説明

天然ゴムの特性を有する、外側がコーティングされたニトリルゴム物品

【課題】従来のニトリルゴム組成物よりも柔軟であり、かつ優れた物理的強度と耐化学性とを有するニトリル系ゴム物品を提供する。
【解決手段】本発明に係るニトリルブタジエンゴム組成物から作成されたエラストマー物品は、少なくとも約8ニュートン(N)の破断力(F−BE)及び当該物品を元の寸法の400%まで伸長させる(F−400)のに最大で3.5ニュートン(N)の力を要することに特徴付けられる厚さが約0.15mmの天然ラテックスゴム基材の少力応答挙動と同様の力応答挙動を示す、最大で約0.12mmの所定の厚さを有する基材を含み、
当該物品の外面に、シリコーンエマルジョン若しくはシリコーン油、グリセリン溶液、シリコーンとグリセリン/グリセロールとを組み合わせた混合物、フッ化炭素離型剤又は天然若しくは合成の炭化水素ベースの油を、前記ゴム材料基材を劣化させない量で含むコーティングを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルゴム組成物から作成されたエラストマー物品に関する。特に、本発明は、天然ラテックスゴムから作成された同様な物品に匹敵する物理的特性を示す、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン製のゴム物品に関連する。
【0002】
なお、本願は、2006年3月10日に出願された米国仮出願第60,781,017号に基づく優先権を主張するものである。前記出願は、引用することによって本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
新しいゴム材料の開発により、様々な強度及び耐化学性を有する多様なエラストマー物品の製造が可能となった。合成ラテックス材料の開発に伴い、各種の製品の製造に、様々な弾性及び重合体材料が使用されるようになった。合成ゴム材料に有用な化合物の種類の1つとしては、手袋及び耐油性シールなどの物品の製造に幅広く使用されているニトリルゴムがある。
【0004】
高い伸長性及び伸縮の容易性が求められるエラストマー物品(例えば、手術用手袋、実験用手袋、風船、コンドームなど)は、従来は天然ゴムラテックスから作成されていた。ニトリルゴム製品は一般に天然ゴムラテックスよりも伸縮しにくいが、ニトリルゴムの天然ゴムラテックス基材に対する利点の1つとしては、ニトリルゴム製品が或るユーザにとっては重大なアレルギー問題となり得る天然ラテックスタンパク質を含んでいないという点がある。ニトリル材料の天然ゴムラテックスに対する他の利点としては、特に脂肪及び油性材料に対しての優れた耐化学性、並びに優れた穿刺抵抗がある。そのため、天然ゴム製品の代わりに、ニトリルゴム系の手袋が望まれるようになった。
【0005】
病院、研究所、又はゴム手袋を使用し得る他の作業環境では、作業者保護を向上させるために「ラテックス・フリー」にすることが望ましいが、一般にニトリル製品は高価であるため、ニトリル製品へ変更することには限度がある。天然ゴム手袋からラテックス・フリー手袋へ切り替える上での他の障害としては、従来のニトリル手袋は堅いため、天然ゴムラテックス材料から作成した同様の種類の手袋と比較すると着け心地が悪いという点がある。例えば、天然ゴムラテックス(natural rubber latex:NRL)製の実験用手袋について、その長さを元の寸法の約300%まで伸長させるためには、一般的に、約2.5Mpa(58psi)の応力を必要とする。これは一般に、手袋の300%弾性係数と呼ばれる。一方、ニトリル製の実験用手袋について、その長さを上記と同様に300%まで伸長させるためには、一般的に、天然ゴムラテックス製手袋の2倍以上の応力(5MPa、116psi)を必要とする。なお、合成材料としては、ニトリル以外にもビニルを使用することも可能であるが、ビニルは機能性が低いと見なされている。
【0006】
現在、天然ゴムラテックス製手袋の力/ひずみ特性と同様又は同一の力/ひずみ特性を有する合成ラテックス製の実験用手袋が市販されていないことは言うまでもなく、天然ゴムラテックス製手袋の力/ひずみ特性と近い力/ひずみ特性を有する合成ラテックス製の実験用手袋も市販されていない。力/ひずみ特性は、材料の厚さに関係なく、前記材料が加えられた力に対してどのように応答(伸長)するかを直接測定したものである。対照的に、応力/ひずみ特性は、加えられた力に対する応答を、前記材料の単位断面積当たりで測定したものである。
【0007】
医療用及び産業用手袋を製造するために多くの場合はエマルジョン(ラテックス)状態で使用される合成重合体であるニトリルゴムは、アクリロニトリル、ブタジエン及びカルボキシル酸のランダム三元重合体である。ニトリルゴムは、その強度及び耐化学性を向上させるために、2つの異なる構造で架橋させることができる。第1の架橋構造は、多価金属イオンを使用して、カルボン酸基を互いにイオン結合させることにより形成される。多価金属イオンは、一般的に、エマルジョンに酸化亜鉛を加えることにより供給される。一般的に、前記重合体の剛性/柔軟性は、この型の架橋に強く影響を受ける。第2の架橋構造は、硫黄と加硫促進剤として知られる触媒とを使用した、前記重合体のブタジエン部分の共有架橋である。この共有架橋は、耐化学性の向上に、特に重要である。手袋は多くの場合は、セラミック製の手袋型の表面に凝固液(大抵は硝酸カルシウム)を塗布した後、前記手袋型をニトリルラテックスに浸漬して前記手袋型の表面上にニトリルゴムを局所的なゲル化を生じさせることで作成される。
【0008】
ニトリルゴム物品を軟化させるためのいくつかの従来の方法では、米国特許第6,031,042号及び第6,451,893号明細書に記載されているように、酸化亜鉛、及び、ガルボキシル化ニトリルゴムをイオン架橋することができる他の材料の使用が著しく制限される又は完全に省略される。この従来の方法では、天然ゴム製品と同様の力/ひずみ特性が得られないだけではなく、材料の強度が低下する、より高温の硬化温度が必要となる、皮膚炎を引き起こす可能性のある非常に高濃度の他の化学材料が必要となる、又は、浸漬前にニトリルラテックスが厚くなるなどの処理の困難を引き起こす、という問題がある。
【0009】
また、米国特許第5,014,362号及び第6,566,435号明細書に記載されているようなニトリル手袋の着用性を高めるための方法は、長時間に渡る応力緩和に頼っており、応力緩和又は軟化を引き起こすべく、ひずみを継続的に加える必要がある。しかし、ひずみの測定を継続して行うことは困難であり、現実世界での実施及び使用は非現実的である。
【0010】
そこで、ニトリル材料の利点と天然ゴムラテックスの優れた柔軟性とを良好に組み合わせた、応力緩和による軟化を必要としないニトリル系重合体の物品が要望されている。ニトリルゴムの保護特性及び非アレルギー性を保ちながらも、天然ゴムラテックス製品の着用性及び柔軟性を向上させるために、重合体組成物の特徴と天然ゴムラテックス製品の特徴とを取り入れたニトリル手袋が求められている。この手袋の着用時は、前記エラストマー材料は、天然ゴムに関連する問題を生じさせることなく、天然手袋と同様の物理的なひずみ又は応力の特性を示すことができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来のニトリルゴムの引張強度及び保護特性を保ちながらも、関連するポリイソプレンゴム物品の力/ひずみ特性を示す、エラストマーのニトリルゴム物品に関連する。特に、本発明は、従来のニトリル手袋よりもより薄く柔軟であるが、ニトリル手袋を通常着用する産業又は研究室での作業及び全ての医療処置において、保護特性及び十分な強度を保持するように設計された、手袋などの比較的薄い弾性物品に関する。本発明に係る薄くて「柔軟なニトリル」手袋は、天然(ポリイソプレン)ゴム手袋と同様な力/ひずみ応答特性を示す。
【0012】
ニトリル材料の弾性係数は約3〜6Mpaの範囲であり、引張強度は約30又は32〜56又は58MPaの範囲である。標準的な厚さの手袋では、前記係数の前記範囲だけでは天然ゴムと同様の力/ひずみ応答を十分に得ることはできないが、前記物品の前記係数を低くすることに加えて、前記物品の厚さを薄くすることによって、所望の目的を達成することができる。従来のニトリル製の実験用手袋の厚さは、約0.14±0.02mmである。しかし、本発明に係るニトリル製手袋は、従来よりも薄く、約0.05〜0.10又は0.11mmの範囲である。厚さは、アメリカ材料試験協会(American Society for Testing and Materials:ASTM)の試験基準D−412−98a(2002年改定)で規定された手の平の領域で測定した。
