説明

太陽光利用システム

【課題】 屋根固定金具を通して雨水が侵入せず、風雨による吹込みによる侵入にも対応する。
【解決手段】 傾斜した屋根の上に雨水が流下する金属板を配し、この金属板の上に太陽光利用機器を設置する屋根設置架台を配設し、そして、屋根設置架台は、太陽光利用機器を固定する支持体と、この支持体を覆うカバー体とから成り、金属板における屋根設置架台の配設領域の上流部分に当該金属板の折り曲げて成る鍔部を形成し、この鍔部の下に前記カバー体の端部を挿入した太陽光利用システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱集熱温水器や太陽光発電装置などの太陽光利用機器を傾斜屋根上に設置した太陽光利用システムの改良に関するものであり、とくに、その太陽光利用機器を固定する架台を金属屋根上に設ける際の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光を光に変換する太陽電池を用いて、住宅の屋根などを発電部とする太陽光発電装置が普及している。また、太陽光を熱に変換する太陽熱集熱温水器も、すでに多く使用されているが、これら太陽光利用機器については、さらにさまざまな構造が展開されている。
【0003】
たとえば、屋根に取り付ける太陽光利用機器の一例として、その様々な屋根形状に合わせて太陽電池素子を複数接続した太陽電池モジュールがある。また、太陽電池モジュールを組合せて、配置する太陽熱集熱機器も、すでに提示されている。
【0004】
そして、この太陽光利用機器を屋根に取り付ける方法も、様々な構造にて提案されている。
【0005】
たとえば、屋根部材と一体的に製造された屋根一体型太陽電池モジュールが提案されている。また、図11と図12に示す取り付け構造も提案されている。
【0006】
図11は、従来の太陽光発電アレイを住宅の屋根上に設置する様子を模式的に説明する斜視図である。また、図12は、従来の屋根設置架台を屋根上に配し、太陽光発電アレイを支持する様子を示す一部拡大断面図である。
【0007】
最初に図11に示す設置構造である太陽光発電装置Jを説明する。
【0008】
40は屋根であり、この屋根40の上に縦桟41を配し、縦桟41上に、その方向に対し直交するように横桟42を配置し、架台として組み、そして、横桟42上に太陽電池モジュール44を設置する。これは屋根置き型と呼ばれる設置方法である。
【0009】
この設置方法を図12にて、さらに詳しく説明する。
【0010】
同図において、39は前記屋根40を構成する構造材である野地板であり、さらに垂木などを含む場合もある。38は野地板39の上に配する瓦材である。そして、縦桟41を野地板39に固定するために、木ねじ18(その他に釘を用いる場合もある)と屋根固定金具43を使用する。
【0011】
すなわち、野地板39の上に瓦材38を配し、さらに屋根固定金具43を配置し、そして、木ねじ18を、瓦材38を通して野地板39に接合し、屋根固定金具43を屋根上に強固に固定する。
【0012】
そして、屋根固定金具43の上に縦桟41を固定する構造である。
【0013】
しかしながら、上記提案の構造によれば、木ねじ18や釘が、屋根40上の瓦材38を打ち抜き、その屋根40の構造材に固定することで、瓦材38に穴ができ、その穴の部分から雨水が浸入するという問題があった。
【0014】
これに対し、屋根に穴を開けない構成が提案されている。
【0015】
この構成を図13に示す。
【0016】
同図に示すごとく、屋根材である金属製の板金に対し、それを折り曲げ加工した板金45に成し、その折り曲げにて生じる線状の突起部46の所定の部位に固定装置47を配し、そして、この固定装置47でもって突起部46を挟むように成した構造とし、これら複数個の突起部46の上に太陽電池モジュール44を配置する構成である。
【0017】
このような構成にしたことで、屋根に穴を開けないで、太陽電池モジュール44を屋根上に固定することができる。
【0018】
さらに他の取り付け方法も提案されている。
【0019】
図13に示す前記の取り付け方法においては、金属製の板金を折り曲げ加工した板金45を用いたが、これに代えて、同様に金属製の板金を用いても、その金属屋根に、前記突起部46のような形状にできない場合もある。
【0020】
