説明

大豆油の曝光耐性評価方法および大豆油の選別方法

【課題】戻り臭の発生しやすさについて客観的な指標で大豆油を評価する方法、すなわち、大豆油の曝光耐性の客観的な評価方法を提供すること。
【解決手段】曝光させた大豆油中の2,3−オクタンジオン濃度を測定する工程と、前記工程で測定された2,3−オクタンジオン濃度に基づいて大豆油の曝光耐性を評価する工程とを含むことを特徴とする大豆油の曝光耐性評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆油の曝光耐性評価方法および大豆油の選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油は、精製した直後は問題のない風味でも、光や熱等によって劣化し、風味上問題になる臭いを発生する。大豆油は、劣化の初期の段階に特有の「戻り臭」を発生する。「戻り臭」とは、油の劣化過程の初期段階で、過酸化物価がほとんど上昇していない段階において発生する異臭のことである。大豆油においてはこの戻り臭が発生しやすく、その臭いも独特の「青豆臭」を発する。戻り臭の発生の大きな要因として光の影響が知られ、特に曝光を原因とした臭いは「曝光臭」とも呼ばれる。
【0003】
植物油で発生した戻り臭を抑制するために、特許文献1は、植物油に焙煎油を極微量添加することを開示する。一方、大豆油のニオイ成分は、いくつか提案され、戻り臭の原因として、フラン酸や3−メチル−2,4−ノナンジオンなどが、提案される一方で、それらの化合物は、戻り臭とは無関係であるとの報告もあり、明確には特定されていない(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/028483号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】菰田衛,「油脂の採油と精製」,日本油化学会誌,1999年,第48巻,第10号,p.1109-1122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景の下、本発明者らは、戻り臭の発生の少ない大豆油を予め選別することに着目した。官能評価による大豆油の選別は、同じ臭いを嗅ぎつづけると嗅覚が鈍くなったり、嗅覚で感じた臭いは時間がたつと忘れてしまったりするため、評価の客観性に問題を有する。そこで、本発明は、戻り臭の発生しやすさについて客観的な指標で大豆油を評価する方法、すなわち、大豆油の曝光耐性の客観的な評価方法を提供することを目的とする。また、本発明は、戻り臭の発生の少ない大豆油を客観的な基準で選別する方法を提供することを目的とする。また、大豆油の戻り臭に起因する風味の劣化が起こりにくい、高い曝光耐性を有する食品を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、大豆油中の2,3−オクタンジオンが、大豆油の戻り臭に関与する物質であることを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
[1] 曝光させた大豆油中の2,3−オクタンジオン濃度を測定する工程と、
前記工程で測定された2,3−オクタンジオン濃度に基づいて大豆油の曝光耐性を評価する工程と
を含むことを特徴とする大豆油の曝光耐性評価方法。
[2] 前記評価工程が、曝光前後の大豆油中の2,3−オクタンジオン濃度差で大豆油の曝光耐性を評価する工程であることを特徴とする上記[1]に記載の大豆油の曝光耐性評価方法。
[3] 前記曝光を、可視光を3000〜15000ルクスの照度で4〜100時間照射することにより行うことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の大豆油の曝光耐性評価方法。
【0009】
[4] 前記曝光を、可視光を7000ルクスの照度で40時間照射することにより行い、測定された曝光前後の大豆油中の2,3−オクタンジオン濃度差が2 ppm以下である場合に、大豆油を曝光耐性を有すると評価する工程であることを特徴とする上記[3]に記載の大豆油の曝光耐性評価方法。
[5] 前記測定工程が、ヘッドスペースGC法またはヘッドスペースGC−MS法により行われることを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1に記載の大豆油の曝光耐性評価方法。
【0010】