【0013】
本発明によれば、材料の強度を最大にし、かつ材料を伸長させるのに必要な力を最小にするように選択するために、ニトリル組成物における架橋材料の濃度と、物品の適切な厚さとを同時に調整することにより、より厚い天然ゴムラテックスと同様の力応答挙動を有する材料を作成することができると考えられる。カルボン酸基の架橋は、浸漬物品の作成に使用される前のニトリルエマルジョンに加えられるイオン材料の量及び種類によって調整される。物品の厚さは、浸漬工程の間に、様々な手段によって調整することができる。
【0014】
本発明に係る方法によれば、従来のニトリル製物品よりも柔軟でありかつ着用が快適な手袋を製造することができると共に、より妥当又は標準的な濃度の化学物質と方法パラメータとを用いてニトリルゴムの潜在的な強度を最大化することができる。本発明に係る方法は、従来技術に対して利点を有する。本発明により、架橋剤の全濃度において良好な柔軟性を有すことができ、高温を必要とせずに高い割合の共有架橋を形成することができる。また、架橋剤及び促進剤の濃度が高すぎる又は低すぎる場合に生じることが多い面倒な問題を引き起こすことなく、架橋剤及び促進剤を従来の濃度で使用することができる。例えば、酸化金属の濃度が低すぎると、ゲル化過程の質が低下する、又は約8.5以上の高いpHで材料が厚くなる。
【0015】
本発明に係る方法は、手袋の着用性の向上のために従来行われてきた、約10〜15分間の応力緩和や、応力緩和を生じさせるべく一定のひずみを加えることは、必要としない。本発明に係るニトリルゴム系材料の優れた力/ひずみ応答は、ユーザによって即座に理解される。本発明に係る新規のニトリル重合体は、柔軟性及び着用性をより向上させるように構成することができる。
【0016】
本発明の「柔軟なニトリル」材料の特有な性質は、1つには、2つのアクリロニトリル組成物が約50:50で混合されたニトリル組成物に起因するものと考えられる。一方では、第1のニトリル組成物は、第2のニトリル組成物よりも柔軟である、又は言い換えると、第2のニトリル組成物よりも弾性係数が低い。他方では、第2のニトリル組成物は、第1のニトリル組成物よりも優れたフィルム形成能力を示す。各組成物の性質は、浸漬処理により優れた、及び材料をより軟化させることができる、組み合わされた混合物の作成に役立つ。2つの組成物を混合することにより、相乗効果が生じる。このような現象は、ニトリルに関する技術分野では稀である。ニトリル重合体分子におけるカルボン酸基の配向及び配置(外側又は内側のどちらでも)は、マグネシウム又は亜鉛などのカチオンに対するカルボン酸の反応性に影響を及ぼす。
【0017】
本発明はまた、このような柔軟なニトリル手袋を作成するための費用対効果の高い方法又は手段も提供する。本発明に係る方法は、型を用意するステップと、前記型に凝固剤コーティングを塗布するステップと、前記型の表面の少なくとも一部を、上記したようなニトリル組成物で被覆するステップと、基材を形成するために前記ニトリル組成物を硬化させるステップと、
前記型から前記ニトリル基材を剥がすステップとを含む。
【0018】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な発明によってさらに明らかになるであろう。上述した要約及び以下の詳細の説明は本発明の単なる例示であり、請求項に記載した本発明を理解するための概念を提供することを意図したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ニトリル重合体組成物から作成され、天然ゴムラテックス物品と類似した物理的特性を示す弾性物品(例えば手袋など)の作成を開示する。身体に着用するエラストマー物品に所望される特性は、前記重合体材料の柔軟性である。本発明では、多くの従来のニトリルゴム組成物よりも柔軟である(すなわち、弾性係数がより低い)と共に、優れた物理的強度及び耐化学性を有する、物品を製造するためのニトリル系ゴム組成物の使用を説明する。本明細書で使用される「弾性的」又は「エラストマー的」という用語は、一般に、力が加えられた際に、伸長されたバイアス長さ(an extended, biased length)まで伸長可能である材料を意味する。伸長させたバイアス力が解除されると、前記材料は、実質的に元の形状若しくは元の寸法、或いはひずんだ若しくは伸長した分の少なくとも約50%を回復する。本明細書で使用される「伸長」は、エラストマー基材又は膜が元の寸法を超えて伸長する又は拡大する程度又はパーセンテージを意味する。「変形のパーセンテージ」又は「伸長のパーセンテージ」は、次の計算式で求めることができる。
最終の寸法−最初の寸法/最初の寸法×100
或いは、伸長の量は、未伸長の長さに対する伸長した長さの比で表すことができる。
しかしながら、復元(力が解除される際の収縮)の量は、伸長した長さ:伸長した長さ−未伸長の長さの比である。この用法は、一貫してはいないが、一般的である。例えば、弛緩状態にある未伸長の長さが10cmの弾性材料は、伸長又はバイアス力を加えることによって、少なくとも13.5cmの長さに伸長させ。そして、伸長又はバイアス力を解除すると、前記エラストマー材料は、約12cmまでの長さに回復する。
【0020】
従来、より柔軟性のあるエラストマー物品を作成するためには、2つの方法が用いられてきた。第1の方法は、物品の基材又は膜壁をより薄くすることである。第2の方法は、エラストマー材料の弾性係数を減少させることである。この2つの方法のそれぞれには、利点と欠点がある。例えば、手袋及びコンドームの両方では、重合体膜を薄くすれば薄くするほど、着用者の触覚感度は向上する。また、多くの場合は、弾性合成重合体壁を薄くすれば薄くするほど、物品を屈曲、伸長又は変形させるのに必要な力は減少する。しかし、物品を薄くすると、引張強度の低下又は使用時に裂けやすくなるなどの問題が生じることが多くなる。一方、弾性又はヤングの係数を低くすることより、基材の厚さを比較的厚くしたままで、手に着用した際の柔軟性を得ることができる。重合体における架橋濃度を減少させてゴム組成物の弾性係数を低下させると、強度又は耐化学性が低下することが多い。
【0021】
従来のニトリル手袋の力応答挙動は、一般的に、同様の天然ゴム手袋の力応答挙動とは著しく異なる。この2種類の材料の両方に同じ力を加えると、天然ゴムの方がより大きく伸長する。この伸長の差は、一般に、酸化金属架橋の量の減少又はさらには削除などの様々な方法で減少させることができる。しかし、前記2種類の重合体の間の比較的大きな差異をできるだけ近づけるように酸化金属の濃度を減少させると、天然ゴムと同様の力応答を実現することなく、物体の強度が不可逆的に低下する、又は製造時の浸漬工程に悪影響を及ぼす(すなわち、ゲル化の遅れ、共有架橋の遅れ、粘度の増加など)。
【0022】
本発明では、イオン架橋の程度又は量及び種類は、ニトリルラテックスの合成又は作成する際に、全てのイオン材料の量を調整することによって調節することができる。しかし、本願発明者は、イオン材料の量を極端に高く又は低く調整することなく、従来の合成物品よりも小さな力で伸長できるように前記材料の厚さを薄くしても、著しく高い引張強度を実現することができる組成バランスを発見した。材料の強度を最大にし、かつ材料を伸長させるのに必要な力を最小にするように、材料組成物における架橋の濃度と物品の基材の適切な厚さとを同時に調整することによって、厚さが同様である又はより厚い天然ゴムラテックスと同様の力応答挙動を示す材料を作成することができる。カルボン酸基の架橋は、浸漬物品の作成に使用される前のニトリルエマルジョンに加えられるイオン材料の量及び種類によって調整される。物品の厚さは、浸漬工程中における前記型をエマルジョン内に浸漬する時間(若しくは、前記型にエマルジョンを被覆する時間)や温度の調節、又は、浸漬槽から取り出した後の機械的な回転若しくは旋回などの様々な方法によって調整することができる。
【0023】
本発明を使用して作成した手袋は、より薄く、着用するのにより柔軟である。従って、従来のニトリル手袋と比較して着用性が向上する。そして、さらには、製造工程における及び最終的には消費者にとってのコスト削減を可能にする。手袋の材料を薄くすると、通常の手袋よりも、着用者の手及び指先の触覚感覚が向上する。これらの全ての利点は、手袋の強度を低下させることなく、実現可能である。