たとえば、前述した図12に示す瓦材38においては、挟み込み構造にすることがむずかしくなるが、そのような構造であっても、金属屋根上に螺子や釘で打ちつけて固定し、その後、螺子や釘の頭部に雨水の侵入を防止する覆い板を被せるようにした構成が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平09−184264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述した取り付け方法においては、以下のような課題がある。
【0022】
屋根固定金具を屋根上に固定するために、木ねじや釘を用いて、瓦材に穴を開ける必要があり、これにより、屋根の防水性能が低下し、その穴を通して侵入した雨水によって、屋根に腐食などを引き起こしていた。
【0023】
このような腐食を防止するために、コーキングなど防水処理を行う技術が提案されたが、これに伴って施工の工数が増え、さらに作業者の熟練度による仕上がりのバラツキ(防水性能のバラツキ)が生じていた。そして、作業後の検査確認というような手間が、新たに発生していた。
【0024】
また、螺子や釘の頭部に雨水の侵入を防止する覆い板を被せるようにした場合においても、覆い板の上端部が上段の瓦材の下部に潜り込む構成であり、これにより、大半の雨水は覆い板上を通過し、耐候性を向上させることはできるが、覆い板と瓦材の間の隙間から侵入する横方向から流れ込む雨水があり、さらに風によって吹き込む雨水もあり、これら課題に対し、未だ満足し得る程度にまで解消されていなかった。
【0025】
しかも、覆い板と瓦材の隙間によって生じる毛細管現象によって自ら雨水を引き込む場合もあった。これを防止するために接着などのコーキングを用いれば、前述した施工仕上がりのバラツキというような問題が生じていた。
【0026】
したがって本発明の目的は、傾斜した屋根の上に太陽光利用機器を設置するに際し、雨水が屋根内に浸入しないようにした高品質な太陽光利用システムを提供することにある。
【0027】
本発明の他の目的は、コーキングなどの防水処理を行うこともなく、簡単な施工でもって、屋根に対する防水性能が高められ、施工コストを低減することができた太陽光利用システムを提供することにある。
【0028】
本発明のさらに他の目的は、防水性能のバラツキをなくした高信頼性の太陽光利用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の太陽光利用システムは、傾斜した屋根の上に雨水が流下する金属板を配し、この金属板の上に太陽光利用機器を設置する屋根設置架台を配設したシステム構造において、前記屋根設置架台は、太陽光利用機器を固定する支持体と、この支持体を覆うカバー体とから成り、前記金属板における屋根設置架台の配設領域の上流部分に金属板の折り曲げて成る鍔部を形成し、この鍔部の下に前記カバー体の端部を挿入したことを特徴とする。
【0030】
また、本発明の太陽光利用システムは、前記鍔部の下に挿入した前記カバー体の端部を、その鍔部の下方に配した金属部分とで挟み込むべく、金属板を成型したことを特徴とする。
【0031】
さらにまた、本発明の太陽光利用システムは、前記支持体は板状体と、前記太陽光利用機器と接続する機器支持体とから成り、さらに前記カバー体の裏面と金属板との間に前記板状体を配置したことを特徴とする。
【0032】
本発明の太陽光利用システムは、前記太陽光利用機器が太陽光発電装置であることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の太陽光利用システムは、前記太陽光利用機器が太陽熱集熱温水器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明の太陽光利用システムは、上記構成のごとく、太陽光利用機器を設置する屋根設置架台は、太陽光利用機器を固定する支持体と、この支持体を覆うカバー体とから成り、前記金属板における屋根設置架台の配設領域の上流部分に金属板の折り曲げて成る鍔部を形成し、この鍔部の下に前記カバー体の端部を挿入したことで、屋根上を流下する雨水が、そのカバー体の裏面に入り込まなくなり、その結果、固定用の釘やネジによる穴からの雨水の侵入によって屋根や固定金具が腐食するのを回避し、接着剤などの複雑な施工を用いなくなり、設置が容易となる。
【0035】
すなわち、容易に施工できることから、止水性能が作業者の熟練度に左右されなくなり、これにより、コーキングなど防水処理を行うこともなく、簡単な施工でもって、屋根に対する防水性能が高められ、施工コストを低減した高品質かつ高信頼性の太陽光利用システムが得られる。
【0036】
