説明

天然IgM抗体およびその阻害剤

本発明は、種々の炎症性疾患または障害を治療するために用いることができる天然IgM抗体阻害剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.政府の支援
本発明は、National Institutes of Healthからの援助金番号GM52585、GM24891、およびGM07560の下で政府の支援によりなされた。政府は本発明においてある種の権利を有する。
【0002】
2.関連出願の相互参照
本出願は、2004年7月16日に出願された米国仮出願第60/588,648号、および2004年3月1日に出願された米国仮出願第60/549,123号の恩典を主張し、各仮出願内容は具体的に参照として本明細書に組み入れられる。
【0003】
3.発明の背景
有核細胞は低酸素症に対して高度に感受性であって、多細胞生物における虚血の短い期間でさえ細胞形態、遺伝子転写、および酵素プロセスに対して劇的な効果を有し得る。酸素代謝の主な部位としてのミトコンドリアは酸素レベルの変化に対して特に感受性であって、低酸素症の間には、脂質およびタンパク質のような細胞内構成要素を化学的に修飾する反応性酸素種を放出する。臨床的には、これらの効果は患者において炎症応答として発現される。低酸素症に対する細胞の応答の広範な調査にもかかわらず、急性炎症の開始についてはほとんど知られていない。
【0004】
急性炎症応答は、発作および心筋梗塞のような広い範囲の疾患および天然に生じる事象に由来し得る。通常の医学的手法もまた局所的および全身の炎症に至り得る。残された未治療炎症の結果、酷い組織損失をもたらしかねず、結局は、マルチシステムの失敗および死滅に導き得る。障害後の炎症応答との干渉は、組織損失を低下させる1つの方法であり得る。
【0005】
しかしながら、組織障害に由来する炎症性疾患および急性炎症応答は細胞事象単独によっては説明できない。蓄積されつつある証拠は、炎症における血清先天性応答または補体系に対する主な役割を支持する。今日までの研究は、虚血および再灌流に由来する組織損傷を、補体依存性である1つのタイプの炎症障害としてみてきた。例えば、再灌流障害のラット心筋モデルにおいては、補体1型受容体の可溶性形態でのラットの予備処理は障害を劇的に低下させた。どのようにして補体活性化が炎症応答に寄与するかの理解は活発な研究分野である。
【0006】
炎症性疾患または障害は潜在的には生命を脅かし、費用がかかり、かつ毎年非常に多数の人々が発症する。従って、炎症性疾患または障害の効果的な治療が必要である。
【発明の開示】
【0007】
4.発明の概要
1つの局面において、本発明は単離された天然免疫グロブリン(IgM)を特徴とする。1つの態様において、該抗体はATCC受託番号PTA-3507によって生産される。もう1つの態様において、該抗体はSEQ ID NO:8として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。なおもう1つの態様において、該抗体はSEQ ID NO:2として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する。
【0008】
もう1つの局面において、本発明はIgM阻害剤およびその医薬製剤を特徴とする。1つの態様において、IgM阻害剤は、天然IgMに特異的に結合し、それにより、抗原および/または補体活性化への結合をブロックするペプチドである。1つの態様において、該ペプチドは以下のコンセンサス配列:

を含む。ある阻害性ペプチドはSEQ ID NO:16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36および38として提供される。阻害性ペプチドは、例えば、インビボ半減期または生物学的利用性を増加させるように修飾することができる。阻害性ペプチドは検出を容易とするように標識することもできる。
【0009】
もう1つの局面において、本発明は、天然IgM抗体に特異的に結合するペプチドをコードする核酸、ならびに該ペプチドを発現するためのベクターおよび宿主細胞を特徴とする。ある核酸はSEQ ID NO:13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37として提供される。
【0010】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において開示されたIgM阻害剤を含む薬学的組成物を対象に投与することによって対象における炎症性疾患を治療する方法を特徴とする。
【0011】
なお他の局面において、本発明は、標識された阻害性抗体を用いて対象における炎症性疾患を検出し、診断し、またはモニターする方法を特徴とする。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な記載および特許請求の範囲に基づいて明らかとなる。
【0013】
6.詳細な記載
6.1 定義
便宜上、明細書、実施例、および添付の請求の範囲で使用されるある種の用語を提供する。特記しない限り、本明細書において用いる全ての技術および科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。
【0014】
本明細書において用いる「ある(a、an)」とは、形容詞の文法的目的語の1または1より多いこと(すなわち、少なくとも1)を意味する。その例として、「あるエレメント」は、1つのエレメント、または1より多いエレメントを意味する。
【0015】
「アミノ酸」は、グリシンおよびDまたはL光学異性体を含む天然または合成アミノ酸、およびアミノ酸アナログおよびペプチドミメティックスいずれかを意味するように本明細書において用いる。
【0016】
「抗体」は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原結合部位を含有する分子を含む結合性分子を意味するように本明細書において用いる。本発明で有用な免疫グロブリン分子はいずれのクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)またはサブクラスのものでもあり得る。天然の抗体および免疫グロブリンは、通常、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質である。各重鎖は可変ドメイン、続いて多数の定常ドメインを1つの端部に有する。各軽鎖は1つの端部の可変ドメインおよびその他の端部の定常ドメインを有する。抗体は、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、二重特異性、キメラ、部分的にまたは十分にヒト化された抗体、十分にヒト化された抗体(すなわち、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスにおいて生成)、ラクダ抗体、および抗イディオタイプ抗体を含む。抗体、または一般には、いずれかの分子は、該抗体が抗原に優先的に結合し、例えば、もう1つの分子に対して約30%未満、好ましくは20%、10%または1%の交差反応性を有するならば、抗原(または他の分子)に対して「特異的に結合する」。用語「抗体」および「免疫グロブリン」は相互交換的に用いられる。
【0017】
「抗体断片」または「抗体部分」は、全長未満である抗体のいずれの誘導体も意味するように本明細書において用いる。例示的な態様において、抗体断片は全長抗体の特異的結合活性の少なくとも有意な部分を保有する。抗体断片の例は、限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、ミニボディ、Fd断片、および単一鎖抗体を含む。抗体断片はいずれかの手段によって生産することができる。例えば、抗体断片は無傷抗体の断片化によって酵素的にまたは化学的に生産することができ、それは部分的抗体配列をコードする遺伝子から組換えにより生産することができ、あるいはそれは全部がまたは一部が合成により生産することができる。抗体断片は、任意で、単一鎖抗体断片であり得る。または、断片は、例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結される複数鎖を含むことができる。また、断片は、任意で、マルチ分子複合体であり得る。機能的抗体断片は、典型的には、少なくとも約50のアミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200のアミノ酸を含むであろう。
【0018】
「抗原結合部位」は、軽鎖の可変領域と会合した重鎖の可変ドメインを意味するように本明細書において用いる。
【0019】
「結合する」または「結合」は、分子の間の検出可能な関係または会合(例えば、生化学的相互作用)を意味するように本明細書において用いる。
【0020】
「細胞」、「宿主細胞」または「組換え宿主細胞」は、本明細書においては交換可能に用いられる用語である。そのような用語は特定の対象細胞のみならず、そのような細胞の子孫または潜在的子孫をも意味すると理解される。ある修飾が突然変異または環境の影響により後の世代で起こり得るので、そのような子孫は、事実、親細胞と同一でないかもしれないが、本明細書において用いる用語の範囲内に依然として含まれる。
【0021】
「含む」および「含んでいる」は、包括的なオープンされた意味で用いられ、さらなるエレメントを含むことができることを意味する。
【0022】
「コンセンサス配列」は、関連配列のファミリーにおいて最もしばしば起こるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成された配列を意味するように本明細書において用いる(例えば、Winnaker, From Genes to Clones, 1987参照)。タンパク質のファミリーにおいて、コンセンサス配列における各位置は、ファミリーにおいてその位置において最もしばしば起こるアミノ酸によって占められる。2つのアミノ酸が同等の頻度で起こるならば、いずれもコンセンサス配列に含めることができる。「コンセンサスフレームワーク」は、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域と意味する。
【0023】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様な側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。同様な側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において規定されている。これらのファミリーは塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。従って、天然免疫グロブリンにおける予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同一側鎖ファミリーからのもう1つのアミノ酸残基で置き換えることができる。または、もう1つの態様において、飽和突然変異誘発によるなどして、突然変異を天然免疫グロブリンコード配列の全部または一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた突然変異体は生物学的活性につきスクリーニングすることができる。
【0024】
「検出可能な標識」は、限定されるものではないが、放射性同位体、フルオロフォア、ケミルミネセント部分、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、色素、金属イオン、リガンド(例えば、ビオチンまたはハプテン)などを含む、検出可能な分子を意味するように本明細書において用いる。「フルオロフォア」は、検出可能な範囲で蛍光を呈することができる物質またはその部分を意味する。本発明の下で用いることができる標識の特別な例はフルオレセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミノール、NADPH、β-ガラクトシダーゼ、およびホースラディッシュペルオキシダーゼを含む。
【0025】
本明細書において用いる「阻害剤」または「IgM阻害剤」または「アンタゴニスト」とは、天然抗体、および炎症カスケードに関与するもう1つの分子の間の相互作用を(完全にまたは部分的に)低下し、またはブロックする剤を意味する。抗体は天然IgMの以下の活性の一つまたは複数に拮抗することができる。(i)IgMおよび虚血特異性抗原の間の相互作用(例えば、結合)を阻害し、または低下させる;(ii)天然IgMおよび補体経路の成分、例えば、Clqの間の相互作用(例えば、結合)を阻害し、または低下させる;(iii)例えば、免疫グロブリンを隔離しおよび/またはその分解を標的化することによって天然IgMを中和する;または(iv)天然IgMの生産を阻害し、または低下させる、例えば、IgMの合成、組み立て、および/または翻訳後修飾をブロックする。該阻害剤はタンパク質またはペプチド、抗体またはその断片(例えば、抗イディオタイプ抗体)、修飾された抗体、炭水化物、糖タンパク質、または小さな有機分子であり得る。
【0026】
「相互作用」とは、2以上の分子の間の物理的会合、例えば、結合を意味する。相互作用は直接的または間接的であってよい。
【0027】
「炎症性疾患」は、ミクロ循環における急性または慢性変化、流体の移動、および炎症細胞(例えば、白血球)および補体の流入および活性化を含む機能的および細胞的調整の複雑な組によって引き起こされる、またはそれに寄与する疾患または障害、および含まれる自己免疫疾患を意味するように本明細書において用いられる。そのような疾患および疾患の例は、限定されるものではないが、再灌流障害、虚血障害、発作、自己免疫溶血性貧血、特発性血小板減少症紫斑病、慢性関節リウマチ、腹腔病、過剰-IgM免疫不全症、動脈硬化症、冠動脈病、敗血症、心筋炎、脳炎、移植拒絶、肝炎、甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎、グラーベ病)、骨粗鬆症、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、痛風、皮膚炎、円形脱毛症、全身エリテマトーデス、苔癬硬化症、潰瘍性大腸炎、糖尿病性網膜症、胎盤炎症性疾患、歯周疾患、動脈炎、若年性慢性関節炎(例えば、慢性虹彩毛様体炎、乾癬、骨粗鬆症、真性糖尿病における腎臓障害、喘息、胎盤炎症性疾患、慢性炎症肝臓病、慢性炎症肺病、肺線維症、肝臓線維症、慢性関節リウマチ、慢性炎症肝臓病、慢性炎症肺病、肺線維症、肝臓線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、火傷、および中枢神経系(CNS;例えば、多発性硬化症)、胃腸系、皮膚および関連構造、免疫系、肝臓-胆嚢系、または病理が炎症成分で起こり得る身体中のいずれかの部位の他の急性および慢性炎症性疾患を含む。
【0028】
「単離された」分子、例えば、単離されたIgMとは、天然環境に存在する他の分子から分離されまたは精製された状態を意味する。
【0029】
「天然IgM」は、哺乳動物(例えば、ヒト)において天然で生じたIgM抗体を意味するように本明細書において用いる。それらは、個々のモノマーがIgGに似ており、それにより、2つの軽鎖(κまたはλ)および2つの重鎖(μ)を有するペンタマー環構造を有する。さらに、重鎖はさらなるCH4ドメインを含有する。モノマーは、隣接重鎖の間のジスルフィド結合によってペンタマーを形成する。ペンタマー環は、J鎖および2つの重鎖の間のジスルフィド結合によって閉じられる。その抗原結合部位の多い数のため、天然IgM抗体は抗原の効果的なアグリチネーターである。対象における天然IgM抗体の生産はB細胞、マクロファージ、および補体系の初期活性化において重要である。IgMは抗体応答で合成された最初の免疫グロブリンである。
【0030】
「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)および、適当な場合、リボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドを意味するように本明細書において用いる。該用語は、ヌクレオチドアナログから作成されたRNAまたはDNAいずれかの同等体、アナログおよび、記載される態様に適用可能であれば、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。
【0031】
「機能的に連結された」は、そのように記載された成分がそれらの意図したようにそれらを機能させるのを可能とする関係にある並置を意味するように本明細書において用いられる。例えば、RNAポリメラーゼが2つのコード配列を単一のmRNAに転写し、次いで、これが、双方のコード配列に由来するアミノ酸を有する単一のポリペプチドに翻訳される場合、コード配列はもう1つのコード配列に「機能的に連結している」。コード配列は、発現された配列が最終的に所望のタンパク質を生産するように処理される限り、相互に隣接している必要はない。コード配列に機能的に連結された発現制御配列は、コード配列の発現が発現制御配列に適合する条件下で達成するように連結される。本明細書において用いるように、用語「発現制御配列」は、それが機能的に連結された核酸配列の発現を調節する核酸配列を意味する。発現制御配列が転写を制御し、調節し、適切であれば、核酸配列の翻訳を制御し、調節する場合、発現制御配列は核酸配列に機能的に連結されている。従って、発現制御配列は適当なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コーディング遺伝子の前の開始コドン(すなわち、ATG)、イントロン、mRNAの適切な翻訳を可能とするようなその遺伝子の正しいリーディングフレームの維持のためのスプライシングシグナル、および停止コドンを含むことができる。用語「制御配列」は、最小限、その存在が発現に影響し得る成分を含むことが意図され、また、その存在が有利であるさらなる成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。発現制御配列はプロモーターを含むこともできる。
【0032】
「患者」、「対象」、または「宿主」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物いずれかを意味するように本明細書において用いられる。
【0033】
「ペプチド」は、比較的短い長さ(例えば50未満のアミノ酸)のアミノ酸のポリマーを意味するように本明細書において用いる。ポリマーは直線状または分岐していてもよく、それは修飾されたアミノ酸を含むことができ、かつそれは非アミノ酸によって分断されていてもよい。該用語は修飾されたアミノ酸ポリマーも含む;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションのようないずれかの他の操作。
【0034】
「プロモーター」は、転写を指令するのに十分な最小配列を意味するように本明細書において用いる。また、本発明には、細胞型特異的、組織特異的に制御可能なプロモーター-依存性遺伝子発現をするのに十分であるか、あるいは外部シグナルまたは剤によって誘導可能なプロモーターエレメントも含まれ;そのようなエレメントはポリヌクレオチド配列の5’または3’領域に位置させることができる。構成的および誘導性プロモーターは共に本発明に含まれる(例えば、Bitter et al., Methods in Enzymology 153:516-544,1987参照)。例えば、細菌系でクローニングする場合、バクテリオファージのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)などのような誘導性プロモーターを用いることができる。哺乳動物細胞系でクローニングする場合、哺乳動物細胞のゲノムから(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスから(例えば、レトロウイルスロングターミナルリピート;アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)由来するプロモーターを用いることができる。また、組換えDNAまたは合成技術によって生産されたプロモーターを用いて、本発明の核酸配列の転写を提供することもできる。組織特異的調節エレメントを用いることができる。例えば、異なる組織で異なって発現される遺伝子またはウイルスからの調節エレメントも含まれる。
【0035】
「特異的に結合する」は、生理学的条件下で比較的安定である複合体を形成する2つの分子の間の相互作用を意味するように本明細書において用いる。該用語は、例えば、抗体および抗原(例えば、ペプチド)の相互作用を含む種々の分子に言及するように本明細書において用いられる。特異的な結合は、少なくとも約1×10-6M、一般には少なくとも約1×10-7M、通常、少なくとも約1×10-8M、特に少なくとも約1×10-9Mまたは1×10-10M以上の解離定数によって特徴付けることができる。2つの分子が特異的に結合するか否かを決定するための方法は周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。
【0036】
「ストリンジェンシーハイブリダイゼーション」または「低ストリンジェンシー、中程度ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、または非常に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄についての条件を記載するように本明細書において用いられる。ハイブリダイゼーション反応を行うためのガイダンスは、参照により組み入れられる、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見出すことができる。水性および非水性方法が文献に記載されており、いずれを用いることもできる。本明細書において意味する特異的なハイブリダイゼーション条件は以下のものである。1)約45℃における6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、続いて、少なくとも50℃における0.2×SSC、0.1%SDSにおける2回の洗浄での低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件(洗浄の温度は低ストリンジェンシー条件では55℃まで上昇させることができる);2)約45℃における6×SSC、続いての、60℃における0.2×SSC、0.1%SDSにおける1回または複数回の洗浄における中程度ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;3)約45℃における6×SSC、続いての、65℃における0.2×SSC、0.1%SDSでの1回または複数回の洗浄での高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;および好ましくは4)非常に高いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は65℃における0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS、続いての、65℃における0.2×SSC、1%SDSでの1回または複数回の洗浄である。非常に高いストリンジェンシー条件(4)は好ましい条件であって、特記しない限り、用いるべきものである。配列の間における相同性または配列同一性(該用語は本明細書においては相互交換的に用いる)の計算は以下のように行われる。
【0037】
2つのアミノ酸配列の、または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(例えば、ギャップを第一および第二のアミノ酸の一方または双方に導入することができ、あるいは最適な整列および非相同配列のための核酸配列は比較目的では無視することができる)。好ましい態様において、比較目的で整列させる参照配列の長さは参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、なおより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列中の位置が第二の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められれば、該分子はその位置において同一である。
【0038】
2つの配列の間のパーセント同一性は該配列によって共有される同一位置の数の関数であり、2つの配列の間のパーセント相同性は配列によって共有される保存された位置の数の関数であり、2つの配列の最適な整列のために導入される必要がある、ギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れる。配列の比較、および2つの配列の間のパーセント同一性および/または相同性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。好ましい態様において、2つのアミノ酸配列の間のパーセント同一性は、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6または4のギャップ重みおよび1、2、3、4、5または6の長さの重みを用い、(延長gcg.comを有する世界的なウェブから入手可能な)GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムに導入されているNeedlemanおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)を用いて決定される。なおもう1つの好ましい態様において、2つのヌクレオチド配列の間のパーセント同一性は、NWSgapdna CMPマトリックスならびに40、50、60、70または80のギャップの重み、1、2、3、4、5または6の長さの重みを用い、(延長gcg.comを有する世界的なウェブで入手可能な)GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて決定される。パラメーターの特に好ましい組(および特記しない限り用いるべきもの)は、12のギャップペナルティー、4のギャップ延長ペナルティー、および5のフレームシフトギャップペナルティーを有するBlossum 62スコアリングマトリックスである。
【0039】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の間のパーセント同一性および/または相同性は、PAM120重み残基表、12のギャップ長さペナルティーおよび4のギャップペナルティーを用い、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り込まれているE.MeyersおよびW.Miller((1989) CABIOS, 4:11-17)のアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0040】
