説明

太陽光発電システムの状態監視装置およびコンピュータプログラム

【課題】 太陽電池セルやパワーコンディショナ等の各種構成要素の異常を容易にかつ確実に監視者に知らせる。
【解決手段】 複数の太陽電池セル(13)を配列した太陽電池パネル(12)と、複数の太陽電池パネル(12)を配列した太陽電池モジュール(11)と、その太陽電池モジュール(11)で得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ(15)などの各種構成要素を備えた太陽光発電システム(10)の状態を監視する。前記各種構成要素の異常を検出して可視光を点灯または消灯する複数の可視光光源(21)と、前記太陽電池モジュール(11)から離れた場所に設置して前記複数の可視光光源(21)の可視光を受光する受信装置(30)と、その受信装置(30)で検出した複数の可視光光源(21)の可視光によって異常箇所を識別すべく出力表示する異常箇所識別装置(40)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光発電システムの状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電システムは、複数の太陽電池パネルを直列及び並列に配列した太陽電池モジュールから得られる直流電力がパワーコンディショナ(PCS)により交流電力に変換される。ところが、太陽電池パネルが並列に接続されているので、太陽電池パネルのひとつ、あるいは太陽電池パネルを構成する複数の太陽電池セルのうちのひとつが破損などのために発電能力が低下してもパワーコンディショナ側では合計した電力のみを検出しているために、太陽電池パネルの破損、劣化を認識できずに運転が継続されてしまうという問題点があった。
【0003】
これを防ぐために、例えば特許文献1に示されているように、太陽電池パネルの異常を早期に検出することができる太陽電池監視装置が開発されている。すなわち、複数の太陽電池パネルの各パネル毎の発電電力を監視部で常時監視し、各パネル毎の発電電力と監視部に設定された理論発電電力値を比較し、一定時間連続してパネル毎の発電電力値が理論発電電力値より小さいときには、その太陽電池パネルの少なくとも1つが不良であることを検出するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−175177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、太陽光発電システムは、省エネと環境保護の見地から太陽光発電に多くの関心が高まり、ますます広大な敷地や工場施設の屋根等に多数の太陽電池パネルを使用した太陽電池モジュールを敷設するなど大型化している。したがって、多数の太陽電池パネルの状態を常時管理することが要求される。しかし、太陽電池パネルやパワーコンディショナ(PCS)など、太陽光発電システムの要素の部分的な不具合を確実にかつ素早く発見することが難しい問題であった。
【0006】
さて、特許文献1の場合では太陽電池パネル毎に異常を検知すべく電力監視部に接続配線しており、電力監視部にて各電池パネルの発電電力の実測値と予め設定した基準値と比較して異常か否かを判断しており、高価な設備を要するものであった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、広大な面積に設置された太陽電池モジュールの太陽電池パネルを構成する太陽電池セルやパワーコンディショナ(PCS)等の各種構成要素の異常を容易にかつ確実に監視者に知らせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、太陽光発電システム(10)の状態を監視する太陽光発電システムの状態監視装置(20)に係る。
太陽光発電システム(10)は、複数の太陽電池セル(13)を配列した太陽電池パネル(12)と、その複数の太陽電池パネル(12)を配列した太陽電池モジュール(11)と、その太陽電池モジュール(11)で得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ(15)などの各種構成要素を備える。
更に、前記各種構成要素の異常を検出して電磁波を発信する複数の電磁波発信源(21)と、前記太陽電池モジュール(11)から離れた場所に設置して前記複数の電磁波発信源(21)の電磁波を受信する受信装置(30)と、その受信装置(30)で検出した複数の電磁波発信源(21)の電磁波によって異常箇所を識別すべく出力表示する異常箇所識別装置(40)と、を備える。
【0009】
(用語説明)
「電磁波」とは、空間の電場と磁場の変化によって形成された波(波動)のことであり、その中には、電波(低周波、超長波、長波、中波、短波、超短波、マイクロ波など)や、光波(赤外線、可視光線、紫外線など)がある。
【0010】
(作用)
広大な面積に設置された太陽電池モジュール(11)の太陽電池パネル(12)を構成する太陽電池セル(13)やパワーコンディショナ(15)(PCS)等の各種構成要素の異常を検出すると、複数の電磁波発信源(21)の中から該当する電磁波発信源(21)が電磁波を発信し、その電磁波を対応する受信装置(30)で受信する。そのため、異常箇所の位置や各種構成要素の物理的なデータを容易にかつ確実に監視者に知らせることができる。