さらに本発明によれば、上記構成のごとく、鍔部の下に挿入したカバー体の端部を、その鍔部の下方に配した金属部分とで挟み込むべく、金属板を成型したことで、板金加工の容易性による効果も奏し、上述のごとき、簡単な施工によって、屋根に対する防水性能が高められ、施工コストの低減化とともに、高品質、高信頼性の高性能な太陽光利用システムが提供できる。
【0037】
また、本発明によれば、前述したごとき金属板に鍔部を設けることに加えて、さらに太陽光利用機器を設置する屋根設置架台を、つぎのごとき構造にするとよい。
【0038】
すなわち、この屋根設置架台を、太陽光利用機器を固定する支持体と、この支持体を覆うカバー体とから構成し、そして、この支持体については、板状体と、太陽光利用機器と接続する機器支持体とにより成し、さらにカバー体の裏面と金属板との間に、この板状体を配置したことで、この板状体がカバー体により固定され、太陽光利用機器を安定して支持することができる。
【0039】
ところで、この板状体に、たとえば穴を空け、そして、この穴に螺子などを挿入し、屋根の基体に固定した場合、この穴が露出することで雨水が浸入しやすくなるが、これに対し、本発明のごとく、カバー体を覆うことで、カバー体の裏面側に雨水が流入することを防ぐ構造にでき、屋根や、さまざまな固定金具に対する腐食を回避することができる。
【0040】
また、屋根上に板状体を配置し、さらにカバー体を被覆することで、屋根上を流下する雨水が、この板状体でもって阻止され、そして、その周囲を速やかに流れ落ち、このような止水路の構造にて、カバー体の裏側に雨水が浸入する程度を低減でき、あるいはその侵入を阻止することができる。
【0041】
以上のように、支持体を板状体と機器支持体とを組合せるに当り、この板状体をカバー体の裏面と金属板との間に配置する構成については、さまざまな構造が考えられる。
【0042】
たとえば、カバー体に穴を開け、この穴を通して機器支持体を配置する構成がある。もしくはカバー体の下流端部と金属板との間に、板状体を挿入した構成でもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の太陽光利用システムについて、その太陽光利用機器が太陽光発電装置である場合を例にして、詳細に説明する。
【0044】
(例1)
以下、その太陽光発電装置に係る屋根設置架台において、この防水構造の一実施形態について、模式的に示した図面に基づいて説明する。
【0045】
図2は傾斜した屋根の上に、屋根設置架台を取り付ける様子を示す斜視図であり、図1はその組立て完成状態を示す斜視図である。また、図3は縦桟および横桟にて太陽電池モジュールの組付けの様子を示す一部拡大断面図である。
【0046】
図1と図2に示すように本発明の屋根設置架台の防水構造は、傾斜した屋根の上に雨水が流下する金属板である金属屋根材10を配し、この金属屋根材10の上に前記屋根設置架台を配設した構造である。
【0047】
このように家屋の屋根上に葺かれた金属屋根材10上に、前記支持体である固定金具5を固定し、この固定金具5の上に、前記カバー体である防水カバー1が覆い被さる構造である。
【0048】
そして、本発明によれば、この金属屋根材10における屋根設置架台の配設領域(たとえば防水カバー1の敷設領域)の上流部分に金属屋根材10(金属板)の折り曲げ、これによって鍔部11を形成し、この鍔部11の下に防水カバー1の端部を挿入したことを特徴とする。
【0049】
このように金属屋根材10の折り曲げにて鍔部11を形成するには、その金属板の折り曲げにて得られるものであるが、その折り曲げは、金属屋根材10を敷設した後に、加工してもよい。
【0050】
また、金属屋根材10の敷設前に成型し、その成型した金属屋根材11を屋根に配置してもよい。この成型によれば、鍔部11の下に挿入した防水カバー1の端部を、その鍔部11の下方に配した金属部分とで挟み込むように構成するとよい。
【0051】
固定金具5は鉄やステンレスなどの金属で構成されており、長期間にわたる風雨などで支持強度が低下しないよう耐候性の良いものが用いられる。
【0052】
防水カバー1は鉄やステンレスなどから成る板金のプレス加工品や、ポリカーボネイトなどの樹脂成型品が適用できる。
【0053】
この防水カバー1の材質については、その板金において、耐候性に優れ、一方、樹脂については金属屋根との間に電触を起こさないなど各々の利点に合わせて選択する。
【0054】
なお、本例においては鉄板をプレス加工した板金品を用いて説明する。
【0055】
さらに図2に示すごとく、屋根設置架台を取り付ける方法を示す分解斜視図でもって、より具体的な構成を述べる。
【0056】
同図に示すように、まず屋根上に葺かれた、薄い鉄板を折り曲げ加工(成型)した屋根材である金属屋根材10上に固定金具5を配する。