【0024】
現在市販されているほとんどのニトリルゴム製の実験用手袋は、約0.12〜0.13mm以上の厚さを有する。本発明では、基本重量が従来の手袋よりも低い手袋を製造することができる。本発明に従って作成された手袋の手の平の厚さは約0.05〜0.10mmであるが、基本重量がより重いより厚い手袋が有する強度特性を損なうことはない。本発明に従って作成されたニトリル製手袋は、現在市販されている他のニトリル製の実験用手袋よりも平均して30〜50%薄いが、本発明に係る手袋は、実験用手袋を通常着用する産業又は研究室での作業及び医療処置において十分な強度を保持するように設計されている。現在市販されている多くのニトリル実験用手袋を調査した結果、これらの手袋の手の平の領域の厚さは約0.12mm以上であった。
【0025】
正確な計測点は、アメリカ材料試験協会(American Society for Testing and Materials:ASTM)の試験基準D−412−98a(2002年改定)の「Standard Test Methods for Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers - Tension, 2003年1月出版」(この参照により、本明細書に組み込まれるものとする)に規定されている。これらの試験方法は、加硫熱硬化性ゴム及び熱可塑性エラストマーの引張(張力)特性を評価するために使用される。引張特性の測定は、試料材料からの試験片に対して行われ、試験試料を用意するステップと、前記試験試料を試験するステップとを含む。試験試料は、断面積が均一なダンベル、輪又は直線状断片の形状であり得る。引張応力、所定の伸長状態での引張応力、引張強度、降伏点、及び極限伸びの測定は、予め応力が加えられていない試験試料に対して行われる。引張応力、引張強度、及び降伏点は、試験試料の均一な断面の元の断面積に基づく。これらの引張に関する測定は、予め応力を加えなかった試験試料を所定の方法で伸長及び収縮させた後に行う。
【0026】
本発明は、米国仮出願第60/680,971号(出願日:2005年5月13日)及び米国出願第11/195,030号(出願日:2005年8月2日)に記載された従来技術に基づいて構築されたものである。前記出願は、この参照によって本明細書に組み込まれるものとする。
【0027】
第1部:組成物
【0028】
ブタジエン、アクリロニトリル及び有機酸単量体の三元重合体であるカルボキシル化ニトリルは、エラストマー物品の製造に有用な少なくとも2つの特性を有する。前記2つの特性は、高い強度、並びに、特定の炭化水素溶剤及び油に対する不浸透性である。ゴム(例えば、手袋又はコンドームなどの製品を作成すべく浸漬させるために、ラテックス状で使用される)と、他の成分(硬化剤、促進剤、活性剤など)との混合及び硬化は、一般に、前記特性を最適化するために行われる。重合体における各単量体の数及び硬化レベルは、完成品の強度及び耐化学性のレベルに影響を及ぼす。アクリロニトリルを多く含む重合体は、脂肪酸及び溶剤に対してより優れた耐性を示す傾向を有するが、アクリロニトリルが少ない重合体よりも堅い。この重合体を形成する単量体の化学的性質はある程度の耐化学性をもたらすが、重合体分子が化学的に架橋している場合は、化学的な耐性、浸透、及び溶解が著しく増大する。
【0029】
また、架橋は、ゴムの強度及び弾力性も増大させる。カルボキシル化ニトリルラテックスは、少なくとも2つの方法で化学的に架橋することができる。ブタジエンのサブユニットは、硫黄/促進剤系によって共有結合的に架橋する。また、カルボキシル化(有機酸)部位は、酸化金属又は塩によってイオン結合的に架橋する。硫黄によって架橋すると、耐油性及び耐化学性が著しく向上することが多い。一方、イオン結合的に架橋すると(例えば、ラテックスに酸化亜鉛を加えることによって)、引張強度、穿刺抵抗性、耐摩耗性、及び弾性係数(ゴム膜を伸長させるのに必要な力の測定値)が高いが、耐油性及び耐化学性が低いゴムが得られる。現在市販されている多くのゴム組成物では、一般的に、この2つの硬化機構の組み合わせが用いられる。例えば、カルボキシル化ニトリルラテックスの製造者は、多くの場合、硫黄及び促進剤の使用に加え、ゴム100部に対して酸化亜鉛を1〜10部添加することを推奨している。
【0030】
柔軟なニトリル手袋を作成する方法を記載した米国特許第6,031,042号又は第6,451,893号明細書では、両方とも酸化亜鉛を含まない組成物を使用しているが、本発明では酸化亜鉛を含む組成物を提供する。酸化亜鉛を使用することで浸漬工程の質と硬化速度とを向上させることができる。酸化亜鉛を使用しない場合は、硬化の最適状態に達するために必要な硬化時間はさらに長くなり、硬化の効率が低下することになる。これは、架橋がより長くなり(架橋当たりの硫黄原子の数がさらに多くなり)、重合体鎖と架橋しない硫黄が大量に存在し得ることを意味する。その結果得られる効果的に硬化されていないゴムは、耐熱性及び耐化学性が低くなる。しかし、イオン架橋を行うと、多くの場合は、そのゴムから作成された物品の剛性は高くなる。これは、柔軟なゴムが要求される用途では、欠点となる。例えば、柔軟なゴムから作成された手術用手袋を着用すると、非常に優れた触覚感度が得られる。このことは、手術中の外科医が感じる「感触」を向上させるのに、及び、手の疲労を防止するのに望ましい。
【0031】
伸縮性がより優れたさらに快適なニトリル手袋(すなわち、ヤング係数がより低い手袋)は、アクリルニトリルを含有量がより少ない重合体を使用することで、又は架橋の程度をより低くすることで作成することができる。しかし、このような改変は、強度、耐化学性又はその両方が悪化することが多い。よって、得られる物品は、様々な用途に対して不適となる。従って、堅いゴムと同様の強度及び耐化学性を有する柔軟なゴムが非常に望ましい。
【0032】
本発明に係るゴム膜は、伸縮性がより高い。従って、通常大きな手袋を必要とする人は、手袋が手に付着する又は手の快適な動きを損なうことなく、本発明のニトリル系の組成物から作成された手袋の中型のものを使用することができる。さらに、ゴム膜がより薄くなることによって、温度及び表面の触感に対する触覚感度が向上する。
【0033】
理論に束縛されるものではないが、本発明に係る物品のマトリックス構造及び強度は、系に存在する全てのイオン(とりわけ、2価又はそれ以上の価数のカチオン)と重合体マトリックスのカルボン酸成分との相互作用に起因すると考えられる。Mg、Ca、Zn、Cu、Ti、Cd、Al、Fe、Co、Cr、Mn及びPbなどの2価又は多価のカチオンは、カルボン酸のカルボキシル基と架橋し、比較的安定な結合を形成することができる。カチオンは、Mg、Ca、Zn、Cu又はCdを使用することがより望ましい。メタクリル酸単量体は、重合体マトリックス構造内で、互いに比較的近接して配置することが好ましい。このようにすると、2価又は多価のカチオンは、近接している2つ以上の酸性分子と架橋することができる。カチオンの正の電荷は、酸性カルボン酸基の陰電子のバランスを良好に保つことができる。2価又は多価カチオンが存在しないと、ニトリルエマルジョン中の複数の重合体鎖が互いに良好に架橋しないと考えられる。K、Na又はHなどの1価のイオンは、第2のメタクリル酸と結合するのに十分な電子キャパシティを有していないため、形成される結合は弱くなる。また、系のpHを高める1価の塩は、ラテックス粒子を膨張させ得る。それにより、さらに多くのカルボン酸基が他の架橋剤に接近可能となる。カチオンの正の電荷は、酸性カルボン酸基の陰電子のバランスを良好に保つことができる。
【0034】
本発明に係る組成物中の例えば酸化亜鉛の濃度を若干減少させることに加え、高濃度の1価イオンを追加することも、材料の高い強度を維持するのに効果的であることが分かった。これらの1価イオンは、組成物のpHを調整するアルカリ剤、又はニトリルラテックスを不安定化しない他の塩に由来する。最終製品に所望のレベルの耐化学性を与えるために、硫黄及び加硫促進剤の組み合わせが含まれている。いくつかの場合では、単一のジチオカルバミン酸塩促進剤を硫黄と共に加えるだけで十分である。より高い耐化学性が必要とされる他の場合では、ジフェニルグアニジンとメルカプトベンゾチアゾール亜鉛とジチオカルバミン酸塩促進剤との組み合わせを硫黄と共に加えると、より優れた結果が得られる。
【0035】
