説明

大腸内視鏡検査用補助具

【課題】極めて簡便且つ安価な構成でありながら、患者の苦痛を何らともなうことなく容易に大腸内視鏡を腸管内へと挿入することができるとともに、腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を効率よく体外へと排出させることを課題とする。
【解決手段】大腸内視鏡検査用補助具10は、内部が空洞とされた可撓性を有する所定の素材からなる1本のチューブ材11を備える。チューブ材11には、患者の肛門から腸管内へと挿入される挿入口を形成する一方の端部から所定長にわたる領域に、当該患者の腸管内に滞留している流体を取り込む取込口として機能する複数の孔14が空洞にかけて穿設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸内視鏡を腸管内へと挿入して検査を行う操作を補助する大腸内視鏡検査用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、消化管癌等の検査を目的として大腸内視鏡が用いられている。大腸内視鏡は、便検査やレントゲン検査とは異なり、いわゆる平坦型大腸癌を確実にみつけることができ、検査とともにポリープ切除等の治療も同時に行うことができることから、現代の医学において癌検査に用いる医療器具として主役となりつつある。
【0003】
かかる大腸内視鏡は、肛門から腸管内へと挿入されるが、この挿入操作を補助することを目的として、例えば特許文献1等に記載された補助具が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−65594号公報
【0005】
具体的には、この特許文献1には、大腸内視鏡が緩挿される挿入筒体の一端に保持部を設けた大腸内視鏡挿入補助具が開示されている。特に、この大腸内視鏡挿入補助具は、挿入筒体のうち大腸内に挿入可能な大腸内挿入部の長さを、直腸内に到達し、S字状結腸には到達しない長さに設定し、且つ挿入筒体と大腸内視鏡との間に流体流通用の流通路を設けたものである。具体的には、大腸内挿入部の長さは、50mm〜150mm程度に設定される。このような大腸内視鏡挿入補助具においては、大腸内視鏡と挿入筒体との間隙によって形成された流通路を介して、大腸内に滞留していた余分な空気等を体外へと排出させることができるとともに、不使用時に内視鏡操作の邪魔になることを防止することができるとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された従来の大腸内視鏡挿入補助具においては、腸管内に滞留していた余分な空気等を体外へと排出させることができるものの、大腸内視鏡が大腸挿入部を含む長い距離を有する挿入筒体に緩挿されることから、当該大腸内視鏡における当該挿入筒体に緩挿されている部位が当該挿入筒体と干渉して摩擦を生じるとともに、当該部位が直線状に規定されてしまい、自由に屈曲させることができず、操作の悪化を招来するという問題があった。
【0007】
また、従来の大腸内視鏡挿入補助具においては、大腸内視鏡よりも太い大腸内挿入部を肛門から直腸に挿入することから、患者にとっては疼痛を免れることができず、また、大腸内視鏡と大腸挿入部との間隙による段差があることから、痔疾がある患者にとっては肛門を損傷する危険もあった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、極めて簡便且つ安価な構成でありながら、患者の苦痛を何らともなうことなく容易に大腸内視鏡を腸管内へと挿入することができるとともに、腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を効率よく体外へと排出させることができる大腸内視鏡検査用補助具を提供することを目的とする。
【0009】
上述した目的を達成する本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、大腸内視鏡を腸管内へと挿入して検査を行う操作を補助する大腸内視鏡検査用補助具であって、内部が空洞とされた可撓性を有する所定の素材からなる1本のチューブ材を備え、上記チューブ材には、患者の肛門から腸管内へと挿入される挿入口を形成する一方の端部から所定長にわたる領域に、当該患者の腸管内に滞留している流体を取り込む取込口として機能する複数の孔が前記空洞にかけて穿設されていることを特徴としている。
【0010】
このような本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、可撓性を有する1本のチューブ材を患者の肛門から腸管内へと挿入し、当該チューブ材に穿設された複数の孔を介して、患者の腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を取り込むことができる。
【0011】