【0057】
この固定金具5は、固定金具5を屋根上に固定するための前記板状体である基底部7と、屋根上への設置物を支持するための前記機器支持体とから成る。
【0058】
本例によれば、この機器支持体は、載置部8と、基底部7と載置部8を繋ぐ支持部6とで構成される。
【0059】
この基底部7には貫通穴17が設けられており、ここに木ねじ18(その他、たとえば釘でもよい)を打ち付けて固定金具5を屋根上に固定する。
【0060】
このような固定手段である場合、木ねじ18は金属屋根材10を突き破って屋根の構造材に打ち付けられるため、金属屋根材10に穴が空き、雨水の侵入を許すこととなり、侵入した雨水による屋根内部の構造材に腐食を生じさせる傾向にある。
【0061】
そこで、金属屋根材10に対し、その金属板の折り曲げによる鍔部11を設け、この鍔部11の下に防水カバー1の端部1aを挿入し、嵌め込むようにすればよい。
【0062】
このような挿入構造にすることで、金属屋根材10の上を流下する雨水が、防水カバー1の裏面に入り込まなくなり、これにより、貫通穴17からの雨水の侵入による、さまざまな部材の腐食を避けることができる。
【0063】
このような鍔部11については、金属屋根材10に用意した金属板を成型して得られる。その点で、容易に作製でき、製造コストを下げることができる。
【0064】
防水カバー1を固定金具5の上に覆い被す構造については、金属屋根材10における屋根設置架台の配設領域(防水カバー1)の下流部分に対し、その防水カバー1の端辺部より固定金具5の基底部7を挿入した構成にしている。
【0065】
この防水カバー1については、固定金具5の基底部7を被覆することで段差が生じ、これにより、金属屋根材10と接触する低部カバー体2と、基底部7を被覆する上部カバー体3とから成る。
【0066】
これら低部カバー体2と上部カバー体3は、双方一体化したシート状であっても、もしくは別々の部材を用意し、それぞれを被着したものでもよい。
【0067】
また、防水カバー1の付設には、接着材を用いて金属屋根材10の上、および/または基底部7の上に接着してもよい。または、この接着材を用いないで載置してもよい。
【0068】
この防水カバー1においては、機器支持体の支持部6と接触する部分(当接部4)を、さらに形成してもよい。
【0069】
すなわち、防水カバー1の低部カバー体2の端辺1aを鍔部11に対し嵌め込み、それと対向する辺である上部カバー体3に設けられた当接部4を、固定金具5の支持部6に当接させ、これにより、防水カバー1に穴を開けることなくなり、さらに固定金具5の基底部7を通して、金属屋根材10の穴に雨水が入らない止水構造または防水構造となる。
【0070】
本例においては、上述のごとく、金属屋根材10の金属板を折り曲げ、これによって得られた鍔部11の下に、防水カバー1の端部1aを挿入した点が特徴であるが、そのような端辺1aの鍔部11への嵌め込みの際には、図2に示すごとく、金属屋根材10の折り返し部12を上方に引き上げて行うとよい。もしくは、防水カバー1の低部カバー体を屈曲させて行うとよい。
【0071】
以上のとおり、防水カバー1は雨水を軒側に流す低部カバー体2と、固定金具や金属屋根材に開けられた穴を覆って雨水がかからないようにする上部カバー体3とから構成され、低部カバー体2の屋根上における棟側に配置される端辺1aが、金属屋根材10の鍔部11に入り込むことにより、図1に示す矢印でもって表されるごとく、屋根上の棟側から流れ落ちてくる雨水が低部カバー体2の裏側に入り込むことがなくなる。
【0072】
また、本発明によれば、上部カバー体3の屋根上における軒側に設けられた当接部4は、固定金具5の支持部6に当接する構造であり、そのことで、防水カバー1の抜け止めの役割を果たす。そして、図1に示す矢印のように、上部カバー体3の上を流れ落ちてくる雨水を堰き止め、低部カバー体2側へ落とす働きをする。その結果、支持部に直接雨水が当たって堰き止められた場合に生じる防水カバー内への水の逆流を無くすることができる。
【0073】
防水カバー1は低部カバー体2と上部カバー体3とから構成されるが、上部カバー体3の高さは固定金具5の基底部7が防水カバー1の裏面に当たらないようにするとよい。
【0074】
すなわち、固定金具5の支持部6は防水カバー1の外側から上部へ抜けるので、基本的には基底部7の高さ分だけでよいが、後述する雨水の流れを考慮すると基底部7の高さに合わせて低くするよりも、ある程度高低差を持たせたほうがよい。
【0075】