[6] 上記[1]〜[5]の何れか1に記載の大豆油の曝光耐性評価方法を用いて、大豆油を選別することを特徴とする大豆油の選別方法。
[7] 可視光を7000ルクスの照度で40時間照射することにより曝光させた大豆油において、曝光前後の2,3−オクタンジオン濃度を測定し、曝光前後の2,3−オクタンジオン濃度差が2 ppm以下である大豆油と、前記濃度差が2 ppmを超える大豆油とを選別する工程を含むことを特徴とする上記[6]に記載の大豆油の選別方法。
【0011】
[8] 上記[6]又は[7]に記載の大豆油の選別方法で選別された大豆油を用いて食品を製造する工程を含むことを特徴とする大豆油を含む食品の製造方法。
[9] 上記[8]に記載の方法に従って製造されることを特徴とする大豆油を含む食品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の大豆油の曝光耐性評価方法を用いることにより、戻り臭の発生しやすさについて客観的な指標で大豆油を評価することができる。これにより、戻り臭の発生しにくい大豆油、すなわち曝光耐性の高い大豆油を客観的な基準で選択することができる。本発明に従って選択された曝光耐性の高い大豆油を用いることにより、大豆油の戻り臭に起因する風味の劣化が起こりにくい、高い曝光耐性を有する食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ヘッドスペースGC−MS法による曝光油および未曝光油の分析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、まず、曝光させた大豆油(7000ルクス、40時間)と未曝光の大豆油の揮発成分をそれぞれヘッドスペースGC−MS法により分析し、曝光させた大豆油に顕著に現われるピークを2,3−オクタンジオンと同定した。次いで、曝光させた大豆油に発生した2,3−オクタンジオンの濃度と大豆油の戻り臭との間に相関関係があることを確認し、2,3−オクタンジオンが、大豆油の戻り臭に関与する物質であると結論づけた(後述の実施例1参照)。このような新たな発見に基づいて、本発明では、加速試験を利用して大豆油を曝光させ、曝光油の2,3−オクタンジオン濃度を測定することにより、戻り臭の発生しやすさ(すなわち曝光耐性)について大豆油を客観的に評価する。
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。以下の説明は、本発明を説明することを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。
【0016】
本発明の大豆油の曝光耐性評価方法は、
曝光させた大豆油(以下、曝光油ともいう)中の2,3−オクタンジオン濃度を測定する工程と、
前記工程で測定された2,3−オクタンジオン濃度に基づいて大豆油の曝光耐性を評価する工程と
を含む。
【0017】
本発明の評価方法は、加速試験に基づくものである。よって、「曝光させた大豆油」とは、一般に食品が保管される室内の光より高い照度(たとえば3000〜15000ルクス)で、所定の時間(たとえば4〜100時間)曝光させた大豆油をいう。照度および時間については、一般に食品が保管される室内の環境よりも加速して戻り臭を発生させる条件を適宜設定することができる。たとえば、7000ルクスで40時間、または3000ルクスで80時間などの条件を採用することができる。照射する光は、可視光とすることができ、たとえば一般に食品が保管される室内の光、すなわち蛍光灯の光とすることができる。本発明において照度は、容器内の大豆油の液面で測定した値を指す。
【0018】
曝光させる大豆油は、公知の手法に従って精製された大豆油を用いることができる。たとえば、搾油後に公知の手法に従って脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を経て精製された大豆油を使用することができる。
【0019】
大豆油中の2,3−オクタンジオン濃度は、ヘッドスペースGC法またはヘッドスペースGC−MS法により測定することができる。ヘッドスペースGC法は、バイアルに試料を封入して密封し、バイアルを一定温度で一定時間加温した後、気相(ヘッドスペース)をシリンジ等で採取してガスクロマトグラフ(GC)に導入し、揮発性成分を分離、定量する方法である。ヘッドスペースGC−MS法は、ガスクロマトグラフ(GC)に質量分析計(MS)を連結させた装置を用いて、ヘッドスペースGC法と同様にして揮発性成分を分離、定量する方法である(後述の実施例1参照)。