また、前記チューブ材には、前記複数の孔が形成された領域から当該チューブ材における他方の端部に向かって所定長だけ離隔された領域に、前記複数の孔から当該チューブ材内に取り込まれた流体を外部へと排出する排出口として機能する複数の孔が前記空洞にかけて穿設されている。これにより、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、チューブ材内に取り込まれた空気や腸管洗浄液を複数の孔を介して外部へと排出することができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、前記チューブ材における前記複数の孔が穿設された領域よりも下流側に固設された固形部材を備える。そして、前記固形部材は、前記患者の腸管内へと挿入される。これにより、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具においては、患者の直腸内に挿入された固形部材が肛門括約筋に引っかかることから、直腸内へと挿入されたチューブ材が当該直腸から脱抜するのを確実に防止することができる。
【0013】
また、前記固形部材には、当該患者の腸管内に滞留している流体を取り込む取込口が穿設され、前記取込口は、取り込まれた前記流体を前記チューブ部材に流下させる様に穿設されている。これにより、本発明に係る大腸内視鏡検査用補助具は、チューブ材に穿設された孔のみならず、固形部材に穿設された孔からも空気や腸管洗浄液を取り込むことができ、当該固形部材に穿設された孔からも空気や腸管洗浄液を取り込むことによって、より効率的に空気や腸管洗浄液を取り込むことができるものである。
【0014】
なお、前記固形部材は、外表面が所定の曲面状に形成されているのが望ましく、特に、球体又は球体に準ずる形状体であるのが望ましい。また、前記固形部材は、上記チューブ材に挿通されることによって当該チューブ材に固設されるが、このとき、上記チューブ材に対する前記固形部材の挿通位置は、当該固形部材の中心から偏心した位置とされるのが望ましい。さらに、上記固形部材の外表面に所定のコーティングを施すのが望ましい。これにより、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具においては、直腸への挿入を容易にするとともに、直腸粘膜や大腸内視鏡を損傷する危険を防止することができる。
【0015】
さらにまた、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、上記チューブ材の内部に挿設されたバネ材を備える。これにより、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具においては、チューブ材が患者の肛門括約筋と大腸内視鏡とに挟まれて潰れてしまうのを確実に防止することができる。また、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具においては、バネ材とチューブ材とを併用することにより、自由に屈曲させることが可能となることから、肛門括約筋と大腸内視鏡とによって形成される形状に滑らかに対応することができ、当該大腸内視鏡の操作の妨げとなることはない。
【0016】
なお、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具においては、大腸内視鏡との接触による摩擦を軽減するために、前記チューブ材の外表面に所定のコーティングを施すのが望ましい。
【0017】
また、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具においては、上記チューブ材における前記一方の端部を斜状に形成することにより、直腸への挿入を容易にすることができる。さらに、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具においては、前記チューブ材における上記一方の端部を所定の曲率を有する閉塞端とすることによっても、直腸への挿入を容易にすることができる。
【0018】
また、上述した目的を達成する本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、大腸内視鏡を腸管内へと挿入して検査を行う操作を補助する大腸内視鏡検査用補助具であって、内部が空洞とされた可撓性を有する所定の素材からなる1本のチューブ材と、前記チューブ材の、患者の肛門から腸管内へと挿入される一方の端部に形成された固形部材とを備え、前記固形部材には、当該患者の腸管内に滞留している流体を取り込む取込口として機能する孔が穿設され、前記取込口として機能する孔は、前記固形部材の表面から前記チューブ材の一方の端部にかけて連通するように穿設されていることを特徴としている。
【0019】
このような本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、可撓性を有する1本のチューブ材の一方の端部に形成された固形部材を患者の肛門から腸管内へと挿入し、当該固形部材の表面に穿設された孔の一端から、患者の腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を取り込み、当該固形部材の孔他端からチューブ材に流下させることができる。