【0011】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、太陽光発電システム(10)の状態を監視する太陽光発電システムの状態監視装置(20)に係り、 複数の太陽電池セル(13)を配列した太陽電池パネル(12)と、その複数の太陽電池パネル(12)を配列した太陽電池モジュール(11)と、その太陽電池モジュール(11)で得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ(15)などの各種構成要素を備える。
更に、前記各種構成要素の異常を検出して可視光を点灯または消灯する複数の可視光光源(21)と、前記太陽電池モジュール(11)から離れた場所に設置して前記複数の可視光光源(21)の可視光を受光する受信装置(30)と、その受信装置(30)で検出した複数の可視光光源(21)の可視光によって異常箇所を識別すべく出力表示する異常箇所識別装置(40)と、を備える。
【0012】
(用語説明)
「可視光」とは、電磁波の中の光波の一つの波動であり、直進性が良く、特定波長で発光することができるので、その特定波長と直進性を利用し、可視光通信を行うことができる。また、その可視光通信では、無線通信と同様、太陽電池セル(13)の温度、電圧、電流などの物理量を送信することができる。可視光通信は、変調させることによって複雑な情報を扱うこともできる。
「可視光光源」とは、上記の「可視光」を発光する光源である。一般的には、消費電力が低いのでLED(発光ダイオード)を採用することが多い。
「点灯または消灯」としているのは、異常時に点灯するパターン、異常時に消灯するパターンのいずれが発見しやすいか、ランニングコストが安いか、などを選択できるようにする趣旨である。なお、「点灯または消灯」には、周期性のある点滅をも含むこととする。
【0013】
(作用)
広大な面積に設置された太陽電池モジュール(11)の太陽電池パネル(12)を構成する太陽電池セル(13)やパワーコンディショナ(15)(PCS)等の各種構成要素の異常を検出すると、複数の可視光光源(21)の中から該当する可視光光源(21)が可視光を発光し、その可視光は対応する受信装置(30)が受光する。そのため、異常箇所の位置や各種構成要素の物理的なデータを容易にかつ確実に監視者に知らせることができる。
更に、現場に駆けつけたメンテナンス担当者は、発光しているのが可視光であるので、どこに異常な箇所があるのかをすぐに把握できる。
【0014】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の太陽光発電システムの状態監視装置(20)を限定したものである。
すなわち、 前記各種構成要素は、複数の太陽電池セルで構成される一ユニット単位毎に備えることとした。
構成要素を一ユニット毎に備えることによって、異常が発生した箇所を発見しやすくする趣旨である。
【0015】
(作用)
異常発生した箇所は、一ユニット毎に交換すればよい。すなわち、異常な箇所を素早く取り除き、また元通りにするまでの時間を短縮できる。
【0016】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の太陽光発電システムの状態監視装置(20)を限定したものである。
すなわち、前記一ユニット単位が、太陽電池パネル(12)単位、あるいは幾つかの太陽電池パネル(12)で構成されることを特徴とする。
【0017】
(作用)
一ユニット単位が太陽電池パネル(12)とすると、パネルの形態であるので新たな太陽電池パネル(12)に交換し易くなる。このとき、太陽電池パネル(12)を構成する太陽電池セル(13)の数が少ないものであれば交換する量が小さくなるので安価になる。
【0018】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項2、請求項3または請求項4のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置(20)を限定したものである。
すなわち、前記可視光光源(21)は、一ユニット単位を構成する複数の太陽電池セル(13)のうちの隣接する太陽電池セル(13)の異常を検出したときに可視光を点灯または消灯する構成であり、 一ユニット単位に対して1つの可視光光源(21)を設けていることを特徴とする。
【0019】
(作用)
一ユニット単位の中で1つの太陽電池セル(13)が異常発生すると、一ユニット単位の合計発電電力は、異常判断基準値よりも低くなるので、その異常が検出される。異常判断基準値は、太陽電池セル(13)の初期発電能力と経験値による予測値を加味した数値に対して異常とする設定値である。
【0020】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置(20)を限定したものである。
すなわち、前記受信装置(30)は、前記複数の可視光光源(21)から発光する可視光を前記各可視光光源(21)に対応して受光する一または複数の受光素子(32)であり、 前記異常箇所識別装置(40)は、前記一または複数の受光素子(32)の受光状態から前記可視光光源(21)の可視光によって異常箇所を判断して表示する制御装置(42)であることを特徴とする。