本発明者が行った実験によれば、基底部7の上面と、防水カバー1の下面との間隔を1.5mm以下、好適には1.0mm以下に設定すると、雨水の浸入が少なくなる。
【0076】
以上、詳述したごとく、屋根設置架台に、さらに太陽電池モジュールを取り付けた構成を図3に示す。
【0077】
同図は、縦桟および横桟にて太陽電池モジュールの組付けの様子を示す一部拡大断面図である。
【0078】
図3に示すように、40は屋根であり、この屋根40の上に屋根設置架台Sを設ける。
【0079】
この屋根設置架台Sは固定金具5と防水カバー1とから成り、さらに屋根設置架台S上には、その載置部8よって縦桟41が支持され、載置部8に設けられた締結穴部15に通されたボルト30とナット31によって強固に締結固定される。
【0080】
そして、縦桟41上には直交するように横桟42が固定され、この横桟42上に多数の太陽電池モジュール44が取り付けられ、屋根上に太陽光発電アレイが完成する。
【0081】
つぎに本発明に係る他の実施例について模式的に示す図を基に説明する。
【0082】
(例2)
前述した例においては、固定金具5の基底部7が矩形状もしくは正方形状であることで、その上部カバー体3もほぼ同様な矩形状もしくは正方形状であるが、これに代えて、図5に示すごとく、上部カバー体3の上流側を先細り形状にしてもよい。
【0083】
このような先細り形状にすることで、雨水を流れやすくなり、その流速が高くなり、その分、屋根上を流下する雨水が、上部カバー体3の周囲を速やかに流れ落ち、このような止水路の構造にて、カバー体の裏側に雨水が浸入する程度を低減でき、あるいはその侵入を阻止することができる。
【0084】
(例3)
(例1)に示すごとく、上部カバー体3の屋根上における軒側に設けられた当接部4によって上部カバー体上を流れ落ちてくる雨水を堰き止めて低部カバー体側へ落とす働きをするが、本例においては、図5に示すように当接部4にガイド部9を設ける。
【0085】
この構成を図4(a)に示す。同図は当接部4の横断面図である。
【0086】
本例においては、当接部4が掻き落とす雨水の一部がガイド部4と固定金具の支持部6の間の隙間から防水カバー1内部に侵入するのを防止し、これにより、図中の矢印のように雨水を確実に後方へ誘導することができ、その結果、止水性能が向上する。
【0087】
(例4)
本例を図4(b)に示す。同図は当接部4の横断面図である。
【0088】
本例においては、図4(b)に示すように、当接部4のガイド部を更に延ばしてガイド部9bとして固定金具の支持部6の背面に折り込む。
【0089】
本例においては、防水カバー1の固定を、より強固にして風圧等により脱落しにくくできる。
【0090】
(例5)
本例を図4(c)に示す。同図は当接部4の横断面図である。
【0091】
本例においては、図4(c)に示すように、当接部4のガイド部を弾性変形可能なバネ状のガイド部9cとすれば、図中矢印のようにガイド部9cに力を加えることで開閉するので、防水カバー1の支持部6への着脱を、固定時は強固に固定され、また、取り外しも容易な構造となり、その結果、施工やメンテナンス性が向上する。
【0092】
(例6)
本例を図6に示す。
【0093】
同図に示すように、低部カバー体2の端辺1aの先端を弾性変形可能なバネ状の端辺1bとした点が特徴である。
【0094】
すなわち、金属屋根材10の鍔部11に挿入された低部カバー体2の端辺1bの先端が金属屋根材10の折り返し部12によって押さえつけることができる構成になり、これにより、前述した当接部側だけでなく、端辺側においても固定力を向上させることができる。
【0095】
(例7)
また、図7に示すように、防水カバー1の当接部4を上方に延長するとともに、固定金具5の載置部8の裏面に押圧されるように弾性変形可能なバネ状の押圧部13とすれば、防水カバー1を取り付けるだけで、載置部8と押圧部13によって当接部4を介して防水カバー1を屋根40に押さえつけるようになる。その結果、防水カバー1が屋根上に強固に固定される。
【0096】
このとき、ガイド部を図4(b)で述べたような支持部6に巻きつくようにしたガイド部9bや、図4(c)のガイド部9cにすれば、押圧されることで歪を生じやすい当接部4を略垂直に保つことができ、より好適である。
【0097】
しかも、このように載置部8を基点に押圧されるようにすることにより屋根の歪み状況に応じた変化に追従することが可能となり、これにより、屋根の経年変化に伴う歪みの変化にも自動的に追従できる。
【0098】
(例8)