本発明に係るニトリル材料で使用される基本重合体は、アクリロニトリル、ブタジエン及びカルボン酸成分を含む三元重合体組成物である。本発明に係る柔軟なニトリル材料に特有の利点は、1つには、組成物におけるアクリロニトリル成分の混合物の性質及び相互作用に起因すると考えられる。混合物は、第1及び第2のアクリロニトリル組成物を含んでおり、その比は、約60:40〜40:60の範囲である。2つの組成物を混合することにより、優れた浸漬処理の特性を示すより柔軟な材料の作成を容易にするという相乗効果が生じる。このような現象は、ニトリル材料の技術分野では稀である。ニトリル重合体分子におけるカルボン酸基の配向及び配置(外側又は内側のどちらでも)は、マグネシウム又は亜鉛などのカチオンに対するカルボン酸の反応性に影響を及ぼす。従って、ある成分が柔軟性と小さな弾性係数を示し、ある成分が優れたフィルム形成能力を示すと考えられる。
【0036】
混合された又は組み合わされた組成物におけるアクリロニトリルの含有量は、約17〜45重量%、好ましくは約20〜40%、より好ましくは約20〜35%である。一般的には、アクリロニトリルの含有量は約22〜28重量%であり、メタクリル酸の含有量は約10%未満であり、重合体の残りはブタジエンである。メタクリル酸の含有量は約15重量%未満にすべきであり、好ましくは約10%である(重合体の残りはブタジエンである)。三元基本重合体は、エマルジョン重合工程によって作成され、手袋又は他のエラストマー物品を作成するためにエマルジョン状で使用される。
【0037】
本発明で使用されるアクリロニトリル重合体組成物は、一般的には、約−15又は−16〜−29又は−30℃の範囲のガラス転移温度(glass-transition temperature:Tg)を有する。いくつかの実施形態では、PolymerLatex GmbH及びSynthomer Ltd.からそれぞれ販売されているPolymerLatex X-1133又はSynthomer 6311などの望ましいニトリル重合体組成物は、約−18〜−26℃の間のTgを有する。Nantex Industry Co., Ltd.(台湾、中華民国)から販売されているNantex 635tなどのより望ましいニトリル組成物は、約−23.4〜25.5℃のTgを有する。このニトリル組成物を使用すると、他の市販のニトリル重合体を使用するときよりもより高い強度を有する材料が得られる。
【0038】
基材の厚さ又はエラストマー手袋の材料の厚さを減少させると、通常は、強度が低下する。高い強度を維持しつつ薄くした新規な手袋を作成するために、本願発明者は、市販されている他のニトリルラテックスよりも固有強度が高いニトリル重合体を開発した。本願発明者は、本発明に係る組成物及び配合方法によって、強度の最適化を図った。手袋の強度を最適化するためには、約9〜12.5又は13の範囲の高いpH値が望ましい。特に望ましいpH値は、約10〜11.5である。アクリロニトリル重合体を含むエマルジョンのpHは、例えば5〜10%の濃度の水酸化カリウム又は水酸化アンモニウムを加えることによって所望の値に調整することができる。
【0039】
ニトリルエマルジョンは、手袋の形成に役立ち、かつ手袋にその使用目的に必要な十分な強度及び耐久性をもたらす他の化学材料と配合される又は組み合わされる。前記薄型の手袋の作成は、次の材料の組み合わせることにより行われる。この方法のための一般的な組成物は、下記の通りである。ただし、それぞれの量は、乾燥ゴムの100部当たりである。
【0040】
【表1】

【0041】
浸漬に適しているラテックス状の、任意のカルボキシル化「ニトリル」(すなわち、ニトリルブタジエンゴム)を使用することができる。前記組成物は、多くのニトリルラテックスの様々な固有特性を調節するために、上記の範囲で調整することができる。ニトリルラテックスの適切な例としては、Synthomer Sdn Bhd.製のSynthomer 6311ニトリルラテックス、又はPolymerLatex GmbH製のPerbunan N Latex X-1 133がある。二酸化チタンは、手袋を所望のレベルで白くする又は不透明にする目的のためだけに使用される。
【0042】
本発明に係るいくつかの実施形態では、容認された市販のニトリルラテックス溶液の全固形分量(total solids content:TSC)は、約43.5%である。本発明に係るニトリルエマルジョン複合物は、約15又は16〜25%のTSCを有するように作成することができる。いくつかの望ましい実施形態では、TSCは、約9〜22%であり得る。手袋のフォーマをラテックス液に浸す時間は、凝固剤の強度に左右される。しかし、前記時間は変更することができ、その場合でも、薄型の手袋を作成することができる。完成した手袋の基材は水を含んではならないので、完成した手袋は、100%のTSCを有する。
【0043】
しかしながら、ニトリルブタジエン重合体の特性は、その構成要素には由来せず、その構造に由来すると考えられる。ニトリルブタジエン重合体の構造は、重合条件によって決定される。重合体の特性は、重合体の構造に非常に影響される。重合体の分子量、分子量分布、分岐の数、重合時の架橋数、添加されるジエン単量体の種類などは様々であり、それにより重合体の分子構造は非常に複雑なり得る。いくつかの種類の単量体が、手袋の製造に使用されるカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン重合体などの重合体に結合すると、重合体の構造はさらに複雑になる。また、各単量体型の全体レベル及び単量体単位の配列も、生じる重合体の特性に影響する。手袋に使用されるニトリルゴムのように単量体単位の反復構造がランダムである場合は、前記重合体の物理的特性は、重合体の直線性(分岐性に対しての)及び分子量に影響されて、ホモ重合体の特性よりも向上する。これは、各単量体のみから形成される重合体の規則的な反復構造から予期される特性が、他の単量体単位の付加によって前記反復構造が中断される又は改変されることによって変化するためである。ある重合体で特定の単量体の数が多いと、前記反復構造の類似性が増加するので、その単量体から作成されるホモ重合体から期待される特性を与える可能性が高くなる。
【0044】
薄型の手袋の製造に使用されるカルボキシル化ニトリルゴムでは、アクリロニトリル及びカルボン酸(一般的には、全体の35%)は、弾力性、永久ひずみ、及び応力緩和に関してプラスチックのような特性を重合体にもたらす。また、アクリロニトリル及びカルボン酸は、ポリブタジエンの弾力性を最大にし、かつ永久ひずみ/応力緩和を最小にする規則的なcis−1,4反復構造を防止する。
【0045】
このようなカルボキシル化ニトリルゴムは、一般的には、3つの構成単量体がランダムに配列された、分岐鎖及び架橋を有する長鎖である。これらの分岐及びランダムな三元重合体は、水中で乳化する分離した小さな粒子を形成する。重合体の構造に加え、粒子の構造もまた、手袋の最終特性に影響を及ぼす。粒子の大きさ、粒径分布、粒子の凝集の程度、粒子密度などのパラメータは、製品の形成及びその最終特性に影響する。
【0046】
本発明では、重合体構造は、アクリロニトリル、ブタジエン及びカルボン酸とのランダムな三元重合体(ブロック又は交互三元重合体とは対照的)を含む。この重合体の特性は、平均分子量、分子量分布、直線性又は分岐の程度、ゲル含有量(重合の際の架橋)、及び微細構に左右される。
【0047】
本発明に係る組成物の調整は、ニトリル手袋の300%弾性係数を約3.5Mpaに低下させることができるが、この手袋を伸長させるのに(手袋にひずみを加えるのに)天然ゴムラテックス手袋のときよりも大きな力を依然として必要とする。最大約3.5ニュートン(N)の比較的小さな力でニトリル物品を元の大きさの約400%まで伸長させることができる。望ましくは2.5N以下の力で伸長させることができる。
【0048】
本発明に係る調整された組成物から作成された手袋の引張強度(すなわち、材料を破断するのに必要な応力)は、一般的な天然ゴム手袋の引張強度よりも著しく大きいので、弾性係数が小さいことと相まって、手袋の厚さを薄くすると、NRL(天然ゴムラテックス)製の手袋と同様の力/ひずみの関係を有するニトリル手袋を作成することができる。より低い弾性係数の硬化システムと手袋の厚さの適切な選択とを組み合わせると、天然ゴムラテックス基材と同じ力/ひずみ特性を有するニトリルエラストマー手袋が産生される。言い換えれば、本発明のニトリル手袋及びゴムラテックス手袋に同じ力を加えると、それぞれの手袋は同様の伸長性を示す。従って、この2種類の手袋は、着用時には、同様の快適性を示すことになる。
【0049】
