説明

太陽光モジュールおよび共押出しエレメント

本発明は、フロントカバー(4)及びリヤカバー(6)間に配置された少なくとも一つの太陽電池(2)を備えた太陽光モジュール(1)に関し、フロントカバー(4)は太陽電池(2)に光が届くのを許容する。本発明は、少なくとも2層のハロゲン非含有の共押出しエレメント(6’)を含むリヤカバー(6)を備え、その共押出しエレメントは、太陽電池(2)に面した第1の熱可塑性層(8)及び太陽電池(2)から離れた第2の熱可塑性層(10)を有する。第1の熱可塑性層(8)は、当該第1の熱可塑性層(8)の熱可塑性材料の反射率よりも高い反射率を有する第1のフィラー(18)を含む。第2の熱可塑性層(10)は、当該第2の熱可塑性層(10)の熱可塑性材料よりも高い熱伝導率を有する第2のフィラー(20)を含む。前記二つの熱可塑性層(8,10)において、第1のフィラー(18)又は第2のフィラー(20)のそれぞれの比率が、他方の熱可塑性層(10,8)における同じフィラー(18,20)の比率とは異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントカバーとリヤカバーとの間に配置された少なくとも一つの太陽電池を有する太陽光モジュールに関する。ここで、前記フロントカバーは太陽電池への光の透過を許容するものである。
【0002】
本発明は更に、少なくとも二つの熱可塑性の層およびフィラー(充填物)を含む共押出しエレメント(共押出し要素)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
太陽光の又は光起電性のモジュールは一般に、フロントカバーとリヤカバーとの間に配置された太陽電池を有する。工業的にシリコン製の太陽電池は、他の材料が次第に使用されつつあるけれども、現時点では最も重要なものである。フロントカバーは一般的に半透明ガラスを備え、エチレン酢酸ビニル(EVA)を含有する結合材によって太陽電池に接続されている。リヤカバー(時に「バックシートフィルム」とも言われる)は一般的に、フッ素ポリマーが高い耐熱性を示すために、フッ素ポリマーベースのプラスチックフィルムを備える。例としてRoekens und Beyer, Kunststoffe 5/2007(第92〜95頁)に注意を向けよ。その文献ではリヤカバーは、フッ化ポリビニル(PVF)−ポリエチレンテレフタレート(PET)−PVFの3層ラミネートを具備する。Roekens und Beyerに従った最先端技術の欠点は、リヤカバーのフッ素含有量のために、そのリサイクルが熱的にだけ可能、つまり、複雑で費用のかかる焼却プロセスによってのみ可能であるという事実にある。
【0004】
日本特許公開JP 2007-177136 Aは、太陽電池およびバックシートフィルムを備えた構成を開示しており、そこでは当該フィルムは、ガラス繊維、マイカ、珪灰石(wollastonite)又は二酸化チタンを含むことができる。その欠点は、当該フィルムの性質が全領域にわたってほぼ不変であり、太陽電池への近接に関して特性の適応性(adaptation)がないということにある。それに加え、結果として、バックシートフィルムの総厚みにわたり個々のフィラーの物質的消耗が大変おおきい。これらの欠点は、同じく、米国特許公開US 2008/0264484 A1にも当てはまる。
【0005】
ヨーロッパ特許公開EP 2043162 A2は、フロントカバーと、プラスチックのリヤカバーとを有する太陽光モジュールを開示する。そこに記載された構造は、概して低電力レベルでの小面積適用には確かに適しているが、必然的に高温が発生する大面積適用の場合には、そこに記載された構造は適切ではない。米国特許US No.6521825 B1は、多層のプラスチックを備えるリヤカバーを具備した太陽光モジュールを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特許公開JP 2007-177136 A
【特許文献2】米国特許公開US 2008/0264484 A1
【特許文献3】ヨーロッパ特許公開EP 2043162 A2
【特許文献4】米国特許US No.6521825 B1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Roekens und Beyer, Kunststoffe 5/2007(第92〜95頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の欠点が緩和された太陽光モジュール、即ち太陽光モジュールのリヤカバー用の、共押出しエレメント形態のプラスチック体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
