説明

大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置

【課題】対象物質を低流速かつ低濃度のガスを正確かつ安定してサンプリングすることができ、その結果、光触媒材料の性能を的確に正確に算出することができる大気浄化用光触媒の自動性能評価装置の提供。
【解決手段】低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給するための手段及び湿気を含む及び湿気を含まない空気を一定量づつ供給するための手段、これらの手段からガス混合容器を経て接続する一定量の湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段、並びに、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスに含まれる低濃度有害標準ガス含有量を測定し、反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスに含まれる低濃度有害標準ガス含有量を測定し、両者の測定結果から大気浄化用光触媒の自動性能評価装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気浄化用光触媒が種々な分野で使用されている。その結果、大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置が大気浄化用光触媒の利用拡大と共に必要とされている。
【0003】
空気浄化に用いる光触媒は、一般の(熱)触媒と異なり、室温で、ある程度湿度のある空気中で、紫外光照射の間、反応が起こる。すなわち、特別に条件を整えることなく、誰にでも簡便に反応を起こすことができるので、特定の反応温度を設定しその性能を定量的に測定するなどの操作は必要ないとされてきた。
しかしながら、大気浄化用光触媒が種々な分野で使用されている現状において、その性能を測定して、各分野において用いられている大気浄化用光触媒材料を比較して、各々性能を比較することが必要とされ、自動性能評価装置の確立が急務となってきている。
【0004】
現状では基本的な温度制御を始めとする自動制御測定装置などの系統的な手法は確立されていない現状においては、従来の他の分野で用いられてきた方法にしたがって、触媒活性評価のための評価方法が適用されることとなる。代表的な方法としては、流通式反応系(古典的な触媒活性評価方法)による方法を採用することとが考えられる。具体的には、反応器の利用形態の点から(1)バッチ式と(2)流通式が考えられる。
【0005】
(1)バッチ式は一定体積の容器にサンプルを入れて容器内のガス濃度の変化を追跡する方法である。しかしながら、これは時間経過を追う必要があり、実用化には困難が伴う。
【0006】
(2)流通式はサンプルを入れた容器内に一定濃度のガスを継続して供給してガスの出口のガス濃度を測定する方法である。一定濃度のガスを継続して供給することが可能であれば、一定の手順に従って実行すればよく、実用化しやすい。
【0007】
大気浄化用光触媒の評価に当たっては、処理対象物を揮発性有機化合物(volatile organic compounds, 以下VOCとも言う)をターゲットとするのであるから、通常の用いられる条件である初期濃度を1 ppm前後の低濃度にして触媒の評価を行う必要がある。初期濃度が微量である場合に変動を一定量の範囲に抑制することは困難を伴うことが予想される。低濃度の揮発性有機化合物の定量にはガスクロマトグラフィー法が用いることが現実的であると考えられる。
【0008】
ガスクロマトグラフィー法のサンプリングでは、バッチ式の場合はガスタイトシリンジを用いた手動によるサンプリングとなる。流通式の場合も手動によるサンプリング法による。高流速の場合は、そのまま分析装置に導入して測定することもできる。時には減圧にした3 ml程の容器に反応容器の出口のガスを圧力差で導入し、自動サンプリングできることもできる。
【0009】
光触媒によるVOC分解に対する効果を確認するには、流速を0.5 L/min程度まで遅くし、かつ低濃度のガスを供給する必要があるため、減圧式によるサンプリングが適しているが、減圧式の場合、サンプリングのための流路の切り替え時に瞬間的に大きな圧力差が生じるため、配管で通じているマスフローコントローラー(加圧式供給系)にその圧力変動が及び、コントロールが不安定になり、データがばらつく問題(同じ配管内に加圧部と減圧部があるミスマッチによって生じる問題)が問題点となることが予想される。
【0010】
このため、減圧式を行う場合には、サンプリングのための流路の切り替え時に瞬間的に大きな圧力差を生じないようにすることが必要とされている。
以上の点により有害ガス除去率に誤差が生じていた。同時に、室内の温度変化によっても、ガス分析のデータがばらつくことは以前から知られているが、ガスクロマトグラフィー法の場合、手動サンプリングが多く、その誤差も大きいことから、基本的に十分な配慮が必要とされている。
【0011】
以上のことから、大気浄化用光触媒材料の自動性能評価システムの確立にあったては前記の問題点の解決が必要とされ、特に、サンプリングを行った場合に、測定結果にばらつきのない方法を確立することが要望されている。