第2部:強度
【0050】
本発明に従って作成されたニトリル手袋は、他のニトリル組成物から作成された市販の手袋よりも約30〜40%薄いが、通常着用する産業又は研究室での作業及び全ての医療処置において、保護特性及び十分な強度を保持するように設計されている。現在市販されている多くのニトリル実験用手袋を調査した結果、これらの手袋の手の平の領域の厚さは約0.12mm以上であった。パラメータ及び測定プロトコルは、アメリカ材料試験協会(ASTM)の試験基準D−412−98aによって規定されている。本発明では、ASTMのプロトコルを改変せずに使用した。本発明で使用する試験装置は、約+/−100Nのキャパシティを有するスタティック・ロード・セル(static load cell)を備えたInstron(登録商標)張力計の5564型、及びXL伸縮計である。他の装置も、ASTMの基準を満たす限り使用可能である。
【0051】
前述したように、現在市販されている多くのニトリル実験用手袋は、約0.12mm以上の厚さを有する。本発明では、従来の手袋よりも基本重量が小さいニトリル手袋を作成することができる。本発明に係る手袋は、基本重量の大きい手袋が一般的に示す強度を損なうことなく、約0.05から0.10mmの範囲の厚さ(手の平の領域で)を有する。本明細書で使用する「強度」は、所定の形状及び寸法の試料(例えば、ASTMの試験基準D−142で使用されるもの)を破断するのに必要な力量として示すことができる。試験の結果、手の平の領域の厚さが約0.08〜0.10mmの本発明の手袋の破断力(force-at-break)は、平均読み取り値で、約8.7〜10.2ニュートン(N)、望ましくは約9.1〜9.85N、さらに望ましくは約9.18〜9.5Nであった。現在市販されている手袋の破断力は、約6.7〜14.3N、ほとんどの場合は7.5〜10.5Nの範囲である。
【0052】
本発明の弾性物品のニトリル材料は、破断時には、約30〜55Mpaの範囲、望ましくは約40Mpaの引張強度を有する。通常は、破断時も伸長量は、約550〜750%の範囲であり、多くの場合は約650%である。ニトリル材料が約300%伸長している際は、弾性係数は、約3〜6MPaの範囲、望ましくは約4MPaである。
【0053】
本発明の組成物におけるイオン材料の濃度は、所望の弾性係数が得られるように調整される。作成しようとする製品が非常に薄い(例えば、0.05mm)場合は、前記材料の厚さが薄いことによってその物品を伸長させるのに必要な力が比較的小さい限り、より大きな弾性係数が許容される。この場合は、酸化金属を、前述した範囲の最高限度に近い濃度で使用すると共に、アルカリ性水酸化物又は他の1価の塩を低〜中濃度(0〜0.5phr)で使用することができる。これにより、非常に薄いこの製品が、十分に大きい引張強度及び破断力を有することを確実にする。
【0054】
目的の物品の厚さが前述した厚さの範囲を越える(0.10〜0.12mm)場合は、酸化金属は低濃度で、アルカリ性水酸化物は中〜高濃度(0.5〜1.5phr)で使用され得る。これらの具体的な組成物は、次の表の通りである。
【0055】
【表2】

【0056】
一般的な厚さ(0.15mm)を有する現在市販されている天然ゴムラテックス手袋、及び厚さが0.12mmの現在市販されているニトリル実験用手袋(両方ともKimberly-Clark社製)から切断された試料の同様な特性は、下記の通りである。
【0057】
【表3】

【0058】
どの組成物の例を用いても、Kimberly-Clark社が現在市販している天然ラテックス製の実験用手袋を破断する力に対抗するためには0.05mm以上の厚さが必要となる。
弾性係数を小さくするために組成物の酸化金属架橋剤の量をわずかに減らすように調整する場合があるが、前記架橋剤によって強度が高まり、物品が薄くても十分な強度を有するようになるので、大きな調整は必要ではない、又望ましくもない。破断するのに必要な力は手袋の厚さに比例するので、A、B、C及びDの組成物の破断力が10.1Nであるためには、前記組成物の厚さはそれぞれ0.078、0.097、0.067、及び0.067mmである必要がある。これらの厚さに基づいて、前記材料を300%伸長させるのに必要な力は、それぞれ1.4、1.0、0.9及び1.2ニュートンである。組成物Cから作成された0.067mmの厚さを有する実験用手袋は、典型的な天然ラテックス製の実験用手袋と非常に類似した特性を示すが、天然ゴム手袋と類似する特性を有する手袋を作成するのに全ての前記組成物を使用することができることが分かる。
【0059】
薄型の材料基材と、使用するニトリル組成物と、8.6又は9の高いpHと、配合及び浸漬方法の変更との組み合わせにより、本発明に係る手袋の製造と従来のニトリル製実験用手袋の製造との間に大きな違いが生じると考えられる。
【0060】
添付した図面は、(1)本発明に従って作成された手袋と、(2)Kimberly-Clark製の市販されているニトリル系手袋(Safeskin(登録商標))と、(3)他の比較例とを比較したチャートである。図1及び図2のチャートは、伸長させるための力及び破断するための力のデータ範囲を示す。本発明は、力に関する測定値が天然ゴム手袋のパラメータに類似している点が、他のニトリル系手袋とは異なる。この現象は、弾性係数の変更及び本発明の製品の薄さの両方に起因すると考えられる。一般的には、本発明の柔軟なニトリル物品の弾性係数は、従来の粉末フリーのニトリル手袋の弾性係数よりも著しく低い。厚さを薄くしたこと及び高い引張強度を維持したことの相乗効果は、本発明に独特の新規な特徴である。
【0061】
図1は、本発明のニトリルゴム系材料、現在市販されているニトリルゴム系材料、及び天然ゴムラテックスから作成された手袋膜のサンプルの機能を比較したものである。本発明に係る実験的なサンプル例はEXP 1及びEXP 2と表示されており、比較例はCOMP A及びCOMP Bと表示されている。また、標準的なニトリルはニトリルと表示されており、天然ゴムラテックスはラテックスと表示されている。このグラフを参照すると、本発明に係る組成物から作成された手袋にひずみを加えるのに必要な応力は、従来のニトリル系の実験用手袋のものよりも小さいことが分かる。しかし、天然ゴムラテックス製の実験用手袋の応力/ひずみ挙動に近づけるためには、本発明に係る材料の応力レベルをさらに減少させる必要がある。
【0062】
図2を参照すると、バリア性及び引張特性を損なうことなくその厚さを減少させた本発明のニトリル手袋は、本発明に係る手袋の力応答(力/ひずみ挙動)が天然ゴム手袋の力応答に接近又は類似するようになることがわかる。特に、ひずみの程度が300又は400%(実験用手袋の着用時に予期されるひずみの通常の範囲)以下の場合は、本発明に係るニトリル手袋の力応答は、天然ゴム手袋の力応答と非常に類似する。約500%まで伸長させた場合は、本発明に係る組成物から作成されたサンプル例は約2〜3ニュートン(N)未満の力で伸長させることができるが、比較例を伸長させるためには約4N以上の力が必要である。図3は、本発明の優れた特性をさらに明確に示すために、力/ひずみのチャートにおけるひずみ率が低い部分(400%伸長まで)を拡大した図である。
【0063】
本発明に係るニトリル手袋の厚さは、手の平の領域で、約0.07〜0.10mm、望ましくは0.08mmであった。天然ゴムのサンプルの厚さは約0.15mmであり、Kimberly-Clark社及び他の製造会社製の比較例であるニトリル手袋の厚さは、0.12〜0.13mであった。
【0064】
本発明のユニークな特性を示すために、2つの異なる柔軟なニトリルの実験用製品のデータを図に含めている。両者の違いは、一方(EXP 1)は塩素処理されており、他方(EXP 2)は塩素処理されていないことである。塩素処理されていない手袋は、粉末が塗布された手袋又は重合体でコーティングされた手袋の典型的な特性を有する。塩素処理及びコーティングは、手袋に粉末を塗布する必要がないように行われる標準的な方法である。図3中のNR及びニトリルは、Kimberly-Clark社のPFE(天然ゴムラテックス)及びPFN(ニトリルラテックス)手袋を指す。比較のために、他社製の他の2つのニトリル手袋である比較例A(COMP A)及びB(COMP B)のデータも含まれている。
【0065】