「処置する」は対象における障害または疾患のいずれかの治療、または予防または阻害を意味するように本明細書において用いられ、その例として、(a)疾患または障害の素因であり得るが、それを有すると未だ診断されていない対象で疾患または障害が起こるのを妨げること;(b)疾患または障害を阻害し、すなわち、その進行を阻止すること;または(c)疾患または障害を救済し、または軽減すること、すなわち、緩解を引き起こすことを含む。従って、本明細書において用いる処置することは、例えば、外科的処置の前に、損傷を防止するための、障害または予防的処置の部位における損傷したまたは障害を受けた組織または細胞の修復および再生を含む。
【0041】
本明細書において用いる「ベクター」は、それが機能的に連結されているもう1つの核酸を輸送することができる核酸分子をいい、プラスミド、コスミドまたはウイルスベクターを含むことができる。好ましいベクターの1つのタイプはエピソーム、すなわち、染色体外複製が可能である核酸である。好ましいベクターは、それらが連結された核酸の自律複製および/または発現が可能なものである。ベクターは、それらが機能的に連結された遺伝子の発現を指令することができる。また、ベクターは宿主DNAに組み込むことができる。本明細書においては、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミド(二本鎖DNAの環状配置)はベクターの最も普通に用いられる形態であるように相互交換的に用いられる。しかしながら、本発明は、同等な機能を果たし、引き続いて当技術分野において公知になるベクターのそのような他の形態を含むことを意図する。ウイルスベクターは、例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスを含む。
【0042】
6.2 天然IgM抗体
本発明は、部分的には、天然免疫グロブリン(Ig)、特に天然IgMの同定に基づく。あるIgMは、American Type Culture Collectionに寄託され、受託番号PTA-3507が与えられたハイブリドーマから得ることができる。
【0043】
ハイブリドーマPTA-3507、IgMCM-22(22A5 IgMともいう)から生産されたIgMの重鎖可変領域のヌクレオチド配列を図1Aに示し(SEQ ID NO:1)、アミノ酸配列を図1Bに示す(SEQ ID NO:2)。重鎖可変領域のCDR1ドメインはSEQ ID NO:2のアミノ酸31〜35に対応し(SEQ ID NO:4)、これはSEQ ID NO:1のヌクレオチド91-105(SEQ ID NO:3)によってコードされ、重鎖可変領域のCDR2ドメインはSEQ ID NO:2のアミノ酸50〜66(SEQ ID NO:6)に対応し、これはSEQ ID NO:1のヌクレオチド148〜198(SEQ ID NO:5)によってコードされる。
【0044】
IgMCM-22の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列は図2Aに示され(SEQ ID NO:7)、アミノ酸配列は図2Bに示される(SEQ ID NO:8)。軽鎖可変領域のCDR1ドメインはSEQ ID NO:8のアミノ酸23〜37(SEQ ID NO:10)に対応し、これはSEQ ID NO:7のヌクレオチド67〜111(SEQ ID NO:9)によってコードされ、軽鎖可変領域のCDR2ドメインはSEQ ID NO:8のアミノ酸53〜59(SEQ ID NO:12)に対応し、これはSEQ ID NO:7のヌクレオチド157〜177(SEQ ID NO:11)によってコードされる。遺伝子暗号の縮重のため、他のヌクレオチド配列は本明細書において列挙したアミノ酸配列をコードし得る。
【0045】
cDNA、ゲノムまたは混合物いずれかからの、しばしば、(修飾された制限部位などを除いた)天然配列における、本発明の核酸組成物は標準的技術に従って突然変異させることができる。コード配列については、これらの突然変異は要望どおりアミノ酸配列に影響し得る。特に、天然V、D、J、定常、スイッチおよび本明細書において記載された他のそのような配列と実質的に同一な、またはそれに由来するヌクレオチド配列が考えられる。
【0046】
例えば、単離された核酸は、図1Aに示されたヌクレオチド配列を有するIgMCM-22(または22A5 IgM)重鎖可変領域ヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)、またはSEQ ID NO:1に対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含むことができる。核酸分子はSEQ ID NO:3の重鎖CDR1ヌクレオチド配列、またはその部分を含むことができる。さらに、核酸分子はSEQ ID NO:5の重鎖CDR2ヌクレオチド配列、またはその部分を含むことができる。例示的な態様において、核酸分子はSEQ ID NO:3の重鎖CDR1ヌクレオチド配列、またはその部分、およびSEQ ID NO:5の重鎖CDR2ヌクレオチド配列、またはその部分を含む。本発明の核酸分子は重鎖配列、例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、またはその組合せを含むことができ、あるいはSEQ ID NO:1、3または5に対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%配列同一性を有するヌクレオチドを含むことができる。さらに、本発明の核酸分子は、ストリンジェントな条件、例えば、低、中程度、高または非常に高いストリンジェンシー条件下でSEQ ID NO:1、3または5にハイブリダイズする重鎖配列を含むことができる。
【0047】
もう1つの態様において、本発明は、重鎖ポリペプチド、例えば、SEQ ID NO:2、4または6の重鎖ポリペプチドをコードする核酸分子に対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%配列同一性を有する核酸分子を特徴とする。また、本発明は、天然抗体の重鎖可変領域またはその部分、例えば、SEQ ID NO:2、4または6の重鎖可変領域をコードする核酸配列にハイブリダイズする核酸分子を特徴とする。
【0048】
もう1つの態様において、単離された核酸は、図2Aに示されたヌクレオチド配列を有するIgMCM-22(22A5 IgM)軽鎖可変領域ヌクレオチド配列(SEQ ID NO:7)、またはSEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一である配列をコードする。該核酸分子はSEQ ID NO:9の軽鎖CDR1ヌクレオチド配列、またはその部分を含むことができる。もう1つの好ましい態様において、該核酸分子はSEQ ID NO:11の軽鎖CDR2ヌクレオチド配列、またはその部分を含むことができる。例示的な態様において、該核酸分子はSEQ ID NO:9の軽鎖CDR1ヌクレオチド配列、またはその部分、およびSEQ ID NO:11の軽鎖CDR2ヌクレオチド配列、またはその部分を含む。本発明の核酸分子は軽鎖配列、例えば、SEQ ID NO:7、9または11、またはその組合せを含むことができ、あるいはSEQ ID NO:7、9または11に対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%配列同一性を有するヌクレオチドを含むことができる。さらなる核酸分子は、ストリンジェントな条件、例えば、低、中程度、高または非常に高いストリンジェンシー条件下でSEQ ID NO:7、9または11にハイブリダイズする軽鎖配列を含むことができる。
【0049】
核酸分子は軽鎖ポリペプチド、例えば、SEQ ID NO:8、10、または12の軽鎖ポリペプチドをコードする核酸分子に対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有することができる。また、本発明は、天然抗体の軽鎖可変領域、またはその部分、例えば、SEQ ID NO:8、10または12の軽鎖可変領域をコードする核酸配列にハイブリダイズする核酸分子を特徴とする。
【0050】
もう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1ドメインをコードする単離された核酸、またはその断片または修飾形態を提供する。この核酸は、CDR1領域のみをコードすることができるか、あるいは全抗体重鎖可変領域またはその部分をコードすることができる。例えば、核酸は、SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインを有する重鎖可変領域をコードすることができる。なおもう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:6のアミノ酸を含む重鎖CDR2ドメインをコードする単離された核酸、またはその断片または修飾形態を提供する。この核酸はCDR2領域のみをコードすることができるか、あるいは全抗体重鎖可変領域またはその断片をコードすることができる。例えば、該核酸はSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメインを有する軽鎖可変領域をコードすることができる。
【0051】
なおもう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1ドメインをコードする単離された核酸、またはその断片または修飾形態を提供する。この核酸はCDR1領域のみをコードすることができるか、あるいは全抗体軽鎖可変領域をコードすることができる。例えば、該核酸はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインを有する軽鎖可変領域をコードすることができる。単離された核酸はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2ドメイン、またはその断片または修飾形態をコードすることもできる。この核酸はCDR2領域のみをコードすることができるか、あるいは全抗体軽鎖可変領域をコードすることができる。例えば、該核酸はSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR1ドメインを有する軽鎖可変領域をコードすることができる。
【0052】
重鎖または軽鎖可変領域をコードする核酸はネズミまたはヒト起源のものであり得、あるいはネズミおよびヒトアミノ酸配列の組合せを含むことができる。例えば、核酸はSEQ ID NO:2のCDR1(SEQ ID NO:4および/またはSEQ ID NO:2のCDR2(SEQ ID NO:6)を含む重鎖可変領域、およびヒトフレームワーク配列をコードすることができる。加えて、該核酸はSEQ ID NO:8のCDR1(SEQ ID NO:10)および/またはSEQ ID NO:8のCDR2(SEQ ID NO:12)を含む軽鎖可変領域、およびヒトフレームワーク配列をコードすることができる。本発明は、さらに、前記核酸を含有するベクター、および発現ベクターを含む宿主細胞を含む。
【0053】
また、本発明は、IgMCM-22重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のポリペプチドおよび断片を特徴とする。例示的な態様において、単離されたポリペプチドは、例えば、SEQ ID NO:8、10または12のアミノ酸配列、またはその断片または組合せ;またはSEQ ID NO:2、4または6、またはその断片または組合せを含む。本発明のポリペプチドは、SEQ ID NO:8、10、12、2、4または6とは異なる少なくとも、20、10、5、4、3、2または1以下のアミノ酸を有するポリペプチドを含む。例示的なポリペプチドは、生物学的活性、例えば、虚血特異性抗原に結合する能力、および/または補体に結合する能力を保有するポリペプチドである。もう1つの態様において、該ポリペプチドは、軽鎖可変領域、またはその部分、例えば、SEQ ID NO:8、10または12の軽鎖可変領域ポリペプチドに対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。もう1つの態様において、該ポリペプチドは、重鎖可変領域、またはその部分、例えば、SEQ ID NO:2、4または6の重鎖可変領域ポリペプチドに対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。もう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含み、さらにIRES配列を含むポリペプチドを特徴とする。
【0054】
6.3 天然IgM抗体の阻害剤
6.3.1 天然IgM抗体のペプチド阻害剤
本発明は、さらに、IgM阻害剤を特徴とする。1つの態様において、IgM阻害剤は、天然IgMに特異的に結合し、それにより、抗原に対する結合をブロックするペプチドである。そのようなペプチドは、限定されるものではないが、以下の表1に記載されたアスパラギン-リッチなペプチドを含むことができる。
【0055】
(表1)天然IgM抗体結合ペプチドのアミノ酸配列

【0056】
ペプチドは以下の表2に記載されたある種の「自己ペプチド」も含むことができる。
【0057】
(表2)自己ペプチドのアミノ酸配列

【0058】
実施例においてより詳しく記載するように、自己ペプチドは天然IgM抗体IgMCM-22に結合する。
【0059】
前記したポリペプチドに加えて、本発明は、その活性が当業者に周知の種々の方法を用いて同定しおよび/またはアッセイすることができる修飾されたペプチドを含む。例えば、IgMへのペプチドの結合は、以下に記載するもののような、生物学的アッセイ、ウェスタンブロッティング、免疫沈澱、または免疫細胞化学技術を用いて検出することができる。特に、修飾されたペプチドの生物学的活性(例えば、天然IgM抗体に結合する能力)はP8(SEQ ID NO:30)またはN2(SEQ ID NO:38)のそれに対して特徴付けすることができる。
【0060】
そのような修飾されたペプチドは、タンパク質の天然に生じる形態の少なくとも1つの活性を保有するように設計された場合、本明細書においてより詳細に記載されるペプチドの「機能的同等体」と考えられる。そのような修飾されたペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失または付加によって生産することができ、その置換は保存的アミノ酸置換によって全部または部分が構成できる。
【0061】
例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの、アスパルテートのグルタメートでの、スレオニンのセリンでの置換のような単離された保存的アミノ酸置換は、得られた分子の生物学的活性に対して主な効果を有さないであろうと予測するのは合理的である。ペプチドのアミノ酸配列の変化が機能的ホモログをもたらすか否かは、野生型ペプチドのそれと同様な応答を生じる変種ペプチドの能力(例えば、天然IgM抗体に結合する能力)を評価することによって容易に決定することができる。1より多い置換が起こったペプチドは、同様にして容易にテストすることができる。
【0062】
ペプチドの突然変異誘発は、対応する野生型ペプチドに対して改良されたインビボ半減期を有するホモログを生起させることができる。例えば、改変されたペプチドは、タンパク質分解、あるいはタンパク質の破壊または不活化をもたらす他の細胞プロセスに対してより安定とすることができる。
【0063】
ペプチドホモログの集団に対するアミノ酸配列を整列させて、好ましくは、可能な最高の相同性を促進することができる。変種のそのような集団は、例えば、一つまたは複数の種のホモログ、または同一の種からのものであるが、突然変異のため異なるホモログを含むことができる。整列された配列の各位置で出現するアミノ酸は、コンビナトリアル配列の縮重組を創製するように選択される。ある態様においては、コンビナトリアルライブラリーは、各々が潜在的ペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって生産される。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物は、潜在的ヌクレオチド配列の縮重組が個々のポリペプチドとして、または、より大きな融合タンパク質(例えば、ファージディスプレイ用)の組として発現可能なように、遺伝子配列に酵素的に連結することができる。
【0064】
潜在的ホモログのライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から創製することができる多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学的合成は自動DNAシンセサイザーで行うことができ、次いで、合成遺伝子を発現用の適当なベクターに連結することができる。遺伝子の縮重組の1つの目的は、1分以内に、潜在的ペプチド配列の所望の組をコードする配列の全てを提供することにある。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当技術分野において周知である(Narang,SA(1983) Tetrahedron 39:3;Itakura et al., (1981) Recombinant DNA, Proc.3rd Cleveland Sympos.Macromolecules, ed. AG Walton,Amsterdam:Elsevier pp.273-289;Itakura et al., (1984) Annu.Rev.Biochem.53:323; Itakura et al., (1984) Science 198:1056;Ike et al., (1983) Nucleic Acid Res.11:477参照)。そのような技術は他のタンパク質の向けられた進化で使用されてきた(例えば、Scott et al., (1990) Science 249:386-390;Roberts et al., (1992) PNAS USA 89:2429-2433;Devlin et al., (1990) Science 249:404-406;Cwirla et al., (1990) PNAS USA 87:6378-6382;ならびに米国特許第5,223,409号、第5,198,346号および第5,096,815号参照)。
【0065】
または、突然変異誘発の他の形態を利用して、コンビナトリアルライブラリーを創製することができる。例えば、ペプチドホモログは、例えば、アラニン走査突然変異誘発などを用いるスクリーニングによって(Ruf et al., (1994) Biochemistry 33:1565-1572;Wang et al., (1994) J.Biol.Chem.269:3095-3099;Balint et al., (1993) Gene 137:109-118;Grodberg et al., (1993) Eur.J.Biochem.218:597-601;Nagashima et al., (1993) J.Biol.Chem.268:2888-2892;Lowman et al., (1991) Biochemistry 30:10832-10838;およびCunningham et al., (1989) Science 244:1081-1085)、リンカー走査突然変異誘発によって(Gustin et al., (1993) Virology 193:653-660;Brown et al., (1992) Mol.Cell Biol.12:2644-2652;McKnight et al., (1982) Science 232:316)、飽和突然変異誘発によって(Meyers et al., (1986) Science 232:613);PCR突然変異誘発によって(Leung et al., (1989) Method Cell Mol.Biol.1:11-19);またはランダム突然変異誘発によって(Miller et al., (1992) A Short Course in Bacterial Genetics, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY;およびGreener et al., (1994) Strategies in Mol.Biol.7:32-34)、ライブラリーから創製し、単離することができる。
【0066】
広い範囲の技術が、点突然変異および切形によって作成されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、およびある種の特性(例えば、天然IgMの抗体に結合する能力)を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための当技術分野において公知である。そのような技術は、一般には、ペプチドホモログのコンビナトリアル突然変異誘発によって創製される遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適合されるであろう。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための最も広く用いられる技術は、典型的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローン化し、適当な細胞をベクターの得られたライブラリーで形質転換し、次いで、所望の活性の検出が、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を可能とする条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現させることを含む。以下に記載する例示的アッセイの各々は、コンビナトリアル突然変異誘発技術によって創製された非常に多数の縮重配列をスクリーニングする必要がある高スループット分析に使用できる。
【0067】
スクリーニングアッセイの例示的な態様において、候補コンビナトリアル遺伝子産物を、IgMまたはその部分のような、それに結合性タンパク質を付着させたビーズを含有するカラムに通す。カラムに保持された候補コンビナトリアル遺伝子産物は、天然IgM抗体結合をブロックし、炎症性疾患を治療するに有用なように、IgMへの結合についてさらに特徴付けすることができる。
【0068】
もう1つの例において、遺伝子ライブラリーはウイルス粒子の表面で融合タンパク質として発現され得る。例えば、繊維状ファージ系においては、外来性ペプチド配列は感染性ファージの表面で発現でき、それにより、2つの利点を付与する。まず、これらのファージは非常に高い濃度でアフィニティーマトリックスに適用することができるので、非常に多数のファージを一度にスクリーニングすることができる。第二に、各感染性ファージはその表面にコンビナトリアル遺伝子産物を提示するので、特定のファージが低い収率でアフィニティーマトリックスから回収されれば、該ファージはもう1つのラウンドの感染によって増幅させることができる。最も同一の大腸菌(E.coli)繊維状ファージM13、fd、およびflの群は、ファージディスプレイライブラリーで最もしばしば使用される。というのは、ファージgIIIまたはgVIIIコートタンパク質のいずれかを用いて、ウイルス粒子の最終的なパッケージングを破壊することなく融合タンパク質を創製することができるからである(Ladner et al.,PCT公開WO 90/02909;Garrard et al., PCT公開WO 92/09690;Marks et al., (1992) J.Biol.Chem.267:16007-16010;Griffiths et al., (1993) EMBO J.12:725-734;Clackson et al., (1991) Nature 352:624-628;およびBarbas et al., (1992) PNAS USA 89:4457-4461)。他のファージコートタンパク質は適切に用いることができる。
【0069】
また、本発明は、真性ペプチドの天然IgM抗体への結合を模倣することができるミメティックス(例えば、非ペプチド剤)を提供する。例えば、天然IgM抗体の分子認識に関与するペプチドの臨界的残基を決定し、これを用いて、天然IgM抗体に結合するペプチドミメティックスを創製することができる。次いで、天然IgM抗体に結合させ、野生型タンパク質との相互作用に必要な臨界的残基を被覆し、それにより、該タンパク質および天然IgM抗体の相互作用を妨げることによって、ペプチドミメティックを野生型タンパク質の阻害剤として用いることができる。天然IgM抗体への結合における残基を模倣するペプチドミメティック化合物を創製することができる。例えば、そのような残基の非加水分解可能ペプチドアナログは、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidinger et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.R.Marshall ed., ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988参照)、アゼピン(例えば、Huffman et al., in Peptides:Chemistry and Biology, G.R.Marshall eds, ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988参照)、置換されたガンマラクタム環(Garvey et al., in Peptides:Chemistry and Biology, G.R.Marshall ed., ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988参照)、ケト-メチレンプソイドペプチド(Ewenson et al., (1986) J.Med.Chem.29:295;およびEwenson et al., in Peptides:Structure and Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium) Pierce Chemical Co.Rockland,IL,1985)、β-ターンジペプチドコア(Nagai et al., (1985) Tetrahedron Lett 26:647;およびSato et al., (1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、およびβ-アミノアルコール(Gordon et al., (1985) Biochem Biophys Res Commun 126:419;およびDann et al., (1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71)を用いて創製することができる。