また、図9に示すように、当接部4の押圧部13を、たとえば押圧部13aと13bのような短辺にして、材質や厚みによって異なる防水カバー1への押圧圧力を押圧部13と載置部8との接触長さを加減することで適した値にすると、防水カバー1が適正な圧力で屋根40に押さえつけられ、これにより、屋根との密着性が向上する。
【0099】
なお、特に図示しないが、図中のように押圧部13aと13bを両端に配して載置部8の締結穴部を通すボルトやナットを阻害しないようにすると、より好適である。
【0100】
(例9)
さらに、図8に示すように、防水カバー1の上部カバー体3の側面壁3aを軒側に延長させて雨誘導壁3bとし、この誘導壁3bが固定金具5の支持部6を覆い隠すようにすれば、図中の矢印のように、低部カバー体2上を流れてきた雨水を支持部6よりも軒側にまで誘導することができ、これにより、たとえば、図7において、上部カバー体の側面壁3aの途切れたところから雨水が支持部6側に侵入するといった回り込み現象を防止できる。
【0101】
このように微量ながら侵入する雨水によって溜まった水滴は、後に気化して蒸気となり、屋根設置架台Sの固定金具自身や基底部7にある木ねじ18や釘を腐食させ、屋根全体のダメージへと広がっていくので、このような雨水の侵入を最小限にできることは大いに意義がある。
【0102】
(例10)
図10は前述した図9の押圧部13a、13bと図4(c)のガイド部9cと図8の雨誘導壁3bの技術を盛り込んだ理想的な状態の屋根設置架台S2を示す斜視図である。
【0103】
以上、記述したように本発明によれば、金属屋根材に折り曲げにより鍔部を設け、ここに防水カバーの低部カバー体の端辺を嵌め込み、そして、屋根設置架台は、太陽光利用機器を固定する支持体と、この支持体を覆うカバー体とから成ることで、カバー体に穴を開けることなく、支持体の基底部を通して開けられた金属屋根材の穴に雨水がかからないようにする止水構造と成し、これにより、雨水によって侵入する水滴や気化した蒸気の発生を防止することができ、その結果、屋根設置架台の固定金具部分へのダメージを最小限にできた。
【0104】
また、上部カバー体の当接部が支持部に当接することにより、防水カバー1に対する抜け止めの役割を果たすとともに、上部カバー体上を流れ落ちてくる雨水を堰き止め、低部カバー体側へ落とす働きをし、支持部に直接雨水が当たって堰き止められた場合に生じる防水カバー内への水の逆流を無くする。
【0105】
また、当接部にガイド部を設けることにより、当接部が掻き落とす雨水の一部がガイド部と支持部の間の隙間から防水カバー内部に侵入するのを防止して、雨水を確実に後方へ誘導することができるようになり、止水性能が向上する。
【0106】
また、ガイド部を更に延ばして、固定金具の支持部の背面に折り込むことができるようにすれば、防水カバーの固定を、より強固にして風圧等により脱落しにくくできる。同様にしてガイド部を弾性変形可能なバネ状のガイド部とすれば、ガイド部に力を加えることで開閉するので、防水カバーの支持部への着脱を可能とし、固定時は強固に固定され、取り外しも容易な構造となり施工やメンテナンス性が向上する。
【0107】
また、低部カバー体の端辺の先端を弾性変形可能なバネ状の端辺とすれば、金属屋根材の鍔部に挿入された低部カバー体の端辺の先端が金属屋根材の折り返し部によって押さえつけられるようになり、前述した当接部側だけでなく端辺側においても固定力を向上させる。
【0108】
また、防水カバーに弾性変形可能なバネ状の押圧部を設け、固定金具の載置部の裏面に押圧されるようにすれば、防水カバーを取り付けるだけで、屋根に押さえつけられ、屋根上に強固に固定される。さらに、載置部を基点に押圧されるようにすることにより、屋根の歪み状況に応じた変化に追従することが可能となるので、屋根の経年変化に伴う歪みの変化にも自動的に追従することも可能とできる。このとき、押圧部を材質や厚みによって異なる防水カバーの押圧圧力を押圧部と載置部との接触長さを加減することで適した値にすると防水カバーが適正な圧力で屋根に押さえつけられるので屋根との密着性が向上する。
【0109】
また、防水カバーの上部カバー体の側面壁を軒側に延長させることにより、低部カバー体上を流れてきた雨水を支持部よりも軒側にまで誘導することができ、上部カバー体の途切れたところから支持部側に雨水が侵入するといった回り込み現象も防止することができる。
【0110】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更や改良等はなんら差し支えない。
【0111】
