のアクセス性)などから生まれる固有の問題がある毛管センサには適していない。電気化学式毛管センサでは、たとえば電気接触の必要性によって、これに付け加わる特殊性が生じる。
【0012】
次に、図面に模式的に示されている実施例を参照しながら本発明を詳しく説明する。その中に記載されている特殊性は、本発明の有利な実施形態を生み出すために単独でも組み合せの形でも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示す多重毛管センサ分析システム1は、評価装置2と、評価装置1へ交換可能に挿入することができる多重毛管センサストリップ3とで構成されている。図示した例では、多重毛管センサストリップ3は、評価装置2のハウジング5の中で中空の回転可能なリール6によって湾曲した状態で巻き取られた柔軟なセンサテープ4として構成されている。
【0014】
センサテープ4とリール6は、評価装置2へ交換可能に挿入することができる密封されたカセット8の内部にある。センサテープ4の前側端部は柔軟なシール部9を備える取出口10を通ってカセット8から突出しており、2つの搬送ロール11のあいだに挟み込まれ、ハウジング2の開口部12から突き出しており、多重毛管センサストリップの前端にある取込口13が、試料液と接触させることができるようにアクセス可能になっている。
【0015】
図2は、このプロセスの原理図を示している。平面図で示されている多重毛管センサストリップ3は、センサテープ4の連続する区域で形成された、相前後して配置された複数の個別毛管センサ14a−14dで成り立っている。毛管センサ14は、試料液の取込口13a−13dと排気口17a−17dとをそれぞれ備える毛管通路15a−15dをそれぞれ含んでいる。
【0016】
図示した有利な実施形態では、毛管センサの毛管通路15は多重毛管センサストリップの長手方向に延びており、それぞれの取込口と排出口が互いに向き合うように、互いに一直線上につながっている。毛管通路15の所要の分離は、本例では、センサテープ4全体を貫通し、少なくとも毛管通路15の幅全体にわたって延び、取込口13と排気口17とを同時に形成する切欠き16によって構成された流動阻止部によって実現される。
【0017】
互いに一直線上に並んだ状態でつながっている毛管通路と、(その結果として)互いに向き合う取込口および排気口とを備える図示した実施形態は、生産技術の面から特別に好ましい。このような多重毛管センサストリップは、後でさらに詳しく説明するように、連続式の方法により簡単なやり方で製造することができ、ストリップの長手方向に延びるテープですべての生産工程を実施することができ、生産方向に対して横向きの運動を必要としない。壁部のうち少なくとも1つを貫通し、毛管通路の幅全体にわたっての延びる切欠きの形態の流動阻止部は、機能の点でも生産技術の点でも格別に好ましいが、流動阻止部をそれ以外の形態で、たとえば毛管通路の相応の区域の疎水化によって、具体化することもできる。
【0018】
分析を実施するために、一滴の試料液、たとえば指18への穿刺によって得られた血液滴19を、多重毛管センサストリップ3の一番前の毛管センサの取込口と接触させて、試料液がストリップ3の一番前のセンサ14aの毛管通路に吸い込まれるようにする。その毛管通路15aが満たされると、その中に含まれる試薬との反応が行われ、次いで、分析にとって特徴的な測定量の測定が行われる。適用する生化学分析法に関しては、本発明は公知の毛管センサと異なっていないので、この点については詳しい説明をする必要をみない。
【0019】
測定を実施した後、使用した一番前の毛管センサ14aを切断装置20で多重毛管センサストリップ3から切り離して処分する。次いで、多重毛管センサストリップ3を搬送ロール11によってさらに搬送し、次に続く毛管センサ14bが測定位置22へ来るようにする。このように、図示した実施形態ではカセット8と搬送ロール11が、全体として符号23の付された毛管センサ保持部を形成しており、そのつど1つの毛管センサ14が、その取込口13がアクセス可能になるように測定位置22に位置決めされ、試料液が毛管力に基づいて毛管通路15の中へ浸透してこれを充填するように、試料が取込口と接触させられる。この多重毛管センサストリップ3は、ストリップ3のそのつど一番前の毛管センサ14aが、試料液との接触のために取込口13aへアクセス可能である測定位置22にきているように、毛管センサ保持部23で案内・保持されている。多重毛管センサストリップは評価装置2の中で、相前後して連続する毛管センサ14が測定位置22へ搬送されるように可動である。