【0012】
なお、従来の発明としてはいくつかの方法が知られているが、上記の点を解決しようとするものではない。これらについて概要を説明する。
特許文献1:露点を−20℃〜30℃に制御した空気中で、その露点よりも高い温度において光触媒活性材料の有機物分解能力を測定する、光触媒活性の測定方法。好ましくは、露点が測定温度より3℃以上低い;二酸化炭素不透過性及び水蒸気不透過性でありかつ光透過面を有する、密閉型反応容器内に光触媒活性材料を入れる;また、密閉型反応容器内を乾燥気体で置換する工程と、水を当該密閉型反応容器内に添加して蒸発させる工程を含む。
特許文献2:御装置6は、揮発性有機化合物測定装置5の分光測定装置における測定した特定の波長領域の吸収ピーク値及びホルムアルデヒド濃度演算式に基づき揮発性有機化合物中のホルムアルデヒドの濃度を算出し、算出したホルムアルデヒドの濃度に対応して揮発性有機化合物処理装置4及び換気装置3を作動し、ホルムアルデヒドを水及び二酸化炭素に分解し一定値付近以下のホルムアルデヒドを排気するように制御することを特徴とする。
特許文献3 : 揮発性有機物を含むガスを、閉鎖型にすることが可能な反応容器6に導入し、反応部9に充填されている光触媒機能を有する吸着剤10に吸着させる。導入、吸着の工程においてはモニタリング用の質量分析計17にてガスの分析を行い吸着度の評価する。そしてガスの導入が完了すると反応容器6は開閉弁5、13を閉じて閉鎖され移動可能になる。この反応容器6はガスクロマトグラフ質量計や、中和反応器のある場所等へ移動され、ブラックライト8を点灯し光触媒機能反応が攪拌機11による攪拌にて促進される。また、反応生成物は中和反応器にて分解・除去される。したがって揮発性有機物を含むガスは効率よく完全に分解・除去され、しかも中和も行えて有害な物質を含むガスの大気への放出は解消される。
特許文献4:難燃性繊維と熱接着性繊維を必須成分とし、全繊維を水中に分散及び撹拌することで発生ガスの根源となる繊維表面付近に残存する油剤、可塑剤等を繊維から分離し洗浄して湿式抄紙することにより、BHTとDBPの両ガスの総量が10μg/g以下のシートを得る。更に、吸着剤、酸化チタンをシートに含有することにより廃棄処分で焼却された場合に塩化水素ガスやそれに起因するダイオキシン等の有害ガスを吸着させ、その焼却灰に太陽光等の紫外線照射で酸化チタンの光触媒によって有害ガスを分解する。
特許文献5:材料ライブラリの試験のための方法および装置
特許文献6:本発明は、可変的な光学的及び/又はエネルギー的性質を持つ少なくとも1つの電気的に制御可能な系を組み込んでいるグレイジングに関する。ここで、この電気的に制御可能な系は特に、エレクトロクロミックタイプの可逆的な挿入が可能な材料を伴う系の形、光学的又はビオローゲンバルブ系の形、液晶又はコレステリックゲルを伴う系である。本発明のグレイジングは、このような系によってこのグレイジングに提供される光学的な外観を調節するための手段を少なくとも有しており、この手段は、可視光領域で非反射性の少なくとも1つのコーティングを含む。
【特許文献1】特許公開2006−119115号公報
【特許文献2】特許公開2006−10500号公報
【特許文献3】特許公開2002−336690号公報
【特許文献4】特許公開2001−164492号公報
【特許文献5】特許公表2003−526795号公報
【特許文献6】特許公表2002−520654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の解決すべき課題は、新規な大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置を確立する点にあり、特に対象物質を低流速かつ低濃度のガスを正確かつ安定してサンプリングすることができ、その結果、光触媒材料の性能を的確に正確に算出することができる大気浄化用光触媒の自動性能評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは従来の問題点を抽出し、その対応に努めた結果、上記課題を解決し、本発明を完成させた。
(1)手動サンプリングにより対象物質を低流速かつ低濃度のガスを正確かつ安定してサンプリングすることは、専任実験者を必要とし、ガス流路に結露が発生する。そのため、頻繁にフラッシングが必要となる。このようなトラブルの解決は困難であり、自動サンプリングの方式を採用し、反応容器へのガス流入・切替、光照射部分への切替、反応容器へのガス流及び反応容器からのガス流の濃度変化表示できる自動制御システムを採用することが必要となる。
(2)減圧式のサンプリングではガス濃度の経時変化にばらつき(5-10%)が発生し、避けることができない。その結果、初期濃度(ひいては除去率)の点で大きな誤差が生ずる原因となる。又、定速供給部(マスフローコントローラー)と減圧部(ガスサンプリング)の組み合わせを良好に保つことが必要である。
(3)光触媒反応の前後でガス濃度が変化(5-10%)する。これが除去率決定に大きな誤差を生ずる。又、配管(ステンレス管やテフロン管)に外気やエアコンの風が当たることで温度変化が生じることが原因である。
以上の(1)から(3)の結果を整理して、その対応策を検討し、以下の自動性能評価装置を開発した。
【0015】
