説明

多重被覆鋼管

【課題】鋼管外側に被覆された防食層の外面に、適度な密着性および剥離性を有する保護層が被覆された多重被覆鋼管を提供する。
【解決手段】基材である鋼管の外表面に、ポリエチレン樹脂層からなる防食層と、該防食層の上層としてポリプロピレン樹脂層からなる保護層が被覆された多重被覆鋼管において、前記保護層を形成するポリプロピレン樹脂を、エチレン成分19〜23モル%を含む共重合樹脂とし、メルトフローレイトを0.53〜0.60g/10minとし、280℃における剪断粘度を、剪断速度10/secで測定したとき1.7×103〜2.0×103Pa・s、剪断速度100/secで測定したとき5.3×102〜6.0×102Pa・sとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス管、ケーブル保護管、水道用配管などの用途に好適な、防食層および保護層を被覆層として有する多重被覆鋼管に係り、特に連続ラインのライン速度を高めて製造しても防食層と保護層とが適度な密着性および剥離性を有する、現場での施工性に優れた多重被覆鋼管に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管に防食層としてポリエチレン樹脂層が被覆された被覆鋼管は、防食性能に優れていることに加えて使用温度範囲が広く、電気絶縁性や耐薬品性にも優れていることから、ガス用や水道用配管、ケーブル保護管などに広く用いられている。また、現地施工に供される場合が多いことに鑑み、この被覆鋼管には、輸送取扱時の機械的外力から防食層(ポリエチレン樹脂層)を保護する目的で、該防食層の表面(外面)にポリプロピレン樹脂層を保護層とし、多重被覆層を設けたものがある。
【0003】
図1に例示されるように、この多重被覆鋼管は、基材である鋼管1の外側表面に、アンダーコート等と呼ばれる粘着剤層2を介して防食層(ポリエチレン樹脂層)3が被覆され、更に防食層(ポリエチレン樹脂層)3の表面(外面)に保護層(ポリプロピレン樹脂層)4を被覆した構成を有する。また、防食性をより一層高める目的で、用途に応じて鋼管の内面側にも被覆する場合もある。
【0004】
また、通常、このような多重被覆鋼管は連続ラインで製造され、防食層および保護層は図2に示すような多重被覆ラインで押出し被覆により形成される。すなわち、ラインの上流側から搬送された基材である鋼管1は、鋼管予熱装置10で40〜80℃程度に予熱され、粘着剤塗布装置20で表面に150〜200℃に加熱された粘着剤(図省略)が塗布される。その後、鋼管1は、防食層押出被覆機30に搬送され、溶融状態(200〜260℃程度)の防食層樹脂300が表面に押出被覆され、防食層冷却機31で冷却され、防食層3となる。次いで、鋼管1は、保護層押出被覆機40に搬送され、溶融状態(260〜270℃程度)の保護層樹脂400が防食層3の表面に押出被覆され、保護層冷却機41で表面が冷却され、保護層4となる。
【0005】
ところで、被覆鋼管をガス用等の配管やケーブル保護管などに適用する場合には、施工時、複数の鋼管の管端同士を溶接などにより接続する。ここで、防食層(ポリエチレン樹脂層)の表面(外面)に保護層(ポリプロピレン樹脂層)を被覆した多重被覆鋼管の管端同士を溶接などによって接続するに際しては通常、溶接のし易さ、および溶接後の鋼露出部の補修のし易さを確保するという理由で、図3に示すように多重被覆鋼管端部(鋼管端部から100mm〜150mm程度の領域)の防食層3および保護層4を剥離し鋼を露出させ、さらに保護層4aのみを剥離する(防食層端部から100mm〜150mm程度の領域)。そのため、保護層(ポリプロピレン樹脂層)には、溶接施工時、防食層(ポリエチレン樹脂層)から人手によって剥離できる程度の剥離性を有することが要求される。
【0006】
その一方で、保護層(ポリプロピレン樹脂層)の剥離性が過剰に高くなると、保護層(ポリプロピレン樹脂層)と防食層(ポリエチレン樹脂層)の密着性が著しく低下し、種々の問題を招来する。例えば、上記密着性が低下すると、防食層3から多重被覆鋼管端部の保護層4aを剥離するために鋼管端部の保護層4に周状に切れ目5を入れた際、切れ目5周辺の保護層4が防食層3から部分的に浮く場合がある。その結果、保護層4aを防食層3から剥離した後、防食層3上に残っている保護層4bの端部4’が防食層3から浮き、防食層3と保護層4の間に隙間6ができ、外観も悪くなる。また、多重被覆鋼管の管端部同士を溶接等によって接続した後、接続部に防食テープを巻き付ける等の補修を行うが、このような保護層の浮きが残存したままでは、補修を行う場合にも問題が発生する。更に、防食層と保護層との密着性が低下すると、何らかの衝撃で層間にエアが入る場合があり、外観が悪くなるという問題もある。
【0007】