フロントカバー及びリヤカバー間に配置された少なくとも一つの太陽電池を備えた太陽光モジュールにおいて、前記フロントカバーは太陽電池に光が届くのを許容するものである。その目的は、(次のようにして)達成される:即ち、
前記リヤカバーは、少なくとも2層のハロゲン非含有の共押出しエレメントを含み、その共押出しエレメントは、前記太陽電池に面した第1の熱可塑性層、及び、前記太陽電池から離れた第2の熱可塑性層を有しており、
前記第1の熱可塑性層は、当該第1の熱可塑性層の熱可塑性材料の反射率よりも高い反射率を有する第1のフィラーを含んでおり、前記第2の熱可塑性層は、当該第2の熱可塑性層の熱可塑性材料よりも高い熱伝導率を有する第2のフィラーを含んでおり、
前記二つの熱可塑性層において、第1のフィラー及び/又は第2のフィラーの少なくとも一方の比率が、他方の熱可塑性層における同じフィラーの比率とは異なっている。
換言すれば、これは、第1のフィラー及び/又は第2のフィラーの観点で第1の熱可塑性層は第2の熱可塑性層とは異なっていることを意味する。
【0010】
第1の熱可塑性層における反射率の増大は、二つの機能を果たす。一方で、例えば太陽電池を通り抜けた、あるいは太陽電池のそばをやり過ごした光が太陽電池の方へ戻し反射されるにつれて、より多くの光が太陽電池に入射し、その結果、電気エネルギーに変換される電磁放射の収量が増大される。他方で、第1の熱可塑性層の背後にある太陽光モジュールの一部が、熱エネルギーから保護される。
【0011】
対応するフィラーのおかげによる第2の熱可塑性層での熱伝導性の増大のために、共押出し品およびそれを具備した太陽光モジュールの長期耐温度性(長期耐熱性)(RTI)が、顕著に増大する。特に、高いシステム電圧が生じる大規模モジュールの場合には、そのやり方で電力を増大することが可能である。
【0012】
太陽光モジュールは、共押出しによってもっと容易に製造できる。
【0013】
現在可能な大規模太陽光モジュール及びそれにリンクされるより高いシステム電圧のために、第2のフィラーが熱可塑性層の絶縁破壊抵抗(絶縁破壊耐性)を追加的に増大させることが、有利に提供され得る。典型的な電気絶縁体は、自分自身に存在するそのような特性を有している。第2の熱可塑性層に20重量%のフィラーを含有させた場合に、絶縁破壊抵抗が(フィラー無しの場合の同じ層に対して)12〜15%改善されることを測定結果は示した。長期の温度安定性を更に増大させるために、第2のフィラーが追加的に、熱可塑性材料よりも低い熱膨張係数を有することは、更に有利である。結果として、このことは、熱負荷の下での可塑性材料の低い膨張度をもたらす。より具体的には、単純な可塑性リヤカバーの場合、温度上昇に伴って進行する膨張およびそれに引き続く冷却時の収縮は、多大な作動時間後に可塑性層が疲弊するという結果をもたらす。
【0014】
ある種の物質が、全ての特性、即ち、高い熱伝導性、高い絶縁破壊抵抗および低い熱膨張係数を満たす。特に、マイカのような層状の物質、例えば、白雲母(muscovite)や、より低度の黒雲母(iron mica)が使用でき、それだけでなく、珪灰石(wollastonite)、窒化ホウ素、例えばマイカよりも低程度だけれどもガラス繊維のような繊維質物質、並びに、前記の物質の自然混合物も使用できる。低い熱膨張係数は、実質的により低い収縮性を提供し、これにより、埋め込みモジュールが安定化される。
【0015】
層状の構造をもった白雲母(muscovite)の使用は好ましい。一般に層状物質は、長さ及び幅においては5〜45μm、好ましくは5〜15μmで、厚さについては2μm未満、好ましくは1μm未満で提供され得る。
【0016】
仮に、第2のフィラーがポリオレフィンとのコンパウンドの形態にあるならば、つまり、熱可塑性層への導入に先立ち、第2のフィラーがキャリヤとしてのポリオレフィンと混合されることは、特に望ましい。それに引き続く熱可塑性材料への導入は熱伝導性を提供し、熱の消散性が改善され、電気抵抗が低減される。特にガラス繊維は、コンパウンドの形態でフィラーとして使用可能であり、良好な効果をもたらす。加えて、ポリオレフィンは、より低い水蒸気の透過性を層にもたらす。米国特許No.6521825 B1公報はまた、水蒸気の透過性を低減することにも関与する。その目的のために、酸化ケイ素がプラスチック層の上に蒸着される。その後、プラスチック層と蒸着酸化物層との共押出しはもはや不可能なので、リヤカバーの層はラミネート加工によって適用されなければならない。本発明では、フィラーは層の中に組み込まれている。
