説明

大きな構造体の溶接工程

【課題】摩擦攪拌溶接(FSW)技法を利用して、大きな構造体、例えば風車の極めて大きな円筒形のタワーの一部を溶接する溶接方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの工作物30,32の接合面34を冶金術的に接合することによって、これらの工作物を併せて溶接するステップを含む。工作物が併せて配置されることで、それぞれの接合面が互いに面し、接合面によってその間に接合領域が画定される。その後工作物は併せて摩擦攪拌溶接されるが、これは、接合領域に工具48を押し込み、その軸を中心として工具を回転させることにより工具を接合領域に侵入させ、接合領域に沿って工具を進めることで、接合面を冶金術的に接合し複数の工作物を備えた溶接された組立体を形成する溶接接合部を形成することによって行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に溶接方法に関する。より詳細には本発明は、極めて大きな円筒形部分、例えば風車の円筒形のタワーの一部を溶接するのに適しており、その一方で厚みのある壁の一部に溶接部を形成する際に度々直面する問題、例えば欠陥、歪み、有害な熱影響領域(HAZ)などを克服する溶接工程を対象としている。
【背景技術】
【0002】
極めて大きな構造体の溶接には、取り組むべき問題が非常にたくさんある。図1は、極めて大きな溶接された構造体の1つの特定の例として風車10を表している。風車10は、ハブ16から半径方向に延在する複数の羽根14を備えた回転羽根組立体12を含んでいる。ハブ16は典型的には、メインシャフト(図示せず)に設置されており、このシャフトは発電機に接続された回転力伝達機構の一部を形成している。メインシャフト、回転力伝達機構および発電機は全て、タワー22に設置されたナセル20の中に収容される。タービン10の大きさによって、タワー22が極めて大きくなる場合もあり、直径が10フィート(3メートル)を超えることも多くなる。タワー22はその高さのために、複数の円筒形部分で構築され、この部分の壁の厚さは、1センチメートル以上になることが多い。この円筒形部分は次いで縦に並べて併せて溶接されるが、その直径が極めて大きいことから極めて長い円周方向の溶接部が必要になる。このように厚みのある部分を、例えばガスメタルアーク溶接(GMAW、メタルイナートガス(MIG)溶接としても知られている)およびサブマージアーク溶接(SAW)などのアーク溶接によって溶接すると、溶融不足、気孔率、さらには亀裂など溶接部に多くの欠陥が生じる恐れがあり、これによりタワー22が非常に脆くなる可能性がある。複数の大きな円筒形部分を併せて接合してタワー22を形成する際には、歪みもまた重大な問題となる。
【0003】
イナーシャ溶接および摩擦攪拌溶接(FSW)などの固相溶接技法は比較的低い温度の冶金接合工程であることから、従来の融解(アーク)溶接工程に対して様々な利点を提供する。FSWでは、極めて大きな軸方向の力を加えることで溶接すべき接合領域に回転工具を挿入し、この工具が回転する際、工具を接合部に沿ってゆっくりと進めることで摩擦熱を生じさせ、接合部の両側で金属を可塑化させる必要がある。本質的には、高温で可塑化された金属を「攪拌する」ことによって溶接部が形成され、この部分が工具の後の位置で再び結合することで金属を溶融させずに固相溶接部を形成する。固相溶接の特定の利点は、このような技法が、アーク溶接工程の場合は典型的である溶加材やシールドガスを必要としないことから生じている。さらに溶接される母材が固相溶接では熔解しないことから、溶接接合部において母材の再凝固が生じることがない。結果として固相溶接は、基本的にいかなる環境においても溶接接合部を形成することができ、この接合部には欠陥がなく、母材のものと事実上同一の特性と構造を有する。また溶接接合部には典型的に歪みもなく、この工程が適切な作動パラメータの範囲に留まっているならば容易に不具合を回避することができる。
【0004】
FSWは上記に述べたような特定の利点を提示するが、風車のタワーの場合のように極めて厚い壁の部分を有する極めて大きな構造体を溶接しようとする場合はいくつかの難題が残っている。例えば厚い壁部分は、回転工具が溶接するのに侵入する深さの点で1つの難題を提起する。さらに溶接するために整列されたタワーの一部は、製造公差およびこの部分のサイズが極めて大きいことに起因して、その接合面同士の間にはかなりの隙間ができることが多い。円周方向の接合部にFSWを行なう際に直面する別の問題は、溶接の終わりに工具が引き抜かれる際、攪拌された材料が工具の後ろの位置で再結合し、工具が占拠していた空間を「埋める」ことがないため、出口穴が形成されやすい点である。
【0005】