図4は、図1〜3に示したサンプルを破断するために必要な力を示している。図4では、値の範囲及び平均値が示されている。前述したように、本発明に従って作成されたサンプルを破断するのに必要な力は、組成物の成分の濃度又は手袋の厚さを調節することによって調整することができる。一般的には、天然ゴム重合体から作成された膜の破壊点は、約10Nである。対照的に、本発明に係る組成物から作成された手袋を繰り返し試験することによって得られた破断力の値は、手袋の厚さを0.10mm未満に維持した状態では、15N又はそれ以上であった。
【0066】
従来のニトリル又は柔軟なニトリル組成物に対する本発明の他の利点は、例えば、他のニトリル製実験用手袋よりも薄く、かつ、厚い手袋に匹敵する高い強度と耐化学性を有する基材を作成できることである。手袋を薄くすることで、触覚感度及び快適性を高めることができる(弾性係数が低い薄型の手袋)。また、コストの問題も改善できるので、ユーザにとっては好適である。薄型の手袋が必要とする材料の量は厚型の手袋よりも少なくなるので、薄い手袋は厚い手袋よりも製造費を低減することができる。また、薄型の手袋にすると、例えば標準的なディスペンサーにそれまで100枚だったのを150枚入れることができるので、包装廃棄物を減少させることができる。
【0067】
また、粘着防止コーティングが施されていないタイプの医療用手袋に、医療用テープが強固に付着し易いという問題が存在する。このことは、病院及び臨床設定において様々な処置に使用される実験用手袋にとっては重大な問題である。付着性が強すぎると、手袋、テープ又は患者に対して、ダメージを与えることになり得る(例えば、医者が自身の手を治療領域から移動させた場合に、IVやカテーテルを引き抜いてしまう)。したがって、他の実施形態では、手袋の外面に施された処理によって、医療テープの手袋への粘着や手袋同士の粘着(くっ付き)を減少させることができる、又は2重の着用が望ましい又は要求される用途に役立つ。テープ粘着の問題は、離型剤として機能する材料を比較的少量使用することによって解決することができる。高く評価されている材料の例としては、シリコーンエマルジョン及びグリセリンがある。
【0068】
本発明に係るニトリルベースの手袋は、実験用手袋を処理するのに使用される工業的に標準的な方法及び装置を用いて、塩素処理され、乾燥させられる。前記物品は、むき出しのゴムの表面に、非接着性の材料を直接的にコーティングして形成された外面を有する。前記非接着性を有する材料としては、例えば、シリコーンエマルジョン若しくはシリコーン油、グリセリン溶液、シリコーンとグリセリン/グリセロールとを組み合わせた混合物、フッ化炭素離型剤、又は天然若しくは合成の炭化水素ベースの油があり、それらは、前記ゴム基材材料を劣化させない量で使用される。
【0069】
様々なシリコーン材料が、医療テープのニトリル材料への粘着を減少させることができる。例えば、簡単な分類として、ポリジメチルシロキサンや有機官能基シロキサンがある。有機官能基シロキサンとしては、シリコーン共重合体及び三元重合体、アミノ修飾及びアリール修飾シリコーン、エポキシ修飾、アルコキシル修飾、アツケニル修飾、シラノール修飾、カルボキシ修飾シリコーン、シリコーンポリエーテルなどの様々な物質がある。例えば、ポリ(メチルフェニル・シリコーン)又はジメチコーンなどの、潤滑性又は離型性を有する任意のシリコーン材料を用いることができる。
【0070】
潤滑性又は離型性を有する任意の材料を使用することができる。前記材料としては、例えば、天然及び合成の炭化水素油(例えば、直物油、水素化ポリオレフィン、又はエステル)、及びフッ化炭素離型剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、又はその修飾された誘導体がある。これらの材料は水溶性を有さない場合は(多くの場合は有さない)、エマルション形態で使用する、又は、移動コーティング(すなわちスプレー)によって直接的に塗布する。そして、手袋を回転させながらこすり合わせることによって、又は回転中に潤滑剤を含有している布を接触させることによって、分布をより均一にさせる。植物油は、実際はグリセリン(ある場合は、グリセリンのエステルとして定義される)に関連する。グリセリンを使用する利点は、グリセリンの水溶性が大きいということである(ある処理では、使用を容易にする)。また、手袋を使用後に洗浄する場合や、手袋を濡れた状態で使用する場合は、シリコーン材料は高い耐久性を有する。
【0071】
シリコーン潤滑剤は、手術用手袋では、濡れた手への着用を助けるために内面(着用面)に塗布されるものであるが、この場合の離型剤は、好ましくは、衣類乾燥機などを改造した回転チャンバー内で、手袋の外面(把持面)に塗布される。前記手袋は、転げる間に、例えば、Dow-Corning社から市販されているDCエマルジョン36などの、シリコーンエマルジョン又は油及び水の混合物を断続的にスプレーされる。Dow-Corning36エマルジョンは、費用対効果の高いシリコーン材料である。他の使用可能なものとしては、Dow Corning 365(35%ジメチコーンNFエマルジョン)、GE Silicones社製のSil−Wet L−7602、又はGE Silicone Emulsion社製のSM−2164がある。前記離型剤を加える量は、1つの手袋につき、約30又は35mgから最大で500mgである(これは、医療テープが手袋に粘着しないようにするのには十分な量である)。好ましくは、潤滑剤の量は、前記範囲の下側の範囲であり、約30〜100mg、より好ましくは約35〜60mgの範囲である。潤滑剤の量は一般的には多いことが望まれ、それが効果的である場合もあるが、縞の形成(streaking)などの外見上の及び残留に関する問題が生じ得る。
【0072】
ニトリル手袋を、濃度が約3〜8%、好ましくは4〜5又は6%のグリセリン溶液で処理することによって、手袋へのテープの粘着を防止すると共に、外観を美しくすることができる。手袋の外面(把持面)には、前記グリセリン溶液が合計で約6gスプレーされる。手袋に約1%又は2%の濃度の溶液をスプレーした場合は、依然として、医療テープが強力に粘着する。手袋に約10%の濃度の溶液をスプレーした場合は、医療テープは剥がれやすくなるが、手袋上のグリセリンが過剰になり、光沢のある表面となるため、望ましくない。シリコーンとグリセリンとを組み合わせた混合物は、大部分がグリセリンから成り、シリコーンエマルジョンは少量である。例えば、6〜7gの手袋には、約80〜100mgのグリセリンと、約15〜30mgのシリコーンエマルジョン又は油が塗布される。したがって、シリコーンとグリセリンとの比率は、約1:3〜1:6である。
【0073】
第3部:処理
【0074】
本願発明者は、化学試薬を加える順番が重要であることを発見した。試薬材料を加える順番又は量によって、ニトリル材料の処理及び物理的特性を向上させることができる。ニトリル実験用手袋の強度は、通常は、重合体構造内に含まれる有機酸基をイオン架橋することによって得られる。前記化学基は、系内の様々なカチオンと反応することができる。いくつかのカチオンは、すでにニトリルエマルジョン中に含まれている。それらは、エマルジョンの製造に使用される陰イオン界面活性剤の対イオン、及びpHを調節するカチオンであり、輸送時の製品の安定性を確保するために製造業者によって混入される。他のカチオンは、物品作成の際にニトリルエマルジョンに加えられる材料によって系に導入される。それらは、酸化亜鉛の亜鉛イオン、及びさらなるpH調節剤に由来するカリウム若しくはアンモニウムイオンである。
【0075】
水酸化カリウム又は水酸化アンモニウムなどの塩基を一連の配合操作の最後に加えると、pH調整中に、系内のカチオンの濃度が著しく上昇する前に酸化亜鉛の亜鉛がニトリル重合体の酸性基とより完全に反応することによって、前記薄い基板材料の強度が増す。
また、この方法により、伸縮性がより向上した手袋が得られる。前記伸縮性は、所定の伸長量における力の読み取り値により又は弾性係数(所定の伸長量での断面積単位当たりの力)により測定することができる。
【0076】
表4は、様々な手袋サンプルにおける、いくつかの物理的特性の要約及び比較を示す。特に、前記特性は、弾性手袋の材料を元の寸法の約400%に伸長させるのに必要な力(ニュートン)、手袋を破断するのに必要な力、及び各サンプルの厚さを含む。典型的な天然ゴムラテックス手袋の物理的な値は、対照として与えられている。例1〜12は、本発明に係るアクリロニトリルブタジエン手袋のサンプルである。比較例1〜8は、市販されているニトリル系手袋のサンプルである。
【0077】
【表4】

【0078】