【0020】
大豆油の曝光耐性は、測定された曝光油の2,3−オクタンジオン濃度に基づいて評価される。曝光耐性は、曝光油の2,3−オクタンジオン濃度の値に基づいて評価してもよいし、曝光油の2,3−オクタンジオン濃度と未曝光の大豆油(以下、未曝光油ともいう)の2,3−オクタンジオン濃度との濃度差に基づいて評価してもよい。すなわち、未曝光油中の2,3−オクタンジオンは極微量であるため、曝光油中の2,3−オクタンジオン濃度の値を、曝光により発生した2,3−オクタンジオンの量と推定して曝光耐性を評価してもよい。
【0021】
曝光油の2,3−オクタンジオン濃度の値または前記濃度差の値が小さい場合、曝光耐性が高く、これら値が大きい場合、曝光耐性が低いと評価することができる。曝光耐性の評価は、複数の大豆油サンプルの2,3−オクタンジオン濃度の値または前記濃度差の値の比較により行ってもよいし、特定の曝光条件の下での曝光後の2,3−オクタンジオン濃度の値または前記濃度差の値の基準値を設定し、この基準値との比較により行ってもよい。たとえば、濃度差の値の基準値を設定する場合、7000ルクスで40時間の曝光条件の下で、濃度差の基準値を2 ppmと設定し、濃度差が2 ppm以下である場合に、その大豆油を曝光耐性が高い(すなわち曝光耐性を有する)と評価することができる。ここでの基準値は、2 ppmより厳格な基準としてもよく、たとえば1.5 ppm、1.0 ppm、0.5 ppmまたは0.3 ppmと設定してもよい。また、曝光後の2,3−オクタンジオン濃度の値の基準値を設定する場合、7000ルクスで40時間の曝光条件の下で、曝光後の2,3−オクタンジオン濃度の基準値を2 ppmと設定し、曝光後の濃度が2 ppm以下である場合に、その大豆油を曝光耐性が高い(すなわち曝光耐性を有する)と評価することもできる。ここでの基準値は、2 ppmより厳格な基準としてもよく、たとえば1.5 ppm、1.0 ppm、0.6 ppmまたは0.4 ppmと設定してもよい。
【0022】
別の側面に従えば、本発明は、前記の大豆油の曝光耐性評価方法を用いて、高い曝光耐性を有する大豆油を選別する方法である。好ましい態様において、本発明の大豆油の選別方法は、可視光を7000ルクスの照度で40時間照射することにより曝光させた大豆油において、曝光前後の2,3−オクタンジオン濃度を測定し、曝光前後の2,3−オクタンジオン濃度差が2 ppm以下である大豆油と、前記濃度差が2 ppmを超える大豆油とを選別する工程を含む。この大豆油の選別方法は、上述の大豆油の評価方法と同様に実施することができる。
【0023】
上記方法に従って、高い曝光耐性を有する大豆油として評価もしくは選別された大豆油を用いて、種々の食品を製造することができ、たとえば、食用油(フライ油、炒め油)、ドレッシング、ポテトチップス等の油ちょう食品、炒め物、マーガリン、ショートニング等の可塑性油脂組成物、油脂コーティング食品、ホイップクリーム等の起泡性水中油型乳化物、コーヒークリーム、フラワーペースト、冷菓、焼き菓子などを製造することができる。高い曝光耐性を有する大豆油を含む食品は、食品自体の曝光耐性も高く、曝光による加速試験後であっても大豆油の戻り臭の発生が少なく、食品の風味が劣化しにくいという利点を有する(後述の実施例2参照)。
【実施例】
【0024】
実施例1
(1)大豆油サンプルの調製
表1に示す産地由来の搾油用に栽培された大豆を、定法に従い、搾油、精製を行った。すなわち、大豆をローラーで粗砕、クッキングした後、ヘキサン抽出、脱溶剤し、水を1%添加してガム質を分離し大豆原油を得た。大豆原油に、80℃で0.2質量%のリン酸を添加・混合し、混合後の酸価に対して、モル比で20%過剰になるように10質量%濃度水酸化ナトリウム水溶液を添加・攪拌した。遠心分離機でセッケン分を分離し、湯洗を行った。110℃、減圧下で水分を除去した後、活性白土を1質量%加えて、減圧下、110℃、20分間処理した。活性白土をろ別した後、250℃、90分間、3torr、水蒸気対油2%で、脱臭処理を行い表1の大豆油を得た。
【0025】
(2)大豆油の曝光
500mlの三角フラスコに、大豆油を200g入れ、真空オーブンを用いて、15分間脱気を行った後、密栓した。その後、7000ルクス(大豆油の液面の照度)で40時間曝光した。曝光は、蛍光灯を壁面に備えたインキュベーター(東京理化器械株式会社製 EYERA EYLATRON FLI−301N)で行った。