【0021】
(作用)
一または複数の受光素子(32)は複数の各可視光光源(21)に対応して受光するので、異常を検出して点灯または消灯する各可視光光源(21)は制御装置(42)で容易に識別され、表示装置などで表示される。
【0022】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置(20)を限定したものである。
すなわち、前記受信装置(30)は、前記複数の可視光光源(21)から発光する可視光を撮像する撮像手段(51)であり、前記異常箇所識別装置(40)は、前記撮像手段(51)で撮像した画像を分析して前記複数の可視光光源(21)の可視光によって異常箇所を判断して表示する制御装置(42)であることを特徴とする。
【0023】
(作用)
撮像手段(51)により、太陽光発電システム(10)の全体をとらえるようにズームオートし、可視光光源(21)から発光する可視光を撮像し、その画像を制御装置(42)で分析して太陽光発電システム(10)の全体の不具合発生状況を可視光により診断する。
【0024】
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置(20)を限定したものである。
すなわち、前記受信装置(30)および異常箇所識別装置(40)は、可視光通信プログラムを搭載した携帯情報端末(たとえば携帯電話44)であることを特徴とする。
【0025】
(作用)
携帯情報端末に可視光通信プログラムを搭載することにより、監視者は太陽電池モジュール(11)の複数の電磁波発信源(21)から発光する可視光を受信できる範囲内にいれば、その場で太陽電池モジュール(11)の状況を確実に確認することができる。
【0026】
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、請求項2、3、4又は5に記載の太陽光発電システムの状態監視装置(20)を限定したものである。
すなわち、 前記受信装置(30)は、前記複数の各受光素子(32)を前記各可視光光源(21)に対応する位置に配置し、かつ前記複数の各受光素子(32)の受光状態を表示する表示用光源(41)を設けることで、対応する複数の可視光光源(21)の異常箇所を視覚的に表示する受光パネル(31)であることを特徴とする。
【0027】
(作用)
監視者は、受光パネル(31)を目視することで太陽電池モジュール(11)の状態を容易にかつ確実に監視することができる。
【0028】
(請求項10)
請求項10に記載の発明は、 複数の太陽電池セルを配列した太陽電池パネルと、 その複数の太陽電池パネルを配列した太陽電池モジュールと、 その太陽電池モジュールで得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナなどの各種構成要素と、 その各種構成要素の異常を検出して電磁波を発信する複数の電磁波発信源と、を備えた太陽光発電システムの状態を監視する太陽光発電システムの状態監視装置プログラムに係る。
そのプログラムは、前記太陽電池モジュールから離れた場所において前記複数の電磁波発信源の電磁波を受信した旨の情報を受信する受信手順と、 その受信手順にて受信した情報に基づいて異常箇所を識別する演算手順と、 その演算手順にて識別された異常箇所に関する情報を出力する異常箇所出力手順とを、コンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0029】
前記演算手順が異常箇所に関する情報を演算するため、各種構成要素と受信手順が受信する情報との対応テーブルについては、予めコンピュータの記憶手段に記憶されているか、対応テーブルを記憶している装置に当該コンピュータがアクセスする。
【0030】
(請求項11)
請求項11に記載の発明は、複数の太陽電池セルを配列した太陽電池パネルと、 その複数の太陽電池パネルを配列した太陽電池モジュールと、その太陽電池モジュールで得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナなどの各種構成要素と、 その各種構成要素の異常を検出して可視光を点灯または消灯する複数の可視光光源と、を備えた太陽光発電システムの状態を監視する太陽光発電システムの状態監視装置プログラムに係る。
そのプログラムは、前記太陽電池モジュールから離れた場所において前記複数の可視光光源の可視光を受光した旨の情報を受信する受信手順と、 その受信手順にて受信した情報に基づいて異常箇所を識別する演算手順と、 その演算手順にて識別された異常箇所に関する情報を出力する異常箇所出力手順とを、コンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0031】
請求項1から請求項9に記載の発明によれば、広大な面積に設置された太陽電池モジュールの太陽電池パネルを構成する太陽電池セルやパワーコンディショナ(PCS)等の各種構成要素の異常を、容易にかつ確実に監視者に知らせることができる。