上述したように、防食層と保護層との間には、多重被覆鋼管の管端部における保護層を防食層から剥離する場合に、剥離し易く、且つ上記の如き浮きが発生しない程度の密着性を有する必要がある。つまり、防食層と保護層の密着性は大きすぎても小さすぎても好ましくない。任意のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂をそれぞれ防食層、保護層として用いると、該樹脂の融着等が発生して剥離性が著しく悪化したり、浮きが発生するなど、実用性に欠くこととなる。
【0008】
そこで、このような多重被覆鋼管に関し、防食層のポリエチレン樹脂と保護層のポリプロピレン樹脂との剥離性を確保すべく、現在までに様々な技術が提案されてきている。
例えば、特許文献1には、鋼管外面に押出し被覆した防食層を25℃以下になるまで冷却したのち、保護層をその上に押出し被覆することにより、防食層と保護層の融着を防止して保護層の剥離性を確保する技術が提案されている。そして、係る技術によると、防食層および保護層の皮膜性状を損なうことなく、防食層と保護層の融着を防止することができるとされている。
【0009】
しかしながら、特許文献1で提案された技術では、防食層を25℃以下に冷却するために冷却時間を長くすることが必要となる。それゆえ、製造時の冷却ラインを長くする、もしくはライン速度を遅くする等、冷却時間を確保するための制約が発生し、工業的に不利になる。先述のとおり、防食層の被覆および保護層の被覆は1つの連続ラインで行うのが通常であるが、近年ライン速度は生産性向上のため高速になる傾向にあり、従来の方法では適度な融着性を確保するのが困難である。
【0010】
また、特許文献2には、酸化カルシウムなどの無機粉末を防食層と保護層の間に散布することにより、両層の融着を防止する技術が提案されている。そして、係る技術によると、溶接施工の際に接合部の保護層が剥離し易いうえ、環境温度の変化に起因する保護層の伸縮を防止し得る被覆鋼管が得られるとされている。しかしながら、特許文献2で提案された技術は、粉体を散布する設備が必要であるうえ、製造所内での粉体の扱いも煩雑なため、やはり工業的に不利なものである。
【0011】
また、特許文献3には酸化防止剤や造核剤を、特許文献4には滑剤や無機フィラーを、特許文献5には帯電防止剤を、防食層もしくは保護層に添加する技術が提案されている。そして、これらの技術によると、各種添加剤によって樹脂間の融着を防ぎ、防食層と保護層の剥離性が大きく改善するとされている。しかしながら、特許文献3〜5で提案された技術では、各種添加剤の添加量が微量である場合、連続ラインのライン速度を上げると樹脂間の融着を防止する効果が不十分となる。一方、各種添加剤の添加量を多くすると、樹脂の物性が期待していたものと異なったものになったり、コストが高くなるなどの不利な点がある。
【0012】
これらの技術に対し、特許文献6には、防食層と保護層のいずれか一層をポリエチレン単独とし、他の一層をポリエチレン20〜40重量%(27.3〜50モル%)、ポリプロピレン60〜80重量%(50〜72.7モル%)の配合によりなる共重合体またはブレンド樹脂とする技術が提案されている。そして、係る技術によると、溶着防止剤を用いることなく、連続的に二重押出被覆を行っても防食層と保護層とが融着することのない被覆鋼管が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭49−130956号公報
【特許文献2】特開昭50−139422号公報
【特許文献3】特開平10−76601号公報
【特許文献4】特開平10−76602号公報
【特許文献5】特開平10−76603号公報
【特許文献6】特開昭54−158720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献6で提案された技術では、保護層の硬さを十分に確保することができない。多重被覆鋼管の保護層は、その目的からは耐疵付き性が高いほど好ましいことから、保護層用の樹脂にはある程度の硬さが必要となる。そのため、多重被覆鋼管では通常、防食層をポリエチレン樹脂、保護層をポリプロピレン樹脂で形成するが、上記の如く保護層の樹脂のエチレン成分を20〜40重量%(27.3〜50モル%)と多くすると樹脂が柔らかくなる結果、保護層が疵付き易くなりその機能を果たさなくなる。発明者らの検討によれば、輸送および施工現場での衝撃等を考慮した場合、通常、保護層の硬さはASTM D2240(D型)に規定された試験方法による測定値で70以上であることが好ましい。
【0015】
また、特許文献6で提案された技術では、多重被覆鋼管の製造時に連続ラインのライン速度を高めた場合、防食層と保護層の融着を抑制することができない。先述のとおり、多重被覆鋼管を製造するに際しては通常、図2に示すように鋼管1の予熱以降、保護層4の冷却までは連続ラインで行われる。そして、防食層3と保護層4の融着性は溶融した保護層4を防食層3の外面に被覆する時の両層の温度に依存し、これらの温度が高いほど融着し易く、これらの温度が低いほど融着し難い。一方、生産性の観点からするとライン速度は速い方が好ましい。そして、ライン速度を速くした場合には、樹脂(防食層樹脂300および保護層樹脂400)の押出し吐出量も多くしなければならず、その結果、押出された樹脂の温度が押出し時の剪断発熱などにより高くなるのが常である。