【0020】
また、前記固形部材の表面おける前記孔の開口面積は、前記チューブ材の一方の端部に連通する側の開口面積よりも大きく形成されている。これにより、患者の腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を容易に取り込むことができ、さらに一旦孔に取り込んだ滞留物の逆流を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のような本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、極めて簡便且つ安価な構成でありながら、患者の苦痛を何らともなうことなく容易に大腸内視鏡を腸管内へと挿入することができる。そして、本発明にかかる大腸内視鏡検査用補助具は、大腸内視鏡の操作時に、患者の大腸や直腸内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を体外へと排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
この実施の形態は、大腸内視鏡を腸管内へと挿入して検査を行う操作を補助する大腸内視鏡検査用補助具である。この大腸内視鏡検査用補助具は、極めて簡便且つ安価な構成でありながら、患者の苦痛を何らともなうことなく容易に大腸内視鏡を腸管内へと挿入することができるとともに、腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を効率よく体外へと排出させることができるものである。
【0024】
まず、第1の実施の形態として示す大腸内視鏡検査用補助具について詳細な説明をする。当該大腸内視鏡検査用補助具は、可撓性を有する1本のチューブ材に複数の孔を穿設することにより、腸管内に滞留した空気や腸管洗浄液を外部へ排出するものである。
【0025】
図1に示すように、大腸内視鏡検査用補助具10は、1本のチューブ材11と、このチューブ材11の一部領域に固設された固形部材12と、チューブ材11の内部に挿設されたバネ材13とから構成される。
【0026】
チューブ材11は、例えばシリコンチューブ等の内部が空洞とされた人体に無害な所定の素材からなり、その内径が例えば2mm〜3mm程度とされる。このチューブ材11は、可撓性を有し、自由に屈曲させることが可能とされる。また、このチューブ材11には、患者の肛門から腸管内へと挿入される挿入口を形成する一方の端部から例えば5cm程度の所定長にわたる領域に、複数の孔14が内部の空洞にかけて穿設されている。この孔14は、後述するように、患者の腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液等の流体を取り込む取込口として機能する。さらに、このチューブ材11には、これら孔14が形成された領域から他方の端部に向かって所定長だけ離隔された領域に、例えば5cm程度の所定長にわたって複数の孔15が内部の空洞にかけて穿設されている。この孔15は、後述するように、孔14からチューブ材11内に取り込まれた空気や腸管洗浄液等の流体を外部へと排出する排出口として機能する。
【0027】
固形部材12は、例えば15mm程度の外径を有する人体に無害な所定の素材からなり、図2に示すように、チューブ材11に挿通されることによって当該チューブ材11の一部領域に固設される。具体的には、固形部材12は、チューブ材11における孔14が穿設された領域よりも下流側に固設される。この固形部材12は、患者の肛門から直腸内へと挿入されたチューブ材11が当該直腸から容易に脱抜しないように設けられる。したがって、固形部材12は、患者の直腸内へと挿入されて空気や腸管洗浄液の取込口として機能する孔14が穿設された領域の直近に設けるのが望ましい。また、固形部材12は、患者の直腸粘膜や大腸内視鏡を損傷するのを防止するために、球体として形成されるのが望ましい。
【0028】
バネ材13は、例えば金属製や樹脂製のコイルバネ等からなり、チューブ材11の内部に嵌合するように挿設される。具体的には、バネ材13は、チューブ材11における固形部材12が固設された領域と孔15が穿設された領域との間に挿設される。このバネ材13が挿設されたチューブ材11における領域は、当該バネ材13の可撓性と当該チューブ材11自身の可撓性とによって自由に屈曲させることが可能とされるが、当該バネ材13の存在によって潰れることが防止される。
【0029】
このような大腸内視鏡検査用補助具10は、例えば図3に示すように使用される。
【0030】
すなわち、患者には、大腸内視鏡20とともに大腸内視鏡検査用補助具10が肛門から直腸RC内に挿入される。このとき、大腸内視鏡検査用補助具10は、少なくともチューブ材11における孔14が穿設された領域及び固形部材12が固設された領域が患者の直腸RC内に挿入される。そして、大腸内視鏡検査用補助具10において、体外に露出したチューブ材11は、例えば患者の下肢部等に沿って所定の固定用テープ21によって貼着することにより、当該患者の身体に固定される。なお、大腸内視鏡検査用補助具10は、通常の大腸内視鏡20の外径よりも著しく小さい固形部材12の外径が最太部とされることから、患者に対して疼痛や肛門の損傷等を与えることはない。