【0020】
図1に示す多重毛管センサストリップ3は電気化学式毛管センサで構成されており、測定を実施するために、その電極を測定・評価電子装置25と接続しなければならない。この目的のために、電極は(後でまた詳しく説明するように)中空のリール6の内部に巻き取られたワイヤ26と接続される。このワイヤの他方の端部は、カセット8の底面にある相応のセンサ接触部27に溶接されている。このセンサ接触部はカセット8の外面に向かって延びており、カセット8が評価装置2へ挿入されているとき、相応の(図1に破線で示す)装置接触部28と接続しており、この装置接触部がさらに装置に固定された回線29を介して測定・評価電子装置25と接続されている。ワイヤ26の長さは、センサテープ4を完全に巻き出すことができるように設定されている。
【0021】
本発明による多重毛管センサストリップの1つの有利な構造の詳細を、図3から図5に見ることができる。これらの図面に示されている多重毛管センサストリップ3は、まっすぐな長尺状のバー30として構成されていてよい。ただし、厚さが比較的少ない柔軟な材料を使用すれば、図1に示すような柔軟なセンサテープ4をこれと同じ構造で具体化することもできる。
【0022】
図示した設計形態の構造部材は、下側のフィルムテープ32と、上側のフィルムテープ33と、両面粘着性の2つのスペーサストリップ34であり、このスペーサストリップによって、フィルムテープ32および33が所望の間隔で、連続する毛管通路35が形成されるように互いに固定されている。連続する毛管通路35は切欠き16によって、毛管センサ14a,14b等の個々の毛管通路に区分されている。毛管通路は、上下に向かってはフィルムテープ32,33で仕切られており、側方ではスペーサテープ34で仕切られている。部材32から34は、バイオセンサ技術で広く用いられているプラスチック材料、たとえばポリエステルやポリアミドでできている。
【0023】
電気化学式バイオセンサの図示した有利な実施形態では、センサ14のワーク電極36(その分離線37は図3に鎖線で図示されている)は、下側のフィルムテープ32に蒸着された導電性材料からなる層38と、その上に位置する、所要の試薬(グルコースを測定するには、通常、酵素グルコースオキシダーゼおよび適当な媒介物質)を含む反応層39とによって形成されている。層38は特に金属、たとえば金、銀、パラジウム、白金、あるいはグラファイトからなっていてよい。図5だけに見られるカウンター電極41は、たとえば図5にだけ見られるAg/Agcl層42で形成することができる。
【0024】
このような種類の構造は、通常のバイオセンサの製造に広く用いられている積層・結合技術でエンドレステープとして低コストに製造することができ、その際には、まずフィルム32および33を層38,39ないし42と積層してから、両面粘着性のスペーサストリップ34と結合させる。
【0025】
サンドイッチ構造が完成した後、連続する毛管通路35でそれぞれ流動阻止部44を形成する切欠き16を打ち抜く。この流動阻止部44により、取込口13aを通って一番前の毛管センサ14aに浸透する試料液の流動が止められ、試料液が多重毛管センサストリップ3の次の毛管センサ14bへ侵入するのが確実に防止される。このとき押し除けられた空気は、その前にある毛管センサ14aの排気口17と、(分離線37bに沿って一番前の毛管センサが切り離された後に)次の毛管センサ14の取込口13とを同時に構成する切欠き16を通って外へ逃げる。図示した実施形態では、互いにサンドイッチ状に結合されるテープの長手方向の相対位置が生産プロセスで重要でないことによっても、製造が簡素化される。
【0026】
図示した有利な実施形態では、毛管センサ14の毛管通路15を仕切る壁部47,48は、二次成形されていない平坦なフィルムで構成されており、多重毛管センサストリップ3の長さ全体にわたって延びている。このような設計は前述したような生産技術上の利点をもたらす。しかも高い柔軟性を実現できるので、毛管センサストリップを短い曲率半径で巻くことにより、分析システムへ省スペースに組み込むことができる。しかしながら、多重毛管センサストリップは原則として二次成形された部品、たとえば深絞りされた二次成形フィルムで製作されていてもよいが、この場合、二次成形は所望の柔軟性が与えられなくなるほど強力でないのが好ましい。
【0027】