【0017】
熱可塑性材料の量に対する第2のフィラーの比率は、好ましくは、5〜30重量%、より好ましくは、10〜20重量%である。
【0018】
ある変更例では、第2の熱可塑性層においてフィラーの組合せが導入されることを提供する。その場合、充填の程度は、フィラーの密度に応じて60重量%まである。この観点において、望ましい組合せは、珪灰石(wollastonite)及び/又は白雲母(muscovite)と、コンパウンドとしてポリオレフィン(例えばポリプロピレン)に埋め込まれたガラス繊維とから構成される。
【0019】
特に好ましい変更例では、第1のフィラーは二酸化チタン(TiO)を含む。第1のフィラーとしてのTiOは、光を大変多く反射するという利点を有し、これは、適切な混合物と共に、90%を超える(好ましくは99%を超える)反射率を伴う。熱可塑性材料の量に対する第1のフィラーの比率は、好ましくは5〜30重量%である。
【0020】
好ましい実施形態は、第1の熱可塑性層だけが当該第1の熱可塑性層の熱可塑性材料の反射率よりも高い反射率を有する第1のフィラーを含むこと、を提供する。換言すれば、第2の熱可塑性層とは対照的に、第1の熱可塑性層は熱伝導性に実質的に影響を与えるフィラーを持たない。但し、各種の他のフィラー(例えば着色用のフィラー)を含む熱可塑性材料の可能性が排除されるべきではないことは、理解されるであろう。
【0021】
逆に、更に好ましい実施形態は、第2の熱可塑性層だけが当該第2の熱可塑性層の熱可塑性材料よりも高い熱伝導性を有する第2のフィラーを含むこと、を提供する。換言すれば、第1の熱可塑性層とは対照的に、第2の熱可塑性層は反射率に実質的に影響を与えるフィラーを持たない。
【0022】
好ましい変更例では、フロントカバーの表面よりも低い反射率を有する追加の層が、太陽電池に背を向ける、第2の熱可塑性層の側に配置されること、が提供され得る。そして、その追加の層が少なくとも二つの他の熱可塑性層と共に共押出しエレメントを形成する第3の熱可塑性層であることは好ましい。前記追加の層が着色され、及び/又は、艶消し手段を有することは、更にあり得る。本発明の変更例は、第1の熱可塑性層が着色されることを提供し得る。そのこと自体は、例えば、太陽光モジュールがファサード(facade)(訳注:建物正面の構造物)用のエレメントとして使用されることを示している。その点に関して、太陽電池は一般にモジュールの全表面積をおおって配置されず、及び/又は、部分的に半透明な性質にあるということに気付くべきである。それ故、リヤカバーの着色もまた、フロント側から少なくとも部分的に可視的である。
【0023】
太陽電池は多くの場合、埋め込み材料内に導入される。埋め込み材料は同時に、太陽電池と共押出しエレメントとの間、及び、太陽電池とフロントカバーとの間の結合(連結)を形成して、当該埋め込み材料は結合材(剤)(bonding agent)の形態となる。その結合材(剤)は、例えばEVA(エチレン酢酸ビニル)を含み得る。ただし、EVAの取扱いは複雑で高価であるので、代わりの結合材(剤)が有利であることは承知である。故に、特に好ましくは、結合材(剤)が、オレフィン、アクリレート(アクリル酸エステル)および無水マレイン酸のモノマー単位からなる共重合体である。好ましくは、オレフィンはエテン(ethene)であり、アクリレートはアクリル酸のアルキルエステル(即ち、アルキルアクリレート)である。
【0024】
特に好ましくは、その共重合体は次の構造を持つ。
【化1】



この式において、Rは、メチル(-CH3)、エチル(-C2H5)又はブチル(-C4H9)であり、x,y,zは整数である。好ましくは、アルキルアクリレート(好ましくは、アクリル酸ブチル)の比率(各場合においてMd−%)は15〜20%、無水マレイン酸は3〜4%、オレフィンはバランスする量(残量)である。好ましくは、その共重合体は、ASTM D 1238に準拠して測定された190℃での溶融流動率(melt flow rate)(MFR):2〜3g/10min(10分あたりグラム)を有する。その共重合体は好ましくは、20℃で0.85〜0.96g/cmの密度を有する。ASTM D 1525に準拠したビカー軟化点(Vicat softening point)は、好ましくは62〜74℃である。良好な混和性のためには、共重合体の処理温度は270℃である。仕上げ条件において、埋め込まれた太陽電池との結合材は共押出しエレメント中にそれ自体の層を形成する。その点において当該層の厚みは、好ましくは50〜400μmである。