【0070】
6.3.2 ペプチド阻害剤をコードする核酸
本発明は、前記したペプチドをコードする核酸も特徴とする。例示的な核酸は表3に提供する。
【0071】
(表3)天然IgM抗体結合ペプチドをコードする核酸

【0072】
表3における単離された核酸は遺伝子暗号における縮重を反映する。特に、「R」はAまたはGであり得る塩基に対応し、「S」はGまたはCであり得る塩基に対応し、「V」はA、CまたはGであり得る塩基に対応し、「Y」はCまたはTであり得る塩基に対応し、「W」はAまたはTであり得る塩基に対応し、「D」はA、GまたはTであり得る塩基に対応し、「M」はAまたはCであり得る塩基に対応し、「H」はA、CまたはTであり得る塩基に対応し、「N」はA、C、GまたはTであり得る塩基に対応し、「K」はGまたはTであり得る塩基に対応し、および「B」はC、GまたはTであり得る塩基に対応する。
【0073】
本タンパク質のアミノ酸配列の変化に導くDNA配列多形は哺乳動物細胞の間で存在すると予測される。当業者であれば、本発明の特定のペプチドをコードする核酸の一つまたは複数のヌクレオチド(ヌクレオチドの1%未満から約3〜5%、またはおそらくはそれ以上)におけるこれらの変動が、天然対立遺伝子変動のため所与の種の個体の間で存在し得ることを認識するであろう。いずれかおよび全てのそのようなヌクレオチド変動および結果としてのアミノ酸多形は本発明の範囲内である。好ましい核酸は、SEQ ID NO:14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38のアミノ酸配列に対して少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%以上相同であるペプチド、あるいは本発明のもう1つのペプチドをコードする。本発明のペプチドの活性を有し、かつSEQ ID NO:14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38に対して少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%以上の相同性を有するペプチド、または本発明のもう1つのペプチドをコードするヌクレオチドもやはり本発明の範囲内のものである。
【0074】
単一種における遺伝子内でのコドン選択の偏りは、その遺伝子によってコードされるタンパク質の発現のレベルに関連して出現する。従って、本発明は、核酸配列におけるコドン用法の頻度を改変して、宿主細胞の好ましいコドン用法の頻度に近づけることによって、宿主細胞における改良された発現に最適化させた核酸配列を含む。コドン縮重のため、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響することなくヌクレオチド配列を最適化するのが可能である。従って、本発明は、SEQ ID NO:14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38に記載されたペプチド、または本発明の他のペプチドをコードするいずれのヌクレオチド配列にも関する。
【0075】
本発明の範囲内にある核酸は、リンカー配列、修飾された制限エンドヌクレアーゼ部位、およびそのような組換えポリペプチドの分子クローニング、発現または精製で有用な他の配列も含むこともできる。
【0076】
本発明のペプチドをコードする核酸は、本明細書において記載されたプロトコル、ならびに当業者に一般的に公知のプロトコルに従って、いずれかの生物からのmRNAまたはゲノムDNAから得ることができる。本発明のペプチドをコードするcDNAは、例えば、生物、例えば、細菌、ウイルス、哺乳動物などからの全mRNAを単離することによって得ることができる。次いで、二本鎖cDNAは、全mRNAから調製することができ、引き続いて、多数の公知の技術のいずれか1つを用いて適当なプラスミドまたはバクテリオファージベクターに挿入することができる。本発明のペプチドをコードする遺伝子は、本発明によって提供されるヌクレオチド配列の情報に従って、確立されたポリメラーゼ鎖反応技術を用いてクローン化することもできる。
【0077】
本発明のもう1つの局面において、本核酸は、本発明のペプチドをコードし、かつ少なくとも1つの調節配列に機能的に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクター中で提供される。発現ベクターの設計は、形質転換すべき宿主細胞の選択および/または発現させるべき所望のタイプのような因子に依存し得ることは理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力および抗体マーカーのようなベクターによってコードされるいずれかの他のタンパク質の発現も考慮すべきである。
【0078】
明らかなように、本遺伝子構築体を用いて、培養で増殖させた細胞における本発明のペプチドの発現を引き起こし、例えば、精製のために、融合タンパク質またはポリペプチドを含むタンパク質またはポリペプチドを生産することができる。
【0079】
また、本発明は、本発明のペプチドを発現させるための組換え遺伝子でトランスフェクトされた宿主細胞に関する。宿主細胞はいずれの原核生物または真核生物細胞であってもよい。例えば、本発明のポリペプチドは、大腸菌、昆虫細胞(バキュロウイルス)酵母、または哺乳動物細胞のような細菌細胞で発現させることができる。他の適当な宿主細胞は当業者に公知である。加えて、宿主細胞は該宿主では典型的には見出されないtRNA分子を補足して、ペプチドの発現を最適化することができる。ペプチドの発現を最大化するのに適した他の方法は当業者に公知であろう。
【0080】
6.3.3 ペプチド阻害剤を生産する方法
ペプチド阻害剤は、例えば、化学的に、無細胞系にてリボソームにより、細胞内でリボソームにより合成することができる。本発明のペプチドの化学合成は、段階的固相合成、ペプチド断片の立体配座援助再連結を介する半合成、クローン化されたまたは合成ペプチドセグメントの酵素連結、および化学的連結を含む種々の当技術分野において認められた方法を用いて行われることができる。Merrifield et al.in J.Am.Chem.Soc.,Volume 85,page 2149(1964)、Houghten et al.in Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Volume 82,page 5132(1985)、およびStewart and Young in Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce Chem.Co,Rockford,III.(1984)。天然の化学的連結は、一過性チオエステル連結中間体を生じさせるために、2つの未保護ペプチドセグメントの化学選択的反応を使用する。次いで、一過的チオエステル連結中間体は自然発生的に再編成を受けて、連結部位において天然ペプチド結合を有する全長連結産物を得る。全長連結産物は無細胞合成によって生じたタンパク質と化学的に同一である。全長連結産物は、許容されれば、再度折り畳まれ、および/または酸化されて、天然ジスルフィド含有タンパク質分子を形成することができる(例えば、米国特許第6,184,344号および第6,174,530号;およびT.W.Muir et al.,Curr.Opin.Biotech.(1993):vol.4,p. 420;M.Miller, et al.,Science (1989):vol.246,p1149;A.Wlodawer,et al.,Science (1989):vol.245,p.616;L.H.Huang,et al.,Biochemistry (1991):vol.30,p. 7402;M.Schnolzer.,et al.,Int.J.Pept.Prot.Res.(1992):vol.40,p. 180-193;K.Rajarathnam, et al.,Science (1994):vol.264,p.90;R.E.Offord,「Chemical Approaches to Protein Engineering」, in Protein Design and the Development of New Therapeutics and Vaccines, J.B.Hook, G.Poste eds.,(Plenum Press, New York, 1990)pp.253-282;C.J.A.Wallace,et al.,J.Biol.Chem.(1992);vol.267,p. 3852;L.Abrahmsen,et al.,Biochemistry(1991):vol.30,p 4151;T.K.Chang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:12544-12548;M.Schnlzer,et al.,Science (1992):vol.,3256,p 221;およびK.Akaji, et al.,Chem.Pharm.Bull.(Tokyo)(1985)33:184参照)。
【0081】
もう1つの変形において、ペプチドの製造は、インビトロ翻訳システムを用いて達成することができる。インビトロ翻訳システムは、一般には、RNA分子のタンパク質への翻訳に必要な少なくとも最小限のエレメントを含有する無細胞抽出物である翻訳システムである。インビトロ翻訳システムは、典型的には、少なくともリボソーム、tRNA、開始剤メチオニル-tRNA Met、翻訳に関与するタンパク質または複合体、例えば、eIF2、eIF3、キャップ結合タンパク質(CBP)および真核生物開始因子4F(eIF4F)を含むキャップ結合(CB)複合体を含む。種々のインビトロ翻訳システムが当業者に周知であり、これは、市販されているキットを含む。インビトロ翻訳システムの例はウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵母細胞溶解物、ヒト細胞溶解物、昆虫細胞溶解物および小麦胚芽抽出物のような真核生物溶解物を含む。溶解物はPromega Corp.,Madison,Wis;Stratagene,La Jolla,Calif.;Amersham,Arlington Hights,Ill。;およびGIBCO/BRL,Grand Island,N.Y.のような製造業者から商業的に入手可能である。インビトロ翻訳システムは、典型的には、酵素、翻訳、開始および延長因子、化学試薬、およびリボソームのような高分子を含む。加えて、インビトロ翻訳システムを用いることができる。そのようなシステムは、典型的には、少なくともRNAポリメラーゼホロ酵素、リボヌクレオチドおよびいずれかの必要な転写開始、延長および終止因子を含む。インビトロ転写および翻訳は同一反応内で行って、一つまたは複数の単離されたDNAからペプチドを生じさせることができる。
【0082】
ペプチド阻害剤をコードする核酸は、適当な宿主細胞へのDNA導入によってインビトロにて発現させることができる。ペプチドをコードする核酸を、プラスミド、ウイルス、または天然抗体結合ペプチド遺伝子配列の挿入または組込みによって操作されている当技術分野において公知の他のビヒクルのようなベクターに挿入することによって、ペプチドの発現を促進することができる。そのようなベクターは、宿主の挿入された遺伝子配列の効果的な転写を容易とするプロモーター配列を含有する。ベクターは、典型的には、複製起点、プロモーター、ならびに形質転換された細胞の表現型選択を可能とする特異的遺伝子を含有する。本発明で用いるのに適したベクターは、限定されるものではないが、細菌での発現用のT7ベースの発現ベクター(Rosenberg, et al.,Gene,56:125,1987),哺乳動物細胞での発現用のpMSXND発現ベクター(Lee and Nathans,J.Biol.Chem.,263:3521,1988),および昆虫細胞での発現用のバキュロウイルス由来ベクターを含む。DNAセグメントは、調節エレメント、例えば、プロモーター(例えば、T7、メタロチオネインI、またはポリヘドリンプロモーター)に機能的に連結されたベクターに存在させることができる。
【0083】
ペプチド阻害剤をコードする核酸は原核生物または真核生物いずれかで発現させることができる。宿主は微生物、酵母、昆虫および哺乳動物生物を含むことができる。原核生物において真核生物またはウイルス配列を有するDNA配列を発現させる方法は当技術分野において周知である。宿主における発現および複製が可能な生物学的に機能的なウイルスおよびプラスミドDNAベクターは当技術分野において公知である。そのようなベクターは本発明のDNA配列を取り込むことができる。当業者に周知の方法を用いて、天然抗体結合性ペプチドをコードする配列および適当な転写/翻訳制御シグナルを含有するベクターを構築することができる。これらの方法はインビボ組換えDNA技術、合成技術、およびインビトロ組換え/遺伝子技術を含む(例えば、Maniatis et al.,1989 Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.に記載された技術参照)。
【0084】
種々の宿主-発現ベクター系を利用することができる。これらは、限定されるものではないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌;組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させた、または組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;または組換えウイルス発現ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)で感染させた動物細胞系、または安定な発現用に作成された形質転換動物細胞系を含む。
【0085】
利用する宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含む多数の適当な転写および翻訳エレメントのいずれかを発現ベクターで用いることができる(例えば、Bitter et al.,1987,Methods in Enzymology 153:516-544参照)。例えば、細菌系でクローニングする場合、バクテリオファージγのpL、plac、ptrp,ptac(ptrp-lacハイブリットプロモーター)などのような誘導性プロモーターを用いることができる。哺乳動物細胞系においてクローニングする場合、哺乳動物細胞のゲノムに(例えば、メタロチオネインプロモーター)、または哺乳動物ウイルスに(例えば、レトロウイルスロングターミナルリピート;アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)由来するプロモーターを用いることができる。組換えDNAまたは合成技術によって生じたプロモーターも用いることができる。
【0086】
酵母においては、構成的または誘導性プロモーターを含む多数のベクターを用いることができる。レビューについては、Current Protocols in Molecular Biology,Vol.2,1988,Ed.Ausubel et al.,Greene Publish.Assoc.& Wiley Interscience, Ch.13;Grant et al.,1987,Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology, Eds.Wu & Grossman,31987,Acad.Pres, N.Y.,Vol.153,pp.516-544;Glover,1986,DNA Cloning,Vol.II,IRL Press,Wash.,D.C.,Ch.3;およびBitter,1987,Heterologous Gene Expression in Yeast, Methods in Enzymology, Eds.Berger & Kimmel,Acad.Press,N.Y.,Vol.152,pp.673-684;およびThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces,1982,Eds.Strathern et al.,Cold Spring Harbor Press, Vols.I and II参照。ADHまたはLEU2のような構成的酵母プロモーターまたはGALのような誘導性プロモーターを用いることができる(Cloning in Yeast, Ch.3,R.Rothstein In:DNA Cloning Vol.11,A Practical Approach, Ed.D M Glover,1986,IRL Press, Wash.,D.C.)。または、外来性DNA配列の酵母染色体への組込みを促進するベクターを用いることができる。
【0087】
真核生物系および、好ましくは、哺乳動物発現系は、発現された哺乳動物タンパク質の適切な翻訳後修飾が起こるのを可能とする。一次転写体の適切なプロッセッシング、グリコシル化、リン酸化および、有利には、遺伝子産物の原形質膜挿入のための細胞機構を保有する真核生物細胞を宿主細胞として用いることができる。
【0088】
発現を指令するのに組換えウイルスまたはウイルスエレメントを利用する哺乳動物細胞系を作成することができる。例えば、アデノウイルス発現ベクターを用いる場合、天然抗体結合性ペプチドコードをアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三部リーダー配列に連結することができる。または、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを用いることができる(例えば、Mackett et al.,1982,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:7415-7419;Mackett et al.,1984,J.Virol.49:857-864;Panicali et al.,1982,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:4927-4931参照)。特に関心対象は、染色体外エレメントとして複製される能力を有するウシパピローマウイルスに基づくベクターである(Sarver,et al.,1981,Mol.Cell.Biol.1:486)。このDNAのマウス細胞への進入後まもなく、プラスミドは細胞当たり約100〜200コピーまで複製される。挿入されたcDNAの転写は、プラスミドの宿主の染色体への挿入を必要とせず、それにより、高レベルの発現を生じる。これらのベクターは、例えば、neo遺伝子のような選択マーカーをプラスミドに含めることによって安定な発現で用いることができる。または、レトロウイルスゲノムを、宿主細胞における天然抗体結合性ペプチド遺伝子の発現を導入し、それを指令できるベクターとして用いるために修飾することができる(Cone & Mulligan,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6349-6353)。また、限定されるものではないが、メタロチオネインIIAプロモーターおよび熱ショックプロモーターを含む誘導性プロモーターを用いて、高レベルの発現を達成することができる。
【0089】
長期の組換えタンパク質の高収率生産のためには、安定な発現が好ましい。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを用いるよりはむしろ、宿主細胞を、適当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)によって制御されるcDNA、および選択マーカーで形質転換することができる。組換えプラスミドにおいて選択可能なマーカーは選択に対する耐性を付与し、細胞がその染色体にプラスミドが安定に組み込まれるのを可能とし、かつ細胞系にクローン化し、拡大培養することができるフォーカスを形成するように増殖させるのを可能とする。例えば、外来性DNAの導入に続き、作成された細胞を豊富化された培地中で1〜2日増殖させることが可能であり、次いで、選択培地にスイッチさせる。限定されるものではないが、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wigler,et al.,1977,Cell 11:223)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,1962,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026)を含む多数の選択系を用いることができ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy,et al.,1980,Cell 22:817)遺伝子を、各々,tk-、hgprt-またはaprt-細胞で使用することができる。また、抗代謝産物耐性は、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfrについての(Wigler,et al.,1980,Natl.Acad.Sci.USA 77:3567;O’Hare,et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg,1981,Proc.Natl.Acad. Sci. USA 78:2072);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Colberre-Garapin,et al.,1981,J.Mol.Biol.150:1);およびヒグロマイシン(Santerre,et al.,1984,Gene 30:147)遺伝子に対する耐性を付与するHygroについての選択の基礎として用いることができる。さらなる選択可能な遺伝子は、トリプトファンの代わりにインドールを細胞が利用できるようにするtrpB;ヒスチジンの代わりに細胞がヒスチノールを利用するのを可能とするhisD(Hartman & Mulligan,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8047);およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMO(McConlogue L.,1987,In:Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)に対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)を含む。
【0090】
安定な組換え細胞系では、適当な細胞型が、限定されるものではないが、以下の型の細胞を含む:NIH 3T3(ネズミ)、C2C12、L6、およびP19。C2C12およびL6筋芽細胞は培養中に自然発生的に分化し、特定の増殖条件に依存して筋管を形成する(Yaffe and Saxel, 1977;Yaffe,1968)。P19は胚性癌腫細胞系である。そのような細胞は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)の細胞系カタログに記載されている。これらの細胞は当業者に公知の方法によって安定に形質転換することができる。例えば、Ausubel et al., Introduction of DNA Into Mammalian Cells, in CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, sections 9.5.1-9.5.6(John Wiley & Sons,Inc.1995)参照。本発明の文脈での「安定な」形質転換は、細胞が、少なくとも50回の分裂を経由した程度まで不滅であることを意味する。
【0091】
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈殿のようなDNAのトランスフェクションの方法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム、またはウイルスベクターに包まれたプラスミドの挿入のような慣用的な機械的手法を用いることができる。真核生物を、天然抗体結合性ペプチドをコードするDNA配列、および単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子のような選択可能な表現型をコードする第二の外来性DNA分子で共形質転換することもできる。もう1つの方法は、シミアンウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスのような真核生物ウイルスベクターを用い、真核生物細胞を一過的に感染させ、または形質転換させ、タンパク質を発現させることである(例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory,Gluzman、ed.,1982参照)。
【0092】
天然抗体と相互作用させるために、または単離および精製のために、天然抗体結合性タンパク質は宿主細胞から分泌される必要がある。従って、シグナル配列を用いて、それがそこで合成される宿主細胞から外へペプチドを指令することができる。典型的には、シグナル配列は、核酸配列のコーディング領域に、あるいはコーディング領域の5末端に直接位置する。多くのシグナル配列が同定されており、選択された宿主において機能的ないずれも用いることができる。従って、シグナル配列は該ポリペプチドに対して同種または異種であってよい。加えて、当技術分野において周知の組換えDNA技術を用いてシグナル配列を化学的に合成することができる。
【0093】
宿主細胞で生産されたペプチドの量は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて評価することができる。そのような方法は、非限定的に、ウェスタンブロット分析、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、非変性ゲル電気泳動、HPLC分離、免疫沈澱、および/またはDNA結合ゲルシフトアッセイのような活性アッセイを含む。
【0094】
天然抗体結合性ペプチドは宿主細胞から分泌される場合、ペプチドの大部分は細胞培養基から見出される可能性が高い。しかしならが、ペプチドが分泌されないならば、それは(真核生物、グラム陽性菌および昆虫宿主細胞では)、細胞質にあるいは(グラム陰性菌宿主細胞では)ペリプラズムに存在する。
【0095】