いずれの場合でも、毛管通路を取り囲む壁部は、ロールから引き出して、あいだに毛管間隙が残るように連続式の方法で相互に結合することができるプラスチックフィルムテープでできているのが好ましい。連続する毛管センサの所要の相互の分離は、切欠き16に代えて、前述のような生産プロセスの一環として、長辺に沿って延びるだけでなく、個々のセンサの毛管通路を相互に分離する横方向ウェブを有するスペーサストライプを使用することによって実現することもできる。この場合、排気は、上側のフィルムテープで各々のセンサの毛管通路の端部にそれぞれ設けられた排気穴を通じて行うのが好都合である。
【0028】
図示した実施形態では、金層38ないしAg/Agcl層42で形成される条導体は、それぞれ多重毛管センサストリップ3の毛管センサ14の全体にわたって電気的に分離されることなく延びており、共通のセンサ接触部27を介して、評価装置の相応の装置接触部28およびそれによって測定・評価電子装置と接続されている(図1)。図6は、そのために適した、多重毛管センサストリップ3と、測定・評価電子装置に通じる接続ワイヤ26とのあいだの電気接触部の構造を示している。組立をするために、多重毛管センサストリップ3を案内部50に差し込む。この案内部は、図1に示すリール6の構成要素であってよい。ストリップ3が差込装置51に侵入すると、相互に楔形に配置されて電気的に互いに絶縁された2つの接触ナイフがストリップ3の毛管通路35に侵入し、これを切り裂いて、その際にその導電性の内面と接触する。両方の接触ナイフ52,53はワイヤ26と接続されている。
【0029】
図7に示す多重毛管センサストリップ3は、対応する線状の電極と直接接触する、装置に固定された状態で支承されたすべり接触部55,56によって電極36,41のあいだの電気接触が成立するという点で、図3から図5に示す実施形態と異なっている。
【0030】
図9と図10に示す別案の実施形態では、向かい合う配置の全面的な電極に代えて、1つの平面で構造化された電極が使用されている。このような多重毛管センサストリップも、3つの構造層を備えるサンドイッチ構造として具体化することができ、毛管通路を上下に向かって仕切る壁部はフィルムテープで形成される。
【0031】
各層のレイアウトが図9に示されている。部分図a,bおよびcは、3つの製造段階における下側のフィルムテープ32を平面図で示している。部分図aには電極のための導体構造部58が見えており、部分図bにはその上に延びる反応層39が見えている。部分図cは、2つのスペーサストリップ34を取り付けた後の下側のフィルムテープ32を示している。最後の部分図dは、穴59および60が打ち抜かれた上側のフィルムテープ33を示している。穴60は試料供給に利用され、穴59は排気に利用される。排気穴59は流動阻止部を同時に形成しており、この流動阻止部によって毛管通路に沿った流動が止められ、それにより、隣接する毛管センサに試料液が侵入することが防止される。そのためには、壁部の少なくとも1つを毛管通路まで貫通し、その幅全体にわたって延びる切欠きがあれば足りる。しかしながら別案として、換気切欠きとして利用される切欠きと、試料供給用として利用される切欠きとがいずれも両方の壁部を通って延びていてもよく、すなわちセンサ全体を通って延びていてもよい。
【0032】
図10から明らかにわかるように、この実施形態ではワーク電極36およびカウンター電極41に加えて、たとえば充填をコントロールする役目を果たすことができる追加の電極61および62が設けられている。図10は、穴59および60の好ましい位置も(破線の図で)示している。充填開口部としての役目をする穴59と血液滴が接触すると、血液滴は毛管通路15に吸い込まれ、その際にまず電極36および41と接触する。さらに浸透すると、試料はコントロール電極61および62と接触する。それにより、これらの電極間の電気抵抗が低下する。この抵抗変化を、毛管通路15がコントロール電極61,62の領域まで充填されているのでワーク電極36およびカウンター電極41との十分な接触が保証されていることを表す信号として、公知のやり方で測定することができる。このような機能を確保するためには、コントロール電極61,62が電極36,41と換気穴59とのあいだに位置決めされていなくてはならない。図示した比較的複雑な電極構造は、連続式の「レーザアブレーションプロセス」で合理的に製作することができる。
【0033】