表4に示すように、8個の比較例のサンプルを400%伸長させるために必要な力の一部(例えば、約1/2〜1/4)を加えるだけで、本発明に係る手袋のサンプルを同じ程度伸長させることができる。このことは、本発明によれば、天然ゴムラテックスが示す伸縮性に近い伸縮性を有する柔軟な弾性材料が得られることを示唆している。
【0079】
本発明は、アクリロニトリル材料から作成されるエラストマー物品の製造方法に有用である。本発明によれば、天然ゴムラテックスから作成されたエラストマー物品の物理的特性に非常に近い特性を示すニトリル系物品を作成することができる。本発明は、健康診断用又は手術用手袋、コンドーム、プローブカバー、デンタルダム、指サック、カテーテルなどの様々な製品の製造に効果的に利用することができる。
【0080】
以上、一例として、本発明を一般的に及び詳細に説明した。本発明は開示された特定の実施形態によって限定されるものではないことは、当業者であれば理解できるであろう。特許請求の範囲で規定された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その形態や細部に種々の変更がなされても良いことは明らかである。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【0081】
手袋の作成
【0082】
ニトリル手袋の製造では、手袋の厚さを調整するために、ニトリルエマルジョンの固形分を40〜45%から約23%まで減少させる。手袋の厚さをさらに減少させるためには、固形分を約20%まで減少させる。本発明に係る薄型の手袋は、凝固剤を用いた様々な浸漬−コーティング方法で作成することができる。この方法は、約55〜60℃、好ましくは58℃に余熱された、清潔な手袋のフォーム又は型を用意するステップを含む。用意した型を、硝酸カルシウムの水溶液に浸漬する。表面に凝固剤が付着したこの型を乾燥させ、約70±5℃に再加熱し、そして、配合したニトリルの溶液に浸漬する。このことにより、ゲル状の手袋が形成される。手袋の袖口部分の頂部にビードが形成されることもある。全ての水溶性材料成分を除去するために、ゲル状の手袋基材が付着した型を水に浸す。ゲル状の手袋が付着した型を、オーブンで約80〜100℃未満の温度で乾燥させる。次に、ゲル状の手袋基材が付着した型をさらに高い温度で加熱すると、硫黄が他の化学材料と反応し、ニトリル重合体のメチルアクリル酸を架橋する。その後、手袋を型から剥がし、粘着性を低下させるために、手袋の表面を塩素水で処理する。最後に、完成した手袋を乾燥させ、包装の準備をする。
【0083】
手袋の型をニトリルエマルジョン浸漬溶液に入れる及び取り出す速度を速くすると、手袋の厚さはより均一になる。これは、型の指先と袖口領域との間の浸漬時間の差が減少するためである。型を垂直な状態又は垂直に近い状態で浸漬溶液から取り出す。そして、型全体が水平になるように又は指先が水平よりも上に位置するように(例えば、水平上に約20〜45°の角度で傾かせる)指先を上げ、その状態を数秒〜約40秒間維持する。その後すぐに、型をその縦軸に沿って回転させながら、指先の位置を水平状態と最初の垂直状態との間の位置又は角度まで下げる。この上げ下げの操作を、正弦波的又は波状的な動作で繰り返す。この方法により、フォーマ上でニトリルがより均一に広がり、全体的に薄い基材が形成される。
【0084】
本発明に係る薄型の手袋の他の特徴は、従来の厚型のニトリル製実験用手袋と等しい又はそれ以上の耐化学性を有する点である。このことは、加硫促進剤を組み合わせて使用することによって達成される。この組み合わせには、ジチオカルバミン酸塩とチアゾールとグアニジン化合物とが含まれる。これらの比は、望ましくは、約1:1:2である。特にある実施形態では、それぞれの化合物は、ジフェニルグアニジン(diphenyl guanidine:DPG)、メルカプトベンゾチアゾール亜鉛(mercaptobenzothizole:ZMBT)、及びジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(zincdiethyldithiocarbamate:ZDEC)であり、それらの濃度は約0.5phr、0.25phr、0.25phrである。
【0085】
これらの促進剤の組み合わせは、米国特許第6,828,387号明細書(本明細書に組み込まれるものとする)に記載のものに非常に類似しているが、それぞれの薬剤の濃度は約50%に減らしている。米国特許第6,828,387号明細書は、ポリイソプレンゴムの硬化(加硫)に関するものである。本発明では、米国特許第6,828,387号明細書とは異なり、二重の架橋過程が含まれると考えられる。ポリイソプレン材料ではイソプレン分子内の共有二重結合によって架橋が形成される。これに対して、本発明のニトリル系では、ブタジエン構成要素の共有結合性相互作用、及び、亜鉛イオンとメチルアクリル酸のカルボキシル基との間のイオン性相互作用によって架橋が形成される。
【0086】
本発明は、アクリロニトリル材料から作成されるエラストマー物品の製造方法に有用である。本発明によれば、ラテックスタンパク質に関連するアレルギー性反応の問題を伴うことなく、天然ゴムラテックスから作成されたエラストマー物品の物理的特性に非常に近い特性を示すニトリル系物品を作成することができる。本発明は、健康診断用又は手術用手袋、コンドーム、プローブカバー、デンタルダム、指サック、カテーテルなどの様々な製品の製造に効果的に利用することができる。
【0087】
以上、一例として、本発明を一般的に及び詳細に説明した。本発明は開示された特定の実施形態によって限定されるものではないことは、当業者であれば理解できるであろう。特許請求の範囲で規定された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その形態や細部に種々の変更がなされても良いことは明らかである。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】応力/ひずみの曲線のグラフを示す図である。天然ゴムラテックス、3つの従来のニトリルの組成物、及び塩素処理された/塩素処理されていない本発明のニトリル組成物から作成された各サンプルに対して、広範囲の応力を加えた際に生じる伸長変形量の差を示すグラフである。
【図2】同じサンプルについての力/ひずみの関係を示すグラフである。
【図3】図2の力/ひずみのグラフの拡大図であり、0〜400%ひずみの間の領域を示す。
【図4】各サンプルを破断するのに必要な力を示している(力の量の範囲及び平均を示す)。各サンプルは、ASTMの基準試験D−412−98aに従って試験した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルブタジエンゴム組成物から作成されたエラストマー物品であって、
少なくとも約8ニュートン(N)の破断力(F−BE)及び当該物品を元の寸法の400%まで伸長させる(F−400)のに最大で3.5ニュートン(N)の力を要することに特徴付けられる厚さが約0.15mmの天然ラテックスゴム基材の少力応答挙動と同様の力応答挙動を示す、最大で約0.12mmの所定の厚さを有する基材を含み、
当該物品の外面に、シリコーンエマルジョン若しくはシリコーン油、グリセリン溶液、シリコーンとグリセリン/グリセロールとを組み合わせた混合物、フッ化炭素離型剤又は天然若しくは合成の炭化水素ベースの油を、前記ゴム材料基材を劣化させない量で含むコーティングを有することを特徴とするエラストマー物品。
【請求項2】
請求項1に記載のエラストマー物品であって、
前記シリコーンとグリセリン/グリセロールとを組み合わせた混合物における前記シリコーンと前記グリセリン/グリセロールとの量の比率は、約1:3〜1:6であることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項3】
請求項1に記載のエラストマー物品であって、
前記基材が約30〜55MPaの引張強度を示すことを特徴とするエラストマー物品。
【請求項4】
請求項2に記載のエラストマー物品であって、
前記基材が約40〜50MPaの引張強度を示すことを特徴とするエラストマー物品。
【請求項5】
請求項1に記載のエラストマー物品であって、
当該物品を300%伸長させる力が、最大で約1.5Nであることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項6】
請求項1に記載のエラストマー物品であって、