天然抗体結合性ペプチドが細胞内空間に留まれば、宿主細胞は、典型的には、まず機械的にまたは浸透圧により破壊して、細胞質の内容物を緩衝溶液に放出させる。次いで、この溶液からペプチドを単離する。その後、溶液からのペプチドの精製は、種々の技術を用いて達成することができる。ペプチドが、それがヘキサヒスチジンまたは他の小さなペプチドのようなタグをそのカルボキシルまたはアミノ末端のいずれかに含有するように合成されたならば、それは溶液をアフィニティーカラムを通すことによって一工程プロセスで精製することができ、ここに、カラムマトリックスはタグに対して、または直接的にペプチド(すなわち、モノクローナル抗体)に対して高い親和性を有する。例えば、ポリヒスチジンは大きな親和性およびニッケルに対する特異性によって結合し、従って、(Qiagenニッケルカラムのような)ニッケルのアフィニティーカラムを精製で用いることができる。(例えば、Ausubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York、1994参照)。
【0096】
他方、ペプチドがタグを有さず、ペプチドを精製するのに抗体を用いるのが現実的でない場合、精製用の他の周知の手法を用いることができる。そのような手法は、非限定的に、イオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、HPLC、ゲル溶出と組み合わせた天然ゲル電気泳動、および分取用等電点電気泳動を含む(「Isoprime」 machine/technique,Hoefer Scientific)。いくつかの場合、これらの技術の2以上を組み合わせて、増大した純度を達成することができる。
【0097】
ペプチドが細菌のペリプラズム空間または真核生物細胞の細胞質に主として見出されると予測するならば、封入体(例えば、グラム陰性菌)を含むペリプラズムまたは細胞質の内容物は、プロセッシングされたペプチドがそのような複合体を形成するならば、当業者に公知のいずれかの標準的技術を用いて宿主細胞から抽出することができる。例えば、宿主細胞を溶解させて、Frenchプレス、ホモゲナイゼーションおよび/または音波処理の使用によってペリプラズムの内容物を放出させることができる。次いで、ホモジネートを遠心することができる。
【0098】
6.3.4 天然IgM抗体の抗体阻害剤
IgM阻害剤は、抗原に結合する天然IgMと競合する抗体でもあり得る。抗体を生産する方法は当技術分野において周知である。例えば、標的(例えば、細胞上の病原性免疫グロブリンまたは虚血特異性抗原)に対するモノクローナル抗体は、慣用的モノクローナル抗体技術、例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む種々の技術によって生産することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手法は好ましいが、原理的には、モノクローナル抗体を生産するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルスまたは癌遺伝子形質転換を使用することができる。ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系はネズミ系である。マウスにおけるハイブリドーマ生産は非常によく確立された手法である。融合用の免疫化脾臓細胞の単離のための免疫化プロトコルおよび技術は当技術分野において公知である。融合パートナー(例えば、ネズミ骨髄細胞)および融合手法も公知である。
【0099】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリン遺伝子よりはむしろヒト免疫グロブリン遺伝子を運ぶトランスジェニックマウスを用いて創製することができる。対象となる抗原で免疫化されたこれらのトランスジェニックマウスからの脾臓細胞を用いて、ヒトタンパク質からのエピトープに対する特異的親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを生産する(例えば、Wood et al.,国際出願WO 91/00906、Kucherl apati et al., PCT公開WO 91/10741;Lonberg et al.,国際出願WO 92/03918;Kay et al.,国際出願92/03917;Lonberg,N.et al.,1994 Nature 3 68:856-859;Green,L.L.et al.,1994 Nature Genet.7:13-21;Morrison,S.L.et al.,1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855;Bruggeman et al.,1993 Year Immuno.17:33-40;Tuaillon et al.,1993 PNAS 90:3720-3724;Bruggeman et al.,1991 Eur.J.Immunol.21:1323-1326参照)。1つの態様において、ハイブリドーマはヒトCD5+、B-1細胞から創製することができる。または、交差反応性「虚血抗原」を認識する「ヒト化」ネズミハイブリドーマを用いることができる。
【0100】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA技術の当業者に公知の他の方法によって創製することもできる。「コンビナトリアル抗体ディスプレイ」方法と言われる別の方法は、特定の抗原特異性を有する抗体断片を同定し、単離するために開発され、これを利用して、モノクローナル抗体を生産することができる(コンビナトリアル抗体ディスプレイの記載については、例えば、Sastry et al.1989 PNAS 86:5,728;Huse et al.,1989 Science 246:1275;およびOrlandi et al.,1989 PNAS 86:3833参照)。前記したように、免疫原で動物を免疫化した後、得られたB細胞プールの抗体レパートリーをクローン化する。オリゴマープライマーおよびPCRの混合物を用いることによって免疫グロブリン分子の多様な集団の可変領域のDNA配列を得るための方法は一般的に公知である。例えば、5’リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列に対応する混合オリゴヌクレオチドプライマーならびに保存された3'常領域プライマーに対するプライマーを、多数のネズミ抗体からの重鎖および軽鎖可変領域のPCR増幅で用いることができる(Larrick et al.,1991,Biotechniques11:152-156)。同様な戦略を用いて、ヒト抗体からのヒト重鎖および軽鎖可変領域を増幅することもできる(Larrick et al.,1991,Methods:Companion to Methods in Enzymology 2:106-110)。
【0101】
例示的な態様において、RNAはBリンパ球、例えば、末梢血液細胞、骨髄細胞、または脾臓調製物から標準的なプロトコルを用いて単離される(例えば、米国特許第4,683,202号;Orlandi,et al.PNAS(1989)86:3833-3837;Sastry et al.,PNAS(1989)86:5728-5732およびHuse et al.(1989) Science 246:1275-1281)。第一ストランドのcDNAは、重鎖およびκおよびλ軽鎖の各々の定常領域に特異的なプライマー、ならびにシグナル配列のためのプライマーを用いて合成される。可変領域PCRプライマーを用い、重鎖および軽鎖の双方の可変領域を増幅し、各々単独で、組み合わせて、ディスプレイパッケージを創製するにおいて、さらなる操作用の適当なベクターに連結する。増幅プロトコルで有用なオリゴヌクレオチドプライマーはユニークであるかまたは縮重していてもよく、または縮重位置においてイノシンを取り込んでもよい。制限エンドヌクレアーゼ認識配列をプライマーに取り込んで、発現のために所定のリーディングフレームにて増幅された断片のベクターへのクローニングを可能とすることもできる。
【0102】
免疫化由来抗体レパートリーからクローン化されたV-遺伝子ライブラリーは、好ましくは、繊維状ファージに由来するディスプレイパッケージの集団によって発現させて、抗体ディスプレイライブラリーを形成することができる。理想的には、ディスプレイパッケージは、非常に大きな多様な抗体ディスプレイライブラリーのサンプリング、各アフィニティー分離ラウンド後の迅速なソーティング、および精製されたディスプレイパッケージからの抗体遺伝子のいずれかの単離を可能とする系を含む。ファージディスプレイライブラリーを創生するための市販されているキットに加え(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System,カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAPTMファージディスプレイキット、カタログ番号240612)、多様な抗体ディスプレイライブラリーを創製するのに用いられる特に使用できる方法および試薬の例は、例えば、Ladner et al.,米国特許第5,223,409号;Kang et al.,国際公開番号WO 92/18619;Dower et al.国際公開番号WO 91/17271;Winter et al.国際公開WO 92/20791;Markland et al.,国際公開番号WO 92/15679;Breitling et al.,国際公開番号WO 93/01288;McCafferty et al.,国際公開番号WO/92 01047号Garrard et al.,国際公開番号WO 92/09690;Ladner et al.,国際公開番号WO 90/02809;Fuchs et al.,(1991) Bio/Technology 9:1370-1372;Hay et al.,(1992) Human Antibody Hybridomas 3:81-85;Huse et al.,(1989) Science 246:1275-1281;Griffths et al.,(1993) EMBO J 12:725-734;Hawkins et al.,(1992) J.Mol.Biol.226:889-896;Clackson et al.,(1991) Nature 352:624-628;Gram et al.,(1992) PNAS 89:3576-3580;Garrad et al.,(1991) Bio/Technology9:1373-1377;Hoogenboom et al.,(1991) Nuc.Acid Res.19:4133-4137;およびBarbas et al.,(1991) PNAS 88:7978-7982に見出すことができる。
【0103】
ある態様において、重鎖および軽鎖のV領域ドメインは同一ポリペプチド上で発現させ、フレキシブルなリンカーによって接合して、単一鎖Fv断片を形成し、scFV遺伝子を引き続いて所望の発現ベクターまたはファージゲノムにクローン化することができる。McCafferty et al.,Nature (1990) 348:552-554に一般的に記載されているように、フレキシブルな(Gly4-Ser)3リンカーによって接合された抗体の完全なVHおよびVLドメインを用いて、一本鎖抗体を生産することができ、これはディスプレイパッケージを抗原親和性に基づいて分離可能とすることができる。抗原と免疫反応性の単離されたscFV抗体を、引き続いて、本方法で用いるために医薬製剤に処方することができる。
【0104】
一旦ディスプレイパッケージ(例えば、フィラメント状ファージ)の表面に提示されれば、抗体ライブラリーを標的抗原、またはそのペプチド断片でスクリーニングして、標的抗原に対する特異性を有する抗体を発現するパッケージを同定し、単離する。選択された抗体をコードする核酸はディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収することができ、標準的な組換えDNA技術によって他の発現ベクターにサブクローン化することができる。
【0105】
表面タンパク質に対して高い親和性を有する特異的抗体分子は、当業者に公知の方法、例えば、ライブラリーのスクリーニングに関する方法に従って作成することができる(Ladner,R.C.,et al.,米国特許第5,233,409号;Ladner,R.C.,et al.,米国特許第5,403,484号)。さらに、これらのライブラリーをスクリーニングで用い、抗体の構造的決定基のミメティックである結合決定基を得ることができる。
【0106】
特に、特定の抗体分子のFv結合表面はタンパク質-タンパク質相互作用の原理に従ってその標的リガンドと相互作用し、よって、VHおよびVL(その後者はκまたはλ鎖のタイプであってよい)についての配列データは、当業者に公知のタンパク質作成技術で用いることができる。結合決定基を含むタンパク質表面の詳細は、NMR実験または結晶学的データから得られる他の抗体からの従前に決定された三次元構造を用いるモデリング手法によって、抗体配列情報から得ることができる。例えば、Bajorath,J.and S.Sheriff,1996,Proteins:Struct.,Funct.,and Genet.24(2),152-157;Webster,D.M.and A.R.Rees,1995,「Molecular modeling of antibody-combining sites,」 in S.Paul,Ed.,Methods in Molecular Biol.51,Antibody Engineering Protocols, Humana Press, Totowa,NJ,pp 17-49;およびJohnson,G.,Wu,T.T.and E.A.Kabat,1995,「Seqhunt:A program to screen aligned nucleotide and amino acid sequences」 in Methods in Molecular Biol.51,op.cit.,pp 1-15参照。
【0107】
1つの態様において、多様なペプチドライブラリーはディスプレイパッケージの集団によって発現され、ペプチドディスプレイライブラリーを形成する。理想的には、ディスプレイパッケージは、非常に大きな多様なペプチドディスプレイライブラリーのサンプリング、各アフィニティー分離ラウンド後の迅速なソーティング、および精製されたディスプレイパッケージからのペプチドコーディング遺伝子の容易な単離を可能とするシステムを含む。ペプチドディスプレイライブラリーは、例えば、原核生物およびウイルスに入れることができ、これは迅速に増幅でき、操作するのが比較的容易であって、多数のクローンの創製を可能とする。好ましいディスプレイパッケージは、例えば、栄養細菌細胞、細菌胞子、最も好ましくは細菌ウイルス(特に、DNAウイルス)を含む。しかしながら、本発明では、潜在的ディスプレイパッケージとして、酵母およびそれらの胞子を含む真核生物細胞の使用も考えられる。ファージディスプレイライブラリーを前述している。
【0108】
他の技術は適当な「受容体」、例えば、標的抗原でのアフィニティークロマトグラフィー、続いての、慣用的技術(例えば、質量分析およびNMR)による単離された結合剤またはリガンドの同定を含む。好ましくは、可溶性受容体を標識(例えば、フルオロフォア、比色酵素、放射性同位体、またはルミネセント化合物)に標識し、これを検出してリガンド結合を示すことができる。または、固定化された化合物を選択的に放出し、膜を通って拡散させ、受容体と相互作用させることができる。
【0109】
化合物のコンビナトリアルライブラリーを「タグ」と共に合成して、ライブラリーの各メンバーの同一性をコードさせることもできる(例えば、W.C.Still et al.,国際出願WO 94/08051)。一般に、この方法は、固体支持体または化合物に付着させる不活性であるが容易に検出可能なタグの使用をその特徴とする。活性な化合物は検出されると、該化合物の同一性はユニークな付随的なタグの同定によって決定される。このタギング方法は、ライブラリー中の全ての化合物の全組の中でも非常に低いレベルで同定することができる化合物の大きなライブラリーの合成を可能とする。
【0110】
本発明の抗体は、可変領域、またはその部分、例えば、相補性決定領域(CDR)が非ヒト生物、例えば、ラットまたはマウスにおいて創製されるものであり得る。キメラ、CDR-グラフテッド、およびヒト化抗体は本発明内のものである。非ヒト生物、例えば、ラットまたはマウスで創製され、次いで、例えば、可変フレームワークまたは定常領域において修飾されて、ヒトにおける抗原性を低下させた抗体は本発明の範囲内のものである。抗体が少なくとも1つの抗原結合部分を有する限り、いずれの修飾も本発明の範囲内のものである。
【0111】
キメラ抗体(例えば、マウス-ヒトモノクローナル抗体)は当技術分野において知られた組換えDNA技術によって産生することができる。例えば、ネズミ(または他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を制限酵素で消化して、ネズミFcをコードする領域を除去し、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の同等部分を置換する(Robinson et al.,国際特許公開PCT/US86/02269;Akira,et al.,欧州特許出願184,187;Taniguchi,M.,欧州特許出願171,496;Morrison et al.,欧州特許出願173,494;Neuberger et al.,国際出願WO 86/01533;Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号;Cabilly et al.,欧州特許出願125,023;Better et al.,(1988 Science 240:1041-1043);Liu et al.,(1987)PNAS 84:3439-3443;Liu et al.,1987,J.Immunol.139:3521-3526;Sun et al.,(1987)PNAS 84:214-218;Nishimura et al.,1987,Canc.Res.47:999-1005;Wood et al.,(1985) Nature 314:446-449;およびShaw et al.,1988,J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559参照)。
【0112】
キメラ抗体は、抗体結合に直接的には関与しないFv可変領域の配列を、ヒトFv可変領域からの同等な配列で置き換えることによってさらにヒト化することができる。ヒト化抗体を創製するための一般的な方法は、その全ての内容を参照により本明細書に組み入れる、Morrison,S.L.,1985,Science 229:1202-1207、Oi et al.,1986,BioTechniques4:214、およびQueen et al.,の米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号および米国特許第5,693,762号によって提供される。これらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つからの免疫グロブリンFv可変領域の全てまたは一部をコードする核酸配列を単離し、操作し、および発現させることを含む。そのような核酸の源は当業者に周知であり、例えば、7E3、抗GPIIbIIIa抗体生産ハイブリドーマから得ることができる。次いで、キメラ抗体をコードする組換えDNA、またはその断片を適当な発現ベクターにクローン化することができる。または、適当なヒト化抗体をCDR置換によって生産することができる。米国特許第5,225,539号;Jones et al.,1986 Nature 321:552-525;Verhoeyan et al.,1988 Science 239:1534;およびBeidler et al.,1988 J Immunol.141:4053-4060。
【0113】
ヒト化またはCDR-グラフテッド抗体はCDR-グラフティングまたはCDR置換によって生産することができ、ここに、免疫グロブリン鎖の1、2または全てのCDRは置き換えることができる。例えば、その全ての内容を明示的に参照により本明細書に組み入れる、米国特許第5,225,539号;Jones et al.1986 Nature 321:552-525;Verhoeyan et al.1988 Science 239:1534;Beidler et al.1988 J.Immunol.141:4053-4060;Winterの米国特許第5,225,539号参照。Winterは、本発明のヒト化抗体を調製するのに用いることができるCDR-グラフティング方法を記載する(その内容をここに明示的に引用して援用する、1987年3月26日に出願されたUK特許出願GB 2188638A;Winterの米国特許第5,225,539号)。
【0114】
ヒト化またはCDR-グラフテッド抗体は、ドナーCDRで置換された(免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の)、少なくとも1つまたは2つであるが、一般的には全ての受容体CDRを有するであろう。好ましくは、ドナーはげっ歯類抗体、例えば、ラットまたはマウス抗体であり、受容体はヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークであろう。典型的には、CDRを提供する免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供する免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。1つの態様において、ドナー免疫グロブリンは非ヒト(例えば、げっ歯類)である。アクセプターフレームワークは天然に生じる(例えば、ヒト)フレームワークまたはコンセンサスフレームワーク、またはそれに対して約85%以上、好ましくは90%、95%、99%以上同一の配列であり得る。
【0115】
特定の抗体のCDRの全ては非ヒトCDRの少なくとも一部で置き換えることができ、あるいはCDRのいくつかのみを非ヒトCDRで置き換えることができる。ヒト化抗体のFc受容体への結合に必要なCDRの数を置き換えるのが必要なのに過ぎない。
【0116】
また、特定のアミノ酸が置換され、欠失され、または付加されたキメラおよびヒト化抗体は本発明の範囲内にある。特に、好ましいヒト化抗体は、抗原への結合を改良するようにフレームワーク領域においてアミノ酸置換を有する。例えば、ヒト化抗体は、ドナーフレームワーク残基と、または受容体フレームワーク残基以外のもう1つのアミノ酸と同一であるフレームワーク残基を有するであろう。もう1つの例として、マウスCDRを有するヒト化抗体において、ヒトフレームワーク領域に位置したアミノ酸は、マウス抗体における対応する位置に位置するアミノ酸で置き換えることができる。そのような置換は、いくつかの場合においてヒト化抗体の抗原への結合を改良することが公知である。
【0117】
本発明の抗体断片は、当業者に公知の慣用的手法を用いて得られる。例えば、抗体のペプシンでの消化により、F(ab’)2断片および複数の小さな断片が生じる。抗体のメルカプトエタノール還元により、個々の重鎖および軽鎖が生じる。抗体のパパインでの消化により、個々のFab断片およびFc断片が生じる。
【0118】
もう1つの局面において、本発明は、例えば、アゴニスト(ミメティック)として、またはアンタゴニストとして機能する修飾された天然免疫グロブリンを特徴とする。好ましくは、修飾された天然免疫グロブリン、例えば、修飾された病原免疫グロブリンは補体活性化のアンタゴニストとして機能する。病原免疫グロブリンの変種は突然変異誘発、例えば、直接的点突然変異、配列の挿入または欠失、または病原免疫グロブリンの切形によって創製することができる。天然免疫グロブリンのアゴニストは、タンパク質の天然に生じる形態の生物学的活性の実質的に同一なもの、またはそのサブセットを保有することができる。天然免疫グロブリンのアンタゴニストは、例えば、虚血特異性抗原に結合することができるが、補体経路を活性化することができないことによって、病原免疫グロブリンの天然に生じる形態の一つまたは複数の活性を阻害することができる。従って、特異的生物学的効果は限定された機能の変種での処理によって誘導され得る。
【0119】
1つの態様において、C1qに結合する天然免疫グロブリン内の部位(例えば、病原性IgM)は、それがもはやC1qに結合できないように突然変異させることができる。例えば、C1qに対する結合部位を含有することが知られた、IgGのCH2ドメインおよびIgMのCH4ドメインを突然変異させることができる(WO 94/29351参照)。例えば、C1q結合および引き続いての補体活性化を媒介するようである、IgGのCH2ドメインのカルボキシル末端側半分(残基231〜239、好ましくは234〜239内)を突然変異させることができる。もう1つの例として、Wright et al.は、IgMの定常領域ドメイン中の単一ヌクレオチド変化が、抗体を、補体-依存性細胞溶解を開始するにおいて欠陥があるようにすることを示した。単一のヌクレオチド変化の結果、第三の定常ドメインにおけるアミノ酸位置436において、正常なプロリン残基よりはむしろセリン残基のコーディングがもたらされる(Wright et al.1988,J.Biol.Chem.263:11221)。抗体が補体結合または活性を改変するようにできるアミノ酸置換は当技術分野において周知である(例えば、ここに引用してその全部の内容を援用する、Wright et al.1988,J.Biol.Chem.263:11221;Shulman et al.(1986), Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:7678-7682;Arya et al.,(1994) J.Immunol.253:1206-1212;Poon et al.,(1995) J.Biol.Chem.270:8571-8577参照)。従って、1つの態様において、本発明の抗体は、補体の結合または活性を改変する突然変異を有する。アミノ酸が付加され、欠失され、または置換された抗体を、本明細書においては、修飾された抗体または改変された抗体という。当業者によって認識されるように、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列においてそのような変化を引き起こすのに用いられる方法は、所望の結果に依存して変化するであろう。
【0120】
天然免疫グロブリンの変種は、アゴニストまたはアンタゴニスト活性につき、天然免疫グロブリンの突然変異体、例えば、切形突然変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。
【0121】
天然免疫グロブリンコードの断片、例えば、N末端、C末端または内部断片のライブラリーを用いて、スクリーニングおよびこのタンパク質の変種の引き続いての選択のための断片の多様な集団を創製することができる。システイン残基が付加されまたは欠失した、あるいはグリコシル化された残基が付加されまたは欠失された変種が特に好ましい。
【0122】