【0016】
そのため、例えばライン速度を約10m/min以上まで高めた場合、防食層押出被覆機30で溶融状態の防食層樹脂(ポリエチレン,融点:120℃以上)300を押出被覆すると、押出し時の防食層3の樹脂温度は230〜280℃にも達する。また、防食層3を被覆した後、工業的に合理的な冷却方法である水冷によって防食層樹脂を冷却した場合であっても、連続ラインの現実的な水冷効率を考慮すると、JIS G 3452(2010)に規定の呼び径100A以上の大径管においては保護層4を被覆する時点での防食層3の表面温度を40〜70℃程度にまでしか下げられない。また、保護層押出被覆機40で溶融状態の保護層樹脂(ポリプロピレン,融点:160℃以上)400を押出被覆すると、防食層3の上に被覆する際の保護層樹脂400の温度は260〜290℃にも達する。
【0017】
以上のように、ライン速度を高速化した場合には、防食層と保護層とが高温になり易く、非常に融着し易い状態となっている。しかしながら、特許文献6で提案された技術では、ライン速度を高速化した場合については何ら検討されていない。そのため、特許文献6で提案された技術では、生産性向上を目的としてライン速度を高速化すると、防食層と保護層の融着が発生し、良好な剥離性が得られないという問題がある。
更に、特許文献6で提案された技術では、ライン速度を高速化した場合における保護層樹脂の押出し性や、保護層樹脂の強度について全く考慮されていない。押出し性が低下すると、押出し機の負荷が高くなり、ポリプロピレン樹脂の押出し吐出量が維持できなくなる。また、保護層樹脂の強度が低下すると、製品とした後に、衝撃が加わると保護層を貫通して鋼管の防食のための要である防食層に傷が入ってしまうという支障をきたす。よって、特許文献6で提案された技術では、高品質の多重被覆鋼管を高い生産効率をもって安定的に提供することができない。
【0018】
本発明は、上記した従来技術が抱える問題を有利に解決するものである。すなわち、本発明は、基材である鋼管の外側に、ポリエチレン樹脂層からなる防食層と、該防食層の上層としてポリプロピレン樹脂層からなる保護層が被覆された多重被覆鋼管において、防食層であるポリエチレン樹脂層と保護層であるポリプロピレン樹脂層の剥離性を著しく改良するとともに、防食層と保護層との間で溶接施工時に浮きが発生しない適度な密着性を有し、更に保護層が所望の耐疵付き性を有し、保護層樹脂の押出し性およびウエルド強度にも優れた多重被覆鋼管を提供することを目的とする。
【0019】
本発明は特に、高速のライン速度で製造した場合や大径管(例えば、JIS G 3452(2010)に規定の呼び径:100A以上)であっても、上記の如き優れた特性を有する多重被覆鋼管、或いは更にその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決すべく、本発明者らは、基材である鋼管の外側に、ポリエチレン樹脂層からなる防食層と、該防食層の上層としてポリプロピレン樹脂層からなる保護層が被覆された多重被覆鋼管について、防食層と保護層の剥離性や密着性等の諸特性に及ぼす各種要因について鋭意検討した。
まず、本発明者らは、特許文献6で提案された技術、すなわち、ポリエチレンとポリプロピレンの配合によりなる共重合体を保護層とする技術において、ライン速度を高速化した連続ラインで多重被覆鋼管を製造することを念頭に置き、ポリプロピレン樹脂に含有させるエチレン成分について検討した。
【0021】
その結果、ライン速度を高速化する場合、特許文献6で提案された技術では、ポリプロピレン樹脂に含まれるエチレン成分量が高すぎ、防食層と保護層の融着が著しくなることを見い出した。そして、ポリプロピレン樹脂に含まれるエチレン成分を所望量に低減することにより、防食層と保護層の融着が大幅に抑制され、適度な剥離性と密着性が得られることを知見した。また、ポリプロピレン樹脂に含まれるエチレン成分を所望量に低減することにより、保護層樹脂の硬さが向上し、所望の耐疵付き性を有する保護層が得られることを知見した。
【0022】
一方、本発明者らは、ポリプロピレン樹脂に含まれるエチレン成分を調整しただけでは、保護層樹脂の押出し性とウエルド強度が依然として不十分であることを確認した。また、上記エチレン成分を調整しただけでは、適度な剥離性と密着性が得られない場合があることも確認した。そして、更に検討を進めた結果、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレイト、および280℃における剪断粘度の適正化を図ることにより、保護層樹脂の押出し性とウエルド強度が飛躍的に向上するとともに、防食層−保護層間の剥離性および密着性がより一層良好になることを知見した。
