説明

大型クラゲ分離装置および大型クラゲ分離装置を備えた大型クラゲ処理装置

【課題】
従来の大型クラゲを処理する場合は、混入している小魚等を分離する必要はなかったが、大型クラゲの固形成分を肥料として利用する場合には大型クラゲと小魚等を分離する必要があり、大型クラゲと小魚等を人力により分離することは大変手間が掛かるという問題があった。
【解決手段】
大型クラゲ分離装置6は、回動手段5と、回動手段5により回転する分離板21とを有し、前記分離板21の上面には前記分離板21の回転方向に向かって斜め上方に切り起こされた切り起こし23と、切り起こし23に対応する孔24とが複数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚網に捕獲された大型クラゲ、小魚および海上での浮遊物を陸上に持ち帰り、小魚および海上での浮遊物が混入した大型クラゲのみを利用するため、小魚および海上での浮遊物と大型クラゲを分離した後に、大型クラゲを処理する大型クラゲ分離装置および大型クラゲ分離装置を備えた大型クラゲ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチゼンクラゲやビゼンクラゲ等の大型クラゲは魚網を破ったり、発電所の海水の取り入れ口を塞いだりするため、これを処理する方法が提案されてきた。
【0003】
従来の技術においては、大型クラゲを捕獲した後は、大型クラゲを漁業や発電に悪影響を及ぼさない程度に破砕した後に、破砕した大型クラゲを海に廃棄することが、一般的であった。
【0004】
この大型クラゲの処理方法は、発電所においては大型の処理装置を使い大規模に行うものであり、漁業者においてもこれらの処理装置を漁船等に備えて海上において行うものであることから大規模漁業者でないと行いにくい面があった。そして、海上で行うものとして特許文献1のような技術が開示されていた。
【0005】
小規模の漁業者においては、大型クラゲを魚網で捕獲しても小型の漁船等にクラゲを処理する設備を備えることは難しいので、海中にそのままの状態で廃棄せざるを得なかった。そして、捕獲した大型クラゲを海に廃棄する所謂海洋投棄は、漁場を汚染させることになり、港に持ち帰った後に処理する方法が検討されてきた。
【0006】
大型クラゲは食用に利用される場合もあるが、需要が限られており、また、大型クラゲの内のエチゼンクラゲは一般的には食用には利用されていなかった。また、近年エチゼンクラゲが多量に日本近海で発生し、日本近海の漁場に多く生息しており、漁業者の規模にかかわらず被害を受けているという現状があった。また、大型クラゲは90パーセント以上が水分であり、水分以外の成分を利用することが考えられていた。そして、大型クラゲの水分を除いた成分である固形成分には、窒素(N)、カリウム(K)やマグネシウム(Mg)が含まれるので、これを利用する方法として、肥料の原料に利用する方法が考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−296110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、漁業者が魚網で大型クラゲを捕獲する場合とは、市場性のある魚を獲る目的で魚網を使用し、魚網に市場性のある魚と共に大型クラゲが捕獲される場合であり、市場性のある魚を取り除いても魚網には、大型クラゲ以外の小魚や海洋浮遊物等が混入している(以下、小魚と海洋浮遊物等の混合物を「小魚等」と略す。)場合が一般的であった。魚網から市場性のある魚以外を取り除いてトロ箱等の魚類移送用容器(以下、「トロ箱等」と略す。)に一括して移した場合には、大型クラゲ、小魚等の混じったものとなることが一般的であった。この小魚等の混じった大型クラゲを土中に埋めたり焼却したりして廃棄処分するのであれば、小魚等と大型クラゲとを選別する必要はないが、大型クラゲだけを肥料として利用する場合は、肥料の成分が一定にならなくなり肥料の品質が保たれなくなるので、これらの小魚等を除く必要があった。
【0009】