上記を鑑みて、風車の円筒形のタワーの一部および他の極めて大きな構造体を溶接するのに固相溶接技法、とりわけFSWを適合させることができるならば、それが望ましいことである。FSWがハードウェアを組み立て、設置場所で溶接するのに十分適しているため、そうする能力により、より小型のハードウェアを設置場所に搬送することが可能になる。そういうものなのでタワーの一部を併せて現場溶接することで、風車の設置場所に大きな溶接された組立体を搬送することに関連する運搬上の問題を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0279146号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、FSW技法を利用して、例えば風車の極めて大きな円筒形のタワーの一部などの大きな構造体を溶接する溶接方法を提案しており、このような構造体はそうでなければ、従来のアーク溶接技法を使用して欠陥、歪みおよび気孔率レベルにならないように溶接するのは困難である。
【0008】
本発明の一態様によると、方法は、少なくとも2つの工作物をその接合面を冶金術により接合することによって併せて溶接するステップを含む。工作物は、それぞれの接合面が互いに面し、この接合面によってその間に接合領域が画定されるように併せて配置される。その後工作物は併せて摩擦攪拌溶接されるが、これは、接合領域に工具を押し込み、工具をその軸を中心として回転させることにより工具を接合領域に侵入させ、摩擦接触により接合面を加熱し、接合領域に沿って工具を進めることで、接合面を冶金術的に接合し、複数の工作物を備えた溶接された組立体を形成する溶接接合部を形成することによって行なわれる。次いで工具に接合領域上に配置された楔の上を進ませることによって、工具が接合領域から引き抜かれる。楔は、好ましくは溶接接合部に重なる部分を形成するように配置され、好ましくは溶接接合部に出口穴を作らずに工具を接合領域から完全に引き抜くように構成される。
【0009】
本発明の別の態様によると、方法は風車のタワーの作製に採用される。方法は、2つの円筒形部分を併せて配置することで、この円筒形部分が軸方向に互いに当接し、円筒形部分の接合面が互いに面し、この接合面によってその間に接合領域が画定され、この接合領域は円筒形部分を円周方向に囲むようにその間に延在する。接合領域は1センチメートルを超える厚みを有しており、接合面の間におよそ2ミリメートルまでの隙間を有する。円筒形部分が裏当て材によって支持されることにより、円筒形部分は裏当て材と摩擦攪拌溶接工具の間にあり、この工具は、肩部と、肩部から工具の軸方向に突出する探査部を備える。円筒形部分がその後摩擦攪拌溶接を受けることにより、接合面を溶融させずに円筒形部分が併せて溶接される。摩擦攪拌溶接ステップは、摩擦攪拌溶接工具の探査部を接合領域の円周方向の位置において接合領域に押し込むこと、摩擦攪拌溶接工具をその軸を中心として回転させることにより摩擦攪拌溶接工具を接合領域に侵入させること、および摩擦攪拌溶接工具を接合領域に沿って進めることで、接合面を冶金術的に接合し円筒形の部分を備えた溶接された組立体を形成する溶接接合部を形成することを含む。
【0010】
本発明の技術的効果は、FSW技法を使用することで、風車の円筒形のタワーの一部の場合のように極めて大きくかつ厚みのある部分を溶接する際に度々直面する様々な溶接品質の問題をなくすことが可能な点である。FSW技法を採用することで1回のサイクルだけで深く入り込んだ溶接部を形成することができ、アーク溶接技法に通常必要とされる溶加材やシールドガスなしで実施することができる。FSW工程の実施に関わる装備のタイプにより、溶接を現場で行なうことができ、これにより風車のタワーの大きな直径の円筒形部分を設置場所まで個々に、あるいは1/2または1/4ずつ輸送することで運搬をかなり簡素化することができる。また本発明のFSW技法に関連する利点は、これに限定するものではないが発電、宇宙空間、インフラ、医療および工業的用途で用いられる構造体など様々な他の構造体の構造にも適用することができる。
【0011】
本発明の他の態様および利点は、以下の詳細な記載から十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のFSW工程を使用してそのタワーを構築することができる風車の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるFSW工程の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態によるFSW工程の概略図である。
【図4】本発明のFSW工程を使用することができるタイプのFSW工具の図である。