【0023】
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 基材である鋼管の外側に、ポリエチレン樹脂層からなる防食層と、該防食層の上層としてポリプロピレン樹脂層からなる保護層が被覆された多重被覆鋼管であって、前記保護層を形成するポリプロピレン樹脂がエチレン成分19〜23モル%を含む共重合樹脂であり、前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレイトが0.53〜0.60g/10minであり、前記ポリプロピレン樹脂の280℃における剪断粘度が、剪断速度10/secで測定したとき1.7×103〜2.0×103Pa・sであり、剪断速度100/secで測定したとき5.3×102〜6.0×102 Pa・sであることを特徴とする多重被覆鋼管。
【0024】
[2] [1]において、前記防食層と前記保護層との間のピール強度が0.6N/10cm幅以上15N/10cm幅以下であることを特徴とする多重被覆鋼管。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ライン速度を高速化して製造した場合であっても、保護層樹脂の押出し性に優れ、且つ防食層と保護層との適度な密着性と剥離性を有し、溶接施工時、防食層と保護層との間の浮きも抑制され、更に耐疵付き性が良好な保護層を具えた多重被覆鋼管を、容易にしかも安価に製造することができる。また本発明は保護層樹脂のウエルド強度も優れるものであるため、製品とした後、特に低温下で保護層のウエルド部に衝撃が加わってもその部分から保護層が割れるということもない。したがって、本発明によれば、高品質の多重被覆鋼管を、高い生産効率をもって安定的に生産することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】多重被覆鋼管の層構成を模式的に示す図である。
【図2】多重被覆鋼管を製造する連続ラインの一部(多重被覆ライン)を模式的に示す図である。
【図3】多重被覆鋼管の溶接施工時に管端部の保護層を剥離する様子を示す図である。
【図4】実施例の多重被覆鋼管における保護層を剥離する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の多重被覆鋼管は、基材である鋼管の外側に、ポリエチレン樹脂層からなる防食層と、該防食層の上層としてポリプロピレン樹脂層からなる保護層が被覆された多重被覆鋼管である。そして、前記保護層を形成するポリプロピレン樹脂は、エチレン成分19〜23モル%を含む共重合樹脂で、メルトフローレイトが0.53〜0.60 g/10minであり、且つ、280℃における剪断粘度が、剪断速度10/secで測定したとき1.7×103〜2.0×103 Pa・sであり、剪断速度100/secで測定したとき5.3×102〜6.0×102 Pa・sであることを特徴とする。
【0028】
本発明において、多重被覆鋼管の基材となる鋼管の種類は特に限定されず、鍛接鋼管、電縫鋼管等、ガス用や水道用の配管、ケーブル保護管などに用いられている従前公知の鋼種の鋼管がいずれも適用可能である。また、鋼管のサイズも特に限定されるものではない。通常、用途に応じてJIS G 3452(2010)に規定される配管用炭素鋼鋼管の呼び径25A〜500Aのものが使用される。また、基材である鋼管の外表面には、下地処理として公知の酸洗処理やブラスト処理を施すことができる。下地処理に続いて、更に防食層と鋼管との接着性を良くするための公知のプライマー塗装やJIS G 3469(2010)に規定される粘着剤を塗布することができる。なお、鋼管の内面は、そのままでもよく、外面多重被覆の前および後に塗装などを行ってもよい。
【0029】
防食層に用いられるポリエチレン樹脂は、エチレンの単独重合体あるいはエチレンとα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどとの共重合体であってエチレンを主体とする重合体である。本発明に好ましいポリエチレン樹脂は、密度:920〜950kg/m3、より好ましくは密度:940〜950kg/m3、ビカット軟化温度:110〜130℃、引張強さ:30〜50N/mm2(MPa)、引張破壊ひずみ:500〜900%のものであり、防食層の厚みは0.6〜1.5mm程度が適当である。なお、上記の密度、ビカット軟化温度、引張強さ、引張破壊ひずみは、いずれもJIS G 3469(2010) の規定に従い測定した値を用いるものとする。
また、ポリエチレン樹脂層(防食層)は、これらのポリエチレン樹脂を溶融押出しすることにより鋼管の外側に形成されるが、このポリエチレン樹脂層は単一層のほか、酸変性ポリエチレンとの2層を共押出した複合層としてもよい(鋼管側を酸変性ポリエチレン)。
【0030】