請求項10および請求項11に記載の発明に係るコンピュータプログラムは、太陽光発電システムの状態監視装置を制御するコンピュータにインストールされて用いられることにより、太陽光発電システムの状態監視を自動化することに寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1を参照するに、本実施形態に係る太陽光発電システム10は、複数の太陽電池セル13を配列した太陽電池パネル12と、その複数の太陽電池パネル12を配列した太陽電池モジュール11と、その太陽電池モジュール11から得られる直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ15(PCS)と、その他に受変電設備16や電力計測装置17や表示装置18などの各種構成要素で構成されている。
【0033】
なお、受変電設備16から必要な電力が送電されることになる。また、太陽光発電システム10は、少なくとも1つ以上の太陽電池モジュール11が配列されている。
【0034】
また、本実施形態に係る太陽光発電システムの状態監視装置20は、上記の太陽電池モジュール11では、幾つかの太陽電池セル13で一ユニット単位14を構成し、この一ユニット単位14毎に異常を検出して可視光を点灯または消灯する可視光光源としての例えばLED21が設けられている。例えば、図2に模式的に示されているように、4つの太陽電池セル13で一ユニット単位14を構成しており、その4つの太陽電池セル13は電気的に接続しており、その一ユニット単位14毎に得られた発電電力が合算される。
【0035】
なお、上記の太陽電池セル13は、経時的な劣化、設置環境の変化、外気温度の変化、一日の日射量によって得られる発電電力が異なってくるのであるが、この中で問題となるのは経時的な劣化や何らかの原因による異常である。この異常発生した太陽電池セル13、ないしはその異常の太陽電池セル13を含む一ユニット単位14の箇所を発見し、一ユニット単位14の太陽電池セル13を新たな正常な太陽電池セル13と交換する必要がある。
【0036】
上記の設置環境の変化、外気温度の変化、一日の日射量による発電電力は、予め経験値として実測しておくことによって、その日の状況に応じて得られる発電電力を予測することができる。一方、太陽電池セル13自体の初期発電能力は予め測定しておくことによって分かる。したがって、太陽電池セル13の初期発電能力と経験値による予測値を加味した数値に対して異常とする異常判断基準値が設定される。
【0037】
一ユニット単位14の中で太陽電池セル13が1つでも異常発生すると、例えば一ユニット単位14で4つの太陽電池セル13の合計発電電力が予め設定した異常判断基準値よりも低くなるので、その異常を検出することができる。
【0038】
太陽電池は一種のフォトダイオードであり、そのフォトダイオードは受光素子の基本となる素子であり、例えば、増幅回路と組み合わされてフォトトランジスタになり、集積回路と組み合わされることによってフォトICになるものである。しかも、フォトダイオードは光量と、発生する電流量の比が安定しているので、精度を必要とする光センサの受光素子、つまり受光と判断と出力の機能を合わせ持つものとして使用することができる。
【0039】
前述の機能を利用して、例えば幾つかの太陽電池セル13からなる一ユニット単位14毎に1つのLED21を設け、上述したように温度、電圧、電流などの物理量を測定し、それらの物理量から不具合(異常)を判断したときに前記LED21が可視光を点灯するようにできる。あるいは、その逆に、通常はすべてのLED21が可視光を発光しており、異常が発生したときに消灯するようにしても良い。換言すれば、前記LED21が点灯、消灯のいずれかで太陽電池セル13の一ユニット単位14毎に異常発生を表示することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、4つの太陽電池セル13でなる一ユニット単位14毎に1つのLED21を設けている。しかし、それより少ないあるいは多い数の複数枚の太陽電池セル13で構成される太陽電池パネル12を一ユニット単位14とすることも、あるいは複数枚の太陽電池パネル12を一ユニット単位14とすることもできる。いずれにしても、一ユニット単位14毎に1つのLED21を設ける。
【0041】
また、上記の太陽電池モジュール11から離れた場所には、その太陽電池モジュール11に設置されているすべてのLED21から発光される可視光を可視光通信として受光(受信)する受信装置30としての例えば受光パネル31が設けられている。その受光パネル31には、上記の複数の各LED21から発光する可視光をそれぞれ対応して受光する複数の受光素子32が、前記複数の各LED21に対応する位置に配置されている。
なお、一枚の受光パネル31に対して受光素子32は一つであっても複数であっても良い。
【0042】
上記の受信装置30で検出した複数のLED21の可視光による異常箇所を識別すべく出力表示する異常箇所識別装置40が設けられている。すなわち、その異常箇所識別装置40としては、複数の各受光素子32にそれぞれの受光状態を表示する表示用光源としての例えば表示用LED41を設けることができる。