【0025】
この明細書の冒頭部で既に述べたように、全ての熱可塑性材料はフッ素非含有の熱可塑性材である。温度安定性(耐熱性)の観点で、ポリエステルおよびポリアミドが好ましい。但し、ポリアミドが特に高い安定性を有することが知られよう。それ故、少なくとも1つの熱可塑性層がポリアミド層であること、より好ましくは、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、もしくはこれらのポリアミドのブレンド物、又は、ポリアミド/ポリオレフィンブレンド物であることが好ましい。全ての熱可塑性層が、特に好ましくはポリアミドから形成されている。(この場合)またしても、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、又は同種のポリアミドが、好ましいものとして提供される。
【0026】
上述の共押出しエレメントは、別個に製造されてから太陽電池に適用されるのにも当然に適している。それ故、更なる観点において、本発明は次のような共押出しエレメントに関する、即ち、共押出しエレメントは、熱可塑性材料の反射率よりも高い反射率を持ったフィラーを有する第1の熱可塑性層、及び、熱可塑性材料よりも高い熱伝導率を持ったフィラーを有する第2の熱可塑性層を含んでおり、熱可塑性材料は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、又は、ポリアミドとポリオレフィン(例えばポリプロピレン)のブレンド物からなる群から選択されるものである。
【0027】
特に、白雲母(muscovite)や黒雲母(iron mica)や珪灰石(wollastonite)のようなマイカ、窒化ホウ素、又は、ガラス繊維、及びそれらの混合物は、第2の熱可塑性層用の第2のフィラーとして有利であることが判明している。特に、それらの層構造のおかげで、一方では高い安定化作用を有し、他方では絶縁破壊耐性が増大して熱伝導性が有利に影響される。反射率を増大させるフィラーに加えて、第1の熱可塑性層はまた、熱伝導性を増大させる第2のフィラーを、20重量%の量まで持つことができる。
【0028】
好ましい層の厚さは、第1の熱可塑性層については25〜50μmであり、第2の熱可塑性層については150〜400μmであり、第3の熱可塑性層については25〜50μmである。
【0029】
説明した共押出しエレメントが上述の太陽光モジュールに使用されることは、理解されるであろう。総じて留意すべきことは、このことが等しく、共押出しエレメント及び太陽光モジュールに当てはまるということ、つまり、一方の有利な実施形態は同じく他方の有利な実施形態でもあるということである。
【0030】
本発明は更に、太陽光モジュールの製造のために上述した種類の共押出しエレメントの使用に関連する。
【0031】
更なる利点および詳細を、具体的な説明および添付の図面(各場合においてラフな模式図の形をとる)によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、最先端技術に従う太陽光モジュールの断面図を示す。
【図2】図2は、太陽光モジュールの作動モードを模式図的に示す。
【図3a】図3a及び図3bは、本発明に従う太陽光モジュールの二つの実施例(変形例)を示す。
【図3b】図3a及び図3bは、本発明に従う太陽光モジュールの二つの実施例(変形例)を示す。
【図4a】図4a及び図4bは、共押出しエレメントの実施例(変形例)を示す。
【図4b】図4a及び図4bは、共押出しエレメントの実施例(変形例)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、最先端技術に従う太陽光モジュール1を模式図的に示す。この構成は、フロントカバー4とリヤカバー6との間に配置された、電気的に導通状態で相互接続された複数の太陽電池2を有している。フロントカバー4は、ガラス又は可能な限り透明なプラスチックで作られている。太陽電池2は埋め込み材14,16内に埋め込まれている。埋め込み材14,16は、同時に結合材層14,16としての役目を果たし、EVAを含む。EVAは、フロントカバー4及び太陽電池2間の結合(結合材層16として図示)を生み出す、その一方でEVAはまた、リヤカバー6及び太陽電池2間の結合(結合材層14として図示)をも作る。リヤカバー6はフッ素ポリマー(フッ素樹脂)で作られている。それは一般的に、PVFを、あるいは可能性としてまた、フッ化ポリビニリデン(PVDF)を含む。そのようなフッ素材料は、高い温度安定性(耐熱性)を示すが、大変な労力をもってしてだけリサイクルされ得るという欠点に悩まされる。加えて、太陽光モジュールは、屋根またはファサード(facade)(訳注:建物正面の構造物)への固定を容易にするフレーム24を有している。