保護層に用いられるポリプロピレン樹脂は、モノマーのエチレンとプロピレンをチーグラーナッタ系触媒等公知の方法で重合したもの、すなわち工業的に通常言われるところのブロックポリプロピレンであり、ポリプロピレンとポリエチレンとエチレンプロピレンランダム共重合体との混合物である。そして、本発明では、ポリプロピレン樹脂全体に占めるエチレン成分が19〜23モル%(13.5〜16.6質量%)であることを必須とする。
このエチレン成分の割合はポリプロピレン樹脂を溶剤に溶かし樹脂成分の核磁気共鳴分光法などの方法により求めることができる。
【0031】
上記エチレン成分の割合が19モル%(13.5質量%)未満であると、防食層であるポリエチレン樹脂との親和性(密着性)が低くなりすぎ、前述したように防食層と保護層との間で浮きが発生する等の問題が発生する。一方、上記エチレン成分の割合が23モル%(16.6質量%)を超えると、防食層であるポリエチレン樹脂と融着し易くなり、適度の剥離性が得られなくなる。更に、上記エチレン成分の割合が23モル%(16.6質量%)を超えると、ポリプロピレン樹脂の硬さが低くなり、保護層として疵付き易いものとなってしまう。
【0032】
また、本発明では、保護層のポリプロピレン樹脂のメルトフローレイトが0.53〜0.60g/10minであることを必須とする。上記メルトフローレイトは、JIS K6921-2(2010)に規定されたメルトマスフローレイト(MFR)であり、JIS K7210(1999)に規定される方法で求めた値である。上記メルトフローレイトが0.53g/10min未満であると、ポリプロピレン樹脂の押出し性が低下するため、押出被覆機の負荷が高くなり、ポリプロピレン樹脂の押出し吐出量が維持できなくなる。このような問題は特に、高速のライン速度で製造しようとする場合、すなわち樹脂の被覆速度を高速化しようとする場合に顕著に現れる。
【0033】
また、上記メルトフローレイトが0.53g/10min未満であると、ポリプロピレン樹脂を円筒状に押出す際の樹脂のウエルド部の強度が低下してしまう。一方、上記メルトフローレイトが0.60g/10minを超えると、得られた保護層の強度が低下する、押出し特性が低下するなどの問題がある。
以上のように、多重被覆鋼管が、ライン速度を高速化した連続ラインで製造されることを念頭に置いた本発明では、保護層のポリプロピレン樹脂のメルトフローレイトを0.53〜0.60g/10minとすることが重要である。
【0034】
更に、本発明では、ポリプロピレン樹脂の280℃における剪断粘度が、剪断速度10/secで測定したとき1.7×103〜2.0×103 Pa・sであり、剪断速度100/secで測定したとき5.3×102〜6.0×102 Pa・sであることを必須とする。なお、上記剪断粘度は、JIS K7199(1999)に規定されるキャピラリーレオメータ(毛細管形レオメーターと呼ばれることもある)で測定したものであり、キャピラリー管の内径D、長さLが、L/D=10/1の条件で測定した値である。
【0035】
上記剪断粘度が、剪断速度10/secで測定したとき1.7×103Pa・s未満である場合、または剪断速度100/secで測定したとき5.3×102 Pa・s未満である場合、防食層(ポリエチレン樹脂)と保護層(ポリプロピレン樹脂)との間のピール強度(剥離強度)が高くなり過ぎ、防食層−保護層間で良好な剥離性が得られなくなる等の問題が顕在化する。
一方、上記剪断粘度が、剪断速度10/secで測定したとき2.0×103Pa・sを超える場合、または剪断速度100/secで測定したとき6.0×102 Pa・sを超える場合、ポリプロピレン樹脂を円筒状に押出す際の樹脂のウエルド部の強度が低下してしまう。また、防食層(ポリエチレン樹脂)と保護層(ポリプロピレン樹脂)との間のピール強度(剥離強度)が低くなり過ぎたり、溶接施工時に防食層−保護層間で浮きが発生し易くなる等、様々な支障をきたす。
【0036】
なお、本発明において、ポリプロピレン樹脂の280℃における剪断粘度を、2通りの剪断速度(10/sec,100/sec)で測定した場合について規定する理由は、防食層の表面に押出被覆する際のポリプロピレン樹脂(保護層樹脂)の剪断速度を考慮したためである。溶融状態のポリプロピレン樹脂(保護層樹脂)を押出被覆する際の剪断速度を測定することは極めて困難であり、押出被覆条件によって10/secあるいはこれ以下の剪断速度から、100/secあるいはこれ以上の剪断速度となることが想定される。そこで、本発明では、剪断速度が低速度である場合(10/sec)と高速度である場合(100/sec)の2通りについて剪断粘度を規定することとする。
【0037】