大型クラゲは巨大なものは150kgになる場合があり、通常のものでも、数10kg程度の重量を有しているので、前述の魚網で捕獲された小魚等が混じった大型クラゲをトロ箱等に移した後、大型クラゲと小魚等を人力により分離することは大変手間が掛かるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
第1発明の大型クラゲ分離装置は、回動手段と、前記回動手段により回転する分離板とを有し、前記分離板の上面には前記分離板の回転方向に向かって斜め上方に切り起こされた切り起こしと、該切り起こしに対応する孔とが複数設けられている。
第2発明の大型クラゲ分離装置は、請求項1記載の発明において、前記切り起こしが三角形に加工されている。
第3発明の大型クラゲ処理装置は、請求項2記載の大型クラゲ分離装置が上部に備えられ、下部に大型クラゲを破砕する大型クラゲ攪拌装置が備えられている。
第4発明の大型クラゲ処理装置は、請求項3記載の発明において、大型クラゲ分離装置の回動手段と、大型クラゲ攪拌装置の回動手段とが、一つの電動機に連接する同一の軸により回動させられている。
【発明の効果】
【0011】
以上のような、技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
第1発明によれば、分離板に切り起こしと切り起こされたことにより生じる孔を有する技術手段を有していることにより、大型クラゲを回転しながら切り裂き、切り起こしの直下の前記孔より大型クラゲを分離することができる構造および加工が簡単な大型クラゲ分離装置を提供できる。
第2発明によれば、第1発明を利用し、切り起こしが三角形に加工されている技術手段を有することで、大型クラゲに突き刺さり易く、大型クラゲを分離する効果を増す大型クラゲ分離装置を提供できる。
第3発明によれば、第2発明を利用し、分離された大型クラゲを連続してさらに攪拌する技術手段を有していることにより、分離された大型クラゲの固形物を取り出すことができる。
第4発明によれば、第3発明を利用し、単一電動機で大型クラゲの分離装置と、大型クラゲの攪拌装置を同時に駆動する技術手段を有していることで、簡単な構成で駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る一実施形態を説明するための、大型クラゲ処理装置の外観図である。
【図2】図1に示す大型クラゲ処理装置の断面図である。
【図3】大型クラゲ分離装置(分離部)の要部説明図である。
【図4】大型クラゲ攪拌装置(攪拌部)の要部説明図である。
【図5】図3の大型クラゲ分離装置の要部に大型クラゲや小魚が投入された図である。
【図6】図4の大型クラゲ分離装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施する形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0014】
(全体)
本発明の大型クラゲ処理装置1の外観について図1を用いて説明する。大型クラゲ処理装置1は、大型クラゲを処理する処理部4と、処理部4の上部で、処理部4の駆動源で回動手段である動力部5を備えた構成となっている。大型クラゲ処理装置1は直径約1200ミリメートル、地上より高さ約1200ミリメートルの概略円筒形状の容器である処理容器12と、処理容器12の上面に、上面の一側面側に角型に張り出した投入口11が備えられている。処理容器12の上面には、処理容器12の円筒形状の中心線に動力部5の軸の中心線が位置するように支持具41により動力部5が取り付けられている。動力部5は電動機42と、減速機43よりなる。処理容器12の側面には水分排出口13が、処理容器12の底面には固形分排出口14が設けられている。なお、処理容器12の底部には処理容器12の設置面での安定性や、底部の固形分排出口14を取り付けるために脚部10が設けられている。
【0015】
(動力部)