(1)減圧影響を受けることなく、一定量づつ、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段について
(イ)低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給するための手段、湿気を含む空気を一定量づつ供給するための手段、及び湿気を含まない空気を一定量づつ供給するための手段からの、前記低濃度有害標準ガス、湿気を含む空気及び湿気を含まない空気をガス混合容器に供給して、ガス混合容器に接続して湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給する供給手段を構成する。
前記(イ)は以下の通りである。低濃度有害標準ガスを、減圧影響を受けることなく一定量づつ供給するために、有害標準ガスボンベから有害標準ガス(処理対象ガス)を、減圧弁及び低速マスフローコントローラを介して取り出し、水トラップを経てガス混合容器に供給する。
前記(ロ)は以下の通りである。
前記(ロ)では、空気精製装置から精製された空気を、減圧弁及びマスフローコントローラを経て加湿器及び除湿器を介して取り出してガス混合容器に供給する。又、空気精製装置から精製された空気を、マスフローコントローラを経て、直接ガス混合容器に供給する。
以上の操作に基づいて、ガス混合容器から湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給することができ、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給する供給手段とすることができる。
【0016】
光反応触媒の性能を測定する手段について
(イ)湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段に接続する低濃度有害標準ガス測定手段、及び(ロ)湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段とこれに接続する反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段、(ハ)前記(イ)の湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段、(ニ)前記(ロ)の湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段と前記反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段、(ホ)前記(ハ)及び(ニ)の低濃度有害標準ガス測定手段からの算出結果から反応した低濃度有害標準ガス量を算出し、光反応触媒の性能を測定する手段は構成される。
【0017】
前記光反応触媒の性能を測定する手段に電磁弁を用いることにより測定の自動化が達成される。
(イ)湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段が、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスに含まれる低濃度有害標準ガス量を輸送するための手段と、湿気を含む空気に含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段とこれに続く反応器から排出される未反応低濃度有害標準ガスを輸送する手段に、電磁弁の操作により切り替え可能に接続する。
(ロ)前記電磁弁により切り替え可能に接続されることにより、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段、前記湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段とこれに接続する反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段が、他の電磁弁の操作により、切り替え可能に接続される
【0018】
低濃度有害標準ガス測定手段からの算出結果から反応した低濃度有害標準ガス量を算出し、光反応触媒の性能を測定する手段がパーソナルコンピュータを用いることにより達成される。
【0019】
電磁弁をパーソナルコンピュータにより操作制御することにより達成される。
【0020】
光源による照射設備を有する光反応触媒反応器の光源をパーソナルコンピュータにより制御する。
【0021】
前記大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置において、装置を構成するパーソナルコンピュータ以外の各手段を、空調設備から遮断されている恒温スペース内に設置することにより、反応ガスの濃度が変化する原因となる温度の異なる空気(風)を直接、配管に当てないことができるので、安定な操作をおこなうことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、空気浄化のために開発された光触媒材料の評価が可能である自動装置が得られる。一定量の湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを供給して、ガス吸着・光ガス分解・ガス脱離性能を、あらかじめ時間指定した通りに自動で光照射などが行え、吸着や光分解など各イベントにおけるガス濃度の増減をその場で表示でき、除去量を正確に求めることができる光触媒の性能の自動評価装置である。