図8に模式的に図示した、上記に対応する分析システム1の実施形態では、多重毛管センサストリップ3が段階的、連続的に測定位置22のそばを通過する。測定位置22には、指18に穿刺を行う機械的に可動のランセット63が設けられている。このとき得られた血液滴は、穴65を通って、測定位置22にある毛管センサへと浸透する。その際に得られる電気信号が電極接触部64を介して取り出され、測定・評価回路へ供給される。本例で使用される多重毛管センサストリップ3は、図9および図10のように構成されていてよいが、図3から図5に示すような全面的な反応層をもつ構成も適用することができる。いずれにしても取込口としての役目をする切欠きは、ランセット63がその切欠きを貫通して指に穿刺できるようにするために、センサのすべての層を通って延びていなくてはならない。
【0034】
米国特許第5,047,044号明細書より、ランセットがそれぞれセンサ構造の一体化された構成要素であるセンサ構造が公知である。しかしそのためには、複雑に成形された、現実問題としては射出成形法でしか製作が不可能な、多数の個別部品を備える成形品の構成が必要である。それに対して図10に示す構成は、それよりもはるかに簡単かつ低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の毛管センサ分析システムを示す側面図であり、部分的にブロック図として示されている。
【図2】血液滴を供給中の多重毛管センサストリップである。
【図3】多重毛管センサストリップを示す斜視図である。
【図4】多重毛管センサストリップを示す部分破断斜視図である。
【図5】多重毛管センサストリップを示す断面図である。
【図6】多重毛管センサストリップと測定・評価電子装置とのあいだの電気接続を示す図である。
【図7】すべり接触部を備える多重毛管センサストリップの別案の実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の多重毛管センサ分析システムの別案の実施形態を示す原理図である。
【図9】図8に示すシステムで使用するための多重毛管センサストリップのさまざまな層のレイアウトを示す図である。
【図10】図9に示す電極構造部の詳細図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中に含まれている分析物に関して試料液を分析するため、特に人間や動物の体液を分析するための毛管センサ分析システムにおいて、
毛管センサ(14)を備えており、この毛管センサは、
−試料液(19)の取込口(14)と排気口(17)とを備える、少なくとも2つの壁部(42,48)で取り囲まれた毛管通路(15)を有しており、
−毛管センサの毛管通路(15)には試薬が含まれており、試薬と試料液との反応が、分析について特徴的な測定量の測定可能な変化につながり、
さらに評価装置(2)を備えており、該評価装置は、
−検査されるべき試料液(19)を取込口(13)と接触させるために取込口(13)がアクセス可能になるように、分析を実施するための測定位置(22)で毛管センサ(14)を位置決めするために毛管センサ保持部(23)を有しており、試料液(19)は毛管力に基づいて毛管通路(15)の中に浸透してこれを充填し、
−測定量を測定し、測定の結果として得られた測定値に基づいて所望の分析情報を判定するための測定・評価電子装置(25)を含んでおり、
毛管センサ(14)は、相前後して配置された複数の毛管センサ(14)を備える多重毛管センサストリップ(3)として構成されており、
多重毛管センサストリップ(3)は評価装置(2)の毛管センサ保持部(23)で、ストライプ(3)のそのつど1つの毛管センサ(14a)が測定位置(22)にあり、その取込口(13a)が試料液(19)と接触するためにアクセス可能であるように案内されて保持され、
多重毛管センサストリップ(3)は評価装置(2)の内部で、毛管センサストリップ(3)の相前後して連続する毛管センサ(14b,14c...)が測定位置(22)へ運ばれるように可動である、毛管センサ分析システム。
【請求項2】
評価装置(2)が切断装置(20)を有しており、この切断装置により、測定が実施されるたびに、測定時に使用された毛管センサ(15)が多重毛管センサストリップ(3)から切り離される請求項1記載の毛管センサ分析システム。
【請求項3】
多重毛管センサストリップの毛管センサ(14)が、アーク電極(36)と、カウンター電極(41)と、条導体(38,42)を介して前記電極と接続されたセンサ接触部(27)とを有する電気化学式毛管センサとして構成されており、前記センサ接触部は測定中に評価装置(2)の対応する装置接触部(28)と接触して測定・評価電子装置(25)との電気接続を成立させる請求項1または2記載の毛管センサ分析システム。
【請求項4】