可視光光源としてのLED21は消費電力が低いので省エネ効果が高いものである。また、LED21の可視光は直進性が良く、特定波長で発光することができるので、その特定波長と直進性を利用し、可視光通信により監視者に知らせる工夫をしている。また、その可視光通信では、太陽電池セル13の温度、電圧、電流などの物理量のデータを送信することができる。
【0043】
図1の太陽電池モジュール11に対応する受光パネル31としては、図3に示されているように、太陽電池モジュール11における各太陽電池セル13に対応する位置の識別位置(セル住所)が設けられている。本実施形態では、5つの太陽電池パネル12は、それぞれ順に(I)〜(V)で識別されており、各太陽電池パネル12の太陽電池セル13は横軸にa〜hの符号が付されており、縦軸に1〜12の番号が付されている。太陽電池モジュール11における各太陽電池セル13と受光パネル31の対応する位置は、同じ識別位置(セル住所)となる。したがって、各太陽電池セル13の識別位置(セル住所)は、例えば、「(I)のa−1」,「(IV)のc−5」という具合に識別されることになる。
【0044】
本実施形態では、4つの太陽電池セル13でなる一ユニット単位14毎に1つのLED21が設けられているので、受光パネル31には各LED21に対応する識別位置(セル住所)に、それぞれ対応する受光素子32とその受光状態を表示する表示用LED41が設けられている。なお、各LED21の可視光の波長は互いに異なっており、各受光素子32は対応するLED21の可視光のみを受光する構成となっている。
【0045】
したがって、太陽電池モジュール11の1つのLED21が異常を示す発光が生じると、そのLED21の可視光は直進して受光パネル31に設けた対応する受光素子32に受光されることになる。すると、その受光素子32に接続した表示用LED41が発光することになる。これにより、監視者は受光パネル31で発光した表示用LED41の位置を確認することによって、実際に異常となった太陽電池セル13の1つのグループの識別位置(セル住所)を容易にかつ確実に知ることができる。その結果、その異常の太陽電池セル13を新たな太陽電池セル13に容易にかつ確実に交換することができる。
【0046】
例えば、「(I)のe−9」の識別位置のLED21が発光したときは、受光パネル31の「(I)のe−9」の識別位置の受光素子32が受光し、その位置の表示用LED41が発光する。これを目視確認した監視者は、(I)の太陽電池パネル12の「e−9」、「e−10」、「f−9」、「f−10」の4つの太陽電池セル13のグループで異常が発生したことを容易に素早くかつ確実に識別できる。その結果、そのグループの4つの太陽電池セル13を新たな4つの太陽電池セル13と交換することができる。
【0047】
なお、前記異常箇所識別装置40の一つの例としては、前述した太陽光発電システムの状態監視装置20における受光パネル31の複数の受光素子32を、制御装置としての例えばホストコンピュータ42に接続し、このホストコンピュータ42により各受光素子32の受光状態から太陽電池モジュール11の異常を示したLED21の位置を判断することができる。ホストコンピュータ42で判断したデータは例えばモニタ43などの表示装置に表示することも、あるいは、監視者の携帯電話44に転送して知らせることもできる。
【0048】
なお、その場合は、受光素子32に接続した表示用LED41を設けなくとも良い。あるいは、表示用LED41も設けておき、目視でもホストコンピュータ42でも確認できるようにしても良い。
また、他の実施形態としては、前述した太陽光発電システムの状態監視装置20における複数の受光素子32は、太陽電池モジュール11の複数の各LED21から発光する可視光をそれぞれ対応して受光する受光素子32であるので、受光パネル31に前記各LED21に対応する位置に配置しないで、単に一箇所に集合して設けるだけでも良い。しかし、この場合は目視で監視することはできないので、複数の受光素子32は制御装置としての例えばホストコンピュータ42に接続することによって、前述したのと同様にモニタ43などの表示装置や監視者の携帯電話44に表示することができる。
【0049】
次に、他の実施形態に係る太陽光発電システムの状態監視装置50について説明する。なお、前述した太陽光発電システムの状態監視装置20と同様の部材は同じ符号で付しておき、異なる部分のみを説明する。
【0050】
図4に示されているように、受信装置30は、太陽電池モジュール11の複数のLED21から発光する可視光を撮像する撮像手段としての例えば監視用のCCDカメラ51が用いられる。この監視用のCCDカメラ51は、太陽光発電システム10の全体をとらえるようにズームオートし、太陽光発電システム10の全体の不具合発生を可視光により診断するものである。また、異常箇所識別装置40としては、監視用のCCDカメラ51で撮像した画像を画像処理装置52で分析し、制御装置としての例えばホストコンピュータ42により複数のLED21の可視光から異常箇所を判断し、例えばモニタ43などの表示装置に表示することも、あるいは、監視者の携帯電話44に転送して知らせることもできる。
なお、上記の撮像手段は、デジタルカメラであっても、その他の実施形態の撮像手段であっても良い。
【0051】