点突然変異または切形によって作成されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、および選択された特性を有する遺伝子産物についてのcDNAライブラリーをスクリーニングするための方法。ライブラリーにおける機能的突然変異体の頻度を増強させる技術である再帰的アンサンブル突然変異(REM)は、変種を同定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて用いることができる(Arkin and Yourvan(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811-7815;Delgrave et al.(1993) Protein Engineering 6(3):327-331)。
【0123】
細胞ベースのアッセイを開発して、多様なライブラリーを分析することができる。例えば、発現ベクターのライブラリーを細胞系、例えば、通常は基質-依存的にタンパク質に応答する細胞系にトランスフェクトすることができる。次いで、プラスミドDNAを、病原免疫グロブリン基質による阻害、または、シグナリングの増強につきスコア取りする細胞から回収することができ、個々のクローンをさらに特徴付けることができる。
また、本発明は、天然免疫グロブリン、例えば、非野生型活性を有する病原免疫グロブリン、例えば、天然に生じる病原免疫グロブリンのアンタゴニスト、アゴニスト、またはスーパーアゴニストを作成する方法を特徴とする。該方法は、例えば、非保存的領域の一つまたは複数の残基、本明細書において開示されたドメインまたは残基の置換または欠失によって、天然免疫グロブリンの配列を改変し、次いで、所望の活性につき改変されたポリペプチドをテストすることを含む。
【0124】
さらに、本発明は、天然免疫グロブリンの断片またはアナログ、例えば、天然に生じる病原免疫グロブリンの改変された生物学的活性を有する病原免疫グロブリンを作成する方法を特徴とする。該方法は、例えば、病原免疫グロブリンの一つまたは複数の残基の置換または欠失によって、配列を改変し、例えば、非保存領域、または本明細書において記載されたドメインまたは残基の配列を改変し、次いで、所望の活性につき改変されたポリペプチドをテストすることを含む。例示的な態様において、修飾された天然免疫グロブリンは補体を活性化する低下した能力を有し得る。例えば、補体の結合および/または活性化に関与するアミノ酸残基の一つまたは複数を突然変異させる。
【0125】
ある態様において、修飾された天然抗体は、SEQ ID NO:8の少なくともCDR1領域(SEQ ID NO:10)、またはその抗原結合部分、および/またはSEQ ID NO:8の少なくともCDR2領域(SEQ ID NO:12)、またはその抗原結合部分を含むことができる。もう1つの態様において、修飾された抗体は、SEQ ID NO:2の少なくともCDR1領域(SEQ ID NO:4)、またはその抗原結合部分、および/またはSEQ ID NO:2の少なくともCDR2領域(SEQ ID NO:6)、またはその抗原結合部分を含むことができる。例示的な態様において、修飾された抗体は、SEQ ID NO:8のCDR1領域(SEQ ID NO:10)およびSEQ ID NO:8のCDR2領域(SEQ ID NO:12)またはその抗原結合部分を含む。もう1つの例示的な態様において、修飾された抗体は、SEQ ID NO:2のCDR1領域(SEQ ID NO:4)およびSEQ ID NO:2のCDR2領域(SEQ ID NO:6)またはその抗原結合部分を含む。また、修飾された抗体は、SEQ ID NO:8のCDR1領域(SEQ ID NO:10)およびSEQ ID NO:8のCDR2領域(SEQ ID NO:12)を含むことができ、修飾された抗体は、SEQ ID NO:2のCDR1領域(SEQ ID NO:4)、およびSEQ ID NO:2のCDR2領域(SEQ ID NO:6)またはその抗原結合部分を含む。
【0126】
修飾された天然抗体は、受託番号PTA-3507を有するATCCに寄託されたハイブリドーマによって生じた抗体の結合親和性と同様な、例えば、それよりも大きな、それよりも小さな、またはそれと同等な虚血特異性抗原に対する結合親和性を有するヒト抗体であり得る。もう1つの態様において、天然抗体は非ヒト抗体、例えば、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、またはウサギであり得る。例示的な態様において、非ヒト抗体はネズミ抗体である。また、天然抗体は組換え抗体であり得る。例示的な態様において、天然抗体はヒト化抗体である。修飾された天然抗体はIgGまたはIgM抗体であり得る。もう1つの態様において、単離された天然免疫グロブリンは、受託番号PTA-3507を有するATCCに寄託されたハイブリドーマによって生じた免疫グロブリンと同一の抗原特異性を保有する。
【0127】
6.4 さらなる阻害剤を同定するためのスクリーニングアッセイ
天然IgM抗体および抗原または補体経路の補体の間の相互作用の他の阻害剤は、(i)天然IgM抗体および抗原または補体経路の補体の結合が起こるのを可能とする条件下で、天然IgM抗体および抗原または補体経路の補体を含む反応混合物を提供し;(ii)天然IgM抗体および抗原または補体経路の補体を一つまたは複数のテスト化合物(例えば、コンビナトリアルライブラリーのメンバー)と接触させ;次いで、(iii)テスト化合物の非存在下で検出されたのに対する所与のテスト化合物の存在下における天然IgM抗体および抗原または補体経路の補体の結合のいずれかの変化を検出することを含む、一つまたは複数の(例えば、複数の)テスト化合物から同定することができる。テスト化合物の非存在下で検出されたものに対するテスト化合物の存在下における天然IgM抗体および抗原または補体経路の補体の間の結合のレベルの変化(例えば、減少)は、テスト化合物が、天然IgM抗体および抗原または補体経路の補体の間の相互作用の阻害剤であることを示す。
【0128】
該方法は、さらに、天然IgM抗体を一つまたは複数のテスト化合物で予備処理することを含む。予備処理された天然IgM抗体を、次いで、天然免疫グロブリンを欠乏するマウスに注射することができる。
【0129】
ある態様において、該方法はインビトロで行われる。例示的な態様において、該接触工程はインビボで行われる。例示的な態様において、該抗原はミオシンである。他の態様において、該抗原は、対象、例えば、再灌流または虚血障害を有するヒト患者から得られた内皮組織または溶解物である。もう1つの例示的な態様において、補体経路の成分は補体の古典的経路の成分である。さらなる例示的な態様において、補体経路の成分はC1分子またはそのサブユニット(例えば、Clq)である。
【0130】
例示的な態様において、天然IgM抗体または抗原(または双方)は検出可能なシグナル、例えば、フルオロフォア、比色酵素、放射性同位体、ルミネセント化合物などで標識される。該方法は、さらに、少なくとも1つの工程、例えば、該接触工程を、ライブラリーの第二または引き続いてのメンバーで反復することを含むことができる。
【0131】
例示的な態様において、複数のテスト化合物、例えば、ライブラリーメンバーをテストする。複数のテスト化合物、例えば、ライブラリーメンバーは少なくとも10、102、103、104、105、106、107または108の化合物を含むことができる。好ましい態様において、複数のテスト化合物、例えば、ライブラリーメンバーは構造的または機能的特徴を共有する。テスト化合物はペプチドまたは小さな有機分子であり得る。
【0132】
1つの態様において、阻害剤は、コンビナトリアルライブラリーにおいて同定することができる小さな有機分子である。1つの態様において、本発明は阻害剤のライブラリーを提供する。コンビナトリアルライブラリーの合成は当技術分野において周知であり、レビューされている(例えば、E.M.Gordon et al.,J.Med.Chem.(1994)37:1385-1401;DeWitt,S.H.;Czarnik,A.W.Acc.Chem.Res.(1996) 29:114;Armstrong,R.W.;Oombs,A.P.;Tempest,P.A.;Brown,S.D.;Keating,T.A.Acc.Chem.Res.(1996)29:123;Ellman,J.A.Acc.Chem.Res.(1996)29:132;Gordon,E.M.;Gallop,M.A.;Patel,D.V.Acc.Chem.Res.(1996) 29:144;Lowe,G.Chem.Soc.Rev.(1995) 309,Blondelle et al. Trends Anal.Chem.(1995) 14:83;Chen et al.J..Am.Chem.Soc.(1994) 116:2661;米国特許第5,359,115号、第5,362,899号、および第5,288,514号;PCT公開番号WO92/10092、WO93/09668、WO91/07087、WO93/20242、WO94/08051参照)。
【0133】
本発明の化合物のライブラリーは、そのいくつかは当技術分野において知られている種々の方法に従って調製することができる。例えば、「スプリット-プール」戦略は以下の方法で実行することができる。機能性化されたポリマー支持体のビーズを複数の反応容器に入れる;固相ペプチド合成に適した種々のポリマー支持体は知られており、いくつかは商業的に入手可能である(例えば、M.Bodansky「Principles of Peptide Synthesis」, 2nd edition, Springer-Verlag,Berlin(1993)参照)。ビーズの各アリコットに異なる活性化されたアミノ酸の溶液を加え、反応を進行させて、複数の固定化されたアミノ酸が得られ、各反応容器に1つ得られる。次いで、誘導体化されたビーズのアリコットを洗浄し、「プールし」(すなわち、組換え)、ビーズのプールを再度分割し、各アリコットを別の反応容器に入れる。次いで、もう1つの活性化されたアミノ酸をビーズの各アリコットに加える。所望のペプチドの長さが得られるまで、合成のサイクルを反復する。各合成サイクルで加えたアミノ酸残基をランダムに選択することができ;または、アミノ酸を「偏った」ライブラリー、例えば、阻害剤のある部分が非ランダムに選択されて、例えば、抗体、例えば、抗イディオタイプ抗体抗原結合部位と相互作用できる公知のペプチドに対して公知の構造的同様性または相同性を有する阻害剤を提供するライブラリーを提供するように選択することができる。広く種々のペプチド性、ペプチドミメティックまたは非ペプチド性化合物をこのようにして容易に作り出すことができるのが認識されよう。
【0134】
「スプリット-プール」戦略の結果、ペプチド、例えば、本発明のテスト化合物のライブラリーを調製するのに用いることができる阻害剤のライブラリーが得られる。もう1つの例示的合成において、Hobbs DeWitt et al.の方法によって「ダイバーソマーライブラリー」が作り出される(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909(1993))。Houghtenの「ティー-バッグ」技術(例えば、Houghten et al.,Nature 354:84-86(1991)参照)を含む他の合成方法を用いて、本発明に従って化合物のライブラリーを合成することもできる。化合物のライブラリーをスクリーニングして、ライブラリーのいずれのメンバーが所望の活性を有して、そうであれば、活性な種を同定するか否かを判断することができる。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする方法は記載されている(例えば、Gordon et al., J Med.Chem.,前記参照)。可溶性化合物ライブラリーは、受容体に対するリガンドを単離するための適当な受容体でのアフィニティークロマトグラフィー、続いての、慣用的技術(例えば、質量分析、NMRなど)による単離されたリガンドの同定によってスクリーニングすることができる。固定化された化合物は可溶性受容体と化合物とを接触させることによってスクリーニングさせることができ、好ましくは、可溶性受容体は、リガンド結合を示すために検出できる標識(例えば、フルオロフォア、比色酵素、放射性同位体、ルミネセント化合物など)にコンジュゲートさせる。または、固定化された化合物を選択的に放出させ、膜を通って拡散させて、受容体と相互作用させることができる。本発明のライブラリーをスクリーニングするのに有用な例示的アッセイを以下に記載する。
【0135】
1つの態様において、本発明の化合物は、天然免疫グロブリンに直接結合する各化合物の活性をアッセイすることによって該免疫グロブリンと相互作用する、あるいは例えば、標準的96ウェルマイクロタイタープレートのようなマルチウェルプレートの1つのウェル中で、免疫グロブリンおよび溶解物、例えば、内皮細胞溶解物と共にテスト化合物をインキュベートすることによって、該免疫グロブリンおよび虚血抗原の間の相互作用を阻害する能力につきスクリーニングすることができる。この態様において、各個々の化合物の活性を測定することができる。テスト化合物を有さないウェルを対照として用いることができる。インキュベーションの後、各テスト化合物の活性を、各ウェルをアッセイすることによって測定することができる。従って、複数のテスト化合物の活性を平行して測定することができる。
【0136】
6.5 修飾された阻害剤および医薬および診断製剤
IgM阻害剤を修飾して、例えば、溶解性を増大させ、および/または精製、同定、検出および/または構造的特徴付けを容易とすることができる。例示的な修飾は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、プロテインG、カルモジュリン結合ペプチド、チオレドキシン、マルトース結合タンパク質、HA、myc、ポリ-アルギニン、ポリ-His、ポリ-His-AspまたはFLAG融合タンパク質およびタグの付加を含む。種々の態様において、IgM阻害剤は一つまたは複数の異種融合を含むことができる。例えば、ペプチドは同一融合ドメインの複数コピーを含有することができるか、あるいは2以上の異なるドメインに対する融合を含むことができる。該融合はペプチドのN末端において、該ペプチドのC末端において、あるいは該ペプチドのNおよびC末端の双方において起こることができる。また、リンカー配列を本発明のペプチドおよび融合ドメインの間に含めて、融合タンパク質の構築を容易とし、あるいはタンパク質発現、または融合タンパク質の構造的拘束を最適化するのは本発明の範囲内のものである。もう1つの態様において、ペプチドは、融合ペプチドおよび本発明のペプチドの間にプロテアーゼ切断部位を含有して、タンパク質発現の後に、またはその後にタグを除去するように構築することができる。適当なエンドプロテアーゼの例は、例えば、Xa因子およびTEVプロテアーゼを含む。
【0137】
融合遺伝子を作成する技術は周知である。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の接合は、連結用の平滑末端またはスタガー末端、適当な末端を提供するための制限酵素消化、適切には粘着末端のフィリングイン、望ましくない接合を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、および酵素的連結を使用して、慣用的技術に従って行われる。もう1つの態様において、融合遺伝子は、自動DNAシンセサイザーを含む慣用的技術によって合成することができる。または、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続的遺伝子断片の間に相補的突出を生起させ、引き続いてアニールしてキメラ遺伝子配列を創製することができるアンカープライマーを用いて行うことができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.,John Wiley & Sons:1992参照)。
【0138】
IgM阻害剤はポリマーへの結合に基づいて化学的に修飾することができる。プライマーは、典型的には、それが付着する阻害剤が生理学的環境のような水性環境中で沈殿しないように水溶性である。ポリマーは、重合度を制御することができるように、アシル化のための活性エステル、またはアルキル化のためのアルデヒドのような単一の反応性基を有することができる。好ましい反応性アルデヒドは耐水性であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、またはそのモノC1-C10アルコキシまたはアリールオキシ誘導体である(米国特許第5,252,714号参照)。ポリマーは分岐または非分岐であってよい。好ましくは、最終産物の調製の治療的使用のために、ポリマーは薬学的に許容されるものであろう。水溶性ポリマー、またはその混合物は、所望であれば、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマー、ポリ-(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコールからなる群より選択することができる。
【0139】
IgM阻害剤は、例えば、同位体標識で標識して、核磁気共鳴またはもう1つの適用可能な技術を用いるその検出を容易とすることができる。例示的な同位体標識は、例えば、カリウム-40(40K)、炭素-14(14C)、トリチウム(3H)、硫黄-35(35S)、リン-32(32P)、テクネチウム-99m(99mTc)、タリウム-201(201Tl)、ガリウム-67(67Ga)、インジウム-111(111In)、ヨウ素-123(123I)、ヨウ素-131(131I)、イッテリウム-90(90Y)、サマリウム-153(153Sm)、レニウム-186(186Re)、レニウム-188(188Re)、ジスプロシウム-165(165Dy)およびホロミウム-166(166Ho)のような放射性同位体標識を含む。同位体標識は、例えば、水素-1(1H)、水素-2(2H)、水素-3(3H)、リン-31(31P)、ナトリウム-23(23Na)、窒素-14(14N)、窒素-15(15N)、炭素-13(13C)、およびフッ素-19(19F)を含む非零核スピンを有する原子であってもよい。ある態様において、阻害剤は同位体標識で均一に標識され、例えば、阻害剤の少なくとも50%、70%、80%、90%、95%または98%は標識される。他の態様において、同位体標識は阻害剤内の一つまたは複数の特異的位置に位置し、例えば、標識はペプチドのロイシン残基の一つまたは複数に特異的に取り込むことができる。単一阻害剤は2以上の異なる同位体標識を含むことができ、例えば、ペプチドは15Nおよび13C双方の標識を含むことができる。
【0140】
阻害剤は蛍光標識で標識することができる。例示的な態様において、阻害剤を、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)、Renilla reniformis緑色蛍光タンパク質、GFPmut2、GFPuv4、増強された黄色蛍光タンパク質(EYFP)、増強されたシアン蛍光タンパク質(ECFP)、増強された青色蛍光タンパク質(EBFP)、シトリンおよびジスコソーマからの赤色蛍光タンパク質(dsRED)を含む検出可能な蛍光シグナルを生じる異種ポリペプチド配列に融合させる。
【0141】
天然IgM抗体結合ペプチドまたは修飾された天然IgM抗体を含む天然抗体阻害剤の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって測定することができる。毒性および治療効果の間の用量の比率は治療指数であり、それは比率LD50/ED50として表すことができる。大きな治療効果を呈する天然抗体阻害剤が好ましい。毒性副作用を呈する天然抗体阻害剤または天然抗体結合ペプチドを用いることができるが、そのようなペプチドまたは修飾された抗体を患部組織の部位に標的化して、未感染細胞に対する潜在的損傷を最小化し、それにより、副作用を低下させる送達系を設計するよう注意すべきである。
【0142】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトで用いるある範囲の用量を処方するのに用いることができる。天然抗体阻害剤または天然抗体結合ペプチドの用量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性がないED50を含むある範囲の循環濃度内にある。用量は、使用する投与形態および利用する投与経路に依存してこの範囲内で変化し得る。本発明の方法で用いるいずれの阻害剤またはペプチドについても、治療的有効用量は細胞培養アッセイからまず見積もることができる。用量は動物モデルで処方して、細胞培養で決定されたIC50(すなわち、兆候の半最大阻害を達成するテスト化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成することができる。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0143】
もう1つの態様において、天然IgM抗体結合ペプチドおよび修飾された天然IgM抗体を含む天然抗体阻害剤の単一ボーラスを、組織障害に先立って、それと同時に、またはそれに引き続いて投与する。典型的には、単一用量注射は組織障害後数時間、数日または数週間であろう。本発明は、天然IgM抗体阻害剤が再灌流障害を妨げるという発見に部分的には基づく。単一単位投与送達は障害の部位に直ぐ隣接させることができるか、あるいは例えば、障害の部位へ排出する、またはそこへ流れる容器に対するものとすることができる。
【0144】
天然IgM抗体結合ペプチドまたは修飾された天然IgM抗体のような天然IgM阻害剤は、最初に、標的器官または組織の損傷の時点に先立った時点において投与する。これは、再灌流障害の履歴を有する対象、または外科的処置を受けようとしている対象のような、再灌流障害の危険性があると決定される対象において有用なアプローチであろう。
【0145】
なおもう1つの態様において、天然IgM抗体阻害剤の単一ボーラスに続いて、連続的注入またはさらなる単一ボーラス送達として天然IgM抗体阻害剤を引き続いて投与する。阻害剤は数時間、数日、数週間、数ヶ月または数年の期間にわたって順次に暴露させて投与することができる。加えて、さらなる治療剤を、天然抗体結合ペプチドまたはもう1つの天然抗体阻害剤の投与に先立って、または引き続いて組み合わせて投与することができると考えられる。天然IgM抗体阻害剤とともに投与することができる他の治療剤は、限定されるものではないが、抗凝集剤および補体阻害剤を含む。
【0146】
本阻害剤は薬学的に許容される担体中にて提供することができるか、あるいは全身および局所または局所化された投与を含む種々の投与様式のために処方することができる。技術および処方は、一般的には、Remmington’s Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co.,Easton,PAに見出すことができる。ある態様において、阻害剤は経粘膜または経皮送達のために提供される。そのような投与のために、浸透すべきバリアーに対して適切な浸透剤をポリペプチドとともに処方で用いる。そのような浸透剤は一般には当技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与では、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。加えて、洗剤を用いて浸透を容易とすることができる。経粘膜投与は鼻スプレーを介して、または坐薬を用いて行うことができる。局所投与では、本発明の阻害剤は当技術分野において一般的に公知の軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームに処方される。
【0147】
本発明による薬学的組成物は、担体、賦形剤および添加剤または補助剤を用いて、天然IgM抗体阻害剤を、対象への投与に適した形態にすることによって調製される。頻繁に使用される担体または補助剤は炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、澱粉、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物および植物油、ポリエチレングリコール、ならびに滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールのような溶媒を含む。静脈内ビヒクルは流体および栄養補給剤を含む。保存剤は抗微生物剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスを含む。他の薬学的に許容される担体は、例えば、その内容を参照により本明細書に組み入れる、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 15th ed.Easton:Mack Publishing Co.,1405-1412,1461-1487(1975)およびThe National Formulary XIV.,14th ed.Washington:American Pharmaceutical Association (1975)に記載された、水性溶液、非毒性賦形剤(塩を含む)、保存剤、緩衝液などを含む。薬学的組成物の種々の成分のpHおよび正確な濃度は当技術分野においてルーチン的技量に従って調整される。Goodman and Gilman’s the Pharmacological Basis for Therapeutics(7th ed.)参照。
【0148】
薬学的組成物は投与単位にて好ましくは調製され、投与される。固体投与単位は錠剤、カプセルおよび坐薬であり、例えば、アルギネートベースのpH依存性放出ゲルキャップを含む。対象の治療では、化合物の活性、投与の方法、障害の性質および重症度、対象の年齢および体重に応じて、異なる日用量が必要である。しかしながら、ある状況下では、より高いまたはより低い日用量が適切であろう。日用量の投与は、個々の投与単位の形態での単一投与によって、またはいくつかのより小さな投与単位によって、および特定の間隔での小分けされた用量の複数投与によって行うことができる。
【0149】
本発明による薬学的組成物は治療上有効量にて局所または全身投与することができる。この使用のための有効な量は、勿論、疾患の重症度、および対象の体重および一般的状態に依存するであろう。前記したように、インビトロで用いる用量は、薬学的組成物のインサイチュー投与で有用な量において有用なガイダンスを提供することができ、動物モデルを用いて、特定の障害の治療のための有効な用量を決定することができる。種々の考慮は、例えば、その各々を参照により本明細書に組み入れる、Langer,Science,249:1527,(1990);Gilman et al.(eds.)(1990)に記載されている。
【0150】