前記電極の少なくとも1つの条導体(38,42)が多重毛管センサストリップ(3)の毛管センサ全体にわたって電気的に分離されることなく延びており、共通のセンサ接触部(27)を介して、評価装置(2)の相応の装置接触部(28)およびそれによって測定・評価電子装置(25)と接続されている請求項3記載の毛管センサ分析システム。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の分析システムのための多重毛管センサストリップにおいて、相互に結合されて相前後して配置された複数の毛管センサ(14)を備えており、
前記毛管センサ(14)は、試料液(19)の取込口(13)と排気口(17)とを備える、少なくとも2つの壁部(47,48)でそれぞれ取り囲まれた毛管通路(15)を有しており、
毛管センサ(14)の毛管通路(15)にそれぞれ試薬が含まれており、少なくとも1つの試薬と試料液(19)との反応が、分析について特徴的な測定量の測定可能な変化につながる多重毛管センサストリップ。
【請求項6】
前記壁部(47,48)がフィルムテープで構成されている請求項5記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項7】
評価装置(2)に湾曲した状態で巻き付けられた柔軟なテープ(4)として構成されている請求項5または6記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項8】
相前後して配置された毛管センサの長さ全体にわたって延び、多重毛管センサストリップのすべての毛管センサ(14)の毛管通路(15)を取り囲む、連続する2つの壁部(47,48)を有している請求項5または6記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項9】
多重毛管センサストリップ(3)の毛管センサ(14)の毛管通路(15)が互いに一直線上でつながっており、それにより、それぞれの取込口(13)と排気口(17)が互いに向かい合っており、毛管センサ(14)の毛管通路(15)は流動阻止部(44)を含んでおり、この流動阻止部によって、取込口(15a)を通って浸透する試料液の流動が止められ、それによって、多重毛管センサストリップ(3)の後続する毛管センサ(14)に試料液が侵入することが防止される請求項5、6、7または8記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項10】
前記流動阻止部(44)が、毛管通路(15)の幅全体にわたって延びる、壁部(47,48)の少なくとも1つを貫通する切欠きによって形成されている請求項9記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項11】
電気化学式毛管センサとして構成されており、電気測定量の測定に適した測定電極(25)との電気接続を成立させるために、ワーク電極(36)と、カウンター電極(41)と、前記電極(36,41)と接続されたセンサ接触部(27)とを有している請求項5、6、7、8、9または10記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項12】
毛管センサ(14)のワーク電極(36)の一方の電気的な条導体(38)が一方の壁部(48)の表面に延びており、毛管センサ(14)のカウンター電極(41)の電気的な条導体(42)は他方の壁部(47)の表面に延びている請求項11記載の多重毛管センサストリップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中に含まれている分析物に関して試料液を分析するため、特に人間や動物の体液を分析するための毛管センサ分析システムにおいて、
毛管センサ(14)を備えており、この毛管センサは、
−試料液(19)の取込口(14)と排気口(17)とを備える、少なくとも2つの壁部(42,48)で取り囲まれた毛管通路(15)を有しており、
−毛管センサの毛管通路(15)には試薬が含まれており、試薬と試料液との反応が、分析について特徴的な測定量の測定可能な変化につながり、
さらに評価装置(2)を備えており、該評価装置は、
−検査されるべき試料液(19)を取込口(13)と接触させるために取込口(13)がアクセス可能になるように、分析を実施するための測定位置(22)で毛管センサ(14)を位置決めするために毛管センサ保持部(23)を有しており、試料液(19)は毛管力に基づいて毛管通路(15)の中に浸透してこれを充填し、