本発明では、上記の如くエチレン成分、メルトフローレイトおよび剪断粘度が所望の値に調製されたポリプロピレン樹脂を保護層として用いることにより、防食層と保護層の良好な融着性および密着性、保護層として十分な硬さ(ASTM D2240に規定のデュロメータ硬さタイプD:70以上)が確保される。また、保護層により一層の機械的強度や耐低温衝撃などが必要とされる場合には、JIS K7162(1994)の規定に準拠して測定した引張り破断点応力が22〜45MPa、JIS K7162(1994)の規定に準拠して測定した引張り破断点伸びが600〜900%、JIS K 7110 (1999)の規定に準拠して測定したアイゾット衝撃強度が−20℃で2〜6kJ/m2で、通常、JIS K7112(1999)の規定に準拠して測定した密度905〜910kg/m3のものを保護層用のポリプロピレン樹脂として用いることができる。
【0038】
なお、保護層の厚みは、特に制約されるものではないが、経済面および運搬・施工時などに防食層を疵付きから保護するという観点からは、0.8〜2.8mm程度であることが好ましい。
【0039】
上記の如きポリプロピレン樹脂は、エチレンとプロピレンを主なモノマーとしてチーグラーナッタ系触媒やシングルサイト触媒などを用い付加重合を行ない製造する従前公知の方法により適宜調製し得るが、ポリプロピレン樹脂メーカーでは様々な物性を有する樹脂を幅広く用意しているため、その中から本願発明の物性を満足するものを適宜使用することができる。
【0040】
なお、本発明の被覆層として用いられるポリエチレン樹脂(防食層)あるいはポリプロピレン樹脂(保護層)中には、樹脂の酸化劣化・光劣化を防ぐための酸化防止剤、紫外線吸収剤、また、顔料などの着色剤、また、成形性を向上させるための造核剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲内で配合してもよい。
【0041】
また、防食層(ポリエチレン樹脂)と保護層(ポリプロピレン樹脂)との間のピール強度(剥離強度)は、0.6N/10cm幅以上15N/10cm幅以下であることが好ましく、特に、0.6N/10cm幅以上10N/10cm幅以下がより好ましい。上記ピール強度は、後述するピール強度試験に準拠して測定されたピール強度である。このピール強度が0.6N/10cm幅未満であると、防食層から保護層を除去するために保護層にスリットを入れただけで保護層が剥離してしまう、もしくは鋼管端部の保護層のみを剥がした際に、残りの保護層の端部が防食層から浮くなどの問題が発生し易くなる。一方、上記ピール強度が15N/10cm幅を超えると、前述したように、現場での溶接施工時に防食層と保護層との剥離が困難になる、作業性が悪くなるなどの問題が発生し易くなる。以上の理由により、防食層と保護層との間のピール強度は、0.6N/10cm幅以上15N/10cm幅以下であることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の多重被覆鋼管を製造する方法について説明する。
本発明の多重被覆鋼管は、生産効率の観点から連続ラインで製造し、ライン速度を10〜40m/min程度とすることが好ましい。まず、基材となる鋼管の外表面にブラスト処理、従前公知の酸洗処理(塩酸や硫酸水溶液、温度:室温〜90℃)などの下地処理を行った後、図2に示すように必要に応じて高周波誘導加熱装置などの鋼管予熱装置10により鋼管1を予熱し、粘着剤塗布装置20でゴム、アスファルト、樹脂などを主体とする粘着剤(図省略)を鋼管1の表面に加熱塗布する。
【0043】
なお、上記鋼管の予熱温度は、その上層に塗布される粘着剤の塗布性、密着性確保の観点から40〜80℃とすることが好ましい。また、粘着剤は、JIS G3469(2010)に規定されているゴム、アスファルト、樹脂などを主体としたものを用い、経済面・均一塗布性という観点から粘着剤層の厚さを0.1〜1mm程度とすることが好ましい。
【0044】
続いて、溶融状態(230〜280℃程度)の前記ポリエチレン樹脂(防食層樹脂300)を、防食層押出被覆機30のクロスヘッドダイから円筒状に押出し、粘着剤層の外表面に被覆し、直ちに防食層冷却機31で冷却して防食層を形成する。冷却効率の観点から、防食層冷却機31での冷却は水冷とすることが好ましい。該冷却により、防食層の表面の温度が70℃以下になった時点で、溶融状態(260〜290℃程度)の前記ポリプロピレン樹脂(保護層樹脂400)を、保護層押出被覆機40のクロスヘッドダイから円筒状に押出し、防食層外面に被覆し、保護層冷却機41で冷却して保護層を形成することにより、多重被覆鋼管が得られる。冷却効率の観点から、保護層冷却機41での冷却も水冷とすることが好ましい。
【0045】
なお、防食層を冷却(水冷)した後に防食層表面に水滴が残り、以後の工程に悪影響を与える場合には、空気で水滴を吹き飛ばす、水滴をふき取る、などの方法を採ることもできる。また、上記した条件で、防食層とその上層としての保護層を被覆することにより、防食層と保護層との間のピール強度を0.6N/10cm幅以上15N/10cm幅以下とすることができる。
【0046】