動力部5は電動機42と減速機43とを組合せたものであり、電動機42の所定の回転を減速機43により減速させ、減速させた回転を、減速機43より下部に伸びる回転軸44により、処理部4の被駆動部に直接伝えることにより回転させている。回転数は1秒間に2〜3回転になるよう電動機42および減速機43は設定されている。なお、回転数が前記の範囲にするには、インバーター式の電動機や直流式の電動機を用いることも可能である。また、電動機でなくても、ガソリンエンジン等の内燃機関と減速機を組み合わせて実施することもできる。
【0016】
図1の大型クラゲ処理装置1の処理容器12の容器の側板を除いて、大型クラゲ処理装置1の内部を説明する図が図2である。図2を用いて処理部4について説明する。
【0017】
(処理部)
処理部4は、上部に投入口11を有し、投入口11の直下に大型クラゲと小魚等の分離部6があり、これが大型クラゲ分離装置となる。分離部6は分離板21と分離カバー22より成り、分離板21と分離カバー22の上面側で、大型クラゲと小魚等の分離が行われ、分離板21で分離された大型クラゲが、分離板21を通過して下部の攪拌部7に入る。分離板22は回転軸44取り付けられており、電動機42が駆動することにより、減速機43で減速された後に所定の回転数で回転する。
【0018】
攪拌部7は大型クラゲ攪拌装置である。処理部4の分離板21の下面を離れて、処理容器12の底面までの空間が攪拌部7となる。攪拌部7には2組の十字羽根30があり、攪拌部7の処理容器12の内側面には複数の容器羽根33が取り付けられている。十字羽根30は分離板21と同一の軸である回転軸44に取り付けられており、電動機42が駆動することにより、減速機43で減速された後に所定の回転数で回転する。分離部6で分離された大型クラゲが処理容器12の攪拌部7に溜まり、溜まっている大型クラゲが回転する十字羽根30により細かく破砕され大型クラゲは、攪拌部7に該当する処理容器12において、上部に水分が集まり、下部に大型クラゲの固形分が集まる。この大型クラゲを攪拌することにより得られた水分は、攪拌部7に該当する処理容器12の側面に設けられた水分排出口13から排出され、大型クラゲの固形分は、攪拌部7に該当する処理容器12の底部に設けられた固形物排出口14から排出される。なお、図中には示してないが、水分排出口13および固形物排出口14には、バルブ等の閉め切り手段が設けられており、攪拌部7が駆動する場合には、水分排出口13および固形物排出口14は閉め切られた状態で、水分や固形分を排出する場合には、このバルブ等の開操作を行う。
【0019】
(分離部)
分離部6の要部である分離板21と分離カバー22について図3を用いて説明する。分離板21は、円形の分離板平面部21aと、分離板平面部21aの外周端に上方に折り曲げた分離板立ち上げ部21bによりなっており、分離カバー22は2段の外径を有し、この2段の外径に比較して高さ方向の短い円筒となっている。分離カバー22の大外径円筒部22aの外側面は、処理容器12の内径に等しいか、またはやや小さく、分離カバー22の大外径円筒部22aの外側面で処理容器12の内面に取り付けられている。分離カバー22の小外径円筒部22bの外側面は、分離板立ち上げ部21bの内径よりも軸のぶれや加工精度により求められる所定の余裕値を設けて小さい径にされている。
【0020】
分離板21には複数の三角形形状の切り起こし23a、23b、23c、23dが設けられており、切り起こし23により、分離板21には複数の三角形状の孔である孔24a、24b、24c、24dが穿たれている。切り起こし23の三角形の底辺は分離板21の中心を通過する線(径)上に来るよう加工されている。また、切り起こされた三角形の頂点は回転方向を差すように切り起こされている。なお、斜め上方から見た図3において、分離板21の回転方向は、右回転(時計回り)となっている。
【0021】