【0034】
太陽光モジュールの作動モードを概ね図2を参照して説明する。太陽電池2、より正確には「光電池」は、短波放射エネルギー、つまり例えば太陽光を電気エネルギーに直接的に変換する電気コンポーネントである。その変換の物理的基礎は、内部の光電効果の特別なケースを意味する光起電力効果である。太陽電池2は一般に、半導体、例えばシリコン系の半導体を含む。
【0035】
入射光26は、半透明であるフロントカバー4に入射する。つまりフロントカバー4は、太陽電池にとって有利な光スペクトルの大部分、好ましくは90%を超える透過率で、そこを通過するのを許容する。電磁気的放射が光起電力効果によって電気エネルギーに変換される。個々の太陽電池2は電気導通的に相互接続されており、生じた電圧は、端子28(ラフな模式形態でのみ図示)を経由して取り出され得る。
【0036】
図3aは、本発明の第1の実施例を示す。この場合、太陽光モジュール1はまた、フロントカバー4及びリヤカバー6に包まれた太陽電池2から形成される。太陽電池2は結合材14,16内に(全ての側で)埋め込まれ、これは電池の破損を防止すると共に回路の短絡を回避するためである。この場合、フロントカバー4は例えばガラスや透明なプラスチックであることが可能である。結合材14,16は、フロントカバー4及び太陽電池2間、並びに、リヤカバー6及び太陽電池2間に結合を形成する。例示の実施形態では、リヤカバー6は2層の共押出し6’の形態をなし、即ちそれは、ポリアミド11、ポリアミド12またはポリアミド1010からなる第1の熱可塑性層8と、同じくポリアミド11、ポリアミド12またはポリアミド1010からなる第2の熱可塑性層10とを含む。好ましくは、このケースの第1の熱可塑性層8だけが、当該層の反射性(反射率)を増大させるフィラー18を有している。具体的には、第1のフィラー18として二酸化チタンが使用され、そのフィラー18は、当該層に入射した事実上全ての光を反射して太陽電池2に戻し、これにより全体の光収率を増大させる。(更に)好ましくは、第2の熱可塑性層10だけが、その熱可塑性材料よりも高い熱伝導性(熱伝導率)を有する第2のフィラー20を有している。それは、熱が良好に消散し且つ長期耐熱性が増大することを意味する。具体的には、使用される第2のフィラーは黒雲母(iron mica)であり、それは、その層構造および電気絶縁体としての性質のために、絶縁破壊の耐性を増大させる。また、例えば、第2の層(2)の下側に艶消し(matting)層を設けることも可能である。図の明確性を改善する目的で、フィラーは図4において(のみ)より詳細に示されている。
【0037】
図3bの実施形態は、同時に共押出しエレメント6’を形成する3層のリヤカバー6を有する実施例(変形例)を示す。構造の残りの部分は図3aの事例に対応しているので、図3aに関する説明の文脈で既に述べた説明を参照すること、そして、対応する構造については重複説明していない。この好ましいケースにおいて追加的に設けられた第3の熱可塑性層12もまた、ポリアミドでできており、リヤ側における反射を低減するような艶消し(matting)手段を有する。それは太陽光モジュール1を取り付けるときの快適性を増す、なぜならそのやり方で整備工は目隠しされ難くなるからである。そのような層構造において、層8は高光沢表面を持った反射層としての役割を果たし、層10は過加熱や熱の蓄積を回避するより高い熱伝導性を有し、層12は耐候(気候耐性)的であり、例えばUV安定化剤の添加によってUV安定性を持つ。
【0038】