【0026】
(3)ヘッドスペースGC−MS
20mlバイアル瓶に2gの大豆油を入れ、密栓した。さらに、180℃で10分間振盪しながら加熱を行った。ヘッドスペース部に揮発した成分を、ネットワークヘッドスペースサンプラG1888(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて、ヘッドスペース部3mlをサンプリングし、GC-MSDシステム(GC6890/MSD5973アジレント・テクノロジー株式会社製)で分析した。
【0027】
GC−MS条件は、以下のとおりとした。
GC部
カラム:DB-WAX 60m×0.25mm×0.5μm(アジレント・テクノロジー株式会社製)
オーブン温度:35℃(Hold 5min)−240℃(Hold 10min)5℃/min
注入口温度:240℃
コンスタントフロー ヘリウム 1.8ml/min
パルスドスプリット スプリット比:15/1
MS部
スキャン分析(m/z:29−500)
イオン源:230℃
四重極:150℃
エミッション電圧:70eV。
【0028】
(4)臭気物質の同定結果
サンプルNo. MQ 080619をヘッドスペースGC−MS法で分析した結果を図1に示す。図1の上段は、曝光油の結果を示し、下段は未曝光油の結果を示す。曝光油にのみ見られる25分のピークは、GC−MSライブラリーWiley収載スペクトルとの一致および試薬2,3−Octanedione(Fontarome Chemical Inc.製)を用いたGC−MSによる溶出位置確認により2,3−オクタンジオンであると同定された。
【0029】
(5)曝光風味の官能評価
風味の評価は、10名の専門パネルが、常温状態での大豆油を1〜2ml程度、口に含み、下記評価基準(5点評価)で行い、その平均値を評価値とした。なお、官能評価は、No.2の曝光油を5点、未曝光油を0点とし、専門パネルは、各サンプルについて複数回の評価を行った。
5点:曝光風味をかなり強く感じる(No.2の曝光油と同等)
4点:曝光風味が、No.2の曝光油よりやや弱くなっている
3点:曝光風味が、No.2の曝光油より明らかに弱い
2点:曝光風味が、No.2の曝光油よりかなり弱い
1点:曝光風味をほとんど感じない。
【0030】
(6)2,3−オクタンジオン濃度の測定結果と官能評価の結果
各サンプルの2,3−オクタンジオン濃度を測定した結果と官能評価の結果を以下の表に示す。
【表1】

【0031】
表1は、評価したサンプルを、曝光油と未曝光油の2,3−オクタンジオンの濃度差の値が大きい(すなわち、曝光により発生した2,3−オクタンジオンの量が多い)順に示す。No.1およびNo.2のサンプルは、曝光油と未曝光油の2,3−オクタンジオンの濃度差がそれぞれ2.58 ppmおよび2.53 ppmと大きく、曝光油の官能評価の値もそれぞれ4.8および5.0と高く、強い曝光風味が感じられた。一方、No.9およびNo.10のサンプルは、曝光油と未曝光油の2,3−オクタンジオンの濃度差がそれぞれ0.20 ppmおよび0.17 ppmと小さく、曝光油の官能評価の値もそれぞれ3.2および3.1と比較的低く、曝光による加速試験後も曝光風味は明らかに弱くなっていた。他の大豆油サンプルについても同様に、2,3−オクタンジオンの発生量と曝光風味との間に相関関係がみられ、曝光油と未曝光油の2,3−オクタンジオンの濃度差がそれぞれ1.37ppmおよび0.49 ppmのNo.3とNo.7のサンプルは、曝光油の官能評価の値もそれぞれ4.4と3.3であり、曝光風味はNo.3でやや弱くなっていることが確認でき、No.7も明らかに弱くなっていることが確認できる。この結果は、2,3−オクタンジオンが曝光風味に関与する物質であることを示す。従って、2,3−オクタンジオンを測定することで、大豆油を選別することが可能となる。
【0032】
実施例2
(1)ドレッシングの調製
実施例1(1)で調製した大豆油サンプル(未曝光品)を用いて、乳化型ドレッシングと分離型ドレッシングを調製した。
乳化型ドレッシングは、米酢50g、塩3g、砂糖3g、マスタード3g、こしょう少々を混ぜ合わせた後、大豆油(未曝光品)142.5gを注加しながらホモミキサーで乳化することにより調製した。
分離型ドレッシングは、大豆油(未曝光品)78.0g、米酢37.5g、塩2g、砂糖3g、こしょう少々を瓶に加え、よく振ることにより調製した。
【0033】
(2)ドレッシングの曝光