切り起こし23a、23b、23c、23dの三角形は外周に向かうほど大きい形状となっており、切り起こし23aが、底辺100ミリメートル高さ75ミリメートルの三角形で、分離板21の上面を基準とする切り起こし高さが30ミリメートルであり、切り起こし23bが、底辺80ミリメートル高さ60ミリメートルの三角形で、分離板21の上面を基準とする切り起こし高さが35ミリメートルであり、切り起こし23cが、底辺60ミリメートル高さ45ミリメートルの三角形で、分離板21の上面を基準とする切り起こし高さが40ミリメートルであり、切り起こし23dが底辺50ミリメートル高さ40ミリメートルの三角形で、分離板21の上面を基準とする切り起こし高さが40ミリメートルとなる。また、分離板21はその大きさに対応する強度より板厚が約4〜5ミリメートルとなっており、切り起こし23a、23b、23c、23dの三角形の頂点においては、分離板21の板厚に対応した板厚となり、特に板厚を薄くして刃状の加工は施してない。
【0022】
なお、孔24a、24b、24c、24dは、切り起こし23a、23b、23c、23dに対応した三角形の孔になる。
【0023】
分離板21に切り起こし23a、23b、23c、23dおよびを孔24a、24b、24c、24dを加工する手段としては様々あり、レーザー加工等によりV字状の溝孔を開けて切り起こす方法や、その他プレス機械を使用して孔24a、24b、24c、24dを開けると同時に切り起こす方法などにより実施可能である。この場合においては、加工方法の精度により、切り起こし23a、23b、23c、23dの三角形の外形寸法よりも、孔24a、24b、24c、24dの三角形の孔寸法がやや大きくなる場合がある。なお、金属加工方法によっては、切り起こし23a、23b、23c、23dを分離板21から直接切り起こすのではなく、切り起こし23a、23b、23c、23dを別の金属材料を用いて、孔24a、24b、24c、24dが開けられた分離板21に溶接等の方法により取り付けることによっても実施可能である。この場合においては、孔24a、24b、24c、24dの形状は余り大きくならなければ、切り起こし23a、23b、23c、23dの形状に対応する必要はなく、三角形の孔とする必要もない。
【0024】
切り起こし23a、23b、23c、23dおよび孔24a、24b、24c、24dの配置は、分離板21の中心において点対象に配置されており、切り起こし23a、23cと孔24a、24cを一組とし、切り起こし23b、23dと孔24b、24dを一組とするものを、中心角度22.5度による放射状に、交互に配置してある。そして、切り起こし23aと孔24aの配置された円と、切り起こし23bと孔24bの配置された円と、切り起こし23cと孔24cの配置された円と、切り起こし23dと孔24dの配置された円が、分離板21の円と共に同周円となり、これらの同周円は等間隔となるように配置されている。分離板21の中心部には回転軸44を固定するための取り付け孔25が設けられている。
【0025】
(攪拌部)
攪拌部7の要部である十字羽根30および容器羽根33について図4を用いて説明する。十字羽根30は幅約100ミリメートルのフラットバー31を4枚、回転軸44に十字形に取り付けたものであり、回転軸44に対して側方から見た場合に右を上とした斜め方向に取り付けてある。4枚のフラットバー31の夫々には、斜めにした場合の上面側(回転方向に回転させると攪拌部7に溜まった大型クラゲに当たる側の面)には攪拌効果を上げるために上下2段で各段が8個ずつであり、上下の段が交互になるようにした三角形状の突起32が取り付けられている。そして、図2で示すように十字羽根30は回転軸44の上下に2組取り付けられている。
【0026】
攪拌部7に該当する処理容器12の内面には、処理容器12の内周を概ね12等分した位置で上下方向に約3段の容器羽根33が取り付けられている。容器羽根33はL字状の金具で「>」の様な形で取り付けられており、「>」の頂点側が十字羽根30の回転方向と逆を指す向きに取り付けられている。
【0027】
なお、大型クラゲ処理装置1を構成する部材、大型クラゲに触れる部分の部材、投入口11、処理容器13、水分排出口13、固形分排出口14、分離板21、分離カバー22、十字羽根30および容器羽根33は、塩分等に腐食し難い材質であるステンレス鋼板や、塩分等に腐食し難い表面加工を施した金属材料から成っている。
【0028】