図4a及び4bは、図3bの事例に基づいた本発明に従う共押出しエレメント6’を示す。故に、図示された各層は図3bにおける層と対応しており、前述の説明を参照することができる。この層構造は好ましい実施形態を含むものである。ポリアミドからなる第1の熱可塑性層8における第1のフィラー18は、ドットで示されている。同じくポリアミドからなる第2の熱可塑性層10における第2のフィラー20,20’は、この場合一方において、コンパウンドとして存在すると共に、PEからなるポリオレフィンキャリヤー中に埋め込まれている。他方において、純粋な形態で導入される追加のフィラー20’が存在する。フィラー20は例えば、ガラス及び/又は黒雲母を持ったPPコンパウンドであり、その一方で、フィラー20’は好ましくは、白雲母(muscovite)及び/又は珪灰石(wollastonite)である。前記PPコンパウンドは、ガラス繊維または黒雲母のために熱伝導性を改善する。艶消し手段22は、第3の熱可塑性層12に含まれる。前記第1、第2および第3の熱可塑性層8,10,12は、共押出しエレメント6’の形態で存在する。図4aと図4bとの違いは、図4bは、好ましくは太陽電池が埋め込まれる結合材層14,16を追加的に有する点にある。結合材層14,16は、ASTM−D−1238に準拠した2.6g/10分のMFR、及び、20℃で0.89g/cmの密度を有するところの、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸ポリマーを備えている。例示の実施形態では、結合材層14,16は、図をより明確にするために二つの参照番号14,16で示されている。実施時の実際にあっては、これは、有利には、太陽電池2が埋め込まれる唯一つの層を含み、リヤカバー6及びフロントカバー4は同時に、太陽電池2を有する当該結合材層に結合される。
【0039】
最先端技術との関係での本質的な違いは、かなり異なった熱可塑性層8及び10にある。熱可塑性層8は、キャリヤー材のポリアミド12,11または1010を備え、それは紫外線(UV-rays)に関して高度に安定的であり、(しかし)とりわけ、それはTiO(少なくとも20〜30%の間)で高度に満たされている。特にTiOが処方された状態では、高レベルのUV耐性、(しかし)とりわけ、約95%の高反射率(そのパーセンテージは従前公知のフィルムよりも高い)を与える。その高レベルの反射率は、太陽光が、層4、それぞれの埋め込み材14及び16、並びに徐々に厚くなる(現時点で100〜180μmの厚さ)太陽電池2を通過して熱可塑性層8で反射されるときの効率において、測定できるほどの増大をもたらす。
【0040】
第2の熱可塑性層10は本質的に異なる組成を持つ。当該層の機能は特に、ガラス繊維のようなフィラーによって長さ方向の膨張係数を低減することにある。例えばPA12を用いて、それは、120と140の間(10 ハイ マイナス 6/K)から長さ方向で70%にまで、横方向で30%にまで低減される。それは、ガラス製パネル4の値に近づくのに必要である。周知のように、ガラスは、熱可塑性材料に比べて実質的により低い膨張係数を有する。ほとんど収縮しない材料は、それぞれの埋め込み材14,16を介してガラス製パネル4に接着されているバックシートフィルムの剥離を防止する。
【0041】
たいへん重要な機能は、フィラー、特にガラスに起因する。高レベルの濃度(20〜30%)では、長期の温度安定性は大いに増大する。現時点で測定されたRTI(relative temperature index)(相対温度指数)は、130度である。純粋なPA12,11または1010は、85〜95度のRTI値を有する。更にフィラーは、本発明に従って規定される熱伝導率および絶縁破壊耐性を改善することができる。熱可塑性層10は、ポリアミド(より高比率)と、主にフィラーを含有するポリオレフィンとの(ポリマー)アロイ(alloy)である。その(ポリマー)アロイは、ポリアミドと比較して、改善された水蒸気バリアー性および低レベルの水吸収性を示す。より低い水蒸気浸透性は、モジュール全体でより高圧の電流を許容する。
【0042】
特許請求の範囲に述べられた数値を顕著に増加させるためにフィラー濃度が相対的に高レベルであることは、両層に関して重要である。それ故、要求され且つ特定された性質を達成すべく少なくとも2層又は3層を共に押出し成形することは、大変有利である。少ないフィラー量(重量で5%以下)は、材料の特性にほとんど測定できない変化しかもたらさない。非常に異なって作用する(いくつかの)要求特性は一つの層では実現されない、というのも、フィラー内容物または熱可塑性の(ポリマー)アロイは、好ましくは複数の押出成形機で、異なる押出成形品としてのみ共押出し成形され得るからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントカバー(4)及びリヤカバー(6)間に配置された少なくとも一つの太陽電池(2)を備えると共に、前記フロントカバー(4)は太陽電池(2)に光が届くのを許容するものである、太陽光モジュール(1)において、