1つの態様において、本発明は、天然抗体結合ペプチドをそのような治療を必要とする対象に投与するのに有用な薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物の「投与」は、当業者に公知のいずれの手段によって達成することもできる。好ましくは、「対象」とは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0151】
天然IgM抗体阻害剤は非経口、腸、注射、迅速注入、鼻咽頭吸収、皮膚吸収、直腸および経口投与することができる。非経口投与用の薬学的に許容される担体製剤は滅菌または水性もしくは非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンを含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。閉塞包帯用の担体を用いて、皮膚の透過性を増加させ、抗原の吸収を増強させることができる。経口投与用の液体投与形態は、一般には、液体投与形態を含有するリポソーム溶液を含む。適当な固体または液体医薬製剤形態は、例えば、顆粒、粉末、錠剤、被覆錠剤、(ミクロ)カプセル、坐薬、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、エアロゾル、点剤、またはアンプル形態の注射溶液、および活性化合物が遅延放出される製剤、その製剤において、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑沢剤、香味料、甘味剤のような賦形剤および添加剤および/または補助剤、および精製水のような当技術分野において通常使用される不活性希釈剤を含有するエリキシルである。疾患または障害が胃腸障害である場合、経口処方または坐薬処方が好ましい。
【0152】
滅菌注射溶液は、必要な量(例えば、約10μg〜約10mg/kg)の天然抗体結合ペプチドを適当な溶媒に取り込み、次いで、滅菌濾過によるなどして滅菌することによって調製することができる。さらに、粉末は、凍結乾燥または真空乾燥のような標準的技術によって調製することができる。
【0153】
もう1つの態様において、天然IgM抗体阻害剤は、GI管中での徐放のための、または活性の意図する部位への長期活性剤放出特徴を有する標的器官移植のための徐放特徴用の生分解性担体で調製される。生分解性ポリマーは、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ酢酸を含む。リポソーム処方を用いることもできる。
【0154】
天然IgM抗体阻害剤(例えば、天然IgM抗体結合ペプチド)を送達するもう1つの手段は、天然抗体結合ペプチドを修復を必要とする部位または組織へ至急送るものを宿主細胞に送達することによる。または、細胞は、三次元構造に形成された生体適合性生分解性または非生分解性スポンジ(例えば、コラーゲン、または他の細胞外マトリックス物質)、コットン、ポリグリコール酸、ネコ腸縫合、セルロース、ゼラチン、デキストラン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリカルボネート、ポリテトラフルオロエチレン、またはニトロセルロース化合物を含む種々の送達ビヒクルと共に送達される(例えば、その開示は参照により本明細書に組み入れられる、Naughton et al.に対する米国特許第5,858,721号参照)。
【0155】
有効成分に適合するいずれの投与経路を用いることもできる。好ましいのは、皮下、筋肉内または静脈内注射のような非経口投与である。投与すべき有効成分の用量は、患者の年齢、体重および個々の応答に従って、医薬処方に基づいて依存する。
【0156】
患者のための日非重み付け用量は約2.5〜5.0mg/Kgの間、例えば、約2.5〜3.0mg/Kg、約3.0〜3.5mg/Kg、約3.5〜4.0mg/Kg、約4.0〜4.5mg/Kg、および約4.5〜5.0mg/Kgであり得る。
【0157】
非経口投与用の薬学的組成物は、有効成分および適当なビヒクルを含む注射可能形態に調製することができる。非経口投与用のビヒクルは当技術分野において周知であり、例えば、水、生理食塩水、リンゲル液および/またはデキストロースを含む。
【0158】
ビヒクルは、医薬製剤の安定性および等張性を維持するために少量の賦形剤を含有することができる。
【0159】
引用した溶液の調製は通常の様式に従って行うことができる。
【0160】
本発明を特定な態様を参照して記載してきたが、該記載の内容は、特許請求の範囲の意味および目的を超えることなく当業者によって行うことができる全ての修飾および置換を含む。組成物は、所望であれば、有効成分を含有する一つまたは複数の単位投与形態を含有することができるパックまたはディスペンサーデバイスにて供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックのような、金属またはプラスチックホイルを含むことができる。パックまたはディスペンサーデバイスには投与用の指令書を伴うことができる。
【0161】
6.6 天然IgM抗体阻害剤で治療することができる疾患および疾患
天然IgM抗体結合ペプチドまたは修飾された天然IgM抗体のようなIgM阻害剤は、天然IgM抗体の結合によってトリガーされる多数の炎症性疾患および疾患を治療するのに用いることができる。例えば、阻害剤を用いて、再灌流障害、虚血障害、発作、自己免疫溶血性貧血、特発性血小板減少症紫斑病、慢性関節リウマチ、腹腔病、過剰-IgM免疫不全症、動脈硬化症、冠動脈病、敗血症、心筋炎、脳炎、移植拒絶、肝炎、甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎、グラーベ病)、骨粗鬆症、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、痛風、皮膚炎、円形脱毛症、全身エリテマトーデス、苔癬硬化症、潰瘍性大腸炎、糖尿病性網膜症、胎盤炎症性疾患、歯周疾患、動脈炎、若年性慢性関節炎(例えば、慢性虹彩毛様体炎)、乾癬、骨粗鬆症、真性糖尿病における腎臓障害、喘息、胎盤炎症性疾患、慢性炎症肝臓病、慢性炎症肺病、肺線維症、肝臓線維症、慢性関節リウマチ、慢性炎症肝臓病、慢性炎症肺病、肺線維症、肝臓線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、火傷障害(または熱障害)、および中枢神経系(CNS;例えば、多発性硬化症)、胃腸系、皮膚および関連構造、免疫系、肝臓-胆嚢系、または病理が炎症成分で起こり得る身体中のいずれかの部位の他の急性および慢性炎症性疾患のような炎症性疾患または障害を治療することができる。
【0162】
再灌流または虚血障害のような炎症疾患は、例えば、発作または心筋梗塞として天然に生じるエピソード後に起こり得る。再灌流または虚血障害は外科的手法の間におよび/または後にも起こり得る。障害を引き起こし得る例示的な外科的手法は血管形成術、ステンティング手法、アトローム切除術およびバイパス外科処置からなる群より選択される血管-腐食性技術を含む。例示的な態様において、再灌流または虚血障害は心臓のような心血管組織で起こる。
【0163】
加えて、天然IgM抗体の結合によってトリガーされる疾患または疾患は、病原免疫グロブリン(例えば、本明細書において記載されたB-1細胞)を生産する天然または病因IgMおよび/またはB細胞を対象から除去し、または不活化し、それにより、対象に存在する病原免疫グロブリンおよび/またはB細胞の量を減少させることによって、対象において治療または予防することができる。
【0164】
本明細書において記載された方法は、病原免疫グロブリン、例えば、本明細書において記載された病因IgM、および/または病因IgMを生産するB-細胞(例えば、本明細書において記載されたB-1細胞)を対象から除去し、または不活化し、それにより、対象に存在する病原免疫グロブリンおよび/またはB細胞の量を減少させることを含むことができる。
【0165】
1つの態様において、該除去または不活化工程はエクスビボで行われる。病原免疫グロブリンまたはB細胞は血液灌流によって除去することができる。または、B細胞は、B細胞特異的抗体(例えば、抗B-1抗体または抗CD5抗体または抗CD11G/CD18)を用いて除去することができる。病原免疫グロブリン、例えば、IgMは、対象からの血液を固定化抗原(例えば、虚血特異性抗原)または固定化抗イディオタイプ抗体と接触させることによって除去することができる。病原免疫グロブリンの除去または不活化工程は、抗イディオタイプ抗体を対象に投与することによって行うことができる。もう1つの態様において、B細胞の除去または不活化工程は、トキシン、例えば、リシンまたはジフテリアトキシンにカップリングされたB細胞標的化部位(例えば、抗体、またはその抗原結合断片、または抗原)を対象に投与することによって行われる。該対象は哺乳動物、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)または霊長類(例えば、ヒト)である。例示的な態様において、対象は、例えば、発作としての天然に生じるエピソードに続いて再灌流または虚血障害を維持し、除去工程は、天然に生じるエピソードの後数分、1〜5時間、5〜10時間、10〜20時間、1日〜5日以内に行われる。もう1つの例示的な態様において、再灌流または虚血障害は心血管組織、例えば、心臓で起こり、再灌流または虚血障害は、外科的手法に先立って、その間および/または後に病原免疫グロブリンおよび/またはB細胞を対象から除去することによって予防しおよび/または減少させる。例えば、除去工程は、外科的手法に少なくとも1〜5時間、5〜10時間、10〜20時間、または1、2または3日先立って行うことができる。また、除去工程は、外科的手法の間におよび後に適当な時間間隔で継続することもできる。
【0166】
6.7 診断アッセイ
本発明は、さらに、生物学的試料中の天然IgM抗体の存在を検出する方法を提供する。対象、特に哺乳動物、特別にはヒトにおける天然IgM抗体の検出は、対象における炎症性疾患または障害の診断のための診断方法を提供するであろう。一般には、該方法は、生物学的試料を、試料中の本発明の天然IgM抗体または本発明の核酸を検出することができる化合物または剤と接触させることを含む。用語「生物学的試料」は、診断アッセイに言及して用いる場合、対象から単離された組織、細胞および生物学的流体、ならびに対象内に存在する組織、細胞および流体を含めることを意図する。
【0167】
本発明の検出方法を用いて、インビトロならびにインビボにて生物学的試料中の本発明の天然IgM抗体または核酸の存在を検出することができる。例えば、本発明の核酸の検出用のインビトロ技術はノーザンハイブリダイゼーションおよびイン・サイチューハイブリダイゼーションを含む。本発明のポリペプチドの検出用のインビトロ技術は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈澱、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイおよび競合結合アッセイを含む。
【0168】
診断用の核酸は、骨、血液、筋肉、軟骨および皮膚のような感染した個人の細胞および組織から得ることができる。核酸、例えば、DNAおよびRNAは検出で直接用いることができるか、あるいは、例えば、分析に先立ってPCRまたは他の増幅技術を用いて酵素的に増幅させることができる。増幅を用い、個体に存在する原核生物の種および株の特徴づけを、原核生物遺伝子の遺伝子型の分析によってなすことができる。欠失および挿入は、参照配列の遺伝子型と比較して増幅された産物のサイズの変化によって検出することができる。点突然変異は、核酸、例えば、増幅されたDNAを、本発明の核酸(その核酸は標識することができる)にハイブリダイズさせることによって同定することができる。完全にマッチした配列は、RNase消化によって、または融解温度の差によってミスマッチしたデュプレックスから区別することができる。また、DNA配列の差は、変性剤の有りまたは無しにて、ゲル中のDNA断片の電気泳動移動度の変化によって、または直接的DNA配列決定によって検出することもできる。例えば、Myers et al.,Science, 230:1242(1985)参照。特異的位置における配列の変化は、RNaseおよびS1保護または化学的切断方法のようなヌクレアーゼ保護アッセイによって明らかにすることもできる。例えば、Cotton et al., Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,85:4397-4401(1985)参照。
【0169】
例えば、対象核酸配列に記載された配列を含む本発明の核酸を検出するための剤は、本発明の核酸にハイブリダイズすることができる標識された核酸プローブを含む。該核酸プローブは、例えば、本発明の核酸の全長配列、またはその同等体、あるいは対象核酸配列にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分な長さが少なくとも15、30、50、100、250または500ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドのようなその部分、またはその相補体を含むことができる。例えば、対象アミノ酸配列のアミノ酸配列を含む本発明のポリペプチドを検出するための剤は、本発明の天然IgM抗体に結合することができる標識された抗抗体を含む。抗イディオタイプ抗体はポリクローナル、あるいは別法としてモノクローナルであってよい。無傷抗イディオタイプ抗体、またはその断片を用いることができる。プローブまたは抗体の標識は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリングさせる(例えば、物理的に連結させる)ことによるプローブまたは抗体の直接的標識、ならびに直接標識されるもう1つの剤との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を含む。間接的標識の例は、蛍光標識された二次抗体を用いる一次抗体の検出、およびそれが蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるようなDNAプローブのビオチンでの末端標識を含む。
【0170】
ある態様において、生物学的試料中の本発明の核酸の検出は、アンカPCRまたはRACE PCRのようなポリメラーゼ鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号および第4,683,202号参照)における、あるいは別法として、連結鎖反応(LCR)(例えば、Landegran et al.(1988)Science 241:1077-1080;およびNakazawa et al.(1994)PNAS 91:360-364参照)におけるプローブ/プライマーの使用を含み、その後者は、本発明のポリヌクレオチドのオルソログの間を区別するのに特に有用であり得る(Abravaya et al.(1995) Nucleic Acids Res.23:675-682参照)。この方法は、患者から細胞の試料を収集し、試料の細胞から核酸(例えば、ゲノム、mRNAまたは双方)を単離し、(存在すれば)ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下で本発明の核酸に特異的にハイブリダイズする一つまたは複数のプライマーと核酸試料とを接触させ、次いで、増幅産物の存在または非存在を検出するか、あるいは増幅産物のサイズを検出し、次いで、該長さを対照試料と比較する工程を含むことができる。
【0171】
1つの局面において、本発明では、試料中の天然IgM抗体の存在を検出する方法が考えられ、該方法は(a)天然IgM抗体の存在につきテストすべき試料を提供し;(b)抗イディオタイプ抗体およびそのリガンドの間の会合を可能とする条件下で、種からの対象アミノ酸配列の約8つの連続アミノ酸残基に対して反応性の抗イディオタイプ抗体と試料とを接触させ;次いで、(c)抗イディオタイプ抗体とそのリガンドとの相互作用を検出し、それにより、試料中の天然IgM抗体の存在を検出することを含む。
【0172】
もう1つの局面において、本発明では、試料中の天然IgM抗体の存在を検出する方法が考えられ、該方法は:(a)天然IgM抗体の存在につきテストすべき試料を提供し;(b)抗イディオタイプ抗体およびそのリガンドの間の会合を可能とする条件下で、種からの本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と試料とを接触させ;次いで、(c)抗イディオタイプ抗体とそのリガンドとの相互作用を検出し、それにより、試料中のそのような種の存在を検出することを含む。
【0173】
なおもう1つの例において、本発明では、天然IgM抗体の存在に関連する炎症性疾患または障害に悩む患者を診断する方法が考えられ、これは:(a)患者から生物学的試料を入手し;(b)試料中の本発明のポリペプチド、例えば、天然IgM抗体、または本発明のポリペプチドをコードする核酸の存在または非存在を検出し;次いで、(c)患者試料中の、本発明のポリペプチド、または本発明のポリペプチドをコードする核酸の存在に基づいて炎症性疾患または障害に悩む患者を診断することを含む。
【0174】
また、本発明の診断アッセイを用いて、天然IgM抗体に関連する炎症性疾患または障害に罹った個体における治療の有効性をモニターすることもできる。例えば、本発明の核酸または本発明のポリペプチドの存在および/または量は、天然IgM抗体治療剤での処置の前および後に、天然IgM抗体に関連する炎症性疾患または障害に罹った個体において検出することができる。該治療剤での個体の処置の後における本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのレベルのいずれかの変化は、治療コースの有効性についての情報を提供することができる。特に、生物学的試料に存在する本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのレベルの変化または減少がないことは、該治療剤がそのような疾患または障害と首尾よく闘っていることを示す。
【0175】
または、本発明のポリペプチド、例えば、天然IgM抗体は、本発明のポリペプチドに対して特異的な標識された抗体、例えば、抗イディオタイプ抗体を対象に導入して、天然IgM抗体を検出することによって、対象においてインビボで検出することができる。例えば、抗イディオタイプ抗体は、対象におけるその存在および位置を標準的なイメージング技術によって検出することができる放射性核種マーカーで標識することができる。
【0176】
「放射性核種」とは、肉眼によって、または例えば、陽電子射出断層撮影法(PET)、および単光子放射型断層撮影法(SPECT)を用いて検出することができる検出可能なイメージを作り出すことができる分子をいう。本開示内で有用な放射性核種は、γ放射体およびX-線放射体を含む侵入光子放射体を含む。これらの線には電子捕獲、β放射および異性遷移のような核変換が伴う。有用な放射性核種は80および400keVの間の光子および陽電子、511keV消滅光子、および吸収された光子、粒子および半減期による許容される放射線用量を伴うものを含む。放射性核種は元素の放射性同位体を含む。放射性核種の例は

を含む。
【0177】
1つの態様において、本発明の天然IgM抗体を認識する抗イディオタイプ抗体は99mTcで標識することができる。核医学において通常使用される放射性核種である99mTcは望ましい物理的特性を6時間の半減期および140-KeVのγエネルギー(γ光子85%)ならびに広く普及した利用性と組み合わせる。というのは、それはモリブデン発生器から容易に溶出することができるからである。
【0178】
開示のイメージング剤は以下のように用いることができる。有効量のイメージング剤(1〜50mCi)を、イメージング実験で用いるための薬学的に許容される担体と組み合わせることができる。開示によると、開示のイメージング剤の「有効量」は、臨床的使用で利用できる機器を用いて許容できるイメージを生じるのに十分な量と定義される。開示のイメージング剤の有効量は1を超える注射で投与することができる。開示のイメージング剤の有効量は、個体の罹患性の程度、個体の年齢、性別および体重、個体の特異体質応答、および線量測定のような因子に従って変化するであろう。開示のイメージング剤の有効量は、機器およびフィルム関連因子に従っても変化するであろう。そのような因子の最適化は十分に当業者の技量のレベル内にある。
【0179】
診断目的で用いるイメージング剤の量、およびイメージング実験の持続は、治療すべき疾患の性質および重症度、患者が受けた治療的処置の性質、および患者の特異体質応答に依存するであろう。最後には、主治医が、各個々の患者に投与するイメージング剤の量、およびイメージング実験の持続を決定するであろう。
【0180】
開示のイメージング剤用の薬学的に許容される担体はいずれかのおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含むことができる。医薬上活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用は当技術分野において周知である。開示のイメージング剤は、さらに、適当な希釈剤またはアジュバント中にて個体に投与でき、酵素阻害剤とともに、またはヒト血清アルブミンまたはリポソームのような適当な担体中にて共投与することができる。また、補充的な活性化合物を開示のイメージング剤に配合することもできる。薬学的に許容される希釈剤は生理食塩水および水性緩衝溶液を含む。本明細書において考えられるアジュバントはレゾルシノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびヘキサデシルポリエチレンエーテルのような非イオン性界面活性剤を含む。酵素阻害剤は膵臓トリプシン阻害剤、ジエチルピロカルボネート、およびトラシロールを含む。リポソームは水中油中水型CGFエマルジョンならびに慣用的なリポソームを含む(Strejan et al.(1984) J.Neuroimmunol.7,27)。
【0181】
1つの態様において、開示のイメージング剤は注射として非経口投与される(静脈内、筋肉内または皮下)。イメージング剤は滅菌した、パイロジェン-フリーな非経口的に許容される水性溶液として処方することができる。pH、等張性、安定性などに対して相当な関係を有するそのような非経口的に許容される溶液の調製は当業者の技量内のものである。非経口投与に適した本開示のある薬学的組成物は、処方を意図した受容体の血液または懸濁化剤または増粘剤と等張とする抗酸化剤、緩衝液、生菌剤、溶質を含有することができる、使用の直前に滅菌注射溶液または分散液に復元することができる一つまたは複数の薬学的に許容される滅菌粉末と組み合わせて一つまたは複数のイメージング剤を含む。注射用の処方は、心血管イメージング剤に加えて、塩化ナトリウム溶液、リンゲル液、デキストロース溶液、デキストロースおよび塩化ナトリウム溶液、乳酸加リンゲル液、デキストラン溶液、ソルビトール溶液、ポリビニルアルコールを含有する溶液、または界面活性剤および粘度増強剤、または当技術分野において公知の他のビヒクルを含む浸透圧的にバランスした溶液のような等張ビヒクルを含有すべきである。本開示で用いる処方は安定化剤、保存剤、緩衝液、抗酸化剤、または当業者に公知の他の添加剤も含有することができる。
【0182】
また、本発明は、生物学的試料中の天然IgM抗体の存在を検出するためのキットも含む。例えば、該キットは生物学的試料中の本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することができる標識された化合物または剤;試料中の天然IgM抗体の量を測定するための手段;および試料中の天然IgM抗体の量を標準と比較するための手段を含むことができる。また、未標識化合物を化合物を標識するための指令書と共に提供することもできる。該化合物または剤は適当な容器にパッケージングすることができる。該キットは、さらに、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出するキットを用いるための指令書を含むことができる。
【0183】
実施例
一般的に記載してきた本発明は以下の実施例を参照することによってより容易に理解でき、これは本発明のある局面および態様の説明の目的のためだけに含めるものであり、断じて本発明を限定する意図のものではない。
【0184】
実施例1:虚血-再灌流障害のメカニズム
本実施例は、補体系が欠乏したマウスが虚血-再灌流障害に対して耐性であったことを示す。
【0185】
虚血-再灌流障害のメカニズムを調べるために、補体C3が欠乏したマウスを後足モデルで処理した。C3-/-マウスを、透過性指数のほぼ50%低下に基づいて障害から部分的に保護した(Weiser et al.(1996) J.Exp.Med.1857-1864参照)。従って、補体C3はこのネズミモデルにおいて十分な障害の誘導に必須である。
【0186】
Weiser et al.における実験はどのようにして補体が活性化されたかを同定しなかった。血清補体系は少なくとも3つの区別される経路、古典的、レクチンまたは代替経路によって活性化することができる。いずれの経路が関与するかを知ることは重要である。というのは、それは障害についてのメカニズムを示唆するからである。例えば、古典的経路は免疫グロブリンのIgMおよびIgGイソタイプによって、または血清認識タンパク質C-反応性タンパク質によって非常に効果的に活性化される。他方、レクチン経路はマンナン結合レクチン(MBL)によるマンナンのような特異的炭水化物の認識に従って活性化される(Epstein et al.,(1996) Immunol8,29-35)。双方の経路において、補体C4は、中枢補体C3の切断を触媒するC2との酵素複合体を形成するにおいて必要である。対照的に、代替経路は、C3のその活性形態(C3b)変換への自然発生的導き、および外来性または自己-組織への付着を活性化する。該経路は密接に調節される。というのは、全ての宿主細胞はC3コンベルターゼを不活化し、または置き換えることによって、補体経路の増幅の阻害剤を発現するからである(Muller-Eberhard,H.J.,(1988) Ann.Rev.Biochem.57,321-347)。関与する経路を決定するための1つのアプローチはC4が欠乏したマウスの使用であり、すなわち、古典的またはレクチン経路を介してC3コンベルターゼを形成することができない。後足モデルにおけるC3またはC4いずれか欠乏したマウスと野生型(WT)対照との比較により、C4もまた十分な障害の誘導に必要であることが明らかとなった(Weiser et al.前記)。この知見は、それが抗体またはMBLが関与し得ることを示唆するので重要であった。
【0187】
実施例2:天然IgMは虚血再灌流(I/R)障害を媒介する
本実施例は、免疫グロブリンが欠乏したマウスが虚血-再灌流障害に対して耐性であったことを示す。
【0188】