【0031】
このように使用される大腸内視鏡検査用補助具10は、大腸内視鏡20の操作時に、患者の大腸や直腸RC内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を、孔14を介してチューブ材11内に取り込み、孔15から排出する。これにより、大腸内視鏡検査用補助具10においては、患者の大腸腸管が過度に延伸してしまう事態を防止することができ、大腸内視鏡20の挿入を容易にすることができる。また、大腸内視鏡検査用補助具10においては、患者の盲腸まで大腸内視鏡20を到達させ、逆に腸管を膨張させて大腸内の観察を十分に行いたい場合には、孔15が穿設された領域よりも上流側を鉗子22等によってクランプすることにより、空気や腸管洗浄液の排出を停止させることもできる。このように、大腸内視鏡検査用補助具10は、必要に応じて、患者の腸管内の空気や腸管洗浄液の量を制御することができる。
【0032】
ここで、大腸内視鏡検査用補助具10においては、孔14,15が、それぞれ、複数設けられていることから、チューブ材11の内径が小さいにもかかわらず、空気や腸管洗浄液を効率よく取り込み、体外へと排出することができる。
【0033】
また、チューブ材11は、上述したように、バネ材13が挿設されたチューブ材11における領域も含めて可撓性を有することから、患者の体型に合わせて自由に屈曲させることができる。したがって、大腸内視鏡検査用補助具10においては、チューブ材11の存在が大腸内視鏡20の操作の妨げとならず、また、肛門への刺激も少なくて済み、直腸粘膜を傷つけることなく空気や腸管洗浄液を体外へと排出することができる。
【0034】
さらに、大腸内視鏡検査用補助具10においては、患者の直腸RC内に挿入された固形部材12が肛門括約筋SPに引っかかることから、直腸RC内で大腸内視鏡20を前後方向に移動させたり回転させたりした場合であっても、当該直腸RC内へと挿入されたチューブ材11が当該直腸RCから脱抜するのを確実に防止することができる。また、固形部材12は、球体として形成することにより、上述したように、直腸RCの内壁や大腸内視鏡20と接触して直腸粘膜や当該大腸内視鏡20を損傷する危険を防止することができる。
【0035】
さらにまた、大腸内視鏡検査用補助具10においては、チューブ材11にバネ材13を挿設していることから、当該チューブ材11が患者の肛門括約筋SPと大腸内視鏡20とに挟まれて潰れてしまうのを確実に防止することができる。また、大腸内視鏡検査用補助具10においては、上述したように、バネ材13とチューブ材11とを併用することにより、単純な金属管等によっては実現することができない自由な屈曲を実現することができることから、肛門括約筋SPと大腸内視鏡20とによって形成される形状に滑らかに対応することができ、当該大腸内視鏡20の操作の妨げとなることはない。
【0036】
また、大腸内視鏡検査用補助具10は、極めて簡便に構成することができ、且つ安価に構成することができることから、使い捨てに適している。したがって、大腸内視鏡検査用補助具10は、使用後は洗浄の必要がないばかりか、感染症等を引き起こすおそれがなく、衛生面の観点からも極めて優れた効果を奏するものである。
【0037】
このように、大腸内視鏡検査用補助具10は、患者の負担を著しく低減した検査に寄与することができ、通常の検査を行う場合や、それよりも時間を要するポリープ切除等の治療の場合は勿論のこと、一度大腸内視鏡20を患者の腸管内へと挿入した後に再度挿入することが必要となった場合や、他の検者が大腸内視鏡20を挿入することができず一度脱抜した場合に再度挿入する場合等にも極めて有効である。
【0038】
なお、大腸内視鏡検査用補助具10は、図4に示すように、固形部材12に、例えば複数個の孔16を穿設するものであっても良い。孔16は、固形部材12の表面からチューブ材11にかけて穿設されたものである。すなわち、孔14から空気や腸管洗浄液を取り込むと共に、固形部材12に穿設された孔16から空気や腸管洗浄液を取り込むことによって、より効率的に空気や腸管洗浄液を取り込むことができるものである。
【0039】
以下、第2の実施の形態について詳細な説明をする。
【0040】
第2の実施の形態は、大腸内視鏡を腸管内へと挿入して検査を行う操作を補助する大腸内視鏡検査用補助具である点については、先述した第1の実施の形態と同様であるが、先述した大腸内視鏡検査用補助具とは構成が異なる為、その点について詳細な説明をする。尚、使用方法等は先述した大腸内視鏡検査用補助具と同一である為、詳細な説明を省略する。
【0041】
具体的には、第1の実施の形態における大腸内視鏡検査用具10は、チューブ材11における孔14が穿設された領域よりも下流側に固形部材12を固設することとしたが、第2の実施の形態においては、チューブ材の端部に、表面に孔が穿設された固形部材を固設し、当該固形部材に穿設された孔と、チューブ材内部の空洞と連通する点において差異を有するものである。