前記リヤカバー(6)は、少なくとも2層のハロゲン非含有の共押出しエレメント(6’)を含み、その共押出しエレメントは、前記太陽電池(2)に面した第1の熱可塑性層(8)及び前記太陽電池(2)から離れた第2の熱可塑性層(10)を有しており、
前記第1の熱可塑性層(8)は、当該第1の熱可塑性層(8)の熱可塑性材料の反射率よりも高い反射率を有する第1のフィラー(18)を含んでおり、
前記第2の熱可塑性層(10)は、当該第2の熱可塑性層(10)の熱可塑性材料よりも高い熱伝導率を有する第2のフィラー(20)を含んでおり、
前記二つの熱可塑性層(8,10)において、第1のフィラー(18)又は第2のフィラー(20)のそれぞれの比率が、それぞれの相手方の熱可塑性層(10,8)における同じフィラー(18,20)の比率とは異なっている、
ことを特徴とする太陽光モジュール。
【請求項2】
前記二つの熱可塑性層(8,10)において、第1のフィラー(18)及び第2のフィラー(20)の比率が、相手方の熱可塑性層(10,8)における同じフィラー(18,20)の比率とは異なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽光モジュール。
【請求項3】
前記第1の熱可塑性層(8)だけが、当該第1の熱可塑性層(8)の熱可塑性材料の反射率よりも高い反射率を有する第1のフィラー(18)を含み、
及び/又は、
前記第2の熱可塑性層(10)だけが、当該第2の熱可塑性層(10)の熱可塑性材料よりも高い熱伝導率を有する第2のフィラー(20)を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽光モジュール。
【請求項4】
前記第2のフィラー(20)は、前記熱可塑性材料の絶縁破壊強度を追加的に増大させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項5】
前記第2のフィラー(20)は、前記熱可塑性材料よりも低い熱膨張係数を追加的に有する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項6】
前記第2のフィラー(20)は、薄板状または繊維質である、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項7】
前記第2のフィラー(20)は、マイカ、好ましくは黒雲母、珪灰石、窒化ホウ素、ガラス繊維、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項8】
前記第1のフィラー(18)は、二酸化チタン(TiO)を含む、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項9】
前記太陽電池(2)から離れた第2の熱可塑性層(10)の側には、前記フロントカバー(4)の表面よりも低い反射率を有する追加の層(12)が配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項10】
前記追加の層(12)は、前記少なくとも二つの熱可塑性層とともに共押出しエレメント(6’)を形成する第3の熱可塑性層である、
ことを特徴とする請求項9に記載の太陽光モジュール。
【請求項11】
前記追加の層(12)は、着色されており、並びに/又は、艶消し手段および/もしくはUV安定剤を有している、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の太陽光モジュール。
【請求項12】
少なくとも前記第1の熱可塑性層(8)が、そして好ましくは共押出しエレメント(6)全体が着色されている、
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項13】
前記太陽電池(2)は埋め込み材(14)の中に配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項14】
前記埋め込み材(14)は、前記第1の熱可塑性層(8)及び第2の熱可塑性層(10)に結合されている、ことを特徴とする請求項13に記載の太陽光モジュール。
【請求項15】
前記埋め込み材は、前記第1の熱可塑性層(8)、第2の熱可塑性層(10)及び太陽電池(2)の間にある結合材(14)である、
ことを特徴とする請求項14に記載の太陽光モジュール。
【請求項16】
前記結合材(14)は、モノマー単位として、オレフィン(好ましくは、エテン)、アクリレート(好ましくは、アクリル酸アルキル)および無水マレイン酸を含む共重合体である、ことを特徴とする請求項15に記載の太陽光モジュール。