抗体がI/R障害の媒介に関与したかを判断するために、免疫グロブリンを全く欠乏するマウス、RAG2-/-(レコンビナーゼ活性化遺伝子-2欠乏)を、腸モデルにおいて補体欠乏動物と共に特徴付けた。重要なことには、RAG-2-(-マウスは、補体欠乏動物で観察されたのと同様なレベルまで保護された(Weiser et al.前記)。RAG2-/-動物は成熟リンパ球もまた失っているので、病原効果が抗体依存性であると判断するのは重要であった(Shinkai et al.(1992) Cell 68,855-867)。障害が血清抗体によって媒介されたことを確認するために、欠乏マウスを正常マウス血清(Weiser et al.,前記)または精製されたIgM(Williams et al.(1999)J.Appl.Physiol 86;938-42)いずれかで再構築した。双方の場合に、再構築されたRAG-2-/-マウスはもはや保護されず、障害が回復した。後者の実験において、腸障害のモデルをこのモデルで用い、障害は主として補体によって媒介されると考えられる。
【0189】
これらの結果の解釈は、虚血の間に、ネオ抗原が内皮細胞表面で発現されるかまたは露出されるのいずれかであるということである。循環IgMは新しい決定基を認識し、補体の古典的経路に結合し、それを活性化するように見える。抗原の性質は公知ではないが、IgGよりはむしろIgMが、補体の活性化に対して主な原因であるように見える。というのは、プールされたIgGでの欠乏マウスの再構築はマウスにおいて障害を有意には回復しなかったからである。代わりの仮説は、改変された内皮表面を認識し、新しい抗原部位を暴露する低レベルの補体活性化を誘導するMBL経路のようなもう1つの初期事象があり、該経路はIgMの欠乏によって増幅されるというものである。
【0190】
実施例3:病原性IgMはB-1細胞の産物である
循環IgMの大部分は天然抗体、すなわち、再編成された生殖系遺伝子の産物を表すと考えられるので、リンパ球のB-1画分の欠乏を担うマウスもまた保護される可能性がある。B-1細胞は、それらが低レベルのIgDおよびCD23を発現し、大部分が細胞表面タンパク質CD5を発現する点でより慣用的なB-2細胞とは区別される表現型を有する(Hardy et al.,(1994) Immunol.Rev.:137,91;Kantor et al.(1993) Annu.Rev.Immunol.11,501-538,1993)。B-1細胞は、マウスにおける低下した循環、末梢リンパ節および脾臓における制限された頻度によってやはり区別され、主として、腹腔内に主として局所化される。病原性IgMの源としてのB-1細胞についての役割を調べるために、抗体欠乏マウス(RAG-2-/-)を5×105腹腔B-1細胞で復元し、処理前ほぼ30日休息させた。循環IgMレベルは養子免疫伝達後1ヶ月以内に正常な範囲近くに到達する。腸虚血モデルにおけるB-1細胞復元マウスの特徴付けにより、B-1細胞は病原性IgMの主な源であったことが確認された(Williams et al.(1999)前記参照)。これは重要な観察であった。なぜならば、B-1細胞天然抗体のレパートリーは、慣用的B-2細胞について予測されるよりもかなり限定されているからである。従って、病原性抗体は生殖系の産物を表す可能性がある。
【0191】
実施例4:Cr2-/-マウスは虚血再灌流障害から保護される
Cr2-/-ノックアウトマウスの初期特徴付けは、B-1aまたはCD5+B-1細胞の頻度のほぼ50%低下を明らかにした(Ahearn et al.(1996)Immunity 4:251-262)。Cr2-欠乏マウスのもう1つの株の特徴付けは同様な低下を同定しなかったが(Molina et al.(1996) Proc.Natl.Acad.Sci.(USA 93,3357-3361)。CD5+細胞の頻度の差が株のバックグラウンドまたは環境の差の変動によるか否かは公知ではない。Cr2-/-マウスにおけるB-1a細胞の低下した頻度にかかわらず、IgMの循環レベルは正常な範囲内にあった。これらの知見は、IgMのレパートリーがCr2-欠乏動物において異なることを示唆した。この仮説を検定するために、腸I/Rモデルにおけるマウスを特徴付けた。驚くべきことに、Cr2-/-マウスは補体-抗体欠乏マウスとして同等に保護された(図3)。腸モデルにおける処理後5日間の期間にわたる生存の比較は、Cr2-欠乏動物と比較したWTの死亡率の有意な増加を示した。増加した死亡率と合致して、障害の劇的な低下が、処理したWTまたはCr2-/-欠乏マウスから収穫された組織切片で観察された。
【0192】
腸の粘膜層に対する広範な障害が、プールされたIgMまたはB-1細胞で復元されたWTマウスまたはCr2-/-マウスで観察された。対照的に、処理されたCr2-/-マウスから単離された組織切片は偽対照のそれと同様であった。従って、IgMの正常な循環レベルにもかかわらず、Cr2-欠乏マウスは障害から保護された。これらの結果は、病原性抗体の源としてのB-1細胞の重要性を確認するのみならず、補体系は天然抗体のレパートリーの形成または維持に幾分関与することを示唆する。例えば、補体はB-1細胞の陽性選択に関与し得る。
【0193】
実施例5:病原性IgMの同定
この実施例は、正常なB-1細胞からの特異的なハイブリドーマクローンの創製、および病原性IgMを精製する1つのクローンの同定を記載する。病原性IgMは、抗体欠乏マウスに対する障害をインビボで回復することが示された。
【0194】
補体受容体CD21/CD35の欠乏を担うマウスにおける実験は、該マウスが病原性抗体を失っていることを明らかとした。この知見は予期せぬものであった。なぜならば、それらはその血液中に正常なレベルのIgMを有するからである。これらの知見は、B-1細胞といわれるB細胞の特別な集団が病原性IgMを分泌することを担うという仮説に導く。例えば、正常なマウスからのB-1細胞での受容体欠乏マウス(Cr2-/-)の移植は障害を回復させ、B-1細胞の重要性が確認される。特異的抗体または障害を担う抗体を同定するために、ハイブリドーマクローンのパネルを、正常なマウスから収穫された腹腔B-1細胞の豊富化されたプールから構築した。腹腔細胞の豊富化された画分からハイブリドーマを調製するための一般的アプローチは、IL-10で7日早く処理し、引き続いて、磁性ビーズでの陰性選択によってCD23陰性B細胞につき豊富化されたマウスから腹腔細胞を収穫することを含む。豊富化されたB細胞は、IgM、Mac-1およびCD23特異的Mabでの染色に続いてのFACSによって分析される。豊富化された集団は、24時間のLPSとの培養によってさらに活性化される。活性化された細胞は、PEGの存在下で融合パートナーミエローマ細胞とハイブリダイズさせ、HAT-選択培地で増殖させる。ハイブリドーマは、ELISAによってIgM分泌クローンにつきスクリーニングし、陽性細胞はIgMの精製のために拡大培養する。
【0195】
22のIgM-分泌ハイブリドーマクローンを、クローンの各々からの同等量のIgM産物をプールすることによって分析した。プールされたIgMでの抗体欠乏マウスの処理は、血清からのプールされたIgMで見られたのと同様な障害を回復した。この知見により、病原性IgMは生じた22のハイブリドーマの中にあったことが確認された。プールを2つの画分、すなわち、1〜11および12〜22、および2つの画分での処理マウスに分けることによって、病原性抗体は、クローン#22を誘導したプールと共に分画されることが見出された。最後に、マウスをクローン17または22いずれかで復元した。クローン22は障害を回復し、他方、他のクローンはそうしなかった(図4参照)。
【0196】
実施例6:B-1細胞選択への補体の関与
2つの異なるモデルがB-1細胞の発生を説明するために提唱されている。系列仮説は、B-1細胞が区別される集団として初期胎児生命で発生することを提唱する(Kantor et al.(1993)前記)。あるいは、B-1細胞は、慣用的B細胞として同一先祖から発生するが、それらの環境、すなわち、抗原との遭遇に応じて、それらはB-1に発生し、またはB-2細胞表現型を保有する(Wortis,H.H.(1992) Int.Rev.Immunol.8,235;Clarke,J.(1998) Exp.Med.187,1325-1334)。それらの起源にかかわらず、B-1細胞はB-2細胞と同一の頻度で成人骨髄から補充されず、およびそれらの表現型は初期胎児肝臓B細胞または新生骨髄(BM)細胞のそれとより同様であることが公知である。初期起源と合致して、それらのレパートリーはより近位のVH遺伝子の発現に偏る傾向があり、N-ヌクレオチドの付加は制限されている(Gu et al.(1990) EMBO J9,2133;Feeney J.(1990) Exp.Med.172,1377)。成人BM幹細胞による低下した補充を仮定すれば、B-1細胞は自己-更新され、抗原刺激はそれらの更新、拡大または初期選択においてさえ重要であろうことは合理的に見える(Hayakawa et al.,(1986) Eur.J.Immunol.16,1313)。事実、慣用的モデルに固有なことには、B-1細胞は抗原選択されなければならない。
【0197】
B-1細胞の陽性選択についてのB-細胞受容体(BCR)シグナリング要件を裏付ける証拠は、BCRシグナリングを改変する突然変異を担うマウスから来る。例えば、CD19、vav、またはBtkを通じてのBCRシグナリングが損なわれると、B-1細胞の発生に劇的に影響する。対照的には、CD22-またはSHIP-1欠乏マウスのような陰性選択の喪失はB-1細胞頻度の増加に至り得る(O’Keefe et al.(1996)Science 274,798-801;Shultz et al.(1993) Cell 73,1445)。2つの区別されるIg導入遺伝子VH12(B-1細胞表現型)またはVHB1-8(B-2細胞表現型)を担うマウスでの最近のエレガントな実験はB-1細胞が自己抗原によって陽性的に選択されるという観察を支持する。例えば、VH12単独、またはB1-8と共にVH12を発現するB細胞はB-1細胞の表現型を発達させた。他方、B1-8導入遺伝子のみを発現したB細胞はあったとしても少数が同定された。従って、これらの結果は、トランスジェニックB細胞と自己-PtCとの遭遇の結果、VH12を発現するものが拡大されることを示唆した。B-1細胞の選択はHardy et al.によって最近報告された((1994) Immunol.Rev.137,91)。これらのモデルにおいて、Thy1.1に対して特異的な免疫グロブリン導入遺伝子を発現するB細胞が選択され、同族抗原を発現するマウスにおいて拡大された。対照的に、導入遺伝子+B-1細胞は、代替アロタイプThy1.2を発現したマウスでは見出されなかった。
【0198】
補体はどこでB-1細胞発生にフィットするか?B-1a細胞頻度の総じての低下、およびI/R障害に関与するIgMを発現するB-1細胞のより特異的な喪失は、B-1a細胞の陽性選択または維持いずれかにおけるCD21/CD35についての役割を示唆する。補体に対する1つの可能な役割は、それが同族抗原との遭遇に際してBCRシグナリングを増強することである。CD21/CD35欠乏マウスの生化学的実験および分析は、慣用的B細胞の活性化および生存における共受容体シグナリングの重要性を示す(Carroll,M.C.,(1998)Ann.Rev.Immunol.16,545-568;Fearon et al.(1995) Annu.Rev.Immunol.13,127-149)。B-1細胞が、同様に、共受容体シグナリングを利用して、BCRシグナルを増強させるようである。例えば、細菌はホスホリルコリンのような典型的なB-1細胞抗原を発現し、補体リガンドC3dでの細菌のコーティングはBCRでの共受容体の架橋を促進するであろうことは不合理ではない。従って、より低濃度で発現された抗原は、同族B-細胞がそれを認識し、拡大するか、または陽性に選択されるためには、補体増強を必要とするであろう。補体受容体についてのもう1つの役割は、リンパ系区画内の小胞樹状細胞(FDC)へ抗原を局所化するにおけるものである。しかしながら、B-1細胞の主な集団は腹腔組織を占めるので、それらがリンパ系構造内でFDCに遭遇するかは明らかでない。B-1細胞が陽性選択を受ける現実の部位または複数部位が公知ではない。それらは初期胎児発生において、または新生BMにおいて同族抗原に遭遇するに違いない可能性がある。これが当てはまれば、これらの区画内の間質細胞上の補体受容体は、B細胞への提示のために抗原に結合することが予測される。補体受容体は発生の双方の段階に参画する可能性がある。第一に、それらは初期陽性選択における抗原シグナリングを増強するであろう。第二に、選択されたB-1細胞が末梢部位で補充されるにつれ、補体受容体はBCRシグナリングの増強に再度関与するであろう。
【0199】
図5は、腹腔B-1リンパ球の陽性選択における補体および補体受容体についての提案された役割の概略図である。補体-リガンド被覆抗原(自己-および非自己)の相互作用の結果、細胞表面でCD21/CD19共受容体BCRの共連結がもたらされ、増強されたシグナリングおよび陽性選択に導く。
【0200】
実施例7:実施例8〜11のための材料および方法
ファージディスプレイペプチドライブラリーおよびペプチド合成
製造業者の推奨に従って、IgMCM-22で被覆したMBL-ビーズでの4ラウンドおよびIgMCM-75での2ラウンドによって、12-量体M-13ファージディスプレイライブラリー(New England Biolab,MA)をスクリーニングした。ファージクローンを豊富化されたプールから選択し、関連ファージ遺伝子のヌクレオチド配列を少なくとも10のクローンにつき決定した。選択されたペプチドはHarvard Proteomic CoreまたはNew England Peptide, Inc.(Gardner,MA)において95%を超える純度で合成した。
【0201】
結合アッセイ
ELISAは以前に記載されているように行った(Zhang et al.(2004)PMAS USA 101:3886-91)。簡単に述べれば、96-ウェルプレートを飽和量の抗原でコーティングすることによって、ファージまたはファージ特異的ペプチドへのIgM結合を測定した。ブロッキングに引き続いて、IgMを37℃にて2時間加えた(1または10μg/ml)。プレートを洗浄し、次いで、アルカリ性ホスファターゼ標識ヤギ抗マウスIgM(Sigma,MO)で発色させた。特異的ウサギ抗体(NMHC-II A & B;Covance Research Products;NMHC-II C、Adelstein博士からの贈物、NHLBI、NIH、Bethesda,MD)またはpan-ミオシンHc(Sigma,MO)で予め被覆された96-ウェルプレートを、記載されたように(Zhang et al.(2004) PNAS USA 101:3886-91)虚血に対して偽処置または処置されたIgMCM-22復元RAG-1-/-マウスから調製された腸溶解物と共に培養することによって、IgMのNMHC-IIへの結合を測定した。溶解物は免疫沈澱について記載されたように調製された(後記参照)。次いで、アルカリ性ホスファターゼ標識ヤギ抗マウスIgM(Sigma,MO)を用いて結合したIgMを検出した。
【0202】
腸RIモデル
RIについての外科的プロトコルは従前に記載されているように行った(Zhang et al.(2004)PNAS USA 101:3886-91)。簡単に述べれば、側腹切開を行い、ミクロクリップ(125g圧力、Roboz、MD)を、空腸の20cmセグメントを近接挟絹縫合で制限した上腸間動脈および両側循環に適用した。虚血の40分後、ミクロクリップを取り外し、腸間血管系の再灌流を、血管弧への拍動の復帰およびピンク色への変化によって確認した。切開を閉じ、全ての動物を3時間温かく保った。復元されたRAG-1-/-動物は、初期側腹切開30分前に、ペプチドと混合したIgMまたは0.2ml容量中の生理食塩水いずれかを静脈内に受けた。再灌流に5分先立って、WT動物を生理食塩水またはペプチドで静脈内処理した。再灌流の最後に、空腸の虚血セグメントを収穫し、中央の4cmを病理学的分析のために切断した。
【0203】
組織病理学および免疫-組織化学分析
腸組織の低温槽セクションをヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)によって染色し、粘膜損傷について光学顕微鏡によって観察した。記載された空腸の4cmストレッチにわたって全ての微細絨毛の直接的観察を含んだChiuによる手法(Chiu et al.,Arch Surg 101:484-488,1970;Chiu,et al., Arch Surg 101:478-483,1970)に基づいて、病理学スコアを評価した。Zhang et al.(2004) PNAS USA 101:3886-91。免疫蛍光では、4%(w/v)パラホルムアルデヒドで固定した低温セクションを、ビオチン標識抗マウスIgM(Becton Dickinson,CA)と共に種々の時間インキュベートし、続いて、ストレプトアビジン-Alexa-568(1:500希釈, Molecular Probes,OR)と共に1時間インキュベートした。FITC標識ウサギ抗huC4c(DAKO,CO)、続いて、抗ウサギ-Alexa488(Molecular Probes,OR)で染色することによってC4沈積を検出した。抗C4c染色の特異性は、ビオチン標識抗マウスC4で1時間、続いて、ストレプトアビジン-FITC(Becton Dickinson,CA)で系列的セクションを染色することによって確認した。C3沈積は、FITC標識抗C3(DAKO,CO)で処理することによって検出した。セクションは、DAPI(Molecular Probes,OR)と共にAnti-fade Mounting Mediumに設置した。
【0204】
抗体へのペプチド結合のSPR分析
記載されたように、33,400応答単位(RU)〜33ng/mm2の密度におけるBiaCore SPR CM5(商標)
チップフローセルでのアミンカップリングによって、IgM(IgMCM-22またはIgMCM-31)抗体を固定化した。Vorup-Jensen et al, PNAS USA 100: 1873-1878, 2003。簡単に述べれば、参照フローセルを、エタノールアミン-HClのカップリングによって調製した。PBS泳動緩衝液中に希釈したペプチドを、25℃にて10μl/分の速度で、かつ10Hzのデータ収集速度にて、IgM-カップルド表面および参照上を別々に流動させた。注射相は240秒の持続を有した(注射相の最後は、図9A、BおよびDにおける矢印の頭によってマークする)。結合等温線は、IgM-カップルド表面の応答から参照細胞における応答を差し引くことによって導いた。各泳動に続き、40μlの0.05%(v/v)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBSを注入することによって、表面を再生した。
【0205】
免疫沈澱
洗剤および酵素阻害剤のカクテルを含有する溶解緩衝液中で、凍結した組織をホモゲナイズした。溶解物の試料を全タンパク質含有量(Bio-Radキット)につき分析して、分析用のタンパク質の同様なレベルを確認する。溶解物を、ラット抗マウスIgMでコートしたセファロースビーズと4℃にて1時間混合する。引き続いて、ビーズを温和にペレット化し、溶解緩衝液中で洗浄し、次いで、減圧条件下でSDS-試料緩衝液中で沸騰させて、結合した複合体を溶出させた。試料を6%(w/v)ポリアクリルアミドSDSゲルで分画し、引き続いて、固定し、次いで、クーマシーブルーまたは銀染色にて染色して、タンパク質のバンドを同定した。
【0206】
タンデム質量分析によるタンパク質の同定
個々のクーマシーブルー-染色バンドをSDS-ゲルから切り出し、脱染色し、従前に記載されているように酵素消化に供した。Borodovsky et al.,Chem Biol 9:1149-1159,2002。ナノフロー流体カップルドクロマトグラフィーシステム(Waters Cap LC)を用いてペプチドを分離し、タンデム質量分析計(Q-TOF micro,Waters,MA)によってアミノ酸配列を決定した。MS/MSデータを処理し、Swissprot,TREMBL/NewまたはNCBY非冗長データベースに対するMascot(Matrixscience)を用いるデータベースサーチに供した。
【0207】
実施例8:天然IgM抗体に結合するアスパラギン-リッチのペプチドの同定
本発明者らは、腸RIモデルにおいて虚血組織に結合する天然IgM抗体(IgMCM-22)のハイブリドーマクローンを従前に同定し、これは、虚血組織が正常な組織に対して変化し、および虚血の間に発現されたneo-エピトープは自己に対する先天性応答についての標的であったという本発明者らの仮説を支持する。病原性IgMCM-22によって結合されたリガンドを特徴付けるために、ランダムな12-量体アミノ酸配列のM-13ファージ-ディスプレイライブラリーを、特異的IgMでコートしたビーズを用いてスクリーニングした。
【0208】
4ラウンドの特異的スクリーニングおよび対照IgM(クローンIgMCM-75)での2ラウンドの後に、10のファージクローンを単離し、関連M-13遺伝子のヌクレオチド配列を配列決定した。注目すべきことには、全ての10のクローンはアスパラギンが豊富な配列を含有する。クローンのうちの5つをIgMCM-22での相対的結合アッセイにつき選択し、これらのクローンのうちの1つである、最も高い効率で結合したP8をさらなる実験のために選択した(表4および図6A)。
【0209】
(表4)ファージディスプレイドペプチドはIgMCM-22に結合する

【0210】
12-アミノ酸ペプチド(P8)をファージ配列に基づいて合成し、IgMCM-22へのファージP8結合の阻害につきアッセイした(図6B)。増大させる量のP8ペプチドの力価測定により、10マイクロモルの見積もった濃度における50%阻害が得られた。このアッセイは、ファージ表面で発現された多数の結合部位に基づく結合の合理的な総じての親和性を示す。この結果は、ファージP8へのIgMCM-22結合がペプチド領域に対して特異的であり、および合成ペプチドを現実の抗原に対するミモトープとして用いることができることを示唆する。IgMCM-22へのP8ペプチドの結合をさらに特徴付けるために、ELISAプレートをペプチドで被覆し、IgMCM-22または対照IgMCM-75で結合につきテストした(図6C)。1μg/mlのより低い濃度において、IgMはバックグラウンドを超えて結合しなかった。しかしながら、10μg/mlにおいては有意により多いIgMCM-22がIgMCM-75よりも結合した。一緒に考えると、3つの結果は、ペプチドP8がIgMCM-22に特異的に結合し、これを現実の抗原の同定で用いることができることを示唆する。
【0211】
実施例9:アスパラギン-リッチなペプチドP8は腸RIをブロックする
従前の実験は、RAG-1-/-マウスにおける腸RIはIgM-依存性であり、IgMCM-22単独は障害を回復させるのに十分であったことを示した。予測されるように、再灌流に先立っての生理食塩水ではなくIgMCM-22でのRAG-1-/-マウスの復元の結果、RIがもたらされた(図7A(i)および図7B)。対照的に、虚血マウスにおける注射に先立ってのIgMCM-22とP8との混合は見掛けの障害を有意にブロックした(平均病理学的スコア6±3対31±13;p<0.001)(図7Aiiおよび図7B)。IgMCM-22でのペプチドの以前の力価測定は、10μMのP8の最適濃度が50〜100μgのIgMCM-22をブロックするのに十分であったことを示唆した(0.1〜0.2μM)。
【0212】
RIに続いての再灌流した腸組織(空腸)の系列セクションの免疫組織学的分析は、IgMCM-22で復元したRAG-1-/-マウスにおける微小絨毛内へのIgMおよび補体C4およびC3の共局所化を同定した(図7Ci-iv)。対照的に、P8を受けるマウスから調製したセクションは、IgMまたは補体結合の証拠を示さなかった(図7Cv-viii)。IgMCM-22復元偽対照においても、対照IgMCM-31で復元したRAG-1-/-または生理食塩水のみで復元したRAG-1-/-マウスにおいても、IgMまたは補体の結合は観察されなかった(Zhang et al.(2004)PNAS USA 101:3886-91)。従って、P8はIgMCM-22の結合および障害の誘導をインビボでブロックする。
【0213】
RAG-1-/-マウスにおいてRIを開始できた単一天然IgM抗体の同定は、虚血組織で発現された可能なneo-エピトープの数、および野生型(WT)マウスのレパートリーにおけるIgMの病原性クローンの対応する数の一般的問題に導いた。抗体の数は、天然IgMのレパートリーは比較的小さいという現在の理解に基づいて制限されることが予測されよう。Herzenberg et al.,Immunol Today 14:79-83,discussion 88-90,1993;Arnold et al.,J ExP Med 179:1585-1595,1994。さらに、天然IgM抗体のリガンドは高度に保存された構造と考えられ、また、恐らくは数が制限される。P8が主要自己-抗原に対するミモトープを表したかを検定するために、腸モデルにおける再灌流に5分先立ってWTマウスをP8(ほぼ10μM)で予備処理した。再灌流に先立って生理食塩水または対照ペプチドで処理したマウスの空腸組織の分析は、予測されたように微小絨毛に対する有意な障害を同定した(図7Aiii)。対照的に、再灌流に5分先立ってのP8でのWTマウスの予備処理は見掛けの障害をブロックした(平均病理学スコア、各々、5±3対24±16および23±19;p<0.005および0.027)(図7A(iv)および図7B)。予測されるように、IgM、C4およびC3はRI処理WTマウスの微小絨毛内に共局所化された(図7Cix-xii)。対照的に、P8を投与したマウスの再灌流した組織ではIgMまたは補体の見掛けの沈積は観察されなかった(図7Cxiii-xvi)。これらの結果は、RIを開始するのに必要な鍵となるエピトープの数が、単一ペプチドは障害およびIgMおよび補体の沈積をブロックするので制限されることを示唆する。
【0214】
実施例10:自己ペプチドのIgMCM-22での免疫沈澱
P8のアミノ酸配列を用い、ゲノムデータベースの相同性サーチは正確なマッチを明らかにしなかった。従って、免疫-沈殿アプローチを用いて、IgMCM-22で復元したRAG-1-/-マウスにおける虚血抗原/複数抗原を同定した。
【0215】
RAG-1-/-マウスを最適量のIgMCM-22で復元し、腸虚血に対して処理し、組織の収穫前に種々の長さの時間、すなわち、0分、または15分の間再灌流した。IgM-抗原の免疫複合体を種々の時点で空腸の溶解物から単離し、還元条件下でSDS-PAGEによって分画した。染色されたゲルの分析は、全ての時点につきより低い分子量において共通のバンドを示した(図8A)。しかしながら、15分においては、高分子量におけるバンド(<200kD)が同定された(図8A)。
【0216】