調製したドレッシング試料を透明ガラス容器に充填し、密栓した後に、実施例1と同様に曝光試験を行った(7000ルクス、40時間、25℃)。
【0034】
(3)ドレッシングの風味の官能評価
曝光品の風味評価は、10名の専門パネルが、常温状態でのドレッシング試料を1〜2ml程度、口に含み、下記評価基準(5点評価)で行い、その平均値を評価値とした。
5点:ひじょうに良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや悪い
1点:ひじょうに悪い。
【0035】
(4)結果
曝光されたドレッシングの官能評価の結果を以下の表に示す。
【表2】

【0036】
実施例1で低い曝光耐性を有すると評価された大豆油(No.1およびNo.2のサンプル)を用いて調製したドレッシングについては、曝光されたドレッシングの官能評価の値は2.1〜2.4であり、曝光による風味の劣化が大きかった。これに対して、大豆油(No.3〜10)は、曝光による風味の劣化が少なかった。特に、実施例1で最も高い曝光耐性を有すると評価された大豆油(No.9およびNo.10のサンプル)を用いて調製したドレッシングについては、曝光されたドレッシングの官能評価の値は3.0〜3.5であり、曝光による加速試験後も風味の劣化が少なかった。このように、表2は、本発明の方法で高い曝光耐性を有すると評価された大豆油を用いることにより、大豆油の戻り臭に起因する風味の劣化が起こりにくい、高い曝光耐性を有する食品を製造できることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曝光させた大豆油中の2,3−オクタンジオン濃度を測定する工程と、
前記工程で測定された2,3−オクタンジオン濃度に基づいて大豆油の曝光耐性を評価する工程と
を含むことを特徴とする大豆油の曝光耐性評価方法。
【請求項2】
前記評価工程が、曝光前後の大豆油中の2,3−オクタンジオン濃度差で大豆油の曝光耐性を評価する工程であることを特徴とする請求項1に記載の大豆油の曝光耐性評価方法。
【請求項3】
前記曝光を、可視光を3000〜15000ルクスの照度で4〜100時間照射することにより行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の大豆油の曝光耐性評価方法。
【請求項4】
前記曝光を、可視光を7000ルクスの照度で40時間照射することにより行い、測定された曝光前後の大豆油中の2,3−オクタンジオン濃度差が2 ppm以下である場合に、大豆油を曝光耐性を有すると評価する工程であることを特徴とする請求項3に記載の大豆油の曝光耐性評価方法。
【請求項5】
前記測定工程が、ヘッドスペースGC法またはヘッドスペースGC−MS法により行われることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の大豆油の曝光耐性評価方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の大豆油の曝光耐性評価方法を用いて、大豆油を選別することを特徴とする大豆油の選別方法。
【請求項7】
可視光を7000ルクスの照度で40時間照射することにより曝光させた大豆油において、曝光前後の2,3−オクタンジオン濃度を測定し、曝光前後の2,3−オクタンジオン濃度差が2 ppm以下である大豆油と、前記濃度差が2 ppmを超える大豆油とを選別する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の大豆油の選別方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の大豆油の選別方法で選別された大豆油を用いて食品を製造する工程を含むことを特徴とする大豆油を含む食品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法に従って製造されることを特徴とする大豆油を含む食品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−133365(P2011−133365A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293402(P2009−293402)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】