【図5】本発明の別の実施形態により、出口穴が形成されるのを回避するために楔を使用した場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2および図3は、極めて大きな構造体を冶金術的に接合するのに適したFSW工程を概略的に表しており、この構造体は、例えば1センチメートル以上の比較的厚い部分で溶接する必要がある。非制限的な1つの例として、図1の風車のタワー22の大きな円筒形部分の場合の典型的なケースでは、11から22ミリメートルの厚みに直面することが多い。またFSW工程は、発電用途で使用される他の多様な構成要素、ならびに宇宙空間、インフラ、医療および工業的用途などを含めた広範な種類のその他の用途を目的とした構成要素を作製するのにも適している。FSW工程は好ましくは、欠陥、歪みおよび有害な熱影響領域(HAZ)をなくすことができる深く入り込んだ溶接接合部を生み出す。
【0014】
図2および図3は、本発明の一実施形態によるFSW工程によって一組の工作物30および32を溶接する際に行なわれる2つのステップを表している。工作物30および32は、成形品、鋳造物、粉末冶金形態であってよく、多様な種類の材料で形成することができ、その非制限的な例には、ニッケル、鉄およびコバルトベースの合金が含まれる。例えば、図1に表されるタイプの風車のタワーの構造には、A572などの錬鋼合金が一般に使用される。工作物30および32は、溶接接合部36(図3)によって冶金術的に接合すべき接合面34を有する。図2および図3では、接合面34は突き合わせ接合部を形成しているが、これは特に極めて大きな工作物30および32を溶接する場合に製造コストの見地から望ましいことである。しかしながら他の接合構成を使用することができることも予見することができる。接合面34は工作物30および32に対向して配置された面38および40と隣接しており、その間に各々の工作物30および32の板厚が画定される。
【0015】
図2では、工作物30および32が併せて配置された状態で示されることで各々の接合面34は互いに面しており、接合領域42は、接合面34によってその間に画定されるように特定されている。工作物30および32がタワー22の大きな円筒形部分であるような状況では、接合面34は工作物30および32の軸方向の端部に形成され、溶接の準備をする際に互いにもたせ掛けられ、その結果接合領域42および結果として生じる溶接接合部36が、工作物30および32を円周方向に囲むように延在することになる。工作物30および32のサイズが大きいため、接合領域42はさらに、接合面34の間に隙間44を形成するように描かれているが、これはそれぞれの接合面34は完璧に合わさって合致するように工作物30および32を作製することが非現実的であるためである。タワー22の円筒形部分に関して、このような隙間44は場所によっては2ミリメートル以上にもなる場合がある。図2および図3はさらに、少なくとも接合領域42のすぐ下の領域に工作物30および32の下に配置された裏当て材46を示している。裏当て材46は、溶接作業中に、特に工作物30および32が、FSW法を使用して工作物30および32を冶金術的に接合するのに典型的に必要とされる極めて大きな力を受ける際、工作物30および32を支持するように機能する。裏当て材46は、様々な種類の材料で形成され、多様な構造を有することができるが、さらに詳細には考察しない。
【0016】
本発明の特定の態様によると、従来の電気によるアーク溶接法を使用しようとする場合、およそ2ミリメートルの接合隙間とおよそ1センチメートル以上の接合厚み(面38および40に垂直の)によって特有の課題が提起されるが、本発明は、FSW工程を適用することによってこのような問題を克服し、その1つの実施形態が図2および図3に表されている。図2、図3および図4は、FSW工程を行なうための工具48の一例を表している。工具48は概ね円筒形形状として描かれており、これにより工具の肩部50と、肩部50を形成する工具48の端部から突出する探査部52が画定される。探査部52は一般に円錐台形状であり、その遠位端では、探査部52の基部におけるその最大直径(肩部50に隣接する)のほぼ1/3の最小直径を有する。図2および図3から明らかなように、回転探査部52は、工作物30と32の間の接合領域42に力ずくで挿入されるように適合されている。探査部52の軸方向の長さが溶接接合部36の最大の侵入深さに影響を与えることから、最適な探査部の長さは個々の用途に左右される。11から22ミリメートルの厚さを有する工作物30および32に対して実施されるFSW工程に好ましい軸方向の長さは、およそ10.5からおよそ21.6ミリメートルの範囲であるべきと考えられている。肩部50は図2および図3で、FSW工程中に工作物30および32の隣接面38に当接するように描かれており、これにより溶接接合領域に付加的な摩擦熱を与えるように機能する。図5の実施形態では、肩部50は、環状形状の段の付いた2つの面によって形成されており、これらの面が合わさって工具48の端部においてその直径のおおよそ1/4から1/3を形成することで、探査部52の基部が直径のおおよそ2/3から3/4の割合を占めるようになる。