上記のとおり、鋼管の予熱以降最後の冷却(水冷)までは、図2に示すような連続ラインで行われるのが一般的である。そして、生産性(生産効率)の観点からすると、ライン速度は速い方が好ましいが、上述したように大径管の多重被覆をする際のライン速度を速くした場合(例えば、呼び径:100A以上,ライン速度:10m/min以上)には、防食層の上に被覆する際の保護層樹脂の温度は通常、260〜290℃にまで達する。また、保護層を被覆する直前の防食層表面の温度は、例え水冷した場合であっても40〜70℃程度であり、これ以上冷却するためには水冷ゾーンを非常に長くするか、ライン速度を遅くする必要が生じ、工業的には通常、困難である。
【0047】
このように、基材となる鋼管が大径である場合や高速のライン速度である場合、保護層被覆時の防食層表面と保護層樹脂とが高温状態となり易い。そのため、保護層樹脂として従来のポリプロピレン樹脂を用いた場合には、防食層と保護層との融着が著しく、防食層−保護層間で適度な剥離性および密着性を有する多重被覆鋼管を得ることができなかった。これに対し、保護層樹脂として所定のポリプロピレン樹脂を用いた本発明によると、たとえ上記の如く保護層被覆時の防食層表面と保護層樹脂とが高温状態となる場合であっても、防食層と保護層との融着が極めて効果的に抑制される。そのため、本発明によると、防食層−保護層間で適度な剥離性および密着性を有する多重被覆鋼管を得ることができる。
【0048】
また、本発明によると、保護層樹脂として所定のポリプロピレン樹脂を用いることにより、所望の耐疵付き性を確保し得る十分な硬さを有する保護層であって、ポリプロピレン樹脂のウエルド強度にも優れた保護層を備えた多重被覆鋼管とすることができる。更に、本発明で用いる所定のポリプロピレン樹脂は、ライン速度を高速化した場合であっても優れた押出し性を示すため、本発明は、高品質の多重被覆鋼管を、高効率かつ安定的に生産することが可能となる。
【0049】
なお、本発明は、ライン速度を低速化した場合にも適用することができる。生産性の観点からは不利であるが、何らかの理由でライン速度を10m/minよりも遅くする場合も想定される。このように、ライン速度を低速化すれば、保護層を被覆する時点での防食層の表面温度は低下し、溶融状態の防食層樹脂および保護層樹脂の温度も低下する。しかし、このような場合であっても、本発明では、水冷をする距離を短くする、水量を低減する、あるいは押出し被覆機の温度設定を変更することで、溶融状態の防食層樹脂および保護層樹脂の温度を高ライン速度の場合と同様の温度にすることができる。すなわち、従来技術ではライン速度の高速化に対応することが極めて困難であったが、本発明は、ライン速度が高速・低速の何れであっても適用することができる。
【実施例】
【0050】
JIS G 3452(2010)に規定された、表1に示す呼び径のSGP鋼管を基材とし、基材の外表面に、ブラスト処理を施したのち、図2に示すような連続ラインで多重被覆鋼管を製造した。
ブラスト処理後の鋼管を50℃に予熱し、JIS G3469(2010)に規定された粘着剤を塗布したのち(粘着剤層の厚さ:0.3mm)、密度:950kg/m3、ビカット軟化温度:121℃、引張強さ:41N/mm2(41MPa)、引張破壊ひずみ:600%である市販の高密度ポリエチレン樹脂、または密度:920kg/m3、ビカット軟化温度:110℃、引張強さ:20N/mm2(20MPa)、引張破壊ひずみ:1000%である市販の低密度ポリエチレン樹脂を押出し被覆機にて溶融し、クロスヘッドダイより粘着剤外表面に円筒状に押出し、鋼管に防食層を被覆した。被覆後、得られたポリエチレン層(防食層)を直ちに水冷し、表1に示す厚さの防食層を得た。
なお、上記の密度、ビカット軟化温度、引張強さ、引張破壊ひずみは、いずれもJIS G 3469(2010)の規定に従い測定したものである。
【0051】
次いで、表1に示す物性を有する市販のポリプロピレン樹脂を押出し被覆機にて溶融し、クロスヘッドダイより上記ポリエチレン層(防食層)の外面に、表1に示す条件で押出し被覆し、得られたポリプロピレン樹脂層(保護層)を直ちに水冷することにより、表1に示す厚さの保護層を得て、多重被覆鋼管とした。なお、表1に示す防食層および保護層の厚さは、多重被覆鋼管の管軸方向に垂直な断面について、円周方向の8箇所で測定した範囲(最大値と最小値)の値である。
【0052】
また、表1に示すポリプロピレン樹脂のメルトフローレイトは、JIS K6921-2(2010)に規定されたメルトマスフローレイト(MFR)であり、JIS K7210(1999)に規定される方法にて測定した。280℃における剪断粘度は、JIS K7199(1999) に規定されるキャピラリーレオメータ(毛細管形レオメーターと呼ばれることもある)で測定したものであり、キャピラリー管の内径D、長さLが、L/D=10/1の条件で測定した値である。密度は、JIS K7112(1999)に規定される方法で測定した。なお、これらの値は、鋼管に被覆する前の樹脂について測定した値であるが、製造された多重被覆鋼管の保護層の部分からポリプロピレン樹脂を切り出して測定した値と同じであった。