(大型クラゲ処理装置の動作)
漁業者が漁船から、魚網による漁を行う場合に、市場性を有する魚と共に大型クラゲや小魚等が一括した状態で魚網により捕獲される。市場性を有する魚は、漁船上において選別されトロ箱等に集められる。残った大型クラゲや小魚等は、別のトロ箱等に入れられ、大型クラゲ処理装置1の設置場所の近傍に集積される。
【0029】
適当な量の小魚等が混入した大型クラゲが集まった状態で、大型クラゲ処理装置1を起動させる。大型クラゲ処理装置1を起動する場合は、水分排出口13および固形分排出口14はバルブ等の閉止手段により管路は閉止された状態となっている。大型クラゲ処理装置1の起動である運転の開始は、電動機42を所定の電源に接続して、電力を供給することによりなされる。大型クラゲ処理装置1が運転を開始すると、分離部6の分離板21と攪拌部7の2連の十字羽根30は所定の回転数で回転する。
【0030】
大型クラゲは、傘状の本体部分と多数の触手部分からなり、傘状の本体部分が質量や体積の大部分を占めている。傘状の本体部分は、大部分がゼラチン質よりなり、空気中においても傘状の形状を保っているが、ゼラチン質であるので小魚等の形成成分に比較して軟らかいものとなる。
【0031】
図5は分離板21の上に大型クラゲ51や小魚等52が投入された状態を示す図である。大型クラゲ処理装置1が運転を開始し、分離板21が回転している状態で、作業者がトロ箱等を人力またはリフトやウインチ等の機械的手段により持ち上げ、トロ箱等をひっくり返すことで、大型クラゲ51および小魚等52の混合物を投入口11から投入する。
【0032】
大型クラゲ51はゼラチン質であることや、大型クラゲ51が分離板21に乗ったと同時に大型クラゲ51の自重によって、回転方向と反対に働く慣性力により切り起こし23a、23b、23c、23dが大型クラゲ51に突き刺さることになる。
【0033】
一方小魚等52を形成する成分は、大型クラゲ51に比較して硬いものであることや、大型クラゲ51に比較して軽いこと、また、切り起こし23a、23b、23c、23dの三角形の先端の角度は64度以上あり先端の板厚も厚く刃状の加工も施されてないことから鋭利なものでないこと等の理由により、切り起こし23a、23b、23c、23dが小魚等52の表面を傷つけることはあっても、切り起こし23a、23b、23c、23dが小魚等52に突き刺さり難いものとなっている。また、仮に突き刺さっても小魚等52の本体成分は硬いことにより、小魚等52が破砕されることはない。そして、小魚等52が切り起こし23a、23b、23c、23dに突き刺さらなければ、分離板21が回転することにより、遠心力が小魚等52に働き、分離板21の外周部分で、切り起こし23aが無い分離カバー22の付近に、小魚等52が、ほとんど原形を保った状態に集まることになる。
【0034】
切り起こし23a、23b、23c、23dに刺さった状態の大型クラゲ51は、分離板21が回転することにより、切り起こし23a、23b、23c、23dにさらに深く突き刺さるようになる。図5におけるA−A´の断面図である図6により、この状態を説明する。
【0035】
図6において、大型クラゲ51は前述のようにかなりの自重を有していることにより、分離板21が回転すると慣性力が大型クラゲ51に生じ、大型クラゲ51のゼラチン質に切り起こし23aがさらに深く突き刺さることになる。さらに深く、切り起こし23aが大型クラゲ51に突き刺されば、切り起こし23aの先端の角度は約67度であることから、大型クラゲ51は大きく切り裂かれることになる。切り裂かれた大型クラゲ51の一部は内部の軟らかいゼラチン質が慣性力を受けて流動することにより、大型クラゲ51のゼラチン質の一部は切り起こし23aの下側にもぐり込み、切り起こし23aの下側にある孔24aに向かう。分離板21がさらに回転を続けることにより、大型クラゲ51のゼラチン質は連続して孔24aに向かい、孔24aから分離板21の下側に向かう。分離板21の下側に垂れ下がった大型くらげ51の一部は、分離板21が回転すると慣性力によりさらに押し出され三角形の孔24aにより、下部の攪拌部7に落ちることになる。これを続けることにより、大型クラゲ51のほとんどの部分は下部の攪拌部7に落ちる。