【発明を実施する最良の形態】
【0023】
本発明の光触媒の性能の自動評価システムについて図1を用いて説明する。
本発明の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置は以下の手段により構成されている。
低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給するための手段10、湿気を含む空気を一定量づつ供給するための手段11、及び湿気を含まない空気を一定量づつ供給するための手段12、これらの手段からガス混合容器9を経て接続する一定量の湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段13、並びに湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段14、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段15とこれに接続する反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段16、前記湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段14に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段18に供給する手段17、前記湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段15とこれに接続する反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段16に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段18に供給する手段17、及び前記低濃度有害標準ガス測定手段からの算出結果から反応した低濃度有害標準ガス量を算出し、光反応触媒の性能を測定する手段23から構成される。
【0024】
(1)低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給するための手段について
有害標準ガスボンベ1から有害標準ガス(処理対象ガス)を、減圧弁及び低流速速マスフローコントローラ6を介して、水トラップ2に供給し、一定量としてガス混合容器9に供給する。水トラップ2に供給してガス混合容器9に送ることにより、減圧影響(流速変化の影響)を受けることなく、有害標準ガス(処理対象ガス)を一定量で供給することが容易となる。
低流速マスフローコントローラ6を用いることにより、送るガスの流速について〜10ml/min程度にまでとする、低流速の調節が可能となる。
実施例では、約10 ml/minの濃いトルエンガス(N2ベース)約50 ppmを得ることができる。
ガス(特に流速のもの)を水トラップ2に通すことにより、ガスサンプリング時の減圧影響(流速変化)をマスフローコントローラに及ぼさないこととすることができる。そして、初期ガス濃度の変化を抑制することができる。水トラップを通すことにより10回分の連続測定データの標準偏差が0.01ppm程度から0.005ppm程度に減少させることができる。
【0025】
(2)湿気を含む空気と湿気を含まない空気を一定量づつ供給するための手段について
空気精製装置5から精製された空気を、湿気を含む空気と含まない空気として供給する。これらの空気は同時にガス混合容器9に供給される。
湿気を含む空気を一定量づつ供給するために、空気の流れを分岐させマスフローコントローラ7を経て、加湿器4及び除湿器8を介してガス混合容器9に湿気を含む空気を一定量づつ供給する手段12、及び加湿器8及び除湿器4を経ることなくローコントローラ7を経て、湿気を含まない空気を一定量づつ供給するために、湿気を含む空気と含まない空気をガス混合容器9に一定量づつ供給する手段12が設けられている。
加湿器4には水が入れられており、空気が供給される。
このマスフローコントローラによれば、〜250ml/min程度の調節をすることができる。
乾燥空気と高湿潤空気の混合方式に限らず、例えば、通気する水の温度を室温(例えば25℃)よりも低温(例えば15℃)とし、バブリングすることにより加湿される割合も適度(50%程度)になる。除湿器を通すことにより、マスフローコントローラーとガスクロの間で水分は結露としてトラップされ、徐湿される。サンプリング時の減圧の影響によるガス流量のばらつきは少なくなり、ガス濃度が安定するものと考えられる。除湿器は、不安定な状態で随伴する水分を除去するものである。その構造は管状のであり、管状の周囲に水により濡らした布や紙を巻いてある。側面から高湿潤ガスを導入すると、管状の周囲の布や紙に濡らしてある水の気化熱によりガラス器具の温度が下がり、不安定な状態で随伴する水分は水滴として底にたまる。その結果、除湿される(除湿器の構造は図3に示す。)。
図中cは高湿潤ガス入り口、dはガス出口、eは水滴、fは水により濡らした布や紙、gは蒸発する水を表す。