上述の実施例においては、太陽光利用システムとして太陽光発電装置を使用した場合にて説明したが、これに代えて太陽熱集熱温水器にて適用でき、同じ作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係る屋根設置架台を屋根上に設置する様子を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係る屋根設置架台を組み立ての様子を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る屋根設置架台を用いて太陽光発電アレイを支持する様子を模式的に示した一部断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明に係る防水カバーのガイド部の形態を模式的に示す断面図であり、(a)は雨を掻き落とす様子を、(b)、(c)はガイド部の別の事例を示す。
【図5】本発明に係る屋根設置架台の他の第一の実施例を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明に係る屋根設置架台の他の第二の実施例を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明に係る屋根設置架台の他の第三の実施例を模式的に示す側面図である。
【図8】本発明に係る屋根設置架台の他の第四の実施例を模式的に示す側面図である。
【図9】本発明に係る屋根設置架台の他の第五の実施例を模式的に示す斜視図である。
【図10】本発明に係る屋根設置架台の最良の実施例を模式的に示す斜視図である。
【図11】従来の太陽光発電アレイを住宅の屋根上に設置する様子を模式的に説明する斜視図である。
【図12】従来の屋根設置架台を屋根上に配し、太陽光発電アレイを支持する様子を示す一部拡大断面図である。
【図13】従来の太陽電池モジュールを金属屋根上に挟み込み金具を用いて設置する様子を模式的に説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0113】
1:防水カバー
1a、1b:端辺
2:低部カバー体
3:上部カバー体
3a:側面壁
3b:雨誘導壁
4:当接部
5:固定金具
6:支持部
7:基底部
8:載置部
9、9b、9c:ガイド部
10:金属屋根材
11:鍔部
12:折り返し部
13、13a、13b:押圧部
15:締結穴部
17:貫通穴
18:木ねじ
30:ボルト
31:ナット
38:瓦材
39:野地板
40:屋根
41:縦桟
42:横桟
43:屋根固定金具
44:太陽電池モジュール
45:板金
46:突起部
47:固定装置
J:太陽光発電装置
S、S2:屋根設置架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜した屋根の上に雨水が流下する金属板を配し、この金属板の上に太陽光利用機器を設置する屋根設置架台を配設した太陽光利用システムであって、前記屋根設置架台は、太陽光利用機器を固定する支持体と、この支持体を覆うカバー体とから成り、前記金属板における屋根設置架台の配設領域の上流部分に当該金属板の折り曲げて成る鍔部を形成し、この鍔部の下に前記カバー体の端部を挿入したことを特徴とする太陽光利用システム。
【請求項2】
前記鍔部の下に挿入した前記カバー体の端部を、当該鍔部の下方に配した金属部分とで挟み込むべく、前記金属板を成型したことを特徴とする請求項1に記載の太陽光利用システム。
【請求項3】
前記支持体は板状体と、前記太陽光利用機器と接続する機器支持体とから成り、さらに前記カバー体の裏面と金属板との間に前記板状体を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽光利用システム。
【請求項4】
前記太陽光利用機器が太陽光発電装置であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽光利用システム。
【請求項5】
前記太陽光利用機器が太陽熱集熱温水器であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽光利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−89978(P2006−89978A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275056(P2004−275056)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】