【0017】
上記から肩部50が工作物30および32の両方の面38に係合し、探査部52が図2および図3に記載されるFSW工程において接合領域42に侵入することは明らかである。このような理由により、工具48、または少なくともその肩部50と探査部52は好ましくは、強度の高い耐摩耗性材料で形成される。注目すべき例にはタングステン−レニウム合金が含まれ、これは厚みのあるスチール製の部分を溶接する際に工具48の寿命を延ばすことができる。工具48の好適な直径は個々の用途に左右されるが、スチール合金で形成され、壁の厚さが1センチメートル以上である風車のタワーの円筒形部分を溶接する場合は、少なくとも35ミリメートルの直径が好ましいと考えられている。FSW工程により厚みのある工作物を冶金術的に接合するのに必要とされる強い力と摩擦が理由で、工具48内の内部を通路(図示せず)を介して流れる流体冷却剤によって工具48の内部を冷却することができる。付加的に工作物30および32の面38を、FSW工程において、例えばおよそ1.5からおよそ2.5gpm(およそ6から10リットル/分)の速度で流れ、面の下に沈んだ工具48のおよそ1.5インチ(およそ4cm)後ろの位置で溶接接合部36に誘導される冷却剤などの流動する流体冷却剤によって冷却することもできる。
【0018】
図2および図3から明らかなように、工具48を接合領域42に沿って方向「D」に進ませる一方で、軸方向の力「F」が工具48に加えられ、工具48はその軸を中心に回転させられる。図3は、工具48の探査部52が接合領域42の厚み全体にほとんど侵入しているように描いているが、その厚み全てではなく、例えばそのおよそ96%に侵入するように描いており、それより深く侵入することもそれより浅く侵入することも可能である。工具48に加えられる軸方向の力と、工具48の回転および進行速度は、個々の用途に左右されるが、特に工作物30および32の材料および厚さ、ならびに工具48の材料とサイズに左右される。スチール合金で形成され、壁の厚さが1センチメートル以上の風車のタワーの円筒形部分を溶接する際、好適な軸方向の力は典型的にはおよそ12,000ポンド(およそ53,000N)以上であり、例えばおよそ12,000からおよそ14,000ポンド(およそ53,000からおよそ62,000N)であり、好適な回転速度は、およそ150からおよそ160rpmであると考えられており、好適な進行速度は、1分当たりおよそ4からおよそ6インチ(およそ10からおよそ15cm)であると考えられている。最適な作動パラメータは、過度に実験を行なわずとも把握することができる。工作物30および32に対する工具48の運動および制御は、工具48を大きなフライス盤に設置する、または軸方向の力と工具48が接合領域42内に侵入し、中で回転しそれに沿って進行するのに必要なトルクを生成することができる他の好適な設備に設置することによって成し遂げることができる。
【0019】
図2および図3に表されるFSW工程は、いかなる溶加材も必要としないため、溶接接合部36全体は、工作物30および32の材料から形成され、より具体的には接合面34におけるおよびその付近の材料から形成される。また図2および図3に表されるFSW工程ではシールドガスを利用する必要がないが、これは溶接を受ける材料が全く溶融しないためである。しかしながら溶接接合部36に補助材を組み込むこと、および/またはシールドガスを使用して溶接特性をさらに強化することも可能であると考えられる。しかしながらそうすることで、FSW工程が持つ従来のアーク溶接工程に対する利点が損なわれる可能性がある。
【0020】
当分野で知られるように、FSW工程は、溶接作業の完了時に工具48を取り出す際に、溶接接合部36に出口穴を形成しやすい。図5に表される特定の一実施形態の発明では、工具48が出口穴を形成する傾向は、接合領域42の上に楔54を置くことによって回避される。楔54は、図5では、例えば工作物30および32が円筒形形状であることにより、接合領域42および結果として生じる溶接接合部36が共に環状形状になるように、2つの円筒形部分を溶接する際、FSW工程の始めに形成された溶接接合部36の一部36Aの上に重なるように示されている。FSW工程の始めに形成された溶接接合部36の特定の円周方向の位置(溶接部分36A)に楔54を置くことによって、工具48を溶接接合部36の一部36Aに重なるようにし、その後溶接作業が完了したときに溶接接合部36から引き抜くことができ、その結果、溶接接合部36は溶接された工作物30および32によって形成され、結果として生じた溶接された組立体の外周全体を囲むように切れ目なく続くことになる。楔54は好ましくは、工具48が楔54の上を進む際、工具48が溶接接合部36から完全に引き抜かれるように構成されている。この目的のために楔54の最大の厚さは好ましくは、探査部52の軸方向の長さと等しいかそれより大きい。楔54を確実に安定させることを目的とした好適な傾斜(工作物30および32の面38に対する)は、せいぜい15度であり、好適な傾斜は、およそ5からおよそ15度であると考えられている。