タンパク質バンドを染色されたゲルから切り出し、酵素により消化し、記載されたようにタンデム質量分析によってペプチドを分析した。Kocks et al., Mol Cell Proteomics 2:1188-1197,2003。溶出したペプチドの分析は、ほぼ25、50および75kDaにおける共通するバンドが、各々、免疫グロブリン軽鎖(Lc)、およびIgG重鎖(Hc)およびIgM Hcを表すことを示した。高分子量バンドの分析は、非筋肉ミオシン重鎖(NMHC)タイプIIイソ形態AおよびCに対して相同なペプチド配列を生じた(表5)。
【0217】
(表5)質量分析の結果

*スコアは-10×Log(P)であり、ここに、Pは観察されたマッチがランダムな事象である確率である。個々のイオンスコア>53は同一性または広範な相同性(p<0.05)を示す。
【0218】
腸RIにおいて3時間処理したWTマウスから調製した溶解物を用いる同様な実験において、200kDにおける同様なサイズのバンドも観察され、配列分析によりNMHC-AおよびCペプチドが同定された。
【0219】
タイプIIのNMHCの3つの形態がマウスおよびヒトゲノムで同定されている(A、BおよびC)。Golomb et al.,J Biol Chem 279:2800-2808,2004;Kelley et al.,J Cell Biol 134:675-687,1996。全ての真核生物細胞はタイプIIのNMHCを発現するが、3つのイソ形態の分布は変化する。NMHC-II AおよびBはほぼ85%相同であり;他方、NMHC-II Cはほぼ65%同様である。Golomb et al.,J Biol Chem 279:2800-2808,2004。3つのイソタイプはマウスおよびヒトの間で高度に保存される。
【0220】
IgMCM-22のタイプIIのNMHCへの結合を確認するために、ELISAアプローチを用いた。プレートを、NMHCの3つの形態の各々に対して特異的な抗体、またはpan-ミオシン抗体でコートして、RAG-1-/-マウスの空腸から調製した溶解物からの関連抗原を捕獲した。引き続いて、IgMCM-22またはIgMCM-31を加え、次いで、標識された抗マウスIgM抗体で発色させた。NMHC-IIのイソ形態の全ての3つへのIgMCM-31ではなくIgMCM-22のバックグラウンドを超える結合が観察された(図8B)。合わせた配列分析およびELISAの結果は、IgMCM-22がタイプIIのNMHCの保存された領域を認識することを示す。
【0221】
ミオシンが虚血に続いて循環抗体に暴露されるか否かを判断するために、ウサギ抗panミオシン重鎖の精製されたIgG画分でRAG-1-/-マウスを復元した。ウサギIgGマウスでの復元に続いて偽処理RAG-1-/-の組織の分析は、障害またはIgGの沈積の証拠を示さなかった。対照的に、再灌流に先立ってpan-ミオシンIgGで復元した虚血RAG-1-/-マウスは、生理食塩水対照と比較して有意なRIを発生させた(33±11対11±8,p<0.028)(図8C)。従って、ミオシンは虚血に続いて循環における抗体に暴露される。
【0222】
P8ペプチド配列と3つのNMHC-IIイソ形態の配列との比較は、見掛けの相同性の1つの領域を同定した(表6)。全ての3つのイソ形態は、P8配列に対して同様性を有するNxxxxNxNxのモチーフを含む。12-アミノ酸自己ペプチド(N2)配列(NMHC-II Cイソ形態)をさらなる実験のために調製した。
【0223】
(表6)NMHC-II A-Cにおける保存された相同な配列

【0224】
この領域がIgMCM-22表面に結合したかを検定するために、プラズモン共鳴分析を用いた(図9)。N2ペプチドを、IgMCM-22とカップリングした表面に注入し(図9A)、これは頑強な応答を生じ、これは、定常状態応答レベルから計算したように123±61μM(平均±SD,n=2)のKDに対応した(図9C)。対照的に、対照ペプチドを特異的IgM-カップルド表面に注入した場合(図9B)、またはN2ペプチドをIgMCM-31対照とカップリングさせた表面に注入した場合(図9D)、結合は観察されなかった。
【0225】
実施例11:自己ペプチドN2は腸RIをブロックする
N2の病原性IgMとの機能的結合を検定するために、ほぼ100ナノモルのペプチド(または生理食塩水)を、RAG-1-/-マウスの復元およびRIモデルでの処理に先立ってIgMCM-22と混合した。IgMCM-22-および生理食塩水-処理マウスの再灌流された空腸から調製された組織セクションの組織学の分析は、予測されたように、障害およびIgMおよび補体の沈積を同定した(図5Aiおよび5B)。対照的に、再灌流に先立ってのN2ペプチドとIgMCM-22との混合は障害から保護的であった(平均病理学的スコア13±8対31±10;p<0.049)(図10Aiiおよび10B)。加えて、IgMCM-22をRAG-1-/-マウスでの注射に先立ってN2ペプチドと混合した場合、IgMおよび補体の沈積は再灌流した空腸で観察されなかった(図10Ci-viii)。従って、合成ペプチドP8で観察されたように、自己ペプチドN2はインビボにてIgMCM-22の機能的結合をブロックした。
【0226】
自己ペプチドN2が腸RIにおける主要自己-エピトープを表すかを検定するために、腸モデルでの再灌流に先立って、WTマウスをほぼ40μMの合成ペプチドP8で処理した。生理食塩水処理WTマウスの組織セクションの組織学的分析は、予測されたように、障害およびIgMおよび補体の沈積を同定した(図10Aiiiおよび10Cix-xii)。対照的に、自己ペプチドN2でのWTマウスの処理は障害(平均病理学的スコア8±5対22±17)およびIgMおよび補体の沈積を共にブロックした(図10Aiv;図10B;図10Cxiii-xvi)。これらの結果は、タイプIIのNMHCタンパク質内の保存された領域が、腸モデルにおける虚血に続いての天然IgMの結合のための主要エピトープを表すことを示唆する。
【0227】
参照による援用
本明細書において言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、参照により本明細書に、あたかも各個々の刊行物または特許が参照により具体的かつ個々に一体化されることを示すようにその全体が組み入れられる。コンフリクトする場合、本明細書中のいずれの定義も含む本出願が支配する。
【0228】
また、参照によりその全体が組み入れられるのは、いずれものポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列であり、これは、延長tigr.orgを伴う世界的ウェブでのThe Institute for Genomic Research(TIGR)、または延長ncbi.nlm.nih.govを伴う世界的ウェブでのNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって維持されるもののような公のデータベースへのエントリーに関連するアクセッション番号を参照する。
【0229】
同等物
当業者であれば、せいぜいルーチン的実験を用いて、本明細書において記載された発明の特定の態様に対する多くの同等物を認識し、それを確認することができるであろう。そのような同等物は特許請求の範囲に含まれることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】B-1ハイブリドーマ22A5のIgM重鎖配列を示す。(A)はIgMCM-22(または22A5 IgM)重鎖核酸配列(SEQ ID NO:1)を示し、(B)はSEQ ID NO:1の重鎖配列に対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す。フレームワーク領域(FVWR)および相補性-決定領域(CDR)はヌクレオチドの上方に示す。
【図2】B-1ハイブリドーマ22A5のIgM軽鎖配列を示す。(A)はIgMCM-22(または22A5 IgM)軽鎖核酸配列(SEQ ID NO:7)を示し、(B)はSEQ ID NO:7の軽鎖配列に対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:8)を示す。フレームワーク-領域FVWRおよび相補性-決定領域(CDR)はヌクレオチドの上方に示す。
【図3】腸虚血および再灌流または障害無し(偽)後における同系繁殖体マウスの腸透過性の変化を示す棒グラフである。WTはCr2-/-マウスについての親株を表す。Cr2-/-はプールされたIgGまたはIgMまたは生理食塩水対照で復元した。プールされたIgMまたはIgG(0.5mg)を処理のほぼ1時間前に静脈内投与した。値は平均+標準誤差であり;nは実験群におけるマウスの数と等しい。
【図4】単一B-1細胞ハイブリドーマクローンからのプールされたIgMによる抗体欠乏マウス(RAG-1)におけるI/R障害復元を示す。初期側腹切開の30分前にIgMまたは生理食塩水を静脈内注射した。再灌流の最後に、血液を得、血液のそれに対する乾燥した腸の125Iカウントの比率として透過性指数を計算した。値は平均±標準誤差を表し;nは実験群で用いたマウスの数に等しい。1=WT+正規生理食塩水;2=RAG+正規生理食塩水;3=RAG+IgMハイブリドーマCM-22;4=WT偽対照。
【図5】腹腔B-1リンパ球の陽性選択における補体および補体受容体についての提唱された役割の概略図である。
【図6】(A)は、IgMCM-22特異的ペプチドについてのM-13ファージ-ディスプレイライブラリーのELISAスクリーニングを示すグラフである。記号:□-P1クローン;X-P2クローン、○-P7クローン;◇-P8クローン。プレートを、種々の濃度のファージ-クローンの添加の前にIgMCM-22の溶液でコートした。結果は少なくとも3つの独立した実験の代表である。(B)は、合成ペプチドP8がファージクローンP8のIgMCM-22結合を阻害することを示す棒グラフである。ELISAは、5×1011PFUファージの添加に先立って、IgMCM-22をコートしたプレートに付加された種々の濃度の合成ペプチドP8で行った。結果は少なくとも3つの独立した実験の代表である。(C)は、P8ペプチドのIgMCM-22への特異的結合を示す棒グラフである。ELISAプレートをP8ペプチドの50μg/ml溶液でコートし、続いて、1または10μg/mlのIgMCM-22またはIgMCM-75を加えた。IgM結合はビオチニル化ラット抗マウスIgM、続いて、ストレプトアビジン-ホスファターゼおよび発色反応で検出した。結果は、少なくとも3つの独立した実験の代表である。
【図7】(A)は、P8ペプチドがIgMCM-22媒介障害をインビボでブロックすることを示す一連の顕微鏡写真である。2つの上方パネル(iおよびii)は、各々、IgMCM-22単独、またはP8ペプチドと混合したIgMCM-22でのRAG-1-/-マウスにおけるRI処理に続いて調製された(ヘマトキシリンおよびエオシンで染色された)代表的セクションである。2つの下方パネル(iiiおよびiv)は、再灌流に5分先立って生理食塩水またはペプチドP8を受けた、腸再灌流障害につき処理された野生型マウスから調製された代表的セクションである。矢印は障害の病理学的特徴を示す。倍率200×。(B)は、処理された動物の各群の平均病理学スコアを示すスキャタープロットである。各記号は1つの動物からのスコアを表す。対照群は、ペプチドP8と同様な用量の対照ペプチド(ACGMPYVRIPTA; SEQ ID NO: 61)で予備処理されたWTマウスである。* は、P8-処理-対-未処理群のスチューデントのt検定によって決定された統計学的有意性を示す(p<0.05)。(C)は、P8-処理動物の微小絨毛内のIgMおよび補体C3またはC4の非存在を示す一連の顕微鏡写真である。腸組織の代表的低温セクションは腸RIに続いて収穫した。パネルi〜viiiは、P8での予備処理無しの(パネルi〜iv)またはP8での予備処理有りの(パネルv〜viii)IgMCM-22復元RAG-1-/-マウスである。パネルは、P8無しの(パネルix〜xii)またはP8で予備処理したパネル(xiii〜xvi)WTの腸からの低温セクションを表す。セクション(i、iii、v、vii、ix、xiii、xv)を抗IgM-ビオチン、続いて、ストレプトアビジン-Alexa-568(赤色)で染色し、DAPI(紫色)で逆染色した。パネル(ii、x、xiv)は抗C4-Alexa 488/FITC(緑色)で染色し、パネル(iv、viii、xii、xvi)は抗C3-FITC(緑色)で染色した。倍率400×。
【図8】(A)は、再灌流障害(RI)特異性抗原の免疫沈澱を示すイムノブロットである。SDS-PAGE(10%)でのほぼ250kDaでのユニークなバンド(矢印)の検出。サイズマーカーは左側に示す。腸溶解物は、IgMCM-22または偽対照(虚血無し)で復元した、または虚血、続いて、0または15分の再灌流に供されたRAG-1-/-マウスから調製した。(B)は、非筋肉ミオシン重鎖-II(NMHC-II)のイソ形態へのIgMCM-22のインビトロ結合アッセイの結果を示す一連のグラフである。ELISAプレートはNMHC-IIの3つの異なるイソ形態に対するモノクローナル抗体でコートした上方左側:イソ形態A、(上方右側:イソ形態B、下方左側:イソ形態C、および下方右側:抗panミオシン抗体)。腸溶解物からの結合したミオシン重鎖を、IgMCM-22またはIgMCM-31で検出した。結果はOD405nm単位の平均±標準誤差で表し、これは三連試料の代表である。(C)は、RAG-1-/-マウスにおける抗panミオシン抗体によるRI障害の回復を示す顕微鏡写真およびスキャタープロットである。RAG-1-/-マウスはアフィニティー精製抗panミオシンで復元し、続いて、RI外科的処置を行った。左側パネルは、生理食塩水対照および抗panミオシン処理でのRAG-1-/-動物の形態学を表す。右側パネルは腸障害の病理学的スコアである。スキャタープロット(右側パネル)は病理学的スコアを表し、ここに、各記号は単一動物を表す。
【図9】(A)は、自己ペプチドN2についての表面プラズモン共鳴を示すグラフである。IgMCM-22-カップルド表面に注入された濃度10.5μM〜120μMの自己ペプチドN2の試料についての結合等温線。(B)は、対照ペプチドについての表面プラズモン共鳴を示すグラフである。IgMCM-22-カップルド表面にわたって117μMの濃度で注入された、同一長さのランダム配列対照ペプチド(AGCMPYVRIPTA;SEQ ID NO:62)についての結合等温線。(C)は、(A)で示された注入についての定常状態応答レベルに対する1:1ラングミュアー結合等温線への非線形曲線フィッティングを示すグラフである(χ2=10)。(D)は、対照IgMCM-31とカップリングした表面にわたる120μMの自己ペプチドN2の注入についての結合等温線を示すグラフである。
【図10】(A)は、RAG-1-/-マウスにおけるRIをN2自己ペプチドがブロックすることを示す一連の顕微鏡写真である。2つの上方パネルは、IgMCM-22単独、またはN2自己ペプチドと混合したIgMCM-22でのRAG-1-/-マウスにおけるRI処理に続いて調製した代表的セクションを示す。2つの下方パネルは、再灌流に5分先立って生理食塩水またはN2ペプチドいずれかを受けた、腸RIにつき処理したWTマウスから調製された代表的セクションである。(B)は、処理された動物の各群の平均病理学的スコアを示すスキャタープロットである。各記号は単一マウスを表す。* はスチューデントのt検定に基づく統計学的有意性を示す。(C)は、自己ペプチドN2による腸RIでの補体の古典的経路の活性化の防止を示す一連の顕微鏡写真である。腸組織の代表的低温セクションは腸RIに続いて収穫し、マウスIgM、C4またはC3に対して特異的な抗体で処理した(400×倍率)。自己ペプチドN2での予備処理無しのIgMCM-22-復元RAG-1-/-マウスはパネルi〜ivにあり、自己ペプチドN2で予備処理したものはパネルv〜viiiにある。自己ペプチドN2での予備処理無しの野生型マウスはパネルix〜xiiにあり、自己ペプチドN2で予備処理したものはパネルxiii〜xviにある。パネルi、iii、v、vii、ix、xiii、xi、xvにおける組織は抗IgM-ビオチン、続いて、ストレプトアビジン-Alexa-568(赤色)で染色し、DAPI(紫色)で逆染色した。パネルii、vi、xおよびxivは抗C4-FITC(緑色)で染色した。パネルiv、viii、xii、xviは抗C3-FITC(緑色)で染色した。
【図11】マウス非筋肉ミオシン重鎖II-A(mNMHC-IIA)の(A)核酸配列(SEQ ID NO:47;Genbankアクセッション番号NM_022410)および(B)アミノ酸配列(SEQ ID NO:48;Genbankアクセッション番号NP 071855)を示す。
【図12】ヒト非筋肉ミオシン重鎖II-A(hNMHC-IIA)の(A)核酸配列(SEQ ID NO:49;Genbankアクセッション番号NM_002473)および(B)アミノ酸配列(SEQ ID NO:50;Genbankアクセッション番号NP_002464)を示す。
【図13】マウス非筋肉ミオシン重鎖II-B(mNMHC-IIB)の(A)核酸配列(SEQ ID NO:51;Genbankアクセッション番号NM_175260)および(B)アミノ酸配列(SEQ ID NO:52;Genbankアクセッション番号NP_780469)を示す。
【図14】ヒト非筋肉ミオシン重鎖II-B(hNMHC-IIB)の(A)核酸配列(SEQ ID NO:53;Genbankアクセッション番号NM_005964)および(B)アミノ酸配列(SEQ ID NO:54;Genbankアクセッション番号NP_005955)を示す。
【図15】マウス非筋肉ミオシン重鎖II-C(mNMHC-IIC)の(A)核酸配列(SEQ ID NO:55;Genbankアクセッション番号AY363100)および(B)アミノ酸配列(SEQ ID NO:56;Genbankアクセッション番号AAQ24173)を示す。(C)はもう1つの非筋肉ミオシン重鎖II-Cの、核酸配列(SEQ ID NO:57;Genbankアクセッション番号NM_028021)を示し、(D)はアミノ酸配列(SEQ ID NO:58;Genbankアクセッション番号NP_079005)を示す。
【図16】ヒト非筋肉ミオシン重鎖II-C(hNMHC-11C)の(A)核酸配列(SEQ ID NO:59;Genbankアクセッション番号NM_024729)および(B)アミノ酸配列(SEQ ID NO:60;Genbankアクセッション番号NP_079005)を示す。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:14を含むペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項2】
核酸がSEQ ID NO:13である請求項1記載の単離された核酸。
【請求項3】
SEQ ID NO:16、18、20、22、24、26、28、30、または32を含むペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項4】
核酸がSEQ ID NO:15、17、19、21、23、25、27、29、または31である、請求項3記載の単離された核酸。
【請求項5】
ペプチドがSEQ ID NO:30を含む請求項3記載の単離された核酸。
【請求項6】
核酸がSEQ ID NO:29である請求項4記載の単離された核酸。
【請求項7】
SEQ ID NO:48、50、52、54、56、58、または60の天然IgM抗体結合部分を含むペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項8】
SEQ ID NO:36または38を含むペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項9】
ペプチドがSEQ ID NO:38を含む請求項8記載の単離された核酸。
【請求項10】
プロモーターに操作可能に連結された、請求項1、3、7、または8記載の単離された核酸。
【請求項11】
請求項10記載の核酸を含むベクター。
【請求項12】
請求項11記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を有するペプチドを含む組成物。
【請求項14】
SEQ ID NO:16、18、20、22、24、26、28、30、または32のアミノ酸配列を有するペプチドを含む組成物。
【請求項15】
ペプチドがSEQ ID NO:30を含む請求項14記載の組成物。
【請求項16】
SEQ ID NO:36または38のアミノ酸配列を有するペプチドを含む組成物。
【請求項17】
ペプチドがSEQ ID NO:38を含む請求項16記載の組成物。
【請求項18】
ペプチドがペグ化された請求項13、14、または16記載の組成物。
【請求項19】
ペプチドが検出可能な標識で標識された、請求項13、14、または16記載の組成物。
【請求項20】
請求項13、14、または16記載の組成物を対象に投与する段階を含む、炎症性疾患または障害を治療する方法。
【請求項21】
炎症性疾患または障害が再灌流障害である請求項20記載の方法。
【請求項22】
対象が哺乳動物である請求項20記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物がヒトである請求項20記載の方法。
【請求項24】
a)SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:5のヌクレオチド配列に対して少なくとも96%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:5のヌクレオチド配列を含む核酸分子;または
c)ストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸分子
からなる群より選択される、単離された核酸分子。
【請求項25】
SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、またはSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項26】
請求項24記載の核酸を含むベクター。
【請求項27】
請求項26記載の核酸を含む細胞。
【請求項28】
a)SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、またはSEQ ID NO:11のヌクレオチド配列に対して少なくとも96%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、またはSEQ ID NO:11のヌクレオチド配列を含む核酸分子;または
c)ストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:7のヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸分子
からなる群より選択される、単離された核酸分子。
【請求項29】
SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項30】
請求項28記載の核酸を含むベクター。
【請求項31】
請求項30記載の核酸を含む細胞。
【請求項32】
SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、またはSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項33】
SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項34】
以下の特性:
(i)虚血特異性抗原と相互作用できる;
(ii)補体を固定することができる;または、
(iii)B細胞の亜集団によって生産される
の一つもしくは複数を有する単離された天然免疫グロブリンまたはその抗原結合部分。
【請求項35】
IgMである請求項34記載の単離された天然免疫グロブリン。
【請求項36】
免疫グロブリンがB-1細胞によって生産される、請求項34記載の単離された天然免疫グロブリン。
【請求項37】
ATCC寄託番号PTA-3507を有する細胞によって生産される請求項34記載の単離された天然免疫グロブリン。
【請求項38】
免疫グロブリンが組換え抗体である請求項34記載の単離された天然免疫グロブリン。
【請求項39】
虚血特異性抗原に結合する、請求項24記載の核酸配列を含む抗体。
【請求項40】
虚血特異性抗原に結合する、請求項28記載の核酸配列を含む抗体。
【請求項41】
さらに、請求項28記載の核酸配列を含む請求項39記載の抗体。
【請求項42】
SEQ ID NO:2のポリペプチドをコードする核酸配列およびSEQ ID NO:8のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項41記載の抗体。
【請求項43】
補体の結合または活性を改変する突然変異を有する修飾された天然免疫グロブリン。
【請求項44】
虚血特異性抗原と相互作用できる請求項43記載の修飾された天然免疫グロブリン。
【請求項45】
IgMである請求項43記載の修飾された天然免疫グロブリン。
【請求項46】
IgGである請求項43記載の修飾された天然免疫グロブリン。
【請求項47】
治療上有効量の請求項43記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む組成物。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図15−4】
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【図15−5】
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【図15−6】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【公表番号】特表2008−504807(P2008−504807A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501869(P2007−501869)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/006276
【国際公開番号】WO2005/085288
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506297935)イミューン ディズィーズ インスティテュート インコーポレイテッド (2)
【出願人】(592257310)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (31)
【出願人】(596041021)ザ・ブリガム・アンド・ウイメンズ・ホスピタル・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】THE BRIGHAM AND WOMEN′S HOSPITAL, INC.
【Fターム(参考)】