また、前述した太陽光発電システムの状態監視装置50では、受信装置30として撮像手段を用いているが、その撮像手段に換えて、受信装置30と異常箇所識別装置40の機能を合わせ持つ可視光通信プログラムを搭載した携帯電話であっても良い。この場合は、監視者は太陽電池モジュール11の複数の電磁波発信源21から発光する可視光を受信できる範囲内にいれば、その場で太陽電池モジュール11の状況を確実に確認することができる。
また、前述した実施形態では太陽電池モジュール11における太陽電池セル13の異常を検出する場合について説明したが、パワーコンディショナ15(PCS)、受変電設備16、電力計測装置17等の各種構成要素の異常を検出する場合にも適用することができる。
【0052】
以上のことから、この発明の太陽光発電システムの状態監視装置20、50では、広大な面積に設置された太陽電池モジュール11の太陽電池パネル12を構成する太陽電池セル13やパワーコンディショナ15(PCS)等の各種構成要素の電圧・電流等の測定と、それらの不具合(異常)の発見とその不具合位置や電圧・電流等の測定データを可視光通信により容易にかつ確実に監視者に知らせることができる。
【0053】
さらには、それらのデータは制御装置としてのホストコンピュータ42あるいは携帯電話44の端末の受信装置で診断することができる。また、上記の可視光通信により、太陽電池セル13の温度、電圧、電流などの物理量を送信し、これらの物理量のデータは受信装置30としての携帯電話44の端末に収集し、各LED21に対応する受光素子32で受信する。そして、その受信した旨をホストコンピュータ42や携帯電話44の端末に収集することができる。その結果、太陽光発電システム10の点検結果情報を効率的に収集することができる。
【0054】
なお、前述した実施形態の太陽光発電システムの状態監視装置20,50では、可視光光源から発信する可視光通信が用いられているが、それに代えてその他の電磁波を用いて太陽電池モジュール11の各種構成要素の異常を知らせるため、データを送信する通信手段とすることができる。
【0055】
「電磁波」は、空間の電場と磁場の変化によって形成された波(波動)のことであり、その中には、電波(低周波、超長波、長波、中波、短波、超短波、マイクロ波など)や、光波(赤外線、可視光線、紫外線など)がある。
あるいは、可視光通信に代えて、異常を知らせるバイブレータなどの音波をキャッチするマイクや出力するスピーカなどを用いてそのスピーカから出力される所定の音波を通信に用いることや、所定の音波が出力された旨をマイクによって集音した旨を通信することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明は、太陽光発電システムの製造業、太陽光発電システムのメンテナンス業、太陽光発電システムに関するソフトウェア開発業などにおいて、利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第一の実施形態に係る太陽光発電システムの状態監視装置を示す斜視図である。
【図2】4つの太陽電池セル13でなる一ユニット単位を示す平面図である。
【図3】図1の受光パネルを示す平面図である。
【図4】第二の実施形態に係る太陽光発電システムの状態監視装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
10 太陽光発電システム 11 太陽電池モジュール
12 太陽電池パネル 13 太陽電池セル
14 一ユニット単位 15 パワーコンディショナ(PCS)
16 受変電設備 17 電力計測装置
18 表示装置
20 太陽光発電システムの状態監視装置
21 LED(可視光光源、電磁波発信源)
30 受信装置 31 受光パネル
32 受光素子
40 異常箇所識別装置
41 表示用LED(表示用光源)42 ホストコンピュータ(制御装置)
43 モニタ(表示装置) 44 携帯電話
50 太陽光発電システムの状態監視装置
51 監視用のCCDカメラ(撮像手段)
52 画像処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルを配列した太陽電池パネルと、 その複数の太陽電池パネルを配列した太陽電池モジュールと、 その太陽電池モジュールで得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナなどの各種構成要素と、を備えた太陽光発電システムの状態を監視する太陽光発電システムの状態監視装置において、
前記各種構成要素の異常を検出して電磁波を発信する複数の電磁波発信源と、前記太陽電池モジュールから離れた場所に設置して前記複数の電磁波発信源の電磁波を受信する受信装置と、その受信装置で受信した複数の電磁波発信源の電磁波によって異常箇所を識別すべく出力表示する異常箇所識別装置と、を備えた太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項2】
複数の太陽電池セルを配列した太陽電池パネルと、 その複数の太陽電池パネルを配列した太陽電池モジュールと、 その太陽電池モジュールで得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナなどの各種構成要素と、を備えた太陽光発電システムの状態を監視する太陽光発電システムの状態監視装置において、