【0021】
図5に表されるようにFSW工程が完了したときに楔54によって工具48が溶接接合部36から引き抜かれることにより、溶接接合部36が楔54の中まで延在し、その結果楔54が溶接された工作物30および32によって形成される組立体に溶接されることになる。大抵の状況では、例えば機械加工または研削によって溶接された組立体から楔54を取り外すことが望ましい。
【0022】
溶接接合部36内の欠陥や歪み、および溶接接合部36を取り囲む工作物30および32の材料内の有害なHAZが解消されない場合、図2、図3および図5に表されるFSW工程は、有意にそれらを減少させることができる。溶接接合部36の欠陥(例えば気孔率)を減少させるまたはなくすことにより溶接金属特性を助長させ、これにより風車のタワーの場合のように、周期的な作動状況により疲労を受ける構成要素の寿命を延ばすことができる。現在特定の風車のタワーは、SAWによって形成された溶接接合部によって作製されており、これは複数回の溶接サイクルを必要とする。本発明の場合、1回のサイクルだけで同等の、場合によるとそれよりさらに優れた溶接接合部を形成することができると考えられている。
【0023】
本発明を、縦に当接した2つの円筒形形状の工作物30および32の溶接に関連して記載してきたが、工作物30および32を上記に記載されるFSW工程を使用して作製することもできる。例えば風車のタワーの大きな直径の円筒形部分を、接合領域に沿って併せて溶接されこの部分の長手方向に配向された1/2(半円筒形形状)または1/4の部分から作製することも可能である。このような特性により、工作物ははるかに小型になり、より簡単に輸送され、現場でFSW溶接することが可能になる。
【0024】
本発明を特定の実施形態の観点から見て記載してきたが、当業者によって他の形態を適合させることも可能であることは明らかである。したがって本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0025】
10 風車
12 組立体
14 羽根
16 ハブ
20 ナセル
22 タワー
30 工作物
32 工作物
34 面
36 接合部
36A 一部分6
38 面
40 面
42 領域
44 隙間4
46 材料
48 工具
50 肩部
52 探査部
54 楔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの工作物の接合面を冶金術的に接合することによってこれらの工作物を併せて溶接する方法であって、
前記工作物を併せて配置することで、その前記接合面が互いに面し、前記接合面によってその間に接合領域が画定されるステップと、
前記接合領域に工具を押し込み、該工具をその軸を中心として回転させることにより前記工具の一部分を前記接合領域に侵入させ、摩擦接触により前記接合面を加熱し、前記接合領域に沿って該工具を進めることで、前記接合面を冶金術的に接合し、前記複数の工作物を備えた溶接された組立体を形成する溶接接合部を形成することによって、前記工作物を併せて摩擦攪拌溶接するステップと、
次いで前記工具に前記接合領域上に配置された楔の上を進ませることによって、前記接合領域から前記工具を引き抜くステップであって、前記工具が前記楔の上を進む際に前記溶接接合部に出口穴を作らずに、前記摩擦攪拌溶接工具が前記楔によって前記接合領域から完全に引き抜かれるように前記楔が構成されるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記接合領域が、前記接合面の間におよそ2ミリメートルまでの隙間を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工具が、肩部と、該肩部から前記工具の軸方向に突出する探査部とを備え、該肩部が前記工作物の隣接面に当接し、該探査部が前記摩擦攪拌溶接ステップにおいて前記接合領域に侵入する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記楔が、前記引き抜くステップの結果として、前記溶接された組立体に溶接される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記溶接された組立体から前記楔を取り外すステップをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記工作物を裏当て材によって支持するステップであって、前記工作物が前記摩擦攪拌溶接ステップにおいて前記工具と該裏当て材との間にあるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