−測定量を測定し、測定の結果として得られた測定値に基づいて所望の分析情報を判定するための測定・評価電子装置(25)を含んでおり、
毛管センサ(14)は、相前後して配置された複数の毛管センサ(14)を備える多重毛管センサストリップ(3)として構成されており、
多重毛管センサストリップ(3)は評価装置(2)の毛管センサ保持部(23)で、ストライプ(3)のそのつど1つの毛管センサ(14a)が測定位置(22)にあり、その取込口(13a)が試料液(19)と接触するためにアクセス可能であるように案内されて保持され、
多重毛管センサストリップ(3)は評価装置(2)の内部で、毛管センサストリップ(3)の相前後して連続する毛管センサ(14b,14c...)が測定位置(22)へ運ばれるように可動である、毛管センサ分析システム。
【請求項2】
評価装置(2)が切断装置(20)を有しており、この切断装置により、測定が実施されるたびに、測定時に使用された毛管センサ(15)が多重毛管センサストリップ(3)から切り離される請求項1記載の毛管センサ分析システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の分析システムのための多重毛管センサストリップにおいて、相互に結合されて相前後して配置された複数の毛管センサ(14)を備えており、
前記毛管センサ(14)は、試料液(19)の取込口(13)と排気口(17)とを備える、少なくとも2つの壁部(47,48)でそれぞれ取り囲まれた毛管通路(15)を有しており、
毛管センサ(14)の毛管通路(15)にそれぞれ試薬が含まれており、少なくとも1つの試薬と試料液(19)との反応が、分析について特徴的な測定量の測定可能な変化につながり、
多重毛管センサストリップ(3)の毛管センサ(14)の毛管通路(15)が互いに一直線上でつながっており、
毛管センサ(14)の毛管通路(15)は流動阻止部(44)を含んでおり、この流動阻止部によって、取込口(15a)を通って浸透する試料液の流動が止められ、それによって、多重毛管センサストリップ(3)の後続する毛管センサ(14)に試料液が侵入することが防止される請求項1、2、3または4記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項4】
前記流動阻止部(44)が、毛管通路(15)の幅全体にわたって延びる、壁部(47,48)の少なくとも1つを貫通する切欠きによって形成されている請求項記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項5】
電気化学式毛管センサとして構成されており、電気測定量の測定に適した測定電極(25)との電気接続を成立させるために、ワーク電極(36)と、カウンター電極(41)と、前記電極(36,41)と接続されたセンサ接触部(27)とを有している請求項3または4記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項6】
前記電極の少なくとも1つの条導体(38,42)が多重毛管センサストリップ(3)の毛管センサ全体にわたって電気的に分離されることなく延びており、共通のセンサ接触部(27)を介して、評価装置(2)の相応の装置接触部(28)およびそれによって測定・評価電子装置(25)と接続されている請求項5記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項7】
評価装置(2)に湾曲した状態で巻き付けられた柔軟なテープ(4)として構成されている請求項3、4、5または6記載の多重毛管センサストリップ。
【請求項8】
相前後して配置された毛管センサの長さ全体にわたって延び、多重毛管センサストリップのすべての毛管センサ(14)の毛管通路(15)を取り囲む、連続する2つの壁部(47,48)を有している請求項3、4、5または6記載の多重毛管センサストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−500595(P2006−500595A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540642(P2004−540642)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010378
【国際公開番号】WO2004/030822
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】