【0026】
(3)三つの供給手段10、11、12からガス混合容器9に供給して湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段13への接続について
前記低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給する手段10、湿気を含まない空気を一定量づつ供給する手段11及び湿気を含む空気を一定量づつ供給する手段12を介してガス混合容器9に供給される。
ガス混合容器9には、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段13が接続している。このガス混合容器9の作用により、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを得ることができる。ガス混合容器9には湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段13が接続している。
通常、低速マスフローコントローラー(約10 ml/minの濃いトルエンガス(N2ベース)約50 ppm、マスフローコントローラー: 約250 ml/minの乾燥空気(相対湿度約0%)、及びマスフローコントローラー: 約250 ml/minの高湿潤空気(相対湿度約100%)を3種混合して、ガス混合容器中で約500 ml/minの約1 ppmトルエンガス(Airベース)をつくることができる。
大雑把に言うと、空気で、濃いトルエンガスを1/50に希釈したものを、使用する。
最初から、1 ppm(Airベース)のガスボンベを用いて直接ガスを得ることも可能であるが、比較的長い時間の使用による場合には適切でなく、通常、前記のように濃いガスを希釈して使用する。この希釈率は、1/50以上が望ましい。濃いトルエンガスが、ボンベでは、N2ガスなので、あまり希釈率が少ないと、酸素が少なくなり、空気ベースとはならず、反応速度にも影響するからである。
【0027】
(4)光反応触媒の性能を測定する手段について
光反応触媒の性能を測定する手段の全体は、(イ)湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段13からの湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを、電磁弁19を介して湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段14に送り、さらにもう一方の電磁弁20を介して低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段17に送り、測定手段18に導いて、低濃度有害標準ガス濃度を求める手段の算出結果、(ロ)低濃度有害標準ガスの供給手段13からの湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを、電磁弁19を介して、低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段15を経て、光触媒反応器21に導いて、光触媒反応器中を通過させた後に、反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段16を通り、さらにもう一方の電磁弁20を介して、低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段17に送り、測定手段18に導いて、光触媒では作用しきれずに残った低濃度有害標準ガスの濃度を求める手段の算出結果、及び(ハ)前記(イ)の低濃度有害標準ガス濃度を求める手段の測定結果と前記(ロ)の光触媒では作用しきれずに残った低濃度有害標準ガスの濃度を求める手段の測定結果から、反応した低濃度有害標準ガス量を算出し、光反応触媒の性能を測定する手段から構成される。
【0028】
前記(4)の操作では、前記したように自動的に行うために電磁弁の操作により行う。具体的な操作は以下の通りである。
(イ)湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段13は、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスに含まれる低濃度有害標準ガス量を輸送するための手段14と、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器21に導く手段15のどちらに接続するかを、電磁弁19を操作して行う。
(ロ)前記湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段14に送りこまれる湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスと、反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段16を通る未反応の低濃度有害標準ガスは、電磁弁20を操作して各々に含まれる低濃度有害標準ガスを測定するための、低濃度有害標準ガスを測定手段18に供給する手段17に送り込まれる。
【0029】
湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段17を経て、低濃度有害標準ガス測定手段18により、低濃度有害標準ガス量を計測する。
次に、空気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段15とこれに接続する反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段16に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段17を経て、低濃度有害標準ガス測定手段18により、低濃度有害標準ガス量を計測する。
前記低濃度有害標準ガス測定手段からの算出結果から反応した低濃度有害標準ガス量を算出し、光反応触媒の性能を測定する手段がパーソナルコンピュータにより算出する。この計測結果を比較すると、反応した低濃度有害標準ガス量を算出することができ、その数値から、光反応触媒の性能を特定することができる。
以上の測定結果の記録及び反応した低濃度有害標準ガス量の算出、光反応触媒の性能を測定するには、パーソナルコンピュータ23を用いる。
【0030】
前記の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置では電磁弁19,20をパーソナルコンピュータ23により操作制御することができる。
【0031】
前記の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置では光反応触媒反応器21は、光源22による照射設備を有するものであり、光源22をパーソナルコンピュータ23により制御することにより大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置を行う。
【0032】
前記大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置において、装置を構成するパーソナルコンピュータ23以外の各手段を、空調設備から遮断されている恒温スペース内に設置することが有効である。
システムを構成する測定手段全体を、エアコン外気3から遮断されている恒温スペース16内に設置する。装置内及び装置間を繋ぐ配管(ステンレス管やテフロン管)に外気やエアコンの風が直接当たることが防止されるので、反応ガスの濃度変化の防止、温度変化が生じることを防止することができる。
パーソナルコンピュータ15のみは、恒温スペース24の外側に置く。
効果については、本発明の場合を示す図2b、2cに示されている。
以下に実施例により本発明を説明する。
【実施例1】
【0033】
装置の安定性について、3種のマスフローコントローラーから合成した約1 ppmのトルエンガス(Airベース)を、流し続けた時に、5分毎のオートサンプリングで、ガスクロマトグラフィーで検出される濃度のばらつきを測定し、その結果から評価した。
図1の電磁弁19から反応容器にガスを流す流路ではなく、電磁弁20にバイパスで流す手段14の流路を用いたときの反応ガスの初期濃度による結果の値を測定する。
一方、反応容器側に、流路を切り替えると、光触媒の暗反応での吸着や、光照射下での反応によって、濃度の減少が起こる。
反応容器から出てくるガスの濃度を測定すれば、初期濃度からの差で、吸着量及び反応の量を確認できる。
室温を制御しない場合、あるいはエアコンで制御しても、エアコンからの風が直接装置に当たるような場合、長時間の測定では、室温や風の温度に差が生じる場合が多い。
その場合、ガスの体積が温度によって影響を受け、初期濃度の絶対値が、ずれることになる。
すると、初期濃度のばらつきの問題だけでなく、反応の前とするか、後とするか、途中とするかによっても、吸着や反応の量が、変わってくるため、真の値を求めることがより困難になる。
すなわち、初期濃度を安定させることが、光触媒の性能を知る上で、非常に重要であることは明らかであると共に、反応の前後で、平均の初期濃度の絶対値がほぼ同じであることが必要になる。
トルエンガス流速 10.4 ml/min (マスフローコントローラー:コフロック FCC-3000-G1, 20SCCM, N2, 20℃)
乾燥空気流速 250 ml/min (マスフローコントローラー:コフロック FCC-3000-G1, 1 SLM, Air, 0℃)
高湿潤空気流速 250 ml/min (マスフローコントローラー:コフロック FCC-3000-G1, 1 SLM, Air, 0℃)
合成ガス相対湿度 50%
サンプリング容器容積 1ml
紫外線強度 1mWcm-2
サンプル 光触媒ST-21(石原産業(株)製)コートガラス(膜厚約500 nm)
初期濃度測定 60 min
暗吸着 30 min
光照射 30 min (60 minなどの場合もある)
暗脱離 30 min
反応終了時供給ガス濃度測定 60 min
ガスクロ SHIMADZU GC-14B
カラム Zebron, ZB-WAX, 30 m×0.53 mm

全流速は0.5 L/minである。
2a:水トラップ無(エアコン外気対策無)の場合
2b:水トラップ無(エアコン外気対策有)の場合
2c:水トラップ有(エアコン外気対策有)の場合
結果は、図2a、図2b、及び図2cにより表示した。