【請求項17】
前記第1の熱可塑性層(8)、第2の熱可塑性層(10)及びオプションとしての第3の熱可塑性層(12)における熱可塑性材料は、ポリアミド、ポリエステル、及び、ポリアミドとポリオレフィンのブレンド物からなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項18】
少なくとも一種の熱可塑性材料が、PA11、PA12、PA1010、もしくはそれらのブレンド物、又は、それらとポリオレフィンとのブレンド物から選択される、
ことを特徴とする請求項17に記載の太陽光モジュール。
【請求項19】
前記第1の熱可塑性層(8)に対する前記第1のフィラー(18)の含有量が、5重量%〜30重量%である、
ことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項20】
前記第2の熱可塑性層(10)に対する前記第2のフィラー(20)の含有量が、5重量%〜70重量%である、
ことを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の太陽光モジュール。
【請求項21】
第1の熱可塑性層(8)及び第2の熱可塑性層(10)を含む共押出しエレメント(6’)であって、
前記第1の熱可塑性層(8)は、当該第1の熱可塑性層(8)の熱可塑性材料の反射率よりも高い反射率を有する第1のフィラー(18)を含んでおり、
前記第2の熱可塑性層(10)は、当該第2の熱可塑性層(10)の熱可塑性材料よりも高い熱伝導率を有する第2のフィラー(20)を含んでおり、
前記二つの熱可塑性層(8,10)において、第1のフィラー(18)又は第2のフィラー(20)のそれぞれの比率が、それぞれの相手方の熱可塑性層(10,8)における同じフィラー(18,20)の比率とは異なっており、
前記熱可塑性材料は、ポリアミド、ポリエステル、及び、ポリアミドとポリオレフィンのブレンド物からなる群から選択される、ことを特徴とする共押出しエレメント。
【請求項22】
前記第2の熱可塑性層(10)上に配置される第3の熱可塑性層(12)が設けられている、ことを特徴とする請求項21に記載の共押出しエレメント。
【請求項23】
前記第3の熱可塑性層(12)もまた共押出しで形成され、
当該第3の熱可塑性層は、着色されており、並びに/又は、艶消し手段および/もしくはUV安定剤を有している、ことを特徴とする請求項22に記載の共押出しエレメント。
【請求項24】
前記第1のフィラー(18)は、二酸化チタン(TiO)を含む、
ことを特徴とする請求項21〜23のいずれか一項に記載の共押出しエレメント。
【請求項25】
前記フィラー(18,20)は、薄板状または繊維質である、
ことを特徴とする請求項21〜24のいずれか一項に記載の共押出しエレメント。
【請求項26】
前記第2のフィラー(20)は、白雲母、珪灰石、窒化ホウ素、黒雲母、ポリオレフィンに埋め込まれたガラス繊維、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項21〜25のいずれか一項に記載の共押出しエレメント。
【請求項27】
結合材が前記第1の熱可塑性層(8)上に配置されている、
ことを特徴とする請求項21〜26のいずれか一項に記載の共押出しエレメント。
【請求項28】
前記結合材は、モノマー単位として、オレフィン(好ましくは、エテン)、アクリレート(好ましくは、アクリル酸アルキル)および無水マレイン酸を含む共重合体である、
ことを特徴とする請求項27に記載の共押出しエレメント。
【請求項29】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の太陽光モジュールを含む、ファサード用のエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2013−512577(P2013−512577A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541278(P2012−541278)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/AT2010/000463
【国際公開番号】WO2011/066595
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512137614)イソボルタイック アーゲー (1)
【Fターム(参考)】