【0053】
【表1】

【0054】
以上によって得られた多重被覆鋼管について、防食層(ポリエチレン樹脂)と保護層(ポリプロピレン樹脂)の密着性および剥離性、耐浮き性、並びに保護層(ポリプロピレン樹脂)の硬さ、ウエルド強度を評価した。各々の評価方法は以下のとおりである。
【0055】
(i)密着性および剥離性
得られた各種の多重被覆鋼管を、50cm長さに切断し、両管端から20cmの位置における保護層に管周状にスリット(切れ目)を入れ、更に、前記2つのスリットで挟まれた長さ10cmの保護層において管軸方向にスリットを入れ、前記2つのスリットで挟まれた長さ10cmの保護層のみを剥がせるようにした。次いで、図4に示すように、この長さ10cmの保護層を180°方向に50mm/minの速度で半周剥離することで180°ピール強度を測定した。その際、測定された180°ピール強度の最大値が0.6N/10cm幅以上10N/10cm幅以下のものを密着性および剥離性が非常に良好(◎)、ピール強度が10N/10cm幅超え15N/10cm幅以下のものを密着性および剥離性が良好(○)、これ以外(0.6 N/10cm幅未満、または15N/10cm幅超)のものを密着性および剥離性不良(×)とした。
【0056】
(ii)耐浮き性
図4に示すように、上記した10cmの保護層を剥離して取り去ったのち、鋼管に残った保護層のスリット部分を目視により観察し、浮きが観察されなかったものを耐浮き性良好(○)、浮きが観察されたものを耐浮き性不良(×)とした。
【0057】
(iii)保護層(ポリプロピレン樹脂)の硬さ
保護層の硬さを、ASTM D2240(D型)に規定された試験方法に準拠して、デュロメータ硬さタイプDを測定し、70以上であるものを合格(○)、70未満であるものを不合格(×)とした。
【0058】
(iv)保護層(ポリプロピレン樹脂)のウエルド強度
得られた鋼管(保護層を剥離する前)の保護層のウエルド部にデュポン衝撃試験機の要領で衝撃を加えた。25mmφの鋼球を撃芯として持つ1kgの錘を衝撃面の上500mmより自由落下させ、ウエルド部に衝撃を与えた。これを100回繰り返した後、鋼の露出がないかをホリデーディテクター(ピンホール試験機)12kVで確認した。鋼の露出がなかったものを保護層のウエルド強度良好(○)、鋼管露出が検出されたものを保護層のウエルド強度不良(×)とした。
これらの評価結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2に示すように、本発明例は、密着性および剥離性、耐浮き性、保護層(ポリプロピレン樹脂)の硬さ、および保護層(ポリプロピレン樹脂)のウエルド強度がいずれも良好であった。これに対し、比較例は、いずれも良好な密着性および剥離性が得られなかった。更に、比較例のうち鋼管No.8,9は、ポリプロピレン樹脂のエチレン成分が23モル%を超えているため、保護層(ポリプロピレン樹脂)の硬さが不十分となった。
【符号の説明】
【0061】
1 … 鋼管
2 … 粘着剤層
3 … 防食層(ポリエチレン樹脂層)
4 … 保護層(ポリプロピレン樹脂層)
5 … 切れ目(スリット)
6 … 隙間(浮き)
10 … 鋼管予熱装置
20 … 粘着剤塗布装置
30 … 防食層押出被覆機
31 … 防食層冷却機
40 … 保護層押出被覆機
41 … 保護層冷却機
300 … 防食層樹脂(ポリエチレン樹脂)
400 … 保護層樹脂(ポリプロピレン樹脂)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材である鋼管の外側に、ポリエチレン樹脂層からなる防食層と、該防食層の上層としてポリプロピレン樹脂層からなる保護層が被覆された多重被覆鋼管であって、前記保護層を形成するポリプロピレン樹脂がエチレン成分19〜23モル%を含む共重合樹脂であり、前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレイトが0.53〜0.60g/10minであり、前記ポリプロピレン樹脂の280℃における剪断粘度が、剪断速度10/secで測定したとき1.7×103〜2.0×103 Pa・sであり、剪断速度100/secで測定したとき5.3×102〜6.0×102 Pa・sであることを特徴とする多重被覆鋼管。
【請求項2】
前記防食層と前記保護層との間のピール強度が0.6N/10cm幅以上15N/10cm幅以下であることを特徴とする請求項1に記載の多重被覆鋼管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180928(P2012−180928A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282696(P2011−282696)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】