室温を制御しない場合、図2aでは、平均値が約8%ずれ、ばらつき(standard deviation)も約3%となる。
室温を制御した場合、図2bでは、平均値が約0.3%の差しか生じず、ばらつき(standard deviation)も約10%以下となる。
トラップを設けた場合、図2cでは、平均値が約0.2%の差しか生じず、ばらつき(standard deviation)も約5%以下となる。
よって、本発明の装置図2cの優位性が示されている。
図中、点線に囲まれた部分は、初期濃度検出のためのデータの統計を行った結果を示す図である。
【0034】
表1 初期濃度変動データ

【実施例2】
【0035】
ガスクロへのサンプリング時に起こる、合成ガスの流速変化を調べて、本発明が良好であることを、以下の条件下に行った実験により示す。
減圧式で、ガスクロに合成ガスを取り込む時に、大量の合成ガスがガスクロ側に引っ張られる。この様子を、GCサンプリング地点の直前と直後の地点に、流量計を設置して、測定すると、以下の結果のように、流速が変化する。
すなわち、直前では沢山流れようとするし、直後では、残りの合成ガスが流れることになる。
合成ガスの取り込みは、5分毎のサンプリングだけでなく、サンプリングの合間にも、その準備のために数回行われる。
マスフローコントローラーは、一定圧力の下で、安定な動作が保証されているが、このように、減圧式サンプリングによって、配管内の圧力が少しでも変動する場合、流速の安定制御は難しくなる。
すなわち、より安定した合成ガスの供給を保証するためには、マスフローコントローラーが、ガスクロの自動サンプリングの際の減圧の影響を受けないように配管の途中に、水トラップを置くことが有効であることがわかる。

合成ガスの流速が0.54 L/minの時の変化
(サンプリング地点の前)0.54 L/min → 0.55 L/min
(サンプリング地点の後)0.54 L/min → 0.33-36 L/min

合成ガスの流速が0.26 L/minの時の変化
(サンプリング地点の前)0.26 L/min → 0.27 L/min
(サンプリング地点の後)0.26 L/min → 0.05 L/min

自動サンプリング時の流速変化:サンプリングポイントの手前と後で(水トラップ有):真空引きによる流速の変化が見られる。
この瞬間的な圧力変動がマスフローコントローラー(所定の温度・気圧の下で一定のガス流を供給する装置)が不安定になる。
図4は、水トラップの設置した場合と設置しない場合の配管内の圧力変化を説明する図である。
Cは、ガスクロマトフィのサンプリング時(水トラップの設置効果)を示す。
水トラップを設置することにより、ガスクロマトフィのサンプリング時の圧力が吸収されることを示している。
Bは、水トラップを設置しないと、ガスクロマトフィのサンプリング時の圧力が吸収されないことを示している。
以上からサンプリング時には水トラップは有効であることがわかる。

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の装置の全体を示す図
【図2】エアコン外気対策の有無、水トラップの有無が圧力変動の結果を示す図である。本発明の管の圧力差が水トラップの存在により遮断され水面での圧力変動が吸収されることを示すと共に、恒温スペースを設置する効果を示す図2a:水トラップ無(エアコン外気対策無)の場合を示す。2b:水トラップ無(エアコン外気対策有)の場合を示す。2c:水トラップ有(エアコン外気対策有)の場合を示す。
【図3】除湿を示す図である。
【図4】水トラップの設置した場合と設置しない場合の配管内の圧力変化を説明する図である。
【符号の簡単な説明】
【0037】
1:有害物質標準ガスボンベ
2:水トラップ
3:エアコン外気
4:加湿器
5:空気精製装置
6:低速マスフローコントローラ
7: マスフローコントローラ
8:除湿器
9:ガス混合容器
10:低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給するための手段
11:湿気を含まない空気を一定量づつ供給するための手段
12:湿気を含む空気を一定量づつ供給するための手段
13:湿気を含む空気を一定量づつ供給する低濃度有害標準ガスの供給手段
14:湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段
15:湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段
16:反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスを含有する輸送手段
17:低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段
18:低濃度有害標準ガスを測定手段(ガスクロマトグラフィ)
19:電磁弁
20:電磁弁
21:反応器
22:光源
23:パーソナルコンピュータ
24:恒温スペ−ス
25:減圧弁
26:真空ポンプ
a:電磁弁に対する指令
b:光源に対する指令
c:高湿潤ガス入り口
d:ガス出口
e:水滴
f:水により濡らした布や紙