前記各種構成要素の異常を検出して可視光を点灯または消灯する複数の可視光光源と、前記太陽電池モジュールから離れた場所に設置して前記複数の可視光光源の可視光を受光する受信装置と、その受信装置で受信した複数の可視光光源の可視光によって異常箇所を識別すべく出力表示する異常箇所識別装置と、を備えた太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項3】
前記各種構成要素は、複数の太陽電池セルで構成される一ユニット単位毎に備えることとした請求項1または2記載の太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項4】
前記一ユニット単位は、太陽電池パネル単位、あるいは幾つかの太陽電池パネルで構成されることとした請求項3記載の太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項5】
前記可視光光源は、一ユニット単位を構成する複数の太陽電池セルのうちの隣接する太陽電池セルの異常を検出したときに可視光を点灯または消灯する構成であり、一ユニット単位に対して1つの可視光光源を設けた請求項2、請求項3または請求項4のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項6】
前記受信装置は、前記複数の可視光光源から発光する可視光を前記各可視光光源に対応して受光する一または複数の受光素子であり、前記異常箇所識別装置は、前記一または複数の受光素子の受光状態から前記可視光光源の可視光によって異常箇所を判断して表示する制御装置とした請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項7】
前記受信装置は、前記複数の可視光光源から発光する可視光を撮像する撮像手段であり、前記異常箇所識別装置は、前記撮像手段で撮像した画像を分析して前記複数の可視光光源の可視光によって異常箇所を判断して表示する制御装置とした請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項8】
前記受信装置および異常箇所識別装置は、可視光通信プログラムを搭載した携帯情報端末であることを特徴とする請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項9】
前記受信装置は、前記複数の各受光素子を前記各可視光光源に対応する位置に配置し、かつ前記複数の各受光素子の受光状態を表示する表示用光源を設けることで、対応する複数の可視光光源の異常箇所を視覚的に表示する受光パネルであることを特徴とする請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のいずれかに記載の太陽光発電システムの状態監視装置。
【請求項10】
複数の太陽電池セルを配列した太陽電池パネルと、 その複数の太陽電池パネルを配列した太陽電池モジュールと、 その太陽電池モジュールで得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナなどの各種構成要素と、 その各種構成要素の異常を検出して電磁波を発信する複数の電磁波発信源と、を備えた太陽光発電システムの状態を監視する太陽光発電システムの状態監視装置プログラムであって、
そのプログラムは、前記太陽電池モジュールから離れた場所において前記複数の電磁波発信源の電磁波を受信した旨の情報を受信する受信手順と、
その受信手順にて受信した情報に基づいて異常箇所を識別する演算手順と、
その演算手順にて識別された異常箇所に関する情報を出力する異常箇所出力手順と、をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項11】
複数の太陽電池セルを配列した太陽電池パネルと、 その複数の太陽電池パネルを配列した太陽電池モジュールと、その太陽電池モジュールで得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナなどの各種構成要素と、 その各種構成要素の異常を検出して可視光を点灯または消灯する複数の可視光光源と、を備えた太陽光発電システムの状態を監視する太陽光発電システムの状態監視装置プログラムであって、
そのプログラムは、前記太陽電池モジュールから離れた場所において前記複数の可視光光源の可視光を受光した旨の情報を受信する受信手順と、
その受信手順にて受信した情報に基づいて異常箇所を識別する演算手順と、
その演算手順にて識別された異常箇所に関する情報を出力する異常箇所出力手順と、をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−98078(P2010−98078A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266906(P2008−266906)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】