記摩擦攪拌溶接ステップが、前記接合面を溶融しない、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記接合面が、突き合わせ接合部を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記工作物が、スチール合金で形成される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記接合領域が、1センチメートルを超える厚みを有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記摩擦攪拌溶接ステップにおいて、少なくとも53,000Nの軸方向の力が前記工具に加えられる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記工具が、前記摩擦攪拌溶接ステップにおいて、およそ150から160rpmで回転される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記工具が、前記摩擦攪拌溶接ステップにおいて、前記接合領域に沿って1分当たりおよそ10から15センチメートル進む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記工作物が円筒形工作物であり、軸方向に互いに当接することで前記接合領域を画定し、前記接合領域および前記溶接接合部が前記円筒形工作物を円周方向に囲むように延在し、前記摩擦攪拌溶接ステップが、前記接合領域の特定の円周方向の位置において開始され、前記楔が、前記摩擦攪拌溶接ステップが開始される前記円周方向の位置で前記接合領域上に配置される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、請求項1の摩擦攪拌溶接ステップによって、半円筒形工作物を併せて摩擦攪拌溶接することによって前記円筒形工作物を作製するステップをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記溶接された組立体が風車のタワーであり、前記工作物が該風車のタワーの円筒形部分である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
風車のタワーを作製する方法であって、
2つの円筒形部分を併せて配置することで、該円筒形部分が軸方向に互いに当接し、該円筒形部分の接合面が互いに面し、該接合面によってその間に接合領域が画定され、前記接合領域が該円筒形部分を円周方向に囲むようにその間に延在し、該接合領域が1センチメートルを超える厚みを有し、該接合面の間におよそ2ミリメートルまでの隙間を有するステップと、
前記円筒形部分を裏当て材によって支持することで、前記円筒形部分が該裏当て材と摩擦攪拌溶接工具の間にあり、前記工具が、肩部と、該肩部から前記工具の軸方向に突出する探査部を備えるステップと、
前記摩擦攪拌溶接工具の前記探査部を、前記接合領域の円周方向の位置において前記接合領域に押し込み、前記摩擦攪拌溶接工具をその軸を中心として回転させることで前記摩擦攪拌溶接工具を前記接合領域に侵入させ、摩擦接触により前記接合面を加熱し、前記摩擦攪拌溶接工具を前記接合領域に沿って進めることで、前記接合面を冶金術的に接合し円筒形部分を備えた溶接された組立体を形成する溶接接合部を形成することによって、前記接合面を溶融させずに前記円筒形部分を併せて摩擦攪拌溶接するステップとを含む方法。
【請求項18】
前記方法がさらに、
前記摩擦攪拌溶接工具にその円周方向の位置において前記接合領域上に配置された楔の上を進ませることによって、前記摩擦攪拌溶接工具を前記接合領域から引き抜くステップであって、前記摩擦攪拌溶接工具が前記楔上を進む際、前記摩擦攪拌溶接工具が前記楔によって前記接合領域から完全に引き抜かれるように前記楔が構成されており、前記楔が、前記引き抜くステップの結果として前記溶接された組立体に溶接されるステップと、
前記楔を前記溶接された組立体から取り外すステップとを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記接合面が突き合わせ接合部を形成する、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記円筒形部分がスチール合金で形成される、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−228731(P2012−228731A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−75350(P2012−75350)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】