g:蒸発する水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低濃度有害標準ガスを一定量づつ供給するための手段、湿気を含む空気を一定量づつ供給するための手段及び湿気を含まない空気を一定量づつ供給するための手段、これらの手段からガス混合容器を経て接続する一定量の湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段、並びに湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段とこれに接続する反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段、前記湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段、前記湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段とこれに接続する反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段に接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段、及び前記低濃度有害標準ガス測定手段からの算出結果から反応した低濃度有害標準ガス量を算出し、光反応触媒の性能を測定する手段から構成されることを特徴とする大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置。
【請求項2】
前記湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの供給手段が、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスに含まれる低濃度有害標準ガス量を輸送するための手段と、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段とこれに接続する反応器から排出される未反応低濃度有害標準ガスを輸送する手段に、電磁弁により切り替え可能に接続されており、前記電磁弁により切り替え可能に接続されることにより、湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスの輸送手段とこれに接続する低濃度有害標準ガスを測定手段に供給する手段が、前記湿気を含む空気を含有する低濃度有害標準ガスを光反応触媒反応器に導く手段とこれに接続する反応器から得られる未反応の低濃度有害標準ガスの輸送手段とこれに接続する低濃度有害標準ガスを測定する手段に、他の電磁弁の操作により、切り替え可能に接続されることを特徴とする請求項1記載の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置。
【請求項3】
前記低濃度有害標準ガスを、一定量づつ供給するための手段が、低濃度有害標準ガスを供給し、減圧弁及び低速マスフローコントローラを介して取り出して、水トラップを経てガス混合容器に供給することを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置。
【請求項4】
湿気を含む空気を一定量づつ供給するための手段及び湿気を含まない空気を一定量づつ供給するための手段が、空気をマスフローコントローラを経て加湿器及び除湿器を介してガス混合容器に供給する手段、及びマスフローコントローラを経て加湿器及び除湿器を介することなく、ガス混合容器に供給する手段を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置。
【請求項5】
前記低濃度有害標準ガス測定手段からの算出結果から反応した低濃度有害標準ガス量を算出し、光反応触媒の性能を測定する手段がパーソナルコンピュータにより算出することを特徴とする請求項1から4いずれか記載の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置。
【請求項6】
前記電磁弁をパーソナルコンピュータにより操作制御することを特徴とする請求項2記載の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置。
【請求項7】
前記光触媒反応器が光源による照射設備を有する光反応触媒反応器であり、光源をパーソナルコンピュータにより制御する請求項1記載の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置。
【請求項8】
前記大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置において、装置を構成するパーソナルコンピュータ以外の各手段を、空調設備から遮断されている恒温スペース内に設置することを特徴とする請求項1から7いずれか記載の大気浄化用光触媒材料の自動性能評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−76262(P2008−76262A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256646(P2006−256646)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】