【0042】
図5に示すように、大腸内視鏡検査用補助具30は、1本のチューブ材31と、このチューブ材31の先端に固設された固形部材32と、チューブ材31の内部に挿設されたバネ部材13とから構成される。
【0043】
チューブ材31は、例えばシリコンチューブ等の内部が空洞とされた人体に無害な所定の素材からなり、その内径が例えば2mm〜3mm程度とされる。このチューブ材31は、可撓性を有し、自由に屈曲させることが可能とされる。また、このチューブ材31には、患者の肛門から腸管内へと挿入される一方の端部に、固形部材32が固設されている。さらに、このチューブ材31には、固形部材32が形成された領域から他方の端部に向かって所定長だけ離隔された領域に、例えば5cm程度の所定長にわたって複数の孔35が内部の空洞にかけて穿設されている。この孔35は、後述するように、固形部材32に穿設された孔からチューブ材31内に取り込まれた空気や腸管洗浄液等の流体を外部へと排出する排出口として機能する。
【0044】
固形部材32は、例えば15mm程度の外径を有する人体に無害な所定の素材からなり、図6に示すように、チューブ材31に固設される。この固形部材32は、患者の肛門から直腸内へと挿入されたチューブ材31が当該直腸から容易に脱抜しないように設けられる。固形部材32には、例えば固形部材32の内部まで穿設された、チューブ材31と略同一の径を有する孔が形成されており、当該孔にチューブ材31を挿通することでチューブ材31と固形部材32を固設する。さらに、固形部材32の表面には、患者の腸管内に滞留している流体を取り込む取込口として機能する孔36が穿設されている。本実施の形態においては、固形部材32は、孔36を複数個有するものとして詳細な説明をするが、固形部材32は、孔36を1つ備えるものであっても良い。孔36は、固形部材32の表面からチューブ材31の一方の端部にかけて連通するように穿設されている。具体的には、孔36の一端を固形部材32の表面に形成し、当該孔36の他端をチューブ材31と接続される様に形成する。また、固形部材32は、患者の直腸粘膜や大腸内視鏡を損傷するのを防止するために、球体として形成されるのが望ましい。
【0045】
すなわち、孔36の一端から流入した腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液は、孔36の内部を通じて孔36の他端からチューブ材31に流出することができる。
【0046】
この様な大腸内視鏡検査用補助具30は、第1の実施の形態において説明した効果と同様の効果を得られると共に、第1の実施の形態の大腸内視鏡検査用補助具10よりもチューブ材を短くしたことから、患者の直腸粘膜を損傷する可能性を低減することができる。
【0047】
尚、図7に示す様に、固形部材32の表面に形成された一端の開口面積は、孔36の他端の開口面積よりも大きいものであっても良い。すなわち、孔36の固形部材32の表面に形成された一端の開口面積を孔36の他端の開口面積より大きくすることで孔36は、いわゆるノズル形状を形成し、これにより患者の腸管内に滞留している余分な空気や腸管洗浄液を容易に取り込むことができ、さらに一旦孔に取り込んだ滞留物の逆流を防止することができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、チューブ材11、31として、内部に空洞を有する通常のチューブにしか言及していないが、本発明は、大腸内視鏡との接触による摩擦を軽減するために、当該チューブ材11、31の外表面に所定のコーティングを施すようにしてもよい。
【0049】
また、本発明は、患者の肛門から腸管内へと挿入されるチューブ材11における挿入口を形成する一方の端部の形状を、例えば、図8に示すように斜状に形成したり、図9に示すように、所定の曲率を有する閉塞端としたりすることにより、直腸RCへの挿入を容易にすることができる。
【0050】
さらに、本発明は、固形部材12、32の形状として球体以外の形状を適用することもできる。ただし、固形部材12、32としては、上述したように、患者の直腸粘膜や大腸内視鏡20の損傷を防止する観点から、外表面が所定の曲面状に形成されているものが望ましく、特に、例えば図10(a)に示す球体の他、球体に準ずる形状体であるのが望ましい。なお、球体に準ずる形状体としては、例えば、図10(b)に示すような楕円体や、図10(c)に示すように、大腸内視鏡20と接する面が当該大腸内視鏡20の曲率に沿って鞍状に形成された鞍状体等が挙げられる。特に、固形部材12、32は、鞍状体とすることにより、大腸内視鏡20との接触面積を大きくすることができ、患者の直腸RC内で不要に動いてしまう事態を防止することができる。また、本発明は、この固形部材12、32についても、その外表面に所定のコーティングを施すことにより、直腸RCへの挿入を容易にするとともに、直腸粘膜や大腸内視鏡の損傷の確実な防止を図るようにしてもよい。
【0051】