【0036】
攪拌部7に落ちた大型クラゲ51は攪拌部7の処理容器12に溜まり、回転する2連の十字羽根30と、攪拌部7の処理容器12の内面にある容器羽根33により、さらに破砕および攪拌され、最終的に大型クラゲの水分と、大型クラゲの固形分に分かれる。
【0037】
そして、適当なところで、大型クラゲ処理装置1の運転を停止し、小魚等については、図1または図2に示す投入口11より取り出し、焼却や埋設等の処理で廃棄する。大型クラゲの水分は、水分排出口13を開いて外部に取り出し、汚水等として処理する。大型クラゲの固形分は、固形分排出口14を開いて外部に取り出し、これを集めて肥料の原料に利用する。
【0038】
上記に示した、切り起こし23a、23b、23c、23dの三角形の形状やその配置は、一例であり、処理容器12の直径に伴って変わる分離板21の直径によって変える必要がある。また、処理が必要となる大型クラゲ大きさや小魚等種類等により適宜、適当な大きさに変えて対応する。なお、切り起こし23a、23b、23c、23dの三角形については、大型クラゲに突き刺さり、小魚等には突き刺さらない形状であれば、三角形にこだわる必要はなく自由に選定して実施できる。また、孔24a、24b、24c、24dについても、加工状の便宜より三角形として説明しているが、切り裂かれた大型クラゲのゼラチン質が通過することができる程度の孔で、切り裂かれた大型クラゲが分離板21を通過し易い位置であれば、孔の大きさ、形および位置は自由に選定して実施できる。
【0039】
(その他の実施方法)
実施例1においては、大型クラゲ処理装置1は、大型クラゲ分離装置である分離部6と、大型クラゲ攪拌装置である攪拌部7とが一体に構成された例を示したが、分離部6は独立した大型クラゲ分離装置とすることもできる。この場合には、分離板21で分離された大型クラゲをトロ箱等に集め、これを攪拌部7のみとなる大型クラゲ攪拌装置に投入する方法となる。
【符号の説明】
【0040】
1:大型クラゲ処理装置
4:処理部
5:動力部
6:分離部
7:攪拌部
10:脚部
11:投入口
12:処理容器
13:水分排出口
14:固形分排出口
21:分離板
21a:分離板平面部
21b:分離板立ち上げ部
22:分離カバー
22a:大外径円筒部
22b:小外径円筒部
23a、23b、23c、23d:切り起こし
24a、24b、24c、24d:孔
25:取り付け孔
30:十字羽根
31:フラットバー
32:突起
33:容器羽根
41:支持具
42:電動機
43:減速機
44:回転軸
51:大型クラゲ
52:小魚等

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動手段と、前記回動手段により回転する分離板とを有し、前記分離板の上面には前記分離板の回転方向に向かって斜め上方に切り起こされた切り起こしと、該切り起こしに対応する孔とが複数設けられている大型クラゲ分離装置。
【請求項2】
前記切り起こしが三角形に加工されている、請求項1記載の大型クラゲ分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の大型クラゲ分離装置が上部に備えられ、下部に大型クラゲを破砕する大型クラゲ攪拌装置が備えられている大型クラゲ処理装置。
【請求項4】
大型クラゲ分離装置の回動手段と、大型クラゲ攪拌装置の回動手段とが、一つの電動機に連接する同一の軸により回動させられている請求項3記載の大型クラゲ処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−567(P2012−567A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137746(P2010−137746)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(310011435)
【Fターム(参考)】