前記基材が、約550〜750%伸長させた際の少なくとも約8Nの破断力に耐えられるように構成されたことを特徴とするエラストマー物品。
【請求項7】
請求項1に記載のエラストマー物品であって、
前記破断力が、約9〜11Nであることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項8】
請求項1に記載のエラストマー物品であって、
当該物品が、同じ用途又は使用のために設計された天然ゴム又はニトリルゴム製の他の同程度の手袋よりも少なくとも20%薄い基材から成る手袋であることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項9】
請求項8に記載のエラストマー物品であって、
前記手袋の手の平の領域の厚さが、約0.05〜0.12mmの範囲であることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項10】
請求項1に記載のエラストマー物品を作成するためのニトリル組成物であって、
カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム、金属酸化物、一価塩、安定剤、加硫促進剤、及び随意的に色素を含むことを特徴とするニトリル組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のニトリル組成物であって、
前記安定剤が、硫黄であることを特徴とするニトリル組成物。
【請求項12】
任意の厚さを有するエラストマー手袋であって、
当該手袋の手の平の領域の厚さは、同様の用途のために構成された対応する天然ゴム手袋の同じ部分よりも20%薄く、
当該手袋を300%伸長させるのに必要な力(F−300)は、前記対応する天然ゴム手袋を300%伸長させるのに必要な力の約75%以下であることを特徴とするエラストマー手袋。
【請求項13】
請求項12に記載のエラストマー手袋であって、
当該手袋はその外面に、シリコーンエマルジョン若しくはシリコーン油、グリセリン溶液、シリコーンとグリセリン/グリセロールとを組み合わせた混合物、フッ化炭素離型剤、又は天然若しくは合成の炭化水素ベースの油を、前記ゴム材料基材を劣化させない量で含むコーティングを有することを特徴とするエラストマー物品。
【請求項14】
請求項12に記載のエラストマー物品であって、
前記シリコーンとグリセリン/グリセロールとを組み合わせた混合物における前記シリコーンと前記グリセリン/グリセロールとの量の比率は、約1:3〜1:6であることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項15】
請求項12に記載のエラストマー物品であって、
前記シリコーンが、1つの手袋につき、約30又は35mgから最大で500mgの量で存在することを特徴とするエラストマー物品。
【請求項16】
請求項15に記載のエラストマー物品であって、
前記シリコーンの量が、約30〜100mg、より好ましくは約35〜60mgの範囲であることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項17】
ニトリルブタジエンゴム組成物から作成されたエラストマー手袋であって、
当該手袋の手の平の領域の厚さは、同様の用途のために構成された対応する天然ゴム手袋の同じ部分よりも20%薄く、
当該手袋を300%伸長させるのに必要な力(F−300)は、前記対応する天然ゴム手袋を300%伸長させるのに必要な力の約75%以下であることを特徴とするエラストマー手袋。
【請求項18】
請求項17に記載のエラストマー手袋であって、
当該手袋が、手術用に構成されたことを特徴とするエラストマー手袋。
【請求項19】
エラストマー物品を作成するための方法であって、
a)乾燥ゴム100部当たり0.25〜1.5部の酸化亜鉛と、pHを約8.5以上にするためのアルカリと、安定剤と、グアニジン、ジチオカルバミン酸塩及び随意的にチアゾール化合物から成る群より選択される1つ以上の促進剤とを含むカルボキシル化ニトリルブタジエン配合ゴム組成物を用意するステップと、
b)前記カルボキシル化ニトリルブタジエン配合ゴム組成物にフォーマを浸漬するステップと、
c)前記カルボキシル化ニトリルブタジエン配合ゴム組成物を硬化させて前記エラストマー物品を作成するステップと、
d)前記エラストマー物品の外面に、シリコーンエマルジョン若しくはシリコーン油、グリセリン溶液、シリコーンとグリセリン/グリセロールとを組み合わせた混合物、フッ化炭素離型剤、又は天然若しくは合成の炭化水素ベースの油を、前記ゴム材料基材を劣化させない量で含むコーティングを塗布するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記促進剤組成物は、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、2−メルカプトベンジチアゾール亜鉛(ZMBT)、及びジフェニルグアニジン(DPG)を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
前記グアニジン、ジチオカルバミン酸塩及びチアゾールの比は、約2:1:1であることを特徴とする方法。
【請求項22】
ニトリルブタジエンゴム組成物から作成されたエラストマー物品であって、
最大で約0.12mmの所定の厚さを有する基材を含み、
元の寸法の約300%まで伸長しているときに約5MPa以下の弾性係数を示し、
前記ニトリルブタジエンゴム基材の断面は、約8〜14ニュートン(N)の破断力に耐えられるように構成されており、
当該エラストマー物品が、約0.12mmの厚さの天然ゴムラテックスと同程度の力伸長挙動を示すことを特徴とするエラストマー物品。
【請求項23】
請求項22に記載のエラストマー物品であって、
前記基材はその外面に、シリコーンエマルジョン若しくはシリコーン油、グリセリン溶液、シリコーンとグリセリン/グリセロールとを組み合わせた混合物、フッ化炭素離型剤、又は天然若しくは合成の炭化水素ベースの油を、前記ゴム材料基材を劣化させない量で含むコーティングを有することを特徴とするエラストマー物品。
【請求項24】
請求項22に記載のエラストマー物品であって、
前記基材が約300%伸長しているときの弾性係数が、約4.5MPa以下であることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項25】
請求項22に記載のエラストマー物品であって、
当該物品が、ニトリル重合体の基材から成り、手の平の領域の厚さが約0.12mm以下である手袋であり、
約100〜400%の範囲の伸長に必要な力が約0.8〜2.0Nである力/ひずみ特性を有することを特徴とするエラストマー物品。
【請求項26】
請求項25に記載のエラストマー物品であって、
前記手の平の領域の厚さが、約0.06〜0.11mmの範囲であることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項27】
請求項25に記載のエラストマー物品であって、
前記基材が約35〜55MPaの引張強度を示すことを特徴とするエラストマー物品。
【請求項28】
請求項25に記載のエラストマー物品であって、
前記基材が約40〜50MPaの引張強度を示すことを特徴とするエラストマー物品。
【請求項29】
請求項25に記載のエラストマー物品であって、
前記基材が、約500〜650%伸長させた際の少なくとも約8Nの破断力に耐えられるように構成されたことを特徴とするエラストマー物品。
【請求項30】
請求項25に記載のエラストマー物品であって、
前記破断力が約9〜11Nであることを特徴とするエラストマー物品。
【請求項31】
請求項25に記載のエラストマー物品であって、
前記基材が、他のニトリル材料手袋よりも少なくとも40%薄いことを特徴とするエラストマー物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−529585(P2009−529585A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557858(P2008−557858)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050557
【国際公開番号】WO2007/105122
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】