ここで、固形部材12、32は、上述したように、チューブ材11、31に挿通されることによって当該チューブ材11、31に固設されるが、このチューブ材11、31に対する挿通位置を、図10(b)又は図10(c)に示すように、当該固形部材12、32の中心から偏心した位置とするのが望ましい。すなわち、大腸内視鏡検査用補助具10、30は、図10(a)に示したように、チューブ材11、31に対する固形部材12、32の挿通位置が当該固形部材12、32の中心に位置する場合には、図11(a)に示すように、患者の直腸RC内へと挿入された際に、大腸内視鏡20に対して所定の角度αをもって配置されることになる。これに対して、大腸内視鏡検査用補助具10、30においては、図10(b)又は図10(c)に示したように、チューブ材11、31に対する固形部材12、32の挿通位置が当該固形部材12、32の中心から偏心した位置とされる場合には、当該挿通位置を大腸内視鏡20に近付けて患者の直腸RC内へと挿入することにより、それぞれ、図11(b)又は図11(c)に示すように、大腸内視鏡20との角度β,γが、図11(a)に示す場合に比べ鋭角となる。これにより、大腸内視鏡検査用補助具10、30においては、直腸RCへの挿入をさらに容易にすることができる。
【0052】
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態として示す大腸内視鏡検査用補助具の構成を説明する正面図である。
【図2】大腸内視鏡検査用補助具の構成を説明する斜視図である。
【図3】大腸内視鏡検査用補助具の使用例について説明する図である。
【図4】大腸内視鏡検査用補助具の変形例の構成を説明する正面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態として示す大腸内視鏡検査用補助具の構成を示す正面図である。
【図6】大腸内視鏡検査用補助具の使用例について説明する図であって、固形部材の断面を示す図である。
【図7】大腸内視鏡検査用補助具の変形例の構成を説明する断面図である。
【図8】チューブ材における挿入口を形成する一方の端部の構成を説明する要部正面図であって、端部が斜状に形成された様子を説明する図である。
【図9】チューブ材における挿入口を形成する一方の端部の構成を説明する要部正面図であって、端部が所定の曲率を有する閉塞端とされた様子を説明する図である。
【図10(a)】大腸内視鏡検査用補助具の構成を説明する側面図であって、球体に形成された固形部材について説明する図である。
【図10(b)】大腸内視鏡検査用補助具の構成を説明する側面図であって、楕円体に形成された固形部材について説明する図である。
【図10(c)】大腸内視鏡検査用補助具の構成を説明する側面図であって、鞍状体に形成された固形部材について説明する図である。
【図11(a)】大腸内視鏡検査用補助具の使用例について説明する図であって、図10(a)に示した固形部材を備える大腸内視鏡検査用補助具と大腸内視鏡との角度について説明する図である。
【図11(b)】大腸内視鏡検査用補助具の使用例について説明する図であって、図10(b)に示した固形部材を備える大腸内視鏡検査用補助具と大腸内視鏡との角度について説明する図である。
【図11(c)】大腸内視鏡検査用補助具の使用例について説明する図であって、図10(c)に示した固形部材を備える大腸内視鏡検査用補助具と大腸内視鏡との角度について説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
10 大腸内視鏡検査用補助具
11 チューブ材
12 固形部材
13 バネ材
14 孔
15 孔
30 大腸内視鏡検査用補助具
31 チューブ材
32 固形部材
35 孔
36 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腸内視鏡を腸管内へと挿入して検査を行う操作を補助する大腸内視鏡検査用補助具であって、
内部が空洞とされた可撓性を有する所定の素材からなる1本のチューブ材を備え、
前記チューブ材には、患者の肛門から腸管内へと挿入される挿入口を形成する一方の端部から所定長にわたる領域に、当該患者の腸管内に滞留している流体を取り込む取込口として機能する複数の孔が前記空洞にかけて穿設されていること
を特徴とする大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項2】
前記チューブ材には、前記複数の孔が形成された領域から当該チューブ材における他方の端部に向かって所定長だけ離隔された領域に、前記複数の孔から当該チューブ材内に取り込まれた流体を外部へと排出する排出口として機能する複数の孔が前記空洞にかけて穿設されていること
を特徴とする請求項1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項3】
前記チューブ材における前記複数の孔が穿設された領域よりも下流側に固設された固形部材を備え、
前記固形部材は、前記患者の腸管内へと挿入されること
を特徴とする請求項1項又は請求項2項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項4】
前記固形部材には、当該患者の腸管内に滞留している流体を取り込み、取り込んだ前記流体を前記チューブ部材に流下させる様に取り込み口が穿設されていること
を特徴とする請求項3記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項5】
前記固形部材は、外表面が所定の曲面状に形成されていること
を特徴とする請求項3項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項6】
前記固形部材は、球体又は球体に準ずる形状体であること
を特徴とする請求項5項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項7】
前記固形部材は、前記チューブ材に挿通されることによって当該チューブ材に固設されていること
を特徴とする請求項3乃至請求項6のうちいずれか1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項8】
前記チューブ材に対する前記固形部材の挿通位置は、当該固形部材の中心から偏心した位置とされること
を特徴とする請求項7項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項9】
前記固形部材の外表面には、所定のコーティングが施されていること
を特徴とする請求項3乃至請求項8のうちいずれか1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項10】
前記チューブ材の内部に挿設されたバネ材を備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項9のうちいずれか1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項11】
前記チューブ材の外表面には、所定のコーティングが施されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項10のうちいずれか1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項12】
前記チューブ材における前記一方の端部は、斜状に形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項11のうちいずれか1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項13】
前記チューブ材における前記一方の端部は、所定の曲率を有する閉塞端であること
を特徴とする請求項1乃至請求項11のうちいずれか1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項14】
大腸内視鏡を腸管内へと挿入して検査を行う操作を補助する大腸内視鏡検査用補助具であって、
内部が空洞とされた可撓性を有する所定の素材からなる1本のチューブ材と、
前記チューブ材の、患者の肛門から腸管内へと挿入される一方の端部に形成された固形部材とを備え、
前記固形部材には、当該患者の腸管内に滞留している流体を取り込む取込口として機能する孔が穿設され、
前記取込口として機能する孔は、前記固形部材の表面から前記チューブ材の一方の端部にかけて連通するように穿設されていること
を特徴とする大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項15】
前記固形部材の表面おける前記孔の開口面積は、前記チューブ材の一方の端部に連通する側の開口面積よりも大きいこと
を特徴とする請求項14記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項16】
前記固形部材は、外表面が所定の曲面状に形成されていること
を特徴とする請求項14又は請求項15記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項17】
前記チューブ材の内部に挿設されたバネ材を備えること
を特徴とする請求項14乃至請求項16のうちいずれか1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。
【請求項18】
前記固形部材には、前記孔が複数穿設されていること
を特徴とする請求項14乃至請求項17のうちいずれか1項記載の大腸内視鏡検査用補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図11(c)】
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【公開番号】特開2007−167080(P2007−167080A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112476(P2005−112476)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(505006219)
【Fターム(参考)】